05/06/08 第4回 医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する 検討会 議事録  第4回医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会                      日時 平成17年6月8日(水)                         17:00〜                      場所 厚生労働省省議室(9階) ○赤熊補佐 ただいまから、第4回医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等の あり方に関する検討会を開催します。委員の皆様方におかれましては、ご多忙のところ 当検討会にご出席いただき誠にありがとうございます。本日は川端委員が40分ほど遅れ るとの連絡を受けています。なお冒頭にお断り申し上げますけれども、閣僚懇談会の申 合せにより、地球温暖化防止及び省エネルギーに資するため、6月1日から9月30日ま での期間におきまして、政府全体として軽装で執務を行うこととしています。したがっ て本日、事務局におきましては軽装にて失礼していますが、皆様におかれましても趣旨 をご理解いただければと存じます。なお、本日、ご発言の際にはお手元のマイクのスイ ッチを入れてからお願いしたいと思います。それでは山路座長、議事進行のほど、よろ しくお願いします。 ○座長(山路) 皆さん、こんにちは。議事に入る前に当検討会の予定している議題に 関連して、新聞記事がいくつか出たようですが、それについての説明を事務局からして いただけるということなので、よろしいですか。 ○野口看護職員確保対策官 お手元に6月6日(月)の毎日新聞朝刊の1面に出た記事 と、6月7日(火)の朝日新聞の夕刊に出た記事をお配りしています。これにつきまし て実は委員の方からも、この記事はどうなっているのかということで、ご指摘、ご質問 があったものですから、最初に事務局としてお断り申し上げさせていただこうというこ とです。  まず毎日新聞の記事ですが、既に厚生労働省といたしまして、看護師の再教育を義務 づけたかのような記載が記事になっていますが、もちろん、この議題につきましては本 日、検討会でご議論いただくということですので、私どもとしまして決定したというこ とはありません。なお、本日の資料の中でもご説明させていただきますが、医療安全の ワーキンググループの中で看護職の記述があるものですから、その辺を参考にされたの かなと推察されるわけです。  朝日新聞の記事におきましても、「保健師助産師看護師の業務範囲の見直しを決めた」 と書かれていますが、私どもとしてはそのようにしているということではないわけです。 念のため申し上げさせていただきました。 ○座長 いまのご説明に関して、よろしいですか。何かご質問はございますか。では議 事に入らせていただきます。本日は「行政処分を受けた看護師等に対する再教育につい て」、および「助産所の嘱託医師について」、検討していきたいと思います。ただし、 2番目の嘱託医師についての取扱いについては、最初に委員の皆さんにご相談させてい ただきたいことがあるということです。事務局から説明をお願いします。 ○野口看護職員確保対策官 2番目の助産所における嘱託医師という検討課題について ですが、これまで事務局にも委員のほうからこれについてご意見等もあり、座長ともご 相談させていただいた結果、このようにしてはどうかと考えています。この議題の議論 にあたりましては、まず実際に助産所を経営されている助産師の方からのご意見がどう なのかということを、きちんと把握する必要があるのではないか。あるいは仕組み的な ことは別にして、嘱託医師の方の実態がどういうことであるのかについて把握する必要 があるのではないか。またこの検討にあたりましては産科の医師の方々にも委員として 参画していただくのがいいのではないかなど、さまざま考えられるところですので、本 案件については中間取りまとめをするとされていましたけれども、その対象からとりあ えず外させていただいて、本日は資料の説明にとどめさせていただいた上で、中間取り まとめ後に改めて補足の説明も含めて、さらにこの検討会において検討を進めていただ く。そのような進め方がいいのではないかということです。よろしくお願い申し上げま す。 ○座長 ただいま事務局から、本日は資料説明にとどめて、中間取りまとめ後に助産所 の助産師の方、産科の医師の方にも来ていただいて、「助産所における嘱託医師につい て」の検討を行うというご提案がありました。よろしいでしょうか。 (異議なし) ○座長 ではそういう形で取り扱うこととします。改めて資料の確認をお願いします。 ○赤熊補佐 お手元の資料の確認をお願いします。先ほどの新聞記事2枚のほかに座席 表、議事次第、検討会メンバー表、資料1、資料2、資料3となっています。資料1に ついては33頁のものです。資料2については24頁のものです。資料3につきましては 3頁のものです。以上です。 ○座長 資料1について、事務局から説明をお願いします。 ○野口看護職員確保対策官 再教育の問題について、資料1でまとめています。最初に 再教育の前提となる、現在の看護職員に対する行政処分がどのように行われているかに ついて、ご説明申し上げたいと思います。1頁ですが、行政処分の対象となる者は(1)〜 (5)までとなっています。(1)〜(4)までが免許の欠格事由に当たるもので、この事由に当た る場合には免許が与えられないということです。免許をもらった後、事後的にこのよう な状況になった場合には処分の対象になるということです。(5)で、それとは別に品位を 損するような行為のあった者についても、処分の対象となることが書かれているわけで す。  2の処分の内容ですが、これは2つしかありません。免許を取り消すか業務停止を行 うかの2つです。なお、この業務停止については期間を定めて停止をします。無期限と いうことはなく必ず期間を定めることになっているのですが、現行の運用上は最短で1 月、最長で5年という取扱いで運用されているのが現実です。なお、この免許の取消に ついては、まさに医業なり看護を行うことが不適切だということで取り消すことでわか りやすいわけですが、業務停止は何でそういう処分があるのかということです。実は昭 和63年に最高裁の判決がございました。その判決によりますと、この業務停止の意義と いうのは反省を促し、これによって業務が適正に行われることを期するものであると、 このような趣旨で書かれています。  3の処分の流れですが、最初に免許の欠格事由に該当することが判明した場合に、そ の事実の中心になるのは判決です。その判決謄本等を添えて報告いただくように、各都 道府県に依頼をしているわけです。各都道府県からその情報がまいりますが、実は不利 益な処分になるものですので、その処分を受ける方について十分意見を述べていただく 機会を設けなければいけない。それを意見陳述手続と言っていますが、それが(2)で す。この陳述手続には大きく2つのパターンがあり、1番目が意見の聴取、2番目が弁 明の聴取と言っています。1番目が重い処分で免許取消の可能性が考えられるといった 場合には、より慎重な手続である意見の聴取を行う。業務停止かなと思われる場合には 弁明の聴取を行うということで、これは私どものほうで、どちらに当たるかを判断させ ていただいた上で、そのような手続を都道府県で取っていただくようにお願いをすると いうことです。  なお、ここで「意見の聴取」という言葉遣いをしていますが、これは行政手続の一般 法である行政手続法というのがあります。その用語で言うと「聴聞」と言われる手続に 該当すると考えていいと思います。これは主宰者というのがいて、そこで意見の聴取を 行う機会を設けるということで、裁判ではありませんが審理手続のような厳格な手続を 取るということです。  それに対して弁明の聴取というのは、行政手続法に言う弁明の機会の付与に該当する と言っていいかと思いますが、弁明の意見を申し述べます。ただ、保助看法上は書面で はなくて、基本的には来ていただいてご意見を聞く機会を設けるということになってい ます。  そのような手続について都道府県知事に依頼して、2頁になりますが都道府県で具体 的な意見陳述手続を実施していただき、それを書類にまとめていただいて、私どもに報 告いただくということになります。  その報告を基に処分を検討するわけですが、具体的には医道審議会でご議論いただき ます。この医道審議会はいくつか分かれていて、看護職員に関してはその下に保健師助 産師看護師分科会があります。この分科会の下にまたいくつか部会があって、行政手続 に関しては看護倫理部会が所管しています。この看護倫理部会の決定が審議会の決定に なるということで権限が与えられていますので、具体的にはこの看護倫理部会において、 先ほどの書類等を審査いただき、1件ごとに行政処分を決定し、その決定を大臣宛に答 申するということになります。答申を受けた大臣のほうで、通常はそのとおり処分が決 定されることになります。これが処分の流れです。  4の再免許申請ですが、これは免許を取り消された方が、もう1回この免許を得たい ということで、再交付を申請することができることになっています。その場合には同じ く看護倫理部会に1件ごとにお諮りして、免許をまた与えてもよろしいかどうかについ て慎重にご検討いただいて、その結果に基づいて判断することになっているわけです。 なお、再免許の申請についてはこれまで3件あり、いずれも認められたという経過があ ります。昭和30年代に2件、平成に入って1件ありました。以上の流れを図にしたもの が3頁です。  4頁に看護倫理部会で決定いただいた行政処分の考え方があります。これが具体的に 看護倫理部会で行政処分を検討する際のいわばガイドラインです。こういうことを平成 16年に明らかにしていただいたということです。最初の3行目にありますが、「当面、 以下の考え方により審議する」ということで、現在、この考え方に基づいてご審議いた だいているわけです。最初は総論的なことを書いていますが、真ん中辺りからになりま すけれども、「処分内容の決定においては、司法処分の量刑を参考にしつつ、その事案 の重大性、看護師等に求められる倫理、国民に与える影響等の観点から、個別に判断さ れるべきものであり、かつ、公正に行われなければならないと考える」という基本原則 です。  特に看護職ということに着目して、その下にある「生命の尊重に関する視点」とか、 看護職はまさに身体に触るということが業務に不可欠ですが「身体及び精神性の不可侵 性を保証する視点、看護師等が有する知識や技術を適正に用いること及び患者への情報 提供に対する責任性の視点、専門職としての道徳と品位の視点を重視して審議していく こととする」という基本原則を明らかにしていただいています。  5頁以降に、各事案ごとにそれぞれの留意点が書かれています。最初が保助看法違反 等の場合で、その下の辺りにありますが、「行政処分に当たっては、司法処分の量刑の 程度に関わらず、他者の心身の安全を守り国民の健康な生活を支援する任務を負う看護 師等が、自らに課せられた基本的倫理を遵守せず、国民の健康を危険にさらすような法 令違反を犯したことを重く見るべきである」、まさに自らの身分の根拠法となっている 法律に違反するのは非常に重いということです。  (2)が麻薬、覚せい剤ですが、これも真ん中辺りにあるとおり、看護師は麻薬等の 害の大きさを認識している専門職です。したがってそのことが非常に重大だということ と、患者の安全性が脅かされる。さらに他に伝播する危険性もあるということで、これ も非常に重く見るべきだとされているわけです。  (3)の殺人及び傷害に関しても、本来、人の生命や身体を守る看護師が、その守る という倫理に反したということですので、特に殺人を犯した場合は基本的に免許取消の 処分がなされるべきであると述べられています。  (4)の交通事故ですが、ここで特に問題になるのは、適切な救護措置をとらなかっ たり、あるいは通報しなかったりすれば、いわば専門職として当然の義務を放棄したこ とになりますので、この辺がもしなされていなければ看護師等としての資質及び適性を 欠くものではないかということで、十分検討しなければいけない。それに基づいて相当 の処分を行わなければいけないと述べられています。  最近、非常に問題になっている医療過誤、医療事故に伴うものが(5)です。3行目 辺りからありますが、「看護師等が国民の信頼に応えず、当然要求される注意義務を怠 り、医療過誤を起こした事案については、専門職としての責任を問う処分がなされるべ きである」とされています。「ただし」ということで、これは特に医師の指示の下にチ ームで看護を行っているという看護職に特有の問題もあるわけで、「医療過誤は、様々 なレベルの複合的な管理体制上の問題の集積によることも多く、一人の看護師等の責任 に帰することができない場合もある」としています。なお、いわゆる医師でリピーター が問題になっていますが、同じく「なお」書きにありますように、「再犯の場合は、看 護師としての資質及び適性を欠くものではないかどうかを特に検討すべきである」とい う指摘をいただいています。  (6)のわいせつですが、これも人の身体に接するという看護職の性格からして特に 問題だということです。看護師としての倫理性の欠落あるいは不適格であると判断すべ きだとしています。特に看護師等の立場を利用して行った事犯は、非常に悪質だという ことが述べられています。  (7)の詐偽・窃盗ですが、ここでも特に患者との信頼関係で成り立っている職業で すから、患者の信頼を裏切って患者のお金を盗むといった立場を悪用したものについて は、倫理性が欠落していると指摘されているわけです。  以上のような観点から、行政処分が個別に審議され結論が出されているということで すが、その処分件数が実際にどうなっているかということで、8頁以下に挙げています。 あまり以前の事案について出しても意味が乏しいのではないかということで、平成にな ってからの処分件数をまとめています。真ん中の右辺りに計とありますが、免許取消が 20件、業務停止が101件、合わせて121件の行政処分が行われています。免許取消につ いては殺人及び傷害が10件、わいせつが4件等となっています。業務停止については、 いちばん多いのが業務上過失致死(傷害)/医療で、いわゆる医療過誤とお考えいただ ければいいと思いますが、医療過誤が32件、詐偽・窃盗が22件、交通事故が16件、覚 せい剤が10件となっています。  この辺の処分件数が、年次的にどうなっているかを9頁に示しています。平成の初め から現在まで処分件数、免許取消、業務停止を計のところで書いています。これをご覧 いただくと、平成の1桁台の後半、特に2桁になってから処分件数が増えてきている状 況にあります。  2桁になってからの処分件数を事案ごとに見たものが10頁です。やはり計のところで 見ていただくと、業務停止でいちばん多いのが27件ですが、これは業務上過失致死(傷 害)/医療、いわゆる医療過誤に基づくもので、平成13年度から始まり非常に件数が増 えてきています。  11頁に具体的な処分事案について紹介しています。これは平成16年度に実際に処分 された事例の中で、ややパターンの違うものを集めています。最初が覚せい剤取締法違 反ですが、覚せい剤を自ら飲むとともに、更衣ロッカー内にその粉末を隠していたとい うものです。業務停止1年6月です。  あと交通事故が続きますが、最初の事案は前方不注意で横断中の歩行者に怪我をさせ、 その後の報告義務を怠ったものです。業務停止3月です。  その次はさらに悪質で、酒気帯び運転であること、信号無視であること、信号に従っ てきた原付自転車に衝突して死亡させたという事例で、業務停止2年です。  次から医療事故が続きますが、最初の件は尿の検査で、これは糖尿病の患者さんのイ ンスリンの分泌動態の把握ということで、尿中Cペプチド検査を実施するわけですが、 実施するために尿を溜めておく容器があり、その尿が腐らないようにアジ化ナトリウム という、見た目は白い粉ですが危険な毒物です。それを容器に入れておくということで すが、その容器に入れるべき、体に使ってはいけない防腐剤を申し送りのときに、A子 という50歳代の方から、B子という20代の方への引き継ぎが不十分で、飲み薬だと誤 解してアジ化ナトリウムを飲ませてしまった。その結果、患者が急性中毒になって死亡 したという事案です。  次は人工呼吸器の取扱いのミスです。ホースが外れてアラームが鳴り、それに気付か ずにアラームの解除キーを押してしまい、その後、再度アラームが鳴ったときにホース が外れていることに気が付いたのですが、接続場所を間違えてしまって、結果として酸 素供給が12分間遮断され、患者を死亡させたというものです。これは業務停止3月です。  次は薬のあげ方を間違ってしまったということで、下痢の薬を胃腸に注入しようとい うときに、この患者さんの場合には鼻からチューブが出ているのと、鎖骨のところにや るためにチューブが出ていたということがあり、本来なら鼻のチューブに入れなければ いけないところを、鎖骨下静脈に注入するようなところに入れてしまったということで、 肺動脈が詰まって呼吸不全で死亡してしまったという事案です。これについては、本来 はチューブが違っていれば入らなかったはずなのですが、この患者さんの場合には患者 さんに合わせた用具が必要だということで、たまたま両方ともつながってしまうような チューブになっていたということがあって、病院としての管理体制にも問題ありではな いかという意見もあった事案です。  次は麻酔薬ディプリバンを静脈に注射するときに、流量の設定を間違えて過剰に与え てしまった。その結果、心肺が停止になり、低酸素性脳障害で死亡したという事案です。 業務停止3月です。  次は児童買春の事案です。その次は病院の手術室の更衣室から現金とキャッシュカー ドを盗んだ事案です。その次は勤務先の病院で向精神薬を詐取した事案です。その詐取 の仕方ですが、注射箋を偽造して薬剤師に薬を出させたという事案です。以上が平成16 年度における具体的な事案の紹介です。  現状はそういうことですが、実は医師の再教育をすべきであるという方向性が、現在、 打ち出されています。それが12頁以下です。第1回資料で配っている医療安全に関する 大臣の緊急アピールというのが、平成15年12月に出ています。そのアピールの中で人 の施策を充実すべきだということの1つの中身として、処分を受けた医師に対する再教 育を検討すべきだということが明記されました。  その動きを受けて平成16年3月、医師について取り扱う医道審議会医道分科会におい て、別途再教育について検討すべきだとされ、それを受けて検討会が置かれて検討され てきたという結果です。その検討会の報告書が今年4月22日に公表されました。その概 要を2枚ほど付けて、その後に再教育の具体的な中身を表にしたものを付けています。  1の「はじめに」のところに書いていますが、これは医師とされていますけれども、 2つ目の○にあるとおり、行政処分を受けた歯科医師に対しても同様の取組みが講じら れるべきであるとされています。なお、医師の更新制の議論も出てくるわけですが、す べての医師を対象とした更新制と、処分を受けた医師に対する再教育とは異なるという ことで、今回の報告書は再教育に焦点を当てているということです。  2の行政処分の現状と問題点の2つ目の○で、処分された人については倫理観が欠如 している。あるいは医療技術が未熟であるという問題がある。したがって、現在の行政 処分のみでは適正な医業の実施が期待できないのではないかという指摘を受けて、処分 された方が反省する。医業を再開するときに適正に医業が行われるようにするために、 具体的な過程を整理する。この具体的な過程というのは再教育すべきだということです が、それが必要だということになったわけです。  3の再教育の在り方について、いくつかの項目でまとめられています。(1)は再教 育の目的で、安心・安全な医療、質の高い医療を確保する。そのために処分された方の 職業倫理を高めること。また併せて医療技術を再確認することが、再教育の目的だとさ れています。  (2)は再教育の内容で、助言指導者を被処分者ごとに選任するとされています。こ れはなぜかというと、処分事案、処分される方々が個別にかなり異なるということで、 個々の状況に応じて適切な再教育を行うためには、一人ひとりにその人に合った助言指 導者が付いて、その助言指導者の相談に応じて再教育の中身を検討すべきだという考え 方です。  この再教育の中身は、大きく職業倫理と医療技術の2つに分かれていて、職業倫理に 関する再教育については、教育的講座の受講やボランティア活動など、さまざまな中か ら組み合わせて実施することになっています。月1回程度、助言指導者が、その効果が あるのかどうかも含めて面接をしたらどうかとされています。医療技術の再教育に関し ては2つあって、1つは技術が未熟であったが故に医療事故を起こしたという場合には、 その技術がきちんと獲得できているのかどうか。さらに医業が再開できるのかどうかに ついてきちんと確認をするというのが再教育の中身です。医業停止期間が長期にわたる 場合には、医療現場から離れると腕が落ちるということがあるし、その間、新しい医学 知識が必ずしも吸収されないことがあるので、その辺の医学知識の不足、医療技術の低 下を補うことが必要ではないかとなっています。  (3)の再教育の対象者については、倫理面の研修については全員が対象となるべき だとしています。医療技術の再教育に関しては技術が未熟で医療事故を起こした場合と、 医業停止期間が長期に及ぶ場合を対象にしたらどうかとされています。なお行政処分を 受けたとなっているのですが、これは医業停止を受けたということですけれども、免許 取消処分を受けた場合であっても、もう1回再交付をすることはあり得るわけで、再交 付が許される場合には再教育を義務づけることが、いいのではないかとされています。  13頁で(4)の再教育の助言指導者としては、処分された方の状況に応じて適切な指 導者が重要になってきます。倫理研修については倫理観の涵養ということで医師である 必要はない。宗教家ということもあるかと思います。ただ、技術研修については、まさ に技術の問題ですから当該分野における専門知識・技術を有する医師がやるべきだとさ れています。  (5)の再教育の提供者としては、まさに身近に付く助言指導者自身が提供する場合 もあれば、再教育の中身に応じて適切な方が、研修計画書に基づいて提供すればいいの ではないかということで、倫理研修の提供者の場合、技術研究所の提供者の場合を、そ れぞれこのように書いているわけです。なお再教育の直接のコストについては、原則と して再教育を受ける処分を受けた方の負担とすることが適当とされています。  この再教育がきちんと成果を生んだかどうかについては、レポートで評価するという ことです。処分された方自身が作成するレポートと、助言指導者が作成する研修の評価 についてのレポートを審査して、一定の評価基準に到達したかどうかによって、再教育 の修了の認定を厚生労働省の責任でしたらどうかということになっています。  以上のような再教育という仕組みが実際に実効性があるためには、医師法を改正して 義務づけを行うことが必要ではないかとされています。特に国の役割として指摘を受け ている、いま言った制度面の整備、それと助言指導者が重要な役割を果たすわけですか ら、その助言指導者についても、例えば助言指導者を養成するための研修会を行ったり して養成するべきではないかとされています。また行政処分全体に係る話ですが、行政 処分の根拠となる事実関係の調査権限が事務局になく、拒否されればそれまでであると いうことで、必ずしも調査できない状況がありますので、その辺についてきちんとした 体制を整備すべきではないかという指摘もあります。  4の当面の対応ですが、現行制度の下でモデル的に実施し、助言指導者の養成も行い、 その取組みを踏まえて、実効性のある再教育制度を構築すべきではないかと指摘を受け ています。なお再教育を実施するためには、行政処分自体の類型等を見直していかなけ ればいけないという問題点があり、これについては別にまた検討すべきだとされていま す。これは後で紹介しますが、別にまた検討会を置くということになっています。  14頁で、これはいま申し上げた再教育の中身について、1つの表にまとめたというこ とです。説明については大体いま申し上げたとおりです。  新たな検討会を開催する必要があるということで、15頁、16頁に資料を付けています が、実はまだ検討会自体は発足していません。こういう検討会を置くべきだということ で設置をして検討を進めるように、いま事務的に準備を進めているという段階です。  その検討会の検討事項ですが、15頁から書かれているいくつかの項目です。例えば処 分類型の見直しに関しては、医業停止をされた間は医業ができないということですが、 特に再教育の中身で技術研修が入る場合には、医業が含まれるわけです。そうすると医 業停止ということと、再教育で医業をするということをどう考えたらいいかも含めて、 少し議論が要るのではないかということです。長期間の医業停止ということの意義が、 どうなのかについて、特に長期間医業から離れれば離れるだけ、いわば技術が落ちてい くということですので、その辺を含めて検討する必要があるのではないか。行政処分に ついての調査権限が要るのではないか。  16頁で、医籍について再教育を記載事項とするのかどうか。行政処分というのは決ま るまで時間がかかるので、決まる前に自主的に免許を返納されてしまうことになると、 行政処分が実施されない。それで再免許の交付も妨げられないということで、この辺は 手続的整備をする必要があるのではないか。最近、よく言われることで、この人が本当 に医師なのかどうかを、どうやって確認すればいいのかという問題もあります。この辺 について平成17年度中を目途に報告書を取りまとめるということで、現在、準備を進め ている状況です。  17頁で、これはまさに「医療安全対策検討会議」が本日の2時から開かれていて、そ の場で報告された報告書です。この「医療安全対策検討会議」の下でワーキンググルー プが設置され、今後の医療安全対策をどうしたらいいかをご議論いただいて、取りまと めていただいたペーパーです。  18頁に、はじめにということでいろいろ書いていますが、19頁の真ん中辺りから書い ていますけれども、基本的には医療安全対策は「医療安全推進総合対策」と決められて いて、この考え方に基づいて進めているわけです。それに加えて医療の安全と両輪をな すべき「医療の質の向上」という観点を一層重視して、施策を充実していくことが求め られている。特に患者国民の主体的参加を促進することが重要であるということで、こ のような問題意識のもとで、さらにこの施策の充実を図るためにどうしたらいいかとい うことで、このワーキンググループによる報告書がまとめられたということです。  具体的にはI、II、IIIとありますが、この3つの柱を重点項目として、それぞれの項 目ごとに将来像のイメージを示し、その実現に向けて当面の課題を掲げたという構成に なっています。Iの柱である医療の質と安全性の向上の部分で、実は再教育の部分が関 わってくるわけです。  20頁から医療の質と安全性の向上の部分ですが、最初に将来像のイメージが書かれて います。21頁の(6)で行政処分を受けた医療従事者に対する再教育が触れられていま す。行政処分を受けた医療従事者が、自らの職業倫理を高め、医療技術を再確認し、能 力と適性に応じた医療を提供するための再教育を受け、医業再開後、適正に医業を行っ ている。これが将来像の姿であるということで、ここでは広く医療従事者という表現が 取られています。  当面の施策については24頁です。(6)に行政処分を受けた医療従事者に対する再教 育を当面どうするかが書かれていますが、最初にあるのは医師について報告書がまとめ られたということを紹介し、25頁ですが、そのような取組みについて、医師について検 討すべきだとされていますけれども、その真ん中辺りで線を引いていますが、「看護師 等他の医療従事者についても、行政処分を受けた後の再教育等について検討する必要が ある」ということで、この医療安全のワーキンググループからも、看護師について検討 すべきだという指摘を受けているということです。  以上のようなことを踏まえ、再教育に関するさまざまな論点があり得るのではないか ということで32頁に少しまとめました。問題意識ですが、いまのように医師について再 教育を導入したらどうかということが進みつつあり、医師と同様に、行政処分を受けた 看護職員に対する再教育の仕組みを考えるべきではないかという問題意識で、これを出 発点にしたらどうかということです。  改めてその現状ですが、業務停止処分を受けた看護職員は、業務停止期間を過ぎれば 特段の条件なく業務に復帰できるのが現状です。免許取消処分を受けた者について再交 付ができることになっていますが、その場合には1件ごとに医道審議会(看護倫理部会) において審査の上、決められるということになります。先ほど処分件数のところで紹介 しましたが、近年、行政処分の件数が増えている。とりわけ医療事故による業務上過失 致死(傷害)による処分が増加している現状を、どう見るかという問題があります。  以上のようなことで、その現状に対していくつか問題となる点があるのではないかと いうことです。最初は技術の問題で、現行の、時間が経てば業務に復帰できるというだ けでは、安全で確実な看護技術の提供が確保されるのかという問題がある。先ほどの処 分事例でありましたが、割と長期の業務停止ということもあるわけで、その離れている 間の技術の低下をどう防ぐのか。自主性に任せていいのだろうかということです。2つ 目に、倫理観の欠如といった問題に対して、それを担保する必要があるのではないか。 3つ目に、特に医療事故の当事者となった被害者、家族の方々の立場からすると、自分 たちに起きてしまったことは残念であるけれども、こんなことが二度と起きないように してくれという強い願いがあると思います。つまり同種の事故が再び繰り返されないこ とが、せめてもの願いだということになるかと思います。時間の経過のみで業務に復帰 できるということについて言うと、そういう願いに反するし、応えられないことになる のではないか。そういう問題意識です。  そういうことで再教育制を導入したらという議論になるわけですが、積極論、慎重論 があり得るということです。積極論は、いま申し上げたような問題点を解決するために は導入したらいいだろうということです。慎重論については、先ほど処分事例のところ でも若干あったように、看護師等が関わる医療事故の場合には、もちろん看護師本人の 注意義務違反もあるから処分されるわけですが、施設の安全管理体制上の不備が影響し ている場合等もあるということで、行政処分を受けた個人に対する、いわば叩き直すと いう意味の再教育の実施だけで、本当に有効なのかどうか疑問がある声もあるというこ とです。また、そもそも再教育制そのものに関わりますが、再教育してもしようがない 人も中にはいるのではないか、という議論も当然あり得ると思います。  以上、再教育について、導入するとして、さらに細かい点は検討する必要があるので はないかということで、再教育を受けるべき対象者をどう考えていったらいいか。また 再教育の中身はどうするのか。再教育に不可欠と考えられる助言指導者はどうのような 人がいいのか。再教育が終わったというのにはどういう基準があり得るのか、誰が認定 をするのか。再教育を具体的に誰が実施するのか。この再教育という仕組み自体を誰が 責任を負うのかといった点について、今後、検討していく必要があるということです。 以上です。 ○座長 論点が多岐にわたるようですけれども、ただいまの説明に対してご意見、ご質 問をお願いします。 ○菊池委員 看護職員の場合に、業務が患者さんの生命に直結する業務であるというこ とで、倫理観や知識・技術など個々人の資質が非常に重要だと思います。そういう観点 から再教育を導入することを検討すべきかなと考えます。その際に最近、医療過誤関連 の行政処分が多くなってきていますけれども、研修の内容に、行政処分の原因がそうい うことであった場合には、当然医療安全に関する研修といった内容も含まれるべきだと 考えています。  そういうふうに再教育の導入で個々人の資質を向上させることは、その後のいろいろ な医療事故を防ぐ観点から重要だと思いますが、一方で、最近増えている医療事故は個々 人の不注意という部分もありますけれども、いろいろ事故の内容を見ていると組織全体 の医療安全対策が不十分なことが、強く考えられるわけです。そういう意味で、医療機 関等の医療事故対策そのものが、もっと強力に推進されることが必要だと思っています。  例えば、リスクマネジャーの設置ということもありますし、看護職員が非常に足りな い中で看護業務の密度が高くなっています。患者さんにモニターを付けていても、ほか の患者さんの所に行っていて、看護師がモニターを全部チェックしきれない状況の中で、 人がいない間に患者さんの容体が急変して、対応が間に合わなかったということもあり ますので、医療事故を予防するための対束そのものが、まず抜本的にきちっと考えられ るべきだと考えます。  予防的に医療事故対策が行われることがまず1つですが、そのことについては今度の 医療安全対策のワーキンググループの中でも、予防ということを考えた場合には個人の 責任追及よりも、起った事故に対して原因を究明し、その防止のための対策を立ててい くことが極めて重要と、この報告書でもまとめてあります。