05/05/27 第2回生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会議事録        第2回 生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会 日時:平成17年5月27日(金) 18:00〜19:20 場所:霞が関東京會館 エメラルドルーム 出席委員:谷本石川県知事、岡ア高知市長、今井総務副大臣、田野瀬財務副大臣、      尾辻厚生労働大臣、木村地方財政審議会委員、      京極国立社会保障・人口問題研究所所長 議題  :(1)生活保護制度及び児童扶養手当制度に関する問題提起      (2)その他 (尾辻厚生労働大臣)  それでは、定刻になりましたので、ただいまから「生活保護費及び児童扶養手当に関 する関係者協議会」を開催させていただきます。  本日は大変お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。  それでは、まず、本日御出席の皆様方を私から御紹介をさせていただきます。  谷本石川県知事でございます。  岡ア高知市長でございます。  麻生総務大臣の代理で今井総務副大臣でございます。  谷垣財務大臣の代理で田野瀬財務副大臣でございます。  木村地方財政審議会委員でございます。  京極国立社会保障・人口問題研究所所長でございます。  それでは、早速議事を進めてまいります。本日の議題は、先日も御相談をさせていた だきましたとおり、生活保護制度及び児童扶養手当制度に関する問題提起といたしたい と存じます。  なお、本日は全体で1時間半を予定しておりますので、どうぞよろしくお願いしま す。  まず、地方団体から問題提起をしていただきたいと思います。谷本知事からお願いし ます。 (谷本石川県知事)  第1回の協議会を踏まえまして、制度全般にわたりまして共通する事項について、大 きく4つの点から問題提起をさせていただきたいと思います。  お手元にある資料1「生活保護費及び児童扶養手当に関する問題提起」をご覧いただ きたいと思います。  第1は、前回の協議会でも確認をさせていただいたことではありますが、大変大事な ことですのでもう一度再確認をさせていただきたいと思います。  第1は、「国と地方の役割分担について」であります。この両制度が法定受託事務で あるということを前提に、これらの制度設計から制度運用の各段階における国と地方の 役割分担について再確認をすべきということです。  この協議会は、前回の協議会で尾辻大臣の御発言にもありましたように、負担率の引 下げを前提とするものではない。保護率の地域格差の原因分析でありますとか、給付の 適正化に資するさまざまな改革、国と地方の役割、費用負担の在り方等について総合的 な検討を行うものだということです。  前回の協議会でも述べましたが、生活保護及び児童扶養手当に関する事務は平成10年 5月に閣議決定をされました地方分権推進計画において全国単一の制度、または全国一 律の基準により行う給付金の支給等に関する事務として法定受託事務に分類をされてお ります。平成11年の7月に成立をいたしましたいわゆる地方分権一括法において第1号 法定受託事務とされたわけです。  こういった経緯を踏まえますと、生活保護事務等は地方自治法に定める法定受託事務 として国が責任を持って制度設計を行い、適正な事務処理に必要な処理基準をきめ細か く定めるべき事務でありますし、このことは国・地方の共通の認識だと考えておりま す。  そもそも地方は、生活保護費、児童扶養手当について税源移譲対象補助金の対象外と しているわけでありまして、制度の在り方について幅広く議論を行うという前提でこの 協議会に参加をしています。  また、この協議会が三位一体改革との関連で設置をされたという経緯を踏まえれば、 まず生活保護制度及び児童扶養手当制度の両制度について法定受託事務であることを前 提に、この制度設計から制度運用の各段階における国の役割、地方の役割について再確 認をすべきであると思いますので、この点を再度指摘させていただきたいと思います。 当然のことながら、地方分権の観点からこの制度設計等の過程において地方の意見も取 り入れる仕組みを確立する必要があると考えています。  第2は、「生活保護率の上昇について」であります。  その1点目は「共通認識を確立するための原因分析を実施すべき」ということです。 御承知のように、生活保護制度は言うまでもなく我が国の社会保障制度全体のいわば最 後のセーフティネットとして位置付けられているものです。国民の生存に関わるナショ ナルミニマムを保障するものとして今後とも不可欠な制度です。こうした生活保護制度 の意義目的を踏まえますと、この生活保護率が我が国の社会経済情勢に大きく左右され るということはある意味当然とも言えるのではないかと思います。  この生活保護率の上昇は、1つには景気動向、失業率といった経済的な要因、2つに は高齢化・核家族化・単身化といった社会的な要因が複合的に影響しているものと考え られます。  更に申し上げれば、景気雇用対策といったさまざまな政策の結果が生活保護率に影響 しているのではないかと考えています。このため、生活保護率の上昇を食い止めるに は、生活保護制度の枠を超えて国による総合的な政策の推進が不可欠だと考えておりま す。  近年の生活保護率上昇の原因については、国の方では私どもの考えとは違った御意見 もあるかとは思いますが、今後の対策を考える上では委員間で共通認識を持つというこ とが不可欠だろうと思います。そのためには、国と地方がいわば同じ土俵で原因分析を 行うことを提案したいと思います。  