各研究事業の概要


行政政策研究分野


行政政策研究事業


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):政策科学推進研究事業
所管課:政策統括官付政策評価官室
予算額(平成17年度):658,927千円
(1) 研究事業の目的
 少子高齢化の進展や社会経済情勢の変化、人口減少社会の到来等の大きな社会変革の中で、社会保障制度に対する国民の関心がますます高まっていることを踏まえ、人文・社会科学系を中心とした、年金・医療・福祉及び人口問題に関する政策や社会保障全般に関する研究等に積極的に取り組むことにより、厚生労働行政施策の企画立案と施策の効率的な推進、国民への成果還元に資することを目的としている。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 課題採択にあたっては、行政施策との関連性の高い課題を優先的に採択することとしている。
 具体的には、事前企画評価委員会、中間・事後評価委員会において専門的・学術的観点、行政的観点の両方の立場から5点ずつ、計10点の配点で評価を実施。
 平成17年度においては、事前企画評価委員会において得点率の高い順に選定された25課題(得点率66.7%以上)及び中間・事後評価委員会により60%以上の得点を上げ、継続が認められた40課題、計65課題を採択。
 別添参照
(3) 研究成果及びその他の効果
(社会的な意義や施策・ガイドライン等への反映状況を含む)
 政策科学推進研究は、少子高齢化、人口問題、社会保障制度全般、年金・医療・福祉に関する政策科学研究を、人文・社会科学系を中心として部局横断的・総括的に行う唯一の研究事業である。
 また、政策科学推進研究は、省内各局との積極的な連携の下、行政施策と直結した課題を取り挙げている点に特徴がある。
 具体的には、
 ○ 「医療と福祉の産業連関に関する分析研究」(主任研究者 (財)医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 宮澤健一所長)
社会保障分野(医療、介護・福祉等)産業に関し、その社会的・経済的影響を産業連関表を用いて分析。「社会保障在り方懇」の厚生労働省基礎資料として使用。
 ○ 「かかりつけ医の診療プロセスとアウトカムに関する研究」(主任研究者 京都大学 福原俊一教授)
米国内科学会で用いられている外来患者満足度評価指標の日本語版を開発し、その信頼性と妥当性について検証した。
 ○ 「診断群分類を活用した医療サービスのコスト推計に関する研究」(主任研究者 産業医科大学 松田晋哉教授)
平成18年診療報酬改定に向けて検討されているDPC(Diagnosis Procedure Combination)の拡大導入の基礎資料として反映する予定。
など、政策を立案・実施する際の基礎資料として活用され、大きな成果を上げている。
 平成16年度までにも少子化に関する研究や社会保障支出に関する研究が、審議会資料等として活用されている。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 公募課題決定、研究採択審査、研究実施の各段階において意見を聴取する等、省内関係部局との積極的な連携に基づき、行政施策との関連性の高い課題を優先的に実施しており、「社会保障及び人口問題に係る政策、保健医療福祉における総合的な情報化や地域政策の推進その他厚生労働行政の企画及び効率的な推進に資する」ことを目的とする研究として、その役割を十分に果たしている。
(5) 課題と今後の方向性
 行政における中・長期的な制度改革の時期を見据え、行政ニーズを重視した研究を実施する一方で、効率的な少子化対策の方策や人口減少社会における社会保障制度設計等の新たな施策展開のための基礎的情報を得る研究を実施できる研究事業は、他にない。
 このため、幅広い対象の研究を継続して実施する必要性がある一方、毎年度厚生労働行政の置かれている状況に応じ、研究の重要性に基づく柔軟な配慮を心がけた研究費の執行を行うこととしている。
(6) 研究事業の総合評価※
(平成17年2月に平成16年度の事後評価委員会、平成17年3月に平成17年度の事前評価委員会を開催)
 多くの研究が喫緊の行政ニーズを反映しており、(3)で述べたようにその成果が様々な分野の厚生労働行政に活用されている点で評価できる。さらに、幅広い視点、目的の研究も実施することで、中長期的観点に立った施策の検討を行う上で必要な基礎資料を蓄積する役割も担っており、本研究事業は社会的に重要な役割を果たしていると評価できる。今後とも事業の充実が必要である。
 なお、今後の事業実施にあたっては、研究成果のより積極的な周知広報の実施、個人情報保護法施行に伴う個人情報への配慮等に留意する必要がある。


