05/06/15 第22回今後の労働契約法制の在り方に関する研究会議事録         第22回今後の労働契約法制の在り方に関する研究会                      日時 平成17年6月15日(水)                         10:00〜12:00                      場所 厚生労働省7階専用第15会議室 ○菅野座長  ただいまから、第22回今後の労働契約法制の在り方に関する研究会を開催いたしま す。本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。本日は西村先 生から欠席という御連絡をいただいております。  まず資料の構成等について、事務局から御説明をお願いいたします。 ○労働基準局監督課調査官(秋山)  本日の資料ですが、資料1から4までが、本日と次回に御議論いただくこととしてい る、労働関係の展開に関する資料です。資料5と6が、前回御議論いただいた労働関係 の成立に関する資料です。また都道府県労働局において実施している個別労働紛争解決 制度については、最近平成16年度の状況がまとまりましたので、参考までに資料7とし て提出しております。資料8は、前回御了解いただいた、中間取りまとめについてなお 検討すべき論点の資料を再度提出しております。資料9は、前回の指摘事項をまとめた ものです。 ○菅野座長  まず、前回の雇用関係の成立に関する議論を踏まえて、事務局において資料の追加、 修正を行ったということなので、御説明をお願いします。 ○労働基準局監督課長(苧谷)  それでは資料6について、御説明いたします。これは前回、採用内定の実際の労働条 件明示の方法はどうか、6カ月を超える試用期間の状況はどうか、というお話があって 調べた結果です。資料6の1頁、「採用内定時の労働条件明示」は、労働政策研究・研 修機構で行った調査の対象企業に聞き取りを行ったものです。  1の「新規学卒者について」は、4社ほど調べております。まず1社目は、入社当初 三カ月は本社研修であるという前提で、その旨は採用決定前の会社説明会において、口 頭で説明しているということです。また4月入社の場合は、2月ごろにも改めて文書で 通知しているということです。本社で研修した後、全国に散らばる形になっています が、研修後の配属先については、本社研修中に書面で通知される形になっております。  次の製造業関係ですが、入社当初は全員が本社兼の工場に配属されます。そのことに ついては会社案内をはじめ、さまざまな書類に記載しているということです。  サービス業関係ですが、入社当初二カ月は大規模店舗での研修であると。このことは 募集要項において、就業の場所がその地区の店舗である旨を明示しているということで す。また具体的な入社当初の就業場所については、4月採用の場合は2月ごろに文書で 通知する形にしております。  最後の建設業については、ブロックごとの採用を行っています。入社当初、ブロック 内のいずれかの営業所に配属されるということは、会社説明会あるいは懇談会におい て、口頭で説明することになっております。実際に当初配属される営業所は、4月採用 の場合は3月ごろに文書で通知するという状況です。  中途採用者については、これはサービス業ですが、大体就労開始予定の一カ月ほど前 に説明会兼面接をして、そこで採用してその場で雇用契約書を交わしています。この雇 用契約書には職務内容、賃金、労働時間、残業に関する規定等を記載しているというこ とです。ただ就業場所は、もうすでに明示しているので、特に記載していないという状 況でした。  また、2頁目は労働政策研究・研修機構の調査ですが、6カ月を超える試用期間を定 めているのは、新規学卒者が22社、中途採用者が24社ありました。それぞれ見てみます と、単なる慣習によってやっていた所もありますが、中には三つ目のポツの山林などで すと、季節ごとに状況が違うので、夏場と冬場の両方を経験してもらう必要があるの で、1年間必要だというのがありました。次のポツのサービス業は法令上資格が必要と されており、学校で1年間学ぶ必要があるため、ということで1年間でした。運輸業の ドライバーは、年間を通して仕事の密度に差があるので、1年を通じてみないと適格性 が判断できないということでした。あと、施工管理責任者みたいな方については、実際 に現場を一つ任せるのが適格性を見るために有効だということで、一定の期間が必要、 6カ月では足りなかったという意見もありました。  そういうことを踏まえ、資料5に若干の修正を加えております。前回から書き変えた 所は下線を引いております。まず採用内定の労働基準法第20条の解雇の予告の関係で す。これは西村先生から、当たり前のことではないかという御意見がありましたので、 その旨を簡潔にいたしました。要するに採用内定者にとっては、少しでも早く取り消さ れるのなら、早く知ったほうがいいということと、内定期間中は第20条の適用除外とす ることで、少しでも早い時期から求職活動ができるようになる、というメリットのほう を書いたわけです。  それから、一番下のほうの指針の関係をどうするかです。今後は労働契約承継法の指 針等も参考に検討することになりますが、「労働契約法における指針の性格について は、改めて議論することが適当である」ということで、とりあえずここではこのように 書き直させていただきました。  2頁の真ん中辺りの「いつ採用内定がなされたかを判断するに当たっての考慮要素」 ですが、前回の御議論では、若干内々定という問題もあったけれども、労働契約が成立 する時点が不明確という問題は、それほどなかったのではないかと。また契約が成立す るのは合意が成立した時点で、遅くとも内定者による誓約書の提示があった時点では成 立していると見ていいので、それほど混乱しないのではないかということだったので、 このように書かせていただきました。  3頁の真ん中辺りですが、「試用期間に上限を設けた場合には、使用者が試行雇用契 約のほうを逆に活用するようになり、労働者にとってはかえって不利になる場合もある のではないか」については、「試行雇用契約というのは労働者の適性や業務遂行能力を 見極めた上で、常用雇用に定める契機となって、労使双方に利益をもたらすという面も ある」と。また、ここは試用期間と違って、「期間中は解雇が制約され、試用期間より も労働者にとって有利な面もある」だろうということです。したがって、どちらが不利 かどうかは、はっきりしないということと、もう一つはどうしても6カ月を超えても見 なければいけない場合があるのであれば、それは特別な理由ということで、そういうも のは、はっきりさせた上でこの限りでないとするということです。要するに原則6カ月 なり、何カ月かの上限は設けつつ、合理的な理由があればそれを超えてもやむを得ない という書き方もできるのではないかという形で修正しております。 ○菅野座長  いまの御説明について、御質問があればお願いします。御意見でも結構です。前回の 議論を踏まえての修正ですが、このように修正するということでよろしいでしょうか。  では、このように修正することにいたします。研究会で議論したわけですので、事務 局としてはこの議論を踏まえて、この表の右の欄の「指摘に対する考え方」を中心に整 理したものを、最終報告に盛り込むようにしていただきたいと思います。  それでは本日の議題である「労働関係の展開」について、資料2に沿って御議論いた だきたいと思います。まず1頁から3頁までの就業規則について議論したいと思います ので、この部分について事務局からの御説明をお願いいたします。 ○労働基準局監督課長  まず資料2の横表を御説明したいと思います。段が四つありまして、一番左側が中間 取りまとめで示された方向性、あるいは今後の課題を入れております。真ん中の二つに ついては、左側がどちらかと言うと労働者の保護を考えた場合の考え方で、右側がどち らかというと経営の安定などの考え方から出てくる指摘で、実際に出された指摘なり、 考えられる指摘ということで紹介させていただきました。一番右側が、どう考えるかと いうことです。  まず就業規則について、労働者を拘束する効力の要件です。労働者の保護という観点 から言いますと、就業規則を交付するという形でやるべきではないかというのはありま すが、これについては、まずは労働者が就業規則の内容をいつでも知ることができるこ とが重要です。ただし使用者の負担もありますので、まずは交付ではなく、周知という ことが適当ではないかというのが出てまいりました。  経営の安定ということで言いますと、行政官庁への届出までしなければ拘束力がない というのはどうか、それは労使間の合意の推定とは関係ないのではないかという考え方 も、一部で指摘されていますが、行政官庁への届出によって、法律違反かどうかがチェ ックされ、変更命令が出され、それによって合理性が確保されることもありますので、 間接的ではありますが、出されることがはっきりしていれば、労働者の就業規則による 信頼感も高まることから、届出を推定の要件とすることは適当ではないかという考え方 です。  就業規則の最低基準効を決めるための要件の周知については、使用者としてみれば実 質の周知というのは、労働基準法に定める周知手続と同様のものが必要ではないか、と いうことも指摘される場合もあり得るかと思いますが、最低基準効で労働者にとってメ リットのある話ですので、労働者が実際に知り得れば、そういう効力を認めてもいいは ずですから、ここは労働基準法の厳格な手続より広くなるのではないかということで す。  一番下が、就業規則を変更する場合の就業規則の変更法理です。労働者の保護という ことから言いますと、なぜ使用者が一方的に不利益に変更すること自体に合理性がある のかというのは、当然出される疑問でしょう。これについては右側に書いてありますよ うに、そもそも労働契約というのは継続的な関係であって、当然入社当時には予想し得 ないことも起こり得るわけですので、事情の変化に応じて、ある程度労働条件が変更さ れ得ることは、お互いが前提として考えているものだと。もちろんそれには合理性がな ければいけないわけですが、合理的なものであれば、継続的な関係を希望する労使双方 にとってメリットがあるのではないかということです。また、ただ単に合理性があれば というだけではなくて、集団的な意思が反映されるようにすることが適切であると。