05/05/18 中央社会保険医療協議会薬価専門部会平成17年5月18日議事録 平成17年5月18日 中医協薬価専門部会             第22回議事録 (1)日時   平成17年5月18日(水)10:02〜11:15 (2)場所   虎ノ門パストラル「鳳凰西の間」 (3)出席者  遠藤久夫部会長 星野進保委員 土田武史委員 村田幸子委員        対馬忠明委員 小島茂委員 宗岡広太郎委員(代理 松井氏)        松浦稔明委員        櫻井秀也委員 松原謙二委員 黒崎紀正委員 漆畑稔委員        向田孝義専門委員 奥田秀毅専門委員 内匠屋理専門委員        〈事務局〉        麦谷医療課長 赤川薬剤管理官 他 (4)議題   ○医薬品産業の現状について        ○その他 (5)議事内容 ○遠藤部会長  それでは、定刻になりましたので、ただいまより第22回薬価専門部会を開催いたし ます。  初めに、委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、宗岡委員が御欠席で、 代理としまして松井さんがお見えです。  なお、本日は、保険局長、公務のため遅刻あるいは欠席させていただく旨の連絡を受 けております。また、中島審議官も公務により少し遅れるとの連絡を受けております。 あと櫻井委員がまだ御着席になっておりませんが、特段の御連絡がないので、しばらく すればいらっしゃると思います。  それでは、時間の制約がございますので、早速議事に入りたいと思います。本日の議 題でありますけれども、前回お話し申し上げましたとおり、医薬品産業の現状につい て、専門委員より説明を受けたいと思います。  それでは早速、奥田専門委員、向田専門委員、御説明の方をよろしくお願いいたしま す。 ○向田専門委員  それでは、我が国の製薬産業と医薬品市場の現状について、資料に基づいて御説明申 し上げます。  まず、1ページでございますけれども、薬剤比率と薬剤費の推移について、10年間 の推移をお示ししております。平成5年には28.5%という薬剤比率でありましたも のが、昨今ではほぼ20%台に落ちついてきている。それで、薬剤費の方も、平成9年 あるいは平成10年、6兆8,000億円、6兆円というのがほぼ横ばいということ で、平成13年、14年については6兆4,000億円ということで、薬剤費は国内で 伸びておらないという状況がございます。  2ページ目でございますが、ひところ薬価差問題ということで非常に問題にされたこ とがございましたけれども、それも平成3年が23.1%ございましたが、平成15年 に至りましては6.3%という乖離率ということで、約4分の1まで薬価差は乖離率は 縮まったということでございまして、いわゆる薬価差問題というのはほぼ解消されたの ではないかというふうに我々は考えております。  3ページ目でございますけれども、外来薬剤費の対GDP比の推移ということで、な ぜ外来薬剤費かということにつきましては後ほどまた御説明させていただきますけれど も、日本の外来薬剤費の比率は、変動はあるものの近年では他国より低水準ということ で、ここにございます真ん中のブルーの太い線でございますが、92年から01年まで で1.0%から1.2%の間をほぼ上がったり下がったりしておるという状況で、昨今 では1.2%ちょっとというところでございまして、他国を見ますと、それぞれ上昇傾 向にありまして、特にアメリカにつきましては、92年から01年まで非常な伸びを示 しているということでございます。ドイツ、フランスにつきましても右肩上がりで来て いるという状況でございます。  4ページ目でございますが、外来薬剤費の国際比較につきまして、もう少し額的なも の等をお示ししたのが次でございまして、まず、外来の薬剤比率につきましては、日本 は15.4%ということで、フランスに次いで2番目ということでございますが、対G DPでは、先ほど申し上げましたように4カ国中一番低い。一番低いのは、その下の括 弧で示しておりますけれども、医療費につきましても、対GDP比では7.8%と、4 カ国、先進国中でも非常に低いと。ここをさらに下げようという財務省のお考えが聞こ えてきますけれども、やはりなぜ医療費について下げなくてはいけないのか、こんなに 低い中で立派に先生方の治療ということでやっていただいておりますけれども、もっと 増やしてもいいのではないかというふうに、我々産業では考えております。それから、 国民1人当たりの薬剤費につきましては、額的なことでお示ししておりますが、やはり この4カ国でも最低ということでございます。  次に、先ほど申し上げましたように、薬剤比率の国際比較について、まず、なぜ外来 なのかということがここに示しておりますけれども、欧米では、入院医療がすべて包括 化されておりますので、入院薬剤費が算出できないという状況でございます。したがい まして、薬剤比率は常に「総医療費(外来+入院)分の外来薬剤費」で構成されている という実情でございます。しかし、日本では御承知のとおり、おおむね入院薬剤費とい うものが算出可能なため、厚生労働省発表の約20%とされる薬剤比率は、「総医療費 (外来+入院)分の外来薬剤費+入院薬剤費」ということで構成されておるということ でございます。したがって、外国と日本の薬剤比率の構成要素は大きく異なっておりま して、これらの比率を国際比較することは全く妥当性を欠く、この部分で日本が高い高 いと言うのは当たっていないのではないかということでございます。  それから、先ほどお示ししたOECDのデータでございますけれども、OECDのヘ ルスケアデータでは、日本も外国も「総医療費分の外来薬剤費」という構成で比率を算 出しているため、国際比較にはこのデータを用いるのが妥当ではないかというふうに考 えております。  次に、世界の医薬品市場規模の推移でございますが、1994年から2003年で、 3つの時点をとっておりますけれども、1994年の時点では、世界の総市場が2,5 24億ドルだったのが、2003年では4,918億ドルと、ほぼ倍増しておりますけ れども、日本は、先ほど申し上げましたように、ほぼ10年間で6兆何がしということ で変わっておりませんので、世界でのウエートは、2割あったものが2003年では1 1%と、ほぼ半分ぐらいのウエートで、日本の市場というものは急激に縮小していると いうことでございます。  次に7ページ目でございますが、主要11社の2003年度の決算状況。これは、昨 今新聞等で今年の決算というか、2004年度の決算が出ておりますけれども、ちょっ と間に合いませんでしたので、昨年のデータでお示ししております。まず1つ、11社 の売上高の合計の増減額を見ていただきますと、マイナス167億円ということで、1 1社全体では減っておるということでございます。それで、営業利益の方を見ますと、 トータルでは644億円というふうに、11社合計では伸びておりますけれども、ごら んいただきますと、上の2社の方での合計で700何十億ということで、あとマイナス が来まして、トータルでそういう形になっておるということでございまして、ごく非常 に偏ったというか、ところでのデータが合計では反映されているということでございま す。  それで、タイトルに「(1)平成15年度の売上高、営業利益、研究開発費」と書い てございますけれども、この「研究開発費」というのは、ここの欄ではちょっと書いて ございませんので、これは消すのを忘れたということで、申し訳ございません。  