船員保険制度在り方検討会 資料3
平成17年6月1日


 平成17年4月20日社会保障審議会医療保険部会提出資料

政府管掌健康保険の改革について



基本方針(※)において示されている改革の方向

健康保険法等の一部を改正する法律附則第2条第2項の規定に基づく基本方針(平成15年3月28日閣議決定)

 政管健保については、事業運営の効率性等を考慮しつつ、財政運営は、基本的には、都道府県を単位としたものとする。

 都道府県別の年齢構成や所得について調整を行った上で、保険料率の設定を行う仕組みとし、国庫補助の配分方法の見直しや、被保険者等の意見を反映した自主性・自律性のある保険運営が行われるような仕組みについて検討する。

 こうした取組を通じ、各都道府県単位で政管健保の健全な財政運営が確保され、被保険者の適切な負担の下で、地域の実情に応じた医療サービスが保障される姿を目指す。

 引き続き、政管健保の組織形態等の在り方について検討する。



保険料率決定の過程(イメージ)

保険運営に当たっての自主性・自律性、安定性、事務の効率性等の観点から、どのような保険料率の決定過程が望ましいか
保険料率決定の過程(イメージ)の図
  現行 A B C
「自主性・自律性のある保険運営」
「安定的な財政運営」
「事務の効率性」等の観点からのメリット・デメリット
自主性・自律性のある保険運営になっていない
国が実施するので解散がない
制度設計主体である国が保険者でもあるため、料率変更が制度設計主体としての国が行うべき制度改正と一体として議論されることが多く、保険者として柔軟な対応が困難となる恐れ
国が実施する場合と実質的に同等で法人運営に自主性がない。
料率変更が制度改正と一体として議論されることが多く、保険者として柔軟な対応が困難となる恐れ
自主的な運営なので機動的弾力的に料率引き上げが可能
自治組織となるので財政の健全性を保つための指導監督が不可欠
自主性自律性のある保険運営
都道府県単位の保険者組織となるが、その場合監督は都道府県責任でよいか
事務の効率性の低下
保険者組織間の財政調整をどのような考え方で行うのか、被用者保険の中での財政調整についてはどう考えるのか



政府管掌健康保険の改革(イメージ)

政府管掌健康保険の改革(イメージ)の図 政府管掌健康保険の改革(イメージ)の図 政府管掌健康保険の改革(イメージ)の図
 制度設計主体である国が保険者でもあるため、保険料率の変更が、制度改正と一体として議論されることが多く、保険者として柔軟な対応が困難
 被保険者等の意見が反映されてないのではないか。
 全国一律の運営で受益に応じた保険料負担になっていないのではないか。
 
 被保険者等の意見を反映した自主性・自律性のある保険運営
 都道府県単位の財政運営とし、被保険者の適切な負担の下で地域の実情に応じた保健医療サービスを保障
 適用徴収は厚生年金と一体



政管保険者組織を国から分離する意義について


 年金と異なり、医療保険の保険者は、医療費適正化努力等の自らの保険者努力に対応して自ら保険料水準を定められるようにすることにより、一層効率的な保険運営が期待できること。

 医療費適正化等の保険者努力や保険料水準の決定といった保険者機能が十分に発揮されるためには、事業運営は、被保険者等(事業主・被用者)の意見に基づく自主自律の仕組みとすることが必要であるが、国での事業運営ではそのような措置は困難であること。

 保健事業等について各都道府県ごとの自律的な事業展開を可能とするためには、被保険者等(事業主・被用者)の合意の下で、マンパワーや財源等を柔軟に確保できるようにすることが適当であること。

 制度設計主体である国が保険者でもあるため、保険料率の変更が制度改正と一体として議論されることが多く、保険者として柔軟な対応が困難となってきた面があったが、制度設計主体と保険者を分離することにより、保険者として柔軟な対応が可能となること。

 なお、現在、社会保険事務局で行っている保険医療機関の指定等の行政事務については、政管保険者組織ではなく、国に残すことが適当。



政管健保の適用・徴収について


 保険者の機能としては、主として「適用」「徴収」「保険給付」「保健事業」「保険料設定」が考えられ、現在の政管健保は、国が保険者としてこれらの機能を直接果たしている。

