(資料1)

第4回研究会における主な議論の概要
(未定稿)

(都道府県(児童相談所)による市町村支援の取組状況について)

 (埼玉県では)児童福祉法の改正を踏まえ、児童相談所、市町村、保健所の職員など関係者を集めて、約半年ぐらいかけて市町村職員が使えるような指針を作り、昨年度末に市町村向けの研修を県全体で行い、さらに各児童相談所単位で職員の研修を行った。今年度は年間計画を立てて研修を行う予定。

 (神奈川県では)県が中心となって市町村も参加する形でガイドラインを作った。

 (京都府では)改正児童福祉法が本年4月から施行されることを踏まえ、1〜3月に本庁と児童相談所が主催で市町村に説明会を行うとともに、電話の受け答えや協議の仕方など一日かけて実務的な研修をした。昨年度内に行ったこれらの研修に対する市町村のアンケート結果を踏まえ、今年度は6、7月にもう一度全体の研修会を開き、改めて児童福祉法の中身と相談援助指針について、市町村と児童相談所の間で共通理解を深める研修をやる予定。秋以降は、各児童相談所単位で職員との交流も含めて、実際の取組を考える研修計画を立てている。
 各市町村で実情はかなり違うが、法改正を意識して児童相談所へ通告をしてくる市町村があり、連携をとっていって、協議していこうかなどが少しずつ始まっている。児童相談所側として、各市町村の動きが十分把握できていない。市町村のどこか一カ所適当なところに、取り組みの内容を報告してもらい、各市町村の動きを我々も具体的に理解して連携の仕方を考えていこうというのが現状。

 (三重県の場合)5つの児童相談所と市町村の担当との話し合いを続けている。どういう体制をつくったか、何か困ったことはあるか、これからどうしていくかを話し合っているが、市と町村とは意識の差があり、さらに町村によっても濃淡がある。
 一朝一夕にはいかないが、具体的なケースを通じて行わないと、市町村も具体的に分かってこないのではないか。児童虐待については、緊急度を勘案したケースのランクづけをしているが、見回りという評価ランクのケースについては、できるだけアセスメントしながら市町村へ返す作業をしたいと考えている。

 (滋賀県の場合)アセスメントのツールを市町村と共有するための研修を4月初めから連続3回講座でやった。一つのツール、一つの技法、共通の言葉を市町村と検討し、相談にかかる人たちが共有できるものを増やしていく必要があるという取り組みをやっている。

(児童福祉法改正に伴う児童相談所および市町村の現状について)

 (京都府の場合)我々、児童相談所としては、家庭からの相談は市町村へ行き、専門的な相談は児童相談所に来ているという実感はほとんどない。むしろ4月の児童相談所への虐待通告は昨年よりも多い。法改正の仕組みにそって実際に市町村がやっていくためにはまだ時間がかかる。児童福祉法改正の中身を各市町村にも理解してもらい、児童相談所と連携していくためにはどうしたらいいか、継続的に市町村との関係を深めていきながら、お互い理解し合っていく作業がしばらく必要。

 休日・夜間の体制について、複数の市町村で連携して対応するという方式が対応例のひとつとして指針で示されているが、自治体ごとに窓口兼務の職員がやっているため、周辺の市町村を見ても共同して窓口を作ろうというのができる状況ではない。水巻町の場合は専従職員がいて、嘱託職員も専従なので、時間外の対応もできつつある。

 市町村の窓口を周知する中で、保育園や主任児童委員からは、虐待の通報について、市へ連絡するのか児童相談所へ連絡するのか質問が多くあった。現場に近いほど、そこの部分は非常に迷いがある。

 市町村に相談して対応する実態がまだない。今の段階では、児童相談所に相談が来れば当然受けることになる。今後、市町村が相談機関としての窓口や専用の相談室など基本的な体制をきちんと作ってはじめて、どちらがやるのかという相談の振り分けが出てくると思うが、今はまだそのレベルまでいっていない。

 (水巻町の場合)平成13年度から0才から19才までの子どもの相談をすべて受ける体制をとっているので、児童虐待のおそれがあるものも、相談センターが全部窓口になって受け付けている。勇み足でも大丈夫だから来てくれと関係機関へ知らせている。