こ ういう視点に立って就業規則変更法理、これはもう実際に判例で固まっておりますが、 これを法律で明らかにすることが適当であるというように提示しています。  労使委員会の5分の4以上の賛成による決議のあった場合の、就業規則の合理性の推 定については、いろいろな御意見があろうかと思います。例えば少数組合の意見が反映 されなくなるのではないかということで、過半数組合が合意したとか、あるいは労使委 員会の委員の5分の4以上の多数でいいのかという意見もあります。逆に、過半数組合 の合意があれば、もう推定ではなく、みなしでいいのではないかという意見もあるかと 思います。まず過半数組合等については、全労働者の意見集約をすることが前提となっ てきます。単に過半数組合の合意だけではなくて、合意する前には全労働者の意見を集 約することが必要だと。それで少数組合の労働者にも意見表明の機会が与えられている ので、少数組合の意見が反映されないわけではないと。ただ、みなすということについ ては、これに拘束されることになる労働者の不利益を考えれば、全く反証を認めないと いうのは行きすぎではないかということで、労働者の保護、あるいは経営上の問題の両 方からの考え方について、このように考えるということです。  ほかに、労働者の保護ということから言いますと、例えば労使委員会については、過 半数組合には不当労働行為制度等があって、きちんと法律で保護されるけれども、労使 委員会のほうは使用者から支配介入されることもあり得るのではないかと。それについ てどうするかということですが、これについては法令で規定する委員の選出方法や決定 方法などが遵守されている場合に限って、推定が働くという形で対処できるのではない かということです。使用者が支配介入したようなものは推定効のほうを否定しておけ ば、そもそも推定効は働かないわけですから、問題はないのではないかということで す。  また、そもそも労働組合のない事業場で、今後多数意見の反映をどうするかというと ころからすると、労使間の協議を促すことは必要なので、そういうメリットを考えれ ば、やはり何か労使委員会の要件を規定して、一定の効果を与えることがいいのではな いかということでした。  その他、労使委員会というのは使用者が半分以下、あるいは半分いる場合もあります が、あとは労働者が半分です。これが5分の4ということになると、計算すれば労働者 が6割の賛成でいいということになります。そうではなくて、やはり全会一致であるべ きではないかという意見があります。しかし労働者委員といっても、基本的に多様な人 を労使委員会に入れるのが前提ですので、現実に多様な労働者がいる中で常に意見が一 致するとは限らず、それは現実的ではない、全会一致にすれば、労使委員会制度が利用 しにくいものとなるおそれもあると。実際に過半数の労働組合でも、最後は票決で決め る場合があるので、全員一致というわけではないので、労働者委員の6割以上が合意で きれば、労働者の多くの意見を民主的に集約したものと言えるのではないかということ です。  過半数組合の合意や、労使委員会の委員の5分の4以上の多数により変更を認める決 議がある場合の合理性の推定については、どういう場合に推定が働かないか、あるいは 決議が覆せるかということですが、労働者の意見をなるべく通したいのであれば、推定 が働く場合を限定して、あまり認めないほうがいいのではないかと思います。逆に経営 環境ということから言えば、できる限り推定を働かせるということがあり得ます。右が それぞれどう考えるかということです。これはここに書いてあるように、経営環境に応 じた迅速な対応の必要性と、労働者にとって不利にならないようにということで、合理 性の必要性が働く場合は、ある程度の限定は必要であるということです。  そこに書いておりますのが、過半数組合の合意、労使委員会の決議がある場合は当然 ですが、過半数組合や労働者委員が労働者の意見を適正に集約することが前提です。ま た変更が一部の労働者に著しい不利益のみを与えるものではないということを、推定の 要件とすべきだろうということです。ただし過半数組合や労働者委員が変更の内容を承 知していると考える場合であっても、その変更が労働者に多大な不利益を与える場合は 反証してもらえればいいということで、推定を覆すような反証を認める形でやることが 適当であろうということで、そのバランスを取るという考え方です。 ○菅野座長  それでは就業規則について、議論をしていただきたいと思います。非常に重要な所で す。 ○荒木先生  この箱で言うと、1頁の一番下の所になるかもしれません。これまでの判例の就業規 則法理と、新しい案(1)や案(2)との関係ですが、これまでの秋北バス事件などでは、就 業規則を変更することによって、原則として一方的には変更できないけれども、合理性 があれば例外的にできるということだったので、おそらく使用者のほうが合理性の立証 責任を負ってきたと考えられるのです。しかし案(1)や案(2)のほうは、変更が合理的な ものであればという中間取りまとめになっています。ここは考え方としては同じという ことでいいかどうか、それをまず確認したいと思います。 ○労働基準局監督課長  それは先生のおっしゃるとおりでいいと思います。 ○荒木先生  その次に、中間取りまとめでは過半数組合の合意がある場合、あるいは労使委員会の 5分の4以上の決議がある場合には、合理性があると推定すると。この場合は、いわば 立証責任が転換されて、合理性が推定されますから、推定を破るような立証活動を「拘 束されない」という主張をする労働者側で行うという整理になっているということでよ ろしいのでしょうね。 ○労働基準局監督課長  立証責任の転換ではなくて、とりあえず心証の形成まであるという形にする。反証で すから逆転させるのではなくて、それをもう一度、やはり疑わしいなという程度まで証 明すればいいということらしく、完全な証明責任の転換ではないらしいのです。どう考 えても疑わしいという事実を持ってくればいいのです。反証ということのようです。反 証を認めるというのは、専門的に言うと完全な立証責任の転換ではないというようにお 伺いしたのですが、その辺はむしろ春日先生のほうが詳しいかと思います。 ○春日先生  私はだいぶ欠席していて、全体の状況がわからないので、ちょっと的外れな質問をす るかもしれません。これは推定規定を法規としてつくるという趣旨ですよね。そうだと すると反証ではなくて、やはり推定規定がある以上は、前提事実の証明があれば推定さ れるほうの事実、つまりここでは多分変更の合理性ということなのでしょうけれども、 これは推定されるので、あとは相手方のほうで変更に合理性がないという反対事実の立 証をしなければいけないという意味では、やはり証明責任が転換しているのだと思うの です。そうしないでただ単に反証だけに留めるのであるならば、これはやはり経験則に 基づいて、一応変更の合理性があることを証明してもらい、それに対する反証だったな らば、それはむしろ推定規定、つまり法規をつくらないことになるだろうと思うので す。ここでおっしゃっている反証の意味が、これだとむしろ反対事実の証明をするとい うように理解したのです。ただ、それは私の個人的な意見かもしれません。  もう一つ、ここの点でお伺いしたいのですが、変更の合理性として推定される事実が ありますよね。これを推定するために、前提事実としてここで上がっているのは、過半 数組合の合意と、3頁にある変更が労働者に著しい不利益のみを与えるものではないと いうことも前提事実になっているのですか。そうすると前提事実を二つ証明して、変更 の合理性が推定されるという構造になっているのですか。 ○労働基準局監督課長  あと、意見集約も適正にしている必要があります。 ○春日先生  そうすると前提事実を三つ証明して、初めて変更の合理性が推定されることになるの ですか。 ○労働基準局監督課長  はい。 ○春日先生  そちらのほうは分かったのですが、やはり反証ということ自体がちょっと。やはり推 定規定をつくるとすると、通常もうこれは証明責任の転換ということになるはずです。 そうだとすると推定された事実については、反対事実の証明をやらなければいけないと いうことになる。多分、推定規定の一般的な理解はそうだろうと思うのです。ただ今 後、ここでどういう推定規定をつくるかというのは、また別問題だと思うのです。少な くとも一般的に推定という言葉を使ったら、事実上の推定ではなくて法律上の推定とい うことで、推定が働けば、やはり反対事実の証明、つまり立証責任が転換しているとい うように理解するのが一般的だと思うのです。 ○菅野座長  私もそう理解していたのですが、そうではなかったのですか。 ○曽田先生  就業規則に従うことが事実たる慣習として認められるから、法的規範性を認めるとい うように言っていると思うのです。それだと推定までは行っていないと思います。いま 議論しているのは、推定規定を置くとすれば、春日先生がおっしゃるように、やはり反 対立証しなければいけないということで、反証という範疇に入ってくるのではないかと いう気がするのです。きっと判例理論からもうちょっと進めて、推定規定を置こうとし ているのだろうというように理解しているのです。 ○労働基準局監督課長  最高裁等では一個一個事実を認定していって、これはもう事実たる慣習によるべきだ という意思が認定されているのだから、変更が合理的であれば拘束するようですので、 そういうように大体判例が重なってきていますから、推定というのを置いて適当ではな いかという考え方ではないかと思います。反証なのか反対の立証なのかは、極めて技術 的ですので、そこは正確に調べて直させていただきたいと思います。 ○山川先生  いまの点は推定の対象が合理性ということですが、厳密的には法的概念の適用なの で、やはり権利推定ということになりますと、要は合理性があるという評価を原則とし て肯定することに対して、反証という言葉になるかどうかは分かりませんが、合理性が ないということを基礎づける事実を、相手方で主張立証するという構造ではなかろうか と思います。  もう一点、似たような所の質問になります。その前提でもあるのですが、横組みの資 料の一番最初の辺りには、「合意の推定」というように書いてありますね。これは表現 の問題でもあるかと思いますが、中間取りまとめでは、当事者双方に意思があったと推 定するという形になっています。