例えば行政処分を受けるよ うな医療事故が起きた所は、本人の再教育もそうですが、そこの医療機関自身の再教育 というか、医療機関においてその事故がなぜ起きたのかを徹底的に分析して、それに対 する対策をその医療機関の中できちっと考えていく。そういうことを促進することが非 常に重要ではないかと考えます。 ○座長 ほかに、いかがですか。 ○小島委員 ただいま医療機関に再教育が必要だという問題が出ていますが、私も同じ 考えをしています。医療過誤を出すことが、個人の責任だけですべて解決できる問題で はないと考えています。特に組織になると、さまざまなレベルの複合的な管理体制がい くつかナースを取り巻いている。そういった問題点を1つ1つ解決した上で、安全な環 境があってナースは仕事ができることが非常に重要になってきますから、一人、ナース だけに責任が重くのしかかるだけでは、安全なものはできていかないと思いますので、 そういったことも含めてこの安全のことを考えていく必要があると思っています。  そのことが1つあることと、再教育は当然必要なことですけれども、いま、倫理の教 育と技術の側面が特に重要であるという説明がありました。それは非常に重要なことで すが、組織で働いている多くの看護者に必要なことは、医療はチーム医療でしますので、 チーム医療の中でどのように働くかという視点も1つ入れていくことが必要だろうと思 います。今は1つの看護行為をするにも、多くのチームが関わります。ですからチーム 医療の視点が非常に必要ではないか。  その柱として他職種と看護職種の関連性とか、あるいは協調するコラボレーションと いったものが非常に大事になってくると思います。ナースが再教育を受ける中にも、チ ームで医療をしていくことの意味合い、その中における責任、他職種とコラボレートす るときの責任、そういったものが医療の安全対策につながると考えています。そういっ たことも是非、検討する必要があるのではないかと考えています。 ○座長 再教育の中身のあり方の話ですね。 ○小島委員 そうです。 ○座長 ほかに、いかがですか。それに関連してでも結構です。 ○谷野委員 病院も含めてということを言われれば、そこまで広げれば国がちゃんとし た医療供給体制をやっているのかどうか。私の兄が東海大の附属病院長をやっていたと き、大学病院の医療事故のいちばん初めみたいなことが起こり、あの後、黒川先生と兄 が医療安全について言っていることで、黒川先生の意見は非常に明快なのですが、前提 があって、日本の看護も1対1にすべきだということを言われるけれど、日本の医療費 があまりにも安過ぎるという前提がある。  何を言いたいかというと、そういう空論を言うよりも、病院の構造的な問題はありま すけれども、ただ、個人の問題だけではないと思います。国のやるべきことはひとつ明 快に踏まえておく必要があるのではないか。この前の議論みたいに届出制ひとつとって も、国の役割を放棄して、最近の流れは国の役割をきちんとしていないので、医療安全 というのは極めて国の問題ですから、国の責任をまずきちんとするべきです。そのため には、いかにマンパワーと医療費がかかるかということも、きちんと議論していかない と、構造的な問題というのは解決できないのではないかと思います。くどいようですが これは個人の問題では私は決してないと思います。 ○座長 谷野委員の言われることはわかりました。国の責任というのは、要するにもう ちょっと医療に金を出せということですか。 ○谷野委員 お金だけの問題でなくて、医療安全について国がもう少し力を入れて、再 教育ということ自体がもう後追いみたいですから、日ごろ、このことについて十分な教 育なり啓発活動をきちんとやっておくということ。また東海大のことを言うようですが、 看護師だけで千何百人いるのです。とてもじゃないが、そこでのリスクマネージメント は、1人のリスクマネージャーだけに負わせられないです。別に医療費ではないのです。 医療費もアップすればそれに越したことはないですが、医療安全に対してどれだけ国の 予算を発動するかも真剣に考えてもらわないと、基本的な問題は解決しないように思い ます。医療費だけの問題ではもちろんないのです。 ○座長 ほかに、ご意見があればどうぞ。 ○辻本委員 患者の立場として、事務局の説明をずっと聞いていく中で割り切れないも のがあるのは、倫理面の問題と技術面の問題は確かに線引きは難しいと思いますけれど も、例えばわいせつ行為をしたり覚せい剤をしたり、酒気帯びで交通事故で人を跳ね殺 してしまったりする人の再教育と、医療事故という形を作ってしまった人と、それを1 つで語っていくことにものすごく強い違和感を感じています。  再教育ということで現場復帰を図ることで、その人の更正を支援する。それはとても 大事なことだと思いますけれど、素朴な意見として、わいせつ行為だの酒気帯びのとい う人に何か診てほしくないなという気持もあります。それは議論の外としても、これを 一括りで語っていることに強い違和感を感じているということを申し上げておきたいと 思います。 ○川端委員 この今後の医療安全対策について報告書をまとめた、医療安全対策検討ワ ーキンググループの一員でしたので、とりあえず現在、問題になっている行政処分を受 けた後の再教育について申し上げたいと思います。  当然、看護師等についても、行政処分を受けた後の再教育が必要だと思います。問題 はその中身ですけれども、この医療安全対策検討ワーキンググループでは、その再教育 の際に、例えば医療事故の被害に遭った人の話を直接聞く。そして具体的な医療事故事 例に即した検討を行って、そういうものを教材に使った教育をすることが、非常に重要 であるということが強調されています。それがこの報告書の中にも(3)として載っている わけです。  看護師の方の場合も、抽象的に倫理や技術を語ってもしようがないわけです。もちろ ん、いままでの医療事故を見ると、医療機器のほうに間違いを犯しやすい欠陥があると か薬品の名前の問題、あるいは病院全体の体制の問題などがあるというのは常にあるわ けですけれども、その辺は全体の安全対策ということで前提事項ですから、ここでは事 故を起こして行政処分を受けた方に対する教育ということを考えると、そういう具体的 な事例に即して、しかも被害に遭った方から直接声を聞いてもらう教育が重要であると いう議論が、このワーキンググループでなされていましたので、ご紹介したいと思いま す。 ○野口看護職員確保対策官 補足させていただきます。私の説明が不十分で申し訳あり ません。ワーキンググループで十分ご議論いただいのと同じように、医師の検討会の中 でも同じようなことで、再教育の一環としての講習会においては医療関連法規、保険診 療制度、医療倫理学、行政処分を受けた事例の提示などの講義の受講だけでなく、患者 団体、医療事故の被害者から経験談を聞く機会を設けること。また医療事故の事例につ いて意見交換するということで、患者さんのそういう苦しみがいかに深いかということ をよく理解しなければいけないことが議論されていることを、先ほどの説明で漏らしま して申し訳ございませんでした。 ○座長 ほかに、いかがですか。 ○坂本委員 私は、再教育ということにおいては賛成です。何らかの形でいつも病院の 中では、そういうのに遭遇したナースがいつも何か吹っ切れなくて、いろいろなことで 悩んでいる状況というのがあるわけですので、きちっとそういうところを教育し評価し ていくという形はいいと思います。  ただ、現実的にナースの人数ということになってくると、例えば50床の病床に夜間に 2人しかいないという状況になったときに、お家にいるほうが人がいるという状況で、 人工呼吸器等いろいろな機器を使いながら、マニュアルをいくら作っても、そのマニュ アルをやっていたら他の患者さんのところへ行けないという現実があるわけです。そう いうことに対して、では国なのか施設なのかということにおいては、国は何も制限はし ていないわけです。何人以上という決まりはありますが、ナースの人数を何人にしなさ いという制限は何もしていない。それに関して病院が夜勤のナースをたくさん入れよう とすると、経営的には大変な問題が起こってきて、病院としては大変苦しい現状に置か れているわけです。  そういうことに関して、どういうふうな規制をかけていくかが1つ重要だと思います。 個人の再教育をいくらしても、マニュアルに従わなくてうっかりミスをしてしまったと かで、患者さん自身にとっては大変に重大な例になることもありますから、ナースの再 教育ですべて済むかといったら、決してそうではないと思います。そうすると体制的な 整備ということも、きちんとやっていく必要があります。  個人的な再教育だけで終わっていくと、ひとつ危惧されることは、そういうものが整 備されていない病院に就職しなくなることが起こってくる可能性もあると思います。そ ういうことを考えていくと、体制的な整備と個人の再教育をセットで、きちっと環境も 整えることをやっていかない限りは、それを国が規制していくというか、そういうのを 監視していくことをきちっとやっていかない限りは、絶えずそういうことに巻き込まれ る人が出てくるというふうに思いますので、是非、セットで再教育もしていただきたい と思います。 ○金川委員 いろいろ説明はあるのですが、行政処分を受けたナースに関しては、それ なりの再教育の導入ということに原則的には私も賛成です。ただ、それぞれからお話が ありますように、個人だけではない形で起こってくる問題というのを、どういうふうに うまく合わせていくか、そこが非常に難しいということです。それが1つです。  具体的にはいろいろあると思いますけれども、再教育の仕組みをどういうふうにして いくかという、そこをきちんと検討をしなければいけないと思っています。たぶんこれ はここで検討というより、どこかで検討なされると思いますから、是非、この仕組みに 関しての検討はお願いしたいと思います。  いま、再教育ということが中心ということですが、これは起こってしまったらしよう がないにしても、予防的な意味では看護教育の中にどうやって取り入れていくか、是非、 こういった問題に関してのものを教育の中に取り入れていきたいと思っています。行政 処分を受けた実例がこんなにあるのかと私も思いましたが、これからまだまだ多くなる 動きがありそうだという雰囲気の中では、こういった事実もある程度教育の中でしてい く必要があるのではないかと感じました。  もう1つは、こういった行政処分を受けた方の教育をして、きちんと再復帰という形 での再教育ということですが、その後のフォローというのも非常に大事だと思います。 下手にレッテルを貼ってしまうと、その後の仕事に支障があるということで、その辺の 本人の人権というものも勘案していく両面が必要かなと思います。もちろん行政処分を 受けた方を応援するとか、そういう意味では決してないのですが、その人権というもの もどうしていくか併せてと思っています。 ○小島委員 いまのお話で私も同じことを感じていることがあって、実際にアクシデン ト等に見舞われたナースの場合は、非常に心のケアが必要になってきています。