05/05/24 労働政策審議会雇用均等分科会第44回議事録            第44回労働政策審議会 雇用均等分科会 1 日時: 平成17年5月24日(火)14:00〜16:00 2 場所: 厚生労働省専用第21会議室 3 出席者:    労側委員:岡本委員、片岡委員    使側委員:川本委員、前田委員、山崎委員、渡邊委員    公益委員:横溝会長、今田委員、佐藤(博)委員、林委員 ○高井総務課長  ただいまから第44回労働政策審議会雇用均等分科会を開催します。本日の出欠です が、奥山委員、樋口委員、佐藤(孝)委員、篠原委員、吉宮委員、吉川委員が欠席され ています。本日は委員改選後第1回目の会合ですので、分科会長が決まるまでの間、事 務局が議事を進行させていただきますので、ご協力をお願いします。  まず委員の皆様方をご紹介させていただきます。お手元の資料No.1をご覧ください。 今回の改選で1名の委員の任命替えが行われています。若菜委員の後任には林委員が任 命されています。なお辞令についてですが、皆様方のお手元に置いています。席上配布 という形で誠に恐縮でございますが、お受け取りいただきたいと思います。新たに任命 されました林委員から挨拶を頂戴したいと思います。 ○林委員  林でございます。よろしくお願いします。 ○高井総務課長  ありがとうございました。議題の1、分科会長の選挙に移ります。労働政策審議会令 第6条により、公益を代表する委員の中から委員が選挙するということで、委員の皆様 に選んでいただくことになっていますが、いかがお取り計らいしましょうか。 ○佐藤(博)委員  横溝委員にお願いできたらと思いますが、いかがでしょうか。 ○高井総務課長  横溝委員に分科会長をというご推薦がありましたが、横溝委員に分科会長にご就任い ただくことについて、よろしいですか。                  (異議なし) ○高井総務課長  それでは横溝委員に分科会長にご就任いただくことにしまして、以後の議事の進行は 横溝委員にお願いします。 ○横溝分科会長  このたび若菜委員に代わりまして、分科会長を務めさせていただくことになりました 横溝でございます。私は労働法に対する知識も労働現場に対する知見も乏しい人間でご ざいまして、今期、特に重いテーマのときに分科会長という重い責任を務めることがで きるかどうか、甚だ自分で僭越ではないかと思って躊躇するところがございますけれ ど、委員の先生方を見回しますと私が年長組ということでお許しいただいて、ご指導、 ご協力を賜りながら責任を果たしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。  それでは議事に入りたいと思います。なお労働政策審議会令では、私から分科会長代 理を指名させていただくことになっていますので、私から指名させていただきます。樋 口委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。続きまして家内労働部会委 員等の指名ですが、家内労働部会の委員等については労働政策審議会令第7条第2項に おきまして、部会に属すべき委員、臨時委員及び専門委員は、分科会長が指名するとさ れています。つきましては予めお手元にお配りしていて恐縮ですが、家内労働部会に属 すべき委員等につきましては資料No.2のとおりとさせていただきたいと思いますので、 よろしくお願いします。  次の議題に入りたいと思います。男女雇用機会均等対策についての中から男女雇用機 会均等の実効性の確保について、事務局から資料の説明をお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  資料No.4として2種類の資料を用意しています。これまで論点項目1、2、3のう ち、1の「男女雇用機会均等の促進について」を議論いただきました。本日は2番目の 項目に挙がっていた「男女雇用機会均等の実効性の確保について」を取り上げ、2種類 の資料を用意したものです。  資料No.4-1は、性差別に係る主な個別労働関係紛争の解決手続の概要です。ご承知 のとおり、論点になっている実効性の確保の関係では、均等法上措置がされているとこ ろで、大きく枠組みとしては行政指導に係る根拠規定になる25条の報告聴収、助言、指 導、勧告という規定と、もう1つ、実際に紛争が生じた場合の解決の手続としての均等 法第13条、第14条に定める労働局長による助言、指導、勧告と調停の規定があるわけで す。  前回の平成9年の改正において、前者については法に違反し勧告に従わなかった場合 には、その旨を公表することができるという規定ができ、また紛争が生じた場合の解決 手続の関係では、調停を一方の申請で開始することができるように改められたところで す。  平成9年改正の後、この資料の左から3つ目にありますが、個別労働紛争解決促進法 という法律が施行されています。また司法制度改革が進められるなか、紛争を解決する 手続が大きく変化しているところです。そこで今回、行政指導のところは別として、個 別紛争解決のところについて制度が大きく変化しているということで、このような資料 を用意したものです。  ここでは6つの制度を並べています。右2つにある制度の労働審判手続と裁判外紛争 解決手続はこれから施行されるもので、まだ運用されているものではありません。そう いうものも含めておりますが、大きく性格として裁判所が関与するものとそうでないも のがあります。左の2つの民事訴訟手続と民事調停、中2つを置いて、まだ施行されて いませんが労働審判手続、これは裁判所が関与するものです。また中の3つの個別労働 紛争解決制度、均等法の援助の規定、労働審判手続はもっぱら労働に係るものです。大 きくこういう形で性格分けがあるわけです。  概要だけポイントを絞って説明したいと思います。民事訴訟ですが、これはいわゆる 裁判です。対象となっているのは※印をご覧いただきたいと思いますが、広く民事に関 わる紛争になるわけです。証拠に基づいて裁判所が当事者を拘束する判断を導くわけ で、そういう意味では重い手続と申しますか、次の頁にわたって書いていますけれど も、証拠調べの方法等についても、かなり詳細な規定が設けられています。また次の頁 の2つ目にある紛争解決の効力としても、確定判決ということで債務名義になり、強制 執行が可能といった規定になっていて、こういった性格を持っているわけです。  ちなみに今回、資料を用意するにあたり、処理期間の点で時間がかかるという指摘が 昨年の秋にありましたので、平均的な処理期間も掲載しています。民事の通常のもの と、わかる範囲で労働関係のものを並べていますが、いちばん下のところをご覧くださ い。労働関係の民事通常訴訟事件の既済事件で6ヵ月以内に終了したものは、平成14年 度と15年度を並べていますけれども、4割弱となっています。なお、ここには簡単な事 件も含まれているので、印象よりは少ない感じになっているのではないかと存じます。  次に民事調停ですが、これも裁判所が関与するものです。ここは裁判とは違って実際 の解決ということで、いささか軽易というか、使いやすい形の制度になっています。決 定的に違うのは手続について非公開であり、あまり人に知られたくない事案についても ここに入ってきます。次の頁になりますが、民事調停ということですから実際上の解決 ということで、証拠調べの方法についても強制力を用いる方法によらない事実の調査も あり、実際にはそちらのほうがよく使われると聞いています。  しかしながら、ここで決着をみた場合においては、紛争解決の効力とありますが、調 停が成立した場合には、裁判上の和解と同一の効力を有する。成立する見込みがないと きには職権で裁判所が必要な決定をすることができるわけですが、この場合も特に異議 の申立てがない場合には、裁判上の和解と同一の効力ということになるわけです。  調停事件の場合の平均的な処理期間が、いちばん下の欄にありますが、平成14年度、 15年度のいずれを見ても、既済事件で3ヵ月以内に終了したものが8割程度といった状 況です。  次に3つ目の個別労働紛争解決と4つ目の均等関係ですが、これは労働問題に特化し て行政が行うもので、これについては一括して概略を申し上げたいと思います。集合関 係で見れば、個別労働紛争解決制度がカバーする範疇は大変広くなっています。さまざ まな労働関係を扱うことになっていますが、そのうち均等法に規定する事項について は、均等法で扱うという交通整理がなされているわけです。均等法からはみ出た性差別 問題もあり得るということで、女性労働問題という相談も若干あるようです。また直 接、性差別と言うかどうか別として、セクシュアルハラスメントについては、よくここ で紛争解決が図られている実績もあるわけです。  紛争の処理の方法が、この2つの制度で若干違いがあり、均等のほうでは助言、指 導、勧告ということですが、個別労働紛争解決のほうは助言、指導となっているのと、 均等のは調停となっていますが、個別紛争はあっせんとなっています。いずれも非公開 ですし、当事者の一方の申請で可能となっているわけです。これらは迅速に解決してい こうということで、証拠調べの方法等についてはいずれも任意というか、意見聴取を行 うことができるという規定に基づいて情報収集し、解決につなげていくという形になっ ています。  