05/06/30 第7回医師の需給に関する検討会議事録              第7回医師の需給に関する検討会                        日時 平成17年6月30日(木)                           15:00〜                        場所 厚生労働省共用第8会議室 ○矢崎座長  ただいまから、第7回医師の需給に関する検討会を開催します。お暑いなか、またご 多忙のなか、お集まりいただきまして大変ありがとうございました。事務局から本日の 委員の出欠状況をよろしくお願いします。 ○医事課長  本日は池田委員、泉委員から、ご都合によりご欠席との連絡をいただいています。 ○矢崎座長  早速、議事に入ります。事務局から資料の説明をお願いします。 ○医事課長  事務局から本日準備した資料について説明します。議事次第、座席表、メンバー表、 資料1は中間報告書の(案)で、前回ご議論いただいてご指摘いただいた部分を修正し たものを準備しました。参考資料1は、この中でIT化などいろいろ書いていますの で、それらに関して具体的に取り組みがされている事例です。資料は以上です。足りな い資料がありましたら事務局までお知らせください。 ○矢崎座長  ありがとうございました。本日は前回に引き続き中間報告について、医師需給の最終 的な解析結果というのは最終報告とし、今回は地域及び診療科における医師の偏在をど う解決したらいいかということを、この部会の中間まとめとして報告したいと思いま す。今日はその議論を引き続きお願いしたいと存じます。まとめの中で特に別紙にある 「当面の医師の確保対策」を中心に議論を進めていきたいと思いますので、よろしくお 願いします。前回の議論でご意見をいただき、中間報告のまとめ案を事務局と一緒に手 を入れて直しましたので、それについて事務局から説明をお願いします。 ○中村補佐  事務局から、本日お配りしている資料1について説明します。前回の検討会で事務局 が準備した報告書(案)について、委員の方々からいろいろなご意見を頂戴しました。 その意見を反映させたデバイス版を事務局で準備しました。変わったところを中心に簡 単に説明します。  1頁の題名の下ですが、ここは以前は医師の不足感解消のための緊急提言となってい ましたけれども、ご意見を頂戴しましたので、特定の地域及び診療科における医師確保 対策のための緊急提言と書き直しています。2頁のいちばん上ですが、医師数は増加し ていて具体的に何人という数字を入れました。2頁の下で(A)の供給側の変化のとこ ろですが、かなりの修正を入れていますけれども、順番を入れ替えたということと、中 の文言の整理をしています。3頁は文言の整理が主です。  4頁のいちばん上に削除とあって中に何も書かれていない欄がありますが、これはフ ォーマットを整える関係で改行を幾つか入れていて削除したためにこのようになってし まいました。申し訳ありません。その下の部分は文言の整理です。4頁の下に医師養成 の在り方という欄があります。前回の検討会のときに、お気づきの点があればご意見を 頂戴したいと事務局からお願いしたところご意見をいただきましたので、5頁のいちば ん上にありますように、取り入れています。次のパラグラフは国民の理解の促進という ことで1つ項を立てました。5頁の最後ですが、定量的な分析や、そのデータを得るた めの基盤整備という1文を入れています。以上が報告書(案)の本文です。  6頁は当面の医師確保対策という別紙ですが、前回は項目だけを提示しました。今回 は項目とともに、それぞれの項目を簡単に説明した1文を入れています。7頁の(3)に ITの活用、推進とあります。参考資料1の1頁に沖縄県の例を出しています。参考資 料には地域内の協力体制の例や夜間の電話相談の例など、我々のほうで入手できた事例 について簡単にまとめています。本文に付いている別紙と参考資料の例をご覧いただき ながら、またご意見を頂戴できればと思っています。事務局からは以上です。 ○矢崎座長  ありがとうございました。別紙の具体的な対策以外の前段階の本文で、前回、いろい ろタイトルからご注文を受け、書き加えたり変更した部分を赤字で示しています。これ についていかがですか。供給側の変化で女性医師の問題について水田先生からご注文を 受けました。あといくつかご意見をいただいて書き加えましたが、特に医師の養成のと ころで必修化された医師臨床研修修了後の後期臨床研修についても、触れておいたほう がいいのではないかということで加えました。  先ほど読ませていただいて非常に細かい点ですが、4頁の医師養成の在り方で、国民 が「医師が不足している」と感じる原因の一つに、国民の専門医受診志向が進みと言う と、あまりにも捉え方が広いので、後で書いてあるように、初期段階からの医師受診志 向が進みと少し説明を入れたほうがいいかもしれません。 ○古橋委員  4頁の中ほどの医療関連職種等との連携です。ここの内容を見ると、「協力してチー ム医療を行うことにより、医師が本来の業務に専念でき」という書きぶりですけれど も、これを医師の立場で読めばこれでよいでしょうが、たくさんの医療を巡る職種から しますとこの書き方では、協力してチームで行っていくのだということがあまり伝わら なくて、あくまで医師がトップにあって、その他雑用的なことを周辺職種に委ねるとい うようなことが背景にあるように読めないとも限りません。ここのところは、本来医療 というものはチームで行っていくものなのであって、その中でお互いに役割を担い、医 師が全部を引き受け、全部を支配する状況を整理分担する、そういう意図になったほう がいいように思います。  私の経験で県立のがんセンターにおりました時、患者さんが痛みを訴えられました。 夜、就寝前に訴えたのですが、主治医はこうおっしゃったのです。僕にその訴えをしな いのだから、患者さんの痛みは、僕に言わない限り受け入れないと言われたのです。こ れはNHKスペシャルで報道された番組のひとコマでもありました。その医師は、自分 の患者さんの全部を引き受けなければならないという、主治医の責任意識からおっしゃ ったことだろうとは受け止めますが、全部引き受け支配していかなければならないとい うような意識の方も、少なからずおられる気がします。  チーム医療は、医師が本来の業務に専念できるためにやることなのかというと、少し 違う気がします。医療をチームでやっていくことによって、それぞれが担うものをしっ かり引き受けていくというあたりの書き方にしてほしいと思います。 ○矢崎座長  そういう意味で書き加えたつもりなのですが、そういうふうな理解があると思います ので、この部分を抜いていいですかね。医師の業務の効率化ということで、少し気を使 い過ぎて加えたために、かえって誤解を招いてしまったようで申し訳ありません。 ○本田委員  4頁の医師養成の在り方の部分で、前回、どうしたらいいかを私が言わなかったこと もありますが、4行目の「しかしながら、たとえ国民の医療ニーズに応えるためとはい え」と強調して否定しているように取れるのです。その後ろに書いてあることはもっと もだと思いますが、国民も専門医志向で、自分はどの専門にかかればいいのかわからな くて余計混乱している現状もあります。専門医にかからないといけない、怖いという感 じがあるのは、この医師養成の在り方で、広く診ることのできる医師がいないことにつ ながると思うのです。後半は私も全くそのとおりではないかと感じているのですが、こ この「たとえ」ところがちょっと引っかかるので、「しかし、国民の医療ニーズに応え るためとはいっても」くらいの感じで、あまり強調しないでほしいと思ったのです。現 状では、国民の医療ニーズが、初期段階から専門医にかからないといけないという一種 の不安を抱かせていることからみたいな、そういう感じのことにしていただけないかと 思いました。 ○小山田委員  そしたら、そのところの1行を抜けばいいのです。「しかしながら」からの1行を抜 けばいい。 ○本田委員  そうですね。そのまま「初期段階から」というところにいけばいい。 ○小山田委員  「また」とか言って。 ○矢崎座長  そうですね、ここを抜いて、ただ、本田委員が言われた、なぜ国民が初期から専門医 志向になっているのか。その不安が理由のある不安なのか、間違った情報の不安なの か、あるいは今の医療の状況がそういうところにあるのか。そういうところも今後は検 討していかないといけないと思います。 ○本田委員  おそらくいろいろなことが、ない交ぜになっていると思います。 ○矢崎座長  ただ、この中間まとめはそこまで深く議論できないので、この1行を抜いて、そうい う課題についてはもう少し深く検討することで、よろしくお願いします。 ○江上委員  2頁の(A)の女性医師のところで、前回、ご意見を申し上げたことに対応して修正 を加えていただいていますが、労働基準法の女子保護規定を改正したとき、私は中央労 働基準審議委員の公益委員をしていましたので、その改正趣旨から見ると、これはもち ろん法律文案ではないですから、そこまで文言に神経質にならなくてもいいのかもしれ ませんけれども、A)の「女性医師は10%以上の伸びを示しており、ペースを速めてい る」の後、「女性医師を支える社会制度が十分整備されていないこともあり」という記 述が若干気になるのです。女性医師を支える社会制度ではないので、「育児休業等の法 的整備は進行しているが、現実には、実態的には女性医師は男性医師に比べ出産・育児 による職業上の一時的な中断や縮減が多くなっている」としたほうが、矛盾がないと思 います。 ○矢崎座長  ちゃんと制度的にはあるけれども。 ○江上委員  それが女性医師のためだけのものということではない。 ○矢崎座長  全体的にあるのですが、それが十分活用されていないということですね。 ○江上委員  そうですね。育児休業は男女に適用される前提ですから。 ○吉村委員  同じく4頁の医師養成の在り方のところですが、「一人の患者に多数の専門分野の医 師が診療にあたる」というのか、あるいは患者ごとに細分化した専門医があたるのかと 思ったのです。医師が専門分野以外の診療を厭い、一人の患者さんに多数の専門医師が 診療にあたるのか。あるいは、それぞれの疾病ごとに細分化した専門医があたるのか。 同じことかと思いますけれども、そんなに1人にたくさんの専門医が最初からあたるこ とはないと思います。つまり疾病ごとに細分化した人があたるということではないかと 思います。その後の文章が、「初期段階から、細分化した専門医師があたるのは」と書 いてあります。細かいことですけど、つながりが整合していない。 ○小山田委員  そうですね、同じことを繰り返し言っていますね。 ○矢崎座長  それを含めて、高齢化社会ですから複数の疾患を持っている。しかし、一人の患者さ んに糖尿病の人とか高血圧のドクターとか、たくさんドクターがかかわるという意味で こうなっていると思います。 ○吉村委員  わかりました。どちらでもよろしいかと思います。 ○山本委員  いまの疾病ごとにということではなくて、例えば、ある患者さんが眼科なら眼科、整 形なら整形で入院してきたときに、その患者さんの治療の対象となる疾患に対して全身 麻酔をどうかけるかを考えたときには、単に疾病ごとではなくて病態も含めて、あるい は検査の解析等も含めていろいろな専門家がかかわるという意味では、むしろこういう 表現のほうがわかりやすいのかなと思ったのですが、いかがですか。 ○吉村委員  両方の意味があります。つまり、これは私の専門ではないから診ませんよというのだ と、また別の専門家があたらなければいけない。たくさんの疾患を抱えている方にはた くさんの専門医があたる。両方の意味が入っているのかなと思いますので、よろしいか と思います。 ○矢崎座長  また一方では、高度先進医療で手術ひとつにしても、昔は1人のドクターが手術しま したけれども、いまは何人もドクターがかかわらなければいけないということもあっ て、多くの医師が一人の患者さんの医療に従事しなければならないということで、これ でよろしいでしょう、2つの意味があります。そのほか、いかがでしょうか。 ○江上委員  もう1点、4頁の女性医師の就業のマルチトラック化で、趣旨はこれで十分反映して いただいていると思いますが、文言の記述のスタンスでちょっと気になるところがあり ます。4行目で「男性医師が女性医師に置換されていくことによる」とあります。この 記述は、こういうことではあるのですが、厚生労働省という行政のスタンスから言う と、男女共同参画、つまり「医師という職業分野における男女共同参画が進行していく ことによる」という記述にするというのはいかがでしょうか。医師の職業分野における 男女共同参画が進むことによる医師の需給への影響を検証する。 ○矢崎座長  わかりやすく、女性が多くなって女性がいろいろな理由で医療の現場から少し退かな ければならないというときに。 ○江上委員  基本的にそうなのですが、男性が女性に置き換えられるという表現は適切ではない。 ○矢崎座長  この言葉ですね。でも男女共同参画という言葉では、それこそ置換されないかもしれ ないのですけどね。 ○江上委員  ちょっと踏み込み過ぎかもしれない。表現ぶりは考えていただきたい。 ○矢崎座長  事務局で少し練って、確かにこれ、何か機械的に人形を取り換えるみたいな感じはま ずいですからね。ちょっと言葉が不的確ですね。そのほか、いかがですか。  実は当面の医師確保対策がこの報告のポイントですので、そちらのほうに移らせてい ただきます。医師確保対策で医師の地域偏在の解消と、最後の頁にある診療科偏在の解 消と2つ大きな課題があります。最初に医師の地域格差解消について議論を進めたいと 思います。前回は項目だけでしたが、今回はご意見をいただいた中で具体的な方策につ いて少し書き加えたわけですけれども、これ以外に何かご提言があれば加えさせていた だきますし、何かご注文があれば文章を変えたいと思います。まず医師の地域偏在の解 消についていかがですか。1つは都道府県別の差があるということと、同一都道府県内 でも都市部と周辺部で格差があるということです。ここで議論している地域医療は、離 島を含めたへき地医療というよりは、いま現実問題は地域における医師の偏在がメイン ですので、それを中心にご議論いただければ大変ありがたいと思います。 ○土屋委員  各項目でAの地方勤務への動機付けとか、Bの阻害要因の軽減・除去とかあります が、これに入ってもよろしいのですか。 ○矢崎座長  どうぞ。 ○土屋委員  Aの地方勤務への動機付けという項目の中で、キャリア形成ということが謳われてい ますけれども、(1)は地方勤務ということをはっきりと謳ってあります。(2)の地域内で のキャリアパス形成を可能にする医師育成システムの構築ですが、地域内という言葉が どういう範囲を示すのか不明確と言いますか、限られた地域内だけでローテートするこ とは通常のことであって、キャリア形成になるとは考えられないのです。もう少し範囲 とか距離的なものを明確にしていただきたい。  こういう言い方をして誤解を招いてはいけませんが、本当はあまり地方には行きたく ないけれども、行って勤務したら意外にそれがいい勉強になったという結果も含めて、 広い範囲内で(1)で地方と言っているわけですから、一種の育成システムを、そういう 範囲で捉えなければいけないのではないかと思いますが、どうでしょうか。 ○矢崎座長  おっしゃるとおりで、キャリアパス形成と言った場合には、相当母集団がないとやっ ていけないので、そんな狭い地域の中ではとても考えられない。ですから、もっと広い 領域で水田先生であれば九州地方とか。オールジャパンと言うと広過ぎますし適切な言 葉で何かありますか。地域と言うと確かに狭いですね。地方ということでいいですか ね。「地方におけるキャリアパス形成を可能にする医師育成システムの構築」と。 ○土屋委員  そうですね。だから地方におけるキャリアパスとしての医師育成システムという中 で、そこをローテートするということは、将来にかけてのキャリアパス形成につながる だろうと思います。私は東京から長崎のほうへ行っても別にいいのではないかと思いま す。もっと言いますと、そのキャリアがどの程度であるということを評価するにあたっ ては、その範囲というか距離というか、それも評価の対象になるのだろうと思います。 同じような地域で、どこへ行っても先輩、後輩、知合いのいるような所で回っていたの では、お互いに行き来し合っているだけの話で、当面の医師確保対策というにはそぐわ ないような気がします。 ○小山田委員  ここに書かれている対策ですが、1の地域偏在の解消、2の診療科偏在の解消は総論 であって対策にはなりません。こんなことは何年も前から私どもが本当に血と汗を流し て叫んでいることなのです。いま叫んでいることは現実に起こっている、昨日も起こり ました。一昨日もあります。そうしたところに1つでもいいから、誰が、どこで、どう いう方法で解決するかということを、是非、委員の先生方、教えてください。私、明日 から働きますよ。こういうことは本当に何十回も書いて講演しています。立派な答案で す。これに付け加えることは何もないし議論することはないのです。  なぜできないか、誰がやるのか、そういったことについて私は、しっかり処方箋を出 しています。具体的になるとすべて逃げるのです、責任を回避する。最後は国だと。具 体的に1つの答案でいいのです。産婦人科医2人いなくなった。そこでは誰がどうする べきか、国がどう関与するのか、指示はどうするのか、ドクターはどうするのかという ことを是非教えていただきたいし、それは例示でも何でも結構です。  私はあえて都会と言いますけれども、同じ県であってもその県の中心都市のことを、 いま頭に置いているのではありません。民間の医療機関もない、そこで地域医療を守っ ている所から引き抜かれている、あるいは開業していくその現実にどう対応するか。こ れで見るとすぐできそうですけど、これはできないのです。そこに問題提起があるの で、書いても書かなくてもいいですけど、せっかくですから私に教えていただけません か。 ○矢崎座長  私としては小山田先生に教えていただきたいところがあります。地域における取り組 みの事例として参考資料でいくつか例を提示しましたが、基本的な解決策というのは、 何回も私が申し上げましたように、こういう問題というのは一刀両断で解決できるとい う課題ではないわけです。ですから、そういう道筋を付けるというのがこの検討会の使 命であり、英知を絞って出すということではないかと私は考えて、この検討会をやって いるわけです。 ○土屋委員  小山田先生のお気持ももっともなのですが、少なくとも過去3回の検討会では、こう いう具体的な方策というか、あるいは現況を見通したような話というのはなかったわけ です。しかも今回のこの検討会では現況の喫緊の課題をいかに解決するかということ を、とりあえず中間報告で出してみようと。最終的には将来推計もしてみようというこ とで、座長さんはご苦労なさっていると思います。  