健康安全確保総合研究分野


創薬等ヒューマンサイエンス総合
研究事業


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業
所管課:厚生労働省医政局研究開発振興課
予算額(平成17年度):1,996,991千円
(1) 研究事業の目的
 がん・アルツハイマー病など、有効な治療薬が開発されていない疾病はいまだ多く残されており、優れた医薬品の開発が強く望まれている。このため、(財)ヒューマンサイエンス振興財団を実施主体として公募方式による官民共同研究等を実施する事業「創薬等ヒューマンサイエンス総合事業」と「エイズ医薬品等開発研究」を実施している。それぞれの目的は以下のとおり。
(1) 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業は、画期的・独創的な医薬品等の創製のための技術開発、医療現場のニーズに密着した医薬品の開発及び長寿社会に対応した保険・医療・福祉に関する先端的基盤的技術開発に関する研究事業並びにこれらを支援するための推進事業を遂行することにより、保健・医療・福祉関連施策の高度化に資することを目的とする。
(2) エイズ医薬品等開発研究はエイズ医薬品等の研究開発に資することを目的とする。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 H16年度採択課題は別添のとおり。
 研究分野として、創薬等ヒューマンサイエンス総合研究は以下の7つの分野、エイズ医薬品等開発研究は以下の3つの分野で、実施。
創薬等ヒューマンサイエンス総合研究の7つの分野
 第1分野:先端的創薬技術の開発に関する研究
 第2分野:創薬のための生体機能解析に関する研究
 第3分野:医薬品等開発のためのレギュラトリーサイエンスに関する研究
 第4分野:創薬に係る臨床研究並びに稀少疾病治療薬等の開発に関する研究
 第5分野:健康寿命延伸・予防診断・治療法の開発に関する研究
 第6分野:医療材料および製剤設計技術の開発に関する研究
 第7分野:ヒト組織を用いた薬物の有効性、安全性に関する研究
エイズ医薬品等開発研究の3つの分野
 第1分野:抗エイズウイルス薬、エイズ付随症状に対する治療薬の開発に関する研究
 第2分野:エイズワクチン等エイズ発症防止薬の開発に関する研究
 第3分野:抗エイズ薬開発のための基盤技術の開発等に関する研究
 これらの研究は原則3年間の研究期間で実施しており、研究の評価には外部の評価委員で構成される評価委員会が、多角的な視点から評価を行い、その結果で採択や研究費配分を行っている。また、官民共同型研究では、民間企業からの研究委託費を含めたマッチングファンド方式で資金を配分している。
(3) 研究成果及びその他の効果
 当該事業は3年毎に公募を行なっており、H16年度は新規に課題を採択したところである。このため、具体的な成果の例として平成13〜15年度の間に各研究分野の官民共同型研究から得られた実例を以下に示す。
 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究においては幅広く創薬に資するための研究を実施している。
第1分野:いくつかの高感度分析法を開発した。事業化に向けた話し合いを開始したものがある。
第2分野:低酸素反応因子や血管新生作用を持つRNAiの研究成果に基づく医薬品の開発や共同研究参加企業での臨床開発を進めることになった。
第3分野:超難溶性の薬剤の製剤化技術を開発し、成果の一部は安定性試験のガイドライン設定に反映された。
第4分野:神経毒素精製の研究成果から、稀少疾病治療薬としての商品化が進められている。
第5分野:細胞培養由来の新規不活化日本脳炎ワクチンを開発し、認可申請の実用化段階に達している。
第6分野:医薬品製造のプロセスバリデーションについて様々な課題の検討を行い、その研究成果は製造現場で活用され、また、薬事監視員の教育等にも利用されている。
第7分野:生体肝移植時の免疫抑制剤の体内動態を検討し、移植手術での免疫抑制剤の使用方法確立に寄与している。
 エイズ医薬品等開発研究においては、エイズおよびHIV感染症とその合併症の迅速な治療のために日本で未承認の治療薬を輸入して臨床研究を行い、副作用の報告、用法、用量等のEBMの集積を通じて多くの医薬品の迅速な薬事法承認に貢献した。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 医薬品等の研究開発を推進するために、創薬に関わる研究を官民共同で多岐にわたる分野で実施しており、官民の研究事業の推進という行政施策に合致する重要な研究事業である。また、エイズ治療薬の研究開発は行政上重要性が高い事業である。
 画期的・独創的な医薬品等の創製のための技術開発、医療現場のニーズに密着した医薬品の開発及び長寿社会に対応した保健・医療・福祉に関する先端的基盤的技術開発に関する研究等を目標に掲げており、これらの目標に対する寄与度によって達成度が示される。
(5) 課題と今後の方向性
 官民共同型研究を一層充実し、企業の積極的な参加を促進することにより、実用化・事業化を推進する。また、変化する研究ニーズに迅速に対応するためH17年度より毎年公募することとしたところである。
(6) 研究事業の総合評価※(暫定的評価)