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業:統計情報高度利用総合研究事業
所管課:大臣官房統計情報部人口動態・保健統計課保健統計室
予算額(平成17年度):27,495千円
(1) 研究事業の目的
 厚生労働行政に係る統計調査の在り方に関する研究、及びこれまでの厚生労働統計調査で得られた情報の高度利用に関する研究を実施し、厚生労働行政の推進に資することを目的とする。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 ・ 本研究事業においては、厚生労働行政の推進に資することを目的としており、外部の評価委員会により評価を行なっている。評価に際しては、実際に統計調査に応用可能であるかという点に留意している。
 ・ 別添参照
(3) 研究成果及びその他の効果
 本研究事業は、厚生労働統計調査の高度利用に関する研究等を実施し、厚生労働行政の推進に資することを主な目的とする研究であり、統計調査自体の充実・改善のみならず、統計調査高度利用の推進により、省内関係部局にも研究成果が還元されうるという特徴もあり、有用性の高い研究事業である。具体例を以下に示す。
 ・ 保健医療福祉に関連する主要な統計を対象として、地域・施設・個人単位でリンケージを行い、レコードリンケージに基づく多面的解析の有用性を評価した。また施策上有用な情報を提供しうる可能性を示し、そのために解決すべき課題を明らかにした。
 ・ 複数の厚生統計調査個票(患者調査等)をリンケージし、多次元分析手法を確立し、また当該手法を用いた患者特性に基づく政策評価指標の開発可能性を示唆した。
 ・ 産業別生命表を作成し、産業連関分析とリンケージすることにより産業別健康格差を定量化する等、人口動態統計の新たな活用の可能性を示した。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 本研究事業で得られた研究成果は平成16年度に当部において企画された各種の統計調査の充実・改善に有用であった。以下に具体例を示す。
 ・ 本研究事業で考案されたきめ細かな層化と患者数の推計法の改良等を実施することにより、患者調査の実施にあたっては、大幅な記入者負担の軽減と共に調査精度の向上が図られた。
 ・ 本研究事業で開発されたレコードリンケージ手法により患者調査・医療施設調査・受療行動調査間におけるレコードリンケージの実施・分析が可能となった。
 ・ 本研究事業で開発されたパネル調査分析システムにより各種縦断調査(21世紀出生児縦断調査・21世紀成人者縦断調査・中高年者縦断調査)のより詳細な分析が可能となった。
以上のように、研究成果は高度利用の推進に貢献しており、事業目的を達成していると言える。
(5) 課題と今後の方向性
 「健康安全の確保」、「健康安心の推進」等は厚生労働行政施策の大きな柱であり、それらの施策の企画及び評価を支える基盤としての客観的かつ適切なデータの提供が今後の課題となっている。
 また、各府省統計主管部局長等会議で検討された「統計行政の新たな展開方向(平成15年6月27日)」において、社会・経済の変化に対応した統計の整備、統計調査の効率的・円滑な実施、調査結果の利用拡大、国際協力の推進等が重要な方向性として位置づけられているところであり、当部の統計調査についても、世帯機能の把握といった社会等の変化に対応した統計の整備、IT化に対応した調査・報告のあり方(オンライン調査・報告)、より活用しやすいデータ提供のあり方、データリンケージ等に基づく多面的な解析方法の検討、国際比較可能性を高めるための基本的な情報の収集・共有化の推進等が課題となっている。
 これらの課題への対応として、当該研究事業により、調査項目・調査体制等の見直しを含む統計調査の企画及び解析方法等の継続的な検討・開発が不可欠である。
(6) 研究事業の総合評価※
 ・ 厚生労働省大臣官房統計情報部所管の統計調査に実際に応用可能な研究成果が得られており、厚生労働行政の推進に資するという目的を達成している。また、論文執筆、学会発表、啓発等においても成果を挙げている。
 ・ 今後の新規・継続課題についても、統計調査の更なる向上に寄与しうる成果が期待できると考えている。


