第25回科学技術部会 資料
平成17年6月23日


国立社会保障・人口問題研究所の機関評価について


(資料)
 ・ 国立社会保障・人口問題研究所評価委員会の評価報告書
 ・ 評価結果に係る対処方針

(参考)
 ・ 国立社会保障・人口問題研究所の概況



平成17年5月16日

国立社会保障・人口問題研究所所長
京極 宣 殿

国立社会保障・人口問題研究所
研究評価委員会委員長 高梨 昌

評価報告書

 今般、国立社会保障・人口問題研究所研究評価委員会規程に基づき、平成14年度から平成16年度に係る国立社会保障・人口問題研究所(以下「研究所」という。)の機関評価を実施したところであり、その結果について、下記のとおり取りまとめたので、報告する。


1. 研究・開発・試験・調査・人材養成等の状況と成果
 研究所は、社会保障及び人口問題に関する調査及び研究を行う厚生労働省の政策研究機関として、その所掌事務に係る調査、研究業務等を着実に実施し、成果を上げている。
 これらの調査、研究業務に当たっては、研究所自身が実施する調査等により統計資料を作成するなど、政策研究機関としての特色を活かしながら、調査研究を行い情報発信している。
 例えば、今回の評価期間に行われた市区町村別将来人口推計は、地方公共団体等の現場で活用される機会も非常に多く、高い評価を得ている。

2. 研究開発分野・課題の選定
 研究所において取り組んでいる研究課題については、近時の社会保障及び人口問題を取り巻く状況を踏まえ、所内の研究部の部長等により構成される研究計画委員会で議論し、優先順位等を考慮して決定している。その際、限られた人的資源が最大限活かされるよう、所外有識者との研究ネットワークを活用しながら、政策研究機関として適切に役割を果たすことができるよう、課題選定が行われている。

3. 研究資金等の研究開発資源の配分
 研究所においては、各研究課題ごとに予算が計上されており、研究の実施に際し、当該予算を各部に配分することとはしていないことから、非該当である。

4. 組織・施設設備・情報基盤・研究及び知的財産権取得の支援体制
 研究所の組織については、現在の組織体制によって社会保障及び人口問題の研究の実施に必要な基本的枠組みは確保されているものと考えられる。また、今回の評価期間においては、特定事項の調査研究・調整や成果の普及を行うスタッフ職の政策研究調整官が16年度に設置されたこと等の組織の充実が行われている。なお、近時の社会保障及び人口問題の政策研究の量的拡大や質的な高度化に適切に対応していくためには、研究に必要な人的資源の確保に向けた取組が引き続き必要である。したがって、平成17年度に出生動向研究のために増員された主任研究官のような増員努力や研究所の定員外の客員研究員や分担研究者・研究協力者の活用が更に引き続き必要である。
 研究所の施設設備については、各研究者に対し社会保障及び人口問題に関する研究活動を円滑に行う上で良好な環境が確保されているものと考えられる。
 情報基盤に関しては、16年11月に新たなコンピューターシステムが導入されるなど、研究環境の電子化が適切に進められている。
 なお、知的財産権の取得に関しては、社会保障及び人口問題に関する政策研究の過程においては、当面、想定し得ないものである。

5. 共同研究・民間資金の導入状況、産学官の連携、国際協力等外部との交流
 研究所においては、各研究プロジェクトにおける研究活動、機関誌の編集等が外部研究者の参加も得て実施されている。また、内外の研究者の参加の下に厚生政策セミナーや研究交流会が実施されているほか、外国人研究者の招聘による特別講演会等の国際協力が積極的に実施されている。さらに、国内大学院等から客員研究員を受け入れている。
 なお、民間資金の活用については、国立の試験研究機関であるので、一般会計や厚生労働科学研究費等の競争的経費により調査研究の資金を確保することが原則である。

6. 研究者の養成及び確保並びに流動性の促進
 研究者の確保については、研究者の新規採用に当たっては優秀な人材が多数応募してくるという状況にあるが、政策研究機関としては、専門性に加えバランス感覚や適切な政策的視点をもった研究者の確保が引き続き必要である。
 研究者の養成については、修士以上の学歴を有する者が入所者の多数を占めるという状況下で、入所後は研究プロジェクトに参加して一定の調査研究をする中で研究者として養成されている。また、研究所幹部及び研究評価委員によって行われる研究者評価においても学位取得や研究の方向性等について適切に指導する等により人材養成が行われている。
 また、流動性については、社会保障分野を中心に、研究所研究者の大学等への転出が見られる。しかし、これは単なる「流出」ではなく、我が国唯一の社会保障及び人口問題の総合的な研究機関から専門的研究能力を有する人材を送り出すことにより、我が国の社会保障及び人口問題研究に広がりと深みをもたらすとともに、大学等へ移った後も研究所のプロジェクトに外部研究者として参加・貢献しているという意味で、社会保障及び人口問題研究の人材養成の側面も有している。
 なお、今後研究者の適切な養成のために次のような事項について留意する必要がある。
 (1) 人口問題に関する研究分野において、我が国の大学では教育を受けることの困難な形式人口学や数理人口学を学ぶ機会や統計処理の訓練を受ける機会を確保すること。
 (2) 海外研究機関への派遣等在外での研究の機会を確保することを検討すること。