紛争解決の効力ですが、あっせんなり調停で合意が成立した場合には、民法上の和解 契約になるということがあります。併せて申立てに係る不利益取扱いの規定が、この行 政上のサービスにおいてはあります。  平均的な処理期間ですが、ここはかなり速めと申しますか、個別紛争のほうでいくと 3ヵ月以内に処理したものが95%を超えています。また均等のほうで見ても、それぞれ 若干違いはありますが、9割、100%という形で迅速な処理がなされている状況かと思 います。  ついでですので、これからスタートするはずの制度についても概略を説明します。労 働審判手続ですが、これは来年4月1日にスタートします。これも民事訴訟や民事調停 同様、裁判所が関与する手続です。いくつか特徴がありますが、これは迅速処理を目指 しているということであり、広く労働関係を扱いますが、対象となる事案のところをご 覧ください。原則、これは3回の期日で終結することを想定しています。しかしなが ら、「なお」書きのところがありますが、事案が複雑で3回の期日では解決に至ること が難しい場合などでは、労働審判に至らないとすることができる規定になっています。  紛争処理の方法もひとつ特徴で、労働審判ということですが、まずは調停の成立とい うことを優先させて進める。ただ、それができない場合には労働審判を行う。労働審判 に対して異議の申立てがあった場合には訴訟に移行するという、3つ組み合わさった形 になっています。さらに、もう1つの特徴として手続の主体ですが、裁判官のほかに労 働審判員ということで、労働関係に関する専門的な知識経験を有する者のうちから2名 と、いわば三者構成のような構成で労働審判委員会が設けられるのも、大きな特徴点で す。手続については原則非公開です。  2頁で証拠調べの方法等ですが、これは民事調停とほぼ並びになっているのと、紛争 解決の効力として調停が成立した場合、裁判上の和解と同一の効力を有する。また労働 審判が確定した場合も裁判上の和解と同一の効力を有するとなっています。  裁判外紛争解決手続(ADR)ですが、これは平成19年5月31日までに施行されると いうことで、まだ施行期日も確定していません。裁判外紛争解決は民事調停も含みます し、さまざまな裁判外の紛争解決のものということですが、この法律の中心的事項は、 民間の裁判外紛争解決事業者のうち一定の者を認証して、その者には一定の措置を講ず る。ここが特徴点です。資料の手続の下のところをご覧ください。認証を受けると例え ば時効の中断、あるいは当事者間にこの紛争解決手続によって紛争解決を図る旨の合意 がある場合には、訴訟手続のほうを中止することができる。こういった規定が盛られて いるわけです。紛争解決の効力が次の頁にありますが、もし成立した場合には民法上の 和解契約となるということです。以上が資料No.4-1の説明です。  資料No.4-2をご覧ください。性差別に係る諸外国の実効性確保措置の概要です。こ の資料はアメリカ、イギリス、フランス、ドイツについて、把握している情報から整理 し取りまとめたものです。先ほどは紛争解決の手続に限った資料としていましたが、こ こにおいては紛争解決に限っていません。行政指導なども含めて記載しています。  全体的な概況を一言で申し上げると、国によってさまざまであると言えるかと思いま す。1つ大きなものとして、アメリカ、イギリスのように性差別問題を中心に特別の機 関を有している国と、そういうものを置いていない国とがあります。アメリカではEE OC(雇用機会均等委員会)というのがありますし、イギリスではEOC(機会均等委 員会)というのがあり、それぞれ性差別を規定する法律に基づいて設置されているとこ ろです。  フランスにおいては、労働監督官が是正指導とともに、中ほどの欄をご覧いただきた いと思いますが、紛争解決も実質行っているということです。しかしながら、基本的に 労働審判所の申立てというのは苦情処理に使われるということです。  ドイツについては、性差別問題についてことさら行政指導を行う仕組みにはなってい なくて、監督官制度はあるようですが、そこでは安全衛生や母性保護という問題を扱っ ているということです。紛争解決については企業内の解決のスキームが特徴的ではない かと思います。経営協議会というのがあって、被害者が苦情を申し立てた場合に、使用 者あるいは経営組織法に基づいて設置されている、労働者代表によって構成される経営 協議会が受け付け、それに基づいて処理、結果を通告するわけです。また使用者に改善 を申し入れるということですが、意見が不一致の場合には調整委員会が決定を下すこと になっています。ただ、多くの場合、労働裁判所への申立てがメインルートになってい て、よく使われるとも聞いています。  特別の機関を有しているアメリカとイギリスについて、若干相互の比較をしながら概 略を説明したいと思います。(1)(2)という順番が必ずしも同じように並んでいないので 恐縮ですが、アメリカのEEOCとイギリスのEOCはともに法の施行やガイドライン の策定を司っています。啓発活動、立法についての勧告なども行うことができることに なっています。  相違点としては、紛争解決への関わり合いが言えるかと思います。アメリカのほうを ご覧ください。下の欄の実効性確保措置のところで雇用機会均等委員会(EEOC)へ の申立てとなっています。アメリカでは救済申立ての場合、訴訟を起こす前にまずEE OCに救済を申し立てることになっていて、EEOCは申立てを受けて調査を行いま す。解決に向けて調整を行ったり、イの(2)にあるように調整が成立しなかった場合に EEOCが民事訴訟を提起し、それで違法な差別の除去を図ることになります。  イギリスですが、EOCのところでそのような申立てを受けてという形になっておら ず、雇用審判所への申立てとなっています。EOCの関わり合いは上の行政機関の機能 のところにありますが、(6)にある訴訟援助という形になっています。そういう意味で は間接的な関わり合いになってきて、そちらがメインだということになっています。  差別是正指導ですが、アメリカのEEOCは、実効性確保措置のいちばん下の・をご 覧ください。事業所の立入り調査を行って制度化された差別があれば、EEOCとして 自ら命令を発するのではなく、裁判所に対して差止め命令あるいは抑止命令を求める民 事訴訟を提起するというスキームになっています。  イギリスについては、対応する右のほうをご覧ください。イギリスのEOCは独自の 権限として公式調査を実施し、それに基づいて措置勧告、違反があった場合には差別停 止通告を行うことになっています。通告を行っても違反行為を行う可能性がある場合に は、雇用審判所等へ差止め命令を申請します。これが特徴的かと思います。したがって 実際の申立てがなくても、イギリスの場合は調査の上、是正のための勧告、通告まで行 う点が、アメリカとは違っている点ではないかと思います。アメリカの場合は裁判所を 介するということです。簡単ですが資料については以上です。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。この問題についてご意見、ご質問等がありましたらお願い します。 ○岡本委員  いま、ご説明にあったように、性差別に係る紛争の解決手続というのはいくつもある なと改めて感じました。その上で2点質問させていただきたいと思います。均等法に関 係する部分ですが、正直に言って数字だけを捉えると件数が非常に少ないなと感じまし た。特に調停の件数が平成14年は11件、平成15年は2件となっていますが、このことを どのように受け止めていらっしゃるのかというのが1点です。  民事訴訟手続のところは、一方で労使関係に関係するものが2,000件以上、それぞれ の年度であるのですが、この中で労基法第4条違反とか、いわゆる昇進、賃金差別とい うことに関連した訴訟が、このうちどのくらいあるのか。もし今おわかりでしたらお伺 いしたいと思います。 ○石井雇用均等政策課長  まず均等の関係の件数が少ないことについてですが、いろいろ見方があると思いま す。1つ傾向として出ているのが、個別紛争解決の援助の中でも労働局長の助言、指 導、勧告は件数が最近は非常に伸びてきている状況があります。中身として多いのは妊 娠、出産を理由とした解雇が非常に多くなってきている。それに伴ってということです が、まず1つ傾向としてそういう動きがあるということを申し上げた上で、ただ絶対水 準として、あまり多くないのも事実です。調停などについても年によって非常に変動が あるという特徴があります。  なぜかと考えたときに、均等室のほうで一義的に相談を受け付けます。相談件数自体 は結構あるわけです。相談をした上で指導に入ることにより解決をみる場合もある。雇 用継続を想定した中で、トラブルを外に持ち出しにくいこともあるかもしれません。そ うした中で別のルートで解決が図られていることも、この件数の少なさに表われていま す。もう1つは出しにくいというのも片方にあるのではないかと思います。地域性もあ るようで、いわゆる都市部と郡部に分けたときに、都市部では比較的こういうものは出 てくるのですが、郡部になると差別問題だということで外に持ち出すのがためらわれる 風潮があることを、現場の声として聞いているところです。