05/05/16 労働政策審議会安全衛生分科会第２１回議事録


　　　　　　　　　　　第２１回労働政策審議会安全衛生分科会

１　日時　平成１７年５月１６日（月）１５：００～１７：００

２　場所　厚生労働省共用第７会議室

３　出席者
（委員）　公益代表　　和田委員、相澤委員、今田委員、北山委員、内藤委員、平野委員
　　　　　労働者代表　髙橋委員、徳永委員、中桐委員、眞部委員、芳野委員
　　　　　使用者代表　加藤委員、金子委員、讃井委員
（事務局）　　　　　　小田安全衛生部長、中沖計画課長、寺岡安全課長、
　　　　　　　　　　　阿部労働衛生課長、古川化学物質対策課長、川島国際室長、
　　　　　　　　　　　高橋建設安全対策室長、中村環境改善室長、角元化学物質評価室長

４　議事録


○計画課長
　ただいまから第21回労働政策審議会安全衛生分科会を開催します。なお、本日は委員
改選後、初めての分科会開催ですので、分科会長が選出されるまでの間、事務局で議事
を進行します。なお、本日は、名古屋委員、鈴木委員、仲田俊一委員、伊藤委員、中田
三郎委員、三浦委員、山﨑委員が所用のため欠席されています。労働政策審議会令第９
条に規定いたします定足数については、これを満たしているので、当分科会が成立して
いることを申し上げます。
　なお、議事に入る前に、委員の交代がございましたので、紹介をします。公益代表の
櫻井委員が退任されて「北里大学医学部教授」の「相澤好治」委員が就任されました。
また、使用者代表の小島委員が退任されて、本日は欠席されていますが「株式会社淺沼
組東京本店安全環境管理部担当部長」の「三浦武男」委員が就任されました。
　それでは、当分科会の分科会長選出について説明をいたします。労働政策審議会令の
第６条第６項に基づいて、分科会長は分科会に属する公益を代表する労働政策審議会、
したがって本委員のうちから選出されることになっています。当分科会の委員のうち、
労働政策審議会の委員でいらっしゃるのは、今田委員と和田委員になります。お二方の
委員のいずれかにお願いすることになりますが、何か意見はございますか。

○北山委員
　和田委員にお願いをしたらいかがでしょうか。

○計画課長
　ただいま和田委員に分科会長をという推薦がございましたが、よろしいでしょうか。
　　　　　　　　　　　　　　　　　（異議なし）

○計画課長
　それでは和田委員に分科会長にご就任いただくことにして、以後の議事の進行につい
ては和田委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○分科会長（和田）　甚だ僭越ではございますが、皆様のご承認を得まして、当会の進
行役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
　では、早速ですが議事に入らせていただきます。まず分科会長代理についてですが、
これは労働政策審議会令第６条第８項において、分科会に属する公益を代表する委員、
または臨時委員のうちから、分科会長が予め指名することとされています。私として
は、この分科会が所轄する労働安全衛生分野の全般にわたって見識をお持ちの北山委員
に、分科会長代理をお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
　それでは、本日の最初の議題に入らせていただきます。まず第１の議題は、「電離放
射線障害防止規則及び労働安全衛生規則の一部改正について」です。本件は厚生労働大
臣から労働政策審議会会長あての諮問案件でして、当分科会で審議を行うことにしたい
と思います。まず事務局から説明をお願いします。

○安全衛生部長
　それでは、私のほうから説明させていただきます。本日の諮問案件は、「電離放射線
障害防止規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」です。労働安全衛生
法に基づく電離放射線障害防止規則については、これまで国際基準との整合を図ってき
たところですが、今回、同規則の規制対象となる放射性物質の規制下限値に、国際原子
力機関（ＩＡＥＡ）等が提唱する国際標準を取り入れる。これに伴う所要の改正を行う
ものです。この諮問案件については、本日の審議会で答申をいただきたいと考えていま
す。詳細は担当課長のほうから説明させていただくので、よろしくご審議をお願いしま
す。