 官民共同研究による画期的・独創的な医薬品の研究開発等については、研究成果について、各種科学雑誌への掲載、学会発表等が行われている。
 また、エイズ医薬品等の研究開発については、行政的に重要性の高い研究事業であり、特に、国内未承認の有効なエイズ/HIV 治療薬における国内の臨床試験の実施については、今後とも精力的に取り組むべき課題である。
 さらに、エイズについては、世界的に深刻な状況にあり、アジア諸国でも急増傾向しているが、本研究事業においては、国際的な共同研究等についても実施されており、さらなる努力が期待される。


医療技術評価総合研究事業


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):医療技術評価総合研究事業
所管課:医政局 総務課
予算額(平成17年度):1,432,231千円
(1) 研究事業の目的
 良質な医療を合理的・効率的に提供する観点から、医療技術や医療システムを評価し、医療資源の適切な配分を行うなど、時代の要請に速やかに対応できるよう、既存医療システム等の評価研究を実施するとともに、医療の質と患者サービスの向上のために必要不可欠な医療安全体制の確保に関する研究、根拠に基づく医療(Evidence-based Medicine:EBM)に関する研究を実施するものである。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 ・ 診療技術の評価等(約0.62億円)、医療情報技術の評価等(約1.03億円)、標準的電子カルテシステムの開発等(約2.78億円)、救急・災害医療の評価等(約0.77億円)、在宅医療等の充実等(約0.25億円)、地域医療の向上等(約0.61億円)、医療機関の向上等(約0.53億円)、看護技術の開発等(約0.40億円)、医療事故防止等(約2.73億円)、医療の質の確保等(約0.83億円)、EBMの体系化等(約1.88億円)、院内感染制御等(約0.41億円)となっている。
 医療の高度化や医療事故の報道の増加に伴い、いずれの項目においても医療の信頼の確保に係る研究課題の採択が増加する傾向にある。
 ・ 16年度の採択課題は別紙参照
(3) 研究成果及びその他の効果
EBMの体系化等】根拠に基づく医療の推進のために、重点20疾患に加え、新たに急性胆道炎、尿路結石症、前立腺癌を対象とした診療ガイドラインの作成支援を行った。
医療事故防止等】ヒヤリ・ハット及び事故事例収集、分析の実績を踏まえ、要因分析を実施し、間違えやすい医薬品への対応等を行った。また、新医師臨床研修指導者ガイドラインを作成し、現場に周知した。
看護技術の開発等】これまでに開発してきた特定集中治療室の「重症度に係る評価」及びハイケアユニットの「重症度・看護必要度に係る評価」を、今年度は大学病院の一般病床でも使用し、そこでも入院患者の状態を示す指標としても活用できると確認した。
標準的電子カルテシステムの開発等】標準的電子カルテの開発に関する研究事業については、標準的電子カルテ推進委員会において研究成果の報告がなされ、本年5月に公表された最終報告書の内容に反映されており、開発に係る指針やモデル作成の基盤となっている。遠隔医療に関する研究事業では、推進の根拠となる質と経済的実態を定量的に評価する方法について明確化された。
救急・災害医療の評価等】救急医療向上のための病院前医療体制で重要な救命士への医師の指示体制(メディカルコントロール)の現状が把握できた。災害派遣医療チーム(DMAT)の要員訓練の手法が確立された。また、病院の耐震性について実態を把握した。PET検査施設における放射線安全のガイドラインが作成された。
医療の質の確保等】死体の検案については、従来、研修制度がなく、質の確保が困難であった。研究の一環として、「死体検案講習会」を開催し、死体検案業務の資質の向上を図り、講習会の修了者には修了証を授与することとした。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
いずれも順調に進行している。
EBMの体系化等】順調に進行しており、23疾患の作成支援が終了、がん対策の推進等にも寄与する診療ガイドラインの適用と評価に関する研究事業を進める。また、国民の視点を重視したEBMの推進に関する研究事業や、臨床研修等の様々な医療現場での領域で適用できるEBM手法の開発に向けてさらに研究を推進。
医療事故防止等】医療事故やヒヤリ・ハット事例の実態把握が進んでおり、これらを分析することにより、予防対策等をふくめたマニュアルやガイドラインの作成を推進。新たな課題となっている事故後の原因究明、ADR等に関する基礎資料を作成。
看護技術の開発等】大学病院の一般病床での使用が確認できた患者評価指標は、今後、医療機関における患者の要求に対応した適正な看護サービスを提供するため、また、医療安全の観点も含めた看護職員の適正配置の見直しを行うための資料として活用されることが示唆された。
標準的電子カルテシステムの開発等】電子カルテ等の医療情報分野の標準化や遠隔医療の普及は確実に推進されており、順調に進行している。認証基盤に係る研究など情報セキュリティ確保に関する研究事業をさらに推進。
救急・災害医療の評価等】メディカルコントロール体制の確立を目指し、さらなる研究を推進。研究の成果に基づいたDMAT研修を開始、次年度に向けさらなる拡大を図る。地域でネットワークを組むことにより、中小の医療機関が院内感染対策を行うための研究を推進し、モデル事業に対し技術的支援を行った。
