05/05/13 エイズ予防指針見直し検討会第6回議事録 第6回 後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(エイズ予防指針)見直し 検討会 議事録 1.日時 平成17年5月13日(金)14:00〜16:30 2.場所 経済産業省別館10階 1020会議室 3.出席者   (委員)池上千寿子、市川誠一、大平勝美、木原雅子、木原正博、木村哲、       島宮道男、玉城英彦、前田秀雄、南砂、雪下國雄(以上11名、敬称略)   (厚生労働省)関山健康局疾病対策課長、川口課長補佐、他 4.議題   (1)前回議事確認   (2)エイズ予防指針の見直しについて     −ヒアリング 相模原歯科医師会会長 河原武彦氏     −総括討論(1)      5.内容 (照会先)健康局疾病対策課      電話:03−5253−1111(内線2354) − 以下、別添ファイル参照   第6回後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針見直し検討会 議事録          日時:平成17年5月13日(金) 14:02 〜16:32          場所:経済産業省別館10階 共用第1020会議室 ○事務局(川口課長補佐)  定刻でございますので、これより第6回後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予 防指針見直し検討会を開催させていただきます。  委員の先生方にはお忙しい中ご出席いただきまして、まことにありがとうございま す。  開会に先立ちまして、私から委員の出席状況につきましてご報告させていただきま す。本日、石井委員、白井委員、藤井委員、山本委員はご欠席、また、南委員、前田委 員は所用により遅れて到着されるとのご連絡をいただいております。  また、本日は総括討議に先立ちましてヒアリングを行いますが、そのために相模原歯 科医師会より河原会長にお越しいただいております。ありがとうございます。後ほどよ ろしくお願いいたします。  それでは、会の進行を木村座長、よろしくお願いいたします。 ○木村座長  それでは、よろしくお願いします。きょうの予定ですが、お手元に議事次第がござい ますが、最初に議事録の確認をいただきまして、そのあと、ヒアリングとして相模原歯 科医師会会長の河原先生からお話をいただいて、その後、私から行動変容についてのデ ータをお示しして、それらを大体3時頃までに終えて、それ以後、報告書の案につきま して議論いただきたい。このように思っております。  まず最初に、資料の確認と前回議事録の確認について、事務局からお願いします。 ○事務局(川口課長補佐)  それでは説明させていただきます。まず資料の確認をさせていただきます。  資料(6)−1−1は、河原会長より提出いただいたものです。  資料(6)−1−2は、先日、厚生労働省から地方自治体及び日本歯科医師会あてに発 出させていただきました通知でございます。  資料(6)−2は、木村座長より提出いただきました行動変容に関するアンケート結果 でございます。  資料(6)−3は、報告書案でございます。  続きまして、お手元の資料1は、前回の議事録でございます。内容につきましては、 委員の皆様にはメールでご確認いただきまして、修正させていただいておりますが、も し何かございましたら、再度お寄せいただきたいと存じます。  本議事録に関しましては、第4回までに比べまして詳細なものになっております。こ のままホームページ上に掲載させていただく予定でございますので、ご了承ください。  事務局からは以上でございます。 ○木村座長  議事録につきましてはこのままホームページに載るということでございますので、文 言等の修正などございましたら、なるべく早めに事務局までお願いしたいと思います。  それでは、これまでの検討会で4段表として資料2にご意見をまとめてございますけ れども、これをざっともう1回振り返ってみた方がよろしいでしょうか。時間的には難 しいですね。 ○事務局(川口課長補佐)  間違い等ございましたら事務局までお願いいたします。 ○木村座長  いつものとおりでありますが、それでは時間節約のためにご意見があれば、メール等 で送っていただくということで、次へ進みたいと思います。 ○大平委員  そうすると、きょうはここは対応しないということですか。 ○関山課長  後ほど、予防指針見直し検討会の報告書案というのがございますので、そこでいろい ろご発言いただければよろしいのではないかと思います。 ○木村座長  特に重要ということがありましたら、今いただいて。 ○大平委員  方針として、1つは、献血の問題についての対応策、少しは議論されたと思うんです が、そこが抜けているということ。