行政処分を受けた医師に対する再教育に関する検討会報告書(概要)


 はじめに
 ○ 医道審議会医道分科会の方針(平成16年3月)に基づき、行政処分を受けた医師に対する再教育の具体的内容について取りまとめたもの。
 ○ 行政処分を受けた歯科医師に対しても、同様の取組みが講じられるべきであること。

 行政処分の現状と問題点
 ○ 医業停止を受けた医師(被処分者)は、医業停止期間を過ぎれば、特段の条件なく医業に復帰することができること。
 ○ しかし、被処分者は職業倫理の欠如や医療技術の未熟さ等があって、行政処分のみでは反省や適正な医業の実施が期待できないとの指摘があることから、被処分者が反省し、医業再開後に適正な医業が行われるようにするための具体的な過程を整理することが必要。

 再教育の在り方
 (1) 再教育の目的
   ○ 国民に対し安心・安全な医療、質の高い医療を確保する観点から、被処分者の職業倫理を高め、併せて、医療技術を再確認し、能力と適性に応じた医療を提供するように促すこと。
 (2) 再教育の内容
   ○ 被処分者ごとに、職業倫理・医療技術のそれぞれについて助言指導者(後述)を選任すること。
   ○ 職業倫理に関する再教育においては、教育的講座の受講、社会奉仕活動等の中から各被処分者が組み合わせて実施(月1回程度、助言指導者が面接)。
   ○ 行政処分の理由が医療技術上の問題と考えられる場合には、当該技術について評価を行い、被処分者の能力と適性に応じた、医業再開の環境と条件を検討する機会とすること。
   ○ 医業停止期間が長期にわたる場合には、医学知識の不足と医療技術の低下を補えるものとすること。
 (3) 再教育を受けるべき対象者
   ○ 職業倫理に関する再教育(倫理研修)については、職業倫理について自ら省みる機会を提供するという観点から、行政処分を受けた者全てを対象。
   ○ 医療技術に関する再教育(技術研修)については、原則として医療事故を理由とした行政処分を受けた医師及び医業停止期間が長期に及ぶ医師を対象。
 ※ 免許取消処分を受けた者については、将来的に免許の再交付がなされる場合に、再教育を義務づけることが適当。
 (4) 再教育の助言指導者
   ○ 被処分者の状況に応じて適切な指導、助言を行う者(助言指導者)の存在が重要。
   ○ 倫理研修における助言指導者は、必ずしも医師であることを要しないこと。
   ○ 技術研修における助言指導者は、被処分者の医療技術を評価する役割を担うため、当該分野において専門的知識・技術を有する医師であること。
 (5) 再教育の提供者
   ○ 再教育は、助言指導者自身が提供する場合もあれば、助言指導者とともに作成する研修計画書に基づき、第三者が提供する場合もあること。
   ○ 倫理研修の提供者は、助言指導者自身の他、医療関係団体や、社会奉仕団体、公益団体、学校法人などが想定できること。
   ○ 技術研修の提供者は、助言指導者、あるいは当該医療分野において実績をもつ医療機関ないし医師個人であること。
   ○ 再教育に係る直接の費用は、原則として、再教育を受ける者の負担とすることが適当と考えられること。
 (6) 再教育修了の認定
   ○ 厚生労働省は、研修実施報告書(被処分者が作成)及び研修評価書(助言指導者が作成)を審査の上、一定の評価基準を踏まえ、再教育の修了の認定等の措置をとることが考えられること。
   ○ 被処分者が再教育を受けない等の場合には、必要な措置を行うべきであること。
 (7) 再教育の実効性を担保する方法
   ○ 医師法を改正して、被処分者に対して再教育を義務付けることが必要。
 (8) 国の役割
   ○ 医師法改正により、再教育制度に法的な根拠を与えるとともに、助言指導者の養成等の環境整備を行うこと。
   ○ 国に、行政処分の根拠となる事実関係について、調査権限に基づき調査を行うなど行政処分に係る事務を担当する全国的な専門組織を設けることが適当であること。

 当面の対応
 ○ 当面は、現行制度の下で試行的に対応し、その取組みにおける知見を踏まえて、実効性のある再教育制度を構築すべきであること。

 行政処分の在り方等に関する検討事項
 ○ 本検討会と別の場で検討されるべきことであるが、その際に役立つよう、検討事項(新たな行政処分の類型の設置、医療事故を理由とした行政処分の在り方、再教育を修了した者の医籍への登録等)を記述したこと。

トップへ