疾病・障害対策研究分野


長寿科学総合研究事業


研究事業:長寿科学総合研究事業
所管課:老健局総務課
予算額(平成17年度):2,077,291千円
(1) 研究事業の目的
 老化や主要老年病の診断治療といった老年医学に加え、疫学、介護、リハビリ、社会科学等、健康長寿に寄与する分野の総合的な研究を行うことを目的とし、介護保険制度改革や「健康フロンティア戦略」をはじめとした高齢者施策の推進に直結した分野を積極的に推進していくこととしており、具体的には以下に掲げる事項に係る研究開発を進めている。
 ・ 老化メカニズムを解明すること。
 ・ 各種老年病の成因の解明と予防・治療方法の開発を行うこと。
 ・ 高齢者に適した各種リハビリテーション方法の確立及び看護・介護の効果的、効率的実施方法を開発すること。
 ・ 高齢者に適した機器及び居住環境の知見の整備を行うこと。
 ・ 高齢者に関する社会的諸問題に関する包括的研究を行うこと。
 ・ 要介護状態の大きな原因となる認知症及び骨折等の骨関節疾患について、より効果的な保健医療技術を確立するための臨床研究等を推進することで、医療の質の向上を図ること。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 平成16年度採択課題一覧(別紙参照)
 事前評価委員会において、必要な分野について学術的・行政的見地からの評価を行い、行政諸施策のサービス提供や臨床への応用が可能な研究等、健康長寿・高齢者施策に直接結びつくものを重点的に採択することとしている。
 なお、総合的かつ効率的な資金配分を行うことを目的として、平成17年度から研究事業を再編し「認知症・骨折臨床研究事業」を長寿科学総合研究事業に統合したことに加え、研究分野を「老化・老年病等長寿科学技術分野」、「介護予防・高齢者保健福祉分野」及び「認知症・骨折等総合研究分野」の3つの大分野に再編した。
(3) 研究成果及びその他の効果
 本研究事業の推進により、老化のメカニズムや老化予防について、遺伝子的要因の解明及び長期縦断疫学研究によるエビデンスの蓄積が進んだ。また、高齢者に特有の疾患・病態において摂食・排泄障害に関する診断法や治療法に関する研究が進んだ。介護・保健福祉分野においては、幅広い年齢や障害の原因おける要介護状態の評価指標の開発研究が着手され、終末期ケアの実態や地域連携モデルの構築、高齢者に対する在宅ケアの質の評価等に関する研究が進んだ。特に介護支援機器の分野では、痰の自動吸引器の開発が進み製品化への目処がつくなど、在宅人工呼吸管理における看護・介護負担の減少が期待される。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 平成17年度の厚生労働科学技術政策の重点事項として「1.健康安心の推進」の中で「介護対策を推進する観点から疾病予防・機能低下予防を推進するための研究」が挙げられていることに加え、総合科学技術会議の平成17年度資源配分方針でも重点4分野の一つであるライフサイエンス分野において「健康の安心・安全領域」として「高齢社会における健康増進や要介護状態の予防を目指し(中略)研究を推進」することとなっている。
 また、平成18年度から施行される予定の介護保険制度改革や老人保健事業の見直しなど、高齢者保健福祉を取り巻く制度改正やその実施に係る政策立案の糧として本研究事業の成果が大きく貢献しており、制度改正後の評価や介護保険制度の被保険者・受給者の範囲の検討等にも本事業における研究成果の活用が期待される。
 さらに、平成17年度から平成26年度までの10年間に健康寿命の概ね2年の延伸を目指す「健康フロンティア戦略」において「介護予防10か年戦略」が掲げられており、これらを推進する基盤としての「科学技術の振興」において長寿科学に関連する分野の研究開発の推進が掲げられているなど、本研究事業の目的と行政施策の方向性が一致しており、今後一体的な事業の推進が期待される。
(5) 課題と今後の方向性
 本研究事業は基礎医学的分野から社会科学的分野まで幅広く、厚生労働行政への応用や、臨床等の実際のサービス提供への応用が可能な研究に重点をおいて総合的見地から課題採択及び評価を行っており、今後もこの方向性を推進していくことが重要である。一方で、老化分野・老年病分野といった基礎・臨床医学的分野と介護分野・社会科学分野等といった政策科学的分野でそれぞれ評価尺度が異なり、均衡のとれた資金配分が難しいという課題があった。
 このため、平成17年度からは、本研究事業と認知症・骨折臨床研究事業を統合した上で、科学技術的研究分野、介護・保健福祉的分野に分類し、保健・医療・福祉の総合的な研究を進める必要のある重点分野(認知症・軽度認知障害、骨折・骨粗鬆症、医療と介護の統合)について新たに研究分野を新設することにより、科学技術トレンドに柔軟に対応できる研究事業の構築を目指すこととした。
 今後はさらなる研究事業の進化を目指し、特に認知症や運動器疾患、老化のメカニズムに等について重点的な課題設定の方向性を検討した上で戦略的な研究開発を実施していく必要がある。
(6) 研究事業の総合評価※
 本研究事業における基礎・臨床的な研究成果により含む高齢者医療の進展と標準化が得られ、また、介護や看護技術、保健福祉政策及び社会科学的側面においても研究成果が行政施策の反映や国民の生活向上に大きく寄与してきた。今後とも長寿科学に関する研究が、保健・医療・福祉の全般にわたり我が国の厚生科学の研究開発において重要な役割を果たし、健康寿命の延伸等「健康フロンティア戦略」の推進や介護保険制度改革の円滑な実施と評価に寄与していくことが期待される。