医療の問題で、もう少し具体的に、財源の確保と か、ACCやブロック拠点病院とか、いろいろな医療機関の役割、方向性とか指針には 書かれていますが、じゃあそれを進めていく上での財源的な問題が、ここの指針の中で は触れていないので、あとで検討する中で言えばいいでしょうか。 ○関山課長  必要があればご発言いただいて。 ○大平委員  前もってメールとかで。 ○関山課長  後ほどよりもきょうおっしゃっていただいた方がよろしいと思います。その場として は報告書案の検討のときに。 ○木村座長  報告書案の該当する部分でご意見として出していただいて、報告書に盛り込むかどう か、議論をしたいと思います。 ○大平委員  そうですね。今回は指針をいかすために具体的なところがまだ不十分かなというとこ ろを意見として出したいと思います。 ○木村座長  そのときによろしくお願いします。それでは、総合討論に先立ちましてヒアリングと して河原会長から資料をいただいておりますが、事務局から簡単にご説明いただいて、 そのあと河原先生からご説明いただきます。 ○事務局(川口課長補佐)  資料(6)−1−2として通知をお示しさせていただいております。この通知は、背景 として、厚生科学研究におきまして、歯科医師を対象としてアンケート調査を実施しま したところ、約25%の歯科医師が「HIV感染者は原則として断る」と回答されており ます。これについては、エイズに関する正しい理解を図っていただいて、適切な感染防 止策を講じることで解消されるということから、その旨について、このような形で指導 をお願いしたものです。  その際に昨年度の厚生科学研究で作成しました「HIV感染症の歯科治療マニュアル 」とCDCのマニュアル、これがホームページ上に掲載されていますので、それをご利 用いただきたいということでございます。以上でございます。 ○木村座長  それでは、河原先生にお願いいたします。 ○河原相模原歯科医師会会長  今回の特定感染症予防見直し検討会に、歯科に関するお話をさせていただく機会を与 えていただきましたことに感謝申しあげます。また、この機会を考慮していただきまし た日本医師会雪下国雄先生のご配慮に深く感謝申し上げます。 相模原歯科医師会では、相模原市のご理解を得て、平成8年度からHIV感染者等歯科 診療事業を研鑽を積んだ協力歯科医師・協力歯科衛生士により、全国唯一のモデル事業 として開始いたしました。しかし、神奈川県の厳しい財政状況等による事業継続困難と 時代の要請に対応すべく歯科診療所の拡大を目指す神奈川県の方針を考慮いたし、本事 業を平成16年度を以って終了し、新しいネットワーク体制に移行することになりまし た。 本日は、神奈川県において平成17年度から新しい方向性を検討する状況の中、平成8 年度から地域歯科医師会として本事業に取り組んだ様々な経験の中から生み出された課 題に触れ、HIV感染者歯科診療の大切さ・大変さをご理解頂き、今後に生かしていた だければ幸いに存じますのでよろしくお願いいたします。 本日の資料として、「相模原歯科医師会HIV感染者・エイズ患者歯科診療への取り組 みと課題」をご提示申し上げ、報告と今後の課題等を含めA)からG)までの項目を順 次お話しさせていただきます。今回の検討会への出席要請がございましたのは、検討会 開催3日前で、時間が無く取り急ぎ作成いたしましたので不備な点はお許し願いたいと 存じます。 まず、ご提示申しあげました資料からお話しいたします項目を挙げてみますと、 A)HIV感染者・エイズ患者歯科診療の経緯として、「本事業発足の背景」・「本事  業から神奈川県エイズ歯科診療ネットワーク体系(案)への移行」について。 B)本事業への取り組みとして、「本会が現在まで築き挙げてきたものとして」・「神  奈川県エイズ歯科診療ネットワーク体系(案)」への協力。 C)HIV感染者歯科診療推進の課題、これは歯科診療を今後進めるにあたって、重要  で解決しなければならない課題。 A)からC)は、本会として本事業に取り組んでまいりました経緯そして取り組みの中  から築き上げたもの、さらに、今後の対応と現在まで地域歯科医師会として実施して  まいりましたHIV感染者歯科診療事業から浮かんできた今後の課題等をお話しいた  します。 D)の神奈川県エイズ歯科診療ネットワーク体系(案):「歯科診療ネットワーク事業の  イメージ(案)」「エイズ歯科診療ネットワーク化に向けた今後の取り組みについて」  でございますが、現在は、新しい体制を進めるべく検討段階であり、詳しくは今後検  討を重ねてまいります。神奈川県は、相模原歯科医師会を体系(案)の中の位置づけと  して、「エイズ歯科診療の技術支援等、ネットワーク充実に向けてリーダー的な役割  を担う」という方向を示しております。