なお、関係者からのヒアリングについては、原因分析を踏まえ、必要に応じて行うこ ととし、その際には是非地方6団体とも事前に十分協議をしていただきたい。  2点目は、「生活保護を受けずにすむ総合的政策を検討すべき」ということです。現 に生活保護を受けている者の自立支援という観点よりも、この生活保護制度に依存しな い自立支援の仕組みを考えることの方が有効だと考えます。つまり、この生活保護を受 給するに至った原因を分析すると同時に、例えば老齢基礎年金の見直しでありますと か、雇用保険の求職者給付終了後の支援制度などといったボーダーライン層の方々が生 活保護を受けずに済む、生活保護の枠を超えた国による総合的な政策を検討すべきとい うことを提案したいと思いますし、このことが中長期的に生活保護率の抑制につながる のではないかと考えます。  3点目は、生活保護制度自体の仕組みの一つである「医療扶助の在り方を検討すべき 」ということです。生活保護の医療扶助は、全体の5割を超えております。高齢世帯が 増え、国民医療費の総額が増加をしている中で、この医療扶助が増加傾向を示すことは やむを得ない面もあると思いますが、現在の仕組みがこのままでよいのかどうかという 点について検証する必要があると思います。  例えば、患者に負担感のない現物支給の仕組みといった現行の医療扶助の在り方につ いて、医療保険制度の見直しも含め、しっかりと検討すべきだと思います。このこと が、生活保護費の抑制につながるという側面もあると思いますので、この点も指摘をし ておきたいと思います。  第3は、「生活保護率の地域間格差について」であります。「共通認識を確立するた めの原因分析を実施すべき」ということでございます。国の方で問題としておられる生 活保護率の地域間格差については、決して実施機関の取組の違いによるものではないと 考えております。生活保護率の地域間格差は、地域ごとの失業率とか、高齢化とか、核 家族化あるいは単身化の進展状況の違いでありますとか、都市部での生活困窮者の増加 などが考えられるのではないかと思います。  失業率あるいは高齢化率・核家族化・単身化率、更には持ち家率とか離婚率といった 要因と、この保護率の地域間格差には相関関係があるのではないかと思います。この点 についても、国の方では私どもの考えとは違った見方もあるのではないかと思います が、今後の対策を考える上では委員間で共通認識を持つことが不可欠であろうと思いま す。そのためにも、国と地方が同じ土俵で原因分析を行うことを是非提案をしたいと思 います。  最後に、第4は、児童扶養手当の養育費の確保についてでありますが、これは実効性 のある養育費確保対策を検討すべきということです。この児童扶養手当の受給世帯増加 の主たる要因は、離婚率の上昇によるものと考えられます。国においては、平成14年に 別れた親が児童に対する扶養義務の履行として養育費を支払う義務を課すことを目的と して、母子及び寡婦福祉法の改正が行われましたが、いまだにその実効は上がっていな い状況にあるのではないかと思います。今後は養育費の確保に向けたさらなる法整備が 必要ではないかと考えておりますので、この点について問題提起をしたいと思います。  なお、この生活保護率の上昇の原因分析及び生活保護率の地域間格差の原因分析など を踏まえ、新たに当協議会で議論すべき論点が出てくれば、その時点で改めてまた問題 提起をさせていただきたいということを申し添えます。以上でございます。 (尾辻厚生労働大臣)  ありがとうございました。それでは、次に岡ア市長お願いします。 (岡ア高知市長)  それでは、本日は第2回目の協議会でございますので、現場の意見を踏まえまして全 国市長会としての基本的な考え方を改めまして申し上げたいと思います。お手元にある 資料2「生活保護制度及び児童扶養手当制度について」をごらんいただきたいと思いま す。  まず「基本的な考え方」の第1点目ですが、生活保護制度は「憲法第25条」、それか ら「生活保護法第1条」に基づく国の責務であり、格差なく国による統一的な措置が講 じられるべきものと考えております。  また、第2点目でございますが、生活保護費の負担金の負担割合を引き下げるという ことはまさに国の責任の後退であって、単なる地方への負担転嫁にすぎないものと考え ております。  また、第3点目でございますが、生活保護費の負担金を一般財源化いたしましても地 方の自由度の拡大につながるものではなく、またつなげるべきものではないということ です。生活保護費は現金給付等であって、国の制度上、年齢、家族構成、級地区分、各 種の扶助等の分類を踏まえまして生活保護基準が定められておりますので、地方に裁量 の余地はないということでございます。  以上の3点を再確認の意味で記載をさせていただいております。この点につきまして は、全国市長会として繰り返し主張をしているところでございます。  「原因分析の必要性」でございますが、この協議会では前回尾辻厚生労働大臣の御発 言にもありましたように、保護率の地域間の格差の原因分析についても検討を行うこと とされております。保護率の上昇及び地域の格差につきましては、国は地方からの生の 意見も踏まえつつ原因分析を行い、国と地方とが共通認識を持つ必要があると考えてお ります。全国市長会におきましても、保護率の上昇の原因や各自治体が抱えております 特殊事情について調査、検討をしておりますが、総じて言いますと、資料に記載のとお り、まず保護率の上昇については平成7年度以降、保護率が上昇しているわけですが、 それは景気の低迷による企業の倒産やリストラ、それから失業者、ホームレスの増加等 の経済的な要因と、または単身高齢者世帯、離婚による母子世帯、長期入院患者の増加 等の社会的な要因によるものと認識をしているところでございます。