05/06/30 第15回社会保障審議会年金数理部会議事録


　　　　　　　　 社会保障審議会　年金数理部会（第１５回）議事録

日時　　：平成17年6月30日（木）10：00～12：00
場所　　：はあといん乃木坂
出席委員：堀部会長、都村部会長代理、栗林委員、近藤委員、田村委員、林委員
　　　　　山﨑委員
議事
　　　　平成１５年度財政状況について
　　　　　　　－厚生年金保険・国民年金（基礎年金）－

○田村首席年金数理官
　定刻になりましたので、ただいまより、第15回社会保障審議会年金数理部会を開催さ
せていただきます。
　審議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。
　座席図、議事次第のほか次のとおりでございます。
　資料１は、「平成15年度財政状況－厚生年金保険－」でございます。
　資料２は、「平成15年度財政状況－国民年金（基礎年金）－」でございます。
　配布資料は以上でございます。
　次に、本日の委員の出欠状況について御報告申し上げます。
　本日は宮島委員が御都合により御欠席とのことでございます。なお、渡辺委員はちょ
っとおくれて来られるかと思いますが、御出席いただきました委員の方が３分の１を超
えておりますので、会議は成立していることを御報告申し上げます。
　なお、本日、審議官は国会の関係で欠席させていただいております。
　次に、部会長の再任について御報告申し上げます。当部会の親審議会である社会保障
審議会の委員の任期は本年の１月28日をもって満了となり、再任手続がなされました。
任期満了に伴い部会長の選任をしていただく必要がございますが、部会長の選任につき
ましては、社会保障審議会令によりまして、「部会長は当該部会に属する社会保障審議
会の委員の互選により選任する。」ということとされております。事前に社会保障審議
会の委員である堀委員、宮島委員、渡辺委員のお三方で互選をいただきましたところ、
引き続き堀委員に部会長をお願いすることになりましたので、御報告させていただき
す。
　それでは、以降の進行につきましては、堀部会長にお願いいたします。

○堀部会長
　雨の中、また、お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。引き続
き部会長を務めさせていただくことになりました。よろしくお願いいたします。皆様の
御協力を得まして円滑に議事を進めていきたいと思います。
　規定上、部会長が部会長代理を指名することになっておりまして、私としましては、
引き続き都村委員にぜひお願いしたいと思います。都村委員、よろしいでしょうか。

○都村委員
　よろしくお願いいたします。

○堀部会長
　それでは、本日は、厚生年金保険及び国民年金の平成15年度財政状況について聴取い
たします。まず、厚生年金保険の平成15年度の財政状況について報告を聴取いたしま
す。
　クールビズということなので、上着をどうぞおとりください。報告者の方もどうぞ。