しかしながら、一旦解雇と いう話になると、その辺は意を決してと申しますか、相談に来るケースも少なくない。 受止めとしてはそのような感じで取っているところです。  もう1つ、民事訴訟の手続での内数ですが、これについては内訳を聞いてみたわけで すけれども、そういう分類がなされていないようで、いまの時点ではどのくらいかとい うのは掌握できていません。 ○横溝分科会長  よろしいですか。ほかにいかがですか。 ○片岡委員  いまの岡本さんの意見と1点は重なりますが、均等法の調停に係るところで、受理件 数が平成14年度は11件、15年度は2件と説明されていますけれども、申請件数というの はわかるのですか。これは受理された件数になるので、申請した件数があるのかないの か、もしあればというのが質問の1つです。  もう1点は、後ほど議題になっている実効性確保に関し、私自身は均等法に関わって の強化が必要だと考えています。その上で質問ですが、先ほど労働審判制の平成18年施 行の説明がありましたけれども、これは例えば研修などでは男女平等課題というか、性 差別に関わることなどを取り上げて、その解決をする研修内容というのは盛り込まれて いるのかどうか。もしおわかりでしたらその2点を教えていただきたいと思います。 ○石井雇用均等政策課長  まず1点目で受理件数と書いていますが、これは申請件数とイコールです。前回もお 話し申し上げましたが、均等法の9年改正以後、調停不開始となった率はゼロで、申請 したものはすべて開始となっています。もちろん、その前に取下げた場合はあるのです が、この件数について言えば、イコールと受け止めていただければと存じます。  もう1つ、実効性確保の関係で労働審判制度の話ですが、直接私どものほうで所管し ている制度ではありませんので仄聞した範囲ですけれども、確かに、つい先ごろ研修が スタートしたという報道もなされていたようです。その研修のメニューの中に性差別の 問題も扱われているようです。テキストなども見せてもらったことはあるのですが、そ の問題が入っています。  ただ、それが中心的な部分かというと必ずしもそうではないようで、労働審判制度で 特に想定しているのは、迅速処理ということもあり、解雇事案や賃金未払いが中心的に 取り扱われると想定されているようです。当時、制定を担当した課長さんがある本の中 で書いているのを見たのですが、差別問題というのはかなり複雑なことになるので、ど の程度扱えるか。中心的なものになると限らないというか、むしろ難しく扱いにくいと 語っているのが掲載されていたところです。 ○佐藤(博)委員  この件数について、たぶん難しいのは個別紛争なので、増えている、減っていると言 ったときに、例えば1つの事業所で10人が昇進差別でとなると10件になるわけです。で すからどこかで人数が多いのが出てくると件数が増える。だけど使用者としては1事業 所ですから、どっちでカウントするかです。これは個別紛争なので、もし50人いれば50 件になるのです。この数字の見方は結構難しいということです。もちろん、対象になっ ている人が大きく減っていることは正しいのですが、例えば事業主が増えている、減っ ているというと別の話です。 ○石井雇用均等政策課長  件数の数え方自体は1件1件です。 ○佐藤(博)委員  1人1人ですね。 ○石井雇用均等政策課長  1件1件の内容が違います。 ○佐藤(博)委員  そういう扱いですね。 ○石井雇用均等政策課長  そうです。 ○横溝分科会長  ほかにございませんか。 ○岡本委員  件数のところはわかりました。その上で、これだけ解決方法がある中で、基本的には 機会均等法の中ですべての部分が解決していく形が、より望ましいだろうと思います。 いまもお話がありましたように労働審判制度の中で、これからどういう形になるかわか りませんけれども、性差別をどう捉えるかは大変難しいものだけに、きちんとした専門 家の方が、そこについてのさまざまな判断をしていくことが非常に重要だと思いますの で、私ども連合としては、この均等法の中により実効性を高める調整というか、不利益 な扱いをしないことが必要だと思います。  受理にこだわったのは、少し古い数字ですが、平成11年度から15年度までの昇進・教 育訓練における調停件数が38件あった中で、そのうち拒否されたのが25件ということを 別のところで伺い、そうすると、その拒否されたことについてその後、どのようにフォ ローしていくのかとなると、裁判に訴えていくことになると思うのです。裁判に訴える ということは、どのようなものでも労働者にとっては非常にハードルが高いものです し、どこに差別があるのか、どこが問題であるかの立証責任も、いまの段階では訴えた 労働者側にあるということを考えると、ここの部分も含めて1つ整理されていくことが 必要なのではないかと考えます。実効性のある差別救済システムというものを、均等法 の中で付加していくというのか、さらに高めていくことが必要ではないかと思います。  2001年(平成13年)に、労働分野における人権救済制度のあり方というのが検討され たと思いますが、その報告書が私の手元にあります。その中でも、雇用における差別取 扱いやセクハラなどの人権侵害について、実効性の高い積極的救済を図る必要があると して、調停、仲裁、勧告、公表、訴訟援助等の救済手続の整備、実効的な調査権限の導 入が提言されています。こうしたことも踏まえて、是非、議論を深めていきたいと思い ます。  今日は、この救済制度について初めての議論だと思いますので、少し長くなります が、連合としての考え方をまとめていますので、私のほうから申し上げたいと思いま す。8点あるのですが、あとでまた資料としてお渡しできればと思います。  1点目は、政府から独立した性差別救済委員会を都道府県単位で設置をする。2点目 は、救済の対象は労働者の募集・採用、配置、昇進、教育訓練、福利厚生、定年、退 職、解雇、賃金、その他の労働条件に関する性差別のほか、セクシュアルハラスメント とする。3点目は、救済申立てを理由とする不利益取扱いを禁止する。これは既に入っ ていると思います。4点目は、差別の合理的根拠を示す証拠及びその裏付け資料の提出 義務は事業主にある。5点目は、資料の提出がない場合、あるいは資料の提出があって も合理的根拠が認められない場合には差別を認定して、是正を勧告できるようにする。 6点目は、事業主がこの勧告に従わない場合は刑罰を科す。7点目は、性差別救済委員 会は差別是正命令を発することができ、この命令を履行しない場合も刑罰を科す。8点 目は、申立てした労働者を緊急に救済することが必要な場合は緊急命令を発することが できる。この緊急命令はどういう場合かというのは、特にセクハラの場合に考えられる 措置ではないかと連合では議論しました。この8点について是非議論を深めていただい て、この均等法の中で実効性のある救済システムの確立を、是非盛り込んでいただきた いことを、まず申し上げたいと思います。 ○川本委員  一応、大枠の紛争解決という意味では、今日、資料の説明がありましたけれども、こ の均等法改正後もいくつも立ち上がってきていて、かなり充実をしていると思っていま す。先ほどの個別紛争解決促進法、そしてこれからは労働審判並びにADRということ も出てくるわけです。併せて今の均等法自体も、勧告に従わない場合は企業名公表とい うものまで持っているわけで、いまので十分なのかなという感想を持っています。  追加の意見ですが、いちばん大事な問題というのは実は表に出てくる前で、企業内で 労使協力して苦情処理をどう充実させ、その中でいかに防止し、あるいは紛争が起きた 場合の解決を図っていくかが本当はいちばん重要で、これが基本かなと考えています。 ○前田委員  企業の実務担当としては、いろいろな所に仕組みができてもどこへ行ったらいいの か、働いている人もわからないし、非常にわかりにくいのではないかと思います。そう いう意味では、いまある制度を上手に使っていくやり方のほうが実効性もあると思いま す。いま川本委員が言われたように、できるだけ公の所に訴える前に企業の中で議論し て、そういうことが解決され、次にないようにすることのほうが大事なことなのだと思 いますので、私も、いまある制度で十分なのではないかと思っています。 ○片岡委員  均等法の実効性確保という論点については、岡本さんから、連合が要求している差別 の救済制度ということで意見として出していただきましたので、それを少し補強する意 見になります。私も川本さんが言われるように起きたところに近いところで、そういっ た差別が解消されるのがいちばん望ましいと思いますし、訴える側は何も公にすること が目的ではなく、訴えを真摯に受け止めてくれて、きちっと理解を示して公正な処遇が 行われるなら、前田さんが言われたような意見にも賛成です。  ただ、では実態はと考えると、ひとつには常に出される問題提起で、労働組合の組織 率が大変低くなってきている。ましてや女性労働者が労働組合に入っている割合は大変 低いですし、中小規模のところで働く未組織の人たちが圧倒的に多い実情や、性差別と いうことを訴えて、それをきちっと是正するという点では、先ほどアメリカとイギリス の例をご紹介いただいたわけですが、専門的な差別救済を行う必要が、ますます高まっ ているというふうに考えます。  