しかし厳密に考えると、当事者の内心の意思が双方に あっただけで、法律行為としては完結していないものですから、むしろ趣旨としてはこ こに書かれているように、意思表示の合致としての合意があったものと推定するという 趣旨で書かれているという理解でよろしいのでしょうか。 ○労働基準局監督課長  おっしゃるとおりです。これはいろいろな先生方から御指摘がありました。意思があ ったことの推定というのは法律的な意味をなさない、意思表示が合致して合意があった ことの推定のほうに意味があるという御意見がありましたので、ここは合意の推定とい う形に変えさせていただければと思います。 ○山川先生  もう一つ、一番右の段の「各指摘に対する考え方」で、届出を推定の要件とするとい うのがありますね。これは先ほどの春日先生の御指摘ともかかわるのですが、届出とい うのが推定の根拠事実になっているのか、あるいは全くそれと独立して、就業規則の拘 束力の発生要件として位置づけているのか。どちらも結論はあまり変わらないと思いま すが、中間取りまとめの3頁ですと、届出が就業規則の拘束力の発生要件となっている ものですから、どちらかというと別個の要件にしたほうがいいのではないかとも思うの ですが、その点はいかがでしょうか。 ○労働基準局監督課長  仮に法律として書くときの技術的な話になるかと思います。例えば届出がない場合に は、前の推定効を働かせないとか、規定を適用しないというように書くとか、いろいろ な方法があると思いますので、そこはその段階でまた検討しなければいけないと思いま す。それが推定効を否定しているのか、全体のメカニズムを否定しているのかという技 術的な話になろうかと思います。そういう意味では結果は変わりませんから、ここでは もう少し曖昧な形にしたいと思います。 ○荒木先生  要するに合理性の立証の問題ですよね。これは非常に抽象度の高い規範的な要件と言 いますか、これについては解雇権濫用法理のときも同じような議論になったのです。評 価根拠事実と評価障害事実をそれぞれ主張立証する、立証責任がそれぞれに分配される というような考え方もあるのです。合理性について現在の判例法理はそうやってきたか もしれません。一応使用者のほうで主張立証責任を負うかもしれませんが、評価障害事 実については、労働者のほうで主張していたのかもしれません。しかし今回は法律上の 推定ですよね。こういった場合にその構造が変わってくるのかこないのか、その辺がよ く分からないのです。どうなのでしょうか。 ○山川先生  推定との関係は、私はあまりよく分からなかったのです。これは春日先生の御専門か と思います。原則として推定という言葉を使わないとすると、合理性を基礎づける事実 を、使用者側が主張立証しないといけないというのが前提で、それに対して合理性がな いということを基礎づける評価障害事実を労働者側が主張立証する。他方、このような 案にした場合には、原則的に一定の推定の根拠事実が満たされれば、通常言われている 変更の合理性という使用者側の主張立証すべき評価根拠事実に替えて、推定の根拠事実 を主張立証すれば合理性が原則として基礎づけられる。春日先生、よろしいでしょう か。 ○春日先生  おっしゃるとおりだと思います。先ほど山川先生がおっしゃったように、変更の合理 性というのは、やはり規範的要件なのだというように理解すると、通常の法律上の事実 推定ではなくて、やはり法律上の権利推定に近いものになると思うのです。そうだとす ると合理性があるかないかということを基礎づける具体的な事実を、いわゆる主要事実 として使用者側が証明し、それによって合理性ありという法的判断をするという構造に なると思うのです。  おそらくこの表にまとめてある考え方でいくと、その際に合理性を基礎づける具体的 な事実としては、例えばここに挙がっている過半数組合の合意とか、労働者に著しい不 利益のみを与えるものではないという事実を、使用者側が証明すると、裁判所の判断と しては合理性ありというように傾いていくと思うのです。その場合、あとは相手方のほ う、つまり、これは多分主要事実になるかと思いますが、労働者側のほうで合理性がな いという具体的な事実をまた証明すれば、それがここでの反証になるということではな いかと、私は理解したのです。 ○労働基準局監督課長  反証という言葉でもいいことはいいけれど。 ○春日先生  これはある種の言葉の使い方なのかもしれないけれども、反証ということになれば、 反証の程度は真偽不明の状態、50%50%の状態に持っていけばいいということですよ ね。ただ反対事実の証明までしなければならないというと、これはもう証明責任が転換 していますので、心証度としては50%50%ではなくて、やはり確実性に境を接する高度 な蓋然性まで、証明しなければいけないということになるのだろうと思います。この変 更の合理性という規範的要件の場合は、おそらくどちらか一方のみが証明責任を負って いるという構造にはならずに、過半数組合の合意があったとか、労働者に著しい不利益 のみを与えるものではないという事実を、使用者側が証明すると。これはもちろん本証 で証明するわけですが、それがあれば一応合理性は推定規定によって推定されることに なるだろうと思います。  では労働者側が変更の合理性がないということについて、全く立証活動をしなくても いいかというと、そうではないだろうと思います。やはり合理性がないということを基 礎づける具体的な事実は、本証で証明しなければいけない。そういう意味で双方が合理 性を基礎づける具体的な事実については、証明しなければいけないということになるだ ろうと思うのです。その内容を反証と言うかどうかは、単なる言葉の問題に過ぎないと 思います。 ○内田先生  これは書き方の問題かもしれないのですが、適正に意見を集約したとか、何割の支持 があるといった手続的な要件に、完全に置き換えてしまうのかどうか。合理性があるか どうかというのは、もともと実質的な中身の問題だったと思うのです。しかし中身では なかなか決着が着かない場合がある。そこで手続を加味して合理性を推定しようという のが、もともとの趣旨だったのではないかと思うのです。ただ手続的な要件のほうが前 面に出てしまいますと、それだけで処理ができてしまうような印象を与えてしまうの で、やはり合理性があるということは、実質的な内容で証明しないといけないだろうと 思うのです。それにプラスして手続的な要件が加われば、合理性が推定されると。法文 に書くのは大変難しいかと思いますが、そういう趣旨がうまく表現できないかなという 気がするのです。 ○菅野座長  これは内容の合理性より、プロセスの合理性ということを前面に立てようという考え 方にしていると思うのです。労働条件の不利益変更というのは利益紛争で、本来は労働 組合がちゃんとあって、労使交渉で決着を着けるべきものが、それができない場合にど うするか、あるいはそれができた上でそれに基づいて就業規則を変更したらどうする か、という問題だととらえて、過半数を代表するような組合との合意があれば、基本的 にそれで合理性を推定していいだろうと。あるいはそれがない場合に、その仕組みをど うするかという問題として考えることにしていると思うのです。 ○内田先生  私も実質的な合理性の中身について、あまり立ち入っても判断できないとは思います が、全くそれに触れなくていいかのような。 ○菅野座長  もちろんプロセスにすべて委ねるわけではないのですが、プロセスがちゃんとしてい れば、あとは反対立証のほうに委ねようという考え方だと思います。 ○内田先生  「表面的」にと言うと言い方は悪いのですが、とにかく表面的にでも一見して合理的 に見えるような説明がなされて、それに手続をプラスすればという趣旨ではないのでし ょうか。 ○菅野座長  一部の労働者に、多少大きな不利益のみを与える変更の場合を除きというのは、その 辺のところなのです。 ○曽田先生  一部の労働者に対して、大きな不利益のみを与える場合の変更を除きという、この位 置づけが問題なのです。それは合理性の推定の要件の一つと考えているわけです。です から実質的な要件も立証しなければいけないし、それに合わせて手続的に多数組合、あ るいは多数労働者代表との合意があると。この二つをもって推定規定を働かせるという ように言っているのです。 ○菅野座長  三つですよね、適正に意見集約と。 ○曽田先生  ですから必ずしも手続規定だけで、合理性を推定すると言っているわけではないと思 うのですが、そこが非常にわかりにくいと思われるのです。 ○土田先生  それと関連するのですが、3頁の論点、「各指摘に対する考え方」の上の段、今おっ しゃった点です。中間取りまとめというのは、基本的にいま座長がおっしゃったとお り、まずはプロセスを考えて、過半数組合との合意があれば合理性を推定すると。ただ し変更が、一部の労働者に著しい不利益のみを与えるものではないことを推定の要件と するというのは、中間取りまとめのとおりですが、その下のほうの「一方」の後、「さ らにその変更が労働者に過大な不利益を与えるときは反証を認める」となっていて、こ この位置づけが少し違うのです。  つまり一部の労働者のみに不利益を与える場合は、与えるものでないことが推定の要 件で、下のほうは一部でなくても、ともかく過半数組合との合意があったり、適正に意 見の集約があっても、さらに実質的な、実体的な不利益があまりにも大きければ反証を 認めるという位置づけになっていると思うのです。これも中間取りまとめのとおりなの かと思いますが、後のほうは中間取りまとめには、必ずしも明確に出ていなかったのか もしれません。しかし一応そういう整理はできると思うのです。  ただ、これを最終取りまとめにするときは、そこの整理をもう少し理論的にしたほう がいいと思います。仮に一部の労働者に著しい不利益のみを与えることを推定の要件と するのであれば、それは過半数組合や労使委員会において、一部の労働者の不利益につ いての一定の責任というか、利益の代表義務のようなものを認めることとリンクするの かなという気がするのです。そうだとするとこういうことになるけれども、そのことと 全体的にとにかく不利益が大きい、過半数組合はプロセスがどうであろうと、これはも う実体的に駄目だという場合の関係をどうするのか。どうもこの中間取りまとめのトー ンでいくと、私の個人的な意見としては、変更が一部の労働者に著しい不利益のみを与 えることも推定の要件と言うより、むしろ推定を覆す反証という位置づけにしたほうが すっきりするような気もするのです。