○労働衛生課長
　それでは、電離放射線障害防止規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案に
ついて、説明させていただきます。
　これはちょっと専門性が高い内容になっていて、ベクレル、シーベルトといった、非
常に難解な単位が出てくるので、その前に若干放射線の単位を中心に説明を申し上げた
いと思います。放射線ですが、これは基本的には、物質から放出されるエネルギーと原
子から放射される粒子の流れということになっていて、このうち生物に電離作用を起こ
して影響を与えるものを電離放射線というわけです。この電離放射線の電離ということ
ですが、これはこのような放射線が物質中に入りますと原子に刺激を与えて、その原子
がプラスあるいはマイナスに荷電するというような作用です。
　基本的に放射能の単位として、現在使っているのはベクレルというものです。これは
原子が崩壊して、放出する放射能の量という単位でして、従来はキュリーという単位を
使っていました。これはちょっと歴史的な問題がございまして、キュリー夫妻というノ
ーベル賞の有名なご夫妻が、１グラムのラジウムの物質から１秒間放射される放射性物
質の量を１キュリーと言っていたわけです。１グラムのラジウムというのはかなりの量
になるわけでして、換算単位は１キュリーが3.7×10の10乗ベクレルということですの
で、37ギガベクレルという、そういうキュリーというのはかなり大きな単位ということ
になっています。
　このような放射線を生物に当てると、それぞれ吸収されるわけですが、これを吸収線
量といいグレイという単位を使います。このグレイに、それぞれの生物学的な効果、先
ほどの電離作用によりまして、いろいろな組織によって全部違うわけですが、その効果
の係数をかけてシーベルトという単位が出来ているわけでして、このシーベルトを使っ
て実は放射性物質の安全の限度基準というのを国際的に表しております。その元になる
放射能がベクレルと、その放射能濃度がベクレルパーグラムという単位になるわけで
す。
　現在の、この電離放射線障害防止規則の放射性物質の定義ですが、これは昭和20年か
ら30年代の各国の規制値を踏まえて、当時の知見によって制定されたということです。
現在では国際原子力機関というのがございまして、ＩＡＥＡと言っていますが、これが
主体となって国際労働機関（ＩＬＯ）、それと世界保健機構（ＷＨＯ）などの国際機関
が共同で公表している「電離放射線に対する防護と放射線源の安全のための国際基本安
全基準」というのがございます。これはＢＳＳと略称されていますが、この中で国際基
本安全基準レベルというものが決まっていて、実効線量ですね。先ほどのシーベルト単
位ですと、年間で10マイクロシーベルト、事故時でも年間１ミリシーベルトという線量
基準を決めた上で、いろいろな被曝のシナリオを作っていまして、そのシナリオに基づ
く被曝計算をして、その核種ごとに規制を行うという形になっているわけです。
　皆様の資料ですとNo.１－２の「改正の趣旨」ですが、このような状況になっていま
して、この国際標準の国内法令への取り入れですが、これは原子力安全委員会が平成15
年３月、さらに放射線審議会、これは平成14年10月に開かれていますが、ここにおいて
取り入れが適当とされていまして、その後、放射線審議会等において必要な検討がなさ
れています。基本的にはヨーロッパ諸国、それからアジアだと韓国、中国ですが、この
ような国々でも国際基準の取り入れを行っているということです。
　文部科学省の放射線審議会ですが、これは各省の放射線規制の技術的基準を審議する
ことになっています。ここにおいて平成17年４月13日に同審議会に諮問し、即日「妥当
である」という答申がなされているわけです。
　今回の改正の内容です。２の（１）の部分ですが、ここはまず別表第１というのが後
ろにずらっと付いています。皆様の資料１－２の３枚目をご覧いただきたいのですが、
表になっています。（現行）と（新）というのがございますが、ここに現行の放射性物
質の定義はどうなっているかと申しますと、放射線を出す同位元素を４つのグループに
分けて規定しています。ストロンチウム90又はα線を放出する同位元素等から、水素３
他６核種及びトリウム、ウランというところでして、例えば、ストロンチウム90又はα
線を放出する同位元素については、3.7キロベクレルを超えれば放射性物質になるとい
うことです。元々はキュリーで規定されていたものを先ほどの単位換算で、ベクレルに
変えておりますので3.7の倍数という数字になっておりますが、新しいところでは、そ
れぞれの放射性同位元素の種類ごとに、数量と濃度を決めるということでお出ししてい
るわけであり、これが国際基準でして、こちらはキュリーをベクレルに換算したもので
はないので、今度は１×10の９乗ですとか、１×10の７乗という単位になってくるとい
うことでして、この別表が後ろのほうにありますが、各同位元素ごとに全て基準が決ま
っているということであり、これの採用を行いたいということです。
　また、ウラン、トリウム、プルトニウムについては、「核燃料物質、核原料物質、原
子炉及び放射線の定義に関する法律」で規制しております。これは炉規法と申します