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業:認知症・骨折臨床研究事業
所管課:老健局総務課(計画課認知症対策推進室・老人保健課)
予算額(平成17年度):2,077,291千円
(※: 平成17年度からは長寿科学総合研究事業と統合したため、当該研究事業の予算額を記載)
(1) 研究事業の目的
 地域医療との連携を重視しつつ、先端的科学の研究を重点的に振興するとともに、その成果を活用し、予防と治療成績の向上を果たすための総合的な戦略である「メディカル・フロンティア戦略」の一環として、認知症及び骨折について、より効果的な保健、医療及び介護技術を確立するための臨床研究等を推進してきた。その実施については長寿科学総合研究事業とも十分連携を図るとともに、平成17年度からは本事業が発展的に長寿科学総合研究と統合された。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 採択課題一覧(別紙参照)
 事前評価委員会において、必要な分野について学術的・行政的見地からの評価を行い、行政諸施策のサービス提供や臨床への応用が可能な研究等、認知症及び骨折について、より効果的かつ効率的な予防、診断、治療、リハビリテーション及び介護等を確立するための臨床研究を重点的に採択した。
 なお、総合的かつ効率的な資金配分を行うことを目的として、平成17年度から長寿科学総合研究事業を再編し「認知症・骨折臨床研究事業」が発展的にこれに統合され、「認知症・骨折等総合研究分野」という長寿科学総合研究事業の3つの大分野の一つとなった。
(3) 研究成果及びその他の効果
 認知症分野においては、新たな経口治療薬の開発が霊長類における臨床研究に移行するとともに、認知症の進展予防のためのスクリーニングや介入の評価が実施されている。これらは認知症診療や介護に関するガイドラインや痴呆介護従事者の研修事業にも反映されている。
 また骨折分野においては、骨粗鬆症の病態解明や早期診断法の開発に加え、骨折や脳卒中に伴う急性期からのリハビリテーションと回復期のリハビリテーションの連携システムに関する研究が進むとともに、転倒予防方法の開発や転倒時に骨折リスクを軽減させる装具の普及について大きな成果がみられた
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 平成17年度の厚生労働科学技術政策の重点事項として「1.健康安心の推進」の中で「介護対策を推進する観点から疾病予防・機能低下予防を推進するための研究」が挙げられていることに加え、総合科学技術会議の平成17年度資源配分方針でも重点4分野の一つであるライフサイエンス分野において「健康の安心・安全領域」として「高齢社会における健康増進や要介護状態の予防を目指し(中略)研究を推進」することとなっている。
 さらに、平成17年度から平成26年度までの10年間に健康寿命の概ね2年の延伸を目指す「健康フロンティア戦略」において「介護予防10か年戦略」が掲げられており、これらを推進する基盤としての「科学技術の振興」において認知症や骨折の予防・治療法の開発、認知症高齢者のリハビリテーションに関連する分野の研究開発の推進が掲げられているなど、本研究事業の目的と行政施策の方向性が一致しており、今後一体的な事業の推進が期待される。
(5) 課題と今後の方向性
 本研究事業は痴呆と骨折について医学的分野から社会科学的分野まで幅広い領域カバーする臨床研究であり、厚生労働行政への応用や、臨床等の実際のサービス提供への応用が可能な研究に重点をおいて総合的見地から課題採択及び評価を実施した。一方で、長寿科学総合研究における採択課題の重複などの課題もあり、効率的かつ総合的な資金配分と事業の実施の観点から、平成17年度から、長寿科学総合研究事業に本研究事業を統合した上で、保健・医療・福祉の総合的な研究を進める必要のある重点分野(認知症・軽度認知障害、骨折・骨粗鬆症、医療と介護の統合)として大分野を新設し、引き続き認知症及び骨折等の骨関節疾患に関する研究を推進。
 今後はさらなる研究事業の進化を目指し、認知症・骨関節疾患に係る重点的な課題設定の方向性を検討した上で戦略的な研究開発を実施していく必要がある。
(6) 研究事業の総合評価※
 本研究事業における認知症及び骨折に関する総合的な研究成果が、メディカル・フロンティア戦略全体の進展に貢献し、併せて高齢者保健医療、介護・看護技術、保健福祉政策及び社会科学の進展に大きく寄与してきた。平成17年度からは本研究事業が長寿科学総合研究事業に統合されたが、認知症及び骨折等の骨関節疾患に関する研究は当該事業の重要な柱の一つでありが、保健・医療・福祉の全般にわたり我が国の厚生科学の研究開発において重要な役割を果たし、健康寿命の延伸等を目指してメディカル・フロンティア戦略の後継戦略として平成17年度から取り組まれる「健康フロンティア戦略」の推進や介護保険制度改革の円滑な実施と評価に寄与していくことが期待される。


