05/06/07 女性の坑内労働に係る専門家会合第4回議事録            第4回女性の坑内労働に係る専門家会合 1 日時: 平成17年6月7日(火)16:30〜17:10 2 場所: 厚生労働省 専用第17会議室 3 出席者:櫻井座長、小畑委員、鈴木委員、長井委員、名古屋委員 ○座長  ただいまから第4回「女性の坑内労働に係る専門家会合」を開催いたします。今日欠 席される委員は中窪委員です。それでは早速、議事に入ります。今日の議題は「報告書 (案)について」です。事務局から資料の内容について説明をお願いします。 ○事務局  本日の資料は「女性の坑内労働に係る専門家会合報告書(案)」を提出させていただ いています。これは、4月28日の第3回の会合で提出したスケルトン案に加筆・修正し たものです。前回会合でご意見をいただいた部分を直しているところと、記述をより具 体的にするために追加した部分と、文言の整理のための修正を施した部分があります。 変わったところを中心に初めから説明させていただきたいと思います。  1頁の「はじめに」については、初めの2つの段落を追加しています。全般的な働く 女性を取り巻く環境の変化、女性に対する特別な保護措置についてこれまで男女の機会 均等の確保の観点から必要性について順次検討の上見直しが図られてきたことについ て、追加して記述しています。それを受けて、女性の坑内労働についての記述に入ると いう形になっています。  2番の「坑内労働の概況と特徴について」は、(1)に若干記述の追加をし、(1)の 「鉱山における坑内労働」に、昭和25年という、より古い統計がありましたので、そち らを入れています。  2頁の上から6行目については、前回表現についてご指摘がありましたので、「掘削 機械や運搬機器の発達」というところの表現を直しています。  (2)の「ずい道工事等の坑内労働」については、多少詳しくしていますが、基本的に は変わっていません。  (2)の「坑内労働の特徴と労働災害の状況」ですが、(1)の「坑内労働の特徴」と いうところで初めの3行を追加しています。これは、当専門家会合で実施した現地調査 について記述しています。この調査は、これまで鉱山2カ所とずい道4カ所について行 っています。鉱山といいますと、主なものとして石炭と金属と石灰石があるかと思いま すが、いままでの現地調査は金属と石炭を1カ所ずつ行っています。石灰石について は、これまでのご議論の中では他の鉱山と同じような状況ということでお話が進んでい たかと思いますが、念のため現地調査を行うこととしまして、来週1カ所訪問すること にしています。そのため、ここでは鉱山の箇所数を「(3)」という形で書かせていた だいています。  ずい道については、シールドと山岳工法を2カ所ずつ調査を行っています。そこの現 地調査について記述を追加していますが、2つ目の段落の2行目のところは表現につい て前回ご指摘がありましたので、「地質等の自然条件」という表現は修正した部分で す。  3頁の(2)の「労働災害の状況」については、具体的な数字を入れて記述するように したところが追加となっています。  4頁の「わが国における坑内労働に係る規制について」の記述ですが、規制の経緯に ついて書いてあるところで、昭和22年の労働基準法制定当時のことを書いています。こ こについて前回、当時ILOの諸基準も意識されていたというご指摘がありましたの で、その記述を加えています。  そのあとはILOをわが国が批准していることと、規制の見直しの経緯について記述 していますが、5頁の上のほうで追加した部分があります。これは風紀上の問題につい てです。労働基準法制定時に風紀上の問題が禁止の理由の1つであったことを前のとこ ろで書いていましたが、この風紀上の問題については昭和57年の専門家会議において、 もはや妥当性を有しないとの考え方が示されたことについて触れています。  5頁の(2)「坑内労働に係る男女共通の規制」は、鉱山保安法、じん肺法、労働安全 衛生法の制定とその後の充実について記述している部分ですが、スケルトン案の段階で 具体的な内容の記述がありませんでしたので、今回、鉱山保安法の内容、例えば通気・ 坑内ガスの管理、炭じんの管理、落盤、崩壊の防止といった内容を具体的に書き込んで あります。また、その後の充実についても、どういった点が改正されたかといったこと を記述しています。  6頁は、(3)の「坑内労働以外の女性特有の危険」についてはほとんど変わっていま せん。(2)の「諸外国における坑内労働に係る規制について」についても、(1)の 「ILO45号条約」、(2)の「諸外国における規制の状況」はスケルトン案とほぼ同じ となっています。  