 ある町での虐待防止ネットワークの会議では、国で出された指針の細部が活かされていないという印象を受けた。国の施策が全国津々浦々まで浸透するまでには大変な道のりと感じた。

 市町村によって(相談対応力に)相当のばらつきがあり、現状では(市町村と児童相談所との)役割分担はまだできないと思う。とにかく心配なケースは全部児童相談所へという形でないと今はできないと思うが、市町村によってはかなりのところまで任せられるところもある。児童相談所の立場からいうと、市町村ごとの診断、地域診断をやって、各市町村ごとに必要な支援の内容を明確にするようなことが必要だと思う。

(都道府県(児童相談所)と市町村との連携、市町村の相談体制づくりについて)

 児童相談所と市町村などの関係機関の連携がうまくいくためには、各機関が同じような枠組みでアセスメントと援助方針のプランニングを行うことが必要。国で作られた市町村児童家庭相談援助指針や児童自立支援計画策定ガイドラインが示されて、一定の枠組みの共有が図られているが、これらの中には、親支援と子どもの安全重視の視点を両立させる視点や、子どもの安全な養育を実現するために家族と協力する視点が、余り具体的に盛り込まれておらず、今後、こうした視点が盛り込まれることを期待したい。
 また、ケアマネージメント手法で虐待対応を行うことは、福祉領域と保健領域が共有する枠組みになりえるのではないか。日本の実情に合った形でこうした手法を取り入れていく研究も進められており、今後の国の指針等に取り入れられることを期待したい。

 役場の業務は、通常、答えのある相談を受ける窓口だが、この児童家庭相談は答えのない相談を受けるので、受け方はかなり違う。どのように受けていくかを私たちは日頃から事例にあたりながら対応している。自治体ごとにバランスの違いがあり、一律に対応するのは難しいという印象。

 (滋賀県の場合)虐待ケースに限られるが、施設退所後の指導は、保護者指導の支援をしている段階から市町村との話し合いを始め、きちんと市町村でフォローをしてもらう。児童相談所の措置解除後、県内の市町村を移動した場合には、市町村間で情報を流していくというシステムづくりを県としてやっている。

 保健師という立場からは、乳幼児検診が虐待発見の場であると考えているが、検診が委託の形で進んでいる結果、委託している検診と、市町村が直営でやっている検診とでは職員の意識にかなりの差がある。検診の取り組み、直営と委託という実態があることを含めて虐待の予防、早期発見ということを考えると、市町村をひとくくりに考えるのは問題をはらんでいる。

 市町村でどのような流れ方で情報が流れているか気になる。国からの通知も母子保担当、児童福祉担当と2つが合わさって、一つの通知がくる。児童福祉に保健担当がいないとストップすることはよくある。いろいろな研修を受けたときに、誰が参加しているか気になる。
 情報としては、市町村の中で一本窓口があって、振り分けるのが望ましいが、それぞれ専門があるので、すべて一カ所にまとめて児童相談所との連絡ができるのか疑問。

 (県からの情報については)県が市町村のいろんな部局に通知を出すのもおかしい。むしろ、市町村の中で、関係する部局がどれだけあるかをきちんと把握し、市町村の中で関係部局に情報が流れる仕組みを作るべき。

 ケースの振り分けは、本来児童相談所が集中して全部した方がいい。当初の振り分けは、非常に専門性がいること、また、どうケースを振り分けるかで後のケース運びが非常に変わるので、とても大事なポイント。そういう意味で、少しでも疑わしければともかく一旦児童相談所へ連絡をした上で、市町村中心でやるのか、児童相談所の支援も含めて児童相談所が中心にやっていくのか決めるのが筋ではないか。

 (法改正により、市町村が対応することになる)児童相談援助は、これまで行ってきたサービス提供とは異なり、基本的には答えのないもの。これをやれということになるので市町村には非常に戸惑いはあると思う。都道府県としても児童相談とはどういうものなのかということを研修の中でやっていかなければならない。

 市町村が相談を行っていく上で、窓口をどこにするかという問題は、一つだけ定めることとされている要保護児童対策地域協議会の調整機関を、どのように定めていくのかということと組織の整理や窓口とはかなり関係してくる。