それは 当事者がかなり傷ついていますから、心理的な援助も必要になってきますし、PTSD と言いますかストレス症候群に陥っていますので、そういったものも専門家による支援 も必要になってきますので、そのフォローをする中で、1年とか2年といった年数にわ たって見ていくことが非常に必要になってくると思っています。  いま、そういうセルフヘルプをするような例もあると伺っていますが、そういったも のも一緒にケアしながら再教育もしていって、より良いケアのできる看護者として患者 さんのケアができるようになっていくような、そういう支援のところも併せて必要では ないかということを強く感じています。  また、いま卒前教育のことの話もありましたが、実は私はたまたま看護学部で2年生、 3年生、4年生、いろいろな看護学生にリスクマネージメントの卒前教育をする機会を 持っておりまして、看護学部で講義をする機会がございますが、非常に真剣に聞いてお ります。それは行政処分を受けたナースの再教育ということではございませんが、卒前 から、看護の仕事がどれほど重要な役割を持ち、また、行政処分を受けないようにする ために、どれほどのことをいつも考えてセーフティーにやっていくかというようなこと も、卒業して大変戸惑った中でストレスフルにやるということではなくて、徐々に基礎 教育とうまくコラボレートしていくといいますか、連携していくといいますか、そうい うところでも非常に大事ではないかということを強く日頃から感じておるものでござい ます。 ○谷野委員 非常に各論的なことを言うようですが、業務上過失致死、いわゆる医療過 誤と、わいせつ行為や殺人、傷害、麻薬、交通事故等他の行為とは別にして考えるべき だと私は思います。殺人を犯すとか、わいせつ行為をやるとか、麻薬をやるという人た ちは、そもそも構造的なものではなくて適性が問われているわけですから、それと医療 過誤と同じ再教育でいいのかどうかということも考えないと。これを同じくは考えられ ませんよね。 ○小島委員 いま先生がご指摘のとおりで、いま説明を伺い、また、ご意見を頂戴して 再度そのように強く思っておるものでございます。わいせつ、殺人、窃盗とかいうその ことと、医療過誤で行政処分を受けるということとは全く別にして考えないと、非常に 問題も整理しにくうございますし、同じ意見です。 ○平林委員 いまのご意見に私も基本的に賛成です。川端委員もお話になりましたよう に、各論的に考えていくときは、具体的な事故事例その他個別の処分に即して、どうい う再教育があるべきかを考えていかなければならないと思います。また総論的に言えば、 行政処分を受けた看護師等に対する再教育というのは、全体としての医療安全の確保に 向けての方策の1つの部分でしかないわけですから、全体としての医療安全の確保に向 けた枠組みの中で、それとの関連を常に考えながら、どこまで再教育で医療安全を確保 できるかという射程距離といいましょうか、それを常に考えていかないと。再教育だけ で全部問題を解決できるとは思えませんので、そこら辺を少し気をつけないと、議論が 拡散してしまうのではないかと思っております。 ○野口看護職員確保対策官 事務局としてどう考えるかということですが、どのような 再教育の中身があり得るのかということは、事例に即して考えなければいけないという のがもともとの、まさにおっしゃるとおりの出発点でございます。  医師の報告書で、倫理研修と技術研修と、大きく2つに分けておりますが、例えば倫 理研修1つをとりましても、どういう事案によるかによって中身が全然変わってくると いうことです。それにつきましては、先ほどの被害者の声、あるいはボランティア活動 のようなものも含めて、いろいろな中から実際に研修計画書を作って、それを助言指導 者と相談をしながら、何が必要なのか、何をやらなければいけないのかということを個 別、具体的にやる。しかも、これはかなり内省面、自分の心の問題にも関わる話ですか ら、なかなか一朝一夕には再教育の実があがらないのではないか。この報告書の中でも、 自己を見つめ直す、見極めるということで、比較的長期の研修が要るのではないか。そ ういう意味で、この14頁にありますが、少なくとも3か月〜1年程度はかかるのだろう。 また、その中身については処分事例ごとに決めなければいけないのではないかというこ とで、まさに、事例ごとに違うことを個別に考えていく必要があるとなっております。 ただ、最初にチラッと申し上げましたとおり、もともと再教育が本当に有効なのかとい う議論は、実は常にあったのだろうと思います。 ○川端委員 行政処分を受けた方に対する再教育というテーマから少し外れるのですが、 安全対策の一環としての再教育という意味では、看護師等の資格を得て仕事をしている 方たちに対する定期的な再教育それ自体が視野に入ってくるべきではないかと思います。 もちろん、卒前教育が重要であるというのはそのとおりですが、卒後のそういう教育が 重要ではないかと思うのです。  ちなみに弁護士の場合は、現在、登録した直後と、登録してから10年ごとに倫理研修 を受けなければならない、と弁護士会の会則で定められております。そこでは具体的な 懲戒事例についてディスカッションをするという形で研修が行われております。教育が どれぐらい効果があるかというのは、確かにすぐにはわからないことでしょうけれども、 こういう行政処分を受けてきた方の教育だけではなくて、もっと全体の安全に対する意 識を高めるというためには、定期的な再教育というのも将来視野に入れられるべきでは ないかと思います。 ○辻本委員 理解を助けていただくために教えていただきたいのですが、この再教育と いうことを構築していくときには、どこが主体になるのですか。国ですか、それとも自 治体でしょうか。 ○野口看護職員確保対策官 まず、再教育が必要かどうかというご議論をしていただい ていますので、その後どうするかというのは、また検討しなければいけない事項ではご ざいます。少なくとも、医師において考えられておりますのは、再教育の実があがった かどうかについては厚生労働省においてきちんと評価をして、修了したかどうかを認定 するということになっております。もともとは国家資格を管理している行政として、そ の再教育について、処分というかどうかは議論があると思いますが、処分ないし処分の 一環として再教育を制度的に実施する。ただ、具体的な実施は誰かに委託するというこ とになるのだと思いますが、そういう意味では、資格を持っている行政として責任を持 って行うという前提に立っていると考えております。看護師の場合にも、おそらくその ような議論になるのではないかと考えます。 ○坂本委員 例えば輸血をしなくてはいけないというときに、いちばんよく働くナース が少し未熟な若いナースの面倒を見なくてはいけない、しかし輸血を早くしなくてはい けないということで慌てて持ってきて、間違って違ったものを輸血してしまった、とい うような事例がもしあった場合、そして患者さんの死というような重篤な状況に陥った 場合に、そのナースの教育を、国やそういう団体がしてどうなるのかと思うのです。そ のような状況に置いているといいますか、そういうシステムをつくってしまっているこ とに対しては何もなく、そういう状況に置かれたナースを倫理や技術で教育をするとい うのは、一体どういうふうに効果があるのかという気がするのです。そのような状況で、 行政的には再教育をしなくてはいけないスタッフを抱えた施設に対する何らかのものも ないと、何となく腑に落ちないようなことが起こってくるのではないかと思うのですが、 それらをどのように考えていけばいいのかということがあるのです。  個人で働いているわけではありませんので、その環境に置かれたらその環境で働かざ るを得ないわけです。そういう人に対して、例えば医師に対しても同じだと私は思うの ですが、未熟な技術をしてしまったということに対して、医師の再教育をするのがいい と言われますが、やろうと思ってやったわけではない。悪意があっていろいろなことを やることにおいては再教育や倫理教育は必要なのですが、その状況下に置かれて、本当 にその状況を早く整理しなくてはいけない、結果を出さなくてはいけない状況に置かれ たときに、そういう所にはまってしまった人に対して、その人個人に教育をしてどうな るのか、ということも1つ疑問に残るのです。それらがどういうふうにセット化される かということです。  例えば、国がいろいろな決まりをつけて、どうだこうだということよりも、その管理 をしている責任者は一体どういうことになるのか、そういうシステムをそのまま見過ご してしまっている者に対してはどういう教育をするのか。教育があるのか、ないのかと いうところが大変気になるところです。 ○座長 制度的、組織的な問題として考えなくてはいけないのに、個人の問題に帰され るのはおかしいではないかと。大変もっともな指摘だろうと思うのです。これは個別具 体的にはいろいろなケースがあるだろうと思うので、そう簡単に答えの出せる問題では ないのですが、いかがでしょうか。 ○平林委員 いまの坂本委員のご発言について、そういう発想も私自身わからないわけ ではないのですが、そういう状況の下においてすら、やはり看護師として「やるべきこ と」「やってはいけないこと」があるはずだと思うのです。これも具体的なケースによ って違うと思うのですが、やはりその段階で、例えばどんなに急いでいても、きっちり と、ゆっくりと注意をしてやらなくてはいけないことはあるはずです。体制が悪かった から、やらなくてはいけないからやったというのは、責任を免れない側面があると思い ます。全部が全部組織や体制の問題に換言できる問題だけではないと思いますので、そ こら辺も注意していかなければならないのではないか。もちろん、そういう側面がある ことは私も否定しませんが。 ○坂本委員 私も全く同感です。そういう意味では、事例を検討するときに、体制的な 状況が大変絡んでいるというようなことがあったときは、その個人の再教育プラスその 長を何らかの形で教育なり指導なりをするということが入らないのかどうか。そういう ことはできないのかどうかという感じも持つのですが。 ○座長 いろいろなケースが想定できるわけですが、事務局のほうとして、いかがでし ょうか。 ○野口看護職員確保対策官 個人に対する行政処分ないし再教育の問題と、医療安全対 策としてきちんとやっていかなければならない問題とあり、どちらがどちらということ ではなくて、両方ともやらなくてはいけないということなのだろうと基本的に思ってお ります。医療安全対策は医療安全対策として、実は必死に取り組んではいるのですが、 残念ながら医療事故がまだ起きるということで、大臣が緊急アピールを出して、また、 今回このような形でさまざまな取組みをさせていただいておりますが、まだまだ「どう したらいいんだ」ということが現状なのかもしれません。  ただ、医療安全対策は、まさに医療事故が起きないように未然に取り組んでいくとい うことです。組織的な問題、社会的な問題として、個人の責任追及よりも、まさにシス テムとしてどう改善するかということを主眼に置いて医療安全対策を講ずる、というの が1つの大きな柱です。そのためにヒヤリ・ハット事例等の分析等を通じて、どうすれ ば医療事故が起きないのかということを、いま一生懸命追求しているのです。  