子ども家庭総合研究事業


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):子ども家庭総合研究事業
所管課:雇用均等・児童家庭局母子保健課
予算額(平成17年度):618,613千円
(1) 研究事業の目的
 乳幼児の発達支援、乳幼児及び生涯を通じた女性の健康の保持増進等について効果的・効率的な研究の推進を図るとともに、少子化等最近の社会状況を踏まえ、児童を取り巻く環境やこれらが児童に及ぼす影響等についての総合的・実証的な研究に取り組むことにより、母子保健医療をはじめとした次世代育成支援を総合的・計画的に推進するための児童家庭福祉の向上に資することを目的とする。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 16年度採択課題については別途に添付する。なお、課題の採択に当たっては、以下の観点から実施している。
<専門的・学術的観点からの留意事項>
 ・ 研究の厚生科学分野における重要性(有用と考えられる研究であるか)
 ・ 研究の厚生科学分野における発展性(厚生科学分野の振興・発展に役立つか)
 ・ 研究の独創性・新規性(独創性・新規性を有しているか)
 ・ 研究目標の実現性(実現可能な研究であるか)
 ・ 研究者の資質、施設の能力(研究業績や研究者の構成、施設の設備等の観点から、遂行可能な研究であるか)
<行政的観点からの留意事項>
 ・ 行政課題との関連性(厚生行政の課題と関連性がある研究であるか)
 ・ 行政的重要性(厚生行政にとって重要な研究であるか)
 ・ 行政的緊急性(現時点で実施する必要性・緊急性を有する研究であるか)
<総合的に勘案すべき事項>
 ・ 研究内容の倫理性
(3) 研究成果及びその他の効果
 本研究事業においては、「子どもが健康に育つ社会、子どもを生み、育てることに喜びを感じることができる社会」をつくるために、国が次世代育成支援施策を効果的に推進するための基盤として、子どもの心身の健やかな育ちを継続的に支えるための母子保健医療・児童家庭福祉施策の基礎となるエビデンスの集積、効果的な介入方法の開発やその評価体系の確立を含む、実証的かつ成果の明確な総合研究を推進している。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 わが国は、先進国の中でも最も少子化の進んだ国であり、急速な少子化の進行が社会・経済、そして国の持続可能性を基盤から揺るがす事態をもたらしている。このような危機的な状況を克服し、健康で活力ある社会を実現させるためには、わが国の次世代を担う子どもの心身の健やかな育ちを支援する社会基盤を早急に強化することが不可欠である。
 本研究事業においては、社会的関心及びニーズの高い「生殖補助医療」、「リプロダクティブ・ヘルス」、「子どもの心の問題」、「児童虐待」、「母子保健医療」などへの取り組みを行っており、「健やか親子21」や「子ども・子育て応援プラン」などの国の重点課題・施策に応える研究成果が着実に得られている(以下、研究成果の一部例示)。
「不妊治療選択ガイドライン」を作成し、不妊治療の質を確保
「男女の生活と意識に関する調査」により、性、避妊、中絶などの現状把握を行い、望まれない妊娠の防止策を充実するためのエビデンスを提供。研究成果に基づき「親と子のコミュニケーションマニュアル」を作成し、地域思春期保健対策で活用
産後うつの予防や母子の愛着形成支援のための周産期母子精神保健ケア手法の開発
軽度発達障害児の早期発見と対応システムのための「5歳児健診モデル」を構築
胎児期の低栄養状態のリスク低減方策に関して集積されたエビデンスを提供し、これをもとに国のガイドラインづくりに着手
「子どもの事故予防のための市町村活動マニュアル」を作成し、市町村及び家庭の事故防止対策を強化
「SIDS(乳幼児突然死症候群)ガイドライン」を作成し、これをもとに啓発広報を一層推進する
小児医療・産科医療提供体制の問題点に関する膨大な調査研究を行い、小児科・産科医師不足の解消など今後の医療体制整備計画のための基礎資料を提供
「就学前の教育と保育を一体として捉えた一貫した総合施設」の在り方検討のための基礎資料を提供
虐待を受けた子どもの心身の健康影響を評価する手法や相談・支援システムを開発
問題を抱える子どもとその家庭を対象とした総合評価表を開発し、全国の児童相談所で使用する
ドメスティック・バイオレンスがある家庭で育った子どもの心理的支援のためのパンフレットとその活用マニュアルを作成
(5) 課題と今後の方向性
 わが国の母子保健の国民運動計画である「健やか親子21」(2001〜2010年)が中間年を迎え、残り5年間の計画を円滑に進めるために必要なエビデンス構築に重点化するとともに、「子ども・子育て応援プラン」の着実な推進を支える研究を推進する。また、
 (1) 生殖細胞の分化・成熟、受精・着床、初期発生の機序との異常発症機構の解明
 (2) 生殖補助医療の安全確保と倫理的側面と医療体制、不妊・不育症、胎児発育障害の原因究明予防・治療・ケア体制の確立
 (3) 小児の先天性疾患や慢性疾患の遺伝子レベルの原因究明・予防・治療・ケアの開発
 (4) 虐待を受けた子どもとその家庭に関する的確なアセスメントと保護・支援技法の確立
 (5) 発達障害の早期診断・治療・とケアと予防方法の確立
などの現在社会的に対応が求められている分野に関する研究を重点的に進める予定である。
(6) 研究事業の総合評価※
 本研究事業は、子どもの心身の健康確保、母子保健医療体制の充実、多様な子育て支援の推進、児童虐待への対応など、多様な社会的課題や新たなニーズに対応する実証的な基盤研究を行い、母子保健医療・児童家庭福祉行政の推進に大きく貢献しており、本事業においては、研究成果は継続的に行政施策に適切に反映されてきている。 子どもを取り巻く社会、家庭環境の変化により、取り組むべき課題も急激に変化し、多様化してきているため、本研究事業においては、「健やか親子21」、「子ども・子育て応援プラン」などに基づく次世代育成支援の推進をはじめとして、今日の行政的課題の解決及び新規施策の企画・推進に資する計画的な課題設定が行なわれている。今後、このような時代のニーズの変遷を先取りした、一層包括的な検証研究及び政策提言型研究により汎用性のある研究成果が期待される。