○山崎数理課長
　厚生労働省年金局数理課長の山崎でございます。
　それでは、最初にお手元の資料１、「平成15年度財政状況－厚生年金保険－」、こち
らの資料に沿いまして、15年度の厚生年金保険の財政の状況につきまして御説明させて
いただきます。
　まず、おめくりいただきまして１ページでございますが、厚生年金の15年度の収支の
状況の総括表、11年度以降時系列で掲載されているものですが、こちらをご覧いただき
まして、右の欄、平成15年度、収入総額31兆1,022億円ということで、対前年度（0.7％
）の伸びとなっておりますが、その中で保険料収入は19兆2,425億で、前年度に比べ
9,608億円、率にして（△4.8％）になっています。
　平成15年度から総報酬制が導入されまして、14年度までは月々の標準報酬月額に17.35
％の保険料、別途ボーナスからは１％の特別保険料という形で保険料が徴収されており
ましたものが、平成15年においては総報酬制ということで、月々の標準報酬とボーナス
（標準賞与）に対して13.58％という一律の保険料率が課されるようになったということ
で、たまたま15年度という総報酬制の導入の時期が不況によりボーナスが減少した時期
に重なったということで、総報酬制の導入の時期に保険料の一時的な落ち込みが生じて
いることと、一方、14年度と15年度を比べますと、被保険者数も年度平均ベースでおよ
そ0.8％ぐらい減少していると、こういうような要素もございまして、保険料収入がこ
のぐらい15年度はダウンしている状況にあるところでございます。
　国庫負担は４兆1,045億円ということで、1,009億円のプラス（2.5％）という状況で
ございます。
　次に運用収入ですが、こちらが特別会計としての運用収入は２兆2,884億円でござい
まして、これは前年に比べ8,186億円の減少ですが、こちらは特別会計の収入としては、
財政融資資金に預託した預託金、こちらの方の約定利息による利息収入ということにな
るわけですが、こちらの預託金は順次償還されておりまして、そちらの方が年金資金運
用基金での市場運用に回っているということでございまして、預託金元本そのものの減
少と、また預託金の収益率も金利が低下傾向でしたので、収益率自体も下がっているこ
とと両方ありまして、こちらの運用収入は△8,186億円となっています。
　しかし、その下にございます〔時価ベース〕、こちらは年金資金運用基金におきます
市場運用等の評価損益を反映した、いわゆる時価ベースの利回りに基づいた額ですが、
一番下の欄、積立金運用利回りとございますが、こちらは時価ベースで評価した運用利
回りでございまして、こちらが4.91％ということで、株式市場の回復により、かなり市
場運用分が収益を上げているということで、このかぎ括弧の欄を見ていただきますと、
６兆4,232億円の運用収入、評価益を含めるとこういう額になっていまして、こちらは
14年度に比べますと、６兆1,501億円の増で、時価ベースで見ますと運用収入は大幅に
増加していると、こういう状況になっているわけでございます。
　少し下に飛んでいただきまして、収入の欄の下から２段目のところ、解散厚年基金等
徴収金という欄がございまして、こちらは15年度から初めて項目が立っているところで
すが、こちらは代行返上により、厚生年金基金から企業年金基金になるということで、
厚生年金本体にいわゆる代行相当分の積立金を返上することによりまして、特別会計の
収入となっています。こちらが３兆4,965億円ということでございまして、これは年金
財政にとってみますと、厚生年金本体と基金を合わせた全体で見ますと、これはただの
内部の資金移動ですが、特別会計の収支ということでございますと、その年度において
は収入として入ってくると、こういう性格のものです。
　一方、支出の総額は31兆4,401億円で、対前年度と比較して8,524億円（2.8％）の伸
びとなっております。
　支出に関しては、平成15年度は0.9％のマイナス物価スライドが実施されたというこ
とで、その分やや伸びが鈍っているという面はございますが、受給者は増えているとい
うことで、全体としてはこれだけの伸びになっているという状況にあります。
　この収入と支出によります収支残ですが、その下の欄を見ていただきますと、特別会
計の決算としては、3,379億円の赤字ということで、こちらは厚生年金の制度始まって
以来の初めての赤字による積立金の取崩しということで報道されたわけですが、これは
いわゆる簿価ベースでの数字でございまして、先ほどの運用収入のところ、評価損益を
合わせた時価ベースで考えますと、かなり市場運用が好調だったということで、その下
のかぎ括弧にございますように、３兆7,968億円の黒字に一応形の上ではなるわけでご
ざいますが、ただ、１点御注意申し上げたいのは、先ほど御説明した代行返上、こちら
はある意味で本来的な収入ではなくて、当然代行返上でお金が返ってまいりますと、そ
れに伴い将来の代行相当分の給付義務も厚生年金の本体に返ってきているということで
すので、こちらの方は実質的な意味での収入とはなかなか考えにくいということで、特
別会計でも3,000億の赤字ですが、こちらの代行返上分を除いて考えれば、実質的な意
味では3.8兆円の赤字というような形での評価がなされているということでございまし
て、そういう意味では時価ベースで市場運用がかなり好調だったので、一応かぎ括弧に
ございますような、約3.8兆円の黒字という形に見えますが、こちらの方も代行返上分、
約3.5兆円というものは一時的な収入だということで考えまして、これを差し引きます
と、実質3,000億ぐらいの黒字というような姿にしかならないことになるわけでござい
ます。
　その下の欄、年度末積立金ですが、上の欄がいわゆる簿価ベース、特別会計の決算上
の積立金で137兆4,110億円ということで、積立金を特別会計の決算上取り崩していると
いうことで前年に比べて減少しています。
　一方で、評価損益を勘案した時価ベースの積立金はその下のかぎ括弧の欄、〔135兆
9,151億円〕ということで、15年度かなり市場運用が好調だったので、その前年の14年
度に比べますと、両者の乖離は大幅に縮小しているところでございますが、なお、15年
度においては若干の累積の評価損があるという状況でございます。その後、16年度も比
較的運用好調でございますので、今現在では積立金の時価と簿価の差はかなり近づいて
いると考えられているところです。
　では、おめくりいただきまして、２ページは今の状況を図に示しただけですので省略
させていただいて、３ページ、給付状況ということで、厚生年金の受給権者ですが、平
成16年３月末で、2,314万8,000人で、前年に比べて116万8,000人、率にして（5.3％）
の伸びという状況にあります。
　以下、これを給付の種別、老齢相当、通老相当、障害年金、遺族年金という形で分解
したものがこちらでございます。その下に年金総額の数字等も出ております。こちらも
年金総額で見て、2.9％の伸び。こちらはマイナス物価スライドも反映していることに
なります。
　おめくりいただき４ページでございますが、中段以下のところ、こちらが老齢年金の
平均年金月額の推移をお示ししたものでございまして、今、年金の給付は２階建てにな
っておりまして、平均額を見るのもなかなか見方が難しいのですが、こちらで見ていた
だいて一番実感に合うものとしては、上から４段目ほどの老齢年金平均年金月額に老齢
基礎年金の推計値を加算した平均年金月額。これは推計値となっておりますが、厚生年
金については、基本的には社会保険庁で厚生年金、基礎年金一体として支給しておりま
すので、そこの部分については完全に実績値なのですが、農林年金から引き継いだ部
分、ごく一部分だけ推計値の分がございますので、こういう表示になっておりますが、
実際上ほぼ実績値と考えていただいて結構かと思いますが、こちらについて見ていただ
きますと、16年３月末が16万9,696円、約17万円で、対前年比（△1.3％）となってござ
いまして、マイナス物価スライドが0.9％ということがございますので、こちらの影響
がかなりあると思われるところでございます。
　その次、５ページはこれを男性と女性に分けて見たものです。これを見ていただきま
すと、男性が老齢年金の平均年金額で16年３月末19万5,840円、女性は老齢年金の平均
年金額が11万418円ということで、かなり男女の差はあるわけですが、加入期間を見て
いただきますと、平均加入期間が男性の場合、415月、女性の場合、284月ということ
で、加入期間の違いもかなり影響している。あと、過去の報酬の違い、その両方が反映
して、こういう男女の年金額の差になっているという状況でございます。
　おめくりいただきまして、次のページが、加入期間20年以上の新規裁定の年金額です
が、新規裁定ということでございますので、男性は既に支給開始年齢が61歳に引き上が
っておりますので、新規裁定時の年金額は基本的に２階部分の年金額（報酬比例部分）
になるわけでございまして、一方で、女性は支給開始年齢がまだ60歳ということで、１
階と２階と合わせた年金額になっておりますので、見た目、男性が11万2,342円、女性
が11万2,592円ということでほぼ同じような額が入っておりますが、こちらは男性は基
本的に２階、女性は１、２階合わせたものという質的な違いがあるものでございます。
　次の７ページは、こちらが老齢年金について詳しく分解してみたもので、上の欄を見
ていただきまして、報酬比例部分、定額部分、加給年金部分という形で分解したところ
ですが、これを見ていただきますと、報酬比例部分に関しては、15年３月末で９万7,639
円という平均だったのが、16年３月末で９万7,849円、若干ですが、プラスになってい
るという状況でして、一方で定額部分、加給年金はマイナスになっていて、これは昭和
60年年金制度改正において、単身と世帯の給付水準の分化を図るということで、いわゆ
る１階部分、従来は世帯を対象とした給付水準のものを３号制度を導入して、妻と夫が
それぞれ基礎年金を受ける形に編成を変えましたので、年度別の給付の削減は定額部分
が大きくなっているという状況がございますので、加入期間が延びるのに合わせてある
程度報酬比例部分はカバーされるわけですが、定額部分は配偶者の方に水準が分化され
ている。ただ、こちらの年金統計は個人で見ることになりますので、個人ごとの年金額
で見ますと、どうしても少し下がったような数字が出てくる、こういう傾向があるわけ
です。
　続きまして、８ページですが、８ページ、９ページは、男女別という数字ですが、こ
ちらはかなり細かい表ですが、下から６段目ぐらい、男性の基礎年金額の推計値を加味
した平均年金額が16年３月末で、65歳以上の方の分で、特別支給の分は支給開始年齢の
引上げにより、年金額、２階だけの方と１階まである方と入りまじっていますので、65
歳以上本来支給分という１、２階という形で受けられている方についての平均年金額を
見ていただくと、20万2,514円で、これは対前年度比（△1.5％）、これはマイナス物価
スライドの影響がかなりあります。
　９ページが女性ですが、女性についても、65歳以上本来支給分の基礎年金額の推計値
を加算した平均年金月額というところを見ていただきますと、16年３月末で11万6,314
円で、対前年比（△1.4％）、こういう数字になっています。
　おめくりいただき、10ページですが、老齢年金の受給権者（老齢相当）の年齢構成で
すが、男性の場合、平均年齢が70.3歳、女性が71.1歳で、平均寿命の長い女性が受給者
の平均年齢も若干上になっているということで、これは過去から見てまいりますと、お
おむね年当たり0.1ないし0.2歳上昇していっている状況にあるところです。
　老齢年金ですが、55～60歳のところにも２万7,000人ということで数字入ってござい
ますが、こちらは厚生年金の受給者の中には旧共済年金からそのまま受給権を引き継い
だ方がおられまして、そういう方は減額退職年金を受けておられると。そちらがこちら
の統計に入ってまいりまして、あと船員、坑内員期間が15年以上あるような方で、支給
開始年齢がまだ60になっていない方も入っているということで、こちらに数字が入って
いるという状況でございます。
　続きまして、11ページ、被保険者の状況ですが、被保険者数、平成16年３月末3,212
万1,000人で、15年３月に比べ２万3,000人の減、率にして（△0.1％）。厚生年金の被
保険者については基本的に減少傾向が続いてきていたわけですが、（△0.1％）という
ことで、15年度末のところでほぼ下げどまったかなという数字でございまして、16年度
以降については、これは足元まで見ますと、対前年同月比プラスが続いているというこ
とで、今、既に反転上昇になっていっている。これは景気の動向を反映していることか
と思いますが、そういう姿になっているという状況です。
　標準報酬の平均を見ていただきますと、男女計で31万3,893円、対前年比（△0.2％）
ですが、男女別に見ていただくと、男子は（△0.1％）、女子は（0.0％）横ばいで、こ
の男女を加重平均すると（△0.2％）になる。これはどういうことかと申しますと、女
性の割合、男性に比べ賃金の低い女性の割合が増えていることにより、男女ほぼ横ばい
なのに男女計の賃金は若干下がっているということで、これはその上の欄、被保険者数