このような社会の 構造的な変化に対しまして、是非国において適切に対応していただく必要もあると考え ております。  次に、「保護率の地域間格差」について申し上げます。特定医療機関やホームレスの 受け入れ施設等の偏在によりまして、生活保護の対象者が当該地域に大量に流入してい るという特殊事情があります。また、旧産炭地域といった歴史的な事業があること、更 に周辺地域と比べて生活保護基準が高いところについては被保護者の方々が都市の利便 性を求めて当該地域に移動して保護率が上昇しているという事情もあると考えておりま す。したがいまして、地域間格差の問題を自治体の努力不足と決めつけるのは適切では ないと思っております。むしろ自治体の自助努力で解消できない要因も大きいと考えて おります。  次に、生活保護制度における「検討すべき課題」につきまして、それぞれの私ども市 長会の各都市の現場の声を踏まえつつ、問題提起をさせていただきたいと思います。  まず「生活保護費に関する課題」についてです。  年金未加入者や年金保険料未納者の増加傾向が将来における要保護者の増加の要因と なる可能性が高いと考えておりますが、これをどういうふうに考えるか。  また、老齢基礎年金額より生活保護基準額が高いことについて不公平感がある。これ をどう考えるのか。  また、年金担保貸付制度がございますが、この年金担保貸付制度による借入金を使い 果たし、生活保護の適用を受ける状況に陥る方々もおりますが、これをどう考えるか。  医療扶助・介護扶助が現物給付となっているために、被保護者の方々が費用負担の意 識が乏しいという現状があるが、これらの扶助の在り方をどう考えていくか。  また、経済的自立の可能性が低い高齢者の世帯は被保護世帯の約半数を占めておりま して、こうした高齢者世帯に対する生活保障の制度が生活保護制度以外になく、すべて 生活保護にかかってくる。こういう現状をどう考えていくのか。  以上の5点を挙げてございます。  次に、「自立支援等に関する課題」についてです。  福祉行政と労働行政との緊密な連携を図る方法、法制度がない中で、ケースワーカー が被保護者の就労支援に当たらざるを得ないという状況をどう考えていくか。  また、要保護者には傷病や障害を抱えていたり、一人親での子育てを行っていたりな ど、就業をする上でのハンディを抱えている者が多い。このことをどう考えるか。  また、ホームレスやいわゆるDV被害者に対する支援施策はあるものの、経済的自立 については生活保護制度で対応せざるを得ない。このことをどう考えるか。  また、被保護者は福祉サービスの利用料が無料となるなど、さまざまな減免・免除規 定が適用されているが、生活保護から自立した途端、これらの優遇措置も同時に失われ ます。このことが自立への意欲の疎外要因となっていることについてどう考えるのか。  以上の4点を掲げてございます。  更に、「実施体制に関する課題」につきましては、保護の決定に際して必要となりま す生活保護法による諸調査については「報告を求めることが出来る」という規定となっ ているため、金融機関の協力が得られない場合には十分な強制力を持った調査ができな いということについてどう考えるか。  また、不正受給を行った被保護者に対する罰則の規定はございますが、適用の要件・ 基準が不明確である。このことをどう考えるのか。  以上、生活保護制度におけます検討すべき具体的な課題といたしまして、生の我々の 代表的な声も参考にしながら11項目を掲げております。  児童扶養手当の制度でございますが、児童扶養手当の負担割合の引下げは国から地方 への単なる負担転嫁であろうと考えます。また、この生活保護制度と児童扶養手当制度 とは、その性格や実態等、また制度の沿革も全く違うものでございまして、同列視をし て議論することは適当ではないと考えているところです。  「検討すべき課題」といたしまして、児童扶養手当制度につきましては個々の受給者 の生活状況を生活保護制度のようなケースワーカーのように綿密に把握ができていない ために、自立に向けた就労支援が適正に行えないが、これをどう考えるか。  また、離婚した父親から支払われるべき養育費の確保について、改正された母子及び 寡婦福祉法におきまして一定の見直しがなされましたが、現実的には確実に養育費を受 け取れる状況になっておらず、そのことが給付費の増加につながっている。こういった 現状をどう考えるのかということを問題提起として記載させていただいております。  ここに挙げさせていただきましたそれぞれの声につきましては、我々市長会の中でも 少しアンケート等を取りながら掲載をさせていただいた生の声でございます。国におか れましては、これらの問題提起を真摯に受け止めていただきまして、生活保護制度及び 児童扶養手当制度の改正につきまして積極的な取組をお願いしたいと思います。以上で ございます。 (尾辻厚生労働大臣)  ありがとうございました。  それでは、次に厚生労働省からも問題提起をさせていただきたいと存じます。まず担 当局長にお手元に差し上げています資料についての説明をさせまして、その後、私から 総括的に問題提起をさせていただきます。それでは、局長どうぞ。 (小島厚生労働省社会・援護局長より資料3「生活保護制度運営における地域間の較差 の状況」に沿って説明) (伍藤厚生労働省雇用均等・児童家庭局長より資料4「児童扶養手当をはじめとする母 子家庭対策の課題」に沿って説明) (尾辻厚生労働大臣)  私から改めて申し上げたいことは、昨年の三位一体の改革の議論の中でも私がずっと 申し上げてきたことです。社会保障全体がそうなのですが、とにかく国と地方が手を携 えてやらなければうまくいきません。制度は国が作ったとしても、一番住民に近いとこ ろでのサービスの提供となりますと、どうしても地方自治体にお願いしなければなりま せん。