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名)小児疾患臨床研究
所管課:医政局研究開発振興課
予算額(平成17年度):174,307千円
(1) 研究事業の目的
 根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine )の推進を図るため、小児疾患に関してより効果的な保健医療技術の確立を目指し、研究体制の整備を図りつつ、日本人の特性や小児における安全性に留意した質の高い大規模な臨床研究を実施することを目的とする。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 別添参照
(3) 研究成果及びその他の効果
(社会的な意義や施策・ガイドライン等への反映状況を含む)
 これまでに、麻酔薬、抗腫瘍薬について用法・用量、有効性、安全性等について評価を行い、医師主導型治験を実施するための標準業務手順書を作成する等の成果をあげてきたところである。
 小児における、より効果的かつ効率的な予防、診断、治療等を確立するための質の高い臨床研究を行い、小児疾患に関する医薬品の使用実績の収集、評価を行うことにより治療方法を確立することが期待される。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 現在、小児科領域の現場では、医薬品の7割〜8割が小児に対する適用が確立されていない状況で使用されているのが現状である。小児疾患のように企業が開発し難い疾患分野にあっては、行政的にその研究を支援していく必要があり、根拠に基づく医療(EBM=Evidence Based Medicine)の推進を図るため、倫理性及び科学性が十分に担保される質の高い臨床試験の実施を目指す必要がある。
 これらの目標に対する寄与度によって達成度が示される。
(5) 課題と今後の方向性
 小児科領域の現場では、前述の医薬品の小児に対する適用が確立されていないだけでなく、臨床医、看護師及び治験コーディネーター等の人員も他の領域に比べて少ない等、決して十分な体制が整っているとは言えず、行政としての支援が今後とも求められている領域であるといえる。
 そのため、若手医師・協力者活用等に要する研究とも併せて、適切な予算額の確保が必要である。小児医療分野の安全性の確保のためにも、所要の予算額の確保が今後の課題といえる。
 また、今後とも、新規公募の事前評価及び中間・事後評価を適切なタイミングで効果的かつ厳正に実施することにより、採用又は継続する研究課題の水準を高いレベルに保つ必要がある。
(6) 研究事業の総合評価※
 本研究事業は、平成14年度から開始されたものである。我が国においては、欧米諸国と比較して、治験を含めた臨床研究全般の実施及び支援体制は脆弱であり、特に小児疾患領域においては顕著であると指摘されて久しい。このため、本研究事業によって治験を含む臨床研究全般の実施及び支援体制の強化が図られ、欧米諸国にキャッチアップし、小児疾患領域における根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine)の一層の推進を行うことが必要である。
 本研究事業をこれまで実施してきたことにより、臨床研究の拠点となる施設において、麻酔薬、抗腫瘍薬について用法・用量、有効性、安全性等について評価を行い、医師主導型治験を実施するための標準業務手順書を作成する等の成果をあげてきたところである。今後とも、引き続き着実に推進すべき分野である。


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):小児疾患臨床研究事業(若手医師・協力者活用等に要する研究)
所管課:医政局研究開発振興課
予算額(平成17年度):144,786千円
(1) 研究事業の目的
 根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine)の推進を図るため、平成14年度から開始した事業である。より効果的な保健医療技術の確立を目指すとともに、臨床研究実施チームの研究体制の整備を図りつつ、日本人の特性や小児における安全性に留意した質の高い大規模な臨床研究を実施することを目的としている。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 (別添参照)
(3) 研究成果及びその他の効果
(社会的な意義や施策・ガイドライン等への反映状況を含む)
 小児疾患臨床研究事業において研究を行っている臨床研究を確実に実施するため推進するため、当該臨床研究の拠点となる施設を対象として、若手医師及び臨床研究協力者から構成される臨床研究実施チームを構築・活用し、患者登録業務、データ入力、モニタリング、施設監査等を実施する体制を構築・運営しているところである。
 本研究事業によって、我が国における治験を含む臨床研究全体の水準の向上・臨床試験の推進がなされることが期待される。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 我が国においては、治験を含めた臨床研究全般の実施及び支援体制が脆弱である。そのため、指導医師、若手医師及び臨床研究協力者で構成される臨床試験実施チームを配置することにより、EBMの推進に不可欠な人材の育成を行い、臨床試験の質の向上に努める必要がある。
 これらの目的に対する寄与度によって達成度が示される。
(5) 課題と今後の方向性
 我が国における治験を含めた臨床研究全体を活性化させるため、適切な額の予算額を確保する必要がある。
 臨床研究を実施している現場の医療機関における利便性を考慮した場合、補助金は、申請者たる研究者本人に直接交付するのではなく、研究者が所属する医療機関に交付する方向で検討する必要がある。
(6) 研究事業の総合評価※
 本研究事業は、平成14年度から開始されたものである。我が国においては、欧米諸国と比較して、治験を含めた臨床研究全般の実施及び支援体制は脆弱であると指摘されて久しいところであるが、本研究事業によって治験を含む臨床研究全般の実施及び支援体制の強化が図られ、欧米諸国にキャッチアップし、根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine)の一層の推進を行うことが必要である。
 本研究事業をこれまで実施してきたことにより、臨床研究の拠点となる施設において、若手医師及び臨床研究協力者から構成される臨床研究実施チームを活用し、患者登録業務、データ入力、モニタリング、施設監査等を実施する体制の構築・運営が着実になされつつある。
 今後とも、引き続き着実に推進すべき分野である。