のところの増加率を見ていただくと、男性の場合（△0.5％）、女性は（0.8％）、こち
らの関係でこういう数字になるということです。
　その下の欄、標準報酬月額の総額と標準賞与の総額ということで、これは総報酬制の
導入に対応し、15年度から欄として追加した部分ですが、標準報酬月額の総額を見てい
ただきますと、121兆9,199億円で、月例賃金のベースで見ても、対前年度（△1.2％）
で、被保険者、これは年度末ですと△0.1％ですが、これは年度間の報酬累計ですので、
年度平均ベースでの被保険者の減が影響してくる。その下の欄に被保険者数の年度間平
均とございますが、これが△0.8％となっておりますので、これがかなり影響して月例
賃金ベースでも1.2％、標準報酬月額総額は対前年度より減少している。標準賞与総額
は15年度から初めて入り、これが23兆9,526億円、こういう数字になっているところで
す。
　次の12ページは、被保険者の分布で、男女計ですが、男女別に見ていただいた方がそ
れぞれ特徴ございますので、もう１ページおめくりいただきまして13ページ、これが厚
生年金の男性の被保険者の加入期間別年齢階級別の分布で、一番右側の欄、加入期間合
計のところで、年齢分布という形で見ていただきますと割合が出ておりまして、こうい
うような数字になっているところですが、前の年とこれを比べた特徴で申し上げます
と、30代のところが割合でいっても実数でいっても若干増加している。20代のところは
逆に少し減少しているというような傾向がございます。これは当年度だけの数字で、こ
の場で数字で直接見られないのですが、20代が若干減少、30代が若干増加という傾向が
ございます。
　次の女性ですが、女性の年齢分布については、そもそも比較的若いところに山があ
り、50代のところがもう一回小さい山があるという形は変わってないわけですが、女性
についても、20代が前年に比べて若干減少して30代が増加するという男性と同じ傾向が
出ているところです。これはそもそもの基礎となる年齢、団塊ジュニア世代が30歳前後
ぐらいをピークにして、そういう人口構成の動きに沿った要素もあろうかと考えている
ところです。
　15ページですが、こちらは標準報酬の分布ということで、男女別に掲げさせていただ
いていますが、男性、一般男子（１種）の方ですが、標準報酬の平均、一番下の欄、35
万8,875円、こういう数字になっているところです。男性の場合は、62万円という上限
に割合で9.33％、１割弱ぐらいの方が張りついているということでございまして、この
方々が平均を押し上げるという要素もございますので、この分布を見ていただきます
と、分布で一番高くなっておるところは30万円のところ、6.45％ありますが、平均値は
それよりも５万円強高いところにあると、こういう分布になっています。
　女性の場合は、上限の62万円の方は1.38％ということでして、女性の標準報酬の平均
が22万4,394円ということですが、この分布を見ていただきますと、その分布の一番高
いところはちょうど22万円のところで9.17％、平均とピークの位置がほぼ一致している
ような分布という姿になっています。
　次おめくりいただきまして、積立金の運用状況、16ページですが、まず、時価ベース
の資産構成ですが、預託金が87兆2,165億円で、全体に占める割合が62.6％、市場運用
分が31兆8,244億円で同じく構成割合22.8％。財投債が20兆2,741億円で構成割合14.6％
となっております。
　預託金は年々償還されまして、それが市場運用と財投債に回っていくことでして、１
年前の平成14年度末においては、その預託金が約105兆円だったものが87兆2,000億円と
減っている。一方で、市場運用は約14兆円だったものが約32兆円と増えている。財投債
も17兆円から20兆円に若干増えていると、こういう状況にあります。
  年度末の積立金は、基本的に承継資産の損益を含む場合、こちらの数字で年金財政は
見ているところですが、これが135兆9,151億円、運用利回りについても承継資産の損益
を含む場合の4.91％という数字を１ページの総括表には掲げさせていただいたところで
す。
　それから、特記事項のところで市場運用分の運用資産の構成割合が書いてございます
が、こちらについては市場運用は年金資金運用基金において厚生年金の分と国民年金の
分と、さらにいわゆる承継資産の分と併せて一体で運用を行っておりますので、その全
体としての運用資産約48兆円の資産構成で、国内債券が約52％、国内株式が25％ぐら
い、外国債券８％、外国株式12％、短期資産２％、このような資産構成割合になってい
ます。
　続いて17ページですが、財政再計算における将来見通しとの比較というところに移ら
せていただきます。平成15年度の収支状況の比較ですが、まず財政再計算と比較するこ
とのためには、実績、これは一番上の欄にある実績は、特別会計の決算の実績というこ
とで、厚生年金基金の代行部分が入っていない姿ということですが、これを再計算の結
果と比べますには、まず厚生年金基金の代行分を加えたらどうなるのかという形で実績
推計をつくる必要がある。さらに将来見通しと比較するためには基金の分を足すという
だけではなくて、基礎年金の交付金の分、これは特別会計の決算では収入に基礎年金交
付金が入っておりまして、一方で支出には給付費、これは厚生年金として支出する給付
費が全部入っておりますので、この中には基礎年金の勘定から受けている基礎年金交付
金でそのまま払われる、いわゆるみなし基礎年金の給付もそのままこちらに入っており
ますので、財政再計算の方は実質的な支出を見るという観点から、収入には基礎年金交
付金を計上せず、支出の方では、給付費から基礎年金の交付金は除いたいわゆる独自給
付をこちらで表示してございますので、そのベースを合わせるために実績推計というこ
とで、実績とベースをそろえることをやる必要があるわけでございまして、それを行っ
たのがこの上の欄の中段でして、保険料に関して申し上げますと、特別会計が収入した
保険料が19.2兆円だったわけですが、下に詳しい数字は全部特記事項のところに書いて
ございますが、免除保険料収入が0.9兆円ございましたので、基金代行分も加えてとい
うことですと、それを加えることになって20.2兆円が将来見通しとベースをそろえた実
績値になります。
　あと、その他のところですが、こちらについては、特別会計では代行返上の分、約3.5
兆円が入っていたわけですが、厚生年金基金の代行分と両方合わせて財政を考える際に
は、これはまさに内部勘定での移動ですので、これは除いてみないと、将来見通しと比
較できないということで代行返上の分を除く。
　あと、旧共済組合から受給者を引き取りましたときに、いわゆる３階部分の給付も厚
生年金が払って、その分の費用負担はすべて旧共済の事業主からそのまま入れていただ
くと。これは特別会計の決算ではそれはそれぞれ収入と支出として入ってくるわけです
が、財政再計算ではそこの部分はそもそも厚生年金の財政には全く影響を与えないとい
うことで、将来見通しの方には入っておりませんので、そこの部分を除くという調整が
要りますので、そういうような調整を行い、その他の部分は4.2兆、こういう姿になる。
　支出の方の給付費ですが、こちらも20.8兆円とありますが、これに基金代行分、政府
負担金の分を加え、1.2兆円を足すことを行いまして、一方で基礎年金の交付金の分は
実績ではカウントされているわけですが、将来見通しの方は実質的な支出を見るという
意味で、これを除いたものになりますので、基礎年金の交付金1.4兆円を引く。さらに
いわゆる３階分の給付費を引くということを行いますと、基金代行分を足した分で増え
るのですが、基礎年金の交付金と３階部分を引くことによって、逆に引かれる数の方が
大きくなりますので、実績推計の数字は20.3兆円という特別会計の給付費の実績よりも
小さい数字が出ているということでございまして、下の特記事項にどういうものを除い
て、どういうものを入れたか記載してございます。
　このようなことを行い、実績推計という形で将来見通しと比較できる形にしているわ
けですが、これを比べてみますと、保険料収入が実績推計が20.2兆円であったものに対
し、将来見通しは24.7兆円とかなり大きくなっている。この差の主な要因としては、被
保険者数が見通しより７％程度減少していること。賃金上昇率が累積で１割ぐらい低下
しているという経済状況を反映してかなりこの辺の差が出ている状況にあるところで
す。
　それから、給付費で見ていただきますと、実績推計20.3兆円に対し、将来見通しは
21.8兆円ですが、こちらもデフレ状況のもとで年金改定率が見通しよりも低かったこと
が影響しています。
　次におめくりいただき18ページですが、被保険者数の見通しの比較でして、平成15年
度末の実績が3,212万1,000人ですが、将来見通し、平成11年再計算では3,500万人と見
込んでいたということで、これは近年の景気の影響による被保険者数の減少によってこ
れだけ差が出てしまっているということです。
　受給者で見ますと、通老相当が見込みでは630万人と見込んでいたのが、15年度末で
708万6,000人で若干多くなっている。これは老齢相当と通老相当の間は被保険者期間
が少し短くなると通老相当の方にいってしまうことでそういう影響があったのではない
かと考えているところです。
　次の19ページ、財政指標の評価ですが、まず年金扶養比率ですが、決算結果（実績）
で見ていただきますと、年度末の老齢年金受給権者数と年度末の被保険者数の比率、い
わば何人で何人を支えるかという指標ですが、再計算の方は実際上の給付を伴う受給者
数で見ているということで、括弧書きの受給者ベースの方と比較するのがよろしいかと
思うところですが、平成15年度、（3.19）という数字になっていて、それに対して下の
欄、平成11年の財政再計算の15年度の数字を見ていただきますと、3.4で、再計算の見
込みよりも年金扶養比率少し厳しくなっているということで、これは被保険者の実績が
見通しよりも少なかったことが原因となっているところです。
　この中段に年金扶養比率を補完する指標ということで、年金種別費用率、これが今年
度の報告から新しくつけ加えさせていただいたところですが、年金扶養比率は老齢年金
の受給権者だけに着目した指標ですので、これを障害や遺族がどのぐらいの費用の比重
を占めているのかというものを見るためにこちらに数字を入れさせていただいていると
ころです。
　２枚おめくりいただき、21ページ、総合費用率ですが、こちらを見ていただきます
と、まず決算結果（実績）のところで２欄に分かれており、下の欄、「＊」がついてい
るところがありますが、これは厚生年金基金の代行部分を補正したもので、支出のとこ
ろに厚生年金基金の代行部分の支出を加えることを行いまして計算した総合費用率です
が、こちらが再計算の結果と比べるのに適当なものであろうということで、15年度で見
ますと、18.1％という数字になっています。11年財政再計算における15年度の見込みは
15.7％だったということで、被保険者数が見込みより少なかったことがかなり影響しま
して、総合費用率は見込みよりも大分高くなっているという状況にあります。
　２枚おめくりいただき、23ページですが、これが独自給付費用率で、保険料で見るべ
き実質的な支出の中で、いわゆる２階部分、こちらが賦課方式の保険料率という見方で
何％かということで、こちらも「＊」がついておる厚生年金基金の代行部分を補正した
ものという数字を見ていただくのが適切なわけですが、総報酬ベースの数字になります
が、13.4が実績でして、一方、再計算におきます推計値は、15年度11.5だったというこ
とで、やはり被保険者数の減少等により再計算よりは厳しい状況になっていることが言
えようかと思います。
　また、おめくりいただき、25ページ、収支比率ですが、こちらについて、決算結果
（実績）ですが、これも「＊」のついた基金代行を補正したベース。これは時価ベース
で数字は整理してございますが、こちらを見ていただくと収支比率が97.1で、これは保
険料収入＋運用収入に対して保険料で見るべき実質的な支出、この(1)－(5)というもの
がどれぐらいの割合を占めているかということで、これは数値が低い方が財政的に余裕
があるということなわけですが、15年度のところの「＊」についたところで見ていただ
いて、97.1で、時価ベースで見てこういう姿になっているわけですが、再計算では15年
度91.6と見ていたので、再計算よりは少し厳しい状態になっているということです。
　さらにおめくりいただき、27ページを見ていただきますと、積立比率ということで、
前年度末の積立金が保険料で見るべき実質的な支出に対して何年分を持っているか。国
庫負担で見る分を除いた実質的な支出。それに対して積立金を何年分持っているかとい
う数字ですが、15年度のところ、こちらも時価ベースですが、6.6年分になっていると
ころです。
　それに対して11年の財政再計算結果、これは15年度は6.5年分という見込みになって
いまして、こちらについては財政再計算の見通しよりも0.1だけですが、ちょっとよく
なっている。これはデフレ基調の中で、現に持っている積立金の重みが再計算の見通し
よりも少し重くなっていることを表していると言えようかと思います。
　お時間とってしまいまして恐縮でございますが、御説明以上とさせていただきます。