医療の質の確保等】平成17年度より、国の主催による死体検案講習会を予定しており、今後、死体検案業務にあたる医師の資質の向上が期待できる。
(5) 課題と今後の方向性
 平成15年8月に取りまとめられた医療提供制度の改革のビジョンに示された将来像のイメージが実現されるよう、また、社会保障協議会医療部会で論点となっている点について研究課題を公募し採択する方針。
【全般的な課題】
 ・ 患者の視点に立った患者のニーズに応じた医療提供体制の確立
【個別内容に係る課題】
 ・ 患者の視点の尊重として医療に関する情報提供の推進や安全で安心できる医療の再構築
 ・ 質が高く効率的な医療の提供体制の構築や医療を担う人材確保と質の向上
 ・ 医療の基盤整備としての医療分野の情報化の推進
 ・ 医薬品・医療機器、医療関連サービス等の充実 等
(6) 研究事業の総合評価(暫定的評価)
 医療技術評価総合研究事業の成果は、今後の制度設計に資する基礎資料の収集・分析(医療安全、救急医療)、良質な医療提供を推進する具体的なマニュアルや基準の作成(EBM、医療安全、医療情報技術、看護技術)などを通じて、着実に医療政策に反映されている。
 良質な医療提供体制の整備については、既存の医療体制の評価研究や新たな課題(医療安全等)の解決を図る研究などを推進する医療技術評価総合研究事業の充実が不可欠である。


労働安全衛生総合研究事業


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業:(研究事業中の分野名):労働安全衛生総合研究事業
所管課:労働基準局安全衛生部計画課
予算額(平成17年度):236,001千円
(1) 研究事業の目的
 職場における労働者の安全及び健康の確保並びに快適な職場の形成の促進するための研究を総合的に推進することを目的とする。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 事前評価委員会において専門的・学術的観点、行政的観点から高い評価を得た28課題(うち新規9)を採択し、資源配分を行った。
(16年度採択課題一覧については別途添付)
(3) 研究成果及びその他の効果
 16年度においては19課題が終了しているが、このうち主な研究課題の成果等は以下のとおり。
 ・ 不安全行動の誘発・体験システムの構築とその回避手法に関する研究を行い、その成果は、厚生労働省通達「ローラー運転業務従事者危険再認識教育について」に反映された。また、今後、高所作業者運転者を対象とした危険再認識教育の実施にも役立つことが期待される。
 ・ 労働者の自殺リスク評価と対応に関する研究を行い、自殺予防マニュアルを作成(事業場用、産業保健スタッフ用、労働者用)し公表した。
 ・ うつ病を中心としたこころの健康障害をもつ労働者の職場復帰および職場適応支援方策に関する研究を行い、労働者の復職支援プログラム、職場復帰のためのマニュアルを作成し公表した。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 上記のとおり研究成果が直接行政施策に反映されているとともに、研究成果が事業場の安全衛生対策に取り込まれることにより国民に還元されており、事業の目的を概ね達成している。
(5) 課題と今後の方向性
 平成17年度以降においては、これまでの研究をさらに発展させるとともに、過重労働防止、メンタルヘルス対策、製造業の労働災害防止等に資する研究を行うことを通じて、事業場の安全衛生水準の向上を図り、国民の安全で健康な生活を確保することとしたい。
(6) 研究事業の総合評価※
 労働者の安全と健康の確保は国民的課題の一つであるが、労働者の安全と健康の状況を見ると、労働災害による被災者数は年間55万人にも及び1600人以上が亡くなっているほか、仕事や職場生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合は6割を超え、過重労働による健康障害に関する労災認定件数は年間300件以上にも上るなど、その重要性は高まっている。
 本研究事業は、労働者の安全と健康の確保を図る上で必要な基礎資料の収集・分析をはじめ、具体的な安全・健康確保手法の開発を行うことにより、行政施策に必要とされる重要な成果を上げており、一層の推進が必要である。


食品医薬品等リスク分析研究事業


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業:(研究事業中の分野名):食品の安心・安全確保推進研究事業
所管課:医薬食品局食品安全部企画情報課
予算額(平成17年度):1,208,747千円
(1) 研究事業の目的
 食品の安全性確保に対する国民の関心は高く、安心・安全な社会の構築を実現するため必須の課題である。平成15年5月に、食品安全分野における我国初の基本的な法律として「食品安全基本法」が成立し、それに伴い「食品衛生法等の一部を改正する法律」も成立した。同法では、国の責務として、食品の安全性の確保し国民の健康の保護を図るため「研究の推進」が盛り込まれたところである。
 このような事から、行政が主体的に食品の安全を担保し国民の安全な食生活の確保を行うとともに、ひいては食品に関する国民の不安を解消にすることを目的に本研究事業を推進させることとする。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 別紙参照