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):社会保障国際協力推進研究事業
所管課:大臣官房国際課
予算額(平成17年度):38,722千円
(1) 研究事業の目的

 医療保険・年金、公衆衛生等を含めた広義の社会保障分野における国際協力のあり方の検証や、国際協力を効果的に推進するための方策等に資する研究成果を得ることを本事業の目的としている。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 別添参照
(3) 研究成果及びその他の効果
 社会保障分野の国際協力について、人材、システム、コンテンツ等の多角的視点からの研究結果が報告され、今後の我が国の効果的な協力事業の推進へ大きな貢献が期待される研究成果となった。
 具体的には、世界から注目されている戦後の我が国の急速な健康水準の改善事例について、その要因を詳細に分析し、途上国の実情に応じた効果的・効率的な移転方法について実用的な手法が示された。また、今後我が国の保健医療分野での国際協力を担う人材を育成するため、特に医学教育が果たすべき役割が、各国との比較研究を踏まえ提示された。そのほか、アフガニスタン、イラクなど、紛争後の復興開発と平和構築という現在世界が直面している課題について、保健セクターとして取るべき具体的アプローチが示されたことは、今後の我が国の社会保障分野での国際協力の方向性に大きな影響を与える成果となるものと期待されている。また、近年注目されている医療システムの質の評価とその強化手法について、フィリピンでの事例を中心に参加型実証的質改善活動の取組みの効果が検証され、その有効性が示されたことの意義は大きい。その他、多国間協力事業のモニタリング・評価は、国際機関へ拠出が世界第二位である我が国にとって極めて重要な課題であり、初年度としてまず各国・各機関の評価手法の現状が明らかになったことは、今後の施策を進める上で貴重な成果である。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度

 社会保障分野での国際協力の課題と今後のあり方については、国際協力事業評価検討会等においても議論されているところであるが、今年度の評価対象となる成果は、いずれも現在我が国が進めている国際協力事業に密接に関連するものであり、事業目的に対する貢献は大きい。
(5) 課題と今後の方向性
 我が国の過去の経験を踏まえた研究、平和構築等今後我が国の積極的な取組みが期待されている新たな課題に関する研究、多国間協力事業のモニタリング・評価手法の開発に関する研究など、今回評価の対象となった研究課題は多岐に渡るものであった。今後の方向性として、厳しい経済情勢の下、国際協力分野でもより効率的でパフォーマンス効果が高い資源配分が求められており、多国間協力事業における効果的な国際協力のあり方や、日本発の新たな戦略等について、現状分析を踏まえた提言型の研究が期待されている。
(6) 研究事業の総合評価※
 本研究事業により、過去の経験の分析や、新たな課題への効果的な取組手法の開発など、社会保障分野における今後の我が国の国際協力の推進に大きく貢献することが十分期待される研究成果である。今後も引き続きより体系的・戦略的な国際協力に資する研究を推進する必要がある。