下の表に行きまして、今申し上げましたのは連結表でございますので、国内だけを見 るといかがかということになりますと、国内売上高の11社の合計を見ていただけれ ば、ほぼ赤が多いところでございまして、トータルで国内は完全にマイナスという基調 でございます。  では、先ほどの営業利益、伸びておるというのはどういうところかというと、黄色で シャドーというか、掛けさせておる会社について海外売上高を見ますと、これらの会社 では、平成14年度と比べて平成15年度、海外売上高で非常に伸ばしておる。したが いまして、海外での利益が上の営業利益にほぼつながっているということでございまし て、日本では稼げませんが、海外でどうやらやっているという状況でございます。海外 売上高の比率も見ますと、上の5社、42.5%、35.1%、38.4%、52.4 %、48.6%ということで、半分近くを海外で稼いでいるという現実でございます。 先ほど申し上げました16年度の決算についても傾向は変わらないということでござい まして、やはり海外が好調なところはトータルで好調ということでございます。  次に8ページでございますが、製薬主要6社の今御説明申し上げました海外売上高比 率は、他産業と比べてどうかということを見ておりますけれども、6社の平均で海外売 上高比率40.7%ということでございまして。ホンダ、キャノン、ソニーにはちょっ と及びませんが、その下の松下、富士フィルム、東芝、三菱重工業、日立製作所あたり の水準ということで、国内の他産業の主要企業と比較して遜色のない水準にまで伸ばし てきているということでございます。  9ページに行きますが、世界売上ランクに占める日本オリジンの製品ということで、 2003年度では、上位117品目中13品目、約1割のウエートを占めるまでに至っ ております。ひところ日本の医薬品産業、要はカントリーオリジンしか開発していない のではないかということでございましたけれども、現在ではこの十数品目、上位117 品目中でも占めるに至って、カントリードラッグだけでなく、世界で通用する医薬品も やっと開発でき、販売できる状況になってきたということでございます。  次に、2003年度主要産業の技術貿易ということで若干お示ししますが、技術貿易 は、御承知のとおり、諸外国との特許あるいはノウハウなどの技術の提供及び受け入れ ということでございまして、医薬品産業は、全産業中、自動車、通信に次いで、技術輸 出の額は第3位ということでございまして、ここでもやはり医薬品産業は、国内での産 業で、海外へ技術輸出ということで貢献しているということでございます。  次に11ページでございますけれども、平成15年度の製薬協の売上上位14社を単 体で見ますと、利益が上がっている、上がっているというふうにおっしゃられるもとで ございますけれども、1つは、まず、右の上に書いてございますが、「人員適正化」と いうことで、平成11年には6万3,000何がしかおった従業員数が、平成15年度 では5万8,000人と、約5,000人、削減しているということでございます。そ れから、総務部門ですとか生産部門の分社化等で、管理部門費とか先ほど申しました人 件費を減らして原価低減を図っております。したがって、一番上の赤い部分でございま すけれども、平成11年では38.1あったものが、平成15年32.7ということ で、原価を低減して、さらに販管費の方も努力をして減らし、その部分を、研究開発費 それから利益の伸びにもつながっていますけれども、しているわけでございます。それ でR&D費の拡大ということで、そういうものを、厳しい中でも、右にございますよう に、平成11〜15年では研究開発投資を拡大しているという状況でございます。  次に、製薬産業の研究開発の特徴ということで御説明申し上げます。製薬産業の研究 開発はリスキーでありまして、多大な費用と時間の投資が必要ということでございま す。製薬産業の対売上高研究開発費率は、後ほど御説明しますが、日本の全産業中トッ プということで、研究開発に投資し、世界で通用する医薬品の開発を目指しているとい うことでございます。研究開発には多大な費用と時間の投資が必要ということで、この 中では「不確定性/不可測性と長期性」ということがございます。日本では、1品目当 たり260〜360億円の費用が上市までにかかっております。ちなみに、米国では8 億ドルということで、800〜900億円のコストをかけて開発されているということ でございます。それから、これも後ほど御説明しますが、1品目、化合物を見つけてか ら上市するまでに9〜17年かかっているということでございます。次も後ほどお示し しますが、合成化合物の上市の確率というものにつきましては、発見から製品になるま でに約1万2,000分の1の確率ということでございます。それから研究開発、これ は16年、産業全体では8,837億円ということで、情報通信機械器具、自動車、機 械に次いで、額としては4位でございます。それから比率につきましては、下に書いて ございますように、医薬品産業全部を並べますと8.4%ということで、これは全産業 中トップ。ちなみに、製薬協の上位14社だけを見ますと、14.3%の研究開発投資 を対売上高で行っているということでございます。  13ページに参ります。先ほど御説明申し上げました期間とそれから確率の説明でご ざいますけれども、これは製薬協の会員延べ88社の1999〜2003年でアンケー トというか、とった実績でございますけれども、まず、化合物が最初に44万3,65 5個見つかり、その途中、前臨床の開始決定のところで既に約2,000分の1の品目 まで減る、それから臨床試験の開始ができるのもまたそこから減るということで、承認 申請に行くのもまたその途中でドロップアウトするということで、最終的には、承認取 得に至ったのは44万3,000何がしの化合物中36ということでございまして、先 ほど申し上げました累積の成功率といたしましては、1万2,000分の1の確率とい うことで、不確実性の中での研究開発を続けているわけでございます。  14ページでは、開発費用とスピードの国際比較をさせていただいておりますが、こ こでは、データがとれました日本オリジンの薬ということで、感染症薬と糖尿病薬につ いてのみちょっと見ておりますけれども、1症例当たりの費用というのは、日本は欧 州、米国と比べて倍ぐらい費用がかかっておるということでございます。それから、症 例の集積でございますけれども、1施設1月当たりの症例数を見ますと、日本を1とし た場合に米国では18ということで、非常にデータがとりやすい、日本では非常にその 辺がとりにくいということでございます。研究開発の困難ということはこの辺にもあら われているというふうに考えております。  次に、研究開発費の日米格差の拡大ということでございますけれども、1992年で は、日本では2億3,500万ドルでございましたのが、その時点ではアメリカでは7 億9,800万ドルと、3.4倍でありましたけれども、近年ではそれが差が拡大し、 ここにお示ししますように、5.6倍の格差ということで研究開発費の格差は広がって いるという状況でございます。  