○堀部会長
　どうもありがとうございました。
　それでは、ただいまの御報告に対して質疑等がありましたら、どうぞ。

○都村部会長代理
　総報酬制が導入されたことで、その効果なのですけれども、被保険者数が減少してい
ることとデフレ傾向で、相殺されていますね。その総報酬制導入の効果というのはどの
くらいでしょうか。先ほどの11ページの総報酬ベースの標準報酬総額に保険料率を掛け
た額がそれだけ保険料が増えたということでしょうか。

○山崎数理課長
　総報酬制が導入されますときに、基本的にはこれは保険料の増収対策ではなくて、財
政中立を目指すのだということで、それまでは月々の標準報酬に17.35％という保険料
がかかっておりましたものを、月々の標準報酬に対しては13.58％と保険料率を下げて
おります。そういう意味では、標準報酬から収入する保険料は減っていて、一方で新た
に賞与に対して、従来は１％の特別保険料率となっていたものを同じ13.58％を掛ける
ということで、考え方としては、保険料率を17.35％から13.58％にすることにより、保
険料収入がほぼとんとんになるような形にという考え方に沿って仕組まれたものです
が、ただ、仕組まれた後、不景気が続きまして、ボーナスの支給が今大分縮小している
ということで、15年度については、その影響があらわれまして、保険料収入が前年より
減少しているということで、もともとの考え方としては、総報酬制を導入することによ
って増収を目指すということではなくて、被保険者間の公平な負担をいただくために導
入するという考え方だったわけでございます。

○都村部会長代理
　大企業と中小企業とか、ボーナスの支給状況の違う分布によって違ってきますと、そ
れを想定した上で何％下げるというのを設定されたわけですか。

○山崎数理課長
　トータル収入では基本的にとんとんになるようにということで想定して決めたわけで
すが、ただ、ボーナスの方は、割と毎年景気の状況によって変動いたしますので、ある
程度、過去の平均のようなもので見て設定したものと、実際導入された15年での結果が
必ずしもぴったり一致いたしませんので、そこのずれによって、むしろ若干保険料収入
は総報酬制の導入の影響によって減少しているという状況に、15年度についてはあるわ
けでございます。
　おっしゃいましたように、ボーナス割合の多い企業については、ある意味でボーナス
保険料の導入によって負担増になるし、ボーナスの割合が低いようなところについて
は、むしろ負担減になると、そういうボーナス支給割合の多寡によりまして、企業、そ
こに働いておられる方々の間では総報酬制導入によって保険料負担が増えるところ、減
るところがそれぞれあるというのは、先ほどのお話のとおりでございます。

○都村部会長代理
　厚年の被保険者数が3,212万人いますね。この中にはパートタイム労働者は全く入っ
ていない、それともパートタイム労働者でも正社員と同じような位置づけで厚年に適用
されている人もいるわけですか。

○山崎数理課長
　パートタイムの方でも正規のというか、その事業所に勤務されています標準的な労働
者の方の４分の３以上働いておられる方であれば、それは適用するということになって
おりまして、実際にパートであっても、厚生年金を適用されておられる方はかなりの数
おられると承知しております。

○都村部会長代理
　それはどのくらいいらっしゃるかというのはわからないのでしょうか。

○山崎数理課長
　そこははっきりとは。

○都村部会長代理
　ありがとうございました。

○堀部会長
　都村委員の最初の質問に関連して、質問します。標準報酬ベースの保険料率から総報
酬ベースの保険料率13.58にする際の基礎となった数字は1.3倍ですが、この資料の11ペ
ージから計算すれば、実際はいくらになるのですか。

○山崎数理課長
　1.2倍というような数字になっております。

○堀部会長
　これは短期的に景気が悪かったため、ボーナスが減ったからなのでしょうか。

○山崎数理課長
　ボーナスというのはかなり企業業績を反映して変わるものですので、そういう影響が
大きいかと考えております。

○堀部会長
　都村委員も前に年金数理部会で発言されたのですけれども、150万円という上限があ
るために、例えばボーナスを年１回にすれば保険料の負担は下がります。そういうこと
がどれだけあるかわかるのでしょうか。なかなか難しいと思うのですが。
　それから、もう一つは、この場で聞くのではなくて、財政再計算の報告のときに聞く
べきことかもわかりませんけれども、先ほどの1.20を前提に財政再計算を行ったと理解
してよろしいのでしょうか。

○山崎数理課長
　平成16年の財政再計算については、現実のボーナスの割合というもの、15年度の結果
はまだ出ていなかったのですが、平成14年度のときのボーナスの状況、これは特別保険
料を取っておりますので、そちらの方からある程度わかりますので、実勢に基づきまし
て16年の再計算を行っておりますので、近年の不況に伴うボーナスの減少、そちらが反
映された形で16年の財政再計算を行っております。

○都村部会長代理
　厚年と共済では実際のボーナス割合が違うと思います。また、共済も３種類によっ
て。それはみんな1.3倍として保険料率を設定しているのですか。共済も。それともも
っと多く設定しているのでしょうか。例えば私学共済などは1.3倍より多いですよね、
多分平均的には。

○堀部会長
　共済年金については、次回に聴取しますので、そのとき、お聞きいただきたい。た
だ、前回の財政再計算では全部1.3でやっていましたね。

○山崎数理課長
　私どもは1.3でございますし、共済さんもそう……そこは私からお答えするのは。

○堀部会長
　よろしいですか。

○都村部会長代理
　はい。

○堀部会長
　ほかはいかがでしょうか。

○近藤委員
　総報酬の考え方を導入する際の前提として、年間月例給与合計の３０％を賞与として
います。これが予想以上に低くなっているのは、経済情勢も影響していると思います
が、一部に逆選択があるように見えます。この動向を充分追いかけていただき、必要に
応じ手当てをすることも考えられます。

○堀部会長
　もう少しくわしくお願いします。

○近藤委員
　月例標準報酬の頭打ちが６２万円、賞与が確か１５０万円で頭打ちであるので、ある
水準を超えると、年俸制の導入により賞与をゼロにすることで保険料の負担を軽減する
ことが可能になり、当初見込みと異なることも考えられ、今後の動向に留意していきた
い。

○堀部会長
　ほかはいかがでしょうか。私から質問ですが、16ページに資産構成と運用利回りが書
いてあるのですが、預託金とか市場運用とか、こういう個別の利回りはわかるのでしょ
うか。

○山崎数理課長
　今、申し上げますと、預託金が2.41％、市場運用分が12.43％、財投債が0.83％とな
っております。

○堀部会長
　どれがよかったか歴然としていますね。この様式をつくるのは数理部会の役割ですけ
れども、何かこういうデータがあった方がいいような感じしますね。どうですか、首席
年金数理官。