 今後、保険者機能の発揮の観点から、国とは別の主体である公法人を保険者とし、「保険給付」「保健事業」「保険料設定」の事務について実施させる。

 ただし、「適用」及び「徴収」の事務については、

(1)  政管健保は健保組合と異なり、自主的な適用・保険料納付が期待しにくい事業所も対象であり、被用者保険の最後の受皿として、強制性を帯びた公権力の行使としての適用・徴収が不可欠。(年間約2万件の滞納処分)
 ※  健保組合が滞納処分を実施する場合には、個別に厚生労働大臣の認可が必要

(2)  また、政管健保の事業所は厚生年金の適用事業所と重なっており、同様に、公権力の行使によって保険料収納の担保が必要な年金と一体的に実施することが必要。



厚生年金保険・政府管掌健康保険の保険料徴収の取扱いについて


 現在、厚生年金・政管健保の保険料の徴収は、それぞれの根拠法に基づき、国(社会保険庁)において一体的に行われており、いずれか一方のみの納付は認めていない。

【厚生年金保険法】
81条 政府は、厚生年金保険事業に要する費用(基礎年金拠出金を含む。)に充てるため、保険料を徴収する。
【健康保険法】
155条 保険者は、健康保険事業に要する費用(老人保健拠出金及び退職者給付拠出金並びに介護納付金並びに健康保険組合においては、第百七十三条の規定による拠出金の納付に要する費用を含む。)に充てるため、保険料を徴収する。


 今回の見直し後においても、政管健保の保険料の徴収事務は、機動的な公権力の行使の観点から、国が行うことが適当であり、また、事務の効率性の観点から、厚生年金と同一の主体が実施することが適当である。
 したがって、政管健保と厚生年金の保険料徴収を国が一体的に実施する場合には、その取扱いは現在と変わらない。



今後の政管健保・厚生年金の適用・徴収業務のイメージ




政管健保・厚生年金の実施体制の
再編成(イメージ)



│


今後の政管健保の実施体制(イメージ)

政管健保・厚生年金の実施体制の再編成(イメージ)の図 今後の政管健保の実施体制(イメージ)の図



改革後の政管健保における国と公法人の関係について

公法人
適用・徴収
 
 
適用・徴収以外の業務

【国と公法人とで保険者機能を分担し、国が適用・徴収業務を行う構成】
<考え方>
 保険者としての機能を国と公法人が分担し、適用・徴収の責任のみを国が負い、それ以外の保険料率の設定、財政運営、給付の実施といった保険者としての中核的な業務の責任は、保険者機能の発揮の観点から公法人が負う。
<保険料決定の仕組み>
 本部理事会(被保険者等で構成される意思決定機関)において、各県支部ごとの法定給付に要する保険料率(支部間の年齢・所得調整が前提)を法令に定める基準に基づき算定。
 各県支部においては、保健事業等の支部ごとの事業内容に応じた料率を加算し、評議会の議を経て、本部理事会に対して料率改定の申出。
 本部理事会において、各県支部から申し出られた料率について公法人としての意思決定を行い、大臣に認可を申請。

(参考)
適用・徴収
適用徴収以外の業務

公法人
適用・徴収以外の業務を代行

【国が適用・徴収以外の業務を公法人に代行させる構成】
<考え方>
 国が引き続き保険運営全般の責任を負うが、保険者機能の発揮の観点から適用・徴収以外の業務について公法人に代行させる。
<保険料決定の仕組み>
 本部理事長が、各県支部ごとの法定給付に要する保険料率(支部間の年齢・所得調整が前提)を法令に定める基準に基づき、本部運営委員会(被保険者等で構成される諮問機関)の議を経て算定。
 各県支部においては、保健事業等の支部ごとの事業内容に応じた料率を加算し、評議会の議を経て、本部理事長に対して料率改定の申出。
 本部理事長において、各県支部から申し出られた料率について本部運営委員会の議を経て公法人としての意思決定を行い、大臣に認可を申請。
保険料徴収の仕組み(2つの構成共通)
 国は自らが保険者となっている厚生年金と一括して徴収し、徴収した保険料を按分して公法人に納付することを法定(納付者による納付先の指定は認めない)。
 滞納処分は国が年金保険料と合わせて行い、公法人は徴収を行わないが、例外的に国の個別認可を受けて公法人が滞納処分を行うことを検討。



社会保険庁の在り方に関する有識者会議

新しい組織のグランドデザイン(抄)


 新組織の業務範囲について

(1)  年金と政管健保の運営主体の分離

 社会保険庁においては、公的年金、政管健保等の業務を併せて行ってきたところであるが、本来、その運営主体については、それぞれの制度の特質や政策の方向性、サービスの特性等を踏まえて、それぞれにふさわしい組織が担うことにより、組織としての目的が明確化され、業務の効果的・効率的な実施が図られることが期待される。