しかし、いま、ここに列挙されていることは、ちょっと難しいかなということと、や ろうと思ったらすぐにでもできることを挙げてみようということです。現実にいま大学 病院ですら、このキャリア形成ということを考えて具体的に実行している所もあるくら いです。そういうものを後押しする。あるいは後に続いてくれる所を皆でそういう雰囲 気をつくって、何らかのインセンティブを働かせるなりしていく。今までこんなことは 考えてみたこともなかったと思います。  性急になかなか解決策はありません。私どももいろいろ言っていたのですが、言うだ けでなく何か具体的な方策を示さないといけないということで、具体的方策を2、3提 言させていただきました。検討会でもいろいろない知恵を絞って、具体的に可能である ことだけを挙げてみようということですので、これはこれとして小山田委員のお話でい くと前進できませんので、お気持は十分わかりますけど、私はこの議論をどんどん進め ていただかないといけないと思います。 ○矢崎座長  そのほか、いかがですか。これは病院の立場と大学の立場があると思います。山本委 員、いかがですか。前に山本委員からご提言をいただきましたが、その大部分をこの中 に組み込んだつもりです。いろいろご提案いただきましてありがとうございました。 ○山本委員  私は、これはかなり具体的に表現されている部分もあると思います。ただ、喫緊の本 当に明日からどうするのかと、小山田委員がおっしゃるところは非常によくわかりま す。それをいまこの場で解決することがどうかという点では、むしろここに書かれてい るものを、できるものから整理して、これは明日からやりましょう、明後日からやりま しょうというふうな整理をして動いていけばいいのかなと思っています。  それよりもっと喫緊の問題については、これは災害と同じ扱いをして、地域あるいは 全国的に大変だから来いよということで、当座を乗り切るよりしようがないのかなと思 っています。少なくともここに書かれたAの地方勤務の動機付けとかは、かなり具体的 に書かれているということで、基本的にこれを更にプランとして実行できるものに仕上 げていけばいいと考えています。  それに関連して1つ質問ですが、2枚目のCの医師の分布への関与で、(3)の自治医 大卒業生の地域医療への貢献策の強化というところです。修学資金返還義務に係る義務 年限を延長するはわかりますが、行政に勤務することによる返還義務免除とはどういう 意味なのか、よくわからないのです。自治医大を卒業した医師は行政機関に入りなさい という意味なのか、自治体病院へ行かなければいけないという意味なのか。 ○吉新委員  私は自治医大の第1期生ですが、自治医大ができた当時の環境ですと、へき地の臨床 医が足りないということもあったのですが、大都市では行政のドクターが足りない。で すから大阪とか愛知県、神奈川県などでは、どちらかというと行政の医師確保が非常に 困難だったものですから、行政に行くことが義務であったのですが、この文章を読むと そうでもないようです。今日、私は全く初めて見たのですけれども、(2)は前回と同じ です。(3)に関しては地域医療への貢献策の強化と書いてありますが、前回は見直しと いう言葉でした。ですから急に変わって、どうしたのかなと思うのです。こういう意見 は今までなかったと思います。 ○小山田委員  私はこの前、是非、この件は削除してほしいと言ったのです。 ○吉新委員  前回の資料ですと、これはなかったと思います。 ○小山田委員  自治医大生の義務年限をどうこうということがあったので、そうではない。現実に卒 業生が2,000人も出ている。その中の70%がその地域にいるのではないか。30%がいわ ゆるへき地にいるのですから、それ以上これらの方々に義務感を押し付けてはいけない し、またいま働いている人の意欲を削ぐ。さらにまた義務年限ですかということで、そ うした意味に取られないように是非お願いしたいと、いまもそういう気持です。 ○吉新委員  前回、これを私は全く見ていないのです。何か急に今回の資料で入ったのではないか と思います。 ○矢崎座長  これは、どういう経緯でしたか。 ○中村補佐  本件につきましては前回は項目だけ出していましたので中身は書いていませんでし た。この部分について(2)と(3)は関係があるのですが、いま、私どもが承知していると ころでは、自治医大の各都道府県の定員枠は各県2名で、あと場合によっては希望に応 じ3名にしていると伺っています。その中で、いま吉新委員が言われたように、かなり 各都道府県において医師の逼迫度が違うと聞いていますので、その一律の部分を見直し たらどうかということ。  (3)については、「また」以下の部分について自治医大設立の趣旨、地域医療の貢献 ということを考えると、ここは議論のあるところなのでしょうけれども、結局、各都道 府県を見渡すとへき地のない都道府県もありますから、直接地域医療を行うことなく行 政等に勤務している方もいると聞いています。そういった意味で定員枠の見直しと併せ て、(3)の観点からいくと(2)も見直せるのではないか。これについては基本的に、各都 道府県が知事会なりで集まって決める話だと聞いていますので、こんなことを書いたと いうものです。 ○矢崎座長  いまのご意見だと定員枠の見直しで、あまり議論をすることはないかもしれません。 ○吉新委員  前回の需給検討会では、自治医大は要らないとある委員が言われて、自治、防衛、産 業医大は即刻やめなさいという意見も出ましたが、今回、自治医大はもっと頑張れとい うのはちょっとうれしい気がします。義務年限の延長ですが、いま250ヵ所のへき地の 診療所に出ていて、彼らは代診も何もない。沖縄の島に出れば年に1週間、本土に出れ るかどうかです。そのぐらいへばり付いて、とにかく1人ですから休むわけにいかな い。無医村になってしまいますからね。さらに義務を延長するとなると反発どころか、 私はこの検討会の委員を辞めなければいけないと思います。とにかく義務の延長は勘弁 してほしい。  私は、同時にやっているへき地の委員会では、自治医大を西日本にもう1つ作られた らどうですかと言っているのです。現在の医師不足解消にはそのほうがいい。自治医大 が地域医療をやるのでなく、全国の医科大学が地域医療をやるようにしたほうがいい。 特に新設医大と言われる昭和47、48年から増えた大学というのは、地域医療をやるとい うことで拡大枠ができていますから、何で自治体医大だけがやらなければいけないのか という議論は内部にもあるのです。  ある意味では、イコールに全国の新設医科大学あるいは古い医科大学も含めて、い ま、どのくらい足りないかわかっているわけですから、それを完全に平均に割り振っ て、東大もこれだけやってください、慶応もやってくださいということです。それは大 学がやるのか、同窓会を含めた組織があるのか知りませんけれども、何かそんなような 組織が必要だとおもいます。 ○矢崎座長  2番目で、定員枠の見直しで自治医大の入学定員数を増やすといった場合も、医学部 は法学部や経済学部と違い、定員を簡単に動かせるものではないので、動かせる限度内 というのは自治医大でもあると思います。実習設備や教員数の問題もありますから、あ る程度そういうものを頭に入れた定員枠の見直しということになるかと思います。一方 では自治医大だけに任せないで、大学自体が地域医療をよく考えて教育してほしいとい うことですかね。 ○長谷川委員  いまのお話と少し前の話と、まとめてコメントがあります。結局、短期の緊急の解決 法と、中期と長期と3つぐらいの話が混同してあるのかなと思います。つまり長期的に 考えたら、自治医大で新しい枠を作るよりも、各大学が自治医大化すればいいわけで す。つまり各大学で地域枠を作って、そこに留まる人を作っていくという方策が、いち ばん適切だと思います。先ほど話が出たように少し踏み込んで言うと、小山田委員のフ ラストレーションの原因の1つは、地方内でもなかなか均一化できないことです。端的 に申し上げると西日本と東日本での格差みたいな問題があって、全国的な移動が期待さ れるという部分があると思います。そこれで例えばですが、現在の自治医大卒業生の方 は、テンポラリーに足らない所に行っていただくことを考えてみる。中期的にはそのよ うな対策です。  緊急の対策としては、これも小山田委員がどういう意図で言われたかわかりません が、例えば全国に医師をプールしておいて、そこから足りない所へ派遣する。国境なき 医師団というのがありますが、県境なき医師団みたいなものを日本国として持つ。そん なふうなイメージなのかなと思いながら聞いていました。 ○吉新委員  私は自治医大の1期生だったので、いままで10の都道府県で医師が不足していて働い たことがあります。確かに最初は高邁な意識で行って頑張るのですが、3つ4つ行くと 何か便利屋だなとひしひしと感じてくるのです。地域医療というのは地域との対話みた いなことがあって、数年いて初めてわかってくるということもあるのです。員数合わせ ではないんです。そんなことを言っていてもしようがありませんが。前回も言いました が、今回の人材派遣法で医師は禁止業種になっていますから、例えば(3)のところに病 院に対する医療計画上の配慮もありますけれども、いま、へき地でやっているように代 診をした場合には、その病院にはドクターがいなくなるわけです。そのいなくなったド クター分の補助金を少し手当していただくとか、へき地はいま1日換算2万8,000円で すが、その程度は出した病院の派遣元に財政支援して、別なドクターが雇えるようにす る。