いずれにしても、いま内田先生がおっしゃったプ ロセスと実質的な合理性との関係の整理は、もう少しきちんとする必要があると思いま す。 ○春日先生  その変更が労働者に過大な不利益を与えるときという所は、十分考えていなかったの です。確かに労働者に著しい不利益のみを与えるものではないということと、この労働 者に過大な不利益を与えるときという関係をどうするかというのは、もうちょっと詰め る必要があるように思うのです。ここはやはり内田先生もおっしゃっているように、実 質的な考慮が入る部分で、一番重要な部分ではないかと思っています。  もう一点は、むしろ法務省の方にお伺いすべきだろうとは思いますが、不利益のみを 与えるものではないの不利益という抽象的な概念を、推定規定の前提事実にすること が、果たして技術的に可能かどうかというのも、詰める必要があるのではないかと思っ ています。 ○筒井参事官  つまり前提事実の立証があったか否かということ自体が不明確な中で、手続が進行し ていくという問題性ではないかと思います。その点は確かに検討しておく必要があるか という感じがいたします。 ○土田先生  一部の人と過大な不利益の関係ですが、判例で言うと例えばみちのく銀行事件のよう な事件は、全体としては合理性があるけれども、特定層には非常に不利益が大きいと。 こういう場合については何らかの経過措置のようなものが必要で、そうでない限り合理 性がないわけです。こちらは一部の労働者に著しい不利益ということですが、それとは 別に、一部の人だけではなくて全体的に不利益が公平に及んでいる、それでも過半数組 合は合意していて、意見も集約している、しょうがないと思っている、しかし一部の人 が訴訟を起こしたという場合があります。一部の人にだけ不利益が行っているのではな くて、全体的に不利益が及んでいる、客観的に見ると実体的な合理性がちょっと怪しい という場合が、後のほうだと思うのです。そういう場合は合理性の審査を残すという趣 旨ですね。 ○菅野座長  それは反対立証の内容になり得るでしょうね。 ○土田先生  それはもちろん不利益との関係ですね。これはやはり整理。 ○労働基準局監督課長  完全にみなすわけには、なかなかいかないだろうと思います。 ○菅野座長  そういうものを検討する余地は残しておかないと。 ○労働基準局監督課長  一部の人に著しい不利益のみを与える場合というのは、判例法理でもだいぶ固まって いますので、それを最初から推定の合理性の基礎にしてしまうのは、さすがに難しかろ うと思います。そういう場合もとりあえず推定にしておいて、反証させればいいではな いかというのもあるかもしれませんが、判例ではっきり言っていますので、一部の人の みに著しい不利益を与えるような場合は、初めから除くことが適当だと思います。ただ 法技術的な話として、そうしないほうがいいというのであれば、法技術的に片づけさせ ていただくという形がいいのではないかと思います。 ○土田先生  別にそれでもいいのです。それは選択肢があると思いますが、そこは理論的にもう少 し詰める必要があると思うのです。 ○菅野座長  裁判例でこれが不利益変更かどうかが不明確だというのは、そんなにはないという か。唯一、賃金原資は変えないで、年功賃金を成果主義賃金に変えたために、評価によ って上がる人と下がる人がいる、上がるか下がるかわからないという制度変更くらいで はないかと思うのです。それをどういうように考えるかくらいで、あとは大体部分的な 不利益という意味では明らかだと思います。労働条件を不利に変更していると。 ○春日先生  著しいとか過大なというのが付いて、これを前提事実にすると、ちょっとまずいので はないかという気がします。 ○菅野座長  それはあるかもしれませんね。著しいというのは確かに。 ○村中先生  先ほどの証明責任との関係ですが、こういう推定規定を置くと、とりあえず前提事実 がありますと、合理性が推定されることになりますね。そうすると反証としては合理性 がないということで、これは結局実質的な中身です。内容や不利益の程度から見て合理 的かどうかということについて、労働者側の反証があるということになります。反証を して議論をする中で、結局合理的かどうかよくわからないという状況に陥った場合は、 こういう推定規定があれば、それは合理性があるということになってしまうのか。それ はどうでしょうか。 ○菅野座長  まず推定が働いているから、そういうことでしょう。 ○村中先生  そうすると反証というものが完全に合理性を否定し切る、少なくとも51%になるとい う状況になければならない。それは立証責任が転換されたという理解ですね。 ○菅野座長  そうですよね。 ○内田先生  まだよく分からないのです。もともと合理性というのは規範的要件であって、何が合 理的であるかについて、a、b、c、dといういろいろな要素があって、どれだけ証明 すればいいかということを事前に要件化することは、なかなか難しい要件であるわけで す。いろいろ双方で主張立証を繰り返しても、何が合理的であるか、なかなか決着が着 かないので、手続をもってある程度判断を置き換えようという考慮はあると思うので す。それは非常に合理的なことだと思います。  ただ、先ほども申しましたように、表現の仕方かもしれないのですが、書き方によっ ては、手続さえ言えばいいという印象が非常に強く前面に出てしまうおそれがありま す。やはり使用者側も、合理性があるということ、こういう必要性があるということ は、現実的にはある程度言うのではないかと思うのです。ある程度中身は言って、その 上でこういう手続も踏んでいますと。そうであれば合理性の推定を与えて、あとは文句 のあるほうが、そうではないということを反証させるという仕組みではないかと理解し ていたのです。  一部の労働者に著しい不利益を与えるかどうかというのを、要件事実として明文化す るのはなかなか難しい問題ですが、いずれにせよ、非常に重要ではあるけれども、合理 性を判断する一つの要素だと思うのです。ですから、これさえ言えば覆りますとか、こ れさえ言えば推定されますというような問題ではないのではないかという印象を持って いるのです。その点はいかがでしょうか。 ○菅野座長  確かにそれまではいろいろな要素の総合判断だったのです。こういう推定規定を設け ても、必ず推定を破る反証の試みがあるでしょうから、実際の訴訟の中では使用者側 も、必要性などについては言うでしょう。言って主張立証を試みると思いますよ。 ○内田先生  それはそうだと思うのです。 ○労働基準局監督課長  それは当然言っているはずで、法律上の書き方としては、おそらくこういうようにな るのだと思います。例えば55歳定年を60歳にしたと。それによって長く働けるけれど も、賃金が若干減る、どちらが得かわからないという場合が、いままで裁判で出てきた わけです。皆さんが同じように不利益を受けるのであれば、大体の人が賛成していれば 合理性があると。しかしそれでは裁判官もなかなか判断ができませんので、実際のとこ ろはそういう外形的なところで最高裁も見ていますから、そういうものを類型化したと いうようにお考えいただければと思います。 ○山川先生  その点は先ほどもお話が出ていたのかもしれませんが、一部の労働者に著しい不利益 のみを与えるものでないことというのを、どう考えるかにもかかってきます。ないこと そのものを立証することはできないので、実は何か積極的な事実があるわけですよね。 その中身にかかってくるような気もするのですが、具体的に今おっしゃったようなもの が、それに該当するということでしょうか。 ○労働基準局監督課長  「除き」ですから、立証責任はあるのではないかと言ったときに、実際に事実を示し て、この人はそれほど著しい不利益ではないということを示していくことになろうかと 思います。例えば退職間近の人はこれだけ減るではないですかと言われたら、それに対 して、この人たちにはちゃんとこういう暫定措置を取っていますということを主張立証 して、推定の事実に進むということです。 ○山川先生  ということは、その前提として一部の人が不利益を与えられるという主張だけでも、 必要になるという感じになるのでしょうか。つまり最初から何も言わないところで使用 者側が、一部の人に著しい不利益を与えるものでないということを積極的に言う場合 は、一部だけ著しい不利益を受ける人はいませんよということを言わなければいけな い。いないことを言うには、こういう場合は原則としてはあり得るけれども、実は著し い不利益ではありませんという言い方になるでしょうか。 ○労働基準局監督課長  だんだん技術的な話になりますが、通常何も言わなければ、「何々を除き」という場 合は除くほうが、こういう場合があるのではないですかと言って、それに対してそうで はないということをどう言っていくかと。実際の訴訟ではそうなると思いますが、いず れにしてもそういうことも踏まえて、ここはまた皆さんの御意見も聞きながら、技術的 な話ですので、いろいろ専門家にお伺いしながら書いていきます。 ○審議官(労働基準担当)(松井)  参集者の皆さんの御意見は、すごく本質的なところが議論になっていると思います。 大胆に申しますと、菅野先生が言ってくださったように、合理性の推定をまずは手続、 過半数組合と意見集約をもって推定するということをやっていいか、という問いかけだ ととらえていただくのが正しいと思うのです。それで内田先生が言われるように、実質 的な判断や手続など、いろいろなものを総合勘案してやるのが、本当の合理性の推定や 裁判手続だったのです。今回は法律を作るという中で、ある意味でこういう制限をかけ てやっていますが、本質的には過半数組合の合意と意見集約という手続を取っていると いうことを使って推定させて、それで実際に立証責任の転換ということが起こるかもし れません。それが出来るかどうかを提起しているということを踏まえてください。それ をやるかどうかによって、後で手続をどうするかです。それを乗り切るかどうかをここ で決めないと、議論できないと思っております。まさに言われたところをどうするかと いうことが、本質的な問題だと思っています。 ○菅野座長  労働条件の変更というのは利益紛争であって、全体的な利益調整の問題なのです。そ の利益調整が真摯にできているかが基本だというのが、この立場だと私は理解するので す。 ○土田先生  1頁の一番下にありますが、労働条件の変更は、お互いが合意しているということを 前提としている、ただし合理的なものが必要だと。