いまご指摘のあったことは、医療事故が起きてしまった場合に、個別の病院はどうす るのかという問題かと思うのですが、現在でも医療法の施行規則等が改正されておりま して、事故が起きた場合には、きちんと事故報告と、その再発防止策をどうするのかと いうことは、それぞれの医療機関の管理者の責任として取り組まなければいけないとい うことにはなっているわけです。それも不十分なのではないかというお叱りかとは思う のですが、私どもの資格法の立場からだけからいいますと、資格法の中で、医療機関の 人たちについて処分を行うということは、現実にはなかなか難しいので、それとは別に、 医療安全対策としてしなければいけない。それは両輪といいましょうか、両方ともやら なければいけないということではないかと考えております。 ○小島委員 行政処分を受けた個人の指導や再教育もさることながら、組織に対する再 教育といいましょうか、そういうことも是非考えていただきたいと強く思っております。 例えば、日本医療機能評価機構でしょうか、そういう認定を受けているような病院に対 してはそういう指導が入ります。あるいは、厚生労働省等からの共同指導等でもそうい ったものが入ってまいります。そういう外部の組織からの指導が入ったときには、改善 は非常に速やかに行われやすいというのがございますので、1つの事例が出てきたこと を軸にして、何らかの組織の再教育というものを更に強化していただく必要があるかな と思います。また、そのところで非常に難解な、困難な問題がいろいろ浮かび上がって くると思いますので、そういうことも含めて検討しながら、その再教育が、それこそセ ットで安全にいくように仕組んでいくことも非常に大事ではないかという気がしており ます。 ○坂本委員 その体制、管理していくものの整え方なのですけれども、去年ですか、私 が厚生科研の研究をさせていただいた中で、患者相談窓口を置くのだとか、いろいろな ことを体制的に整えていくのだと言っているにもかかわらず、そういうことの努力をし ていない病院もあったわけです。そうすると、そういう所に対して、きちっとやってい るかどうかということもセットにしていかない限りは。個人の再教育は絶対に必要だと 思いますが、それだけではない。もっと裏のデザイン的に安全対策をセット化してやっ ていくというところも強めていただかないと。チームで仕事をしていたり、その場で働 く人がそれをやっていなかったためだということだけではないような気もします。 ○遠藤委員 私も、再教育そのものには賛成です。しかし、安全対策の視点ということ で本日出されています行政処分の事例について見てみますと、これは看護学部の卒前教 育の中でも当然行いますが、学生から免許を受けて職業人になったところの教育という のがいちばん大事なことなのです。学生時代というのは免許がありませんし、身体の侵 襲的な行為というのは、基本的にはだんだんできない傾向になっております。それを急 にある日、免許を頂いた瞬間から1人として数えられてやっていくわけです。やはり、 専門職の入口のところです。  先ほどのお話のように、夜勤を2人で50床やったときに、あっちもこっちもアラーム が鳴って、どうするのだというときに、どうしても、そこに立っていればせざるを得な いという実情というものはあります。今年度、助産師に対してはモデル事業でスタート しておりますが、夜勤のところでのカバーが非常に難しいというような話もございます ので、全体的に、新人の移行のところの業務をどのようにしていくかということをもう 一度真剣に考えていく必要があるのではないかということが1点です。  もう1点は、再教育を受けるときに、経費を個人負担にしたらどうかという提案がこ の中にありましたが、私自身は、先ほど来の話もずっと聞いておりましたら、施設とし てそういう経費のストックといいますか、何か出していくような仕組みとか。もし経費 を個人にしてということは、つまり、あなたが悪いのだというような状況に、そっくり そのままなっていきます。いろいろなレベルがあるということも、お話を伺っておりま したら本当にそのとおりだと思いますので、その辺りも。個人負担にすることが本当に いいのかどうか、もう少し検討してもよいのではないかという考えを持っております。 ○座長 いまの個人負担というのは、医師の再教育の話ですよね。まあ、これからの検 討課題ということで、わかりました。 ○菊池委員 医療安全を更に進めるという観点から、行政処分を受けた人の再教育とい うことだけでなくて、体制の問題等いろいろありますけれども、その1つとして、新人 の看護職員の研修の中に医療安全というものをきちっと入れていく必要があると思いま す。本会で昨年新人の調査をいたしましたところ、離職率が8.5%、1年間に12人に1 人が辞めているという状況はあるのです。それでも踏みとどまって残った新卒看護職員 の実際の悩みを聞きますと、7割近くが、医療事故を起こさないかと不安であると感じ ていますし、実際にインシデント・レポートを1年経たないうちに6割が書いていると いう状況があります。新人が、事故を起こすのではないかという不安の中で、萎縮しな がら看護をしているという状況がありますので、その辺の研修の強化も非常に重要かと 思います。 ○辻本委員 同じく研修のお話なのですが、先般、徳島日赤の1年間の看護の臨床研修 の取組みについて、私もいろいろと詳しい話を聞いてまいりました。決して簡単なこと ではないということは重々承知です。今日の「再教育」ということとずれるかもしれま せんが、根本的な問題として、看護の臨床研修ということを、別の部門でも結構ですか ら、患者の立場としても是非検討していただきたいということをここで提案しておきた いと思います。 ○田村看護課長 いま委員の皆様から看護臨床研修というお話がございましたが、私ど もも、その重要性については深く認識しているところです。平成15年度に、新人看護職 員の臨床技能向上のための検討会ということで、新人研修の到達目標、指導をするため の施設側の指導指針をまとめさせていただいた経緯がございます。また、この検討会の 主要課題としても、新人看護職員の研修について、秋以降にご検討願いたいと思ってい るところです。 ○坂本委員 いろいろなことで、マンパワーの話になるとなかなかうまくいかなくて、 今まで私たちも、病院とかいろいろな所で実現できないのですが、ここでもう一回、急 性期とか慢性期ということで病院を機能分化させていく中で、ある意味では、これだけ の人数が必要であるということに対して、もう少しはっきりと出していく時期ではない かと思います。  本当に現実的に、いろいろな病院を見てみますと、50人の患者さんが寝ていて、そし て2人のナースで回しているという現実は、どうも、家族の数のほうが多い。家に帰っ たほうが看てくれる人が多いですよというような現状の中で、患者さんサイドからも、 それから私たち、今までいろいろ看護師をやってきましたが、もっときちっと目を向け て、口がきけるだけの人でもいてほしいというような状況の中で、医療事故対策を何と かしようということにおいては、マンパワーに目を背けてはいられないものではないか と思います。  これに対して、ではどうすればいいか。いくらでも増やせばいいではないかと言われ るのですが、評価していくシステム等いろいろなことで、ある意味では誘導するという か、そういう形にしていかない限り。ふと夜中の2時か3時ごろを考えてみますと、い ろいろな所でブザーが鳴りながら、2、3年のナースと10年ぐらいのナースとが働いて いる状況では、いくら倫理とかいろいろなことがあったとしても、急性期というふうに なると、大変無理なのではないか、もう不可能なのではないかと思います。  これをいろいろな所では言うのだけれど、私たちはきちっともう一度正視して、日本 の病院で、急性期においてナースは本当にどれだけ要るのかというところにはっきり目 を向ける。やはり、そういうところもきちっとやっていかない限り、医療安全に対して の再教育だけでは難しい。  しかし、再教育の話もしないといけないと思います。これがないから再教育する必要 はない、これだからナースは事故を起こしてもしょうがないとは言っていません。ただ、 そこら付近が大変。そして、ナースの数が少なければ、例えば急性期で、モニターを見 る人をつくってでもいいですから。要するに、あちらのほうでトイレ介助をしながら、 こちらのモニターを見ろなどというのは不可能に近いわけです。そこにきちっと目を向 ける時期であると私は思います。そういう意味では、マンパワーということに対しても きちっと。教育というマンパワーのこともそうですけれども、体制的なマンパワーとい うことに対しても何らかの形で前進していく方法はないかなと思います。 ○辻本委員 マンパワーのことで患者からのお願いなのですが、例えば病院の入口、玄 関のところの表示に2対1などと書いてありますが、そうすると患者さんは常に2対1 という理解をして、いないではないかという苦情が私どものような電話相談にも届くわ けです。私たちは、3交替であって、産休や育休があってなどということで2対1では ない。実質は6人とか8人に1人で、夜間はもっと少なくなるのだということがわかっ ているので、なぜこんなことを説明しているのだろうと、ときどき思うことがあるので す。やはり表示、あれは専門的な方たちにはわかりやすいかもしれませんが、患者には。 2対1と書けば、常に2人に1人がいるとしか見えない数字の表示なのです。これが安 全とか再教育にどうつながるのかというのはわからないのですが、是非この機会に、患 者にわかりやすいマンパワーの表示ということも併せてご検討いただきたいと思います。 ○田村看護課長 人員の問題で厳しいご指摘がございますが、本日ございました医療安 全総合検討会議の場でも、このワーキンググループの報告に対して、もう少し人員の問 題、そうした構造的なことに関して、もうそろそろメスを入れる時ではないだろうかと いうご指摘があり、そうした点を更に報告書に付け加えるといったご議論がございまし た。そういう点でも、まさにこの観点、人員配置をもっと厚くしていくという方向性は、 安全の会議の中でも強調され始めてきておりますので、厚生労働省としても、それはそ れとして、しっかりと受け止めて対策を考えていきたいと思っています。 ○金川委員 いまの議論に決して水をさすわけではないのですが、今日の議論の観点が 「行政処分を受けた看護師等に関する再教育」です。先ほどお話のあったように、医療 安全という領域の中で、行政処分を受けた看護師に対しての再教育がどれだけの位置づ けがあるのかということが1つ大きくあるのだろうとは思うのですが、そんなことを議 論していたら、議論は進まないと思うのです。少し議論が大きくなってきているなと感 じているのです。  私も同じようなことを申し上げるかもわかりませんが、確かに行政処分といってもい ろいろあるが、今はどちらかといえば医療過誤の問題が随分中心になっていると思って おります。ここで出てきたのは免許の停止と業務停止という、かなりはっきりとした形 の数ですけれども、この数のベースには、そこに行く道筋というのがたくさんあるので はないかと思うのです。医療安全あるいは医療過誤の防止、そこら辺りもどうなのかな と、少し疑問を感じているのです。