が、炉規法では、今後、国際標準の取り入れを行う予定ということでして、この炉規法
に関わるウラン、トリウム、プルトニウムについては、事業者、利用者の混乱を避ける
ために、同法令の改正に合わせて、今後、電離則の見直しを行いたいと考えているわけ
です。それが、まず改正の第１点です。
　その次に(2)放射性物質を装備している機器のうち、放射線障害防止法という法律が
ございますが、これに規定している表示付認証機器と表示付特定認証機器とに該当して
くるものがございます。これについては「機器の種類並びに装備している放射性物質に
含まれた放射性同位元素の種類及び数量」の掲示を行うというようにさせていただきた
いということです。
　国際基準の取り入れにより、新たに放射性物質を装備している機器に該当するものが
ありますが、その中には通常の使用では、このような放射性物質による労働者の健康へ
の影響が極めて少ないと認められる機器があり、これが表示付認証機器などでございま
す。これについては、放射線源の交換等を行う機器を除いて、他の放射性物質を装備し
ている機器に義務付けられている掲示事項のうち、「機器の種類並びに装備している放
射性物質に含まれた放射性同位元素の種類及び数量」のみを掲示することとするという
ことでして、要するに安全性の高い機器については、装備した年月日と所有者の氏名と
いうのは、省略をすることができるという改正案です。
　また、この安全性の高い機器である表示付認証機器と表示付特定認証機器についても
線源交換を行う場合は除いているわけですから、これについては掲示事項を省略するこ
とはできないということです。
　次は(3)、自動警報装置とインターロックの設置義務です。現在、電離則第17条にお
いては、370ギガベクレルを超える放射性物質を装備している機器を使用する場合には
自動警報装置を、それから、111テラベクレルを超える放射性物質を装備している機器
を使用する場合にはインターロック、これは使用中に自動的に出入口がロックされて、
遮断されるという装置ですが、これを設けなければならないということになっているわ
けですが、先ほど申しましたように、この370ギガベクレルと111テラベクレルというの
は、先ほどのキュリー、37の倍数という数字になっているので、国際標準で示されてい
る10のＸ乗に倣う改正を行いたいということです。そういうことですので、自動警報装
置の設置義務の対象を、370ギガベクレルを超える放射性物質を装備している機器から、
400ギガベクレル以上のものに。それからインターロックの設置義務を、111テラベクレ
ルから100テラベクレル以上のものにそれぞれ改めるということです。
　それから(4)として、その他所要の規定の整備ということです。こちらのほうは、電
離則の資格としてエックス線作業主任者免許、それからガンマ線透過写真撮影作業主任
者免許というのがございますが、放射線障害防止法の資格である第二種放射線取扱主任
者免状（一般）の所持者に、試験科目の一部免除等の措置が講じられているわけです
が、放射線障害防止法の同資格の名称が第二種放射線取扱主任者免状に改正されること
から、電離則の当該資格の名称をそちらに倣って、第二種放射線取扱主任者免状に改
め、放射線障害防止法と整合性をとるという改正をお願いしたいということです。な
お、第二種放射線取扱主任者免状（放射線同位元素装備機器名）というのがございます
が、こちらのほうは第三種放射線取扱主任者免状となっています。
　次に労働安全衛生規則の一部改正案です。放射性物質を装備している機器について
は、現在、労働基準監督署への機械等の設置等の計画の届出というのが必要なわけです
が、今回の国際標準の取り入れによって、放射線障害の恐れが極めて少ないと認められ
る等の機器、つまり、これまで計画届の対象でなかった機器までも届出の対象となるわ
けです。それで、放射線障害防止法のほうで、放射線障害の恐れが極めて少ないと考え
られる機器の認証制度を設けまして、このうち表示付特定認証機器については、届出等
を不要にして、表示付認証機器については同機器の使用開始後30日以内の届出とする事
後報告の制度を新たに導入したということです。
　放射性物質を装備した機器についてこの法令の考え方にならい、労働安全衛生法に基
づく計画届についても、放射線障害防止法の表示付特定認証機器については計画届の適
用を除外して、同法の表示付認証機器についても労働基準監督署長による事前の安全チ
ェックが不要な機器と認められるものから、これも計画届の適用を除外するということ
です。
　さらに最後ですが、公布、施行の件です。平成17年６月１日とかなり迫っています
が、この日を予定しているところです。この省令の施行の際に、この改正によって新た
に放射性物質とされたもので、密封されているもの及び新たに放射性物質とされたもの
のみを装備している機器で、平成19年４月１日以前に製造されまたは輸入されたものに
ついては、この省令による改正後の電離放射線障害防止規則を原則として適用しない、
つまり、平成19年４月前に製造されて輸入されるものについては、現行のままでこの改
正則を入れないという形で、これも放射線障害防止法と整合性をとって行いたいという
ことです。以上です。