もしくは臨床研修病院であれば、研修医の手当の積増しをしてもらうとか、何か財 政的な派遣元の病院に対する配慮もあるといいと思います。 ○矢崎座長  行った医師もプラスになるインセンティブと、派遣元の病院もインセンティブになる ような仕組みが、地方に医師を派遣する場合の促進策になるということですね。 ○小山田委員  自治医大の件について、ちょっとだけ追加させていただくと、実は先生方が言われた ことを、私どもはこれまで知事会に対していろいろご相談申し上げ、要望してきたので す。今度、7月に知事会があるので、そこで是非取り上げてほしいと言っているのです が、雰囲気としてはかなり悲観的です。ただし、ある知事さんとある知事さんが貸し借 りで、2人の所の1人を何年か貸してくれということは可能のようです。自治医大が実 際に行政の面でやられているように、県の所を減らして、少ない所を増やすというの は、知事の意見ですけれども、作るときの知事会の申合せに反するという意見のようで す。 ○矢崎座長  土屋委員からドクターバンクのお話がありました。具体的にどう進めたらよろしいで しょうか。ドクターバンクということは書けますけれども、どういうイメージでやった らよろしいでしょうか。 ○土屋委員  現実に医師紹介派遣システムみたいなものは、いろいろな団体、機関が、実は表に出 ていないのですが、各県単位で持っているのです。例えば国保連合会、あるいはこの検 討会でも例えば自治体病院協議会、あるいは吉新委員の所でもいろいろな例がありま す。大学病院でも窓口を1つにして云々というお話もあります。私ども医師会も、申し 上げたように21の地域の医師会が既にそれを持っているのです。  ところが、これは会員福祉という意味で作ったものです。もう少し意味づけを変えれ ば、それを全国的なネットでもう少し機能化させるように、お互いのいろいろなドクタ ーバンクを持っているわけで、それにアクセスして全国的な網を掛けるということが、 よりネットワークとしての機能が活発になるのではないかと考えます。ですから私ども にやれと言ったら、日本医師会がやります。そのくらいのつもりでこれに取り組めとい うことです。  そのときに少し申し上げましたが、そうなったら当然のことですけれども、財政的な 支援を私どもがお願いしなくても、してくださるのだろうと思います。形だけでなく本 当に機能するものを置きたいというつもりで、これは皆さんにご賛同いただけるなら、 気合を入れてやりたいと、実は会内では内々に既に検討を始めています。日本医師会だ けでもそのつもりで、都道府県の医師会あるいは郡市区医師会にも、その向きの調査を するということで、おおよそ大枠が決まって緊急に始めようという状況にあります。人 様の作ったネットワークに乗るよりも、自分たちできちっとしたものを作って、私ども にアクセスしてはいかがですかと言えるものにしてみようと思っています。 ○矢崎座長  そうしますと、地域医師会のドクターバンクの更なる拡大とか、そういう言葉を入れ ほうがよろしいですかね。 ○土屋委員  そうですね。私どもだけ突出してはいけないと思って遠慮していますが、意気込みと してはそういうつもりでいます。 ○水田委員  そういうときに、どういう気持で応募されるかです。来られる方の気持をエンカレッ ジするというか、その方々たちのプライドがきちんと保てるようにする。例えば定年で 辞めたような方が応募されるときに、定年後に仕事をすることに対して、自分は悠々自 適だからと応募しなくなったときが困るので、それだけ社会に役に立つことを皆が認め るシステムにしてあげないと、応募してくる人が少ないのではないかという気が少しす るのですが、いかがですか。 ○土屋委員  おっしゃるとおりです。実は私どもの立場としてそういう話を聞きます。まだまだバ リバリに第一線で働けそうな方が特に都会には多いのです。定年になった、さあ、どう しようかという方は結構いらっしゃるのです。それで私どもは傍から見ていて、この先 生はもったいないなと思うことがあります。特に、いま定年におなりになるような先生 方は、大体プライマリーケアはできる人ばかりなのです。ですから、いまの若い人みた いに専門家かどうか知りませんけれども、地方に1人で行くのは心細いなんていう情け ない人たちではないのです。相当な経験を積んできていますし、その上で専門性を持っ ています。その先生方について誤解があってはいけないのですが、例えば老人保健施設 の管理医として、それはそれとして意味のあることなのでしょうけれども、傍から見て いてもったいない。それはもう少し後でもいいではないかなど、いろいろな意見が今ま でありました。そこで、そういうことを考えているのです。  ですから、今度調査すると先ほど申し上げましたが、そういうことも含めて細かく、 いろいろな角度から調査して、そのご要望に応えられるようにしないといけないと思い ます。どこか就職口が、いま遊んでいるからほしいとか、悠々自適が結構だという方は 私はそれはそれで結構だと思います。しかし、それが適当な働き場所が得られないか ら、外に対する言い方として悠々自適ですなどと言っているのですが、本当は医師とし て何十年も働いてきた人が、ある日突然、悠々自適なんていうことは大体うまくできな いようです。 ○小山田委員  そういったものが本当にできて、地域内の困った所での供給をされることは大歓迎で すが、ただ、私どもがいま困っており、そして考えているのは、その地域の医療を継続 して、しかも良い医療を提供するということからすると、なかなか難しいのです。い ま、私が具体的にいろいろな所で出して、国にもお願いしているのは、ある程度の技術 をもって働くことのできる人たちの将来を保証した形でのシステムでないといけないと いうことで、全国一律的なものではなく困った所から、県単位だと思うのですが、そう した所で働いてもいいという方々をプールではありませんが、そうしたシステムを作っ て、人事交流の形で、ある経験年数を持って、プライマリーケアもきちんとできる人 に、1年、2年行ってもらう。その後は保証する形を考える。これは多くの知事も市町 村も全部賛成なのです。ところが、現実になりますと、いろいろな壁があるので、その 壁をなんとか取り除きたいということなのです。  土屋委員がいま言われたような形を、どこでもいいですから作っていただいて、そう した形で継続した医療、しかも現在よりももっと進歩したといいますか、だんだん小さ くしていくのではなくて、良い医療を提供することを考えていくと同時に、そこに働く 人たちの将来をもしっかりと保証できる形でないと永続性がないので、是非そうした面 でのご協力をお願いしたいと思っております。 ○古橋委員  いまのドクターバンクのテーマに関してですが、看護職に関しては十数年前の深刻な 看護師不足の問題から法律もできまして、看護師等の人材確保に関する法律を根拠に、 中央ナースセンターが国の予算で立ち上がり、また、各都道府県看護協会を拠点にナー スセンターが出来ました。  私はドクターという職業は、ある意味で社会的な地位も高いし、多くの方がリッチで いらっしゃると思います。新しいご自分の力を生かされるという点では、まさかハロー ワークに足を運ばれるということはないとするならば、本当に医師会あたりの医師の職 能組織が、国内をカバーするネットとして都道府県の医師会を中核にした情報網を作る ことは、多分ナースセンターとは意味も中身も少し違うと思いますが、効果を上げ、医 師の中で期待もされ、望まれるのではないかと思います。  看護職の場合は、日本看護協会が中央ナースセンターを持ち、いまどんどん予算は削 減されていますが、各都道府県でも看護協会が予算削減方も一部補填しながら設置の継 続に努めています。主に潜在看護職の掘り起こしと、新たにナースを目指す人たちへの いろいろな啓蒙とか指導・支援ということで機能をしています。そういう点では大いに 期待できるのではないかという気がしています。  もう1つは全く別なことで、私はこの地方勤務への動機付けの中で、(1)に国公立の 公的病院等公益性の高い病院での地方勤務の評価ということがありました。これが実現 すると、とてもいいと思うのですが、いまは国立病院は独法化しましたし、座長が束ね ておられるわけですが、少し企業的な機能も高まってきました。都道府県などでも、ど んどん公営企業という形に移しています。その際そこで仕事をされるドクターたちに、 公務員意識をどこまで刷り込んでいけるのかということをが気がかりです。  これは自分の例で恐縮ですが、私が県立病院にいましたときに、医師以外の職員は全 部公務員研修をしっかりと段階を追って受けるのです。ところが医師だけは全く特別扱 いというか、医師に公務員研修は受け入れられないので手が付かないというわけで、公 務員としての研修は医師には全くなされておりませんでした。専ら医師であるというこ とだけが優先されて、自分が所属する病院が県立病院であっても、公務員であるという ことの教育は省かれてきたのです。これからは、そういう点では医師免許を附与され て、かつ国公立的病院で仕事をされるドクターには、やはり公務的な意識をきちんと学 習していただくというと、やや語弊があるかもしれませんが、その意識を高めることの かかわりが本当に要るのではないかと思っているのです。  赤十字の病院の医師たちが、もう文句なしに災害があれば立ち上がるというのは、き ちんと任務意識が刷り込まれているわけです。そういう点では公共性の高い病院で仕事 をされる医師に、こうした意識付けの場が用意できるのかどうか。