この数字が出る基というのは本当に氷山の一角で、 処分を受けた人の数としてはあれなのでしょうけれど、そこに行く母体というのか母集 団というのは非常に大きいのではないかと思って、そこら辺りをどのように考えていっ たらいいのかと思うのですが。 ○座長 出てくるのは刑事事件になった数だけですから、おっしゃるように、氷山のご く一角だろうと思うのですが、事務局、いかがですか。 ○野口看護職員確保対策官 氷山の一角ではないかというお話のようですが、私どもと して把握できるものについては把握して、処分の対象としてご議論いただいた結果こう なっているということではあるのです。要するに、把握し切れなかった部分が実は結構 あるのではないかということで、それはそのとおりだと思うのですが、そういう意味で も、調査権限の話も含めて、もう少しきちんと把握できないかということが課題になっ ているということが1つございます。  それから、医療事故なのかという議論もあるのですが、医療事故に至らないヒヤリ・ ハット事例については収集しております。労働災害などの例でいいますと、ヒヤリ・ハ ットのほぼ30分の1が事故につながっているということですから、そういう意味では事 故の30倍危ない事例があるといわれていると思います。この医療事故の場合にそれがう まく当てはまるかどうかわかりませんが、さまざまな実態が世の中にあって、それを全 部把握し切れていないのではないかということは、確かにそのとおりだと思います。 ○菊池委員 いまのことに関連してですが、10頁の資料を見ますと、年間に行政処分を 受けている方が平成16年度で25人ということで、今日の話では、再教育はこういう方 たちが対象になると思うのです。まだ掴み切れていない人たちがいるにしても、これが 何倍になるのかわかりませんが、その程度の数にとどまるかなと思うのです。  先ほど話のあったインシデントの報告について、本会で調査をしたところ、全病院で はないけれども、すでに44万件のインシデントが報告されています。行政処分の裾野に はそういう危ない状況が非常にあるわけで、医療安全を考えるということになると、再 教育だけでは不十分で、先ほどから出ているような全体の体制の問題をちゃんとしない と不十分だということになるのではないかと思います。 ○坂本委員 他国の例というのは、どういうふうになっているのですか。 ○野口看護職員確保対策官 医師の場合ですが、例えばアメリカのニューヨーク州など では、行政処分の一環として再教育的なことが行われていますし、イギリスの場合です と、指導医が付いて、その個人個人に即したような再教育プログラムを組むというよう なことで取り扱われており、そういう英米の例などを見ながら日本でも考えたらどうか というのがこの検討会の流れだったと承知しております。 ○座長 ナースのほうは、いかがですか。 ○野口看護職員確保対策官 アメリカにつきましては、州単位の資格なので州ごとにバ ラバラだとは思いますが、同じような処分事例、処分の案件で行われるということでは ないかと思います。 ○座長 行政処分を受けた者に対する再教育ということが本日の主な議論で、それに関 連する議論として、医療安全体制そのものの全体の中で考えていくべきだという意味で は非常に重要なご指摘だと思うのです。ただ、当検討会では、さしあたって、行政処分 を受けた看護師の再教育をどうするのかを意見としてまとめることが主要な課題であり ますので、その点をお含みおきの上で中間まとめをさせていただきたいのですが、よろ しいでしょうか。 (異議なし) ○座長 では次の議題に移ります。事務局から説明をお願いします。 ○野口看護職員確保対策官 これは資料2「助産所の嘱託医師について」でまとめてお りますが、この議題につきましては冒頭のとおりの整理で、今回は説明にとどめるとい う前提です。  最初に、助産所とは何かということで、医療法等による規制を中心に紹介させていた だいております。1頁めくると、助産所の定義とありますが、助産所は、助産師が公衆 又は特定多数人のためその業務、要するに助産所業務を行う場所であるということです。 病院や診療所でその辺の業務が行えるわけですが、それは除くということになっている わけです。助産所は助産師が独立開業できる形態ということで、いわば診療所並びのよ うな規制になっております。なお、助産所はベッドを置くことができますが、10人以上 は駄目だということで、具体的には9人以下という規制になっております。  助産所を開設しようとする場合、助産師が開設する場合には届出、助産師以外が開設 する場合には許可となっております。  3に助産所の休止とあります。助産所は、正当な理由がないのに、1年を超えて休止 してはならないという決まりもあります。  使用許可というのが4にありますが、これは届出された助産所であっても、実際にベ ッドを持っている助産所を使用しようとするときには事前に、都道府県から保健所の職 員がやってきて見ていくわけですが、使用前の検査を受けて、構造設備に問題がないか どうかをチェックの上、許可証の交付を受けなければ使用してはならない、という規制 になっております。  その構造設備の基準が5番目です。まず総論として、これは当然の話ですが、助産所 は清潔を保持するものとする。その構造設備は衛生上、防火上、保安上安全と認められ るものでなければならないと。これは別に助産所だけに限らず、病院、診療所すべてに 係る総論的な規制です。  具体的な助産所の構造設備については、換気、採光、照明、防湿、保安、避難、清潔、 その他衛生上遺憾のないように基準をつくる。その基準に反した場合には、10万円以下 の罰金と決められております。その基準の中身が施行規則に書かれておりますが、それ がこの囲んだところです。構造の問題として、耐火構造であるとか、何階になければい けないとか、あとは床面積等の基準が決められております。  6は助産所の管理です。助産所は助産師が管理しなければならないこと、管理者とし ては、助産所に勤務する助産師その他の従業者を監督して遺憾のないようにしなければ ならないとなっています。  7は、10ベッド以上はないということですので、10人以上入所させてはいけないとい うことになっています。  8として院内掲示義務とあります。具体的には助産所の入口、受付、あるいは待合所 付近の見やすい場所に、1〜4に書かれたことを掲示しなければいけないと義務づけら れております。今回の議題で問題となりますのが4番目ですが、助産所に置かれた嘱託 医師の氏名について掲示義務が課せられています。  議題の中心となるのが9、嘱託医師の設置です。助産所の開設者は、嘱託医師を定め た上で置かなければいけないという規制です。本条違反には、20万円以下の罰金という 罰則がかけられています。届出事項の中にも、嘱託医師の住所氏名を届け出なければい けないということが入っております。なお、嘱託医師になる旨の承諾書があるというこ とで、その承諾書を添付する。また、医師ということで、免許証を提示する、ないしは その写しを添付するという規制になっております。  なお、嘱託医師に関してはいくつか解釈が示されております。最初に、嘱託医師の業 務範囲は、異常産の処理に限定されるものではなく、妊産婦の診察、新生児の保健指導 を行わせることが望ましいとされております。この元々の趣旨は、常駐的に医師がいる ということは、いわば診療所の規制外のものになるということもあり、定期的に嘱託医 師が関わる場合には、むしろ診療所の届出が要るのではないかという議論もあるわけで、 そういうことではない嘱託医の話をここではしております。  出張のみによってその業務に従事する助産師、要するに助産院としてベッドを持って いなくて、そこで助産業務を行わず、自宅に分娩の介助者として助産に行くという場合 には、開設の届出等については自宅を助産所の場所とみなすという規定にはなっている のですが、通常イメージされている助産所ではないということで、嘱託医師を定めてお く必要はないと解釈されています。  10と11には助産所に対する行政的な処分ないし改善命令、立入検査等について書か れておりますが、省略させていただきます。  12についてですが、助産所も病院や診療所と同じく、広告の制限規制があり、この1 〜8に掲げるものを除いては広告してはいけないとなっております。これはいわゆるポ ジティブリスト方式ですが、その7に、助産所に置かれた嘱託医師の氏名が広告できる 事項とされています。5頁に個別具体的に大臣の定める広告事項として、1〜21まで、 かなり細かいことが広告できるとされていますが、最近は広告事項が非常に拡大をみて いるということです。  6頁には問題となっている19条について書かれております。そもそもこれは何でつく られたのかということですが、この規定自体は、昭和23年に医療法が出来たときに、い わば初めて法制化されたものです。そして、その趣旨として、そもそも助産師の業務と しては、異常産は取り扱えない。異常産があった場合には、助産師のみで処理すること はしないで、必ず医師を呼ばなければいけないということになっています。もちろん、 医師には応招義務があり、呼ばれれば招きに応じなければいけないということではある が、異常産の処理に万全を期すためには、事前にそういうときに助けになってくれる医 師を決めておいて、ちゃんと約束をしておいて、必ず来てくれるというように決めてお くほうがいいのではないかということで法制化しました。  このような実態については、妊婦預かり所等と称して行われていた以前の助産所の実 態においても、異常産の場合に、医師についてはあらかじめ一定の方をお願いしていた という実態にも合うのではないかという説明がなされているわけです。  7頁からは数字の問題ですが、出生場所が戦後から比べまして劇的に変化していると いうことです。まず終戦直後の昭和22年に、出生数は2,678,000余人。平成15年には 1,123,000人ですから、数としては2倍以上ありました。グラフのいちばん右が「自宅・ その他」です。その他というのは自宅に準ずる場所、ほぼ自宅とお考えいただければよ いのですが、そのうち97.6%、ほとんどが自宅で生まれていた。したがって、自宅にお ける分娩の介助は助産師(従前でいう産婆さん)が関わっていたという実態であろうか と思います。  それが徐々に自宅分娩が減っていきまして、昭和30年になりますと、2割弱の数が施 設内で生まれるということになっております。そのうちで多いのが病院、それから診療 所、それから助産所という形で取り扱うということになっております。それが更に劇的 に変化するのが5年後で、施設がほぼ半分、自宅が半分という形になってまいります。  わずか5年後の昭和40年には、8割を超えて施設内で出産するということで、この辺 も大きな変化があったところです。なお、この時点におきましては、助産所で生まれる という方も結構多くて、1割以上の方が助産所で生まれていたという数ではあります。  それから徐々に助産所で生まれる子どもの数が減ってまいります。病院と診療所につ いては病院が若干多く、診療所がそれに次ぐという形で生まれているわけですが、近年 平成15年で見ますと、病院で5割ちょっと、診療所で4割弱、助産所では1割、自宅で はほとんど生まれていないという現状になっているわけです。