第3次対がん総合戦略研究事業


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):第3次対がん10カ年総合戦略
所管課:健康局総務課生活習慣病対策室
予算額(平成17年度):4,864,889千円
(1) 研究事業の目的

進展が目覚ましい生命科学の分野との連携を一層強力に進め、がんのより深い本態解明に迫る。
基礎研究の成果を幅広く予防、診断、治療に応用する。
革新的ながんの予防、診断、治療法を開発する。
がん予防の推進により、国民の生涯がん罹患率を低減させる。
全国どこでも、質の高いがん医療を受けることができるよう「均てん化」を図る。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 16年度採択課題一覧(別途添付可)、課題採択の留意事項等
(3) 研究成果及びその他の効果
(社会的な意義や施策・ガイドライン等への反映状況を含む)
 必要に応じて代表的な研究成果の説明図などを添付してください。

 ・ 副作用によってQOLを損なう可能性の高い子宮頸がん術後の骨盤放射線照射について、その意義を明らかにするための前方視的無作為割付臨床試験が開始された。この結果、術後治療を効率化しQOL低下を防止すると共に、医療費の適正化に資する治療法の開発が期待されている。
 ・ 患者数が多く社会的影響の多い乳がんの乳房温存療法のガイドラインが作成され、国民がどこでも質の高い医療を受けられる環境整備に貢献した。
 ・ 地域の医療資源活用における阻害要因に関する検討を基に、「予防・検診」、「診断・治療」、「社会復帰」、「緩和ケア」について患者・家族が求める医療サービスの項目を明確にした。
 ・ カプセル内視鏡は小腸病変の診断には有用性が高いが、他の消化管病変についてはシステムの改良や工夫が必要であることがわかった。
 ・ 高速撮影法を用いたMRIの子宮がん検診への応用可能性が示唆された。
 ・ PET検診の利益とリスクを評価し有効性をシュミレーションする方法にある程度の目途がつき自動診断システムを開発中である。
 ・ 肺がん検診については、低線量のヘリカルCTにより発見される多数の肺結節の解析のために肺結節データベースおよびコンピュータ診断支援装置開発のためのCT画像保存システムを構築した。
 ・ マンモグラフィによる乳がん検診の普及に伴い、診断が難しい症例のフィルムを収集していく教育システムの構築が不可欠であることを示した。
 ・ 転移性脳腫瘍のうち単発例についての後方視的研究において、標準治療とされる摘出術と放射線照射の併用と、定位放射線照射を比較すると、平均入院期間と平均医療費は、それぞれ38.3日と3.3日、255万円と61万円と大きな差があることがわかった。この結果を踏まえて、全生存期間に差がないことや放射性障害(特に痴呆)の可能性を回避できること等を検討するための前方視的研究を計画中である。

 ・ 臨床試験を支援する体制としては、JCOG (Japan Clinical Oncology Group)、JALSG (Japan Adult Leukemia Study Group)、WJTOG (West Japan Thoracic Oncology Group)、NSAS/CSPOR (National Surgical Adjuvant Study/Comprehensive Support Project for Oncological Research)など、複数の臨床試験グループが整ってきた。JALSGでは1997年からインターネット登録システムを用いて順調に症例登録・無作為割付・症例フォローアップを行い、各種標準的治療法の確立に大きく貢献している。効率的な症例登録を実現しているモデルケースとして、他の臨床試験グループの支援体制整備にも資するものと期待される。JCOGには、13の臓器専門別の研究グループがあり、全国約160の医療機関・約300の診療科から多くの医師、研究者、医療従事者らが参加・協力している。

 ・ 海外先進医療施設との共同研究により国際的な標準医療の確立に寄与するような基盤形成について
各研究グループにおいて、海外の研究者との情報交流や共同研究を行っているグループも多いが、中でも「独自開発した多因子による癌特異的増殖制御型アデノウイルスベクターによる革新的な癌遺伝子治療法の開発」と題した研究では、マウントサイナイ大学の研究者を招き共同研究を行っている。