例えば独法化した国 立病院機構は、公務員という立場でこういう教育の可能性はあるのかどうかがちょっと 疑問であると同時にやれるのかということ。公務員意識をドクターの中にしっかりと膨 らませていけるのかという辺りを質問をさせていただきたいと思います。やはり、そう である必要があるのではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。 ○矢崎座長  私も全くそう思いますが、小山田委員の自治体病院がどういう仕組みになっているの でしょうか。 ○小山田委員  私がいま言われているのだと思いますが、いま古橋委員が言われたような教育、公務 員としての意識がいちばん少ないのは、自治体病院の勤務医だと思います。このような モチベーションが持てないというのは自治体病院勤務医の人事権のほとんど大部分は、 自治体が持たないで大学にお願いしていたというところに、大きな要因があるのです。 病院長の人事も知事でもなければ市長でもない、大学の都合といいますか、大学からの 指示によって動く、その下で働く医師もそうです。ですから病院とか地方とか、地域と かいうことよりもまず大学、あるいは自分の医局のほうに目が向いているのです。それ をいかにして病院あるいは地域に目を向けさせるか。いま私共にとって最大の課題はそ うなのです。  この地域が困っているから行きなさいと言いますと、「私がこの病院に来たのは地域 のために来たのではない、大学の指令によって来たのです」と。また、大学からは「地 域にやるためにあなたの病院に派遣したのではない、すぐ引き上げさせます」と、電話 がきます。そういう体質は、大学の責任だけではなく自治体病院が医師の人事管理や教 育を今までしなかったから、このようなことになったのです。  いま困っている地域では、実は大学、あるいは大学の医局からの強制的な命令によっ て今まで確保されてきたのです。そういうことでこれは本当に辛いことなのです。  けれどもやっていかなければならないのですが、それではどうしたらいいかというこ とになりますと、先ほど申したように、ある程度の義務を課す。そのほかに労働環境と か、医師の将来への保証を少なくとも県単位で、ある人数について、そして優遇すると いう形にもっていかなければならないということで、その具体的な方法で進めているの ですが、それについても総論賛成各論反対で、なかなかできないのが現実です。 ○矢崎座長  先ほど小山田委員から「明日でもできること」と言われた中に、自治体が予算権と人 事権を持っているので、自治体病院こそが明日にでもそういうことができるのではない かと、私は思ったのです。 ○小山田委員  一言追加させてください。私は、6月中に全県市町村長会の総会、それから議長の総 会においてこのようなことを言ってまいりました。都会とはちがう民間病院の少ない、 そしてない地域で医師がどんどん減っていくときの明日からの対応です。住民の命と健 康に責任をもつのは自治体の長である知事、市長です。その人が何をすればいいのか、 もっといい方法を考え教えてくださいと。  産婦人科医が2人引き上げたとき市長、知事は「医師確保に今後とも誠心誠意努力し ます」ということしか言わないのです。では何をやっているか。大学だって事情がある から引き上げている。私が言っているのは、医師がなくなった所の村、町でなぜ首長が 周囲の自治体の長と、周囲の自治体病院、そして民間も入ったらそれは嬉しいことです が、その方々に集まってもらって、個々に抱えている患者をどうするかを決められない はずがない。そこに私も行きます。そして、今日引き上げた産婦人科医の2人の代わり に、明日からどの病院にお願いしますということがなぜできないのか。これが現実には できないのです。  それで最終的には、このことについては集約化しかないのです。これから医者を作る とか、育てるとか言っても、いま間に合わない。産婦人科学会長と小児科学会長といろ いろ話し合って、やはり集約化だということなのですが、それが先ほど言いましたよう な、実際に住民の命に責任のある首長も具体的に何もできないというか、やれない、や らないのです。彼らの意欲がないわけではない、そこに大きな壁があるからです。  それを解決をするために、いま国にお願いしているのは、産婦人科、小児科学会と私 どもが考えているものを国が全体としてこうあるべきですと、行政的な支援を是非して ほしい。いま38の都道府県に昨年から医師会も大学も入って地域医療対策協議会という のができたのです。そこに具体的に下ろして、そしてその大きな方針の下に具体的に医 師の少なくなった所には、どこに集約するか、集約される病院の条件、集約するところ の病院の条件、勤務条件というものを国策として決めてほしいということを、いま厚生 労働省、総務省にお願いしてあるのですが。是非そうしたことをご理解いただきたい。 そして、それは私は明日からでもできることだと言っているのですが、具体的にはなか なかできないのです。何度も言いますがたくさん壁があるのです。 ○矢崎座長  どうなのですかね、自治体病院で、その辺は先ほどの古橋委員からの議論で、何かそ の中で工夫できないのですかね。 ○小山田委員  まず国の方針を明らかにしてほしいからです。 ○矢崎座長  でも国で何か言ったからできるというのはおかしいですね。 ○小山田委員  ですけど、具体的にはある地域でそれをやろうとすると、まず大学からクレームがき ますね。そこに勤めているドクターが集約されてその病院に行くのであれば辞めて開業 をします。一昨日起きた例は、1つの病院で2人の産婦人科医が、大学のドクターが足 りないと言われて帰って行ったのです。ところが1人は帰りましたが、1人は都会に行 って開業です。 ○矢崎座長  ケースバイケースはありますが、何かうまく自治体病院全体が国で定めるということ ではなくて、自主的に定めていろいろな所で交渉するというのは。 ○小山田委員  この委員会に私がお願いするのは、先ほど1つの例を挙げましたが、是非そうしたこ とを進めるべきだと、国も何らかの行政的な支援をするということを出していただけれ ば、私は本当にありがたいですね。 ○矢崎座長  それは自治体病院の議論であって。 ○小山田委員  皆さんそう言うわけですが、いま困っているのは、そういう所ですよ。 ○矢崎座長  いま古橋委員から国立病院機構はどういう対応をしているかという質問があったので すが、私どもは1つの法人だからかもしれませんが、病院長の人事その他は全部私ども の人事委員会できっちり決めています。それから医師が足りないというのは、病院の中 で全部派遣しています。そういうことで極めて医師が不足している領域というのは旧国 立病院ではあるわけです。ですから、そういうときには、医師の派遣がいちばん大事で すので、できれば大学にお願いしますし、どうしても大学がご無理な場合は、我々の中 核病院から派遣しています。  自治体病院もそういう仕組みを考えられないと、国からこういうふうに定めてくれな いと動けないというのは、私は行政的なことはわかりませんが、何かうまい方法を考え られればお互いに。本論を外れますが、自治体病院は結構無駄な部分もあります。いち ばんやっていただきたいのは自治体病院なのです。だからそこをうまく小山田委員が考 えていただきたい。ここの会はもう少し地域全体のご意見でどうしたらいいかというこ とを、大学、病院、医師会も含め、いろいろ議論をしていかないといけないことなの で、いまの問題については是非自治体病院で集約化等、ネットワーク化を小山田委員の リーダーシップでとっていただきたいというのが、私どものお願いです。 ○土屋委員  話題を変えて、事務局にお伺いしたいことがあります。(4)税制面での配慮がありま すが、これはどうも全般を読みますと、医療法人に対してそう簡単に税制面の配慮なん ていうことはできない話なのです。それは十分我々は承知しているのですが、もしかこ れができるとなると、現在、検討中の認定医療法人を想定しているのではないかなと、 当然のごとく考えるわけです。ですから「医療法人に対して」という所の言い方を少し 変えていただくと、我々のそういう懸念というか心配がなくなりますので、申し上げて おきたいと思います。  次の頁の「医師の分布への関与」の所で、先ほど自治医大の話が何か尻切れトンボみ たいになっているようですが、これはこういうことだと思うのです。義務年間を延長す るというのは大変だろうと、それはわかるのです。行政に勤務することによる返還義務 免除について見直すというこれは、本来自治医大というのはそういうことではなかった はずなのです。  ところが過日、公衆衛生医師確保の検討会がありました。そのときに公衆衛生医師が 確保できないと。自治医大生を、いうならばこの仕組みを利用してと言いますか、これ に乗ってと言うか、そういう形で自治医大を卒業させておいて、それを行政というのは この際、私が知る限りでは保健所長というものを確保する方策としてこれを使っている のではないかとするならば、本来の自治医大を設立した理念とはちょっと違うわけで す。ですからこれは、行政に勤務すれば返還義務も何もない、そのままずうっといれば 済んでしまうのです。 ○吉新委員  26期生までですが、行政に行ったドクターは多分90名前後だと思います。ですから全 体の2,500名からすると、ほとんど義務も過ぎた人たちですから、義務年限にある行政 ドクターというのは30名ぐらいだと思います。県から頼まれて「おまえ、行政に来い」 と誘われてなるケースが多いのです。 ○土屋委員  でも、保健所の医師になりたくてもなれないという所もあるのですから、あれもすご い格差です。