なお、近年の動きとして、 診療所において出産されるという数が、若干ですが微増するという傾向が見えているか と存じます。  8頁は助産師の就業者数を年次別、場所別に見たものです。昭和32年時点では助産師 の方が5万5,000人余り就業されていた。そのうち助産所に4万8,000人ということで、 助産所に多く就業されていたというのが実態ですが、この数が減っていきまして、昭和 45年で3万人、それが更に減りまして昭和60年で2万5,000人。大体昭和60年ぐらい の数字で以後安定的に推移しているという状況です。これはおそらく、かつて非常に活 躍されていた助産師さんが、産婆さんの時代も含めて、高齢等によってどんどん退職さ れていくという状況があったのではないかと思われるわけです。  なお、助産所の開設者、それから出張のみということで昭和45年からの数字が出てお りますが、助産所の開設者の5,468というのが助産所の数とご理解いただければよいか と思います。その助産所の数が5,468から減っていきまして、今日は723か所というこ とになっております。なお、出張のみをされていて、その助産師さんがおられる自宅が いわば助産所とみなされているような形態につきましては、昭和45年の段階で1万か所 あったわけですが、これも減っていきまして、平成15年では686か所になっています。  助産師の方の多くは現在病院に勤めているということで、1万7,600人余りの方が勤 められている。診療所では4,500人余りという状況です。診療所にお勤めになる助産師 の方は、最近少しずつですが、増える傾向にあります。  9頁ですが、周産期医療体制の整備をいま行政的に進めているということで、その状 況を簡単に紹介しております。平成16年12月に「子ども・子育て応援プラン」が作ら れていますが、その中で、平成19年度までに全都道府県に周産期医療ネットワークの整 備を行うということを行政的な目標にしているわけです。周産期医療ネットワークとい うのがこの図に書いてあるところですが、3次医療圏、簡単にいいますと都道府県に1 か所、総合周産期母子医療センターを置くということで、かなり専門的に母子に関する 高度な技術を提供できる医療センターを設置する。その下で数か所程度地域ごとに母子 医療センターが設けられ、ネットワークを組む。そして異常等があった場合には、その 地域の病院、診療所、助産所から地域センターに搬送されていく。このようなネットワ ークを整備していったらよいではないかということで進めています。残念ながら、今は 必ずしも全部整備されておりませんで、平成17年3月現在では、29都道府県に42か所 の総合周産期母子医療センターが整備されているという状況です。  なお、10頁以降に助産所に関する医療法等の条文を付けてありますので適宜ご参照い ただければと存じます。 ○座長 どうもご苦労さまでした。この件につきましては、冒頭でご了解をいただきま したように、中間取りまとめが終わりましてから、然るべき時期に改めて、助産師や産 科の医師に来ていただいて検討を進めていきたいと思っております。 ○野口看護職員確保対策官 資料3について簡単に説明させていただきたいと存じます。 第3回の検討会では、免許保持者の届出義務についてどう考えるか、それから名称独占 についてどう考えるかと、議題が2つございました。それにつきまして活発に意見交換 をいただき、その結果を事務局として仮に整理したものが資料3のペーパーです。それ を簡単に紹介いたしますので、もし補足修正等がございましたら言っていただければ、 それを中間取りまとめに生かしていきたいと考えております。  最初に、免許保持者の届出義務についてです。その背景となっているのは、潜在看護 職員の把握なり、それに基づいた確保対策が要るのではないかという問題です。それに 関しましては、届出の仕組みをつくって看護職員の把握をしていく必要がある。そうし ていかない限り、ますますわからなくなっていくのではないかという指摘がありました。 それから、潜在看護職員が働きやすいような環境をつくるため、なぜ働かないのか、働 くことができないのかというようなことを把握することが大切である。さらに、看護職 員の人材確保法に基づいて基本指針が作られているわけですが、それをそろそろ見直し たらどうか、見直して再就業促進対策を強化すべきである。また、労働時間が希望に合 わない、パート賃金が安すぎるといった問題で潜在化しており、これらを含めて対策を 考える必要があると、むしろ確保対策を進めるべきだということでご議論いただいてい るわけです。  届出制をつくるかどうかに関しまして、いかなる趣旨なのかという点でいくつかご意 見をいただいております。1つは、看護職は国家免許であるにもかかわらず、その業務 の把握も都道府県任せになっている。離職した職員の実態がわからないこと自体がおか しいのではないか。やはりフォローしていくべきである。日本の国全体にリスクがあっ たときに、そもそも国中に看護師がどれだけいるのかを把握し、きちんと統制していく 必要があるのではないか。潜在看護職員の人材確保の観点から、届出制も1つの方法で はないか。時代に応じて届出制の目的も変わっていく。今日的に考えれば、人材確保も 含めた看護行政の活用を考えて届出制を考えるべきではないかというご意見もありまし た。  それから、医療安全の確保との関係を整理する必要があると。今回の問題に関しては、 潜在看護職員の活用は人材確保のためなので、それがいわば医療安全に資するというよ うに理解したらいいのではないかというご意見もありました。  潜在看護職員の把握をする、そして確保対策をするためにデータを集めるということ はわかるが、そのことと届出制をすることとは全く次元が異なるのではないか。この届 出制に関しては、医療関係職としての統一性があったほうがよい、便利だという面では よいが、それぐらいのメリットしかないのではないか。潜在看護職員を何とかしようと してぎりぎりやるというのは間違いだ。国家資格を有している者の義務として、いわば 応招義務に応えていくというような倫理観を持つべきであり、国の管理の下で届出義務 を果たしてもらうという姿勢も大事なのではないか。  新卒者の就職状況については、学校側で追跡することが困難になってきている。届出 するのだというルールを卒業時点から考えてもらい、職業人として仕事をしていく1つ の条件とすべきではないかという意見もありました。  届出制の実効性に関しては、就業していない者に届出を義務化しても、結局届出は期 待できないのではないか。届出してもらったところで、就業義務を課すわけにいかない のだから、有効に機能しないのではないか。あるいは、うまくいくかどうか分からない が、いまがチャンスではないか、仕組みをつくってみる価値があるのではないかという 趣旨のご意見もありました。  罰則については、未就業の方に届出をさせるとした場合に、現在、保助看法上の届出 義務を課すとした場合には50万円の違反になるわけですが、それは非常に重いのではな いか。人材確保の観点から届出制を徹底させるにことになったときに、違反に50万円を 科するとなると、現場が混乱するのではないか。罰則があっても、実際に有効に機能し ていないのではないかというご意見もありました。  今後の方向性に関しては、いろいろな面で抜本的な見直しを検討するべき時期に来て いるが、それはそれとして、当面何をするかで問題を解決することが現実的ではないか。 その意味では、保助看法本体ではなくて、人材確保の観点からとりあえずの措置を講じ るという方法もあるのではないか。あるいは、基本的には保助看法全体を見直す中でど うするかを考えたほうがいいというご意見もありました。  大きな見直しに関する問題としては、免許の更新制がある。仮にこれが導入されれば、 おのずと問題は解決するではないか。  免許の更新制については、やはり検討すべきである。併せて、今回も出ていますが、 新卒看護職員の臨床研修制度を早急に検討すべきであるというご意見をいただいており ます。  名称独占に関しては、まず名称独占の是非ということで、皆さん概ね名称独占はあっ たほうがいい、というご意見だと思いますが、過去に紛らわしい名称が使用されて混乱 をし、患者が不信感を持ったことがある。国民、患者に信頼できる情報を伝える必要が ある。また、患者は保健師、看護師だからここまで話すのだ。その信頼感を基にやって いる、そのような意味から、是非名称独占とすべきであるというご意見もありました。  そもそも、なぜ今まで名称独占がなかったのか疑問である。患者サイドでは、看護師 と看護補助者とを明確に区別する意識が出来ている。あるいは、最近非常に多くなって いる在宅の現場では、入れ替わり立ち替わりいろいろな人がやってきて誰だかよくわか らない、という混乱状態ではないか。この際保助看法を改正してすっきりすべきである。 また、医療現場では、誰がケアを行うかについて患者側の意識が非常にシビアになって いる。正確な情報提供をするために名称独占が必要である。それから、保助看法自体を ひもとくと、罰則規定の中で加重規定が設けられており、いわば暗黙の前提として名称 独占的なものを保助看法自体が既に認めているのではないか、したがって、そうした法 の基本的な考え方を表に出すだけであるともいえる。医療の安全、看護の質を確保する 1つの仕組みとして、名称独占は必要である。中期的な見直しという話よりも早く、こ の問題に関しては、次期医療法改正と合わせて法改正してもよいのではないか。しかし、 その中で准看護師等を忘れてはいけない。  名称独占をするとした場合、その範囲をどうするかに関しては、「付き添い看護婦」 のように、業として行う場合、「看護」の言葉を使用することは適当ではないのではな いか。紛らわしいかどうかに関して、看護補助者、看護職員などの言葉で資格者が入っ ているのか入っていないのかについて、医療現場の常識としては明確になっている。名 称独占とした場合に、どこまでの名称が制限されるのかについては国民の目、あるいは 受け手から見たときの感覚、考え方として判断する必要があるのではないか。さらに、 看護という言葉自体、一般的にはあまり使わない方向としたほうがよいのではないかと いうご意見もありました。いずれにしても、名称独占としてどこまで規制すべきかは今 後更なる詰めが必要であるというご意見がありました。  保健師の名称独占については、保健指導だけを業務としているわけではないので、業 務を限定せずに、一般的な名称独占をしたほうがよいという意見をいただいております。 以上事務局において、このようなご意見であったのではないかと整理させていただきま した。 ○座長 そういう形でよろしいでしょうか。 (異議なし) ○座長 次回の日程について、事務局からお願いいたします。 ○赤熊補佐 次回第5回は6月20日(月)15〜17時、第6回は6月27日(月)17〜19 時という予定にしております。どちらも場所は、本日と同様の省議室において行う予定 としております。議題につきましては、中間取りまとめに係るご検討をお願いしたいと 考えておりますので、よろしくお願いいたします。本日はお忙しいところ、ありがとう ございました。 ○座長 本日の検討会をこれで終わります。 照会先 医政局看護課 課長補佐 岩澤 03-5253-1111(2599)