それから16ページでございますが、こんな中で製薬業界も、やっとと申し上げてい いのかどうかありますけれども、再編というものが始まっておりまして、先ほど申し上 げました増大する研究開発コスト、この負担に耐えるということで、国内においても大 手企業同士のM&Aが活発化しているということでございます。お示ししております2 001年にはウエルファイドと三菱東京製薬が合併し、さらに2002年には中外がロ シュとの提携というか、したということでございまして、今年の4月には山之内と藤沢 が合併してアステラス製薬が発足し、さらに本年の10月には大日本製薬と住友製薬が 合併予定、それから三共と第一製薬が本年の10月に持ち株会社を設立し、2年後、2 007年には医薬品事業の統合を予定されているということでございます。  17ページでございます。以上のことを総括させていただきますが、先ほど御説明し たとおり、日本では近年の薬剤費抑制策の結果、薬価差は大幅に減少し、薬剤比率も大 きく低下いたしましたけれども、医薬品市場の先進国中における相対的なポジション は、薬剤費が伸びておらないということで著しく低下しているという状況でございま す。  国内市場が伸びない中、製薬企業はコストを圧縮しながらもR&D投資を拡大してい るということは、御説明申し上げたところでございます。  その結果、有力な新薬を得てグローバルに事業を展開している企業は利益を拡大して いるという状況でございます。  しかしながら、医薬品の研究開発は、先ほど御説明しましたように、成功確率等を含 めリスキーでありまして、その期間の長期化とコストの増大傾向はさらに強まりつつあ るということでございます。  産業としてのさらなる国際競争力強化のためには、研究開発を阻害せず、画期的な新 薬創製を促し、その薬価上の評価を十分にすることが必要であるというふうに我々は考 えております。  つけ加えまして、先ほど御説明しましたように、国内市場が既に横ばいになっている 中で、さらにそれをマイナスにするような抑制策は、日本に基盤を置いている我々医薬 品産業としては受け入れがたいということでございます。  以上が、「我が国の製薬産業と医薬品市場の現状」ということで御説明させていただ きましたが、次に、2枚物をおつけしておりますが、これは、4月20日の時点で厚労 省の方からお示しされました「現行の薬価基準制度」という項目について我々が考える ところについて、本日も、中医協薬−1で「現行の薬価基準制度について」という紙が 配られておりますけれども、その項目について若干御説明させていただきます。  「現行の薬価基準制度」の7ページに、「新医薬品の薬価算定方式」として原価計算 の方法が載っておりますけれども、これについての我々の考え方でございますが、現行 の原価計算方式では個々の新薬の価値が反映できないということなので、特に適切な類 似薬のない革新的新薬の薬価算定においては、その価値を反映されるための仕組みの導 入が必要だというふうに考えております。  次に、中医協薬−1の4ページあるいは5ページに書いてございます「新医薬品の薬 価算定方式」の「基本的なルール」というところでございますけれども、ここにおきま しては、有用性の系統の加算においての加算の要件、つまり加算をするときの要件につ いては、さらなる要件の緩和と、それから加算率の見直しというものを我々としては要 望しておるところでございます。 ○奥田専門委員  続いて、「3.小児用製剤」について私の方からお話をさせていただきます。それ で、小児の製剤あるいは小児用量の設定ということは、お医者様方の方から非常に強い 要請があるわけですけれども、現行の薬価制度の下では、マーケットがもともと小さい ということ、それから治験の症例が非常に集めにくいということもありまして、なかな か小児用製剤あるいは小児用量の追加設定というのが現実には行われていないという状 況があります。それで、例えば成人用の製剤とは別に、小児用の製剤として、小児用の 製剤設計をしなければならないというふうなところで、なかなかインセンティブがない 中で、小児用製剤を追加承認を取るということは結構難しい話です。我々としては、こ こは企業負担だけでそういうことを進めるのではなくて、現行の薬価基準制度の中でい ろいろ加算率等の取り決めがありますけれども、その中で何らかの優遇措置をとって、 企業負担だけではなくて、国民の皆様と一緒にそういうことを実現する、そういう手立 てを考えるべき時期に来ているのではないかと、そういうふうに思っております。 ○向田専門委員  続きまして、「製薬産業が考える現行薬価基準制度の課題」の既収載品の関連でござ いますが、まず最初に、「特許期間中は実勢価格に基づいて引き下げるにも拘わらず、 特許期間が終われば実勢価格を超えて更に引き下げるという、先発品特例引き下げ」、 長期収載品の問題でございますけれども、これには大きな問題があるというふうに考え ております。特許期間中は実費償還であり、特許期間を超えたら実費償還ではなくなる というような制度については、大きな問題というふうに考えておりまして、ぜひこれは 廃止していただきたいというふうに考えております。  それから、「「売れれば下げる」という市場拡大再算定」でございますけれども、売 れるということは、世でというか、その製品がいいものというふうに判断されたことで 売上が伸びるということでございますけれども、だから下げるというのは、ちょっと納 得できないということで、市場拡大再算定については廃止をお願いしたいというふうに 考えております。 ○奥田専門委員  それでは、さらに引き続きまして、次に、横長の「先進各国の医療保障制度における 医薬品の価格設定の現状」という紙がついていると思いますが、これについて産業界と して調べた結果を簡単にまとめてありますので、それについてお話をさせていただきま す。  基本的には、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスですけれども、各国とも自由価 格ということであります。表を淡々と説明をさせていただきます。  「公的価格規制の有無、及び規制がある場合の内容」ですけれども、アメリカについ ては価格規制は全くありません。イギリスについては、原則として直接の価格規制はあ りません。ただし、個々の企業ごとに許容される利益率の上限規制があって、その範囲 内で企業が価格を自由設定をしております。企業ごとに許容される利益率の上限規制と いうのは、これは、企業と国と、というか、公的機関との話し合いの下で決められると いうことになります。ドイツについては、特許期間内の新薬については、原則として価 格規制はありません。自由価格です。そのかわり、特許が満了して後発品が出てくれば 参照価格が設定されます。ですが、そのときの販売価格は企業の自由設定ということに なっています。フランスですが、原則として価格は公定価格ですけれども、新薬の一部 にのみ企業からの届出価格がそのまま認められているケースがあります。それから、既 存薬の一部には参照価格制度を設定されております。  「新薬の価格設定」の方式といいますか、をどういうふうにしているかということで すけれども、大体これは、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスともほとんど一緒で して、日本ともある程度一緒です。類似薬・類似療法の価格・費用を考えて決める。類 似薬・類似療法との有用性・経済性比較をして決める。それから新薬自体の原価・研究 開発費等に基づく採算性を考えて価格を決める。