 法改正した以上は、市町村が窓口を作り担当者をおいていくために、国や都道府県がかなりの後押しをしないと実際の連携は難しいのではないか。

 市町村で答えのでない相談を受けるのに一番近いのは、家庭児童相談所ではないか。個々の家庭児童相談所をどのように活用していくのか、あるいは市町村に対してどういう形でやっていくのかという働きかけが、市町村で受けていく場合のポイントになる。

 市民にとっては児童相談所というのは非常にハードルが高いというイメージがある。市は市民にとっては児童相談所に比べてかなりハードルが低いので、相談件数は年々増えている。最初のインテークがとても大事であるのはそのとおりだが、児童相談所でも市町村でも相談を受けるという二本立てはあった方がいい。今回の法改正により、児童相談所の専門性をもっと高めていくためには、市町村の技量がもっとアップしないと無理。

 非行のケースワークは、市町村には本当に経験がないので、非行まで市町村でやるのは無理かなと思う。

 相談を受けることはかなり熟練がいる。相談のあり方のスーパーバイズ、記録の取り方のスーパーバイズ、そのことを通じてケースをどうのように対応するかのスーパーバイズとさまざまな対応がいる。それをすべて市町村が受けて対応するのは難しい。対応をしていくためには、外部組織を積極的に活用して、相談者を養成するための研修を委託するとか、かなりの時間をかけて育成していくとかできたらいいと思う。

 ひとつの町のレベルで相談体制を整えることはかなりの負担になるので、相談の体制ということだけでいえば、郡くらいの10万人くらいの規模の自治体で体制を組んでも良いのではないかと思うが、非行とか不登校の子どもの対応を考えた場合には、彼らの問題は居場所の問題が重要になってくるため、校区内にあるほうがよく、こうした点からは、あまり(相談の管轄を)廣くし過ぎない方がよい面もある。

 現場で感じることは、社会的養護の拠点がない市町村での対応は、(子どもが)とても重体になってやっと助けられている印象があり、予後がとても悪い。市町村に社会養護の拠点をつくっていき、いろんな事例を通じて視点が育てられ、鍛えられていくので、本当に丁寧にプロセスをつくっていく必要がある。
 振り分けは、どんなに専門性があったとしても見込みが立てにくいようなところがあるので、時間をかけて拠点をまずつくって、よりどころが地域の中にあるので、自然に育てていくことを望む。

 市町村に標準的な相談体制のモデルがあるとよい。責任体制をはっきりさせないといけない。相談の窓口をはっきりさせるのは体制の問題だから取り組みやすいが、要保護児童対策地域協議会はなかなか見えにくい。

(要保護児童対策地域協議会について)

 市町村における要保護児童対策地域協議会の設置については、児童相談所長が管内の市町村の首長のところを回って、相談体制の整備を含め働きかけを行っていきたいと考えている。

 (三重県の場合)総合計画の中の重点プログラムで虐待防止ネットワークを平成18年度までに100%設置と目標設定した。平成18年度までに100%設置の目標を達成できるよう、児童相談所長が中心になって各市町村を回る予定。要保護児童対策地域協議会については、すでにできているネットワークをそちらに移行していく感じで働きかけている。問題はネットワークという体制はできたが、中身が伴わないことがあるので、きちんと中身を伴うよう運営していくという点も見ていく必要がある。

(里親支援について)

 里親の支援、里子の自立支援が何もない。里親には支援もなく丸投げで子どもを預けられて、どこに相談して、誰にすがっていいか困っている。里子のアフターケアは誰にお願いして、どうしたらいいか、フォローも考えてほしい。

 大阪府や大阪市の場合、かなり以前から児童相談所に里親担当を置いて、きちんと里親会との関係や具体的な里親との個別な関係をつくっている。里親制度も変わったことでもあり、里親が抱える様々な問題について、児童相談所もそうした取り組みをもっと進めていくべき。また、大阪府と大阪市と神戸市には、家族養護促進協会という機関があり、里親の開拓やサービスを行っている。そことも良い関係を作りながら、児童相談所としても個別の里親の相談にも対応している。

 児童相談所の児童福祉司は短期間で転勤してしまうが、このために里親に対してなかなかサービスが行き届きにくかったり、施設の子どもにとっても、子どもの立場からすると、自分の担当の児童福祉司がどんどん変わっていって誰だか分からなくなるのは問題。ある程度長いスパンで担当者がいることは大事。

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