国と地方が手を携えてということを改めて申し上げておきたいし、そしてまたお 願いもしたいと思います。  先ほどの小島社会・援護局長の説明は、要するに自治体間でかなりの格差が見られる ということを改めて資料でお示しをしています。生活保護は法定受託事務ですが、申し 上げたように制度を国がつくり、実施要領を示しておりますが、その下においてもやは り自治体間における運用の在り方には大きな幅がございまして、それによりまして保護 率や保護費の額にも影響が出ていると考えられます。こうした点について是非御議論を お願いしたいということをまず問題提起させていただきます。  それから、母子家庭対策につきましては伍藤雇用均等・児童家庭局長が述べましたよ うに、平成14年の法改正により児童扶養手当中心の支援から就業自立に向けた総合的な 支援と、大きく政策のかじを切りました。そしてまた、地方自治体にも積極的な役割を 果たしていただきたいということをかねて申し上げておるわけでありますが、まだまだ 取組の現状を見ますと十分であるとは言えませんので、これについても今後の在り方に ついて御議論をいただきたいという御提案を申し上げます。  それでは、それぞれの問題提起をしてもらいましたので、この後、問題提起をしてお られない委員の皆様に御発言をいただきたいと存じます。まず、今井副大臣お願いいた します。 (今井総務副大臣)  ただいま谷本知事、岡ア市長、それから厚生労働省からそれぞれ問題を御提起いただ いたわけでございますが、御指摘もありましたようになぜ生活保護費が増加しているの か、あるいは地域間格差が生じているのか。データに基づくような共通の認識がないよ うな気がいたします。それが第1点です。  第2点でございます。厚生労働省の資料では原因の把握につきまして大変きめ細かな 数字に基づく調査をしていただいているようでございますが、現場はこの間の大変な事 件もございますし、実は私も市長をやっていたのですが、大変な思いをしているのもこ れまた事実でございます。厚生労働省としてどのような指導を今日までしていただいて いたのか、あるいは、指導をしても実は改善はされないのか、その辺につきまして、お 教えをいただければありがたい。どのようなお取組をしていただいて、地方はどういう 対応をしてやってきたのかということについて教えていただければと思います。  尾辻大臣からも国、地方で手を携えてやっていきましょうということですし、それに ついてはとても大切なことだと思っております。いずれにしても国、地方で共通な認識 をしっかり持たなければいけませんので、両者の関係者の事務レベルで本音の話し合い をして問題点を掘り下げて、その原因はどこにあるのか分析をしてこの場で示していく ことがとても大切なことではないだろうか。こんな気もするわけでございますので、ど うぞよろしくお願い申し上げます。 (尾辻厚生労働大臣)  今、事務レベルでのいわばワーキンググループのお話をいただきましたが、これを開 催することといたしたいと思いますが、委員の皆様よろしいでしょうか。 (岡ア高知市長)  その点について、少し意見があります。  最終的にはもちろん事務レベルでのワーキンググループで、もう少し実態を踏まえて 具体的に論議を掘り下げるという作業が必要になるのではないかと思います。ただ、今 私が少し意見を申し上げたいのは、生活保護の実態はそれぞれ地域性があって、先ほど 国の資料でも出ましたとおり、地域間格差はあります。ただ、いろいろな要因がそれぞ れございまして、我々市長会としましては例えばワーキンググループを作るにしても焦 点としてどの辺りに課題を持っていくかをもう少し整理をしないと、いきなり全体を下 ろして調査をすると言いましてもポイントが絞れなくなります。また、調査すべき項目 を我々も市長会の中で少し整理をしたいと思いますし、この場で今日でなくてもかまい ませんがもう少し何を絞り込んで調査をするかということを議論したらどうかと思いま す。 (京極社会保障・人口問題研究所所長)  賛成でございます。ただ、いろいろ危惧があるようでございますので、最終的にはこ の場でワーキンググループの結果を分析評価するということを確認すればよろしいかと 思います。 (尾辻厚生労働大臣)  それでは、一言お願いいたします。 (木村地方財政審議会委員)  事務レベルとおっしゃったことの解釈ですが、私はやはり有識者も入るべきだと思い ます。 (尾辻厚生労働大臣)  それでは、いずれ作るべきということで整理をさせていただきまして、その時期と具 体的な形は後ほどまた詰めさせていただくという整理をさせていただきますが、今井副 大臣よろしいでしょうか。 (今井総務副大臣)  結構でございます。そうでないと問題解決にならないと思いますので。 (尾辻厚生労働大臣)  それでは、そういう整理にさせていただきます。 (谷本石川県知事)  さっきこの資料の説明を踏まえて大臣の方から1、2点問題提起があったということ ですが、問題提起はそれでもう尽きていると理解していいわけですか。  我々は問題提起をこういう形でさせていただきました。そして、原因分析もしっかり やっていかなければいかぬということも提起をさせていただきました。これは格差の状 況の説明ということだったと私は思うのですが、それを踏まえて今、大臣の方が問題提 起をされましたが、それで一応大臣としては問題提起をされたという理解でよろしいで すか。 (尾辻厚生労働大臣)  担当局長からやや長目の説明をしておりましたから、私は短くしようと簡単に申し上 げました。後ほど文書で私の問題提起を改めて皆さまがお示しいただいたような項目形 式で提出させていただきますので、そうさせてください。よろしくお願いします。  