その上で一体合理性をどう考えるか というときに、仮に法律の作り方として、それを置いてすぐ過半数組合の合意とか、労 使委員会における多数の決議というものが出てきたら、どうなのかというのがあるわけ です。そのときにこれまでの判例のいくつかの実体的な要素を、この法律でどう位置づ けるのかという実質的にも、技術的にも非常に大きな問題があるのですが、そこは中間 取りまとめではあまり突っ込んで書いていないのです。中間取りまとめで書いているの は、推定が覆ったときには判例の判断要素が活きてくるので、それを指針で周知すべき と書いてあるだけで、過半数組合の合意等がある場合に、これがどう効いてくるのかと いうのは、実はまだ十分に練られていないのです。ですから、おっしゃっている趣旨は そうだと思いますが、そこはやる必要があると思います。  もう一つ補足的に申し上げます。中間取りまとめは5頁にありますように、案(1)と 案(2)の二つを出しているわけですが、1頁の右側の一番下、「ある程度労働条件が変 更され得ることは、お互いが前提としているもの」という書きぶりは、どちらかという と案(1)のような印象を受けるのです。私の個人的な意見は、案(1)のほうがベターだと 思いますから、これは納得できるのですが、案(1)、案(2)を選択肢として出して、かつ ここでこういう書き方をすることとの関係については、どういうことなのでしょうか。 必ずしも案(1)に限定しているわけではないのですか。 ○労働基準局監督課長  合理性の推定の所ですから、案(2)でも使えるのではないかと思います。 ○内田先生  先ほどから、表現の問題ばかり言っていますが、3頁の表の右側の書き方が、「過半 数組合の合意や労使委員会の決議があることのほか」で「集約」ときて、「一部の労働 者に著しい不利益のみを与えるものではない」というようにきているので、いかにも手 続が前面に出ている印象を与えるのですが、変更が「一部の労働者に著しい不利益のみ を与えるものではない」ことのほか、こういう手続があればと、せめてそういう書き方 になっていると、非常に偏ったことをやっているわけではないということをとにかく言 う。その上に手続が加われば、推定が働くという印象が出てくるのではないかという気 がするのですけれども。 ○荒木先生  おそらく土田先生はそれは反対なのですね。一部への不利益というのは、むしろ労働 者側で合理性がないことの反対事実の立証で主張させるべきではないか、というように おっしゃったと思うのです。どう位置づけるかなのですが、要するに労働者の場合に は、なぜ一部の者に不利益を及ぼすような場合には多数が合意しても駄目かというと、 それは多数決原理の濫用だからということだと思うのです。多数が利益を得て、一部に のみしわ寄せがある変更を、これでいいですかと言えば、多数の者はそれでいいと言う 可能性があるわけです。そういう多数決原理の濫用となっていないというのが前提だと すると、言うなれば意見集約のプロセスの問題の一部をこのように表現したということ で、全部プロセスの問題だと捉えるのか。それともプロセスと実体判断とは不可分で分 けられないと考えるか。そういう問題かという気がしたのです。 ○土田先生  二つあって、一つはいま内田先生が言われたことと関係しますが、そもそも過半数組 合が合意しているけれども、その前提に第一次的に実体的な判断がどう入ってくるのか という問題があって、それについては必ずしもここで整理されていないという点です。 もう一点は、一部の労働者に著しい不利益のみ与えてしまうことは多数決原理の濫用だ ということは、いわばおそらくプロセスの面から見てもおかしいのだということです。 結果的に実体的な要素として入ってくるのですが、過半数組合の合意等で正当化できな い、プロセスによって正当化できない結果だから、ここに位置づけるべきだというお話 ですか。そういう趣旨ですか。それはそれで理解できます。  ただ、そこはそうであればここに整理することについて、先ほど言ったのは理論的に そこを詰める必要があるのではないかと。いまの多数決原理の濫用でもいいし、例えば 要するに集団的な規範によって、一方的に変更しているわけですから、その場合には仮 に合意があっても、集団的規範による不利益変更という場合には、内在的な限界という のは当然出てくると思います。過半数原理の濫用と同じことかもしれないのですが、そ ういった説明をしておく必要があるのではないかと。 ○春日先生  先ほど審議官がおっしゃったのは、たぶん過半数組合の合意と意見集約があると、合 理性が推定されるという推定規定を作る方向でいったらいいか、これをここで考えてく ださいという御趣旨だと思うのです。そうだとすると、過半数組合の合意と意見集約を 前提事実にして、合理性の推定が働くと、仮にそういう推定規定を作ったとすると、そ の場合には、それは労働者側に過大な不利益となるから、合理性はないという形で、反 証なり反対事実の立証をする、あるいは一部の労働者にとっては、それは著しい不利益 を与えることになりますと。だから、合理性がないと、こういう形で反証というか、反 対事実の立証をすると山川先生もちょっとおっしゃったのですが、ないことの証明とい うのは難しいわけで、むしろ一部の労働者に著しい不利益を与えるということは、やは り労働者側が主張・立証するということのほうが、一般的な推定規定の考え方からいく となじむのかと思ったのですが。 ○労働基準局監督課長  まず「除き」という場合は、普通はそのように。 ○審議官(労働基準担当)  一つの整理していただきたいパターンなのです。あえて二つのシステムを検討してい ただきたいというつもりで申し上げたので、一つは全くそのとおりです。もう一つ内田 先生の言われるように、変更が一部の者に著しく不利益でないということも推定要件に 入れてやるのが、ごくナチュラルな姿だと。この三つの要件をうまく、かつ最初に実質 要件を書いて、表現の問題というより、これは実質的な問題です。たぶん、それが働い たときに推定が働くという規定を設けるべきだとおっしゃるのだと思うのです。それは すごくわかります。ところが、推定規定を働かせるときの法律的な考え方で、その中に 既に不利益という純抽象概念があるものを、タームを使って推定を働かせるというのが 本当に法制になじむか。外形標準的なものを使って推定を働かせて、それを実証して反 証するというのが法律構成であれば、検証しなければいけませんが、そちらの要件に持 っていくのは極めて問題が多いのではないかということは、土田先生も言われたと思う のです。ですから、あえてそれを検証していただきたいと。そういう意味では、証明責 任は、本当に労働側の一部に不利益があるという事実をきちんと言って、覆すことをや らせなければいけないことになるのではないかというイメージをして議論していただき たいと思います。  つまり、繰り返しますが、外形標準的なものを使って推定を働かせるという仕組みを 導入することについて、是非なり問題をしっかり言っていただきたい。それを乗り越え るためのロジックがここで確立できれば、法律を作るときに使えるというつもりで申し 上げたのです。 ○山川先生  推定の根拠事実と、いわゆる反証の事実をどういう表現ぶりにして、どのように立証 責任を分担するかは、なお検討することになろうかと思います。いま審議官も言われま したが、先ほど内田先生の言われた関係では、不利益な変更をしたということは、裁判 規範で考えると、いずれにせよ使用者側が言わないといけないわけで、その変更自体の 内容も主張・立証しないといけないとすれば、そのことによって、例えば著しい不利益 が一部の労働者に及ぶということが、既に出てきてしまうことがあり得るわけです。例 えば55歳以上の賃金を5割引き下げたなどという変更の事実を言うことによって、かな り著しい不利益が出てきてしまう。それを打ち消すようなことというのは、あらかじめ 使用者側から言っておかないといけないのではないかと思います。そういう形で理解す ると、使用者側からあらかじめ主張・立証する事実が、不利益に変更したという主張・ 立証との関係で出てくることがあり得るという感じはしますけれども。 ○菅野座長  今日の議論を整理して、必要ならまたということですかね。 ○土田先生  いま三つですね。3頁の合意がある、意見の適正な集約、一部の労働者。意見を適正 に集約するということは、利益を適正に代表することではないですね。つまり、過半数 組合なり何なりが意見を適正に集約するというのは、要は実体的な利益の代表をしたわ けではない、利益を確保したわけではない。だから、別途これが出てくると。そういう ことで、このペーパーの趣旨は一部の労働者の利益だけを取り出して、実体的な要素と したい、要件としたいということですか。 ○村中先生  手続的な面と実体的な面と両方入っていますね。しかし、実体的な面が入っている と、実体的な要件についても、これで尽きていると受け取られないかという危険も、な いわけではありません。すなわち、「一部の労働者に著しい不利益のみを与えるもので はない」ということを、入れてあるので、それに対してあとで反証はあり得るかもしれ ないが、この三つを並べておくと、それだけですべて決着がついてしまうという印象を 危険も感じます。ですから、手続的なものと実体的なものは区別して整理したほうが無 用な誤解はないということも言えます。 ○菅野座長  推定が覆るような実体的な不合理性というのはどういうものか、という例示のような ものがあったほうがいいということですね。 ○村中先生  過半数の合意や労使委員会の決議で、不勉強で誤解していたのですが、立証責任まで が転換されるというようには理解しておりませんで、一応の推定が働くという程度で理 解しておりました。内田先生の御指摘の点は、私も近い考え方をしております。ですか ら、推定というときの効果、その辺りも少し工夫の仕方があるのかという気はいたしま す。 ○菅野座長  いまとの関連で、一つ当たり前のことなのですが確認しておきたいのは、合理性の推 定ということを通じて、過半数組合の合意、労使委員会での5分の4以上の決議などと いうのに、一定の効果を与えるのですが、労働組合法上の団体交渉のほうは、いささか も損うものではないなどは前提とされていて、労働協約の効力は就業規則に優越する と。これも当たり前のことで、それをいささかもいじろうとはしていないことは確認し ておきたいと思うのです。