その上で、先ほど岡本さんが言われた8点の中で、特に職場からの問合せとか、この 間、いろいろ情報で得ている点で補強したいのは、裁判では訴えた側が差別の根拠を示 すのが裁判ルールになっていますが、実際に訴えた側が自分の資料というか、置かれて いる状況を把握することはできても、それを比較すべき同僚や人事制度の資料が、もち ろん持っている人はいますが、絶対的には労働者側がその資料を示すことは不利な状況 があると思います。裁判になったケースなどを読むと、労働組合に協力を求めたけれ ど、労働組合でも出していないという残念な状況もあるわけです。  最近、その資料の関わりで気になる動きが、個人情報保護法に非常に悪乗りという か、言葉は悪いですけれども、実際にいま連合ではその集約を始めています。本来の個 人情報保護の範囲を超えて労働者に情報を不開示する。あるいは企業情報を漏らした場 合の損害賠償とか、誓約書の問題などが実際に一方で出されているわけです。そういう 動きなどを考えると、ますます労働者側で資料を出すということは困難になっていくの ではないかと危惧しています。そういう点で、ここで合理的な根拠を示す義務が事業主 にあるということについては、是非、その点をこの差別救済制度のポイントにする必要 があると考えています。  それと、いまの均等法の調停会議では依然、セクシュアルハラスメント、募集・採用 が対象外にされているということです。これは募集・採用に関わって、連合は差別禁止 の強化を一方で要求していますけれど、そのテーマでの問題も多い。もちろんセクシュ アル・ハラスメントも多いという意味では、実効性のある差別救済制度の中では、そう いう除外をするということでなく、労働条件全般に対応できるようにする必要がある。 むしろいま均等法の調停会議では、そのニーズに全く対応できていないという点で、差 別救済の制度の必要について意見を補強させていただきました。 ○岡本委員  いま片岡さんが言われたことと同じなのですが、手続も含めてこれから人権擁護法案 が通れば、また一方で全体的な人権差別に対する法律もできていくわけで、そこでもか なり厳しい救済制度が出来上がっていくのではないかと、これまでの議論からいけばそ のように受け止めます。  いくつか選択があるということもいいことなのかもしれませんが、1つ中心になる特 に男女の雇用機会均等に関する差別について、この法律の中で1つのことが完結してい くということは、私は非常に重要なことなのではないかと思います。これは経営者側に とっても労働者側にとっても、わかりやすさも含めてあるのではないかと思います。  労働組合は、いまもお話があったように非常に組織率が低い中で、本当に多くの方た ちが自分だけで悩んでしまっている。どうしたらそこを救済していけるのか。そういう ことは非常に大事なことだと思います。  個人情報保護法の中でも、いま学校などが内申書を公開する動きが非常に活発になっ てきています。労働者の昇進、考課について、労働者が求めた場合にオープンにできる ということもありますが、オープンにできるかどうかというのは労使の議論の中で決め ていくと、いまの指針の中で確かなっています。なかなかそこも、今のお話のようにオ ープンになっていかない中で、自分たちがどういうふうに評価されているのか。企業の 労務管理がどういう形で動いているのかが非常にわかりにくいわけです。  そういった中で、労働者側が差別の立証責任を負うことは限界がありますから、そう いった面からだけ見ても、いまの制度ではなかなか実効あるものになっていかないこと を改めて申し上げたいと思います。 ○横溝分科会長  ほかに、どなたかご意見はありますか。いかがですか。新しい制度とかを絡めてメニ ューがたくさんあり、これを特化してするのか、あるいは散らばってどれでも使いやす いのを使うのもいいと思いますが、特にご意見があればと思います。岡本委員と片岡委 員が大分言われましたが、いまの段階ではよろしいですか。それでは、この問題につい ては本日はこれで終わりにします。  次の論点項目の男女雇用機会均等の促進についての議論に入ります。資料No.5につ いて説明をお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  資料No.5をご覧ください。これまで1月19日の第40回の雇用均等分科会以降、論点 項目1について順次議論いただいてきています。そこで出された主な意見を事務局で整 理したものです。簡単に説明しますと、論点項目の1の(1)の男女双方に対する差別 の禁止については、大きく分けて2つが議論になったと思います。1つは男女双方差別 の禁止と、特例措置である均等法9条の在り方についてです。ここに記載のように双方 差別禁止すべきだという意見や、特例措置については慎重に議論する必要があるのでは ないかといった意見が示されたところです。  この議題の中ではもう1つ大きな議論として、均等法の目的について議論がありまし た。均等法の目的の中に「仕事と生活の調和」を規定すべきだという意見と、それにつ いて、考え方としてそれは重要だけれども、均等法としての目的は特化して絞ったほう がいいのではないかと、双方に分かれた議論であったかと思います。また今日の実態に そぐわないという議論もありました。  2の妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止です。これについても大きく2つ の観点で議論を整理できるかと思います。1つは妊娠・出産等を理由とする不利益取扱 いの禁止そのこと自体についてです。これについては妊娠・出産に係る不利益取扱い禁 止について、育休と同様に規定すべきではないかといった意見、それにまつわる若干の 議論があったと思います。次の不利益取扱いの内容等についてですが、内容については さまざまな意見があったと思います。1つは妊娠・出産を理由とすること自体の話と、 妊娠・出産に伴って労働力が低下したり、あるいは休んだりといったことについてどう 考えるかについて、これは意見として分かれたと思います。休んだということですの で、そこについて公正という問題があるので一律に扱えないという意見もあれば、妊娠 ・出産に伴うものであるから、マイナス評価されることを当然視していいのかは疑問で あるといった議論がありました。  そして下の4つほどについては議論の進め方についての意見も含まれています。これ からの議論の進め方として、少し整理して進めたらどうか。下から2つ目ですが、育児 休業の不利益取扱いと同様に考えることができる部分と、妊娠・出産に固有の問題とに 分けて見たほうがいいのではないか。また、これに関連する議論として、ILOの母性 保護条約を批准するための出産手当金の給付率の引上げをすべきだとの意見もありまし た。  3の間接差別の禁止ですが、間接差別の禁止についてもかなり意見が分かれたところ です。間接差別というものについて、形を変えた差別に対応するのに有効な概念である から、均等法に規定すべきだという意見に対し、漠然とした概念であって無制限に広が りかねず現場は混乱する。これは現在まだ時期尚早である。中小企業の現場から見ても これはわかりにくいといった意見、さらには間接差別の概念自体は明確にできているの で、時期尚早だからという段階ではもうないといった意見がありました。  間接差別の内容について、これは転勤、世帯主要件、コース別、パートといったもの が具体的に挙がって、種々の意見が示されたところです。転勤要件とか世帯主要件が女 性にとって不利益になる。これは差別の1つであるのでどうしていくのか議論すべきだ という意見もあれば、これは差別ではないのではないかという観点からの指摘もされて います。結果の平等の追求から話がスタートしているように思えて、転勤の有無や世帯 主の問題も理解できないといった意見もありました。間接差別とは何かという議論と、 どのようなものを射程に入れて解決していくかは別の問題だという意見もありました。  4の差別禁止の内容等ですが、これについてさまざまな意見が出ましたけれども、こ うすべきだという意見がここでは多かったように存じます。均等法5条の「均等な機会 を与えなければならない」については、「差別的取扱いをしてはならない」とすべきだ という意見、そして均等法のステージごとの規制から漏れる問題があるので、仕事の与 え方も含めて、雇用ステージ全般の包括的な規制とすべきだという意見、雇用管理区分 の問題、さらには労基法3条に性別を追加し、均等法に賃金差別禁止を規定すべきとの 意見もありました。これについては法理論的な立場からの意見も示されたところです。 刑罰法規で担保しているものと、そうでないものとの理論的整合性がどうなるかといっ た指摘です。  5のポジティブ・アクションの効果的な推進方策については、義務化をすべきという 主張がされ、それに対し義務化には反対だという意見がありました。両方の意見が対立 したというか、双方が意見を出し合ったという状況であったと思います。ただ、義務化 に反対するも、奨励は良いけれども、自主的な取組みを尊重すべきだという観点の発言 もあったと思います。  4頁でポジティブ・アクションの奨励措置ですが、これは認定マークという次世代育 成支援法のような奨励策、あるいは税制上の優遇措置、助成金の支給なども検討すべき であるという意見、特に認定マークというのは有効なのではないかという意見もありま したが、片方で、次世代育成とは違う側面があって、基準の作り方が技術的に難しいと いう意見もあれば、もっとPRのほうに力を入れるべきだという意見もあったかと存じ ます。  