それでは、今井副大臣からの厚生労働省に対する質問がありましたが、これは後ほど 答えてもらうことにして、まず各委員の御発言をいただきたいと思います。それでは、 引き続きまして田野瀬副大臣から御発言をお願いいたします。 (田野瀬財務副大臣)  それでは、財務省といたしまして現在考えております論点を申し上げたいと思います が、まずその前に先日23日開かれた財政制度等審議会歳出合理化部会及び財政構造改 革部会合同部会において社会保障について審議した際に、生活保護について委員からさ まざまな意見が述べられましたので簡単に御紹介をさせていただきたいと思います。  1つ目として、全体については、保護率の地域差がここまで大きいと地域の経済情勢 等の差異だけでは説明できず、地域における認定の差異の運用に問題があるのではない かという意見が多数ございました。その関連で、保護率について大きい地域差があると いう実態を世に広く知らせていくべきだという意見が結論としてございました。  一方、2つ目として、地方財政の関係者からは、現状でも地方団体にとっては生活保 護が財政の大きなウェートを占めており、非常な危機感を持って取り組んでいる。当該 地域の社会的条件に起因する部分がある。ただ、地方の体制強化により、抑制できると いう面も否定できない。また、医療扶助の適正化方策も検討すべきという意見がござい ました。その関連で、ある自治体で運用を適正化すると、運用が緩い自治体に集まって くるという実態があるという意見もございました。  3つ目に、受給水準について生活保護の全体の受給水準が高いこと自体が働くことへ のディスインセンティブとなっているのではないかとの意見がございました。その関連 で、福祉の現場の立場から、実態として働くための工夫をするよりも生活保護を受給す るためのノウハウができてしまっており、それを専門家が支えているとの意見がござい ました。  そこで、私どもの生活保護に対する問題意識も今、御紹介をした各般の意見と共通す る部分が大きいわけでございまして、制度面と運用面に分けて私どもは整理いたしまし た。  まず制度面については、生活保護受給水準について就労インセンティブへの影響、一 般低所得世帯との関係等、生活保護制度における国、地方の役割分担と費用負担の在り 方。  運用面については、保護率が増加を続けていること及び地域格差が大きいことの要因 分析、生活保護の認定・執行に当たっての問題点の分析、保護率が高かった地方団体の これまでの適正化努力とその成果等を取り上げて議論してはどうかと考えております。  また、児童扶養手当に関しては各地方団体の就業・自立支援に関する取組に地域格差 があり、それが受給者の就業・自立の状況にも影響を与えている可能性があると思いま す。  こうした観点から、地方団体における就業・自立支援に関する取組状況の分析、特に 積極的に取り組んでいる地方団体の就業・自立支援の成果等を取り上げて議論してはど うかと考えております。以上でございます。 (尾辻厚生労働大臣)  ありがとうございました。  それでは、次に木村委員からお願いをいたします。 (木村地方財政審議会委員)  ありがとうございます。私は数点申し上げたいと思います。  まず、第1点目です。厚生労働省からの資料を拝見させていただいて、問題意識は保 護率の地域格差が生じる原因として認定の問題がある。地方自治体の態度に原因がある のではないかと見受けられますが、もしそうだとしたら、これまでの各数次にわたる生 活保護率の適正化のときにも見られましたように、監査等をしっかりやればいいのでは ないかと思います。  第2点目ですが、では生活保護率の地域格差はどういった要因で生まれるのか。1倍 から16倍、あるいは1倍から20倍の格差があることは本当に悪いことなのかということ を私は少し申し上げたいと思います。  生活保護率の高いところは、今日の資料では政令市だけですが、全日本で県と政令市 で見てみますと、やはり高齢単身世帯の割合が多いところ、それから失業率の高いとこ ろ、離婚率の高いところというので出てまいりますが、日本ではそのほかに見落として は絶対にならない大きなことが一つございます。それは、生活保護の捕捉率という問題 です。  捕捉率というのは、生活保護の受給資格のある人の間でどれだけの人が生活保護を実 際にもらっているかという統計なのですが、日本は非常に低いことで有名であります。 例えば、同じような生活保護制度を持っているイギリスですと、大体その資格のある人 のうち平均して8割くらいがもらっております。高齢者でも6割くらいです。しかしな がら、日本の制度ですと厚生労働省は捕捉率の調査は恐らくなさっていないと思います が、研究者が幾つかやっておりまして、大体多い先生で24%くらい、平均で10%から20 %くらいではないか。  生活保護をもらうのは恥ずかしいからもらわないようにしようという社会的風土があ る中で、生活保護というのはずっとやってきたわけですが、申請主義という枠組みを取 って、そして捕捉率が低いという中でやってきたのに、今は都市部で権利意識の増大と いったことによって、ある地域は申請者が多くなり捕捉率が高くなる一方、ある地域は 昔ながらで申請者が少ないために捕捉率は低い。でも、役所の仕事としてはちゃんと法 律にのっとって適法にやっている。だけど、地域格差が生じる。我々の生活保護制度に ついては、これからもっともっと意識の差が都市と田舎で出てきたら、仮に行政に何の 落ち度がなくても、私は保護率の地域格差というのはもっともっと大きくなってくる構 造があると思っております。  だから、そういった枠組みを忘れて実施体制が問題だからと言うのは、よほどの根拠 が必要なのではないかというのが私の考えです。