その辺が誤解されているというか、どうなのかという指摘も あるものですから。 ○労働基準局監督課長  はい。 ○菅野座長  今日の議論を踏まえて、「指摘に対する考え方」の所も、もし修正があれば次回修正 を出していただいて、それを本報告に活かしていくということをお願いしたいと思いま す。最終報告書にそういうことを盛り込むようにしていただきたいと思います。  次の「雇用継続型契約変更制度」について議論したいと思いますので、説明をお願い いたします。 ○労働基準局監督課長  3頁の「雇用継続型契約変更制度」です。中間取りまとめの方向性としては、雇用継 続型契約変更制度を設けることを検討するということです。労働の保護の観点からいう と、この制度は労働者に提訴を強いるか、あるいは解雇を恐れて変更を受け入れざるを 得なくなるのではないか。ということで、安易な変更は認めないこととし、やむを得な い場合でも就業規則の変更法理で対応すれば足りるのではないか。この辺りが集約でき るかと思うのです。これに対する考え方としては、就業規則の変更法理で対応できるの かということについては、就業規則はあくまでも集団的に変更する場合で、使用者と労 働者の個別の合意で、就業場所は変更しない、あるいは職務の変更はしないという場合 に、就業規則をいくら変更しても、職務や就業場所が変わるわけではありませんので、 これは規定できるだろう。  このような場合に、労働者が雇用を維持したまま契約内容の変更を行おうとする使用 者に対して、その変更を争うことができる制度が必要になります。いくら反対だと言っ ても、使用者にしてみれば、変更を受け入れてくれない労働者に対しては解雇というこ とが事実上行われますので、それについてはもう少し手続的に規制を加えておかない と、雇用を維持したままの争いはできなくなるという趣旨です。  次の論点ですが、雇用を維持したまま契約変更を争うことができるようにすること は、労働者にとってまた使用者にとってどのような意味を持つかという趣旨です。これ は右側にあるように、雇用を維持したままで労働契約の変更を、争うことができるよう にするための手段としては、労働者に変更の内容とその必要性の十分な情報提供、熟慮 期間の付与、一定の協議期間の保障等が必要である。また、労働契約の変更の申し出に ついては、一定の判断基準を示した上で、判例の集積を待って、逐次、整理・追加し て、その充実を図ることとするという考え方を示しています。 ○菅野座長  議論をお願いします。 ○村中先生  就業規則のところにもかかわるのかもしれませんが、有期契約の場合、変更問題をど う考えるのかは、同じでいいのかということがあるかと思います。個別契約の変更制度 に関して、解雇を利用するものと変更権のものと二つ考え方があります。変更権のもの でも、有期契約の途中にそれを行使できるというのでは、ちょっとおかしいのではない か。有期契約について、民法628条をどのように考えるかということともかかわってく るのだろうと思います。特に、労働契約については、基本的には有期契約を結んだら、 その間の解雇というのは、たとえ合意があっても解約権は認めないのだという解釈もあ り得るのであれば、その間については契約内容の保障ということもより手厚く考えない といけないのだろうと思います。そうすると、就業規則の変更に関しても、個別の変更 についても、有期契約については少し別扱いになるのではないかと思います。 ○労働基準局監督課長  いま先生がおっしゃるのは、有期契約の場合は、就業規則の変更法理ではそもそも対 応できないのでということですか。 ○村中先生  対応していいかどうか、考えないといけないのではないでしょうかということです。 ○労働基準局監督課長  対応できる部分も。 ○村中先生  有期契約はその期間については合意された条件で契約を履行すると、一旦合意してい るわけです。有期契約の労働者についても、当然、就業規則は適用されます。それを例 えば半年経ったところで変えることを認めるかどうかです。 ○労働基準局監督課長  賃金の変更などは認めないというのは、裁判例で出ています。例えば朝の時間を少し ずらすなど、そういうのとはまたちょっと違うと思います。それは個別にまた見ていく ということになる。 ○村中先生  それでいいかどうかです。 ○菅野座長  有期だろうと無期だろうと、そういう労働条件がある場合には、やはり共通なのでは ないですか。 ○村中先生  そうすると、その点で区別はないということですか。 ○菅野座長  ない場合もあるし、有期であることを考慮しなくてはいけない場合もある。 ○村中先生  そうすると、有期か、そうでないかということで、区別はできず、問題となっている 個々の労働条件を見ながら、その性質を見て、やはり就業規則の変更法理の中で決着を つけていくという処理になるということですか。 ○菅野座長  たぶん。 ○村中先生  別の点ですが、中間取りまとめで設計をいろいろした中で案(1)、案(2)という形にな っているわけですが、これは協議することを変更の重要な条件にしてあるわけです。労 働者側からすると、例えば協議もなしにいきなり言われたと。そういう場合について案 (1)の場合、留保付き承諾をして、それで争うことは、制度的には認めるということで すか。 ○労働基準局監督課長  労働者に有利に働くものは認めていいと思います。しかし、それを認めるというのは 最終的にはそれで合理性というわけで難しいと思うのです。 ○村中先生  そうすると、変更はそもそもできないということになるのですか。 ○労働基準局監督課長  そこを労働者が主張すれば負けるでしょうね。 ○村中先生  そうすると、留保付きの承諾という制度だけは、そういう場合にも認められ、使用者 としては手続に反したから負けても仕方がないという結論になるわけですね。 ○土田先生  これに対する連合などの反応などを見ていると、そもそも雇用継続型契約変更制度と いうものは、当然、職務等、個別的な労働条件の変更を対象とする制度だということは 前提になっていると思うのですが、イメージといいますか、特に就業規則の変更との関 係で、どういう労働条件の変更を念頭に置いて、どういう場合に必要なのかというとこ ろが、いまひとつ理解されていないような印象がありますので、そこを明確にする必要 があるのではないかということが一つです。  それから、中間取りまとめ以降の論点の中で、労働契約の変更に必要な手続はこれで よくわかるのですが、その場合の変更の内容の実体的な合理性というか、相当性です。 つまり、職務内容・勤務地が特定されている場合の変更などということを念頭に置け ば、この次に出てくる配置転換との関係がおそらく出てくるでしょうし、その場合に配 置転換を人事権で行う場合の要件と、この場合の要件がどう違ってくるのかといったこ とが当然問題になってくる。ですから、ここでは一定の判断基準を示した上で、判例の 集積を待ってというのは、いまのところ事例が非常に乏しいので、このとおりだと思い ますが、一定の判断基準を事前に考えるべきというのは、最初に言ったどういう労働条 件の変更を念頭に置いて、人事権による場合と何が違ってくるのかというところを、雇 用継続型変更制度の特質というか、性格を踏まえて検討しておく必要があるのではない かと思います。 ○労働基準局監督課長  人事権との関係でいいますと、人事権はそもそもは労使で、包括的合意で出たもので すが、そこを限定的に縛る。例えば「アナウンサーで採用します。アナウンサー以外に 変えません」と言えば、通常、就業規則等で職種も変えることがあると書いてあるのと 違って、個別の合意で「あなたはこれだけです」と言ってしまえば、就業規則にどう書 いてあろうと、この人については限定だということがはっきりしております。ただ、そ れでもアナウンサー部が閉鎖になった場合に、どうしても事務部に移ってもらわなけれ ばいけないという場合もあるでしょうし、あるいは家庭の事情で私は広島でしか勤めま せんと言ったら、広島限定です。広島の工場が閉鎖だ、東京にしか工場がないという場 合が典型だと思います。ほかにも、もちろんいろいろあると思いますが、そのように個 別の合意で、人事権も含めて縛っているという場合だと考えています。 ○土田先生  そうだと思うのですが、いま言われたような例で、変更の内容の合理性なり要件をど う考えるかというときに、案(1)と(2)では、かなり変わってきますよね。(1)だと解雇 とリンクするわけだから、留保付き承諾という制度を設けても、要は解雇まで行く場合 の要件ということを考えなければいけないだろうし、案(2)であれば法律上、変更権を 認めるわけだから、人事権に準じて考えるような制度設計も可能ですね。だから、どう いう労働条件を対象とするものかというのは、いまの説明でわかりますが、その場合の 要件が案(1)と(2)では基本的な考え方が違いますから、それによって違ってくるので、 それを考える必要があるのではないかと。 ○労働基準局監督課長  案(2)も、別に人事権を与えられていない場合の話で、契約そのものを変えなければ いけないわけですので、契約上は当然認められていた人事権を行使してはできないの で、人事権と一緒というわけではないと思います。 ○土田先生  (1)だと契約の解消に至るけれども、それを防ぐような制度設計を考えているわけで すよね。(2)はそうではないわけで、法律上の権限ですが、雇用契約の解消まで至るよ うな制度設計を考えていない。そうすると、(1)と(2)とでは、やはり要件が違ってくる のではないか。同じであるという説明であればそれでいいですが、それはなぜ同じなの かということが出てくるでしょうし。 ○村中先生  結局争いになるのは変更が許されるかどうかで、合理性のような話なわけです。(1) の場合でも、契約を解消させないという条件を作っているわけだから、争点としてはそ れほど変わらないように思いますが。 ○土田先生  だから、そう言えるかどうか。 ○菅野座長  まず、どういう場合にこの制度を使えると考えているのかは、抽象的に言うと、就業 規則の変更で、人事権の行使、使用者の権限の行使によっては、対応できないような変 更ということなのですかね。 ○労働基準局監督課長  労働契約の根拠ではできない。だから、労働契約自体を変えざるを得ない。 ○菅野座長  労働契約としては、同意がなくては変えられない。だから、いままではそれは解雇と いう形でやるしかなくて、従来行われなかったのですが、行われるようになってきた と。