7. 専門研究分野を生かした社会貢献に対する取組
 研究所ホームページへのアクセス数が増加している中、ホームページの充実が行われており、また、厚生政策セミナー、研究報告会、研究交流会等が積極的に行われている。個別の取組としても「人口統計資料集」の解説として行った人口統計懇話会や平成14年1月の将来人口推計の後に研究者を集めて開催したセミナー等が適切に行われている。さらに、研究所の機関誌である「季刊社会保障研究」、「海外社会保障研究」及び「人口問題研究」については社会保障及び人口問題の分野でトップクラスのジャーナルとして評価を受けている。
 これらの点は評価されるものであるが、今後次のような事項についても配慮する必要がある。
 (1) 対外発信の内容について、機関誌、研究叢書、資料集、ホームページ、セミナー等、各々の媒体や発信の受け手の特性に応じた適切なものとなるよう配慮すること。
 (2) ホームページの更なる改善という観点から、
研究所の報告書のリストを掲載すること。
「人口統計資料集」の特集のバックナンバーを統計資料に関する重複は避けて掲載すること。

8. 倫理規程、倫理審査会等の整備状況
 研究所は、社会保障及び人口問題に関する政策研究を行う人文科学系の研究機関であることから、生物に係る実験等を行う場合の倫理面での配慮には非該当である。また、個人情報については、統計法等に則って、適切に保護されている。

9. その他
 研究の機会が適切に確保されるように、研究者の間の業務量の適切な配分や業務量全体の適正化を図るべきである。また、研究補助的な業務の適切な執行についても留意すべきである。



国立社会保障・人口問題研究所研究評価委員名簿

平成17年3月10日現在

池上 直己 慶應義塾大学医学部教授
稲葉 寿 東京大学大学院数理科学研究科助教授
大塚 柳太郎 東京大学大学院医学系研究科教授
大淵 寛 中央大学経済学部教授
河野 正輝 熊本学園大学社会福祉学部教授
庄司 洋子 立教大学社会学部教授
盛山 和夫 東京大学大学院人文社会系研究科教授
高梨 昌 信州大学名誉教授
高橋 眞一 神戸大学大学院経済学研究科教授
田近 栄治 一橋大学大学院経済学研究科教授
橘木 俊詔 京都大学大学院経済学研究科教授
津谷 典子 慶応義塾大学経済学部教授
原 俊彦 北海道東海大学国際文化学部教授
早瀬 保子 元日本貿易振興機構 アジア経済研究所
開発研究センター研究主幹

(研究評価委員14名)



機関評価に係る対処方針

国立社会保障・人口問題研究所
所長 京極 宣

 平成17年5月16日付けにより、国立社会保障・人口問題研究所評価委員会委員長から提出された「評価報告書」(別添)において、当研究所の運営に関して改善が求められた諸事項に関しては、平成17年度以降において、下記の方針により対処するものとする。

<改善を求められた事項>
 近時の社会保障及び人口問題の政策研究の量的拡大や質的な高度化に適切に対応していくためには、研究に必要な人的資源の確保に向けた取組が引き続き必要であるので、平成17年度に出生動向研究のために増員された主任研究官のような増員努力や研究所の定員外の客員研究員や分担研究者・研究協力者の活用が引き続き必要である。
<対処方針>
 これまでも、研究に必要な人的資源の確保に向けた取組を行ってきたところであるが、平成17年度以降も必要な取組を行う。また、定員外の客員研究員や分担研究者・研究協力者も引き続き活用する。

<改善を求められた事項>
 研究者の確保について、専門性に加えバランス感覚や適切な政策的視点をもった研究者の確保が引き続き必要である。
<対処方針>
 研究者の新規採用に当たっては、専門性に加えバランス感覚や適切な政策的視点を持った研究者の確保に留意する。