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):国際危機管理ネットワーク強化研究事業
所管課:大臣官房国際課
予算額(平成17年度):71,531千円
(1) 研究事業の目的
 本研究事業は、SARS、鳥インフルエンザ、NBC災害、国際テロ案件等の国際的健康危機発生時の対応のあり方の基盤となる知見の整理、国内外における情報基盤整備並びに健康危機管理人材養成及びその有効活用に関する研究を行い、その成果を我が国の政策立案に反映させることにより、我が国の保健医療システムの強化を目指し、ひいては国民の健康に対する不安を軽減することにより、安心・安全な社会の確保に資することを目的とする。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 別添参照
(3) 研究成果及びその他の効果
 本研究事業は平成16年度から開始された新たな事業であり、初年度の成果として、健康危機管理に関するネットワーク構築と人材育成という2つの観点から研究結果が報告された。
 ネットワーク構築分野においては、地域レベルにおける国際的な感染症情報ネットワーク、感染症アウトブレイク時のレスポンスに関する各国の情報交換、紛争地域や国際機関非加盟国など既存の国際的枠組みで連携困難な他国や地域との連携、国際機関、各国政府機関、非政府機関との連携・情報共有のあり方等について、基礎資料の収集及び現状分析等が行われた。
 人材育成の分野では、国際健康危機対策に従事するために不可欠なスキルが、WHO、NGO、大学等で用いられている教材の分析等を通じ、分析・抽出された。
 今回評価の対象となる成果はすべて初年度の研究結果であるため、現時点での成果の効果を適切に評価することは困難であるが、いずれも計画通りに進んでおり、次年度以降の成果に繋がることが期待できるものであった。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 健康危機管理は行政施策として現下の最重要課題の一つであり、今後の研究成果は、行政目的に直接的に大きく貢献することが期待できるものとなっている。
(5) 課題と今後の方向性
 次年度以降は、平成16年度で収集・分析された基礎資料をもとに、ネットワーク構築分野、人材育成分野のそれぞれにおいて研究が進められることが期待されているが、初年度の成果を評価する限りにおいては、今後大幅な研究計画の変更は要さないと考えられる。
(6) 研究事業の総合評価※
 平成16年度の本研究事業において、国際的健康危機発生時の対応のあり方の基盤となる知見の整理、国内外における情報基盤整備、健康危機管理人材養成及びその有効活用に関する研究等を効果的に推進するための基礎資料の収集と必要な分析が実施された。次年度以降の研究の進展に期待する。


厚生労働科学特別研究事業


厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
研究事業(研究事業中の分野名):厚生労働科学特別研究事業
所管課:大臣官房厚生科学課
予算額(平成17年度):368,261千円
(1) 研究事業の目的
 社会的要請の強い諸課題に関する必須もしくは先駆的な研究を支援して、当該課題を解決するために新たな科学的基盤を得ることを目的とする。
(2) 課題採択・資金配分の全般的状況
 別添参照
(3) 研究成果及びその他の効果
 緊急性の高い研究課題に関して、期待された知見が提供された。たとえば、 研究は、たとえばスギヒラタケ中の有害成分の分析に関する研究、新潟県中越地震を踏まえた保健医療における対応・体制に関する調査研究、健康フロンティア戦略における科学的知見の集積に関する循環器疾患関連緊急調査研究、Webサイトを介しての複数の同時自殺の実態と予防に関する研究等、緊急性のある課題に対して行政施策と関連性ある成果が極めて効果的に出されている。
(4) 行政施策との関連性・事業の目的に対する達成度
 研究機関は1年以内の研究である。緊急性ある行政課題に対して科学的かつ迅速に対応することを目的として実施される重要な研究を支援するために、極めて必要性が高い。
 平成17年度から創設した新たな厚生労働科学研究の枠組みである戦略研究課題について、戦略的アウトカム研究策定に関する研究において、その枠組みと内容について研究がなされ、その成果は今年度の研究の基盤となっている。
 このように、本研究事業の成果は、緊急性の高い行政課題も含めた行政施策の基礎資料として活用されている。それぞれの研究は有効な成果が出ており、事業の目的に対する達成度は高い。
(5) 課題と今後の方向性
 新規に出てくる健康危機管理の緊急課題については、これまで通り迅速に対応する。健康危機管理担当職員の資質向上や保健医療・厚生科学研究事業の効率化等、常時実施する必要がある研究についても、着実に成果が出ており、今後も必要とされるので、このまま継続する必要がある。
(6) 研究事業の総合評価
 緊急性の高い課題について、極めて効果的に事業が実施されており、必要性も高い。今後とも、一層の予算確保に努めると共に、健康危機管理に関する継続的な情報収集等も含めた行政的に重要な研究を、適切に実施する体制とすることが望ましい。

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