○田村首席年金数理官
　厚生年金はかなりシンプルなので出しやすいかと思いますが、共済になると、どこま
で出していただけるかというのは考えなければいけないなと思います。検討させていた
だきます。

○堀部会長
　検討事項ということにしたいと思います。

○都村部会長代理
　できれば、時系列も。

○堀部会長
　今、都村委員から運用利回りも時系列に見れるようにというお話があったのですが、
これはさかのぼってという意味ですか。

○都村部会長代理
　そうですね。

○田村首席年金数理官
　運用利回り、トータルの運用利回りですか、それとも資産ごとですか。

○都村部会長代理
　資産ごとですね。

○田村首席年金数理官
　資産ごとは、今、部会長のご指摘のとおりで、これまでは聞いていませんので、ちょ
っとそこは検討させてください。

○堀部会長
　いかがでしょうか。よろしいですか。

○近藤委員
　２５，２６ページの収支比率で、１５年実績が97．1、１６年財政再計算では平成１５
年が111．3となっている。大きく離れているのは、安全率を見込んでいるのか、何が影
響しているのか教えてください。

○山崎数理課長
　これは何が影響するかといいますと、運用収入のところがかなり影響しておりまし
て、財政再計算で将来見込みますときには、その年々のかなり波のある運用収益をもち
ろん見込むことできませんので、市場運用分につきましても、長期間平均がどのぐらい
かということで見込みますので、年々で比べますと、これを時価ベースで見ますと、12
％のような高い運用収益があった年は当然運用収入がよくなって、実績のところでは収
支比率かなりよく出るので、11年の再計算は、たまたまもともと高く見ていたものと結
果がうまく合っているので、非常に数字が合って見えるのですけど、そういう意味で
は、時価ベースで年々のかなり振れのある運用収益を入れたものでの実績と長期の財政
を見る財政再計算の足元のところを比べるというのはなかなか限界があるのかなという
ふうに感じているところでございます。

○堀部会長
　いかがでしょう、よろしいですか。

○近藤委員
　はい。

○堀部会長
　ほかはいかがでしょうか。

○田村委員
　これは、可能性みたいな話なんですけれども、１ページの収支の状況を見ています
と、保険料収入がほとんど変わらないのですね。結局今お話のあったように、収支比率
を計算すると、これに影響を及ぼすのは運用収入なのですね。運用収入が増えるとプラ
スになったり減るとマイナスになったりする大変不安定な状況になっているのです。こ
の前の、11年の再計算のときに保険料を上げる予定だったのが凍結されて据え置かれた
という事情があります。もし、これがそうでなくて、予定どおり引上げが行われていれ
ば、こんなような状態にならず、もう少し安定していたのではないかという感じがする
のですけれども、それについてはどういうふうにお考えになりますか。

○山崎数理課長
　もちろん前回というか、前々回というか、平成12年の改正時に保険料率が上がってい
れば、単年度収支が赤になって、積立金を取り崩してというような事態に立ち至らない
で済んだのではないかというのはそのとおりかとは思いますが、ただ、当時の経済情勢
も勘案した上での国会での審議を経ての結果でございますので、私どもとしては、それ
は与件として、こういう形で財政の状況を分析させていただくことかなと思っておりま
す。

○田村委員
　これが後まで響いてきます。今度の再計算でも、先ほど近藤さんからお話があったよ
うに、初期の５年ぐらいは収支比率が100を超えていますね。この影響がずっと尾を引
いているのではないかという感じがするのですけれども。

○堀部会長
　前回改正では保険料率を2.3％引き上げる予定でしたが、５年間全く引き上げられま
せんでした。引上げがなかった状態から、今回スタートするということですね。また、
前回国庫負担率が２分の１に上がっていれば、こういうふうに積立金を取り崩す必要は
なかったということですね。これは前回の改正がどうだったかという評価にかかわるこ
とですけど、国としては、そういう前回改正を基礎に今回改正をやらざるを得なかっ
た。それはわかります。
　田村委員、いかがでしょうか。