7頁の(3)の「諸外国における規制の見直しの考え方等」について、少し追加した部 分があります。スケルトン案において、諸外国の調査対象国のうちILO45号条約を廃 棄して国内規制を撤廃した国について廃棄等の理由を書いていて「ただし、それらの国 についても妊娠中や授乳期の女性労働者を保護するための規制を設けている」と書いて ありましたが、その考え方について追加記述をしています。例えばイギリスについては 坑内労働の動作や姿勢といったことが流産などを招く可能性があるという考え方、それ からEUについて、母性保護の考え方として授乳中の女性の状態を理由として保護を必 要としているといった考え方を記述しています。  8頁の(4)「国際機関の動向」については、ILOの動向についてはほぼ同じです。 EUの動向についても、EUとオーストリア政府との間の裁判の判決の内容について少 し詳細に書き加えたところがありますが、基本的には変わっていません。  9頁の4の「現在の坑内労働の作業環境、作業態様と坑内労働が女性の健康等に与え る影響について」という項目については、前回ご指摘がありましたので、表現ぶりや順 序を変えている部分があります。内容ですが、まずは専門家会合において専門的見知か ら検討を加えて以下のような結論が得られたということで、主なリスク要因として典型 的には落石、落盤などが挙げられるが、これは男女双方が等しく遭遇し得るリスクであ る、法令において防止措置などが規定された結果、労働災害は減少しているということ を述べています。  次に、坑内労働のその他のリスク要因が女性の健康等に与える影響について、現在の 坑内労働の作業環境・作業態様を踏まえつつ、2つに分けて検討しています。(1)とし て、有害化学物質ですが、労働基準法第64条の3により女性について坑内・坑外を問わ ず規制されている。したがって、坑内労働に固有の問題として考慮する必要はないと書 いています。(2)ですが、ILOが45号条約を採択した当時の過酷な労働条件と考えら れるものとして、高温、気圧、粉じん、筋肉労働といったことをまとめて記述していま す。これについては、かつてのような作業環境・作業態様には現在はなっていないとい うことを述べています。具体的には、作業環境については労働安全衛生法、鉱山保安法 といった規制もあって管理水準が十分満たされている、作業態様についても機械化・工 法の進展等がある、かつてのような筋肉労働はもはや存在しない、若干あり得るとして も坑内労働のみに特殊とは言えないものになっていると書いています。  その次に加えまして、先ほども出てきました労働基準法第64条の3の規制に触れてい ます。現在、重量物を取り扱う業務を除いて坑内労働以外の業務については安全衛生 法、鉱山保安法による規制の下で、高温や異常気圧等の作業環境下において妊産婦を除 く女性の就労は認められている、有害物の粉じんを除いて粉じん作業への女性一般の就 労は認められてきたということを記述しています。しかし、認められてきた中で、妊産 婦以外の女性について健康面や安全面で男性と比較して特別に問題が生じるとの明らか な知見は得られていない、ということを書いています。  そして、最後に、「以上から、総じて坑内労働については自然条件に左右され、男女 が等しく遭遇し得るリスクはあるものの、技術の進歩、法令の充実に伴って高い安全衛 生の確保は図られるようになってきている。このような水準が保たれていることを前提 とすれば、現在では女性の坑内での就労を一律に排除しなければならない事情は乏しく なってきていると考えられる」。これはスケルトン案から変わっていない部分です。  次の妊産婦についての記述も前回ご指摘がありまして、より具体的に修正している部 分です。妊産婦については、坑内労働の動作、姿勢、又は環境条件等が妊娠及び産後の 母体の変化や経過により影響を与える可能性がある、授乳中の母体等にも一層の負荷が かかりやすい、さらに坑内においては緊急時の迅速な対応が困難なこと、こういったこ とで妊産婦の安全衛生にとっては好ましくないと見られる条件があることから、母性保 護の観点から十分な配慮が必要であると考えられるとしています。  5番目の「坑内労働に係る規制の課題」については、末尾に追加の記述をしていま す。11頁の下3行も、前回ご指摘がありましたので追加しています。「今後の検討によ ってはわが国が批准しているILO45号条約との整合性が問題になる。その場合は合わ せてより新しい条約である176号条約が求める安全衛生管理の水準にも留意することが 必要であろう」という記述を追加しています。  その後ろには関係資料を添付しています。こちらについては、これまでの専門家会合 の中で提出させていただいた資料を基にまとめています。以上が報告書(案)の説明に なります。