 ・ がん診療に関する医学情報の提供について、国立がんセンター等のホームページによる普及が行われている他、研究成果等をわかりやすく提供するためのシンポジウム等が行われている。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 ・ 本研究事業の成果を基に、「がん医療水準均てん化の推進に関する検討会」で議論され、報告書がとりまとめられた。それに基づき「第3次対がん10カ年総合戦略」の均てん化事業を更に推進する予定である。
 ・ マンモグラフィによる乳がん検診の普及に伴い、後ろ向き診断が可能である画像診断の特徴が惹起する訴訟問題に備えるため、裁判となった場合の当該画像の第三者による客観的判定システムの構築が必須であることを明らかにするなど、行政的施策を検討する上で重要な成果を上げている。
 ・ 検診の受診率向上を目指すにあたり、有効性や管理精度の検証の重要性が更に高まっているが、肺がん低線量CT検診の診断基準、要精査基準、経過観察基準などのエビデンスを構築するため、肺がんCT検にて発見される肺結節の精密検査システムとしての検診肺外来および管理検診を創設し、更に肺結節の解析のための結節データベースおよびコンピュータ診断支援装置開発のためのCT画像保存システムを構築するなど、厚生労働行政に密接に関わる成果を上げている。
(5) 課題と今後の方向性
 ・ 地域の医療資源活用における阻害要因に関する検討を基に、「予防・検診」、「診断・治療」、「社会復帰」、「緩和ケア」について患者・家族が求める医療サービスの項目を明確にした。大都市、中小都市、遠隔地において、現在の医療資源を効率的に利用できる体制検討を進めていく。
 ・ 緩和医療のエビデンスを作るための研究、緩和医療チームが早期からがん診療をサポートする体制整備に関する研究や、在宅緩和医療の患者数予測・在宅における患者の多様なニーズの研究などを課題設定する方向で検討中である。
 ・ 医療経済性の検討において、早期発見・早期治療による早期退院・社会復帰の実現とサポートや、地域の医療機関の連携によって得られる在宅医療の普及・充実による経済的効果に関する研究や、リテラシー向上が検診の受診率向上や効率的な医療資源の活用に与える影響に関する研究などの課題設定を行う方針である。
 ・ 全国に数少ない第I相・第II相試験に対応できる設備を整えている国立がんセンター等の医療施設では、臨床試験の症例を受け入れ可能な体制を維持するため、一般診療の症例は連携医療施設が分担するなどの役割分担と連携を同時に強めていくようなネットワーク作りに取り組んでいる。
(6) 研究事業の総合評価※
 遺伝子・分子レベルでのがんのより深い本態解明に迫る成果を上げる一方で、平成16年度から開始された「第3次対がん10カ年総合戦略」の新たな戦略目標に掲げられている革新的ながんの予防、診断、治療法の開発に向けて、大きな成果を上げつつある。今後は、これらの成果を更に応用・発展させ、患者にもっとも近い臨床現場に還元できるよう、研究を推進していくことが求められている。