その場合に、雇用を維持したまま、変更の是非を争うような道を作ったらどうかと いうことですね。 ○労働基準局監督課長  しかも、日本ヒルトン事件などでは、留保付き承諾そのものを認めないような判断に なっていますので、ますます雇用を継続したままで争えないという状態になっています から、そういう状況はちょっと避けないといけない。 ○菅野座長  しかし、実際にはスカンジナビア航空事件などでも、いま言ったような就業規則の変 更や人事権などでは対応できないような変更と、就業規則で決めるような労働条件の変 更とが全部一緒になって変更されている。そういう意味では根本的な変更なのですが、 そういうケースもあるのです。それを分けるか、そういう問題はあると思います。 ○労働基準局監督課長  はっきり出てくる場合には、契約を変更せざるを得ない場合には、やはり契約変更す るべきというのが出てきます。 ○菅野座長  雇用形態の変更なのですよね。 ○労働基準局監督課長  ですから、それはそれの付属物と考えて、やはり契約変更だろうと。 ○菅野座長  そう考えざるを得ないのでしょうね。 ○山川先生  別の点ですが、横組みの資料の3頁に「各指摘に対する考え方」ということで、「変 更を争うことができる制度が必要である」とあります。この趣旨は、これまでおっしゃ られていたような留保付き承諾を制度化するという意味になるわけでしょうか。 ○労働基準局監督課長  まず、それはなります。そのあとちゃんと一連の協議をしてもらわないといけないと かしなければ、使用者に勝手に解雇されてしまいます。 ○山川先生  変更を申し入れる際の協議も含めての手続としては、ドイツ等では留保付き承諾をし た場合の別個の訴訟手続のようなものがあると思います。その場合の出訴期間、あるい は異議をとどめた承諾をするか、しないかの選択すべき期間があるわけですが、その期 間をどうするか。この制度の中身として、その辺りも検討する必要があるのかと思いま す。 ○労働基準局監督課長  異議をとどめながら、一定の期間訴訟をしなければ承諾と認めなければいけませんか ら、それは当然あると思います。それはもう少し制度設計が詳しくなったときに出てく る話です。3カ月がいいのか、6カ月がいいのか、それはありますが、そこまでここで 御議論いただくかどうかです。いずれにしても、決まれば当然出てくる話です。 ○山川先生  必要があれば、詰める必要があるのではないかという趣旨だけです。 ○土田先生  詰めるというか、スカンジナビア航空事件のように契約の単なる変更ではなくて、就 業規則でやるべきであるようなものも一緒になっている場合ですが、そういうのはどう なのでしょうか。仮に就業規則の変更に比べると、ある意味マイルドな手段を用いるこ とができるのであれば、そちらを先にやるべしという要件は入ってこないですか。 ○菅野座長  そうなのですが、それではやはり対応できない。まず就業規則を変更して、それから 分けて雇用形態の変更を提案するわけにはいかないようなもの。全部一遍に提案すると いう性質のものも一緒だったり、課長が言われたように、これもそういうのを含めてと いうことにならざるを得ないかと思うのです。 ○土田先生  (1)が起こる場合は、これもスカンジナビア航空事件かと思いますが、変更を拒否し た場合の解雇を正当化するような何とかと言っていたと思うのですが、(1)だとそこま で求めることになるのですか。 ○菅野座長  そこまでというのは。 ○土田先生  解雇の正当化。 ○菅野座長  それはそうでしょう。 ○土田先生  (2)はそこまでいかないということですね。 ○労働基準局監督課長  ただ、実際に言うことを聞かなければ、解雇される、懲戒される場合がありますか ら、全く考慮せずにやるというわけにはいかないと思います。 ○土田先生  しかし、(2)の場合には一定の変更権を認めるわけでしょう。変更権を認めて、この 場合は解雇には至らないのですよね。 ○労働基準局監督課長  しかし、労働者が従わないことがある。 ○土田先生  しかし、従わない場合は、変更権行使に従わないことを理由にする解雇になります。 それは同じなのですか。 ○労働基準局監督課長  あれする場合としては同じ。 ○土田先生  そこがちょっと疑問なのです。 ○菅野座長  一方的に実施してしまえるなら、事実上それで済んでしまうことがあり得るのです が、行ってくれないとか、あとの措置が必要になる場合には解雇となり得るのではない ですか。勤務先を変えるなどというのは、行ってくれない。そうしたら、懲戒解雇な ど、何かせざるを得ない。 ○土田先生  (1)だったら、本来変更できない。しかし、変更したい。応じてくれない。契約関係 を維持できない。したがって、解雇という発想だと思うのです。(2)だと変更権限を与 えているわけだから。 ○労働基準局監督課長  与えるといっても本来ない。 ○菅野座長  転勤命令拒否と同じ事態になるのです。 ○土田先生  そうですよね。だから、そこはどうなるのですか。つまり、命令拒否を理由とする解 雇になるのか、本来できないけれども、特に与えた権利の行使であるから、(1)と同じ ようになるのか。 ○菅野座長  解雇の有効性で、命令が有効かどうかという形で、(2)の要件が備わっているかとい うのも判断されるのではないですか。 ○土田先生  それはわかるのです。だから、要するに(1)の場合と(2)の場合の関係、そこがどうな のか、そこがどうしても気になる。だから、そこは議論すべきだと、そういう趣旨なの ですけれども。 ○労働基準局監督課長  それは法律の判断基準が一緒か一緒ではないかだと思います。 ○土田先生  一緒か一緒ではないかというか、だから、どう違ってくるのかと。具体的な基準とい うこともありますが、そもそもこの二つの制度設計から出てくる違いでしょうから。制 度設計まで遡って検討する必要があるというか、おそらく選択肢として二つ示すのであ れば、こういう違いがあるという情報提供をしなければいけなくなるでしょうから、そ こをやらなければいけないのではないかと。 ○内田先生  いまの論点、各指摘に対する考え方の趣旨というのは、中間取りまとめの二つの案の いずれがいいかという方向も示さないで、とにかくなお検討するということと理解して よろしいのでしょうか。 ○労働基準局監督課長  こちらがいいとおっしゃるものがあれば、むしろお教えいただければと思います。 ○内田先生  ほかのと比べると、かなり違った形で書いておられるので。 ○労働基準局監督課長  これも先生方にそれぞれ、こっちがいい、こっちがいいと。 ○菅野座長  この議論は一応なされたということで、いまの議論を踏まえて、これはおそらく各指 摘に対する考え方はそれほど修正する必要はないかと思いますが、一応決定として、も しあるなら次回示していただきます。いままでの議論、今日の議論を踏まえて、各指摘 に対する考え方を最終報告に盛り込むようにしたいと思います。次に配置転換、出向、 転籍について、御説明をお願いいたします。 ○労働基準局監督課長  4頁の二段落目です。配置転換については、権利濫用法理について議論するというこ とです。労働者保護の観点からは、これは労働者にとって不利にならないよう、厳格な 規制とすべきだ。特に転居を伴う配転については、転勤の際に使用者が講ずべき措置を 法律で定めるべきである、それに対して、経営上の都合からいうと、使用者の専権事項 なので、法律の規制はなじまないということがあると思います。両方の考え方について は、専権事項といっても、これはあくまで労使の合意から生まれたもので、特に転居を 伴う配置転換は労働者に大きな影響を与えるということで、経営上の必要性もあるとい うことを両方考えて、柔軟に行う必要もありますので、権利濫用法理を一般に法律で規 定しつつ、具体的な使用者の講ずべき措置は指針で対応することが最も適切ではないか と整理しています。次の段落ですが、配置転換の目的と労働者に与える影響を踏まえ て、どういう措置を講ずるのがいいのかということについては同じことですが、本人の 意向の聴取、家族の状況に関する配慮などについて、指針で示すことが適当ではないか という整理にしてあります。  出向の関係については、少なくとも出向を命ずる場合には、個別の合意か就業規則、 または労働協約に基づくことが必要である。これに対して労働者側を保護する観点から は、要するに労働者の個別の合意が必要ではないかという意見があろうかと思います。 これについては、確かに雇用の維持、キャリアの形成・発展を目的とする場合もある。 出向中の労働条件に配慮がなされている場合も多いので、一般に出向をする際の個別の 同意を必要とすることまでは適当ではないのではないか。むしろ出向の可能性の有無が あらかじめ労働者に対して、明らかになることがより重要だろうという整理をしており ます。  次は任意規定を置くということです。出向しろと言ったときに、あるいは遡って就業 規則で出向があると言っただけで、出向先の賃金等がわからないのはおかしな話なの で、出向するという段階では、少なくとも賃金などがはっきりしないといけないという ことで、任意規定を書いておく必要があるということです。これについては、特に経営 側から言うと、賃金が低下する場合もある、あるいはもう既に就労先で働いていれば出 向元のために働いていないので、賃金の連帯責任を負おうとするのは負担が多すぎる等 の意見が出てこようかと思います。これについては、個別の合意や就業規則等の定めが ない場合に限って、最初に明らかにしてこなかったのが問題なのだと。はっきりさせて おけばそういうことにならないので、使用者の負担は大きくならない。こういう規定は 使用者自身による出向期間中の労働時期の明確化を促す効果を期待できるので妥当では ないか、という整理です。  次は、任意規定と異なる別段の定めをどうするか。単に出向元との合意で足りること とするのか、それ以外に何か労使協定等、特別な規定を組ませる必要があるのかという こと。これは労使双方の立場からいろいろ意見があると思いますが、出向元、出向先と 労働者との間の権利義務関係を明確にして、紛争を予防すると。紛争予防の観点からい うと、純然たる任意規定で足りるだろう。さらに、何か出向労働者の保護が必要か。そ れはいろいろあると思いますが、任意規定と異なる個別の合意、就業規則等に関する一 般的な権利濫用法理、それ以外の法理によって、ある程度保護が図られているのに、そ れで不十分だということがあれば、それは個別に判断していくのが適当だという整理に なっております。  