よろしくお願いします。 ○座長  それでは、ただいま説明のありました報告書(案)についてご議論をいただきたいと 思います。後ほど項目ごとに順を追って議論をお願いしますが、まず全体的に何かあり ましたらご発言をいただきたいと思います。 ○委員  後ろのほうに関係資料が綴られていますが、これは報告書にも付くということなので すね。 ○事務局  はい。 ○座長  特に全体としてのコメントはないようですので、項目別に見ていきたいと思います。 まず1の「はじめに」についていかがでしょうか。よろしいですか。それでは2の「坑 内労働の概況と特徴」についてはいかがですか。よろしいですか。3の「坑内労働に係 る規制について」はいかがですか。 ○委員  6頁の(3)ですが、労働基準法第64条の3が坑内労働の場面にも適用されるというの は、今後規制が解消された後という話になるわけですよね。いま現在は適用していな い。そういうときに資料9でこれに該当することをもう一度整理していただきたいので す。坑内労働に(3)が適用されるとしたときに何号の部分がそれに値するのかという確 認をさせていただきたいのです。多分、複数重なっているということになると思うので すが。 ○座長  6頁の(3)で「同条は坑内労働の場面にも適用される」と書いてあるのは、現在も適 用されているということですし、そのまま変わらず適用されていくということです。 ○委員  女性については坑内労働に入っていないわけですから。 ○事務局  長井先生がおっしゃりたいご趣旨は、今のところはこれは適用があったとしても実質 空振りではないか、そもそも入ってはいけないということがあるから、ということだと 思います。そして、坑内労働という作業条件に照らしてとりわけどれを影響があるもの として考えるべきか、というご趣旨のご質問だろうと思います。これは第1回のときに もそうした議論があったように記憶しています。例えば資料9の第2条の重量物などは あり得る話だと思いますし、機械の運転の関係では7号の動力により稼働される土木建 築用機械もあり得るのではないかと思います。そして、網羅的ではありませんが、12号 の岩石または鉱物の破砕機等々、13号の土砂が崩壊する恐れのあるところ、14号の墜落 の恐れがあるところ、18号の鉛、水銀、クロームというのもあり得ますし、19号、管理 はされていますが20号、23号、24号の辺りは関連する可能性として念頭に置くのかなと 思います。お詳しい名古屋先生から、これもあり得るということで補足していただけれ ば大変ありがたいと思います。 ○委員  ここに網羅されているのは熱と粉じんと機械ですから、多分ないと思います。坑内だ けに限ると、そんなにないと思います。 ○座長  よろしいですか。 ○委員  はい。 ○委員  大きな断面のトンネルなどになりますと、15号もかかわってくる可能性があります ね。 ○座長  ほかに何かありますか。7頁の「EUにおいて」というところですが、母性保護措置 の考え方として「授乳中の女性は母乳を通して乳児にも間接的に影響を与えることや、 基礎代謝量が増加し血行が悪化する等」というところが何となくわかりにくいのです。 こういうことは婦人科学的にこういうものなのですか。 ○委員  これを読んだときに、科学的な根拠に基づいてこういう文面になったのかどうかの確 認がとれなかったのです。特に「労働災害の原因となる疲労への傾向が強まる」という 表現にこれらが影響しているとは直接とれなかったので、これは後ほどのところに関係 するのですが、これをもって妊産婦の制限の根拠にはできないかなと思います。ただ、 授乳中その他やはり母体の変化としてはあるわけですから、当然疲労傾向というのはあ るかと思います。 ○座長  EUではこう言っているというので、そのようにこれは引用しているわけですが、何 となく納得がいかない感じはします。これはこれでいいですね。 ○委員  EUではそう言っているということで。 ○座長  よろしいでしょうか。それでは9頁の4「現在の坑内労働の作業環境、作業態様と坑 内労働が女性の健康等に与える影響について」、10頁の5の直前のところです。先ほど の妊産婦についてはちょっとEUなどの書き方と変わっているところです。 ○委員  これについては、妊娠経過について一般的に言われることを再度確認したということ だと思います。 ○座長  そうですね。「授乳中の母体等にも一層の負荷がかかりやすい。妊産婦については坑 内労働の動作、姿勢または環境条件等が妊娠および産後の母体の変化や経過により影響 を与える可能性がある」。 ○委員  粉じんについても3月に経産省の鉱山保安法の規則改正があって、坑内作業の粉じん の測定の義務と評価の義務まで入りましたから、今以上によくなってくるという形にな りました。