循環器疾患等総合研究事業


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):循環器疾患等総合研究事業
所管課:健康局総務課生活習慣病対策室、医政局指導課
予算額(平成17年度):2,177,429千円
(1) 研究事業の目的
 心疾患、脳血管疾患は我が国の3大死因のうち、2位と3位を占め、総死亡の3割を占める重要な疾患である。これらの疾患及びその原疾患である糖尿病等の生活習慣病に対する予防と診断及び治療法について、医療現場では多種多様なアプローチが行われており、最適な予防法や治療法というものが必ずしも明らかになっていないことが多い。そこで、我が国におけるエビデンスの確立に資する質の高い多施設共同研究等を推進し、標準的医療技術を確立するとともにその成果の普及を図ることを目的とする。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 (別添)
(3) 研究成果及びその他の効果
 ・ アスピリンの臨床効果について、アスピリンによる心血管イベントの再発抑制効果が日本人でも確認されており、これらの臨床研究等により、今日ではアスピリンは2次予防として、糖尿病の有無に関係なく国内外で広く投与されている。予後調査の結果、アスピリン投与群に心血管系事故が少ない傾向にあり、アスピリンが2型糖尿病患者の動脈硬化性疾患一次予防に有効である可能性のあることが示された。
 ・ 家庭血圧に基づいた高血圧治療の多施設共同無作為介入試験を実施し、厳格な家庭血圧のコントロールが臓器保護に効果的であることを見いだした。
 ・ 日本人で脳卒中の既往を有する患者において、HMG-CoA還元酵素阻害薬による脳卒中再発予防効果を検証するため、前向きの症例登録による予備調査研究により、虚血性脳卒中(特に非心原性脳卒中)既往患者において、高脂血症が脳卒中の危険因子となる可能性を示した。
 ・ 多食、早食い、不規則な睡眠がメタボリックシンドロームと深くかかわっていること。一般住民の凝固制御因子と線溶因子の活性低値の割合を解析したこと、循環器疾患の遺伝的な危険因子をいくつか同定したこと。また、凝固線溶系の活性低値率が初めて分かり、循環器疾患に関係するいくつかの遺伝子多型が初めてわかった。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 ・ アスピリンの臨床効果に関する研究では、2型糖尿病患者の動脈硬化性疾患、特に心筋梗塞や脳梗塞は血糖をコントロールしただけでは充分に予防できないことも明らかとなってくる中で、アスピリンという安価な薬剤がこれらの動脈硬化性疾患を予防できれば、行政施策の中でも活用される可能性があることが示せた。
 ・ 高血圧に関する研究では、厳格な家庭血圧のコントロールが臓器保護に効果的であることを見いだした。その成果はわが国における高血圧治療ガイドライン作成の資料となる可能性がある等行政施策に反映されると考えられる。
 ・ 脳卒中再発と高脂血症に関する研究では、日本人における脳卒中再発と高脂血症との関係を初めて明らかにでき、今後の脳卒中制圧において脂質低下療法という新たな治療方針の確立の重要性が示されるとともに、本研究の予備調査による成果は、日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患診療ガイドラインにおける脳梗塞の脂質低下療法の策定に参考となる情報を与えられるものと考える。
 ・ 臨床と地域疫学のデータベースのプラットフォーム化に関する研究では、研究で行われた生活習慣アンケートが市の基本健康診査の受診票に取り込まれる等地方行政との関連性が高くなり、本研究のテーマであるプラットフォームの役割を公的にも果たせるようになった。
(5) 課題と今後の方向性
 近年、境界型を含めた糖尿病患者が急速に増加している(平成14年糖尿病実態調査)。糖尿病は自覚症状のないまま発症することが多く、治療することなく放置すると、腎症、網膜症、神経症などの合併症を引き起こし、生活の質(QOL)の低下を余儀なくされることが多い。さらには脳卒中、心筋梗塞といった大血管合併症に進展することが多く、糖尿病予防対策を強化することが喫緊の課題となっている。糖尿病に関する研究においては、この糖尿病患者の増加傾向を減少に転じ、QOLの低下を余儀なくする合併症を予防することが必要であり、このためにはこれまでの研究を引き続き推進するだけでなく、新たに、革新的な予防・診断・治療法の確立を、大規模で長期間の戦略をもった研究の方向性をもとに、強化推進していく必要がある。
 脳卒中、心筋梗塞をはじめとする生活習慣病の研究においては、近年特にメタボリックシンドロームの状態に注目が集まっている。このメタボリックシンドロームの状態においては、肥満、高血圧、高脂血症、耐糖能異常といった個々の異常は軽度であっても、これらのリスクが重なることによって脳卒中、心筋梗塞の発症リスクが非常に高まることも明らかになってきている。しかし日本人におけるこれらの実態は未だ明らかになっておらず、一層の研究の強化が求められている。
 また、急性期疾患において、特に心室細動等の不整脈による突然死については、除細動等による早期の治療が注目されている。今後は、傷病者に居合わせたバイスタンダーによる早期介入・治療のあり方が重要であり、その効果的な介入・治療について一層の研究の推進が必要である。
(6) 研究事業の総合評価※
 糖尿病と生活習慣の関係や合併症予防に関して、大規模多施設共同研究によって、従来の通説とは異なる日本人の新たな知見が明らかとなってくるとともに、アスピリンによる2型糖尿病患者の動脈硬化性疾患への一次予防効果の可能性も出てきた。また家庭血圧のコントロールと臓器保護効果や脳卒中再発と高脂血症との関係等に関しても重要な知見が得られた。このように本研究事業は、循環器系の疾患に関して、厚生労働行政に貢献する多くの成果を上げてきている。


障害関連研究事業


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):障害保健福祉総合研究事業
所管課:社会・援護局障害保健福祉部企画課
予算額(平成17年度):  千円
(1) 研究事業の目的
 障害保健福祉施策においては、障害者がその障害種別に関わらず、地域で自立して生活できることを目的に、障害者自立支援法案による新しい障害保健福祉制度の枠組みを構築しようとしている。そのため、地域生活支援を理念として、身体障害、知的障害、精神障害及び障害全般に関する予防、治療、リハビリテーション等の適切なサービス、障害の正しい理解と社会参加の促進方策、障害者の心身の状態等に基づく福祉サービスの必要性の判断基準の開発、地域において居宅・施設サービス等をきめ細かく提供できる体制づくり等、障害者の総合的な保健福祉施策に関する研究開発を推進する。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 別紙
(3) 研究成果及びその他の効果
(障害の正しい理解と社会参加の促進方策)
 ・ 障害者のエンパワメント向上のためのスポーツ活動への参加および自立基盤づくりの評価に関する支援研究
  自閉症児などの障害者に対する水泳教室の実践を行うとともに障害者ネットワークを立ち上げ、全国の障害者組織の活動に関するHPによる情報公開を可能とした。
 ・ 障害者のエンパワメントの視点と生活モデルに基づく、具体的な地域生活支援技術に関する研究
  研究成果は、相談支援事業者による「自立支援プログラム」や施設における「地域移行プログラム」の質の向上に資する。
 ・ 精神保健の健康教育に関する研究
  本研究成果の「心の健康教育」プログラムは無料で利用できるようにし、全国の中学・高校での実施に資するものとする。
 ・ 精神疾患の呼称変更の効果に関する研究
  統合失調症の名称の普及に関する調査を行い、様々な場面での普及に資する成果を得た
 ・ 知的障害者の社会参加を妨げる要因の解明とその解決法開発に関する研究
  知的障害者健康生活支援ノートを作成し、知的障害者のご家族等への普及を図った。
(障害者の心身の状態等に基づく福祉サービスの必要性の判断基準の開発に関する研究)
 ・ 国際生活機能分類(ICF)の活用のあり方に関する研究
  生活機能低下に関する普遍的な評価基準であるICFについて、中核的な活用法を提示し、高齢者の介護予防に関する施策に反映された
 ・ 精神保健サービスの評価とモニタリングに関する研究
  地域等における精神保健サービスの評価指標等を開発し、社会保障審議会障害者部会の精神障害者分会等の資料として活用された
(適切な障害保健福祉サービスの提供体制に関する研究)
 ・ 知的障害児(者)ガイドヘルプの支援技術に関する研究
  知的障害者の地域生活支援の重要な技法のひとつであるガイドヘルプについて、その位置づけや方法論を提示した。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 当該研究事業は、施策に密着した課題が多く、公募課題の決定時点から必要な行政施策を踏まえ戦略的に取り組んでおり、上述のとおり大きな成果をあげている。
(5) 課題と今後の方向性
 障害保健福祉施策については、今国会に「障害者自立支援法案」を提出しており、障害者がその障害種別に関わらず、地域で自立して生活できることを目的とした新しい障害保健福祉制度の枠組みを構築しようとしている。
 また、自立支援のための就労対策、住まい対策などの充実・推進、従来のいわゆる三障害の枠にはまらない発達障害や高次脳機能障害への対応など総合的な対応が求められている。
 障害保健福祉総合研究は、行政課題に密着した研究事業として、行政ニーズに基づく公募課題の設定と研究の着実な実施を進める。
(6) 研究事業の総合評価※
 行政課題に基づく基礎資料の収集・分析、研究成果に基づく施策への提言等を行っており、行政的重要性は非常に高い。
 障害保健福祉施策は、地域生活支援、自己決定の尊重、利用者本位等の理念を発展させるため、自立支援・介護のための人的サービス、就労支援、住まい対策、発達支援などについて総合的に取り組む必要があり、本研究事業の継続的な充実が必要である。
(暫定的評価)