6のセクシュアルハラスメント対策については、まず規定の強化について議論があり ました。現行法の抑止力を強めるために、いまの規定の配慮義務規定から義務規定にす べきではないかという意見がありました。ただ、それに対して、セクシュアルハラスメ ントがあってはならないのは当然だけれども、会社がどこまで関われるか困難な場合も 多いので、現行の指針のPRに努めることが重要との意見がありました。  セクシュアルハラスメントの定義についてですが、「性別役割分担意識に基づく言動 も含めるべき」というご議論がありました。ただ、それについては、本来のセクシュア ルハラスメント自体が不明確になるということでの反対のご意見もありました。また、 この対応の中で、ポジティブ・アクションの中でやっていくことではないかというご意 見もありました。  「その他」ですが、セクシュアルハラスメントの救済の対象、現在女性だけですが男 性も対象とするとともに、申し出を理由とした不利益取扱いの禁止やプライバシー保護 も法律に規定すべきといったご意見も示されています。資料No.5の説明としては以上 です。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。ただいま事務局から、均等分科会における主な意見をまと めて説明していただきました。このうち、「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの 禁止」と「間接差別の禁止」については本日はご討議いただかず、改めて日程を取って ご議論いただくこととします。それ以外の論点についてご討議いただきたいと思いま す。まず、「男女双方に対する差別の禁止」についてお願いします。いかがでしょう か。 ○岡本委員  ここにも書かれていますように、男女双方に対する差別を禁止する法律に改めるべき だということについては、多分議論の中で相違がなかったのではないかと受け止めてい ます。その上で、法改正の基本理念、目的、いろいろ言い方はあるかと思うのですが、 前回の議論は相当いろいろな意見が出たかと思います。改めて、私どもとしての意見を 申し上げておきたいと思います。今回の法改正の基本的な考え方の中に、「仕事と生活 の調和」という考え方を組み入れていくべきだということを改めて申し上げておきたい と思います。  前回の議論の中でも、雇用のステージにおいて仕事と生活を両立させていくというこ とは平等を実現させていくための基盤になる。そういった考え方については異論はなか ったのではないかと思います。  ただ、一方で育児介護休業法の中で、育児や介護に直接は関係しなくても、個人の生 活まで含めて、育児介護休業法の射程を広げたらどうかというお話があったかと思いま す。よくわからないのは、法律の基本理念というものがこの法律は1つだけ、この基本 理念はこちらの法律にあるから、この法律はまた違うものというように分けられる。そ のような簡単な分け方ではなかったのかもしれないのですが、そういうことなのか、前 回の議論を聞いていてもよくわからなかったのです。  働く者にかかわる法律の基本精神のすべてに、「仕事と生活の両立」という考え方が 入ってもいいのではないかと思います。現実として、まだまだ性別役割分担意識が強い この国において、残業や休日出勤、転勤などを前提に働ける労働者、多くは男性です。 その働き方を基準に、配置や業務の与えられ方、雇用管理が行われているというのが実 態ではないかと思います。  こうした働き方をベースにしている限り、なかなか男女の平等というものは実現して いかないと思います。均等法の改正の歴史の中でも、企業側は女性労働者が男性並みに 働けるなら、平等を考えようという姿勢だったと思います。「男性並みに働ける」とい う考え方は、家庭生活や地域での生活基盤を持って、そこでの生活者としての役割を念 頭に置いていない働き方なのではないかと思います。シリーズで「女性の働き方」、審 議官もお出になっていましたが、大変興味深くシリーズを読ませていただきました。諸 先輩方が長い歴史の中で、さまざまな努力をされていまの制度になっている。また、い まの考え方になっているということは十分わかりますし、これをさらに発展させていく ということが必要だと思います。  その中で、いまある働き方の前提を変えていくというか、その前提をそのままにして はこれ以上の均等の形になかなか実態としてはなっていかないのではないかということ を感じました。  「男女の職場生活と家庭」、「地域生活の両立」という考え方は政府からも示されて います。確か男女共同参画基本法の見直しというか、中間報告が出ましたが、その中で ももちろん大きなテーマに扱われています。時代に合わないということではなくて、い まだからこそ調和という考え方、基本理念というものを均等法に置いていくことが改め て必要なのではないか。ちょっと長くなりましたが、そのように思っています。 ○佐藤(博)委員  いまの点は多分、私が欠席したときだと思います。私の意見は、仕事と生活の調和が できるような働き方を時間管理の面、育児・介護、さらに能力開発や自己啓発などある と思うのですが、非常に大事だと思います。それを前提とした上で、均等法の中に入れ るかどうかといったときに2つ問題があると思っています。1つは法律の目的に書くと すれば、それを実現するためにそれぞれいろいろな法律の規定ができてくるということ ですから、もし入れるとすれば、まず1つは大幅に均等法を変えるということだと思い ます。極端なことを言うと、育児介護休業法とセットの法律にする。それはあり得るか と思います。そういうことを考えるならば別ですが、目的だけ入れるというのは法律の あり方としてどうなのかということが1つです。  もう1つ、2番目は、一緒にセットするといったときにも問題があるだろう。均等法 と例えば育児介護休業法、仕事と生活の調和を考えた法律を考えたときに、相当性格が 違うものだろうと思います。均等法は男女差別をなくしていくということが目的、例え ば差別してはいけませんということなのです。生活と仕事の調和というものはいろいろ な選択肢を認めていく。どれが駄目ということではなくて、こういう働き方しか用意し ないということをなくす。  例えば男性の働き方、男女役割分業を前提とした働き方をなくしていかなければいけ ない、それが駄目というわけではないのです。それしかない働き方が問題なのです。多 様な働き方を認めていくということであって、「この働き方は駄目です」という法律の 趣旨にはならないと思います。多様な選択肢を認める。仕事と生活のいろいろな選択肢 を認めていくような仕組みに持っていく。  育児介護休業を取らなければいけないのではない。取りたい人が取れるようにという のが仕組みだと思います。ですから、これはわかりませんが、法律の性格も相当違うの ではないかと思います。2つの点で非常に大事な点だということを理解した上で、均等 法の目的に入れるというのはいかがなものか。ただ、無理に一緒にする場合でも、相当 性格は違うものだろう。それを1つにするのは無理があるのではないか。これは法律の 専門家ではないのでわかりません。私は性格の違う取組だと理解しています。 ○林委員  「仕事と生活の調和」というのは現時点で促進が非常に難しい。大事だということは 非常によくわかります。ただ、「生活と仕事の調和」と言った場合の「生活」というの はどのようなものを概念として考えているのか。そこがまだ固まっていない感じがしま す。生活そのものが多様化している現代において、漠としたものを入れたときにこの法 律の実効性がどのようになるのだろうかというところにちょっと危惧を感じています。  先ほど、佐藤委員がおっしゃったように、「生活と仕事の調和」というのはこの法律 だけではなくて、それこそ労働時間の問題など、いろいろな法律なり制度なりが合わさ ってやっていっても、さらに認識というか、社会的なジェンダーへの認識というものに ついてなかなか世の中が動かないという問題があって、このような労側からの提案にな っているのだろうと思います。  先ほどおっしゃったように、確かに1つの法律に1つの基本理念でなければいけない ということはないと思います。いくつかの法制度、いくつかの法が重なり合って実現し ていくべきものであるというとき、均等法の中で何を実現していけるのか。生活という ものをどういうものとして捉えて、それと調和を図るために、法の実効性の問題として 何ができるのかということを考えると、いまの時点ではそれが曖昧なだけに、入れても 実効ある措置につながっていけるのだろうかと考えています。  均等法の中には基本法的な面もあるとは思いますが、「男女共同参画社会基本法」の ような完全な基本法ではないわけです。ある程度、その法律に基づいて、実効性を高め ていくというところが重要視されているという段階です。これを入れることによってど のように動くのか。それがいま不透明な段階で入れる、議論をせずにただ入れるという のでは、いまの段階ではまだ胸にストンと落ちるものがないというのが感想です。 ○今田委員  これはとても難しい問題だと思います。