出向期間中の出向労働者と出向先・出向元との権利義務関係について、どのような問 題があるかということを踏まえて、ほかに何か任意規定はないかということです。これ は例えば出向先が解雇できるか、賃金・退職金の通算等いろいろありますが、これにつ いては懲戒制度、退職金制度、その制度の導入の有無を含めて、各企業によって実態が さまざまである。出向の際の取扱いをさらに検討した上で、大部分の企業において行わ れている取扱いがあれば、任意規定を定めることも考えられるということで、これも個 別に出た段階で考えていけばという整理です。  転籍関係ですが、転籍については、使用者が転籍元、いまの使用者のところを辞め て、完全に籍を移すという場合には、ちゃんと書面で転籍先の名称、所在地、業務内 容、財務内容等の情報や賃金、労働時間、その他の労働条件について、書面を交付する 必要がある。そういうことをしなかった場合、あるいは事実と違う場合には、そもそも 遡及的に転籍を無効とするということです。これは経営の安定から見ると、相手先の財 務内容まで転籍元に明示させる必要があるのか、ということが指摘されようかと思いま す。この考え方は、転籍というのは転籍元が一方的に転籍先を指定するものであり、労 働条件の他律的な変更を余儀なくされる。労働基準法の労働条件の明示の趣旨もありま すので、転籍元は転籍に当たって労働条件等、十分に説明する必要があろう。特に労働 者が相手先を知っていて求人に応募するわけではなくて、いきなり示されるわけですの で、当然その程度知らないと、辞めるか辞めないかの決断がつかないだろう。  会社分割の場合を考えても、労働契約承継法により、分割会社等が負担すべき債務の 履行の見込みがあること等、相手先の財務内容も明示しなければいけないことはないと なっておりますので、それの均衡も考慮して考えるべきではないかという整理です。 ○菅野座長  御議論をお願いします。 ○荒木先生  最後の点ですが、転籍の場合に会社分割等の均衡というのを言われたのですが、会社 分割の場合は、「当該営業に主として従事する場合には拒否できない」などということ がありますが、転籍の場合は本人同意が要件なので、「なお」以下は特に書かなくても いいのではないかという気もするのです。かなり利益状況が違って、むしろ新しい所に 転籍するかどうかの本人の判断材料として必要だということを指摘していただいたら、 それで十分かという気もしました。 ○菅野座長  これは本人が選択する上での。 ○労働基準局監督課長  主たる場合でない場合など、拒否できる場合もありますし、拒否しても、しなくても いい場合もあるし、選択する場合もあります。その項目を何にするかというのは、パラ レルに考える場合には、これがあり得るかという戦法としては役に立つかと。 ○荒木先生  申し立てられる場合にはパラレルにすれば似ていると、そういう趣旨ですか。 ○労働基準局監督課長  はい。 ○荒木先生  会社分割とは利益状況が違っていますが、似ている場合もあるということですね。 ○労働基準局監督課長  あと大事だということでは似ているという。 ○土田先生  いまの転籍の点は賛成なのですが、出向などはどうなのですか。いまの趣旨は、おそ らく完全に籍が移ってしまう、別の所へ行ってしまうだから、その会社の財務状況はど のぐらいか、ちゃんと提示して説明して、情報提供しなさいということだと思うので す。出向はもちろん在籍ですから、復帰が予定されているので、そこまで必要でないと いう割切りはできると思うのです。そこまで必要でないにしても、中間取りまとめのほ うで、4の出向の最初の囲みに続いて、「出向労働者の利益に配慮した規定の整備につ いて、引き続き検討が適当である」というのがありましたので、私はどういう形で最終 のまとめに行くのかわかりませんが、こういう方向性は残して、さらに進める方向性に するのが妥当ではないかと思います。  出向の5頁の中間取りまとめ以降の論点で、「賃金のほか、任意規定を置くべき事項 があるか」、これも一般論としては考え方の所にあるとおりでいいと思うのですが、出 向の法律関係、それ自体は客観的に定まっているものですから、それとの関係による制 限というか、制約というか、枠というのはあると思うのです。これは単に例示という趣 旨で挙げられているにすぎないのでしょうけれども、例えば出向先が出向労働者を懲戒 解雇できるかどうかについて、仮に当事者間の取決めがなければ任意規定を置けるかと いうと、これに限って言えば、任意規定としても置けないのではないかと思います。つ まり、いまの出向の考え方だと、出向元との間に基本的な労働契約があって、出向先に 部分的な契約関係が成立するという考え方ですから、出向先が出向労働者を懲戒解雇、 あるいは解雇できるという任意規定まで置けるかというと、これはいろいろな意見があ るでしょうが、私は任意規定としてもできないと思います。  ですから、次の次の退職金規定の適用は、任意規定としてできると思うのです。制度 が多様だから、任意規定について置けるものは置く。しかし、一方で法律関係を踏まえ ると、任意規定としてもちょっと無理なものもあるのではないかというところの整理と いうか、見極めはしておく必要があるのではないかと思います。 ○菅野座長  労働者派遣との関係で、出向は二重の雇用関係であると整理されていますね。こちら のほうでは、出向とは何ぞやという中で、二重の雇用関係があるのだという定義規定は 入るのですか。 ○労働基準局監督課長  入れざるを得ないですね。 ○菅野座長  それを入れる限りは、いま土田先生が言われたようなことは、当然、枠組みは決まっ てきますね。懲戒解雇がどうかというのは別にして、それによる制約が出てきますね。 ○土田先生  二重の契約関係も、文字通り二重の契約関係だと言えば、例えば懲戒解雇を含めて、 こういうのも出てくるし、そうではない、いわゆる二重に長期的に成立しているもので はないと考えれば、それはまた別のものになってくるので。 ○菅野座長  どこまで立ち入ってやれるかですね。 ○労働基準局監督課長  賃金のところは、最初のスタートのところで、本来的に言うと民法上言えば、賃金支 払債務の引受けというのは、両者の合意がなければいけませんからね。ただ行けと言っ た場合であれば、本来はその前の水準でしょうということは言えるのですけれども、退 職金をどうするかというのは、そのあとの話なので、どう任意規定として書くかという のはなかなか難しい。 ○土田先生  だから、権利義務関係について任意規定を置くということは、出向がどういう権利義 務関係、法律関係なのかということを踏まえておかないと、バラバラに権利義務関係に ついて、任意規定が企業でこうなっているからこうだというわけにはいかないでしょ う。そういうことです。 ○労働基準局監督課長  なかなか難しい。 ○曽田先生  出向というのは、いまいろいろな形があるわけですね。だから、この論点で書かれて いるように、実態がどういう状態なのかというのを踏まえて、それに対する考え方をま とめる必要もあるのではないかと思うのです。 ○労働基準局監督課長  非常に多種多様だということで、なかなかほかに何か任意規定というのは難しいとい う結論に至っているわけです。 ○山川先生  細かいことで、転籍に関して、6頁に「遡及的無効」とあります。つまり、同意があ った場合に、一定の要件を満たせば遡及的無効だということだと思いますが、無効であ れば普通は当初から無効で、法技術的には法基法15条とパラレルに考えれば解除で遡及 的に効力を喪失させるということもあると思います。ちょっとこの辺りは詰めてもいい のかと思います。 ○労働基準局監督課長  なくてもいいということですか。 ○山川先生  なくてもいいですし、解除、撤回という構成でもいいかもしれません。 ○菅野座長  よろしいですか。ここは中間報告でも、おそらくかなり整理が進んだものだと思いま す。配置転換、出向、転籍についても、ただいまの議論を踏まえて、表の右側の欄の 「指摘に対する考え方」を中心に整理したものを、最終報告案に盛り込むようにしたい と思います。今日の検討はここまでとして、事務局から今後の議論に関連して説明があ るとのことですので、よろしくお願いします。 ○労働基準局監督課長  前回、座長から「労働契約法の全体像理念・性格などの総論的な事項をもう一度議論 する必要がある」という御指摘がありました。事務局としても労働契約法制のそれぞれ の論点についての具体的な議論は中間取りまとめ段階でもかなり整理していただいたの ですが、最終報告では少し新しい切り口で、労働契約法制を検討するに当たって、現下 の基本的な課題をどのように認識して、それにどう対応する必要があるかという観点か ら、原点に立ち戻って、そういう議論をしていただければと考えております。これにつ いての具体的な御議論は、7月26日に予定している第25回の研究会で改めてお願いする 予定です。事務局としては、これは議論のきっかけ、取っかかりとなるのではないかと いうメモを、ただいまお配りしております。これは取っかかりのための事務局限りのも のですが、これについてお気付きの点などありましたら、早めに事務局まで御連絡いた だければ、それを基に基本概念はどのようなものかという皆さん方のお考えをまとめ て、基本コンセプトを固めたいと思っておりますので、よろしくお願いします。 ○菅野座長  いま配付されたメモをお読みになり、委員の皆様方御自身がお持ちの労働契約法制に ついての基本理念、考え方を事務局にお寄せいただいた上で、総論のところで改めて議 論をしたいと思います。予定の時間になりましたので、本日の研究会はこの辺りで終了 いたします。次回は、引き続き「労働関係の展開」について、今日の残りの議論をお願 いしたいと思いますが、次に議論いただく予定の「労働関係の終了・有期労働契約」に ついての議論も多少お願いできればと考えております。事務局から、次回の研究会の連 絡をお願いします。 ○労働基準局監督課調査官  次回は6月29日(水)18時から20時まで、場所は同じ厚生労働省7階専用第15会議室 にて開催したいと存じます。先ほど追加で参集者の先生方にお配りした資料ですが、会 場出口に御用意してありますので、傍聴者の皆様は御自由にお持ち帰りください。 ○菅野座長  本日の研究会はこれで終わりとします。どうもありがとうございました。 照会先:厚生労働省労働基準局監督課政策係(内線5561)