(3) 研究成果及びその他の効果
 BSEに関する研究では、非定型BSEの発見、牛プリオン遺伝子改変マウスの開発と脳内接種による伝幡実験、BSEプリオンの迅速・高感度検出法および新規検出法の開発、肉への中枢神経組織汚染評価法の開発等の成果が得られ、これにより、我が国のBSE確認検査法の樹立(マニュアルの作成)、日本初のBSE迅速キットへの応用が行われるとともに、我が国のBSE評価のための資料となった。
 ボツリヌス中毒のリスクに関する研究では、A,B,E型毒素を簡単に検出できるイムノクラマト法を開発するとともに、実際にボツリヌス菌により汚染されていた食肉製品を発見し、その生産工場の指導を行っている。
 脂質酸化物の研究では、酸化劣化した油脂中に神経毒性を示す物質が生成する可能性を明らかにするとともに、本研究成果を、即席麺中油脂の過酸化物価に関わる規格値を提案する際の基本データとしてCodex総会(The Hague, the Netherlands, 25-29 April 2005)に提出しているところである。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 (3)にあるように、研究成果については、「安全性の評価」や「規格基準の作成や検査法の開発などのリスク管理措置」などに反映されており、行政施策との関連性は深く、その点からも、「安全な食生活の確保に資する」という事業目的に対する達成度は高いと思われる。
(5) 課題と今後の方向性
 食品に関する安全性を確保し国民の健康の保護を行うことは国としての責務であるため、当該研究事業を更に充実・強化させ、食品安全に資するための目的志向型研究(Mission-Oriented Research)として推進させることとする。
 具体的には、食品(添加物・汚染物質対策、化学物質対策、残留農薬対策等)の安全性確保(規格基準策定、検査法の開発等)のための研究を推進させるとともに、昨今話題になっているBSE対策に関する研究、食品を介した危害要因等(食中毒、テロ・危機管理)に関する研究、輸入食品の安全性に関する研究、科学技術発展によるモダンバイオテクノロジー応用食品の安全性に関する研究など、社会ニーズに沿った研究を推進させる。
(6) 研究事業の総合評価※
 本研究事業は、その研究成果が食品安全行政に反映されており、科学的根拠に基づくリスク管理を進める上で、重要かつ有益である。BSE問題や輸入食品の安全性問題など食品をとりまく問題に関する国民の関心は高く、食品の安全確保に資する研究開発をより一層強化する必要がある。


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業
所管課:厚生労働省医薬食品局総務課
予算額(平成17年度):1,277,975千円
(1) 研究事業の目的
 21世紀は、『生命の世紀』といわれており、ゲノム科学やタンパク質科学等が大きく進展すると予想される。このような最新の知識・技術の研究成果を活用した画期的な医薬品・医療機器等が創製されるためには、科学的根拠に基づいた適正な安全性・有効性の評価基準を作成し、必要に応じて規制として制度化することが必要である。
 また、医薬品・医療機器等の安全対策、薬物乱用の防止対策、人工血液開発等の推進等、様々な領域についての幅広い研究を通して医薬品等の安全確保を図ることにより、国民生活への貢献も期待できる。
 医薬品・医療機器等における研究事業を通じて、品質・有効性及び安全性に関するガイドラインの作成等、着実な成果を上げてきている。
 このような取り組みは、安心・安全な社会の構築に大きく貢献するものであり、また、国際標準の基準・規制の整備を通じて、医薬品・医療機器産業の国際競争力の強化にもつながるものと考えられる。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 16年度採択課題一覧(別途添付可)、課題採択の留意事項等
 別添資料参照。
(3) 研究成果及びその他の効果
(社会的な意義や施策・ガイドライン等への反映状況を含む)
 必要に応じて代表的な研究成果の説明図などを添付してください。
 広範な分野において、研究成果が、国民生活の安心・安全の確保や科学技術の進展につながっている。
 患者参加型の安全対策推進を目的に副作用用語を自覚症状用語に変換可能なデータベースを作成し、これを利用した見やすく分かりやすい患者向け説明文書のあり方を検討して基本様式を提示した。厚生労働省「医薬品総合情報ネットワーク」構想における患者・国民向け説明文書の基礎資料となった。
 動物実験と培養細胞を組み合わせた物質の乱用危険性を予見するシステムを構築し、脱法ドラッグである合成化学物質に加え、植物乱用の危険性を証明した。本システムを利用して脱法ドラッグの依存性と毒性に関する科学的証拠を提供できるようになった。
 各種細菌混入予防対策を講じた上で、高酸素透過性バッグを保存すれば安全に長期間保存も可能であることが判明し、日本赤十字社は血小板製剤に高酸素透過性バッグの採用を決定した。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 患者・国民と医療従事者のコミュニケーションの進展、脱法ドラッグ規制の進展、血液製剤の安全性と供給の両立など、薬事に関わる広範な分野において、施策に反映され、国民の安心・安全の確保に対して大きく寄与している。