均等法20年の区切りで、さらに次の時代へ向 けてどうリコンストラクトしていくのかという基本的な問題ともかかわって、非常に重 要な問題であると思います。  いまお伺いしていたら、それぞれに納得できる点もあるし、よく理解できないという 点もあります。私自身が最初にプレゼンスすると、どちらかというと「仕事と生活の調 和」を均等法のリコンストラクションの基本的な軸として据えることが戦略上いいと、 いまは思っています。これからの議論の中で、その考え方は適切でないということにな るかもしれません。  私は法律家ではありません。社会学という、曖昧模糊とした、いろいろなものを取り 込んで研究する。そういう特性からかもしれないのですが、法律論としては均等法を男 女も含めた、さらに差別法として徹底したクリアな法律として、平等法のような形で今 後作っていく。そういう視点から見れば、こういうややこしい、曖昧なものをいろいろ 入れ込むというのは法律としての性格、実効性という意味から言えば好ましくない。素 人ながら、そのような法律家の先生方の考えはあるのかなと思います。  現在、この均等法というのはそれほどクリアではない。いろいろなものを含んでいま すし、いちばん最初、スタートの時点では日本の均等法の特徴である均等という問題と 女性の就業支援、そのような二輪でスタートしてきた。そこに、まさに「仕事と生活の 調和」という基本原理みたいなものが置かれた。そういう性格を日本の均等法は持って スタートしたという経緯があったと思います。それが1つ、日本の豊かな知恵であった のだろうとその部分は高く評価します。  その後の改正において、いろいろな経緯の中で「仕事と生活の調和」という目的意識 みたいなものがほかの法律、「育児介護休業法」という形に結実したという位置づけ で、均等法から解離していくという運命であったのかもしれません。  やはり、現状でもまだ性差別をなくし、男女の均等を実現する。そのためのいろいろ な手段、差別ができてそれを禁止するという側、もう一方では均等を実現していく手段 の側にはさまざまなものがある。この中でもポジティブ・アクションもあれば、セクハ ラもあれば、いろいろな手段を均等法そのものは使っているわけです。  そういう発想からいうと、「仕事と生活の調和」というものをしっかり位置づけるこ とによって、さまざまな働き方、平等を実現するためのいろいろな提案、新しい方向へ 向けていろいろルールを作っていくときの基本になる基本軸のようなものとして、「仕 事と生活の調和」というのはやはりここにしっかり置いておくべきではないか。これを なくした場合に、実現をしていくという具体的な実現手段の側にいろいろ問題、弱点を 持つことになるであろうと思います。法律の方から言えば、法律体系としてのすっきり とした体系を持ち得ない、弱点になるという懸念もあるかもしれません。まだまだ重要 ですし、この原理はその他の法律の中でいま補強されつつあるわけです。「仕事と生活 の調和」というのは時間の観点、基準の観点、いろいろな観点でその視点が労働の基本 的な考え方として、少しずつ地盤を固めつつあるときに、ほかにあるからここはいいと いうのではなく、逆に均等法こそこういう問題を提起している、法律的な根拠となるよ うな形で原理を打ち出すということが必要であると考えます。 ○川本委員  私からはまず男女双方の差別禁止にするか、いまの「仕事と生活の調和」の話、両方 でご意見を申し上げたいと思います。まず、男女双方の差別禁止というようにするかど うかなのですが、前にもちょっと申し上げましたが実はまだ慎重な議論が必要かなと思 っています。つまり、男女双方の差別禁止ということになった場合に第9条の扱いをど うしていくか。ポジティブ・アクションがありますが、これをいまのままの形で残すの か、あるいは男女双方の差別になるわけですから第9条をなくすのか。あるいは、男女 双方のポジティブ・アクション概念に入れていくのかという議論がないといけないだろ うと思います。ちょっと連動しているなと思っていて、まだ慎重な議論が必要なのかと 思っています。  特に、男女双方になった場合に理屈はわかるのですが、その理屈と実際現場におりた ときにどういう実態になっていくかというのも、もうちょっと見極める必要がある。そ れを考えないと、実態ともし乖離するような話となると、地に付いた法律とならないか なという心配もちょっとあります。したがって、もう少し慎重な議論を行っていきたい と思っていますし、私どもとしてももう少し企業の管理者の意見も聞いてみたいと思っ ているところです。これが1つです。  もう1つ、「仕事と生活の調和」の話ですが、これは実は男女の性差という問題とい うことではないのではないかと考えています。併せまして、実はいま多様化ということ が言われているわけです。あくまでも、多様化の中で「仕事と生活の調和」の話もされ るべきであって、画一的に求めるような話ではないと思っています。したがって、やは り多様化の切り口、多様な働き方もそうですし、それについて働く皆さんのニーズもい ろいろある。一生懸命、うんと働きたいという人もいれば、家庭重視でいきたいという 方もいらっしゃる。それはさまざまです。本来、そういう切り口から考えていく話かと 思っています。したがって、少し均等法とは性格を異にしますし、逆に言えば入れるべ き話ではないのではないかと思っています。以上です。 ○前田委員  いま、川本委員がおっしゃったこととほとんど同じことかと思います。まずいちばん 最初の項目、「男女双方に対する差別の禁止」ということですが、これは企業の中で一 生懸命ポジティブ・アクションなど、差別をなくそうということをやっている担当の人 の意見を聞けば、やはりまだポジティブ・アクションについての措置をする必要がある 状況ではないかと思います。  この間も、世界の中での均等度の順番が新聞のコラムに出ていました。あれを見て も、まだ世界の中では非常に順位が低いということだと、いま日本の中でいちばん進め やすいやり方を取っていかなければいけないと思います。私も川本委員と同じように、 第9条の意味合いというのは非常に重いものだと思っています。是非、慎重な議論をし たいと思っています。  「仕事と生活の調和」ということですが、何が調和の状態なのかという概念も突きつ めて考えると、なかなかわからないところがあります。企業に「こういうものを守って くれ」と言うとすれば、これはある種のルールブックですから、きちんとした基準がな いとなかなか進めにくい。確かに、先ほど林委員もおっしゃっていましたけれども、多 分基準法の中の時間の管理もある種、仕事と生活の調和、仕事と健康の調和ということ を考えている部分だと思います。いろいろな法律が守られて、その上で「仕事と生活の 調和」がある。均等法などに「調和」を限定して入れるのもいかがなものかという気も します。やはり、基準がはっきりしているものでないものを、政策として、「仕事と生 活の調和」を言うのは一向にかまわないし、是非そうしてほしいとは思いますが、法律 の中に書き込むというのは非常に難しいのではないかと思います。現場の者も、法律の 意味がかえってわかりにくくなってしまうことがあるのではないかと思います。 ○片岡委員  法律論が難しい、ということは前回もそうだなと感想を持ちました。ただ、働く1人 として思うのは法律の姿がゴールというよりも、その法律をどう使うかが大変重要で、 その法律がどういう平等を基盤にしているかということがいま、「仕事と生活の調和」 を法の理念・目的に入れたいという趣旨です。  非常に単純に、自分の考えを言います。男女平等と言う場合、比較される平等基準が 問題となって、例えば過労死や自殺をする。そこまで至らなくても、家族的責任を履行 することが不可能な働き方をする男性と女性が平等になることが、求められる平等では ない。「仕事と生活の調和」を法の理念、目的に入れることの1つの背景として考えて います。  均等法ができて、当時にぎわったのは総合職や一般職でした。私の記憶では、当時男 性並みの働き方、あるいは成果を上げる仕事の割当が不平等だけれども、男性並み以上 に働く総合職の女性というように、実情が追い込まれていったということがあったよう に思います。現在は強化の方向に向けて均等法の議論をしたいわけですが、いまや女性 は正社員が半分以下ということで、労働時間の長いほうに一方の正社員女性は置かれ、 一方で戦力と言われながらも、パートタイマーのように労働時間が自分の意思ではなく 短くされるような状況に女性自身が分断されている。こうした均等法がいまの枠組みで は解決できない、さまざまな問題が出てきている。  この間、連合が「政策討論集会」というものを開きました。その中で労働時間の現状 に触れていて、例の時短促進法も改正という方向になりましたが、2004年の平均1,840 時間というのは、実はその中身はいわゆる一般的な労働者2,021時間、パートタイム労 働者が1,176時間、実態は長時間労働化しています。週60時間以上働く長時間労働者 と、35時間未満の短時間労働者の割合がともに高まっている。いわゆる二極化を示して いる。  その多くが男性とは限定はしません。女性もそこに巻き込まれているというか、もち ろんそういう状況にいるという事実を踏まえています。どういう平等を求めるのか。も う、いままでのような男性の働き方を基盤とした男女平等では、男女ともに良い仕事は できないと思います。  