○田村委員
　いいです。

○堀部会長
　よろしいでしょうか。それでは、次に国民年金の財政状況についてお願いします。

○山崎数理課長
　それでは、引き続きまして、お手元の資料２、「平成15年度財政状況－国民年金（基
礎年金）－」、こちらに沿いまして御説明申し上げます。
　おめくりいただき、収支状況の総括表のところですが、これはまず基礎年金勘定、こ
ちらの収支状況です。平成15年度は、収入総額が16兆7,460億円、対前年度（4.9％）の
伸びとなっておりまして、収入の内訳を見ていただきますと、拠出金等収入、これは基
礎年金拠出金に特別国庫負担、免除ですとか20歳前の障害の割増の国庫負担分ですが、
両者合わせて15兆3,652億円。こちらが基礎年金勘定としての本来の収入です。そのほ
かにその他で、１兆3,729億円という収入がございますが、これはその前の欄、14年度
のところの収支残、これがそのままこちらにその他ということで入っていまして、これ
はもともと昭和60年に基礎年金制度か創設されたときに、かつて国民年金に任意加入さ
れておられた奥さん分の積立金の帰属ということが、基礎年金勘定のところに置くとい
う形になって、そちらからの運用収入が積もっていったものがこちらに入っていまし
て、基本的に収入としては、拠出金等収入の15兆3,000億円が恒常的な基礎年金勘定と
しての収入でございます。
　それに対して支出総額が15兆2,174億円となっておりまして、こちらの方は4.2％の伸
びになっています。
　収支残出ておりますが、こちらはまた16年度に繰り越されることになるわけです。
  拠出金算定対象者数が下から３番目の欄にございますが、こちらが5,796万5,000人と
いうことで、14年度に比べ17万7,000人（△0.3％）となっているところです。
　この基礎年金の拠出金算定対象者で必要な費用を割り返した拠出金単価、これは拠出
金単価は国庫負担分込みの数字ですが、これが２万2,239円。
　そのうち国庫負担相当分を除いた保険料相当額、これが一番下の欄で、１万4,826円
ということで、対前年比526円（3.7％）の増。
　この拠出金単価と保険料相当額は確定値と申しまして、基礎年金勘定の収支そのもの
は概算でお金をやりとりしまして、２年たって結果が出たところで２年前のものを精算
するという形でお金は動いているのですが、こちらの拠出金単価と保険料相当額は実績
が全部確定したところで、15年度は本来どういう数字であったかということを算定して
出したもので、こちらの詳しい積算に当たるものが次の２ページですが、基礎年金の制
度別　給付状況及び負担状況。これは給付状況のところも負担状況のところも（平成15
年度確定値）と書いてございますが、これは下の（注１）にございますように、15年度
の実績が確定したところで15年度はそもそもこういう負担関係になるべきものだという
ことで、いわゆる精算の基準となる値でございまして、それに対しまして、先ほど１ペ
ージのところの数字は当年度の概算値と前々年の精算額の合計という形で、現実に会計
間で動いたお金を表示しているというので、ぴったり合わない数字なわけでございます
が、こちらの確定値で見ていただきますと、平成15年度の基礎年金の給付費、これ（本
来分）と書いてございますのは、社会保険庁から本当に基礎年金という名前で給付され
たお金の総額ということでございますが、これが11兆697億円ということでございまし
て、それに対しまして、旧法分の基礎年金相当給付費、これはいわゆるみなし基礎年金
と呼ばれているものでございまして、旧法の厚生年金ですとか、共済組合、国民年金で
ございますが、60年改正以前の旧法で老齢年金として裁定された給付のうち基礎年金に
相当するとみなされる部分と、具体的には昭和36年４月以降の被保険者期間にかかる国
民年金給付相当の部分でございます。こちらついては、各制度がそのまま受給者に対し
ては給付を払うのですが、費用負担の面では基礎年金とみなすということで、各制度に
交付金が交付される、こういう仕組みになっているわけでございまして、こちらが４兆
8,862億円、これは毎年減少していく性格のものと、新たに旧法の受給者は発生いたし
ませんということで、各制度はここにあるような数字で交付金を受けている。
　これを両方足しました約16兆円、一番右側の欄ですが、こちらが基礎年金の給付費の
総額ということでございまして、これを負担状況のところを見ていただきますと、下の
欄、全く同じ数字15兆9,559億円が入っておりまして、これを分担すると。
　分担いたしますときに、まず最初にこの負担のところの合計欄の右から２番目、特別
国庫負担のところ、こちらの方は、これは免除分の国庫負担や20歳前で発生した障害基
礎年金の上乗せ分の国庫負担という部分、これを先に差し引きまして、基礎年金の拠出
金として頭割りする部分というものを合計引く特別国庫負担で、一番左の欄、基礎年金
拠出金、こちらを算出してくるということを行うわけでございまして、これは頭割りと
いうことでございまして、その下に拠出金算定対象者数を分解したものがございます
が、１号被保険者については国民年金の保険料を納付している方の頭数とお考えいただ
ければよろしいかと思いますが、あと厚生年金その他共済組合については、２号は御案
内のように、20～59歳までと。その加入が基礎年金の給付に結びつくような方を頭数を
拾ってきているということでございまして、３号についてはそもそも20～59歳でござい
ますので、それは被扶養者の方でございますので、扶養しておられる方がどの被用者保
険に入っているかということによって、そこの制度の費用負担ということで計算がされ
ると。
　国民年金に関しては、免除の方、保険料が未納の方は、免除の方は国庫負担分の給付
が出るわけでございますが、保険料から支出される給付には結びつかない方はこの頭割
りから外すということで、こういう数字になっているということでございまして、これ
は拠出金算定対象者、一番右側に5,796万5,000人とありますが、これに対する占める割
合を大体見ますと、国民年金1,184万5,000人の１号の拠出金算定対象者の方はおおよそ
２割と、厚生年金が２号と３号を足しましておおよそ７割。あと共済組合３つを大体足
しますと約１割ということで、１号の方が約２割、厚年の方で約７割、共済組合の方で
約１割という形で頭割りしていくということで、この比率は過去10年ぐらいほとんど変
わってないというような状況にあるところでございます。
　次に３ページですが、これは国民年金勘定の収支状況ということで、ここの部分は、
15年度ですと、１万3,300円の定額の保険料を払っておられる１号被保険者の方々の年
金の財政を経理する国民年金勘定、こちらの収支の状況の実績でございまして、15年度
の収入総額が５兆7,677億円ということでございまして、それに対して支出総額が５兆
8,177億円ということで、差し引き500億円の赤字、これは簿価ベースということになっ
ているところでございます。
　個別に見てまいりますと、保険料収入、これが１兆9,627億円ということで、前年に
比べて669億円の増となっているところですが、ただ、こちらは実際のところ、平成14
年度から国民年金、１号の方の保険料の納付の仕方が、それまでは市町村を通じて、い
わゆる印紙納付という形になっておりましたのが、事務を国が行うことになりまして、
納付書を使った現金納付になったということで、保険料の収入の会計年度の区分がひと
月分変わっているというような事情がございまして、実際のところ、15年度は丸１年分
の保険料収入ですが、14年度は一部そういう形で会計区分の変更の関係がございますの
で、実質的には保険料収入はほぼ横ばいだというのが現実の姿ということなわけです。
　国庫負担の方は１兆4,963億円で2.7％の増となっております。運用収入の方は、いわ
ゆる預託金の運用収入ということで、特別会計の方に入りますのは1,523億円ですが、
時価ベースでは運用が好調だったことで4,482億円になっておりまして、下の収支残の
ところも、特別会計としては△500億円ですが、市場運用分等の評価損益を勘案した時
価ベースで見ますと、2,459億円の黒というような姿になる。積立金の運用利回りのと
ころも、4.78％という姿になっています。
　おめくりいただきまして、４ページは概略を図にしただけですので省略させていただ
きまして、５ページですが、こちらは国民年金の給付状況ですが、新法の基礎年金と旧
法の国民年金を合計したものということで、被用者年金のみなし基礎年金、これは先ほ
ど御説明申し上げました費用負担の上では基礎年金として入っている旧法の年金という
ことですが、ここの受給権者年金総額は統計を個々にとるのは難しゅうございますの
で、含まれていないと、そういう数字ということでございますが、受給権者で見ていた
だきますと、合計で2,254万4,000人、前年と比べて4.１％の増。年金総額に関しては13
兆9,433億円で、前年に比べて4.4％の増という数字になっているところです。
　次に６ページですが、老齢年金の平均年金月額ということで申し上げますと、男女合
計で見まして、16年３月末、５万2,261円ということで、対前年比（0.1％）の増となっ
ておりまして、男女別に見ますと、男性が５万8,189円で（△0.4％）、女性で見ます
と、４万7,988円で（0.4％）となっておりまして、国民年金の場合、厚生年金と同じよ
うに、0.9％のマイナス物価スライドというものがございまして、それでそもそも減少
する部分があるわけですが、一方で、国民年金の場合、繰り上げ減額がございますの
で、どれぐらいの方が繰り上げ減額を選ぶかによりましても年金額は変動してまいると
いうことで、最近繰り上げ減額を選ばれる方が若干減っているというような要素もござ
いまして、マイナス物価スライドのもとでも平均年金額は、本当に微妙ではございます
が増加していることも起こり得ると考えているところです。
　７ページは省略させていただきまして、８ページですが、老齢年金の受給権者の年齢
構成でございまして、構成割合はここにあるとおりですが、平均年齢、男子で72歳、女
子で74歳ということでございまして、こちらも前年と比べまして、男子で0.2歳、女子
で0.1歳上がっているということで、受給者の方も少しずつではありますが、高齢化が
進んできているという状況があるところでございます。
　次の９ページ、被保険者状況でございますが、第１号の被保険者は、16年３月末で
2,240万人、前年に比べ３万2,000人（0.1％）の増ということで、ほぼ、伸びの勢いも
とまってきたという感じにあるところです。３号被保険者については1,109万4,000人
で、対前年比（△1.3％）ということで、こちらは減少傾向が続いています。
　平均年齢に関しては、第１号被保険者を見ていただきますと、39.6歳で過去から見て
ほぼ横ばいの状態。第３号被保険者は42.7歳、これもあまり変わらない状況になってい
ます。
　次に10ページ、第１号被保険者の年齢別、加入期間別の分布ですが、男女別で見てい
ただきますが、次の11ページが男性ですが、一番右の欄の年齢構成見ていただきます
と、20～25歳のところ、22.3％ということで、若いところに相当に大きい数入っておら
れると。今、20歳になったところで手帳送るなどして必ず適用いたしておりますので、
ということで、かなり若いところに多くの方がおられる。年齢分布については、昨年度
とそれほど大きな変わりはないという状況でございます。
　次が12ページ、女性でございますが、こちらについても、20～25歳のところが18.7％
でかなり多くなっている年齢構成になっています。
　13ページ第３号被保険者の年齢分布ということで、これは男女合計ですので、おめく
りいただいて14ページを見ていただきますと、これは男性ですので、もともと割と数の
少ない方々で、合計で約８万人ということですが、従来かなり年齢の高いところにおら
れたのが、最近は比較的年齢の低いところにも何千人かおられるというような状況とい
うことで、その最近の傾向が続いているところです。
　15ページが女性、約1,100万人の第３号被保険者の方の年齢分布でございまして、こ
れは30代以降のところ、割と均等に50代前半のあたりまで分布していると、こういうよ
うな分布になっています。
　続きまして16ページ、積立金の運用状況ですが、国民年金については預託金が５兆
8,520億円、市場運用分が２兆2,572億円、財投債が１兆8,505億円となっていまして、
それぞれ比率が58.8％、22.7％、18.6％となっています。
　下の資産の構成割合、これは先ほど厚生年金のところで御説明しましたように、厚生
年金、国民年金、承継資産を一体で運用しておりますので、そちらと全く同じ数字が入
ってございます。
　続きまして、17ページにまいりますが、財政再計算における将来見通しとの比較でご
ざいますが、こちらについても、厚生年金のように、基金の代行というようなことはな
いのですが、基礎年金の交付金の部分を調整する必要があると。あと、積立金のところ
につきましても、財政再計算では国庫負担の繰り延べられている分を加える形になりま
すので、そちらを補正するということを行いまして、実績推計というものをつくりまし
て、これで将来見通しと比較することをしております。この実績推計の欄と11年再計算
の将来見通しの欄を比較していただきますと、保険料収入は実績推計では2.0兆円です
が、将来見通しは1.9兆円で若干将来見通しより多くなっていると。
　一方で、差のところを見ていただくと、納付率は見通しで82.9％だったものが、15年
度63.4％ということでかなり下がっている。
　一方で、被保険者数ですが、これは見通しが1,790万人で見ておりましたのが、実績
は2,240万人ということで、およそ1,790万人を分母としますと、２割５分増しぐらいと
いうことでかなり実績の方が大きい。見込みよりもかなり被保険者は増えているのです
が、一方で納付率は低下しているという両方の要素が相殺する部分でございまして、結
果的に保険料収入の方が近い数字になっているというような要素があります。
　あとはそれほど大きな差はございませんで、実績推計のところでの収支残、これは運
用利回りがよかったということで2,000億円ほどということで、将来見通しより若干大
きい数字が出ているところでございます。
　次に18ページですが、基礎年金の被保険者数及び受給者数（みなし基礎年金受給者数
を含む）の比較でございまして、こちらの実績を見ていただきますと、被保険者数が、
基礎年金全体、１・２・３号を全体足したもので見ていただきますと、15年度末6,974
万人と見ておりましたのが、将来見通し、平成11年再計算では6,940万人という見通し
になっていたということで、これは１・２・３号合わせますと、かなり人口で規定され
ますので、それほど大きくはずれてこないわけです。
　あと受給者数については、将来見通しの方で約2,500万人と見ておりまして、15年度
末2,480万人ということでございます。ただ、障害年金、遺族年金について、実績の方
は受給権者ということで全額支給停止の方を含んでおりますが、財政再計算は受給者と
いうことで全額支給停止を含んでいないということで、この辺、数字が差が出ておりま
して、特に遺族年金ですと、母と子で受給する場合は、母親が受け取っている場合は子
は全額停止ですので、その辺、受給権者ベースの実績統計と将来見通しの数字に差が出
る要素かと考えているところでございます。
　次の欄ですが、これは恐縮ですが、数字が埋まらないところで、新規裁定のところの
実績だけ数字埋まってございますが、この実績も実のところ、いわゆる特別支給の老齢
厚生年金、65歳で失権するものですが、そちらから移行して65で基礎年金を受けるとい
う方はこの数字には入ってきておりませんので、そういう意味ではやや部分的な数字が
実績としても入っているということで、その他、みなし基礎年金も込めた失権者数でご
ざいますとか、その辺のところにつきましては、実績もなかなか推計が難しいところ
で、財政再計算の推計数値も比較するものも存在しない状況です。
　19ページ、財政指標の比較ということで、まず年金扶養比率ですが、決算の結果、実
績としては、こちらも括弧書きの中の受給者数のベースということで見ていただきます
と、15年度3.07という数字になるわけでございまして、11年再計算では15年度について
3.0と見込んでいたところでございまして、割と数字は近い数字になっている状況かと
存じます。
　めくっていただき、21ページに行っていただきますと、こちらは国民年金勘定の収支
比率ということで、国民年金としては、いわゆる第１号被保険者の方々から定額の保険
料を集めて、それで第１号被保険者の方の年金の財政を行う。これは国民年金勘定で、
これが１つの財政単位になっているわけですが、その収支比率ということで申します
と、平成15年のところ、簿価ベースで申しますと、97.6ですが、運用が好調だったこと
がございまして、時価ベースですと、85.7ということでかなりいい数字になりまして、
財政再計算は、15年度96.8という見込みで、簿価ベースの方とはほぼ合っているという
ことでございますが、時価ベースは運用が好調だった分、かなり実績はよくなっている
と、こういう状況にあるところです。
　23ページ、積立比率ですが、こちらはついては、「＊」がついています前年度末積立
金を財政再計算ベースに補正した、つまり国庫負担の繰り延べ分を加えたということで
すが、このベースで再計算と比較するということで見ていただきますと、これも時価ベ
ースですが、15年度については5.5、11年の再計算結果の15年度の数字、これは5.5とい
うことです。
　ただ、こちらの積立比率は前年度末積立金と比較ということですので、前年度末積立
金には当年度の運用実績は入っておりませんので、15年度の運用が好調だった分は積立
比率に１年おくれで反映いたしますので、こちらには反映していないということで、再
計算の結果と同じ数値になっている、こういう状況です。
　御説明、以上でございます。