(5) 課題と今後の方向性
 本事業は医薬品等の品質・有効性・安全性確保の社会的要請等に応えるため、国際的な動きも視野に入れた薬事関連規制の整備につながる研究を総合的かつ計画的に推進するものである。そのような中で医薬品等に関する問題に個別に対応するだけではなく、安全性等に直結する問題が生じないための将来像を検討しつつ、医薬品安全性情報の提供のあり方に関する研究等、広い視野に立った研究にも着手してきているところであり、今後とも推進していく必要がある。
(6) 研究事業の総合評価※
 安全性の確保から、品質に関する評価、薬物乱用対策など、医薬品等に係る様々な問題に対し、それぞれの研究が着実に有用な成果を上げており、その研究過程による科学技術への貢献、行政施策としての国民生活の向上へ貢献している。


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):化学物質リスク研究事業
所管課:医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室
予算額(平成17年度):1,865,723千円
(1) 研究事業の目的
 化学物質によるリスクに関して、総合的かつ迅速な評価を行い、規制基準の設定など必要な管理を行い、さらに的確な情報の発信などを行うことを通じ、国民の不安を解消し、安全な生活の確保を図るとともに、我が国の持続可能な発展に貢献することを目的とする。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 16年度採択課題一覧(別途添付可)、課題採択の留意事項等
16年度採択課題一覧については別添参照
(3) 研究成果及びその他の効果
(社会的な意義や施策・ガイドライン等への反映状況を含む)
 必要に応じて代表的な研究成果の説明図などを添付してください。
 化学物質リスク評価・管理に関する研究については、トキシコゲノミクス、QSAR等、化学物質の安全性点検に当たっての評価手法の迅速化・高度化に貢献する知見が蓄積された。これらの知見については、経済協力開発機構(OECD)等を通じて国際的に発信されている。
 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する研究については、試験方法の開発、作用メカニズムの解明、生体試料の採取・分析法ガイドラインの策定、日本人の暴露・疫学データの蓄積など、今後の施策を検討する上で必要な知見が得られた。これらの研究成果については、平成17年3月に内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会中間報告書追補その2として取りまとめられた。試験法についてはOECDへの提案を行っている。
 家庭用品に含有される有害化学物質の安全性に関する研究については、室内空気汚染に関して生体内の暴露状況等が明らかになった。また、家庭用品の表示について理解度や誤使用・被害との関連に関する成果が得られ、自主基準等を作成する際の基礎資料として有用である。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 化学物質リスク評価・管理研究については、喫緊の課題である既存化学物質の安全性点検に当たって不可欠な評価手法の迅速化・高度化のための具体的提案を行うものである。本研究の成果をもとに、国際的な提案の実施などが行われた。
 内分泌かく乱化学物質問題については、リスクマネージメントやリスクコミュニケーションの基礎となる科学的知見が不十分な状況にある。このため、内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会において策定された行動計画に基づいて研究を実施している。研究の成果については、平成17年3月に検討会中間報告書追補その2として取りまとめられたところである。また、内分泌かく乱性のスクリーニング試験や確定試験に関して、研究成果に基づきOECDへの試験法の提案やバリデーションの協力を実施した。
 家庭用品の安全性に関する研究については、シックハウス問題対策の一つである揮発性有機化合物の室内濃度指針値の策定の基盤となる知見が蓄積された。家庭用品の表示に関する研究については、個別の製品群に関する具体的な提案が取りまとめられ、自主基準や安全確保マニュアルの策定に当たって有用な資料が作成された。
(5) 課題と今後の方向性
 現代の生活に不可欠であり、身の回りに数万種存在するとされる化学物質について安全性点検を行いその適切な取扱を推進することは喫緊の課題であるが、安全性試験の実施には膨大な予算や時間が必要となることから、引き続き評価手法の高度化・迅速化のための研究を推進していく必要がある。また、リスクの評価に当たっては有害性のみならず、暴露に関する情報も必要であり、適切な情報を効率的に収集する手法に関する研究が必要となっている。
 また、重点的に研究を実施する対象としては、従来のダイオキシンや内分泌かく乱化学物質に加えて、近年急速に開発が進められているナノマテリアルについても、社会的受容に当たって、健康や環境に与える影響の評価が不可欠と指摘されており、緊急に研究に着手する必要がある。