これはアメリカの例ですけれども、イ ギリスもほとんど一緒です。だから、その個々の企業について許されている利益率の範 囲内で、今アメリカと同じようなことを考えて企業が価格を自由設定しております。そ れからドイツについても一緒です。それからフランスですが、革新的と認められた新薬 については、企業から価格を届け出てそれが認められるということであります。それ以 外の新薬については、類似薬の薬価、新薬の原価、販売予測、医療上の有用性、外国価 格等に基づき、政府の委員会と企業が話し合いをして価格が決められております。  それから、「既存薬の価格見直し」ですけれども、アメリカにおいては、企業が任意 にやっている。それから、イギリスでは許容利益率の範囲内で企業が決めている。原則 5年ごとに薬価の見直しをしております。それからドイツですが、販売価格は企業が任 意に改定をしています。参照価格は、グループ内の品目の販売価格に基づいて年1回見 直しがされています。フランスですが、新薬は、発売5年後に必要に応じて薬価を見直 している。  以上のようなのが、価格設定の現状でございます。  それから、紙をめくっていただきまして、「フラットプライスの実態」についても報 告をするようにという宿題をいただいておりまして、日薬連の薬価研・常任運営委員会 の27社において、欧米で販売している医薬品で、フラットプライスになっているもの についてアンケート調査をいたしました。回答をもらったのを簡単にまとめたのが、こ の2枚の紙なのですけれども、いずれもフラットプライスにしている理由が、企業の販 売戦略というものと非常に深くかかわっているがために、この程度の回答しか我々は認 めることができませんでした。  「フラットプライスを採用する目的」ですけれども、いずれの企業も、当該品目から 得られる利益を最大化するための戦略としてフラットプライスを採用しておりまして、 その具体的な動機としては、下にまとめています2つのケースに集約される模様であり ます。ケース1は、大規格が汎用である場合に、非汎用である小規格の価格を大規格と 同一にすることによって、小規格の採算性の確保を図る。それから、ケース2として、 大小の規格の価格を同一にして、大規格で割安感、小規格で割高感が醸成されることに よって、効果が強い大規格への処方誘引と当該製品のシェアアップを図る。換言すれ ば、規格間での価格差をなくすことによって、医師が、自身の裁量により最適な用量を 処方しやすくなるということを考えて、フラットプライスが採用されているようであり ます。主観ですけれども、日本の医療の環境から考えると、どうもこの制度はやはり日 本の土壌の中ではなかなかなじみにくいのではないかというふうに、私は考えます。  めくっていただきまして、「フラットプライスの環境要因」ということでまとめてい ますが、アンケートの結果から、フラットプライス戦略がなじみやすい市場・制度的要 因として、下に記しましたような状況が各国に存在するように感じました。いずれの要 因においても、規格ごとに価格に差を設ける必要性が乏しいという結果がもたらされて いるものと思います。  まず、薬剤費が定額で償還されるタイプの民間医療保険が広まっておりまして、その 種の保険においては、規格ごとに価格差があっても償還される額は同一になる。例えば これは主としてアメリカの例ですけれども、こういうふうな一つのフラットプライスが なじみやすい制度的要因があるというふうに考えます。  それから、これは主としてイギリスで考えられる例ですけれども、定額の薬剤患者負 担が設けられている国があって、その国においては、規格ごとに価格差があっても患者 負担額は同一になる。  それから、各国とも3番目の丸は同じなのですけれども、全面分業であるがために、 薬局の備蓄の関係から、個々の患者に適した規格が常に投薬され得る状況にあって、大 規格が必要な場合に、その備蓄がないために小規格を複数投薬して、結果として薬剤料 がかさむ、そういうふうな状態は生じない、そういうふうな制度になっているというこ とであります。  以上でございます。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。  それでは、ただいまの御説明につきまして御質問あるいは御意見ございましたら、御 自由にどうぞ。 ○対馬委員  意見にわたるところはまた後ほどさせていただきまして、ちょっと感想的なところへ ちょっと入るかもしれませんけれども、質問させていただきたいのですが、1つはデー タの中身なのですが、あまりちょっと細かいところはあれですが、私ども製薬協の例え ばテキストブックとかデータブックとか、そういったものをいただいているのですけれ ども、それと何かどうも数字があまり合わないのですね。いずれも日本の方が小さめに 出ている。今日説明いただいたもので、例えば6ページの、世界の中で医薬品市場に占 める日本のウエートは物すごく減り、右側の2003年、11%と書いていますけれど も、私どもが見ているところで12.3%という数字がございますし、あと、15ペー ジの日米の研究格差の話ですが、これも、例えば2002年の日本の研究開発費という のは大手10社で469ではなくて588という数字がございます。ちょっともしわか れば、もしわからなければもちろんこれは後ほどで結構です、ここでこういった問題を 議論するつもりはございませんので。  それから、あと感想を1点だけ言いますと、7ページから8ページにかけまして、経 常利益の問題とか、あと海外売上高比率が書いていますけれども、特に8ページの関係 でいいますと、これだけ海外の売上高のことを言うのであれば、経常利益についても他 産業との比較でお出しいただければなと、こういう感想が1つございます。  それから質問ですが、輸出入、これは10ページでしょうか、技術輸出について、特 に医薬品の場合ですと、技術輸出が輸入を相当に上回っているということで、それはそ のとおりであろうというふうに思うのですけれども、一方では、技術輸出ではなくて、 もっと広く医薬品全体について見たときには、輸出よりはむしろ輸入の方が2倍ぐらい に多いのではないかと、こういうふうに思うのですけれども、その点はいかがなのでし ょうか。  それからあと、欧米のフラット価格のところですが、このフラット価格についてなか なかわかりにくいということはあったのかもしれませんけれども、こういったフラット プライスというのは例外的に採用しているのでしょうか。それとも、そうではなくて、 比較的採用している場合も多いのでしょうか。どうもこれを読みますと、個別例外的に こういった理由でもって採用しているのだというような感じが強いように見受けられる のですが、そのあたりいかがでしょうか。 ○遠藤部会長  それでは、たくさんございますけれども、この場で答えられないものもあるかと思い ますが、その辺についてお答えいただきます。 ○向田専門委員  まず、6ページのウエートでございますけれども、ちょっと製薬協のデータが何に基 づいているかによりますが、これはIMSという調査会社のデータでございますので、 そこに差異があるかもしれませんが、その点はまた調べてわかったら御報告申し上げま す。  それから、15ページのR&D費、これも今の時点では、対馬委員御指摘の点、ちょ っとわかりませんので、またこれも調べてということにさせていただきたいと思いま す。  