資料1

これまでの議論


1.  雇入時の健康診断(則第43条)
 労働安全衛生法に基づく雇入時の健康診断における胸部エックス線検査は、結核も含めて胸部疾患の診断に役立つものであり、労働者の適正配置、入職後の健康管理に資するために、事業者にその実施を義務づけているものであるため、従来どおり、胸部エックス線検査を一律に実施すべきである。
 雇入時の健康診断で胸部エックス線検査を実施することは、海外の結核蔓延地域に居住していた等のリスクの高い労働者を雇入れる場合の結核対策としても有効である。

2.  海外派遣労働者の健康診断(則第45条の2)
 労働安全衛生法では、海外において疾病の増悪や新たな疾病の発症があると、職場環境、日常生活環境、医療事情等が異なる面も多いため、医療をはじめとして様々な負担を労働者に強いることとなる。このため、労働安全衛生法では、海外に派遣する労働者の健康状態の適切な判断及び派遣中の労働者の健康管理に資するため、派遣前の健康診断の実施を事業者に義務づけている。
 また、海外勤務を終了した労働者を国内勤務に就かせる場合の就業上の配慮を行うとともに、その後の健康管理に資するため、帰国後の健康診断の実施も事業者に義務づけている。
 海外派遣労働者の健康診断における胸部エックス線検査は、結核も含めて胸部疾患の診断に役立つものであり、海外に派遣する労働者及び帰国後の労働者の健康管理等のために事業者にその実施を義務づけているものであるため、従来どおり、胸部エックス線検査を一律に実施すべきである。

3.  結核健康診断(則第46条)
 改正前の結核予防法では、原則としてすべての労働者に対して、年2回の結核健康診断(2回目は、結核発病のおそれがあると診断された者に対してのみ実施)の実施を事業者に義務づけていたが、改正後は、学校、医療施設、福祉施設等において業務に従事する者に対して、年1回の実施を事業者に義務づけている。
 現行の労働安全衛生法では、改正前の結核予防法を踏まえ、定期健康診断等において、結核発病のおそれがあると診断された者に対する6ヶ月後の胸部エックス線検査等の実施を事業者に義務づけている。
 健康診断の結果、結核の発病のおそれがある者については、確実に医療機関を受診するよう事業者は配慮すべきである。
 結核予防法において、医療機関への受診を前提として、結核発病のおそれがあると診断された者に対する6ヶ月後の胸部エックス線検査等の実施に係る規定が廃止されたため、労働安全衛生法においても、同趣旨の規定を廃止すべきである。

4.  定期健康診断(則第44条)(特定業務従事者の健康診断(則第45条)を含む。)
(1)  結核対策として
 結核予防法の改正は、厚生科学審議会感染症分科会結核部会で十分な審議がなされ、その結論に基づいて行われているため、本検討会では、結核対策については、基本的には、結核予防法の改正内容に基づき対応することとし、結核対策以外を目的とする胸部エックス線検査等のあり方について検討する。
 じん肺有所見者等の労働衛生の観点から独自に結核対策を講じる必要がある労働者については、別途検討を行う。
 学校、医療施設、福祉施設等の改正結核予防法で定める施設の労働者、じん肺有所見者及び職場で結核感染の危険が高いと考えられる労働者等の労働衛生の観点から独自に結核対策を講じる必要がある労働者以外の労働者の場合でも、医師の判断により、胸部エックス線検査を実施できるようにしておくことが必要である。

(2)  肺がん対策として
 労働安全衛生法では、発がん性を有する有害物を取扱う業務に従事する労働者に対しては、事業者に特殊健康診断として、がん検診の実施を義務づけているが、当該労働者以外の労働者については、業務起因性等が認められないことから、従来より、事業者に一般健康診断において、大腸がん検診、乳がん検診等のがん検診の実施を義務づけていない。
 主に結核対策として、胸部エックス線検査を実施していく中で、肺がんが発見されることもあるが、従来より、労働安全衛生法に基づく一般健康診断では、肺がん対策を目的としてきたわけではない。
 保険事業として医療保険者等が、任意にがん検診を行っている場合もある。
 業務起因性、作業関連性等が認められない肺がんを対象疾病として、労働安全衛生法に基づく定期健康診断等において、事業者に胸部エックス線検査等の実施を義務づけることは適切ではない。
 肺がん対策としての胸部エックス線検査の有効性については、現在、評価が分かれており、十分な有効性が確立しているわけではない。

(3)  結核、肺がん以外の疾病の対策として
 結核、肺がん以外の疾病については、「業務起因性」、「作業関連性」、「業務起因性は明確でないが労働することによって憎悪する可能性のある」、「健康診断としての胸部エックス線検査等の有効性」等を考慮して、事業者に胸部エックス線検査等の実施を義務づける必要性を十分に検討する必要がある。
 これまで、一律に胸部エックス線検査を実施してきた結果、有所見率は高く、様々な所見、疾病が認められている。
 結核と肺がんを除く胸部エックス線検査で発見される所見、疾病のほとんどが、特異性が高くない、治療の必要性が乏しい、自覚症状の方が先に出現する等の理由により、発見する意義に乏しいものである。
 仮に、一律に実施しないとしても、例えば、未規制の物質を取り扱う等の有害性がはっきりしない業務に従事している労働者等については、業務歴、年齢、生活歴等を考慮して、医師の判断により、胸部エックス線検査を実施できるようにしておくことが必要である。

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