だから、生活保護の地域格差だけで議 論をしていくのは、私は実際に問題解決の発展性はないと思っております。保護率がな ぜ上昇していったかというのは、今まで出ましたような医療費全体の医療費の増加要因 がやはり生活保護にもきている。そういった医療とか、年金とか、ほかの制度が漏れた 人が落ちてくるような制度のままでいいのか。いろいろな制度の設計をするときに、で は漏れた人は生活保護で見ましょうというのが今までの制度の枠組みでしたが、むしろ それでいいのかということを私たちに問い掛けていて、他の制度との関連とか、そうい った上昇要因こそきちんと議論するべきだと思います。  それから、就業意欲のこともいろいろな生活保護の議論の中で言っておられますが、 生活保護の仕組みの中でできる就業というのは他の国を見ましても本当に限られた範囲 でしかできない。それを生活保護が上昇しているメインの理由に持ってくるというのは やや飛躍があるのではないかと思います。  最後の点ですが、厚生労働省の資料で例えばケースワーカーの数ですが、ケースワー カーの数が違って何故悪いのでしょうか。ケースワーカーを使わずに嘱託でやっている 市もありますが、そういった形のインプットの仕方もありうるわけです。今は政策評価 の時代であり、どういった効果を生み出したかが重要であるというときに、こういう体 制が整っていないから問題だという議論は、重要であるとは思うのですが、本質的かど うかという点で私は疑問に思っております。以上です。 (尾辻厚生労働大臣)  それでは、京極所長お願いいたします。 (京極社会保障・人口問題研究所所長)  まず、先ほどの厚生労働省の社会・援護局長の御説明でもありましたが、生活保護に 関しては法的受託事務ということで、これは機関委任事務とは違うという認識が非常に 重要ではないか。国の事務を都道府県や市町村がただ受けてさせられるということでは なくて、法に定まったものを国とともに実行するということではないかと思います。国 の役割、財政的な支出の役割が大きいというのは当然ですが、マスコミ等で言われるよ うに国だけが責任を負うということになりますと大変な誤解になりますし、現に現場で 働いている福祉事務所の方々の懸命な努力も過小評価してしまうことになりますので、 そこは確認したいと思います。  それから地方の格差ですが、行政的な努力が不十分だという理由なのか、あるいは今 の生活保護制度を取り巻く制度的な構造的な矛盾がそういう格差を生み出すのか。卑近 な例で申し上げますと、医療扶助の受給者のうち入院患者が多いわけですが、その入院 患者の中でも精神障害者の方が多い。立派な病院があってそこにどんどん入院患者が増 えますと、退院してもまた入院するというようなことで、医療扶助も特定の地域に固ま ってしまうなどということもあります。そういう場合、行政的な努力がその地区の福祉 事務所は不十分だったという非難はできないわけでして、そういう構造的な問題もある ということを含めた原因分析について、実務家も入って調査いただきたいと思います。  私は福祉系の大学に30年、学長も10年やって、ソーシャルワーカーの養成をやってい ました。その中で、生活保護分野にはかつては日本社会事業大学の学生さんもたくさん 就職いたしましたが、最近は余り採用されないと聞きます。ただ、年金と違いまして被 保護者への対応はいわゆるケースワーク的な努力が非常に重要であるということは改め て言うまでもございません。意外に感心しましたのは、査察指導員で実務経験者が結構 多かったことです。土木から回ってきたというようなことが2割程度しかないというこ とがわかりました。  ただ、この数字には出ていないのですが、社会福祉士などを取った方はほとんどいな いのです。だから、福祉事務所で実習しようと思っても社会福祉士の実習を指導する人 がいないという現状がありまして、この辺はやはり改めていく必要があるのではない か。また、これからますます障害者のケースマネジメント、ケアマネジメントなどが出 てきますから日本社会福祉士会の方もそういう面での就労支援等をやらなくてはいけな いという面もございます。  それから、運用の幅はかなりありますが、いずれにしても国と地方では一緒に協力し ながら生活保護を適正に運営していくということが大事です。  それから、公営住宅の問題で資料が出ておりました。この協議会の前に生活保護制度 の在り方に関する専門委員会がございましたが、住宅政策についてはその座長がお話を していたのは、海外においては住宅手当といった生活保護以外の制度で対応しているも のが多い。日本の場合は皆、生活保護の住宅扶助という形で入っています。県によって は住宅政策を非常にやって公営住宅も積極的に活用しているところがありますので、果 たして生活保護の中に住宅扶助を入れておいていいものか。むしろ自主的に地方に任せ てやった方が私はいいのではないかという気もいたします。前回申し上げた国民健康保 険の在り方等も含めまして、他の政策との構造的な関係について整理をしていただけれ ばと思っております。児童扶養手当についても同様でございます。  それから、児童扶養手当の場合は、保護率その他、補助率その他が同じような形です が、若干違う面もあって、今は過渡的なところかなという感じもいたしまして、これに ついてもまた改めてお話をしたいと思っています。どうもありがとうございました。 (尾辻厚生労働大臣)  どうもありがとうございました。  それでは、問題提起と、それから問題提起をなさらなかった各委員の皆様からはそれ ぞれ発言をしていただきました。委員の御発言の中からも、特に田野瀬副大臣辺りから は論点整理も随分していただいております。  そこで、今日問題提起をしていただいたもの、そしてまた委員からの論点整理として の御発言をいただいたものを整理させていただきまして、後ほど整理させていただいた ものをお送りいたしたいと思います。