それから、他産業との経常利益の比較をしたらどうかという御指摘でございますけれ ども、またしかるべき機会があったらそれは考えるべきかと思います。  それから、技術輸出の問題でございますけれども、おっしゃるとおり、医薬品の輸入 も多分多いと思います。それから、ひところ、ちょっとこの技術輸出のところは、輸出 は今は確かに多いのですけれども、昔は輸入の方がやはりかなり多かった。それで、そ の時点は多分外資の企業、ほとんど国内の会社との提携で、むしろその技術の輸入が多 かったのが、1つは現地法人、ほとんど外資の企業はされておりますので、そこの部分 で技術輸入の方が減って今は輸出が多いという状況だというふうに思っておりますの で、このデータ自体、自慢するようなデータだというふうには我々もそんなに思ってお りません。  それから、フラットプライスにつきましては、やはり、調査の結果でも例外的と考え た方が当たっているというふうに我々は思っております。  以上でございます。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  それでは、本日お答えできなかったことにつきまして、可能な限り資料を整えること ができれば、また次回以降、御提出いただければと思いますので、よろしくお願いしま す。  ほかにございますでしょうか。 ○松原委員  今フラットプライスが例外的とおっしゃったのですけれども、大体何%ぐらいなので しょう。もしデータがおありであれば教えていただきたいのですが。 ○奥田専門委員  パーセントで示すだけのデータは今日用意しておりませんので、また後日回答させて いただきたいと思います。ただ、フラットプライスを採用される領域ですけれども、や はり長期服用の領域、それから、やはり安全性の高い領域が多いというふうに考えてお ります。 ○松原委員  私どもが前回中医協の場で御指摘申し上げたのは、結局、フラットプライスがあるた めに、外国の価格の規格間調整をいたしますと、外国の製品が日本で採用するときに非 常に常識を外れて高くなったという現象がございますので、このフラットプライスがど の程度のものであるのかということをぜひ知りたいと思っております。よろしくお願い 申し上げます。 ○遠藤部会長  そのような御要求でありますので、可能な範囲で調べていただければと思います。 ○宗岡委員(代理松井氏)  まず13ページのところですが、研究開発の点について、1万2,000分の1くら いの確率しかないということですが、これは昔もこのくらいだったのか、最近ますます こういう傾向が出てきたのか、そんな状況があったら教えていただきたいということで す。  次の14ページのところでは、治験とかそういうことについても相当費用がかかって いるということも御指摘がありますけれども、それに対してもう少しこうしてほしいと か、何らかの海外のデータも活用してほしいとか、そのようなお考えがあるのかないの か、その点をお聞かせ願いたいということ。  あと、3点目なのですけれども、原価計算方式そのものについて、18ページになり ます、個々の新薬の価値が反映できないという御指摘がありますけれども、では、どん なやり方がいいのか、原価計算方式はすべてリセットしてこうしてほしいとか、何かも し現時点でのお考えがあればお聞かせ願えればと思います。 ○奥田専門委員  まず、成功確率の点ですけれども、今も多分これぐらいの確率だと思います。だが、 昨今、ゲノム創薬ということで、そういう開発のやり方が入ってきて、ここのところは 多少変わるかなという予感はしますけれども、まだデータとしてこうなっていると、こ ういうふうになりましたと言えるような状況ではないと。ですから、現在もおおよそこ れぐらいの確率でしか新薬は生まれてきていないというふうに考えています。  それから、臨床開発の費用とスピードについて産業界の希望を言えと、言うべきでは ないかという御意見ですけれども、これは製薬協でいえば評価委員会というのがありま して、そこで治験環境を整えてくださいとか、あるいは審査期間を早くしてくださいと か、いろいろなことは話し合いをしております。だから全然、我々、手をこまねいてい るわけではなくて、早くしたい、早く役に立つ新薬を供給をしたいというところで活動 はしていると思っています。  それから、原価計算方式のところですけれども、この前の薬価専門部会でも私発言を しましたけれども、現行の原価計算方式は必ずしも新薬の価値というのは反映されてい ないという認識ではいます。ただ、そうしたら、どういう枠組みをつくればいいのかと いうことについては、私たちはまだはっきり枠組みをつかめていないという状況であり ます。  やはり、新薬の価値というのは、単に原薬のコストだとか、それから製造にかかわる コストだとか、そういうものばかりではなくて、新薬の、ある化合物を薬というもので あるということを証明する、そういうソフトというのか情報は、これが薬の価値を多分 決めるのだろうと思いますので、そのことをどういうふうに組み込んでいくかというこ とについては模索中ですけれども、まだなかなかいい回答が得られていないということ であります。 ○遠藤部会長  ほかにございますか。 ○漆畑委員  今日御説明いただいたものは、今まで製薬業界の方といいますか、専門委員の方が御 発言されたものを非常にコンパクトに数字をつけて整理をしていただいたという意味で は、考え方をまとめるのに私は大変役に立つとは思うのですが、ただ、言いかえれば、 従来から御発言されていた内容と全く同じなのですよね。ですから、今松井さんがおっ しゃったとおり、これはもうけっこう長い間御主張されているわけだから、今日私の方 としては、そういうものをもとに、一体こう具体的な何か御提案があるのかなと思っ て、そういう意味で期待をしていたわけでありますけれども、その点があまり具体的で ないことについては、一部、小児用薬とかございましたが、その点ちょっと残念かなと 思います。  私、そういう意味では今回の議論の発端になりました、先ほどのフラットプライスも そうなのですが、外国価格との調整について具体的な御提案があるとか、御意見がある とかということも期待をしていたわけですけれども、それから、従来から中医協でも、 あるいはほかのところでも議論になっています、後発品の使用促進のこととか、そうい うことについても何か御発言があるかなというふうに、そういう意味ではちょっと残念 のような気がします。  それで、私は医薬品については、前々からこんなところで言うことではないかもしれ ませんが、物というよりも医療の大事な手段でありますから、新しいものが提供され て、それで、それを持続できるという仕組みはやはりどうしても必要だと思いますの で、おっしゃるとおり、研究開発の振興とか、日本オリジンの薬がもっと増えてほしい とか、そういうことの希望を持っているわけで、それについては製薬企業の方の御主張 が、必ずしも反対ではないのですけれども、もう少し具体的に御提案をいただきたいこ とと、それからもう1つ、これは製薬会社の方がおっしゃるのかどうかわかりませんけ れども、中医協のことではないのですが、国は医薬品産業ビジョンの、経済課長いらっ しゃいますが、を示されて、それに沿って製薬企業の育成とか、海外競争力をつけると か、研究開発を振興するとか、いろいろ政策を打っていらっしゃいますので、それにつ いて何か関連して、薬価とか保険としてもそうものについて何か反映するようなものが あるかどうかということも御発言があるのかなというふうに期待をしていたわけであり ますけれども、どうもそういうこともなかったということであります。  