○分科会長
　どうもありがとうございました。ただいまの説明について、ご意見、ご質問がありま
したらどうぞ。

○労働衛生課長
　ちょっと技術的に難しい内容になっていますが、いちばん多いご質問は、自動警報装
置が370ギガベクレルから400ギガベクレルになると言ったときに、安全対策はその分だ
け上に上がるから弱くなるのではないか、ということでございました。
　現行のものは、実はこれをどういうところで使うかと申しますと、まず医療用ラル
ス。アフターローディングといいまして、子宮がんやがんに放射性物質を入れて治療す
る装置がございます。あとは非破壊検査で用いるものですが、これらは旧単位で販売さ
れておりまして、10キュリー、11キュリーでして、370ギガベクレルというのは10キュ
リーに対応してくるわけです。11キュリーになると、これは407ギガベクレルという数
値になりまして、現在ではその間の390ギガベクレルや380ギガベクレルというのはない
ものと思われます。今後できてくる可能性もございますが、今回の改正によりほんの少
し基準が上がるわけですが、現行の機器の現状においては、新たに自動警報機を付けな
ければいけないということはないと考えています。
　あと、インターロックのほうは少し厳しくなりますが、これも先ほどと同様に3,000
キュリー、2,000キュリー、1,000キュリーと、こういう旧単位のキュリー単位で販売・
設置されているので、こちらも実際は影響が出てこないと想定しています。
　放射線審議会等の専門家の方々にもご議論いただいて、将来を見据えて、このような
形になったということです。

○分科会長
　安全性の懸念について説明がございました。安全性は確保されるということですが、
何か質問はございますか。特にご発言がなければ、当分科会の意見としては「電離放射
線障害防止規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」については妥当と
認める旨の報告を、私から労働政策審議会会長あてに行うこととしたいと考えますが、
いかがでしょうか。
　　　　　　　　　　　　　　　　　（異議なし）

○分科会長
　では、そのようにさせていただきます。なお、報告文については私に一任させていた
だくということでよろしいでしょうか。
　　　　　　　　　　　　　　　　　（異議なし）

○分科会長
　どうもありがとうございました。では、そのようにさせていただきます。
　部長から挨拶がございます。

○安全衛生部長
　ただいま諮問案件について、妥当と認める旨のご報告をいただき、ありがとうござい
ました。労働政策審議会の運営規定によって、本分科会の議決をもって審議会の議決と
されることから、労働政策審議会として妥当である旨の承認をいただいたということに
なるわけです。これを踏まえて、私どもとしては速やかに省令の改正作業を行って、円
滑な施行に務めてまいりたいと考えています。今後とも委員の皆様には、引き続きご指
導、ご協力をよろしくお願いします。どうもありがとうございました。

○分科会長
　それでは次の議題に移らせていただきます。次の議題は「新規化学物質の有害性の調
査結果に関する学識経験者の意見についての報告」です。本件は労働安全衛生規則第34
条の17に基づく報告です。今回は新規化学物質の有害性調査の結果と、それに基づく事
後の対応状況について、合わせて説明いただければと思います。よろしくお願いしま
す。