○堀部会長
　どうもありがとうございました。
　それでは、ただいまの御報告に対して質問等がございますれば、どうぞ。

○近藤委員
　また、収支の問題です。これは運用実績によって確かに左右されるでしょうし、我
々、運用実績によって年金制度を一喜一憂するという悪いくせができちゃったのですけ
れども、この収支について、運用収入を予定利息というか、保険料に見合う収入だけに
して、積立部分については、将来的に１年分とか何とか言っていますけれども、そうい
う形で除いてやってみないと、ほかのいろんな比率についていうと、大体思うとおりと
いうか、大体誤差の範囲内でおさまっているんですけれども、運用が入ることによって
ばらばらになってしまう。年金制度の安定性を議論する場合に、積立金からの収入とい
うのは別枠で、これはこれでちゃんと分析しなければならないのですけれども、時価ベ
ースでやっても運用の部分でまた左右されるし、そこを除いた形で本当にどうなるのか
を見なければいけないと思います。
　というのは、これをこのままで見ると、収支比率がいいじゃないかと。ということ
は、保険料を取り過ぎているのではないかという変な話が出てきかねないわけで、これ
は私の推論ですけど、それでは困るので、それはきちんと除いてみたら結構厳しい数字
になっているはずですよね。我々数理部会での議論なのかもしれないけど、もうちょっ
とこの辺、運用によって我々制度が議論されて、議論がそのたびに右へ左へ行っている
のでは本当の議論にならないので、ちょっと考えられればなという気がします。

○堀部会長
　今の問題は重要な問題であると思います。これは数理部会とかかわる問題でもあるか
もわかりませんし、あるいは制度に絡む問題かもわかりません。最初に数理課長の御意
見をいただいて、その後で委員の皆さんにも少し御意見いただけたらと思うのですが、
数理課長、何か御意見ありますか。

○山崎数理課長
　どのような指標で見れば財政状況がよく見えるのか、なかなか難しいところございま
して、私ども財政計算を行います立場からは、財政計算はかなり長期なものですので、
単年度の運用実績のよしあしによって本当に一喜一憂するということは確かに問題ある
かなということで、そういう意味では、今、運用そのものを評価するときには時価でな
ければいかんということで簿価的な考え方はかなり時代おくれと申しますか、役に立た
ないみたいな見方もあるのですが、長期の年金の財政見ます場合には簿価ベースで行っ
ているものも１つかなり参考になるのかなということも考えられるわけでございます。
　一方で、時価がかなり変動するものにつきまして、例えば企業年金の世界などでも、
そこをある程度ならすような数理的評価みたいなことを考えるとか、そういう見方もあ
りますので、時価ベースである程度変動をならしたものを見るようなことを考えるとい
うやり方と、簿価も一緒ににらむというような考え方とか、そういうものが１つ考えら
れるのかなというところでございます。

○堀部会長
　それでは、委員のどなたか、御意見ございませんでしょうか。運用利回りが相当変動
するので、なかなか実態が見えにくいということではないかと思うのですが、田村委
員。

○田村委員
　積立金を指標に組み込むと、どうしてもこのような状況になってしまうのですね。だ
から指標のあり方として積立比率みたいなもので、積立金を使うというところに問題が
あるのかもしれませんね。だから、その辺のところに工夫が必要かなという感じもしま
す。ただ、そうは言っても積立金というのは常に存在するわけですし、それが厚生年金
の場合いい例なのですが、年によってマイナスになったりプラスになったりして大変影
響が大きいということですね。何とか積立金の運用結果も財政に反映させたいというこ
とになると、積立金絡みの指標は今の積立比率みたいなものではなくて、別の指標を考
えて取り扱うというふうにした方がいいかなという感じはします。今のところ、具体的
にどんな形があるのか、ちょっと思いつかないのですけれども、そういう感じはいたし
ます。

○堀部会長
　運用利回りが悪い年は、年金財政の収支が赤字になったとして、年金が破綻するなど
と大騒ぎされる。運用利回りがいいときは何もコメントされないという、そういうこと
も何か問題だなと私は思っています。短期的に運用利回りが悪かった、よかったという
ことで判断するのではなく、年金制度というのは長期的に見る必要があると思います。
数理部会で検証する場合に、このことを判断に入れる具体的な方法があるのかなという
感じはしますけれども、山﨑委員、何か御意見ありますか。

○山﨑委員
　時価ベースは、年金制度のように長期的な財政状況を見る場合あまりなじまないのだ
ろうと思うんです。運用利回りが非常に悪いときから、よくなるとものすごくよくなっ
たように見えますが、長期的にならして考えればそれほどでもない。だから、年金制度
においては、時価ベースだけで財政状況を見るのはちょっとどうかと思います。時価ベ
ースはその時々の実態を示すものですから良いところもあり、従来の簿価ベースは時価
ベースより変動が少ないということもあります。両方見ながらやっていくのが本来では
ないかなという気がします。
　最近は簿価ベースというと、古い人だと、新しくないよと、おかしいよと、こう言わ
れますが、年金制度を考える場合は時価ベースだけでは振れが大き過ぎて、個別の財政
状況、年度別の財政状況を見るときには少し問題があると思います。
　数理部会として、本当の長期財政がうまくいっているのかどうなのかというときに
は、簿価のいいところ、時価のいいところ、両方を見ながら、何か新しい方法を考えて
いただくというのが一番いいのではないかと私は思っております。