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):感覚器障害研究事業
所管課:社会・援護局障害保健福祉部企画課
予算額(平成17年度):  千円
(1) 研究事業の目的
 視覚、聴覚・平衡覚等の感覚器機能の障害は、その障害を有する者の生活の質(QOL)を著しく損なうが、障害の原因や種類によっては、その軽減や重症化の防止、機能の補助・代替等が可能である。そのため、これらの障害の原因となる疾患の病態・発症のメカニズムの解明、発症予防、早期診断及び治療、障害を有する者にたいする重症化防止、リハビリテーション及び機器等による支援等、感覚器障害対策の推進に資する研究開発を推進する。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 別紙
(3) 研究成果及びその他の効果
(感覚器障害の病態解明と研究基盤の整備に関する研究)
 ・ 難聴遺伝子データベース構築と遺伝カウンセリングに関する研究
日本人の難聴遺伝子のデータベースを確立し、「日本人難聴遺伝子データベースホームページ」を開設するとともに、難聴の遺伝カウンセリングのガイドラインの基礎を作成した
(検査法、治療法の開発)
 ・ 難治性内眼炎の発症機序解明と新しい免疫治療に関する研究
自己免疫性ぶどう膜炎の増強にMCP-1が関与することを発見するとともに、長期ぶどう膜炎患者に対し、ステロイド徐放剤のインプラント手術・硝子体内注入手術が炎症の軽快と視力向上に資することを確認した
 ・ 強度近視における血管新生黄斑症の包括的治療法の確立
これまで有効な治療法が確立されていない強度近視眼における血管新生黄斑症に対する光線力学療法の有効性を示した
 ・ ミトコンドリアDNA遺伝子変異による高頻度薬剤性難聴発症の回避に関する研究
ミトコンドリアDNA1555A/G変異を簡易迅速に検出できるベッドサイド遺伝子診断法を開発した
(リハビリテーション技法の開発)
 ・ 難聴が疑われた新生児の聴覚・言語獲得のための長期追跡研究
新生児難聴スクリーニングで難聴が疑われた新生児の長期追跡研究を行い、早期発見早期教育が有意義であることを臨床疫学的に証明した。研究成果をもとに、単行本「新生児聴覚スクリーニングのすべて」を発刊し、全国の関係者への普及を図っている
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 高齢化が進む中で、QOLを著しく損なう感覚器障害の予防、治療、リハビリテーションは重要な課題である。特に、失明の原因として増加している緑内障や糖尿病性網膜症、突発性難聴などに対する疫学的調査を含めた対策の樹立は急務である。
 複雑な感覚器障害の全容解明には、まだ多くの課題があるものの、病態解明、検査法、治療法の開発、支援機器の開発に着実な成果をあげている。
(5) 課題と今後の方向性
 高齢化が進む中で、QOLを著しく損なう感覚器障害の予防、治療、リハビリテーションは重要な課題である。特に、失明の原因として増加しているといわれる糖尿病性網膜症や緑内障、突発性難聴などに対する疫学的調査を含めた対策の樹立は急務であり、専門家の意見を踏まえつつ、公募課題の重点化を図っていく。
(6) 研究事業の総合評価※
 感覚器障害について、病態解明から検査・治療法、リハビリテーション、支援機器の開発まで一貫して取組む本研究事業は重要である。
 今後、こうした特長を生かして研究対象の重点化を図る
(暫定的評価)

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