 家庭用品については、生活の利便性に伴い様々な種類の製品が開発される一方、適切な取扱いを怠ると健康被害を起こしかねない製品も少なくないことから、引き続き安全性確保に資する研究を深めることが重要である。
(6) 研究事業の総合評価※
本研究事業は、化学物質の安全性を確保し、公民の不安を解消する上で重要かつ有益であり、研究事業の目的も達成されていることから良好であるといえる。


健康科学総合研究事業


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):健康科学総合研究事業
所管課:健康局総務課地域保健室
予算額(平成17年度):1,186,564千円
(1) 研究事業の目的(予算要求資料より抜粋)
 地域保健・公衆衛生の基盤の基礎して「公衆衛生基盤確保に関する研究分野」及び「地域における健康危機管理に関する研究分野」の2分野、個別対策分野として、「健康づくりに関する研究分野」、「疾病の早期発見と対策に関する研究分野」、「健全な水循環の形成に関する研究分野」及び「生活環境に関する研究分野」の4分野、計6分野から構成された公衆衛生に関する総合的研究事業である。
 個別の分野の目的は下記のとおりである。
   公衆衛生基盤確保に関する研究分野(旧:地域保健サービス分野)
 地域の公衆衛生(地域保健)行政を取巻く社会状況は市町村合併、健康危機の頻発等激変していることに加えて、対応する制度等が不明確な事案も増大しているところであることから、今後の公衆衛生組織等に関する方向性を明確化し、公衆衛生の基盤を強化するために、地域における公衆衛生組織、人材、対策等の将来像に関する概念及び具体的な対応策に関する研究及び開発を行い、公衆衛生行政の基盤の向上を図ることを目的とする。
   地域における健康危機管理に関する研究分野
 SARS、鳥インフルエンザ等の健康危機事例が頻発しており、健康危機対策は社会の安全性及び安心を確保するためには必要不可欠となっている。健康危機管理対策を支える組織、人材、育成、情報等の体制や対応の整備といった共通の基盤の構築を行うことが重要であることから、健康危機対応に関する共通の基盤を構築するために共通して活用できる概念、機器、組織、物流等、研究及び開発を行い、安心・安全の社会形成の基礎となる危機管理対策の基盤整備を目的とする。
   健全な水循環の形成に関する研究分野
 水道システムのエネルギー・環境面での効率化、事故・災害等に対する信頼性向上を効果的に推進するための施設整備、改築、管理手法等に関する研究や、水利用の起点である水道水源を保全するための水源及びその管理に関する評価手法等に関する研究、水道水質の安全性確保のための体制確立に関する研究等を行い、安全で最適な水利用システムを構築することにより、健全な水循環系の形成に資することを目的としている。
   生活環境に関する研究分野
 室内空気汚染問題をはじめとした建築物における空気環境や給排水等の衛生的環境の確保に関する研究、公衆浴場等の生活関係営業の振興及び衛生的環境の確保に関する研究、その他生活環境が人体に及ぼす影響等の研究を推進し、生活衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。
   健康づくりに関する研究分野
 健康増進法を基盤とする国民の健康の増進、生活習慣病に着目した疾病予防の推進のため、分子疫学等最先端科学を活用した循環器病・糖尿病の予防の研究及び生活習慣と疾病との関係に関する調査研究を進めるとともに、健康づくりのための食育の効果的な推進に関する研究を行い、国民の健康の増進の推進を図ることを目的とする。
   疾病の早期発見と対策に関する研究分野
 日本人におけるライフステージ別・疾病別の健康診査項目等に係るエビデンスの構築及び最新の科学的知見に基づいた効率的・効果的な健康診査の実施に必要な研究、健康診査の質の向上を図るための精度管理に関する研究等を推進し、疾病の早期発見と対策の充実を図ることを目的とする。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況(詳細は別紙参照)
 1  健康づくりに関する研究分野採択課題数 26課題
 2  地域保健サービスに関する研究分野採択課題数 14課題
 3  地域における健康危機管理に関する分野採択課題数 6課題
 4  生活環境に関する研究分野採択課題数 13課題
 5  健全な水循環の形成に関する研究分野採択課題数 8課題
(3) 研究成果及びその他の効果
   健康づくりに関する研究分野
 代表的な研究成果としては、「空間分煙と禁煙サポートからなる包括的な喫煙対策の有効性の検討と優れた喫煙対策プログラムの普及に関する研究」において出された成果である空間分煙の手法は「職場における喫煙対策のためのガイドライン」の改訂に貢献している。
 また、「温泉利用健康増進施設が住民の生活の質と健康寿命の改善に果たす役割に関する研究」における成果は、新たに開始された温泉利用指導者育成事業において、教材として活用されている。
 さらには、「健康づくりのための食事摂取に関する栄養学的研究」における成果は、日本人の食事摂取基準の策定に向けた基礎データとして活用されている。