 公的年金制度の運営の在り方については、これまでも議論を重ねてきたところであるが、引き続き、全国民の加入を前提として、世代間扶養と所得再分配を行うという仕組みの下で、超長期にわたり、保険料納付と年金給付を行うという制度の趣旨を踏まえて、その運営を担う新組織について、国とする場合、公法人とする場合それぞれの利害得失を精査し、さらに検討を行う。

 一方、政管健保の今後の在り方については、現在、平成18年の通常国会への法案提出に向けて、社会保障審議会及び社会保障の在り方に関する懇談会において、医療保険制度改革の一環として検討が進められている。こうした議論も踏まえると、政管健保については、被用者保険の最後の受け皿の機能は確保しつつ、医療費適正化等の保険者機能を強化する観点から、国とは切り離された公法人において運営することが適切と考える。

(2)  関連事業の切り離し、整理等(略)

(3)  外部委託等の推進(略)

(4)  組織のスリム化

 現在の社会保険庁は、正規職員約1万7千人、非正規職員を含めると約2万9千人の体制であるが、強制徴収等の強化すべき業務への一部要員の広域も含めたシフトを図りつつ、上記の(2)及び(3)による徹底した合理化等を行うことにより、相当程度の削減を図ることとし、今後、その具体的な削減可能数及びその計画を明らかにする。

 また、政管健保の実施主体が分離され、公法人において運営されることにより、相当程度の国家公務員の削減が図られる。


 新しい組織の基本コンセプト

 中間とりまとめにおいては、現行の社会保険庁の組織についての構造的分析を行った上で、「社会保険事業の運営主体に求められる基本的要素」を掲げ、不祥事案等に関する調査結果においては、一連の不祥事案等の背景として組織の構造問題が考察されている。

 社会保険庁に対する国民の信頼が失墜している中で、これらを踏まえると、新しい組織については、「国民の信頼の回復・維持」を図ることができるものにすることが最重要であり、そのため、「国民の意向の反映」「内部統制(ガバナンス)の確保」「透明性の確保」「効率性の確保」「法令遵守(コンプライアンス)の徹底」をその基本コンセプトとして位置づけた上で、その実現を図ることのできる新しい組織の枠組みを構築することとする。


 基本コンセプトに基づく新組織の枠組み

(1)  公的年金の組織の枠組みについて(略)

(2)  政管健保の組織の枠組みについて

 基本コンセプトを実現するため、政管健保の運営主体においては、以下のとおり、組織の基本的機能である「意思決定機能」、「業務執行機能」及び「監査機能」を分離し、その権限と責任の分担を明確にし、それぞれの機能強化を図る。

 保険料を負担する者の意見に基づく自主自律の事業運営を確保するため、関係事業主及び被用者で構成される「意思決定機関」を設置し、運営の基本方針、予算等の重要事項について決定するとともに、「業務執行機関」に対する指揮・監督の徹底を図り、内部統制(ガバナンス)を確立する。併せて、国民への十分な情報提供を図る。

 職員の人事・処遇については、職員が意欲をもって国民の意向を反映して、保険者機能の発揮を含め、政管健保業務の質の向上や費用の削減等に取り組むことができるよう、可能な限り、そのためのインセンティブを与えることのできる民間企業的な措置を講じる。

 「業務執行機関」の職員については、業務に習熟し、内部統制(ガバナンス)の強化を図ることができるよう、短期間での人事異動を行わないとともに、国民の視点に立って業務を執行するための研修を徹底し、他機関との人事交流を積極的に進める。

 「業務執行機関」においては、権限と責任の委譲の明確化及び「意思決定機関」への報告の徹底を図るとともに、業務の品質改善とスピードの向上、コミュニケーションの改善等に関する民間企業の経営手法を幅広く取り入れる。

 新組織の業務全般についての会計監査、業務監査(保険者機能の成果、業務の効率性等を含む)、個人情報管理監査を徹底するため、組織内で分離した「監査機関」として複数の監事を置くとともに、外部からの監査を受けることとする。
 また、監査結果については、逐次、「意思決定機関」に報告した上 で公表するとともに、毎年度監査報告書を作成し公表する。

 その他、新組織の具体的な在り方については、医療保険制度の在り方と密接な関係を有するものであることから、医療保険制度改革の議論と併せて、詳細な検討が行われることが適当である。

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