○化学物質評価室長
　化学物質評価室長の角元です。私のほうから、お手元の資料番号２－１に従ってご説
明を申し上げたいと思います。中身の報告説明に入る前に、若干この新規化学物質の有
害性調査制度の概要について、まず簡単にご説明を申し上げたいと思います。お手元の
資料の６頁にフローチャートで、この新規化学物質の有害性調査制度の概要についてま
とめているので、ここでご説明を申し上げたいと思います。
　この新規化学物質の有害性調査制度については、昭和54年6月から始まった制度でし
て、従前、職場で取り扱われる化学物質がむやみに取り扱われ、結果として問題が生じ
てから、企業あるいは行政も対応するというようなところに対して、いわゆる水際作戦
と申しますか、新しい化学物質を造るときに、最低限の有害性チェックをするべきであ
るというような形で、労働安全衛生法、当時第57条の２、現在第57条の３という規定に
なっていますが、そういう新規化学物質を製造・輸入する際は、最低限、有害性調査を
実施して、現厚生労働大臣に届け出るという制度が設けられたわけです。
　現行の制度の概要ですが、上のほうから新規化学物質を製造又は輸入する事業者。こ
れは、少量の場合は申請及び厚生労働大臣の確認により免除されていまして、原則的に
は年間100キロを超えて製造または輸入する事業者の場合、57条３の第１項の規定に基
づいて、新規化学物質の製造・輸入の前に、予め有害性調査を実施して、結果を届け出
るということになっています。
　この有害性調査とは何ぞや、というのは資料２－１の６頁脚注の（１）です。数ある
有害性の中で、やはり人間を死に至らしめる、重篤なる疾患でありますところのがんに
着目して、微生物を用いる変異原性試験又はがん原性試験とされています。がん原性試
験というのは、ラット、マウス等を使った、かなり経費と長期間を要する試験ですが、
もう１つ、微生物を用いる変異原性試験とは、化学物質が細胞の遺伝子に突然変異を起
こすかどうかを調べる試験とされています。
　これは化学物質による発がんのメカニズムのスタートが、化学物質による遺伝子の損
傷・傷害、ここから異常細胞が生じて発がんに至るというような相関関係から、比較的
このがん原性と相関関係のよいと言われている変異原性試験で、これは微生物を用い
る、大腸菌あるいはサルモネラ菌、こういった微生物を用いた簡便な試験でスクリーニ
ングチェックをする、という有害性調査制度が設けられたわけです。これに基づいて、
事業者からの届出が出てまいりますと、この内容に関して厚生労働大臣による学識経験
者からの意見聴取、これが同じく法57条の３第４項に規定がされています。
　大部分はこの変異原性試験のほうで出てまいります。その結果、強い変異原性試験が
認められた場合に、この追加試験、これは（２）です。ここは法定ではなくて、行政指
導でやっている部分ですが、（２）は追加試験としてほ乳類培養細胞を用いる染色体異
常試験、これを追加して実施するように要請しています。人間から非常にほど遠い微生
物から、かなり近いほ乳類の細胞ということで、より人間への影響が外挿・類推できる
試験を追加要請して、最終的にその試験結果について、再度、学識経験者から意見聴取
をして、法律ベースで申しますと、その左片の囲みです。厚生労働大臣による健康障害
防止措置の勧告（安衛法第57条の３第４項）というのがございますが、通常ベースでは
その右のほうにございます健康障害防止措置にかかる指針。これは変異原性が認められ
た化学物質について、労働者の健康障害を防止するための措置に関する指針というの
が、平成５年に出された行政指導通達がございますが、変異原性物質については、この
指針に基づいて労働者の健康障害防止措置、作業環境管理、作業管理、労働衛生教育、
作業記録、その他の措置をとるように行政指導をしているところです。
　フローの右のほうで、関連でご覧いただきますと、いちばん上には新規化学物質の有
害性調査の実施の右方、事業者による健康障害防止措置というのがございます。一次的
には事業者がその結果を踏まえて、有害性があるものについては応分の健康障害防止措
置を講じなければならないということで、先ほどの学識経験者の意見聴取、その中でも
特に強いものについては行政としても注意喚起をすると、このような流れになっていま
す。
　それから右のほうの囲みの２つ目、官報による名称の公表というのがございます。こ
れは、新規化学物質については届出があったら、３カ月以内ごとにまとめて官報で名称
公表をする。これは労働安全衛生規則で定められています。
　いちばん下の「労働政策審議会への報告」という太枠の囲み。これは本日のご報告の
件ですが、これは労働安全衛生規則第34条の17というところで、官報での名称の公表後
１年以内に、労働政策審議会へ学識者からの意見聴取の状況についてご報告申し上げる
ということです。以上の、この意見聴取の結果と行政措置の状況について、本日ご説明
申し上げたいと思います。
　では、資料の１頁目のほうに戻っていただきたいと存じます。この報告については、
昨年９月７日に前回の報告をいたしまして、今回に至るまで３カ月に１回、３回分、平
成16年９月27日から平成17年３月25日までの官報に名称が公表された新規化学物質595
についての、学識経験者の意見の状況が下記の表のとおりです。
　まず１番目は、微生物を用いる変異原性試験の結果、強い変異原性が認められたもの
が22物質。それから弱い変異原性が認められたものが44、変異原性が認められなかった
ものが527ということです。
　その次。これは大部分は微生物で出てくるのですが、まれにがん原性試験を実施した
ものが出てまいります。そのがん原性試験で出た１件については、がん原性が認められ
ないというもの。それからいちばん下が、これは１回意見聴取をしたのですが、内容に
若干問題があり、評価保留という状況のものが１物質ということです。
　次の頁はややこしいカタカナが並んでいますが、先ほどの強い変異原性が認められた
とされる化学物質、22物質です。用途については医薬品、あるいは色素、染料、電子材
料と、やはり世の先端を行くような用途のものが並んでいます。
　右のほうに措置状況と書いてあります。措置状況で指針対象と略記しているものにつ
いては、先ほど申し上げた健康障害防止のための指針、行政指導の対象にすでに追加し
たものです。それから意見聴取予定と書いてあるものについては、今後、専門家の二次
意見の追加、ほ乳類の培養細胞を用いた追加試験に対する二次意見の聴取を今後行う予
定のものです。行政措置はそれ以降ということになっています。指針対象が12物質、意
見聴取予定が10物質ということになっています。
　次の３頁から４頁までは、先ほどの44物質に相当します。弱い変異原性が認められた
ものの一覧です。説明は省略させていただきます。
　５頁は昭和54年７月の制度発足以来、累積のベースでの強い変異原性が認められた化
学物質の、その後の意見聴取、行政措置等の状況です。累積で530物質について強い変
異原性が認められ、その中で追加試験を実施して、学識経験者からの意見聴取をしたも
のが519。それから今後、聴取予定が残り11。この意見聴取の結果、追加試験の結果で
も強い変異原性が認められたということで、行政措置をすべきという意見をいただいた
ものが392で、これがそのまま行政指導通達による指導対象となっています。それから
追加試験の結果、ほ乳類の培養細胞でやった限りでは陰性、あまり害悪を及ぼさないよ
うだということで、特に行政指導に至らなかったものが127物質。以上のような結果に
なっています。
　いちばん最後の７頁は、この試験結果を検討していただく学識経験者の一覧です。私
のほうからは以上です。