 その他、「健康日本21計画の改訂と改善に資する基礎研究」、「生活習慣と疾病との関係に関する研究」、「生活習慣を改善させるための指導方法に関する研究」等、いずれも健康づくりに関する施策を推進するうえで必要不可欠な研究であり、現在までに集積された科学的知見は健康づくりを進めるための検討会や健康づくり施策等において活用されている。
   地域保健サービスに関する研究分野
 地域保健のマンパワーに関する研究においては、国内外の地域保健サービスのマンパワーの現状、問題点、課題等が整理され、人材育成等に関する知見が集積されたことから、今後はこれらの基礎資料を踏まえて地域における保健所長等の医師の育成及び確保に関する施策が行われる。また、地域保健サービスの基盤に関する研究においては、地域診断、企画立案、保健事業運営、保健事業評価等についての知見が集積され、今後の地域保健サービスに活用される。
   地域における健康危機管理に関する研究分野
 健康危機管理の基盤に関する研究においては、現行制度における保健所及び地方衛生研究所の有する健康危機管理能力について把握され、健康危機管理の制度改正のための基礎資料として使用される。地域における健康危機管理の研修に関する知見が整理・集積され、今後の健康危機管理研修に活用される。また、保健医療科学院に設置する健康危機管理支援情報システムにおける有効活用のための評価等が実施され、今後のシステム運営に活用される。
   生活環境に関する研究分野
 シックハウス対策関連研究については、複数の研究課題の成果を「室内空気質と健康影響」としてとりまとめ公表した。また、研究成果をもとに相談マニュアル(保健所用)、啓発用パンフレット(一般国民用)が作成され、今後、配布・活用予定。
   健全な水循環の形成に関する研究分野
 16年度に終了した諸研究の成果は、水道における病原生物対策等の検討の際の科学的知見としての活用や、環境負荷が低い新たな水道技術の導入を支援するための技術的手引書等としてのとりまとめが予定されているところであり、また、16年度から開始された「最新の知見に基づく水質基準の見直しに関する研究」の成果も、適宜水道水質基準の逐次見直し検討に活用されるなど、水道に係る施策の推進に活用がなされている。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 地域保健(公衆衛生)行政の課題及び施策に対して、本研究事業の結果が積極的に活用されているところである。特に「指針」、「基準値」等の改正の基礎調査研究として活用及び、公衆衛生行政における対応の科学的根拠の確立には大きく活用されていることから、目標に対する達成度は高い。個々の研究事業については下記のとおりである。
   健康づくりに関する研究分野
 健康日本21の目標達成度評価手法に関する研究、生活習慣と疾病との関係に関する研究、生活習慣を改善させるための指導方法に関する研究、栄養食生活に関する研究等、いずれも健康増進法を基盤とする国民の健康の増進、生活習慣病に着目した疾病予防の推進のため、必要不可欠な研究であり、集積された科学的知見は健康づくりを進めるための検討会等において活用されるなど、施策に活用可能な多くの研究成果を得ることができている。他方で、たばこ規制枠組み条約の発効を受けて、新たな効果的な施策展開と社会環境整備のための調査研究や健康づくり・健康増進の観点からの食育の推進に資する研究等を推進し、国としての成果を示していく必要がある。
   地域保健サービスに関する研究分野
 本研究で行われた人材育成、地域診断、企画立案、保健事業運営、保健事業評価等に関する研究は行政施策と密接に関連している。今後、本研究結果は、地域保健計画の法的位置付けに関して地域保健法の改正も視野に入れながら、地域保健施策に反映される予定となっている。また、地域保健のマンパワーに関する研究では、「保健所長の職務の在り方に関する検討会」及び「公衆衛生医師の育成・確保のための環境整備に関する検討会」の基礎資料として使用され、制度改正に活用される。
   地域における健康危機管理に関する研究分野
 健康危機管理対策は行政が中心となって推進していくことが必要不可欠な課題であり、本研究分野は行政課題解決のための対策の一つとなっている。今後、本研究結果は、健康危機管理の運営方法、基盤整備に活用される。また、健康危機管理対策に係る地域保健法の改正も視野に入れながら、今後の制度改正に使用される予定となっている。
   生活環境に関する研究分野
 多様化、複雑化する生活衛生を取り巻く課題に対しては、諸外国の状況等を含めた最新の知見を収集し、必要に応じて適切に対応することが求められている。当分野の研究成果は、短期的にはマニュアル等の行政対応に反映されているとともに、未解明な部分に対する技術的、医学的知見の確実な集積につながっており、行政施策に密接に関連し、その達成度は高い。
   健全な水循環の形成に関する研究分野
 厚生労働省健康局が平成16年6月にとりまとめた「水道ビジョン」では、政策目標として、環境面にも配慮しつつ、安心できる水道水を安定して将来にわたり持続的に供給する旨が掲げられている。本研究はその実現のための科学的な知見等の集積を進めており、行政施策との関連性はきわめて深い。また、本技術研究で得られた知見等は、水道水質基準等の見直し、各種技術手引き書の作成などに活用され、水供給の安全・安定性の確保向上と、そのための水道事業者における新技術導入の促進等に資するものであり、事業目的に対する達成度は大きいと考えられる。