それで、全体で利益のこととか売上のこととかいろいろおっしゃっていますけれど も、10年外国の医薬品の市場が大変伸びているにもかかわらず日本の市場が横ばいで あるという、そういうふうにおっしゃって、そのとおりだと思いますが、ただ一方で、 今の状況を見ますと、確かに前年で比較して利益率の圧縮はあったりするかもしれませ んけれども、実際にそれは利益金額として確保できているわけですから、医薬品の総市 場が変わらないにもかかわらず企業が成り立って、いろいろ御努力あるにしても、研究 開発もできて、それでしかも企業が収益が上がっているということになれば、そういう 意味では、日本の薬価の仕組みというのはとてもよくできている、売上が伸びないのに ちゃんと利益が上がって維持できているわけですから、すごく雑駁な言い方で申し訳な いのですが、そういう意味では非常によくできているということで、総論としては、そ ういうふうにも、今改めて御説明を聞いて思うわけであります。  何か専門委員の方がおっしゃりたいことを、これは状況説明ではあるのですが、表現 していないのではないかなというふうに、私は率直に言うと思います。中医協の場でも 私は前にもお話ししたように、例えばこれは薬価の値つけといいますか、再算定のルー ル、薬価改定のルールですけれども、新薬のあるメーカーは、薬価が市場価格に合わせ て改定されても、新薬を出すことで、いわば営業の売上を確保できたり、つじつまを合 わせたりというようなことになるわけですけれども、例えば漢方薬のような、原則とし て新薬のないものは、この仕組みですと下がるだけの一方になるとか、細かいことで言 えばいろいろ問題点があると思っているわけで、ぜひそういうものを具体的に専門委員 として、専門委員でありますので、御指摘いただいたり、御提案いただけるようなふう にしていただければ、もう少し議論がしやすいかなと思います。  今日のものは、必ずしも今日の御発言を否定しているわけではないのですが、ちょっ と大まかすぎて、今までのものをまとめていただいただけで、せっかく改めてそういう 機会をつくっていただいているわけですから、そういう意味ではちょっと生かし切れて いないのかなというふうに思います。 ○遠藤部会長  漆畑委員、御趣旨はよくわかりました。  若干私の方から申し上げますと、専門委員に前回お願いしたときに、1つの大きなお 願い事としては、現状を御説明していただくということをかなり中心にお願いしたとい うことがありまして、直接的に今回は具体的な要求というような形では出てきてはいな いというのは、そういうお願いの仕方の反映であるということが1つと、また、今後さ まざまな関係団体からの御意見を聞いた後で、それこそ総合的な検討をするということ が始まりますので、その過程においてまたそういうものが出てくるということを期待で きるということであります。  専門委員の方、どうぞ。 ○向田専門委員  私が申し上げようとしたことを部会長が全部おっしゃっていただいたのであれなので すけれども、製薬協の方でというか、日薬連というか、具体的な案については、現在最 後の詰めというかの段階に入っておりまして、今、部会長のお話がありましたように、 次回というか、いつになるかわかりませんが、意見陳述の機会を設けていただけるよう でございますので、その段階では、業界のトップの方から何か具体的なものがお示しで きるかもしれないということでございます。  それから、ビジョンにつきましては、この場ではということでございまして、ほかに 厚労省等のやりとりのところでちょっとございまして、そういう場のところでちょっと 申し上げるということに今のところなっておりまして、おっしゃられるように、趣旨は 御理解するのですけれども、本日はビジョンについては何も申し上げなかったというの が現状でございます。  それから最後に、薬価制度でございますけれども、これも我々としては、現在の薬価 基準制度というのは、今までパッチワーク的な手直しをいろいろ重ねてきて今の制度が できているわけでございますけれども、評価としては非常に完成度の高いものだという ふうに認識をしております。ただ、いろいろな細かいところで、こういうことがやはり 改善されますねということで幾つか御提案させていただいているというふうな状況でご ざいます。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。 ○松浦委員  これは前回ちょっとお聞きした方がよかったのかもわかりませんけれども、普通我々 が、これは薬価でなくて、公共が物事、物件を買うときには、必ず一つ競争原理が働く 過程を経て購入するわけです。それで、薬価を決めるというときに、いわゆる競争原理 が働くような過程がちょっと私は見当たらないような気がするのですが、それは今ここ で論じるよりも、前回論じた方がよかったのかもわかりませんけれども、そういうよう なものが取り入れられるというようなことにはならないのでしょうかね、なるのでしょ うか。 ○向田専門委員  まず、競争原理が働かないかというと、それはなくて、やはり類似薬の中で、完全に 同じものではないにしてもやはり似たようなものがあれば競争はあるということが1 つ。それから、普通の財と大きく違うのは、これは全く教科書と一緒で、使う人と選ぶ 人が違うということですね。つまり、教科書は先生が、まあ同じ先生ですけれども、先 生が選んで生徒が使う、それから、先生が選んで患者が使うということで、患者あるい は生徒に選択肢がないというところではその財の特殊性はあると思います。そこでだか ら直接的な消費者が選んで価格で云々というのはなかなか生じないというような理解を 我々はしておりますけれども。 ○松浦委員  例えば新しい薬ができて、これは非常によく効く薬で難病に効くのだという場合と、 それからもう1つは、我々が日常風邪を引いたとか腹痛だとか、そういうものが起こっ て大体似たような薬を飲むというような場合とがあると思うのです。そうすると、日常 病気にかかって、売薬でもいいのだけれどもちょっとお医者さんというようなときもあ りますから、だからそういうようなのは、各社のメーカーさんが恐らく同じような薬を 出されているのではないかと思うのですが、そういう中で競争原理が一つ働くというよ うな過程も無理でしょうかね。 ○遠藤部会長  それはどなたがお答えになるのがいいか、あるいは私もある程度答えはできるかと思 いますけれども、それは専門委員の方に、どなたかお答えいただきますか。  競争原理が全然働かないというのは、新薬の価格設定ということであれば、先ほどお 話ありましたように、類似薬効ということで比較をする場合には、それは既に市場で競 争の過程でできた実勢価というものが一つの参考になっているということになりますの で、そこに全く競争原理が働かないということはないわけですが、例えば、松浦委員の 御発言のもう少し具体的なイメージをおっしゃっていただくと、どういうところが競争 原理が働かないのですか。 ○松浦委員  私どもが発注する、例えば公共事業の場合、大きな建物、あるいは特殊な構造物、そ ういうときには特殊な技術が絡みますから、なかなか競争原理が働かないのですけれど も、一般的なものの場合は、かなり競争原理が働く場合と働かない場合と両方ありま す。