○分科会長
　どうもありがとうございました。本件について何かご発言、ご質問がありましたら、
ご自由にどうぞ。特にございませんか。
　では、ご発言がなければ当分科会として、この新規化学物質の有害性の調査結果に関
する学識経験者の意見についての報告を承った、ということにしたいと思います。
　本日予定した議題は以上ですが、時間があるので何かご発言がありましたら、ご自由
にどうぞ。

○中桐委員
　昨今の107名の尊い命が奪われたＪＲ西日本の列車事故に関係してです。本筋の話と
しては鉄道営業法なり事業法に基づく事故の調査委員会の調査報告を待つと思います
が、労働安全衛生法なり労働基準法上の重大な違反ですとか、そういった問題がなかっ
たのか、調査を進められていると思います。現時点でどのような状況なのか、もしここ
で報告できることがあれば、ぜひ報告をお願いします。
　もう１点はこれと関連して、この審議会で先般建議をいたしました、安全衛生法の改
正に関する建議です。これに関連して今回の事故、いろいろな問題があるかと思います
が、再発防止の観点から考えて新たにとった措置、リスクアセスメントやマネージメン
トシステムの導入、過重労働対策、労働者教育等々、そういった新たな改正予定の安全
衛生法の内容で十分なのかどうか、何か新たな対策が必要なのかどうか、現時点での評
価について報告いただけることがあったら、ぜひお願いしたいと思います。以上です。

