5. | おわりに |
1) | 研究成果に対する主な評価結果 |
2) | 厚生労働科学研究費補助金の「必要性」について |
厚生労働科学研究費補助金制度は、この指摘に対応して、それぞれの要素を考慮し、平成15年度から「行政政策分野」「厚生科学基礎分野」「疾病・障害対策分野」、および「健康安全確保総合分野」の4分野に分類することになった。たとえば「行政政策分野」は行政施策への政策支援が要請されており、また「厚生科学基盤研究分野」では政策的に重要で臨床に直結する学術的成果が期待されている。4つの研究分野においてそれぞれ要請されている要素を明確に整理して、それぞれの領域で行政的に「必要な」研究課題の公募がなされていると考えられる。
3) | 厚生労働科学研究費補助金の「効率性」について |
限られた予算の中で、研究課題を公募のうち40.4%の新規課題を採択し、研究を実施することにより、必要性、緊急性が高く、予算的にも効率的な研究課題が採択され、研究が実施されていると評価できる。研究期間は原則最長3ヵ年であり、研究課題の見直しに反映されるため、効率性が高いと考えられる。
また、評価方法についても適切に整備され、各評価委員会の評価委員がその分野の最新の知見に照らした評価を行い、その結果のもとに研究費が配分されていることから、効率性、妥当性が高いと考えられる。中間評価では、当初の計画通り研究が進行しているかの到達度評価を実施し、必要な場合は継続を変更・中止を決定することにより、効率的に研究費の補助がなされているのかについて評価している。
4) | 厚生労働科学研究費補助金の「有効性」について |
なお、成果は4つの研究分野でそれぞれ特徴がある。学術的な成果が多く見られる研究分野がある一方で、原著論文や特許が少ない研究分野においては施策の形成への反映において効果が高い研究事業があることが見受けられるからである。
このように、政策課題への支援、および治療等の開発を通じた学術研究の成果が、厚生労働科学研究は各研究分野ごとで適切になされていることは、この制度の「有効性」の一端を示している。
5) | 本評価の課題 |
また、厚生労働科学研究費補助金制度は、研究者がさらに高い研究目標を目指すことを勇気づけながら、研究開発の目標達成や成果の社会的還元の意義を研究者が一層自覚する仕組みを開発していく必要がある。研究規模を大きくするが同時に成果を問う研究事業をモデル的に検討するという方法も一案であろう。
研究機関が競い合って社会的な課題の解決に取り組む競争的環境を育むために、研究評価の具体的基準及び評価体制をさらに整備していく必要がある。厚生労働科学研究費補助金は、公募課題の設定等において研究の必要性に留意しつつ、研究者の独創的な発想による研究成果を期待できる競争的資金を活用した研究の活性化と成果の還元が今後も求められる。
6) | おわりに |
厚生労働科学研究においては、学術的に成果が高い研究事業、特許等の成果が上げられている事業と行政的な成果が上げられている事業がある。それぞれの領域において行政的な貢献および学術的成果という2つの観点から評価した結果、その力点が異なることが明らかになった。このことは、評価の重点を調整しながら研究分野ごとで柔軟に評価する必要性を示唆している。今後も適切な評価指標の開発を進める必要がある。
参考文献
1. | 厚生科学審議会科学技術部会.厚生労働科学研究費補助金の成果の評価.平成15年5月30日. |
2. | 厚生科学審議会科学技術部会.厚生労働科学研究費補助金の成果の評価.平成16年6月1日. |
3. | 総合科学技術会議.競争的研究資金制度の評価.平成15年7月23日,p18-22. |
4. | 厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針.平成14年8月27日(厚生労働省大臣官房厚生科学課長決定. |
5. | 国の研究開発評価に関する大綱的指針、平成17年3月(内閣総理大臣決定) |