1) |
骨・軟骨分野
骨・関節障害等による運動機能の低下はQOLの低下をもたらし、最終的には身体機能の破綻につながる。このような病態に対し、再生医療技術を用いた新たな治療法を開発する。
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軟骨無形成症の遺伝的変異と軟骨成長におけるC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)の役割を明らかにし、CNPを軟骨無形成症の治療に応用できる可能性についてNature Medicine誌等において報告した。 |
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組織工学技術により未分化間葉系幹細胞(MSC)を用いて作製された培養骨・軟骨、注入型人工骨、及び培養骨膜シートを用いた再生技術に関して、臨床での有効性を確認することができた。 |
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軟骨再生に関して現在の技術の問題点の解決を目指し、特にMSCの分化誘導法と移植実験による有効性について、前臨床研究において明らかにした。 |
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2) |
血管分野
血管新生、再生、保護を制御する血管医学の展開を図り、これを応用した虚血性疾患の新しい治療法の開発を目指す。
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血管網を伴った厚みのある心筋細胞シートを開発し、病変部への移植により心機能の改善が可能であることを明らかにした。 |
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生体人工弁に関して、超高静水圧印加及びマイクロ波照射下洗浄法を用いた脱細胞化技術の開発により、高度な安全性と広範な適用範囲を実現した。 |
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全身的な末梢血管の循環不全をきたす糖尿病、高血圧等に対し、自己骨髄細胞移植による血管新生治療を開発し、特に虚血下肢への自家骨髄細胞移植の多施設臨床研究を行った。Lancet誌等において報告するとともに、高度先進医療として承認された。 |
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心筋梗塞により機能の低下した組織を修復する基礎技術として、胚性幹細胞から特異的に心筋細胞を作成する技術、分化した心筋と未分化細胞を分離する技術、及び細胞シートとして心筋を移植する技術を開発した。 |
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3) |
神経分野
パーキンソン病、脳梗塞等への応用を目指して、神経幹細胞の単離、分化、増殖機構の解明を行っている。
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神経幹細胞の分離、培養技術に関して、齧歯類、霊長類及びヒト組織から神経幹細胞を効率よく分離し培養する技術を確立した。 |
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脳に内在する神経幹細胞の増殖を促進させる低分子化合物を明らかにし、内在性の神経幹細胞賦活化因子の治療薬としての可能性を示唆した。 |
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神経幹細胞の体外培養、投与、及び生着技術等、治療に関連した技術として、齧歯類及び霊長類モデルを用いて、体外で培養した神経幹細胞を脳内に移植し生着させる技術を確立した。パーキンソン病モデル動物においては、脳内移植により症状の一部が改善されることを明らかにした。 |
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4) |
皮膚・角膜分野
再生医療技術の応用により、これまで困難であった難治性皮膚潰瘍、熱傷及び難治性角膜疾患等に対する新たな治療方法を開発する。
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移植皮膚の拒絶反応を抑制できる無細胞真皮マトリックスを用いた皮膚移植について検討し、いずれも良好な生着を認め臨床的有用性を明らかにした。 |
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同種培養皮膚を用いて全国の医療機関で多症例の臨床研究を行い、その有効性について明らかにした。 |
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角膜の培養上皮シート及び口腔粘膜上皮シートの作成に成功し、多施設臨床研究を開始した。これに併せて細胞シートを遠隔地に運搬する技術も開発し、実用化に向けたモデルを提示できた。羊膜と組み合わせたハイブリッドポリマーの開発等、将来有望な基盤的成果も得ることができた。 |
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5) |
血液・骨髄分野
造血幹細胞に係る新たな知見の解明と、血液疾患に対して造血幹細胞を用いた治療のエビデンスの確立、及び新たな治療方法の開発に取り組む。
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造血幹細胞の分化制御に関与するLnkについて、造血幹細胞機能のエンハンスと、移植成績の向上に結びつく知見を得た。 |
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造血幹細胞の投与により生着を促す技術に関して、選択的増幅遺伝子(SAG)を利用した造血系細胞体内増幅法のサルモデルでの有効性を確認した。 |
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造血幹細胞の体外増幅法について、分化抑制遺伝子の機能を明らかにし、これに基づいた細胞制御システムを開発した。また臍帯血の体外増幅法の臨床応用に向けた基盤技術を確立した。 |
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末梢血幹細胞移植におけるドナーの安全性を専門的、客観的に検証するためのフォローアップ体制を確立した。また母児間免疫寛容に基づくHLA二座以上不適合移植の成績について解析しBlood誌で報告した。 |
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移植技術・品質確保分野
各種の移植に伴う免疫機能の解析を行い、免疫寛容を起こさせる基礎的なメカニズムを解明するとともに、細胞組織利用医薬品・医療用具の品質、安全性の確保に向けた技術開発及び評価手法の確立を目指す。
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臓器移植の臨床現場で抱える諸問題の解決を目指し、各臓器移植における問題点を明らかにした。特に腎臓移植におけるABO血液型不適合移植症例の解析を通じて移植成績の向上に寄与するとともに、一部の症例においてステロイド離脱を可能とした。 |
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増幅時の細胞・組織に混入するウイルス等の危険因子を迅速かつ効率的に検出する技術、製造過程における品質管理技術の高度化に関して、ポリエチレンイミン磁気ビーズ等を用いたウイルス濃縮法を確立し、核酸増幅法によるウイルス検出の高感度化を可能とした。 |
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