○分科会長
　以上、ＪＲ西日本の現状と、それから今度改正予定の安全衛生法に関してということ
ですが、よろしくお願いします。

○計画課長
　まず現状の調査状況です。事故発生当日、４月25日において直ちに私ども所轄の兵庫
労働局と尼崎労働基準監督署が現地の調査を行っています。同時に労働安全衛生等の観
点から、事故対策本部を局及び署それぞれに設置しています。それに加えて26日、28
日、29日にも現地の調査を行っています。
　また、事故列車の運転士が所属するのが、大阪にある京橋電車区でしたので、兵庫労
働局と大阪労働局が協議の上、ＪＲ西日本の京橋電車区に対して、４月28日に天満労働
基準監督署が調査を実施しています。さらに５月６日には、尾辻厚生労働大臣自らが私
どもの安全衛生部長と共に、現場の視察を実施しました。
　今後の対応ですが、当然のことながら引き続き被災状況の把握に努めるとともに、事
業場の安全衛生管理体制、あるいは列車の運転士についての健康管理などに問題はなか
ったか。その他、労働基準関係法令に照らして問題はなかったか。適法だったとしても
何か問題はなかったのか、といった点について調査を進めることにしています。
　それから２点目にご指摘になった点、法改正との関係です。中桐委員からもお話があ
ったとおり、実は鉄道の運行、旅客の安全確保等については、鉄道営業法、鉄道事業法
が適用されています。したがって鉄道施設、車輌といったハードの基準から、運行計
画、運転士についての資格のソフトの面に至るまで、全て実は鉄道営業法で具体的には
規定をされています。したがって、事故の原因調査も国土交通省の航空鉄道事故調査委
員会において、技術的な面を含めて全て調査をしているところです。
　ただ、一方で事業場の安全衛生管理体制等については労働安全衛生法の適用もござい
ます。したがって、例えばですが昨年末の労働政策審議会の建議を踏まえて、安全衛生
委員会の調査審議事項として、今回の法改正により努力義務化する危険有害性の調査が
調査事項に追加されるなど、かなり安全衛生委員会を実質的に動かしていきましょう、
機能を活性しましょうというような点についても、建議をいただいたわけです。そうい
った点も含めて、今後の安全衛生管理体制がより一層強化されるものと考えています。
　ただ、一義的にやはり事故調査委員会のほうで、何が原因だったのかということがま
ず解明されませんと、これはなかなか我々としてもうかつに発言できないので、そうい
ったものを待ってきちんと対応したいということです。

○分科会長
　よろしいですか。他に何かご発言がありましたら、ご自由にどうぞ。

○安全衛生部長
　あと、若干付け加えますと、６日に大臣と尼崎市松島に行ってまいりまして、現場は
すでに車輌等は片付けられていて、あとは線路を外して、証拠として持っていくという
状況でした。
　大臣は関西労災病院に入院されているお二方の被災者の方のお見舞いをされて、いろ
いろお話をされていました。その中でいくつか視点があるのですが、１つは医療の視点
として、これは安全衛生部、あるいは労働基準局の所管ではないのですが、救急医療の
関係で初期対応は十分だったかどうか、という話が１つあります。これについては今
回、かなり阪神の地震の経験もあったことから、かなり救急搬送についてはよかったの
ではないかと。あと、民間の方々がかなり搬送に協力していただいて、自主的に相当病
院に運んだという状況です。
　この医療に関しては、すでに20日が経過しているので、心の問題としてＰＴＳＤの問
題がこれから出てくる。それについて私ども、労災病院あるいは地域産業保健センター
において、相談窓口を開設していまして、相談に上がっているケースもあるようです。
　それから、先ほどの安全衛生関係あるいは労働基準関係は現在、法的あるいは非法的
といいますか、運用面において問題がなかったかということで、事故原因等に結びつく
ものがなかったか、ストレスの状況はどうかと、そういったものについて調査をしてい
ます。これはもちろん安全衛生審議会設置から運営、それから本人の健康管理の状況
と、こういったものを中心に調査をしているところです。
　それから労災の関係についても、これは相談等においてありまして、すでに100数十
件の相談がまいっているというところです。そういったような状況ですので、付け加え
させていただきます。

○分科会長
　以上の説明ですが、よろしいですか。他に何かご発言はありますか。特になければ、
本日の会議は以上をもって終了させていただきます。
　なお、議事録の署名は眞部委員と讃井委員にお願いしたいと思います。どうぞよろし
くお願いします。
　それでは、どうもお忙しい中ありがとうございました。

照会先：労働基準局安全衛生部計画課（内線５４７６）