多分、粉じんに関する影響はないし、坑内通気も全部整っていますので、今 より改善される傾向にはありますが、今よりバックすることはないのではないかと思い ます。坑内には何ともないと思います。 ○座長  それでは、特段ないようでしたら、最後に「坑内労働に係る規制の課題」はいかがで しょうか。再度全体として何かお気付きの点はありますか。今まで十分検討していただ き、その点についての修正をしていただいたということで、今日は特段の修正等のご意 見もありません。報告書(案)として、おおむねこれで了承していただいたということ でよろしいでしょうか。 ○委員  1つだけ確認したいのですが、後ろに付く関係資料の最後に「参考」ということで各 方面からの要望のペーパーがあって、2つここに挙げられていますが、これは特区のよ うな要望があったものに限ってここに載せてあるということなのでしょうか。 ○事務局  ここに記載してありますように、内閣府の公式なところに寄せられた要望を掲載して います。個別的には口頭で聞いたりしたものもあるわけですが、公式になっているもの に絞らせていただきました。 ○委員  わかりました。建設業界などの要望もあるので、それは載せておいてもいいのかなと 思って確認の意味で質問させていただいたのですが、そういう基準があって載せている ということであれば、それで結構です。 ○座長  いちばん下に書いてある2行ですね。これはよろしいですね。 ○事務局  建設業界も産業の1つですから。 ○委員  一応網羅しているという考えですね。 ○事務局  日本経団連からは、そこから要望があって上がってきたと聞いています。 ○委員  了解しました。 ○座長  それでは、この報告書(案)をご了承いただいたということでございます。どうもあ りがとうございました。なお、来週事務局で石灰石鉱山における坑内労働の現地調査を 行うことになっていると聞いています。報告書(案)にはその現地調査の結果も盛り込 みたいと思いますので、報告書の確定の前に全体像等をご覧いただきたいと思っていま す。参考資料の追加書きがあるのですか。 ○事務局  参考資料の中に、今回実地調査を行ったものについて「概要」という形で資料4を付 けています。これまでも石灰石鉱山については基本的にはほかの鉱山と同じと聞いてお りましたが、念のため行ったほうがいいだろうということで、来週行く予定にしていま す。それは、右に1つ項目として加えた形で整理をさせていただければと思っていま す。委員の皆様方におかれてはお忙しいと思いますが、一緒に行っていただけましたら 大変ありがたいと思います。 ○座長  可能であればということですね。急なスケジュールですし、だいぶ遠い所ですよね。 ○事務局  比較的近い所と思っています。 ○座長  可能であればご参加いただければということのようです。そういう段取りでよろしい ですか。多分それで全体が変わるということはなくて、単に念のためということだと思 います。それでは、この報告書の今後の取扱いなどについて、事務局から説明をお願い します。 ○事務局  本日は大変ありがとうございました。まだ若干残しているところがありますが、報告 書として確定した段階で記者発表をさせていただきたいと思っています。その日程等が 決まりましたら、もちろん内容が確定した段階で、各委員の皆様に事前にお届けさせて いただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。 ○座長  それでは、これで終了したいと思いますが、ご挨拶をいただきたいと思います。今日 は雇用均等・児童家庭局長がご出席の予定になっていましたが、予定より早く終了して しまいましたので、審議官からお願いします。 ○事務局  局長が所用で外出しており、失礼しました。これで会議としては最終回ということで す。半年にわたり、大変お忙しいところをご参集いただきまして、ありがとうございま した。今後は、この専門家会合の議論を踏まえて、法律等の改正となれば関係審議会に おいての議論を行っていくということになります。そのような方向で必要な議論を行っ ていただきたいと思っています。こうした坑内労働の問題については、非常に専門的知 見を要する問題です。今後とも先生方には、この報告書の完成のみならず、いろいろな 機会にご意見を頂戴したいことが出てくると思いますので、引き続きどうぞよろしくお 願いします。本当にどうもありがとうございました。 ○座長  それでは、これをもって「女性の坑内労働に係る専門家会合」を終了します。どうも ありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課法規係(7836)