目的・理念に入れるという効果は、どういうところに反映できるか、私は考えている のは基本方針の施策を講ずる。先ほど、政策は積極的にと前田委員はおっしゃっていま したが、やはり明記されることを受けて均等法の基本方針、対策、施策の中にも、労働 時間の問題などにも触れるというか、求めることはできると思いますし、一方で他の法 律に反映させることもできると思います。先ほど、今田委員が今日の時点でというか、 「基本軸」とおっしゃったわけですが、私は逆に今田委員に、今後労働時間法制の研究 会に委員として入られると伺っています。是非、今後の労働時間法制の中でも、仕事と 生活の調和が図られる議論を進めていただきたいと思っています。是非、応援をさせて もらいたいと思いながら聞いていました。  性格の違うものを入れる・入れないというような切り口というよりも、どういう平等 を目指すのか。そして、その平等の実効性は均等法で実現する。均等法の目的には、基 盤である「仕事と生活の調和」を入れる。そういう関係で入れることは可能ではないか と思います。長くなりました、申し訳ありません。 ○佐藤(博)委員  先ほど、男女双方に対する差別のところで、使用者側の方が言われたように第9条と のセットで考えることだろうと思います。多分、組合側の方も使用者側の方も、現状で 第9条をなくすということではないと思います。例えば、管理職に占める女性比率を見 れば、この状況のままで積極的是正措置をやらなくていいとは多分使用者側も思わない だろうと思います。ですから、第9条は当分は残すことになると思います。  ただ、そうした上で、いま双方に対する差別の禁止にするかどうかという議論だと思 います。そうしたら、自動的に第9条をなくすという議論では現時点ではないだろうと 思います。多分、労使とも第9条は残す必要があるだろう。違ったら言ってください。 第9条は残した上で、いま男女双方に対する差別禁止を入れるかどうかというのが1つ の議論の方向だろうと思います。そこは整理したほうがいいと思います。まだまだそう いう事案があるかどうかというと難しいですが、男性の職業分野も確かに変わってきま した。セクハラの問題はいま女性に対してだけですが、当然、男女双方になれば男性に 対してもということが出てくると思います。そこをどうするか、というご意見を伺うの がいいだろうと思います。  均等法のことは、具体的に法律として均等法に何を書くのか。でも、伺うとそこは変 えないという感じがするのです。それはほかの法律でやってください。ならば、労働時 間のことを均等法にどう書くのか。基準法などに書くという手はあると思うのですが、 書くと言われて均等法をどう変え得るかだと思います。伺っていて、多分それはないだ ろう。そうすると、ちょっとどうなのかという感想です。あまりここで議論してもいけ ないので、この辺にしておきます。 ○横溝分科会長  これは前回も相当議論がありまして、両立が大事だということは誰も否定する人はい ません。ただ、これは均等法に盛り込むかどうかの問題だと思いますが、先ほど佐藤先 生がおっしゃったように、各条文と目的との合致です。それは法律の仕組みとしてはか なり重要性があると思うのです。先ほど林委員が男女共同参画社会基本法のことを言わ れたと思うのですが、そこに家庭生活の活動と他の活動の両立は第6条できちんと謳っ ているので、それが基本法的な性格です。  佐藤委員がおっしゃったように、各条文と目的との合致を無視するわけにはいかない ので、むしろこれからの議論で、男女双方に対する差別禁止の内容を少しやりまして、 それから帰納的に目的へといったほうが、現実的な議論になると思うので、差別禁止の 内容についてのご議論も少ししていただいたらと思います。両立が大事だというのは皆 さんの共通認識ですから、それを条文上でどうするかを念頭に置いて、少し具体的な禁 止の内容についてご意見があればいただきたいと思います。 ○岡本委員  その前に1つだけ質問があるのですが、よろしいでしょうか。ここの考え方として、 目的と理念の違いを教えていただければと思うのですが。 ○横溝分科会長  条約というのは理念と言いますが、普通の場合、条文というのは目的だと思います。 今田先生、どうでしょうか。 ○今田委員  目的だと思います。目的と各項目立ての間に、一致性がなければいけないと思いま す。そのときに、その目的に仕事と生活の調和が入ることによって、後の項目との間に 関連性がないということがよくわかりません。つまり、そういう理念に基づいて、コロ ラリーとして出てくるステートメントが、この後のいろいろな条文の中に何らかの形で 反映される形であれば。 ○佐藤(博)委員  具体的に両立というのは目的になるので、そのためにどういう条文が書けるかという ことになります。だから、差別禁止についてはそれぞれ書いてあるわけです。「両立を 実現するのだ」と書いたときに、何を書くかです。 ○今田委員  両立を実現するという。 ○林委員  例えば育介法に「子育てのときに育児休業を取りやすくしなさい」と書いてありま す。そういうのはわかるのです、それは大事だと思うのです。 ○横溝分科会長  わかりやすく言うと、労働基準法で労働時間の制限がありますが、それは人間らしく 暮らすための労働基準法の労働時間の制限です。しかし、労働基準法には「両立」とい うのは書いていません。だから、基本的なそういう目的を全ての法律に書く必要がある のか、書かなくてもいいのか、書くと蛇足になってしまうのか。そこの問題をそれほど シビアにせずに、非常に大らかな気持で、大事なことだから書いてしまっていいのか。 それはいろいろな考えがあると思うのですが、どうしても我々はいままでの既成概念に とらわれて、もう少し禁止の内容等を議論して、皆さんで納得する合意を得たいと思い ますので、あまりここで早急に対立点を鋭敏にしないでやってください。 ○山崎委員  この均等法は、以前女性差別防止法くらいの厳しい追及が労働側からあって、「法律 をそのようにしたほうがはっきりするのではないか」というようなご意見がありまし た。それまで、かなり追及をした、厳しい差別の防止をしようという法律であったとい うことです。いまは女性の社会的進出が増えて、第9条の議論が出てきているのだと思 います。  それだけの目的がちゃんとした個別法なのですから、仕事と生活の調和というのが入 ったら、目的そのものが全然違ってしまいます。これは雇用の差別の関係が目的ですか ら、ここに入れることになると目的は全部条文に流れますから、入れること自体が少し 意味が違うと思います。そういうものを目指さなければいけないというのはわかります が、法律の中に入れるというのは違うと思います。  あとお聞きしたいのですが、「仕事と生活の調和」というのはどういうところから出 てきたものなのですか。 ○片岡委員  いまは家庭というより、地域生活そのものも含めて考え方が広がって、家庭ではなく て、仕事と生活という考え方は広く一般的に議論されているものだと思いますが。 ○山崎委員  研究会報告書も出たようですが。 ○片岡委員  それには入っていないのではないですか。 ○山崎委員  それから持ってきているということではないのですね。 ○横溝分科会長  違いますね、今日皆さんにご議論いただきたいのが、「ポジティブ・アクションの効 果的推進方策」と「セクシュアルハラスメント対策」までも、時間の関係もありますが 可能であればご意見をいただきたいと思います。この両立の問題は大きな問題として、 また深く考えていただくことにして、禁止の内容について、いかがでしょうか。 ○片岡委員  差別禁止の内容の中で、連合のほうから意見として出しているものに、指針上の雇用 管理区分の削除を出しています。すでにこの間の審議会でも意見を申し上げてきたの で、重なりますがこのテーマになったので、もう一度意見を申し上げたいと思います。  連合の要求の理由としては、問題意識としては均等法ができて、男女別の雇用管理制 度が多く導入されたと見ています。結局、雇用管理区分に基づくコース別雇用管理に、 もともとあった男女別雇用制度が姿を変えたということで、差別自身は温存される現状 があると考えています。もう一方で、どのようなものが差別に当たるのかという考え方 を均等法の指針で示す必要はあるので、現在指針に書かれている「雇用管理区分ごとの 」という部分については、その考え方を廃止すべきだというのが理由になっています。  これはコース別雇用管理のことが中心になりますが、連合の実態調査でも、過半数の 回答の中で「総合職はほとんど男性」という実態になっていることからも、依然として 差別の温床になっていることが伺えると思います。  国際的には、いままで裁判で闘ってこられた方たちの問題提起や結果を受け止めて、 女性差別撤廃委員会からも勧告が出されていますが、それをどうしていくのかという点 でも、この「雇用管理区分ごとの」というのは問題になると思います。他にもいくつか 理由はありますが、いま均等法の指針にある雇用管理区分に基づく現行の考え方を、差 別禁止の内容の1つとしては具体的にすべきだと思います。 ○川本委員  前回も委員の方たちから意見が出て、今日いただいた「主な意見」に書かれています が、私は前回発言を控えましたので申し上げたいと思います。  