しかし、一応競争原理を働かす土俵の上には全部のせるわけですね。我々も今保険 料という強制徴収をやっている、財源は非常に公共的なものですから、だから、ある程 度そういうことが働くようなことが可能であれば、私はそういう場をつくってもいいの ではないかという気がしておるのですけれども。 ○内匠屋専門委員  私どもがすべての製薬メーカーさんの商品を医療機関さんに販売と流通をさせていた だいておりますので、私どもの実際の販売状況を若干だけ申し上げるとすると、やはり 今2年に1度の薬価改正がございます。そのときに薬価基準が、上がるものはほとんど なくて、全部下がるわけでございますけれども、下がった薬価基準に対して、また薬価 差が幾らという交渉で医療機関さんとの間ですべての商品が競争の対象になりますの で、対象品目が多ければ多いほど、では、どの薬だったらどれだけ薬価差を低くしてく れるのかという交渉が医療機関さんからございますので、競争原理という点ではござい ますので、その結果が2年に1度下がっているというふうに御理解いただければいいの ではないかと思っております。 ○松浦委員  いわゆるその個別の医療機関に行って、そこで競争原理が働くのであって、そうする と、薬価差というものにもっとシビアになって、我々もデータを集めなければいかぬ、 こういうことになるのでしょうか。ですから、公の場で働くわけではなくて、そこの市 場に出ていくときには、医療機関ということを経過して行くわけですから、ですから、 その差額というものについて、かなりシビアな考え方をしなければいけなくなるという ようなことになるのでしょうか。 ○遠藤部会長  基本的に、公定価格との差を設けるというようなことが、言ってみれば、その競争の 源泉になっているというところで、それによって実勢価が下がっていき、それが公定価 をまた下げるという、そういうような状況で、そこにある種の競争メカニズムが働いて いるという形になっているかと思います。  いずれにしましても、競争原理が果たして現行制度の中で十分に機能しているかどう かという非常に重要な御指摘をされていると思いますので、今後の制度全体の見直しの 中でぜひそういう考え方を入れながら議論を進めていければと思いますが、本日のとこ ろはそんなところでよろしゅうございますでしょうか。 ○松浦委員  結構です。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。 ○櫻井委員  漆畑委員が言ったことですが、過去においていろいろ見せていただいた資料に非常に 近いので、何を質問していいのかわからないところがあるのですが、まず第1点は、6 ページの「世界の医薬品市場規模」というところの意味合いをもう一遍説明して下さ い。これは3年分の経時的な年次変化で、医薬品市場における日本の消費が減ったとい う、簡単に言うと、アメリカ市場だけ増えたという円グラフなのですが、これをもって 専門委員としては何が言えるのか、日本の薬価制度との絡みでおっしゃったのかと思う のですけれども、もう一遍ここを御説明いただきたいということです。  第2点は、これは前から何回も繰り返しているのですが、医薬品の開発に研究開発費 が非常にかかって、しかも、その開発そのものがリスキーだと、これは非常によくわか るわけですし、そのリスキーなものをしょいながら医薬品をつくっていただいていると いうことでは、製薬業界には非常に感謝をしているわけですけれども、そのリスキーな 研究開発費を公的な社会保険制度の中の薬価として反映させなければいけないというの が、私はおかしいと思っているわけです。研究開発的なものを認めるのであれば、我々 医療機関も、患者さんに対して、研究開発という言い方が合うかどうか知りませんけれ ども、新しい治療法をやってみたいとか、こういう検査をしてみたいとか、研究開発的 な要望はいっぱいあるわけですけれど、そういうものを保険で認めることは実際には不 可能なのです。であるにもかかわらず、医薬品にはそれが仕方がないのだということに ついて疑問があるわけです。一つの方向は今厚労省の経済課の方の担当で医薬品ビジョ ンの云々というようなことで、例えばゲノム開発みたいなものの研究の共通な部分には 国がお金を出して研究してもらうというようなことをやっています。外国でも公的なお 金がそういう研究開発につぎ込まれていることは聞きます。それから治験の問題など も、日本で治験が進まないのは、いろいろな事情がありますけれども、これを国民的な 問題として考えれば、今医師主導治験には国が少しお金を出し始めましたけれども、メ ーカーさんがやる治験にも、国がそれを国の責任として国民のためにということで持つ べきではないかと考えます。研究開発という意味でメーカーさんが負担して、それが薬 価に乗るのだということでいいのかどうか、これは国に対しても言いますけれども、専 門委員としてはそのことについてどうお考えなのかということを第2点の質問にしたい と思います。よろしくお願いします。 ○遠藤部会長  それでは、お答えください。 ○向田専門委員  まず第1点の、世界での日本のウエートが下がっているということでございまして、 これも、おっしゃるように、そんなに深い意味があるわけでなく、先ほど申し上げたよ うに、6兆でずっと日本が下がっているというだけ。それから、アメリカは御指摘のと おり、世界の市場の半分になっているということでございますけれども、この増やして いる部分に、我々グローバルで展開している企業としては、こっちで稼いでいるという 部分がございまして、49%を増やしているのは、我々の日本の中のグローバル企業が 増やしている部分があるかもしません。したがって、ここで何を申し上げたいかという と、御指摘のとおりでございまして、とにかく日本は伸びていない中でよく頑張ってい るねと、見てほしいというぐらいの程度でございます。 ○櫻井委員  ということは、これは日本の国内で薬が消費される額が伸びていないで、アメリカで どんどん使われているというような意味になるのですね。これは消費額を反映している わけですね。市場規模と言っているのは、生産規模とかそういう意味ではないですね。 ○向田専門委員  市場でございます、やはり。 ○櫻井委員  つまり、見方によっては、日本人は薬好きだとか言われていたけれども、だんだん利 口になって薬を使わないでもきちっと生活習慣の改善等でやることになった。アメリカ では、どちらかというと商売人にだまされて、今でも薬をばかばか飲んでいるけど、将 来これは縮んでいくのではないかとかいうふうにも読めるわけですね、読み方によれ ば。日本人は利口になってきたというグラフだというふうにもとれる、そうではないで すか。 ○向田専門委員  おっしゃるとおりだと思います。 ○奥田専門委員  2番目の件ですけれども、健康保険制度の中だから医薬品の研究開発費が云々という ところは、私は櫻井先生の意見に承服しかねます。ですけれども、一度ゆっくりこの点 については、こんなところではなくて、議論をさせいただきたいというふうに思いま す。  それから、産業ビジョン等で、いわゆる個別の新薬の開発ということではなくて、研 究のための医薬品開発のための研究環境の整備ということでは、厚労省をはじめいろい ろな省庁で、産業育成という観点から、いろいろなことがされているというところはあ ります。