○堀部会長
　ほかはいかがでしょうか。栗林委員。

○栗林委員
　何といいますか、一種の、何のために積立金を持っているかという基本論に戻ってし
まうような気がするんですけれども、ですから賦課方式でやっていこうということであ
れば、積立金がどういうふうに動いているかというのが、こういう検証にあまり影響す
るというのはおかしな話になるわけですね。ですからもしこういう積立金も考えてやっ
ていくのであれば、まだ時系列が短いので計算できるかよくわかりませんけれども、一
種のリスク要因みたいな形で、どのくらいな分散度を持っていて、積立金が振れるのか
というのを何か織り込んだような形で長期的にやっていく方法がうまく見つかるのかど
うか、私もあまり自信ありませんけれども、そういう方法を考えざるを得なくなると思
うんですね。
　ですから、こういう賦課方式的にやっていこうというところに積立金の影響をあまり
その時どきに判断を揺るがすような形はできるだけ避けた方がいいというような感じは
持っております。

○堀部会長
　ほかはいかがでしょうか。林委員。

○林委員
　もともと積立金というのは年金制度の安定化を図るために持っているというように教
科書に書いてあるんですね。その本来の意味が変わってきているような気がいたしま
す。それともう一つは、民間ではリスク管理のことで非常にリスク発生しているわけで
ございます。一応、例えばロスカットとかという形で、あるいは減損会計ということで
一定の株価と現状に対しましては損を出し切ってしまうというようなリスク管理をやっ
ているわけですね。その辺がこの積立金でどう考えていくかということは、安定的な運
用ということでは必要ではないかなと。運用しっぱなしのような気も若干する次第でご
ざいます。以上でございます。

○堀部会長
　ほかはよろしいでしょうか。ちょっと思いつきなのですけれども、利回りは変動する
ので、年金の財政状況を見るには、５年移動平均とか10年移動平均とかで判断するかど
うか。私は専門家ではありませんが、そういった形で財政状況を見るのも１つの方法か
なとは思います。けれども、これもまたいろいろ問題が出てくるのではないかと思いま
す。それから、現在の調査表が非常に複雑でわかりにくいので、こういう問題のため、
さらにそういうもものをつくるとなると、調査表がさらに複雑になる、こういう問題も
あります。これは数理部会で考えることでもあると思いますけれども、何か年金の担当
部局として、年金財政がぶれることについて、長期的に見るとこうですよと、何かそう
いう指標を考えてもいいのではないか、そういう感じもいたします。
　少し我々も考える必要があると思うのですが、事務局にも少し考えてもらうことにし
たいと思いますが、どうですか、首席年金数理官。

○田村首席年金数理官
　企業年金でもそうですが、なかなか難しいテーマだと思いますが、ちょっと考えるお
時間をいただきたいと思います。

○堀部会長
　この問題を離れて、国民年金の財政状況についてはいかがでしょうか。

○田村委員
　１ページの表、これは基礎年金の勘定ですから、もともと賦課方式の前提でつくられ
ていますね。だから項目がないのは当然ですけれども、先ほどちょっとお話があったよ
うに、昔の任意加入の被保険者の積立金があるわけですね。それはこの中に含まれてい
ると思うのですけれども、それは収支残の中にあるわけですね。

○山崎数理課長
　60年改正のときのいわゆる妻の積立金の分、これはその元本、7,000億円余だったと
思うのですが、そちらの方はこの収支残ではなくて、一応積立金としてあって、それの
運用収益の方がこちらの方に累積しているということで、昭和60年以降随分期間たって
おりますので、基本的に運用収益がたまってきた分と、ただ、ここにある額は必ずしも
全額がそれということではなくて、先ほど御説明しましたように、基礎年金は概算、精
算の仕組みで動いておりますので、そういう意味では、年々の収支残は基本は賦課とい
いましてもぴったり一致しませんので、それによる差の分も一緒に混ざっているわけで
ございますけれども、１兆なにがしという数字の大部分は、いわゆる妻の積立金分の運
用益がたまったもので、これは基本的には基礎年金の拠出金の軽減に使うというような
形では整理されているのでございますが、具体的にどういう形で各制度の負担を軽減す
るのかというところについて、まだ仕組みが決まっておりませんので、こういう形で置
かれているということでございます。

○田村委員
　このほかに従来の任意加入者の積立金があるということですね。それにしてはちょっ
と収支残が大きいかなという感じがしたものですから、この中に含まれているのかなと
いう感じがしたのですが、そうではないのですね。

○山崎数理課長
　60年以降随分期間がたっておりまして、昔はもう少し運用利回り高い時期もございま
したので。

○田村委員
　わかりました。それから、もう一点、教えてほしいというか、こういう資料があった
方がいいなと思いましたのは、繰り上げ減額と繰り下げ増額の条件はこれではわからな
いのですけれども、実績とこれまでの経過みたいなものがわかるようなものがあるでし
ょうか。特に繰り上げ減額率の改定がありましたね。それでどのくらい、そういう選択
率が変わったかというようなことがちょっと知りたいなと思ったのですけど、そういう
ようなデータはあるのでしょうか。

○山崎数理課長
　それは繰り上げ減額受給者の、例えば支給開始年齢別の人数とか、その形の統計をと
いうお尋ねということでございましょうか。

○田村委員
　ある程度、時系列的な動きもわかるといいと思うんですけれども。

○山崎数理課長
　社会保険庁の方で統計はとっておりますので、それは準備できると思います。

○堀部会長
　これは年金数理部会の調査表に載せるかどうかという問題にも絡むと思うのですが、
そういう趣旨でしょうか。

○田村委員
　それは検討していただいていいと思うのですけれども、もし、そういうことができる
のだったら、あまり表が増えるのも問題がありますけれども。

○堀部会長
　要するに、繰り上げした年齢別にという意味ですか。

○田村委員
　はい。

○堀部会長
　検討課題ということで、事務局に少し検討していただければと思います。我々も考え
ますけれども。

○都村部会長代理
　近年、第１号被保険者の適用状況がかなり変動しています。全額免除者数は減少傾向
にあって、学生の納付特例者は増加傾向にあるし、経済の低迷を反映して２号・３号か
らの移行者もかなり変動しています。17ページの保険料収入の実績と将来見通しはたま
たま乖離が少ないのですけれども、保険料の将来見通しを推計する場合に、そういう免
除者とか納付特例者とか、１号への２号や３号からの移行者数とか未納者数とか、そう
いうのも推計して組み入れているのでしょうか。

○山崎数理課長
　一応、財政再計算の基礎率をつくります際に、そもそも１号・２号・３号というの
は、一番外枠として将来人口推計に基づきまして、各年齢別、性別の将来の人口がござ
いまして、それに対して労働力率がどう変わっていって、その中の被用者の比率がどう
なるかということを見込みまして、１号被保険者と申しますと、人口の中から、そうい
う２号の方、３号の方にならない方がすべて１号になるということですので、その法律
の規定に則った形で将来の見込みをさせていただいているということでございまして、
さらに１号の中で、免除の割合がどのぐらいというのは、半額免除等々の制度の変更も
勘案いたしまして、どういうふうになるかという見込みを立てまして、そういう基礎率
に基づいて将来の見込みをさせていただいているところでございます。

○堀部会長
　これは、平成16年の財政再計算の説明のときにまた説明していただけるわけですね。
　ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
　それでは、厚生年金と国民年金の財政状況についての報告の聴取を終了します。報告
者の方々はお忙しい中、ありがとうございました。
　それでは、本日予定しました厚生年金及び国民年金の報告の聴取を終了します。な
お、国共済、地共済、私学共済については、次回、７月５日に報告を受けることにした
いと思います。
　それではこれまでにさせていただきたいと思います。
　次回の日程等について、事務局によろしくお願いします。

○田村首席年金数理官
　先ほど部会長からお話ございましたけれども、次回の第16回年金数理部会につきまし
ては、７月５日、来週の火曜日、午後２時から霞が関ビルの33階の東海大学校友会館で
予定しておりますので、よろしくお願いします。
　以上でございます。

○堀部会長
　本日はこれで終了します。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　－了－

（照会先）
　厚生労働省年金局総務課首席年金数理官室
　（代）03-5253-1111（内線3382）