まず2つ目の○のところですが、「仕事の与え方も含め」ということがあります。基 本的に仕事の与え方は、そもそも男女の問題ということではないと考えています。した がって、同性の中でも個々人の能力、あるいは契約の方法によって仕事は変わっていき ますから、そういうことで自ずと異なってくるのだと思っているので、この概念を入れ ることについては賛同できません。  3つ目の○で、「雇用管理区分は異なっても同じような仕事をすることは多々あり、 指針が差別認定を狭めている」ということですが、これも仕事の内容の比較という面か ら見ると、一般的に言えば、一時点の仕事だけではなくて、正規従業員の話ですれば非 常に長期的な視点から、仕事の与え方、人事処遇制度、雇用管理区分自体も設計されて いると考えています。したがって、コース別そのものがという話ではなくて、コース別 の中で非常に偏りのあることを不合理にやっている会社があるとするならば、それは非 常に問題であるという認識はありますが、この雇用管理区分のところについても特に見 直しを検討する必要性はないように思っています。  あくまでも思うのは、現行法では配置や教育訓練も差別的取扱いを禁じているわけで して、機会を均等に与えることを求めているのがそもそも論だろうと思っています。そ れが最終的に平等へとつながっていくというのが本来的な考え方だと思っています。ま た、第5条のところで「差別的取扱いをしてはならない」とすべきだというご意見です が、これについても、私は現行法のままでいいと思っています。以上です。 ○岡本委員  第40回だったか、第42回だったか覚えていませんが、アンケート結果を連合資料とし てお出ししたかと思います。いまの話で、実態から言えば、仕事の与え方などに関して 意図的な扱いをしているということが調査の中では表われているのだと思います。例え ば女性が何人かいて、私はその仕事の与えられ方をしていないけれども、Aさんはされ ているということに対して、そのアンケートの中で、仕事の与え方に差別があることを 答えることはあまりあり得ないわけです。合理的な理由もない中で、常に男性はこうい う仕事を与えられるけれども、自分たち女性は常に補佐的な形でしかない、または、男 性は自分の仕事でなくても会議に参加することによって、情報を得ることもできます し、人材育成にもつながるから参加するけれども、女性は全ての会議に参加ができない とか、そういう実態があるからそういうアンケート調査になっていると思います。  仕事の与え方ということは、かなり細かいことも含めて、どのように整理をするのか は難しいことだと思います。現状は、仕事の与えられ方によって業務における機会均等 が失われてしまうことになるわけですし、そのことが結果的に能力の育成につながって いかない、本人にそういう希望があってもそうなっていかない現実があるわけです。こ の問題については、最終的な結果の平等ということをおっしゃいましたが、そこにいく 前にすでにそういうチャンスが失われてしまっています。配属については禁止になって いますから、配属は同じところにさせますが、非常に巧妙な形で差別が行われている実 態はあるかと思います。それをどのように直していくのかということがなければ、この 問題の解決は難しいのではないかと思います。  連合のアンケートの中でも、特に雇用管理区分についても、そのこと自体を完全否定 するかどうかは議論があるかと思います。私はよく勉強していませんのできちんとした ことは申し上げられませんが、実際には入る段階でそういったことが行われていて、選 択の余地がなかったということもありますし、同じような仕事をしているのに、片やコ ース別管理ということで、総合職ではないということで差別をされている例は実態とし て挙がっているので、そういうところをどのように変えていくのかを改めて議論をして いただきたいと思います。雇用管理区分だけの議論をしても相当な時間が経ってしまう と思うので、この後もう一度この部分については議論の場を持っていただきたいと思い ます。 ○林委員  雇用管理区分を廃止すべきという意見に対しては、それで賛成と思い切って言ってい いのかはわからないのですが、現行の雇用管理区分が募集・採用段階から固定的にずっ と使われてしまって、職業能力が開発されるべき若い世代、20歳代など家庭責任などが まだ発生せず、非常に働ける時代においても、雇用管理区分に従った職業人生しか送れ てしないという、そういう硬直性のところに私は非常に疑問を感じています。  もちろんコースの転換等もなされるようにだんだんに変わってきているわけですが、 現実には雇用管理区分の中で募集・採用をなされ、それに従って最初の段階から、その 中で研修、教育、その他を受けられないという段階で、その人の職業人生がほぼ既定さ れてしまうことについて、もう少し弾力的な運用ができないものなのかという気がしま す。会社のほうでは要員管理の必要性を主張されているようですが、長いサイクルで見 て、要員管理を考えていく方法ができないのかなということを、雇用管理区分を考えて いくときにもう少し柔軟な方法をもって、この問題に対処できないのかと思いました。 ○横溝分科会長  時間の関係もあるので、初めに申し上げたポジティブ・アクションとセクハラの議論 には入らないで、差別禁止についてもう少しご意見があれば伺いたいと思います。 ○片岡委員  いま林委員のおっしゃったことと実態が一致しているのでご紹介するのですが、仕事 の与え方に関して、前回改正のときに産別で実態調査をやりました。あまり参考とする ほどのボリュームではないのですが、同期男性と比べて不利と感じる内容をみた中で は、30歳未満の回答が、「仕事の割当てが不利と感じる」という結果が出ています。先 ほどのお話の20歳代から職業人生を既定されてしまうというのは、もしかするとコース 別雇用との関係かなとも思いつつですが、仕事の割当てに関しても不利と感じている、 その積み重ねで、次の30歳代以上は、同期の男性と比べた場合に、責任者や役職者への 登用が不利だと言っています。年齢を限らずに各層が答えているのが、「管理職からの 期待が違う」と私のところで行った実態調査では出ています。仕事の割当てはそういう 意味でも非常に重要で、それ以降の仕事の意欲に大きく影響を与えています。職場の実 態で言えば、先ほど岡本委員からも会議への参加などの事例がありましたが、同じく実 態調査の中で出された声には、大きな仕事は男性ばかりに割り当てて、女性はサポート ということです。あるいは、これはセクシュアルハラスメントとも関係しますが、お茶 くみは女性の仕事という実態が相変わらずあるということがあります。同じ営業に配属 されても、男性は顧客セールスをするけれども、女性は受注した業務の手配などの後方 業務。数字はセールスをやる人だけで上げるわけではないのですが、明確に表われる数 字イコール評価という単純な図式。一方は細かい仕事の積み重ねで数字は見えにくい、 そういうことが評価として、仕事の割り振りの結果表われているということ。管理職へ の登用も然りです。  私自身も経験がありますが、営業に男性の新規セールス者を配置するときに優良顧客 を付けて配置することがあるのですが、女性の場合は初めから新規セールスでやれと。 これは偏見もあると思いますが、そういうことが上司から与えられていくということ が、どれほど働く人の意欲を削ぐかということでは、単純に配置だけではなく、仕事の 与え方が賃金面、処遇面にも大きく影響している。連合が要求しているように第6条に それを入れて、性別の差別はあってはならないとする要求ですが、これは大変重要な規 定として入れるべきだと思います。  もう1つありまして、先ほど雇用管理区分のところでCEDAWのことは申し上げた のですが、裁判の勧告なので、いちばん初めに判例をご紹介いただいたときに「参考に すべきでない」という意見があった記憶があるのですが、住友電工の裁判の和解では、 読んだものによれば、「和解案そのものに勧告が付いたという異例な取扱いだ」と書か れていました。これは国も訴えられたわけですが、その中で「雇用管理区分が異なる場 合であっても、それが実質的に性別による雇用管理になっていないか十分に注意を払 い、これらの施策を推進する」と、それと「調停の積極的運用」が裁判長からの和解勧 告の中にも入っています。ですから、国際的な動向、その裁判長の和解も国際的な不断 の男女平等への取組を受けていると理解しています。こうした裁判の和解勧告もきちん と受け止めて、これに携わった人たちの努力をどう具体的にしていくかという点でも、 雇用管理区分の問題は大いに問われて、これからもきちんと詰めた議論で進めていって いただきたいと思います。 ○横溝分科会長  差別を容認というか、意図的な雇用管理区分があるのかないのか、これをどう評価す るかという、それが大事だという意見をどこかで聞いたことがありますが…。  時間の関係がありますので、司会の不手際で課題があと2つ残っています、申し訳ご ざいませんでした。本日はこれくらいにさせていただきまして、署名委員を片岡委員と 川本委員にお願いしたいと思います。次回は6月3日(金)の14時から開催させていた だきます。本日はこれで終了させていただきます。ありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課法規係(7836)