(5) 課題と今後の方向性
   健康づくりに関する研究分野
 生涯を通じた健康増進のために必要である健康診査のあり方や科学的根拠に基づいた健康診査の実施に資する研究を引き続き実施するとともに、健康フロンティア戦略を踏まえ、働き盛り層の健康づくり施策を推進するための健康診査受診後における効果的かつ効率的な保健指導の検証やプログラム開発に資する研究等を実施する必要がある。また今後は、特に生活習慣病における健康づくりといった一次予防からメタボリックシンドローム等生活習慣病の予備軍に焦点を当て、発症予防、生活習慣病の診断・治療を推進するためのエビデンスの構築と基盤整備等を推進するため体系的な研究事業を構築し、推進することが必要である。
   地域保健サービスに関する研究分野
 地域保健計画のあり方及び今後の地域保健サービスに関する方向性を明確化し、地域保健の基盤を強化するために、組織、人材育成、対策等の将来像に関する概念及び具体的な対応策に関する幅広い研究及び開発が必要となっている。また、地域保健対策の推進に関する基本的な指針、健康課題の優先順位等の評価のガイドライン策定のための知見の整理及び集積、地域特性に応じた地域保健対策を推進するためのフィールド研究が必要となっている。
   地域における健康危機管理に関する研究分野
 健康危機管理対策は行政が中心となって推進していくことが必要不可欠な課題であることから、健康危機への対応に関する共通の基盤を構築するために共通して活用できる概念、機器、組織、物流等の幅広い研究及び開発を行うことが必要となっている。また、公衆衛生の新たな課題である初動時に原因が特定できない健康危機事例、NBCテロ、虐待、公衆衛生上問題のあると考えられる死体の死因調査、災害時の対策などに関する知見の整理及び集積が必要である。
   生活環境に関する研究分野
 長期的観点からの知見の集積を行う一方で、短期的達成目標をより明確かつ重点化して設定し、国民に理解しやすい具体的成果を示していくことが必要。
   健全な水循環の形成に関する研究分野
 水道は社会経済活動を支える重要な基盤であることから、今後の水道においては、危機管理対策を強化し、突発的事故、災害、テロ等に対するより高い安全性、供給の安定性の確保を図っていくことが必要とされている。よって、突発的汚染事故や災害、テロ等にかかる安全対策、危機管理対策の強化、水源から蛇口までの水道水の総合的安全性の一層の強化について、研究を進めていくことが必要である。
(6) 研究事業の総合評価
 個々の研究結果については、地域保健法第4条に基づく地域保健対策の推進に関する基本指針の改正及び水質基準等の「指針」、「基準値」等の改正の科学的根拠として活用するとともに、「健康日本21中間評価」等の施策や対応策における具体的方法に活用されており、有効な活用が行われているものである。
   健康づくりに関する研究分野
 健康増進法を基盤とする国民の健康の増進、生活習慣病に着目した疾病予防の推進のため研究を実施し、集積された科学的知見は健康づくりを進めるための検討会等において活用されるなど、今後の施策に活用可能な多くの研究成果を得ることができた。健康フロンティア戦略が策定され、「日本21世紀ビジョン」において、健康維持と病気の予防に重点が置かれた社会を目指すべき方向が示されつつあり、今後ますます生活習慣病の予防対策が重要担っていくことが想定され、生活習慣病に係る予防・医療・治療までを効果的に推進するためのエビデンスの構築と基盤整備等を実施するため体系的に生活習慣病に係る研究を実施していくことが必要である。
   地域保健サービスに関する研究分野
 地域保健サービスに関する知見の集積、手法の開発など本研究の結果は、地域保健計画の法的位置付けに関して地域保健法の改正も視野に入れて、今後の行政施策として反映される予定となっており、研究の成果はあがっている。しかし、地域保健計画、健康課題の優先順位付けのガイドライン策定、地域特性に応じた地域保健対策を推進するため、引き続き更なる研究及び開発が不可欠である。
   地域における健康危機管理に関する研究分野
 地域保健法の改正も視野に入れて、今後の健康危機管理施策として反映される予定となっており、研究の成果はあがっているが、地域における健康危機管理に関する新たな5つの課題への対応策の確立、地域健康危機管理計画の策定等、地域における健康危機管理対策をより強化するために引き続き研究の推進が必要である。
   生活環境に関する研究分野
 シックハウス症候群等、当初、未解明な分野に関する知見が確実に集積され、具体的な対応方策につながっているが、未だ不明な部分も多く、さらなる調査研究の推進が必要である。
   健全な水循環の形成に関する研究分野
 本研究により、安全で最適な水利用システムを構築し、健全な水循環系の形成に資する上での多くの知見を得て、病原生物対策や水道水質基準の逐次見直し等の検討、新技術導入のための技術的手引書の整備等に資することができた。今後は、テロや突発的事故・災害等に対しても、安全な水道水を安定的に供給していくという観点から、飲料水危機管理対策等の強化、水源から蛇口までについての微量化学物質や病原生物等に係るリスクを一層低減し総合的安全性を強化していくための方策等に係る研究開発を中心として進めていくことが必要である。

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