次回はその論点整理に基づいていろいろ御議論を いただければと思います。 (谷本石川県知事)  今、田野瀬副大臣の発言の中で少し気になるところがありましたので申し上げておき たいと思います。  財制審の方で、地域の格差が余りにも大きいとか、受給水準が高いとかという指摘が あったという中で、国と地方の費用負担の在り方も見直すべきだという議論があった。 それを財制審でやるのはいいのですが、我が省も同じ考えでありましてと、今、発言が ありました。私どもは、厚生労働大臣から、補助率の引下げは前提としないで議論をす るからこの協議会に参加をしてくれというお話をいただいていますので、今、田野瀬副 大臣からも論点整理をいただいたというお話がありましたが、その補助率の引下げとい うものが論点整理の中の論点に入るということであれば、これは前提条件が全く違うと いうことになります。  田野瀬副大臣は代理であり、直接の当事者ではありませんが、我々は尾辻大臣からそ ういう回答をいただいたということで、それがテーマになるということであれば前提条 件が全く異なる。大臣から御回答いただいた文書とは異なることになる。今こういう危 惧の念を持ちましたので、そこのところはきちんと整理をしていただきたいと思いま す。 (尾辻厚生労働大臣)  前提にしていないことは申し上げたとおりであります。ただ、議論を始めますと当然 そのことが議論の中には出てくるかとも思います。今、田野瀬副大臣が言われたのは前 提にした話ではなかったと私は理解をいたしております。 (谷本石川県知事)  補助率の引下げは前提としないでこの協議会では議論をするという整理でよろしいわ けですね。 (尾辻厚生労働大臣)  繰り返し申し上げていますように、前提とした議論をするつもりはございません。た だ、議論の中に出てくることは当然あり得るということでございますので、そういうふ うに改めて確認いたします。  それから、途中で今井副大臣からやや御質問に近いような形で厚生労働省に振られた 部分がありましたが、何か答えられますか。 (小島厚生労働省社会・援護局長)  お示ししております資料の15ページをご覧ください。私どもとしましては、毎年すべ ての都道府県、指定都市にお伺いしまして、管内で1つ以上の福祉事務所の監査を行っ ております。平成11年から15年までのお伺いさせていただいた福祉事務所364に対してど のような指摘をしたかというのがアイウエと書いてございます。また、都道府県に対し まして管内の市に対する指導監査も委託費としてお願いをしているという状況でござい ます。 (尾辻厚生労働大臣)  それでは、次回は今日のそれぞれの問題提起などを含めて議論を進めていきますと申 し上げたところで時間が少しありますので、今日残された時間で1点だけフリートーキ ングという形で御議論いただければと思います。  それは、木村委員から地域間格差に ついて、格差があって何が悪いのだというお話がございました。この地域間格差は、そ もそもどういうふうに捉えるのか。おっしゃるように、あって悪くないのではないかと 捉えてしまうのか。やはり、それはない方がいいのではないかと思うのか。この辺の議 論だけは、残された時間で議論していただければと思います。どなたからでもどうぞ。 (京極社会保障・人口問題研究所所長)  先ほどちょっと申し上げたのですが、格差には2つの側面があって、総括的に表現す ると、行政的な努力によって格差が出たものについてはなくなった方がよろしい。他 方、構造的なバックグラウンドからくる格差というものについてはなかなかなくす方法 がないので、それをけしからぬと言うことには当たらないと思います。この辺は恐らく ワーキンググループで少し詰めて議論をして整理したデータが出てくればと思います。 (岡ア高知市長)  先ほどからも何人かの委員さんからずっと出てきておりますが、やはり社会的要因ま たは構造的要因が背景のものがあると思います。特に医療機関の集中とか、高齢者で大 体今は男性が76、77でお亡くなりになった後、女性が残り10年、86、87まで生きるとい う平均年齢になっていますので、女性の単身が非常に多い。それで、元気なうちはいい のですが、そこで病気になると生活保護層へ転落してくるとか、こういういろいろな構 造的な要因がもちろんございます。  それで、生活保護制度とはまた別にして国民健康保険とか介護保険が我々地方から見 ると財政的に行き詰まっているのも、いろいろな構造的な要因があります。そこはいろ いろな要因があるので、解決できる部分と解決できない部分とありますので、そこもや はり分析の中で掘り下げをする必要があるのではないか。  それからもう一点、我々地方として非常に危惧するところは、地方負担を増やせば保 護の受給率が下がると言われる主張がかなり多いですが、我々としては全く因果関係が ないと思っております。もちろん地方でも努力をしていかなければならないということ は重々承知しております。といいますのは、地方も4分の1の財政負担をしていますの で、やはり保護率が高いところは何とかいろいろな工夫で下げていきたいという思いは 一緒でございます。  ただ、それが補助金の負担率の問題となると本質が違ってくると思っております。そ の辺は十分本来の原因を掘り下げていっていただきたいということです。 (尾辻厚生労働大臣)  どうでしょうか。 (木村地方財政審議会委員)  私がそういう強いインパクトのあるフレーズを使ったのは、ケースワーカーはこれだ け地域で違うではないかと実施体制を問題にすること自体が、地域の裁量をもっと高め ていこうというときの見方としてはおかしいのではないかと思うからです。