ですけれども、個別の新薬の開発というのは、やはり個々の企業がある程度の 熱意と情熱でもって開発をしていかなかったら、やはり現実に新薬というのは生まれな いというふうに思います。その部分はだから、やはり企業にリターンさせてほしいなと いうのが私の考え方です。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。 ○対馬委員  1点質問と、あと1点はあまり時間がないので、ちょっと、これは質問というより は、事務局にお願いした方がいいのかもしれません。  質問の方は、市場拡大再算定について廃止していただきたいという要望がございます けれども、これはこの市場拡大だけを取り上げているのですけれども、御承知のとお り、不採算品についても再算定するというルールもございますよね。それ以外にも、効 能・効果とか用法・用量が変わった場合にも再算定するということですので、ここだけ を取り上げているのか、そうではなくて、当初予想したものに対して変わってきたと、 そのときにどう考えるかという基本論なのか、そこを1点お伺いしたい。  あともう1点は、これはお答えはいいのですけれども、各国の価格設定ということ で、自由に設定しているのだというような全体のトーンの資料だというふうに思うので すけれども、少なくとも、各国で公的な医療保険制度の中で薬剤費がどう扱われている のかというベースがなく、いきなり価格設定がなくて自由価格だと、こう言われてもか えって問題の投げ方、それに対する答えの出し方が違ってくるのではないかなと、こう いうふうに思うのです。例えばアメリカのように、メディケア、メディケードはありま すけれども、基本的には公的な医療保険制度ではないのだというところで、むしろ自由 価格というのはある意味当たり前といいますか、言うまでもないことですし、イギリ ス、ドイツ、フランスあたりでも、例えば患者負担がどうなのか、公的な医療保険の中 で医薬品がどういった位置づけなのか、そういう中において価格がどうかと、こういう ことが必要だというふうに思いますので、むしろ、事務局の方がいずれ外国価格調整で ありますとか規格間格差についても海外の状況について説明するということになってお りますので、その中で、ぜひそういった全体観の中での個別論という形にしていただき たい、こういうふうにお願いしたいというふうに思います。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  それでは、専門委員としてお答えできる範囲で、どうぞ。 ○向田専門委員  1点目の方だけについてお答えさせていただきます。  対馬委員御指摘のとおり、不採算品目あるいは効能・効果、用法・用量が変わったと きに上げる・下げる制度がございます。不採算品目の引き上げについては、非常に運用 が厳しくてなかなか適用になるものはないというので、そこもちょっと若干は要望あり ますけれども、それから、効能・効果、用法・用量が変わるということは、やはり類薬 との関係値が変わるということでございますので、類似薬効比較の中では、それはある 意味で変わってしようがないというか、当然というふうに考えております。ただ、この 市場拡大だけは、売れたから下げる、これはちょっとやめてくださいというところでご ざいまして、したがって、ここに1点ということでございます。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  それでは、後段の方の御要望でありますけれども、要するに、公定価格の設定の仕 方、その保険制度と絡みでないと十分な理解ができないという御指摘だったと思います ので、その辺も踏まえて、可能な限り、これは事務局の方にお願いしてよろしいでしょ うか。あるいは、専門委員と話し合ってというのでしょうか、できるだけ新しい知見 で、いずれまたそれは御指摘いただくという形にしたいと思います。  それでは、まだ多分いろいろと御意見あるかと思いますけれども、かなり時間をオー バーしておりますので、ただいまさまざまいただきました御意見につきましては、今後 の議論の非常に重要な参考にさせていただきたいと思います。  具体的な今後の進め方につきまして、事務局として具体的にどのようなことをお考え になっているか、ちょっと御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○事務局(赤川薬剤管理官)  今回、専門委員に医薬品産業の現状を中心にいたしまして御紹介いただきましたけれ ども、薬価算定ルールの見直しにつきまして、関係各方面から当部会に意見陳述したい との依頼が来ておりますので、事務局といたしましては、日本の医薬品業界団体及び欧 米の医薬品業界団体から、また医薬品卸の業界団体から見直しについての御意見をいた だいてはいかがかというふうに考えております。  また、前回の部会におきまして、新薬の算定ルールについて、薬価算定組織から御意 見をいただき、それも踏まえて当部会で検討を進めていくことになっておりますが、現 在のところ、薬価算定組織において意見を取りまとめしているところでございまして、 事務局といたしましては、今後これらの意見をいただきつつ御議論を進めていただいて はどうかというふうに考えております。 ○遠藤部会長  ただいまの御報告につきまして何か質問ございますか。 ○小島委員  要望があるのですけれども。直接薬価との関係はどうかと思いますけれども、医薬品 の副作用救済制度についてです。この制度は、費用を各薬剤メーカーの拠出金で賄って いますが、実質的に機能しているかどうかというような疑問の声も出ています。今制度 がどうなっているかということで御説明いただければと思います。 ○遠藤部会長  制度の説明でよろしいわけですか。 ○小島委員  はい。 ○遠藤部会長  恐らく事務局の所管ではないと思いますけれども、わかる範囲でそのような説明をし ていただくことは可能でしょうか。 ○事務局(赤川薬剤管理官)  これは、医薬食品局の方で担当しておりますので、そちらの方とも相談させていただ きまして、内容にどれだけ沿えるかわかりませんけれども、検討させていただきたいと 思います。 ○遠藤部会長  よろしくお願いいたします。  それでは、先ほど事務局から御説明ありましたとおり、薬価専門組織からの御意見を 伺うと同時に、各業界団体からも御意見を伺う、その後にそれらの御意見等も含めなが ら薬価算定ルールを総合的に見直していくという、こういう段取りでありますけれど も、このような方向で進めていってよろしゅうございますでしょうか。  では、そのようにさせていただきます。  それでは、大変、専門委員の方々には豊富な資料をいただきまして、長時間ありがと うございました。また、皆様方からもたくさんの御意見をちょうだいいたしまして、あ りがとうございます。今後の意見に反映していきたいと思います。  次回以降のスケジュールでございますけれども、御意見いただく場合でも、先方の御 都合もございますので、この辺につきましては、順番であるとか日時につきまして調整 をしながら事務局と調整させていただいて、日程について改めて御連絡させていただこ うかと思います。  それでは、本日の薬価専門部会、これにて閉会といたします。ありがとうございまし た。              【照会先】                    厚生労働省保険局医療課企画法令第2係                 代表 03−5253−1111(内線3276)