<改善を求められた事項>
 今後研究者の適切な養成のために次のような事項について留意する必要がある。
(1) 人口問題に関する研究分野において、形式人口学や数理人口学を学ぶ機会や統計処理の訓練を受ける機会を確保すること。
(2) 海外研究機関への派遣等在外での研究の機会を確保することを検討すること。
<対処方針>
 形式人口学や数理人口学を学ぶ機会については、研究所内における勉強会、在外研究、国内外の学術・研究・行政機関等の研修等を活用して適切に確保されるよう努力する。
 在外での研究の機会の確保については、国際学会への参加、在外研究機関の短期研修、留学、厚生労働科学研究費等の研究プロジェクトにおける海外出張等を活用して適切に確保されるよう努力する。

<改善を求められた事項>
 対外発信について、
(1) 対外発信の内容について、機関誌、研究叢書、資料集、ホームページ、セミナー等、各々の媒体や発信の受け手の特性に応じた適切なものとなるよう配慮すること。
(2) ホームページの更なる改善という観点から、
研究所の報告書のリストを掲載すること。
「人口統計資料集」の特集のバックナンバーを統計資料に関する重複は避けて掲載すること。
<対処方針>
 機関誌、研究叢書、資料集等の編集、ホームページの企画立案、セミナーの開催等に当たり、機関誌等の読者、ホームページにアクセスする者、セミナーの参加者など各々の受け手に応じた適切な内容となるよう配慮する。
 ホームページについては、研究所の報告書リスト及び人口統計資料集の特集のバックナンバーを掲載する方向で平成17年度以降準備を行う。

<改善を求められた事項>
研究の機会が適切に確保されるように、研究者の間の業務量の適切な配分や業務量全体の適正化を図るべきである。また、研究補助的な業務の適正な執行についても留意すべきである。
<対処方針>
 研究者間の業務量の適切な配分や業務量全体の適正化については、研究者が固有の専門分野を有しており、また、人口問題及び社会保障に関する研究に対する需要が増大していることを考えれば、その取組には限界がある。しかし、研究プロジェクトの企画立案やプロジェクトの研究組織の編成に当たって配慮していく。
 また、研究補助的な業務については、現在の組織体制の中で、IT技術の活用、非常勤職員の活用等により、研究者の本来の研究業務に支障が生じないように適切に配慮していく。



国立社会保障・人口問題研究所の概況

1. 沿革
 ○  平成8年12月に国立社会保障・人口問題研究所が発足。
 ○  歴代所長: 塩野谷祐一・現一橋大学名誉教授(平成8年12月〜平成12年3月)
阿藤 誠・現早稲田大学特任教授(平成12年4月〜平成17年3月)
京極宣・前日本社会事業大学学長(平成17年4月〜 )

2. 組織・予算(平成17年度)
 ○  組織は所長、副所長、政策研究調整官の下、7部及び総務課により構成。
 * 部は、企画部、国際関係部、情報調査分析部、社会保障基礎理論研究部、社会保障応用分析研究部、人口構造研究部、人口動向研究部。定員は54人(研究職43人、行政職11人)。
 ○  予算は、一般会計で約9億8千万円。

3. 研究事業
 ○  人口分野の研究(近年の例) *いずれも5年に1回実施。
 ・ 将来推計: 全国将来人口推計(平成14年1月)
都道府県別将来人口推計(平成14年3月)
市区町村別将来人口推計(平成15年12月)
全国世帯数将来推計(平成15年10月)
 * 時点は推計発表時。
 ・ 実地調査: 第5回人口移動調査(平成13年)
第12回出生動向基本調査(平成14年)
第3回全国家庭動向調査(平成15年)
第5回世帯動態調査(平成16年)
 * 時点は推計発表時。
 ○  社会保障分野の研究(近年の例)
 ・ 社会保障給付費推計(毎年度)
 ・ 社会保障総合モデル事業(平成16〜18年度)
 ・ 医療等の供給体制の総合化・効率化等に関する研究(平成16年度〜18年度)
 ・ 戦後日本の社会保障制度改革に関する政治社会学的研究(平成14〜16年度)
 ・ 社会保障における少子化対策の位置付けに関する研究(平成15〜16年度)
 ・ 家族構造や就労形態等の変化に対応した社会保障のあり方に関する総合的研究(平成14〜16年度)
 ・ 介護サービスと世帯・地域との関係に関する実証研究(平成14〜16年度)

5. その他
 ○  次の3種類の学術誌の発行(年4回)やWeb Journalによる外国への発信を実施。
 (1)季刊社会保障研究 (2)海外社会保障研究 (3)人口問題研究
 ○  その他、厚生政策セミナーの開催、研究叢書等の発行を行っている。

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