保健所の医師が確保できない、ゼロという所から、7、8人、さらに待ち があと2、3人か5人もあるということです。ですから、そんなことのためにこれは置 いたのではないので、本来の形に見直していただいたらいかがかということを言いたい のです。 ○中村補佐  多分、いま吉新委員が言われたとおりだと思うのです。何十人というのは全国に分布 しているのではなくて、ある意味で特定の地域、府県に偏っている所があるのでどうか ということがちょっと。 ○矢崎座長  3番を2番に含めればいいわけでしょう。 ○吉新委員  中身を少し見直す。もう少し上手に。 ○土屋委員  総務省マターなので、ここで提言していいのかどうか。ちょっと問題もあるのではな いかなと私は思うのです。 ○矢崎座長  我々は省庁を乗り越えて、定員枠の見直しということを3番目に入ればいいのです ね。 ○土屋委員  もちろんそうです。それは必要なことだと思います。 ○矢崎座長  それだけ逼迫しているということですね。 ○土屋委員  もう1つこれは肝心なことなのです。(4)の自衛隊病院、自衛隊医官の話です。これ は新聞でいろいろ出たりしています。ニュースソースはどうなのかということは問いま せんが、私が申し上げたのは、自衛隊医官の皆さんに地域の医療をやっていただいたら いかがか、ということです。地域の状況に応じ、自衛隊病院における診療の実施という ことです。自衛隊病院は診療を実施しているわけですから、やはりこれは自衛隊病院を オープン化して地域の診療をやるという意味なのかなという具合にここに書いてあるこ とが取られるとしたら、これは問題だと思います。そもそも私どもが非公式に聞いてい るところでは、自衛隊医官の皆さんはオープン化という気持があるということは知らな いわけではないのですが、それについて医師会としては同意はできないということは、 明確に申し上げています。地域によって例外はあると思います。こういう場で例外的な ことを論ずるつもりはありません。  したがって、先ほど山本委員が、災害にも似たことが起こって、災害と同じ扱いなの だということを言われましたが、まさしく私もそう思うのです。これは医師の需給です から、不足している地域では災害にも似た国民に対する健康危機が生じているのだと、 それを自衛隊医官の皆さんに使命感をもってやっていただけないか、自衛隊病院がその 地域でオープン化して、地域の医療をやるということを提案したわけではありません。  例外的には自衛隊病院の一部は地域医療をオープン化してやっている所もあるやに伺 っていますが、基本的にはそのためにそこに設置された病院でもありません。地域の事 情によって、地域との合意の下に、いま医療計画でも1つの医療連携体制を論じていま すが、そのために必要があればオープン化ということも出てくるとは思いますが、そう でない限りは当初、私が申し上げたように、自衛隊の医官に必要な地方に出向いてもら うということ。それはもうドクターですから、地域枠を広げてとか、どうとかこうとか いう手続は必要ない。これは国ですから命令で行っていただけるのではないか。先ほど から出ていることにいちばん即効性のあることだと考えています。 ○矢崎座長  そうですね、自衛隊病院における診療の実施というのは一般的な形なので、これは除 いたほうがいいですよね。そうすると文章は「自衛隊や地域の状況に応じ」、抜かし て、自衛隊医官の専門的ですかね、臨床研修ですかね。 ○土屋委員  自衛隊医官の地方への派遣。 ○矢崎座長  可能な医療機関への派遣を行う。 ○土屋委員  地域医療に従事することによって、それが何よりの研修になるのでしょうから。 ○矢崎座長  研修が可能な医療機関への派遣を行うというふうに直して。 ○小山田委員  座長、そういう意味ではないのではないですか。意味というのは、いま土屋委員も言 われた、私もそうですが、地域でどうしても困っている所に自衛隊があるいは防衛医大 学卒業生が、出て行ってもらいたいということなのですね。  実は防衛医大の卒業生が義務年限内にどんど辞めていっている。そして自衛隊の病院 の定数をも割っているという現状がある。これをなんとかしないと災害にも出て行けな くなるのです。その理由を聞くと、どうも自衛隊病院ですといろいろな経験ができな い。辞めたあとのこととかまた辞めないためには、経験を豊かにしたい、ついては病院 に1週間に何回か行って勉強をさせてもらうといったケースはいくつかあるのです。で すから、ここでもし自衛隊にお願いするのであれば派遣であって、彼らの教育をするよ うにということではないのではないですか。 ○矢崎座長  いや、私は医師の派遣というのは、派遣元と派遣された人が両方プラスになるもので なければ、いくら自衛隊だからといっても、この検討委員会でそうさせなさいと命令す るのは。私が非常に印象的だったことは、丁度、局長が健康局の課長をしておられたと きに「道路で交通安全をやるために、ではあの角にカーブミラーを立てろと言うのは我 々の仕事の対象ではない」という話を聞きました。これはそれと同じように、自衛隊を そこに派遣しなさいという命令をすればいいという有識者会議ではないと私は思いま す。ですから自衛隊の人たちが自衛隊の使命を負いながら行くと同時に、やはり彼らに は彼らのメリットになる。自衛隊は地域の状況に応じ派遣して、そこで広い臨床経験を 積んで、それをまた自衛隊に持ち帰れば、両方プラスですよと私は理解しています。だ から、小山田委員の国でこうしなさいと命令すればいいという意見は。 ○小山田委員  例えばその地域で自衛隊の病院あるいは診療所があります。しかし、そこに別の自治 体の診療所があって医師がいなくなりますね。その地域で患者を診てもらえないかとい うことは要請している。ところがいまはなかなか難しいのです。片方、自治体病院、東 京の病院を全部オープンにしていいかどうかということと、ちょっと違うと思うので す。 ○矢崎座長  ですからケースバイケースで、私が申し上げたのは自治体病院における診療の実施と いうと、もう一般論になってしまうので、これはやはり問題ではないか。だから「地域 の状況に応じ」で、次を消しても意味が通じるのではないかと申し上げたのです。  それと、地方勤務への動機付けの(3)と、(4)税制面での配慮。これは誤解を呼ぶよう なことになったら大変ですね。そういうことを土屋委員は指摘されたのではないかと思 います。その点は配慮していかないといけないのではないかと思います。どういう文言 にしたらいいかというのはまた。 ○土屋委員  そうです。ご案内のとおり医療法によっていろいろあります。しかし、もともと非営 利ということが前提でこれは設立されているものですが、もう少し公益性を高めると か、透明性を高めようとかいう話がありまして、そうではないとこういう税制面にして も補助金にしても投入できないのですよというところから実は発しているのです。認定 医療法人なるものを作ろうということで、いま作業がされていますが、どうもこれは極 めて難しい状況なのです。そのようなことを考えますと、漠然と医療法人と言いまして も、私どもとしては普通の医療法人にそんな税制面の優遇措置が講じられるとは考えら れないわけです。考えられるとしたら医師会立の病院ぐらい。これはたしか軽減税率が 適用されていますが、その程度の話です。書いてあると何かいいように見えますが、こ れは私どもから見るとそんなことあるかという話で、この(4)は消したほうがいいので はないかというぐらいの中身なのです。 ○矢崎座長  私は税制面に関しては十分理解できませんので、誤解を招くといけないなという感覚 はありますが、正確な記述をどうしたらいいかということをよく相談します。 ○吉新委員  最近の状況を見ていると、各都道府県で多い所は40〜50人単位でドクターがいなくな っている。この間、私が聞いた病院は半年で18名いた内科が2名になってしまった。相 当深刻な事態なのです。これは姑息かもしれませんが、例えばそこに1年行くと専門認 定試験が期間とか点数で少し下駄がはけるとか、何かそういう極端な動機付けをしない と、これは多分コストはかからないと思いますが。 ○矢崎座長  そんなことを言われたら学会としては、問題委員から文句を言われますよ。 ○吉新委員  ただ、指導医の数が少し緩和されるとかそういう誘導策をとらないと、それは学会と してはプライドがあるので、とてもそんなことはできないとは思いますが、ただ、若い 人たちは認定専門医というのは1つの大きなゴールにはなっていて、そういう所でない と行かないということもあります。先ほど派遣元のメリットがあったと思うのですが、 もしかへき地に緊急事態で支援に行ったということが個人的にも、確実に何か担保され ないと、みんな喜んで行かないと思うのです。 ○矢崎座長  ですからそれは広い母集団でのキャリアパスみたいなことを考えて、行ったから臨床 家としての能力をプラスにするということではない。例えば大学の医学部ではちゃんと 医学教育を受けた人が次のステップに行く。研究論文を発表するだけではなくて、医学 教育にも力を入れる。それからそういう地域医療にも力を入れるというのがキャリアパ スの評価にあたる。 ○吉新委員  おっしゃられることはよくわかります。ただあまり定量的でないのと、短期に効果が 出ないのではないかと思います。緊急の策としてどうでしょうかという提言なのです。 ○矢崎座長  資格につながるというのは何か抵抗を感じますね。 ○吉新委員  そうですね、けれどもそれが1つの専門医認定になろうという人たちにとって、地方 に出ることが不利になる。 ○矢崎座長  不利になってはいけないということですね。 ○吉新委員  でも、実際はなかなか。そういう認定病院だということが、1つのインセンティブに なっていますので。 ○矢崎座長  吉村委員はこの1カ月ぐらい、ずいぶん病院長、医学部長会議での活動が活発なよう ですが、何かその観点からの医師の確保対策ということで議論がございますか。 ○吉村委員  全国医学部長病院長会議で前回提言致しましたのは、新医師臨床研修が始まりまし て、全ての医師にプライマリーケア研修を義務付けるということで、是非これは進める べき大変いい制度ですが、その研修先がちょっと都会に集中したのかなと思います。デ ータでは東京、神奈川、大阪、愛知、福岡の五大都府県に45%の研修医が集中し、一方 50人以下が11都道府県あります。分布を是正するために見直しを行うとしたら今度は専 門研修のところで、地域のバランスがとれるような臨床研修病院なりを指定していただ ければ、多少なりとも全国に分布するのかなと思います。  カナダでは研修病院は地域に限定していますから、必然的に、例えばブリティッシュ コロンビア州など5つのセンターしか研修ができません。アメリカですと各州に何カ所 かある。それに国家からメディケアを通して専門医研修の1人にお金が出るとか、そう いったインセンティブなり、縛りがないとなかなかそうはいかないと思います。そうい う意味では初期研修でも折角お金が国から出るわけですから、これは異論があるかもし れませんが、ある地域ごとに枠を決めておけばいいのではないか。最初の施設で研修を 終えた後、引き続き、その方々が育っていくわけですから、その過程で専門研修をした らどうかということを提案申し上げたのです。そうしないと医科大学は地方にもあるの で、医師になるためには島根とか、高知に行くわけです。しかし、卒業をすれば都会に 行ってどうしても研修をしたいと、インターネットで調べて、都会に良い病院があると いうことがわかれば、皆さん帰ってきてしまう。一度、散ってしまうとその後の研修が 難しくなるのではないかなということを提案したのです。新研修制度はまだ最初の研修 医が研修の途中なので、急に見直すという議論にはならないと思いますが、将来的には そういった専門医の研修の過程で、研修施設をある程度地方にも分布させる。あるいは いま小山田委員が言われたような、地方の自治体病院を含めた研修をやらないといけな いようなシステムを作るとか何かしないと、いきなり地方に行けと言っても、なかなか 難しいと思います。 ○矢崎座長  初期臨床研修は、病院によって努力して、200床以下の病院でもプログラムがよけれ ば研修医が行くわけです。やはりプログラムで勝負だと思うのです。命令で行き先を決 めるのではなくて、いい医者を育てるのが国民の要望なので、そのようなプログラムを 作るのが大事です。やはり初期臨床研修は大学病院にとっては少し不利ではないかと、 私は実際に思うわけです。あまりにも診療科に分かれすぎているということがあって、 皆さん不安を感じて、もう少し小さい規模の病院に行かれる。  ただ、後期臨床研修は一定の専門性をもった研修なので、私は大学の先生がもう少し 自信をもって、自分のいいプログラムを作って、それこそその地方地方の中核病院とな ってプログラムをしっかり組んでいただければ、大学病院に研修生がまた戻って来ると 思うのです。そこでいいプログラムを作るのが先決で、研修医の流動化が起こったから けしからんということではなくて、やはり前向きに考えていいプログラムを作って、そ して大学に呼び戻す努力をされる。また地方の大学も努力されれば地域医療が。先ほど 小山田委員が、大学に頼んでも人を送ってくれないと言われましたが、我々もまず大学 にお願いするわけです。ですからそういう人的プールが大学病院でできてくれば、また うまくいくのではないかという気がしますので、是非、大学で前向きに後期臨床研修に 取り組んでいただければと思うのです。 ○吉村委員  そのとおりだと思います。 ○矢崎座長  そのときに一つひとつの大学がプログラムを作っても、あまり魅力がないと思うので す。ですから先ほど土屋委員が言われたようにキャリアパスを考えるときに、小さい地 域ではとても望めないので、少し広い領域で、大学病院も例えば九州だったら九州大学 が中心となって、九州全体を後期臨床研修プログラムを作るとか、そういう壮大な気概 で是非お願いしたいと思います。 ○吉村委員  実は東大とか千葉大学、九州大学、京都大では、100名以上の研修医が集まっていま す。ですから大学だからプライマリーケアがだめだといって避けられたというのではな くて、やはり都会のといいますか、中央の、あるいはしっかりしたプログラムのある所 に研修医の方々が集まったのだと思うのです。そういった自由競争といいますか、いい プログラムを作れば集まるという意味で、研修医にとってももちろん励みになります し、我々もしっかり頑張っていく必要があると思うのです。後期研修についてはしっか りとした研修の指定施設が、各地方、県ごとにあるようなシステムがあればよろしいの かなと思っているのです。 ○水田委員  私は初期臨床研修制度には賛成です。ただ初期研修の病院が少し広がりすぎたかなと いう感じは否めないと思うのですが、これは自然淘汰されていくと思います。この制度 の研修プログラムは公開であり、立地条件や病院の福利制度などを参考に研修医はマッ チングによって研修病院を自分で選ぶことができ、卒後すぐにどこかの医局に属し、医 局の関連した病院の中で医師としてのキャリアを積んでいくという従来とは異なる医師 のキャリアパスが構築されつつあります。その結果大学病院から臨床研修指定病院への 研修医のシフトは益々明確となってきています。ご存じのように大学に人が残らないた めに地域医療を担っていた医局の存続の危機や、都会への集中により過疎地の地域医療 のさらなる荒廃の危機が迫っていること等や、また、大学に研修医が残らないために研 究者の養成が困難となり、近未来における医学研究の沈滞を来すとの危惧もあり、諸悪 の根源は新臨床研修制度にあり、抜本的見直しが必要であるといわれています。しか し、これらの意見の内に研修医からの意見はなく、また研修医の身になって考えた意見 は見られない。すべて大学側の都合のみで、この制度が悪いと言っています。忘れては いけないことは、まだこの制度が始まって2年目であり、その結果も何も見えない状況 であることです。この制度の評価はこれを受けた研修医が3〜5年の専門研修を終了後 に専門医になったときに、自分の専門領域だけではなく、他の科も診れる医師となって 幅広い診療ができることによって初めて明らかになると思います。ただし、後期研修、 すなわち専門医研修については、以前から言っていることですが、私は後期研修、すな わち専門研修については大学病院が中心になって関連病院と協力しながら担当すべきで あると思っています。なぜなら、"good clinician","good researcher","good teacher" の3要素を備えた"professional doctor"を育てるためには、基礎から臨床へのバラン スのとれたtranslational researchの成果のもとに、最先端の医療を行い、それを社会 へfeed backするという1つの流れの中で、診療に、研究に、教育にと一定期間身をお くことが大切であると信じるからです。きちんとした専門研修プログラムを大学病院と 関連病院が一緒になって作り、それに従って臨床修練を重ねていくことだと思います。 九州大学ではそのようなプログラムを組んでいますし、またこのような考えは九州地区 では沖縄も含めた8県、11大学がその関連病院も含めて一緒にという考えで進んでいま す。7月3日に九州地区全部の研修医を対象に九州厚生局や医師会も一緒になって後期 研修のシステムやプログラムの説明会を行います。研修医の人たちもどうなるか不安な のですから、きちんと情報を提供して説明する事が大切だと思います。  もう1つは、やはり大学の医局が悪い、大学が全部人事権を持っているから悪いとよ く言われるけれども、確かに人事を押さえている面で気にくわないところもあるかと思 うのですが、大学で今まで人を育てて、そしてきちんと診療ができる医者を関連病院に 地域医療のために送ってきたわけです。それが外れてしまったら結局どこからも医者の 紹介ができなくなる。そうすると医師不足がもっとひどくなる。だから大学の医局制度 が絶対に悪いというのではなくて、確かにいろいろ変わらなくてはいけないところもあ るかもしれないが、今までが悪いのではなくて、関連病院ですからお互いにやっていか ないとどうしようもないのではないかなという気がするので、そこのところはご理解を いただきたいと思います。 ○矢崎座長  両方メリットがあるシステムでないと成り立たないということですね。だいぶ時間が きましたので、いまご議論をいただきました意見を基に少し注意深く、おそらく先ほど の税制面の問題などは私にはよくわかりませんので、ある程度の知識のある委員の方に 細かい文言の相談までさせていただいて、次回には是非、最終的なまとめ案をここに提 出します。そこでの議論はまた私どもで修正させていただくというスケジュールで、次 回で大体最終的なまとめ案をここで作らせていただきたいと思いますので、何卒よろし くお願いいたします。 ○吉村委員  実はいま議論を拝見しますと、非常に雑多なものが重なっています。