実施体制に そういう違いがあっていいのではないか。要するに、評価の時代にはどういう成果を出 したのかということが問題でしょうということです。あと一つは京極先生がおっしゃっ たこととも重なるのですが、保護率の地域格差のかなりの部分は構造的な問題が非常に 大きいと思っています。  でも、私がちょっとがっかりしたのは、先生の出された問題提起は、厚生労働省の側 なのに主に地方の実施体制の問題としてとられるような形でしか表示されなかった。そ ういうことで、それについてのきっちりした論証ができるのだったらまだしもですが、 私はもっと厚生労働省としては社会構造的なものを掘り下げて問題提起をするべきだっ たと思うのです。  地域格差というのは捕捉率が低かったことまで含めると、当然これからもっともっと 広がっていく可能性もあって、地域格差のこと自体を問題にするのには私は議論の発展 性はないと思って、むしろ上昇的な要因がどうなっているのかという議論の方がずっと 我々が取り組もうとしている問題には有効であると思っております。以上です。 (尾辻厚生労働大臣)  先ほどの細かな資料は、要するに余りにも地域間格差が大きいのではないだろうかと いうことを言わんとしている資料でありまして、私もそのことは強く思っております。  格差があるのはある意味で当然でもありますが、今の格差というのは余りにも大き過 ぎる。ですから、その辺から議論を始めればいいと思います。だから、今まさに同じこ とを言うことになるのでしょうが、では何でという話の議論から始めればいいというふ うに私は思っておりまして、あえて申し上げると、この余りにも大きな格差というのは 放置できないと私も改めてまずは意見として述べるところでございます。  ほかにどうでしょうか。 (谷本石川県知事)  地域格差の要因が木村先生のおっしゃったように構造的なものということであれば、 今、我々は生活保護の議論をしていますが、社会・援護局の分野だけで本当にこれは解 決できるのか。雇用の問題だとか年金の問題だということになってくれば、これは社会 ・援護局だけでは無理でしょう。しかし、厚生労働省全体としてはお互いに横断的な連 携を図りながら、議論しなければいけないことになってくるのではないかと思います。 我々も特段数字などは持ち合わせていませんが。 (尾辻厚生労働大臣)  確かに社会保障の問題というのは、一つの議論を始めるとどうしても社会保障全体を どうするかという議論に発展するのは必至なところがあるのですが、この協議会は余り 広げてしまうといかがかと思います。できるだけ絞りながら議論はさせていただきたい と思いつつ、今の御意見はこの手の議論を始めると必ず出てくる話であります。そこは うまくそれぞれ委員の皆様方もよろしくお願いを申し上げます。 (京極社会保障・人口問題研究所所長)  どうしてもこの協議会では生活保護の問題に関心があるのですが、少し違った論点 で、児童扶養手当についてです。母子家庭ということを考えますと、生活保護で受けて いる家庭もありますし、稼得収入プラス児童扶養手当でやっている家庭もある。同じ母 子家庭でありながら2つあるわけですが、制度間の公平性とかバランスを考えますと 今、生活保護の母子家庭で子供がたくさんいる方は非常にたくさん給付を得られる。だ から、児童扶養手当をもらって働くよりもその方が楽だというインセンティブが働かな いとは限らない。  逆に子供が少ないとそういうインセンティブはないのですが、児童扶養手当というの は子育て支援の大きな資源ですのでもう少し充実させて、せっかく働いているのを継続 していけるようにできないか。お金を増やせというと今日は財務省の方もいらっしゃっ ているし、そんなことはとんでもない、財政を建て直す時代だということになりますか ら、今、見直しで大分改善されましたが、生活保護においてもう少し母子加算みたいな ものを制限して、児童扶養手当をもう少し上げるとか、そういう制度間のバランスを考 えていったらどうか。せっかく生活保護と児童扶養手当と2つここに対象で挙げている ものですから。  恐らく、子供の数が2人くらいになったら逆転して、児童扶養手当をもらっている人 が非常に苦しくなってくるという現状があるわけなので、この辺は数字が今日はないで すが、もしあったら教えていただきたいと思います。 (尾辻厚生労働大臣)  児童手当まで含めてですか。 (京極社会保障・人口問題研究所所長)  あとは母子家庭ですね。 (尾辻厚生労働大臣)  事務局で研究するそうですから、次回資料として出せるようでありましたらそれまで 含めて出したいと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、これでまた児童手当の話まで始めますととても 広範な議論になりますので、そこは先ほど私が申し上げたことで整理をさせていただけ ればと思いますから、よろしくお願いをいたします。  それでは、残り時間はまだありますが、これで始めますと今度は必ず足りなくなると 思いますので……。 (木村地方財政審議会委員)  この間お願いしましたデータをまだいただいていないので、お願いいたします。 (尾辻厚生労働大臣)  わかりました。それも全部整理して論点整理まで含めて、申し上げましたように改め て私どもの問題提起も含めてお送りをさせていただきますので、次回はそれで御議論を いただきたいと思います。  少し早いのですが、ここで止めておいた方が何となくお互いの幸せのような気がしま すので、今日はここまでにさせていただきたいと存じます。  どうも今日はありがとうございました。いろいろと次回また御相談申し上げますから よろしくお願い申し上げます。 (照会先) 社会・援護局 保護課 企画法令係       電話 03-5253-1111(内線2827)