ですから長期的 には入学者の定員の問題とか、学部教育の問題、中期的にはいま話題になりました毎年 8,000人ずつ若い人が出るわけですから、それをいかにうまく養成していくかというこ と。3つめとして既存のマンパワーですね。バリバリの方もおられましょうしリタイヤ された方もおられると思うのです。そういう方々にもいかに仕事をしていただくかとい う3つぐらいの段階に分けてしないと、これはそれぞれに入学定員のことが出たり、マ ンパワーのことが出たり、ITを使うとか出ているのでその辺、整理するとよろしいの ではないかと思います。 ○矢崎座長  おっしゃるとおりで、病因論的に切るのか、重症度別に切るのか、区分けが疾患でも あるので、そういうことを縦糸だけで整理することもできないし、横糸だけで整理をす ることもできない。こういうことで副次的な要素がたくさんあるので、いまのご意見で 縦軸も横軸もその都度わかりやすいように工夫して、これは医事課長の才能にお任せす る。あとで私も相談に乗って、何人かの委員の方には細かい字句の修正もお願いしなが ら、次回にはまとめ案を作らせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたし ます。 ○山本委員  後期研修の話が出ましたが、私自身はある一定の研修期間の中で、大学でやるという ことは必要で、大学でなければできないという研修は必ずあるだろうと思っています。 しかし、いまの後期の傾向を見ていますと、大学は大学で抱え込もうとする。国立病院 機構も国立病院機構として後期のプログラムの充実性を図る。済生会もそういうことを やろう、厚生連は厚生連でやろうということを、それぞれがみんなやっている。非常に 問題を起こす環境ができてきています。  なんとかいいプログラムを作って、後期の研修医を自分の所にみんな囲い込もうとい う方法がいま見えてきている。本当にこれでいいのかなと。いいプログラムがあれば、 後期の研修医が選んでどこに行ってもいいということで済ませるのか。何か本当にそれ でいいのかなというのがちょっと疑問をいま感じています。これはどこでどのように議 論されるのかなということを問題提起させていただきます。 ○矢崎座長  後期臨床研修は法律で定められた研修ではありませんので、やはり大学病院でしなけ ればならない後期臨床研修と、一般病院が担う後期臨床研修とがあると思うのです。全 部大学病院でやらなくてはいけないということでもないし、それが囲い込みにつながる のではないかと、私はあらゆる所から、大学の先生からも徹底的に言われました。これ はどこかで1つモデルを出さないと、私がモデルを出したためにみんな慌てていろいろ やり出したので、それぞれがいま言われたように囲い込みの競争になるということです が、少し冷静に考えていかないと。大学も今までの使命がありますし歴史もありますか ら、大学でしかできない後期臨床研修というのがありますね。だからそれをしっかり見 据えながら、お互いで役割分担を決めながらやっていくのが後期臨床研修です。 ○水田委員  一緒にやるということですね。 ○矢崎座長  ええ、後期臨床研修は是非医師会の土屋委員にも加わっていただいて、みんなが参加 できるような、いい後期臨床研修のシステムを作りたいのです。それでいちばん大事な のは、私は情報の公開だと思います。今まで大学は、情報なしで囲い込みをしていたと 言われますが、こういう教育をします、研修の効率を高めるためにはプログラムで何人 募集します、コースに入ったらどういうことができて、何年間で到達目標を決めて、全 部オープンにしないと囲い込みの謗りを受けると思います。それは今度は法律で決まっ ていないから自由競争です。  それこそ囲い込み競争になってはいけないので、大学とか医師会とか、我々みたいな 規模の大きい法人が協力し合って、何かいい本当のシステムを是非ともこの秋までには 作りたいのです。ですから大学だけで話し合われると困るし、そういう点で医師会が負 うべき後期臨床研修の部分もあると思うのです。これからは地域医療が大きな課題にな りますから、そういう意味で是非加わっていただきたい。また、後期臨床研修が別問題 で大きな問題ですから、議論をさせていただきます。これはそれとは別なので、是非よ ろしくお願いしたいと思います。 ○小山田委員  この会の運営でお伺いしたいのですが、これからの医師の需給の見通しといいますか 、見直し、これはいままでの議論がいろいろありました。平成14年度の見通しでいいか どうかの見直し作業、数字的な重ね合わせといいますか、その作業はいま進んでいるの ですか。これはいつこの委員会に出てくるのでしょうか。 ○矢崎座長  それは喫緊の課題です。この本文にあるような定量的なしっかりしたデータを積み上 げた上で、医師の需給がどうなるかという予測です。今までやってきたそれはまた改め て議論し直すということで、事務局で着々とそのデータを揃えているというように理解 してよろしいですね。 ○医事課長  現在、データ等の準備をすすめているところでございます。 ○矢崎座長  最終報告のスケジュールについてご質問がありましたが。 ○医事課長  最終報告は平成17年度中となっていますので、来年の3月までに取りまとめるという ことです。 ○小山田委員  それについてのいろいろな意見が出ると思うのですよ。どういう項目でどのぐらいを 見通しているかという推測される数字を、大体でいいですからなるべく早く出していた だきたいのです。これは計算でできるものではなくて考え方ですから。これを追加しな ければならないとか出ますね。この数字はこの点で見直さなければならないということ で是非。日本全体のこれからの医師需給の在り方を考えるときに大変な仕事だと思うの です。素案でも何でもいいですからなるべく早く出してみていただけないでしょうか。 ○医事課長  もちろん最終的な需給というのは、需要と医師の出てくる数と、その中でのバランス になりますので、いま基本的数値の積み上げをしています。当然その最終的な見通しを 出すのには、とりあえず精緻なものでなければならないので、まとまり次第こちらの検 討会に出させていただきたいと思っています。 ○江上委員  5頁に調査研究の必要なデータを得るための基盤整備を進めていくというのが出てい るので、これを私は大変期待しています。その中に3頁の上からポツ2つ目の、医師の 職業意識の変化、長時間労働の勤務医を避ける傾向があるとか、あるいは地域や特定の 診療科に行くことを避けるようになるというような、いわゆる医師の職業意識や価値感 の変化等々も、今後の調査基盤の整備については含まれて想定されていますよね。 ○医事課長  医師が全体的に、例えば勤務医の方が何人いるかということが核にありますが、どの ぐらいの年齢の方が行っているかというようなことは当然やらなくてはなりませんので 、計算をしています。 ○江上委員  大学生、医大生も含めて過去と現実、事実データと意識や価値感の変化を時系列に取 るようなこともお願いしたいと思います。3頁のD)の所の「医師の間に、特定診療科 を避けるようになるという気質の変化」と書いてあるのですが、「気質」というのは、 人間が生来持っている特質であり、「かたぎ(気質)」と読むにしても、それは職業上 蓄積された類型的な気風をさすのであり、適当な記述ではない。「気質」よりも「価値 観」の変化のほうがいいのではないか。 ○医事課長  そうですね、全くおっしゃるとおりです。 ○矢崎座長  次回の予定について事務局からお願いします。 ○医事課長  診療科のほうを結局やっているのですが、これはまた皆さんのご意見をお伺いしてと いうことでよろしいですか。 ○矢崎座長  いま全部検討したということで駄目ですか。 ○医事課長  特にご意見がなければ結構ですが。 ○矢崎座長  女性医師の多様な就労への環境整備は、ちょっとご意見をいただいて、次回には是非 まとめさせていただくということでお願いしたいと思います。 ○医事課長  ただいま座長からお話がありましたように、本日出ました意見を踏まえて、私どもで 修正させていただき、次回お諮りしたいと思います。次回は7月20日(水)10時から開 催する予定です。場所については現在調整中ですので、調整のつき次第各委員にご連絡 をさせていただきます。議事につきましては、引き続き本報告書についてご討議いただ きますが、いま座長からお話がありましたように、次回とりまとめの方向で実施したい と思っていますのでよろしくお願いいたします。なお、中間報告書案についてはご意見 等がありましたら、是非事務局まで事前にメールでもFAXでも結構ですのでお寄せい ただきたいと思います。そうしましたらその形でまた会議に反映したものを出したいと 思っていますので、よろしくお願いいたします。以上です。 ○矢崎座長  本日は長時間にわたりましてご熱心にありがとうございました。これで検討部会を終 了させていただきます。                                     −了−                         ┌─────────────┐                         │照会先          │                         │厚生労働省医政局医事課  │                         │課長補佐 宮本(内線2563)│                         │指導係長 双川(内線2568)│                         │代表 03-5253-1111    │                         └─────────────┘