相模原歯科医師会といたしましては、本体系  (案)には多くの検討課題が含まれておりますが、HIV感染者等の患者さんが身近に  そして安心して歯科診療が受診できる環境を望んでおりますので、感染予防への環境  整備等を図っていただきながら対応していきたいと存じております。 E)は、エア・タービン使用による飛沫汚染状態:「作動後30秒の汚染の状態」「作  動後1分30秒の汚染の状態」「口腔内バキュームを使用した吸引操作状態」「エア  ・タービン等ウォーターラインの逆流」「口腔内バキュームに加えて口腔外バキュー  ムを併用した状態」を実験モデルとして示したものであります。ご存知のように歯科  診療はエア・タービンを使用いたしますので、その際に、エアゾル(ほとんどが歯の  切削片や患者さんの唾液・血液等)が飛散し大変危険であります。歯科医療従事者  は、他の医療従事者よりも呼吸器感染の危険率が高いことが知られており、感染予防  は医療従事者はもとより患者さんへの感染予防も重視いたしており、これらを写真等  によりご説明いたします。 F)は、歯科診療に際しての一般的な防御体制を示したものであります。 それでは、資料にそってお話しさせていただきます。  まず、本事業の経緯でございますが、本事業発足の背景として、昭和60年頃から日 本でのHIV感染者増加、昭和61年には神奈川県で初めてHIV感染者が確認されま した。これらのことから、神奈川県では「神奈川県エイズ対策」を発表し様々な対応を 講じました。これらの状況の中、神奈川県歯科医師会では「神奈川県のエイズ対策」の 重要施策の一つである「医療体制の充実」に対して、積極的な協力体制として「医療従 事者研修事業」を立ち上げました。  初年度にあたる平成5年には、県下全会員及びスタッフを対象に「医療機関エイズ意 識調査」を実施すると共に、歯科医療従事者等にHIV感染に対する啓発を目的に研修 会を開催いたしました。平成6年度には、第10回国際エイズ会議が本県横浜市で開催 されるのを機に、海外から歯科医療分野におけるエイズ問題の先駆者を講師に招き、H IV感染者歯科診療に視点をおいたサテライトシンポジウムを開催いたしました。更 に、平成7年度には、「医療従事者研修事業」の集大成として、「エイズと歯科診療〜 現状と展望〜」をテーマとして行政・研究機関・臨床家のそれぞれの立場で活躍されて いる方々を交えシンポジウムを開催いたしました。  このように、平成5年度からの3年間にわたる「医療従事者研修事業」により、歯科 医療従事者等のHIV感染に対する意識の向上・啓発という初期の目的を達成いたしま した。  次の段階として、HIV感染者の方々の歯科受診施設がない現状を考慮して、平成8 年度より歯科医療機関の確保と歯科医療従事者等の育成を目的とした「HIV感染者歯 科診療推進モデル事業」を展開することになったわけであります。  モデル事業の実施にあたりましては、個人が主体である歯科診療所の特殊性と短期間 での実施を考慮したHIV感染者歯科診療所の確保が大きな問題になりました。この時 点、神奈川県内のエイズ拠点病院・医科大学・歯科大学・多くの病院には、HIV感染 者・エイズ患者さんに歯科診療を実施している施設は一つも無く、また本事業の依頼に 対しましても協力をいただけませんでした。そこで、既存の障害者歯科診療施設を有し HIV感染者歯科診療の実績のある相模原歯科医師会にモデル事業の協力依頼がありま した。  相模原歯科医師会では、HIV感染者・エイズ患者さんの歯科診療を受け入れる歯科 診療施設が無く、感染を隠して受診していること、安心・安全な診療を望んでいること 等を考慮いたしまして、緊急にHIV対策委員会を設け、相模原市のご理解と本会会員 の理解と協力を得て、平成8年度より全国で初めてHIV感染者歯科診療モデル事業を 開始いたし、平成11年度よりモデル事業から委託事業に移行しております。  委託事業移行にあたり、神奈川県の厳しい財政状況により事業費の30%削減、翌年 の平成12年にはさらに10%の削減、診療報酬の面でも障害者加算が無くなり本事業 運営が大変厳しい状況におかれました。  相模原歯科医師会は、歯科医療人としての医寮倫理とHIV感染者の方々の歯科診療 受け入れ機関が無い社会的必要性を考慮いたしまして、事業内容の大幅な改善や見直 し、そして、厳しい本会運営の中から会員の理解を得ての多額な繰入金の本事業への計 上、障害者歯科診療施設からの医薬品・備品の借用等を図り、自助努力を重ね本事業を 平成16年度まで継続してまいりました。この間、神奈川県、神奈川県歯科医師会、本 会との再三に亘る本事業継続に関する協議の場において、現場の歯科医師としてHIV 感染者・エイズ患者さんと真に向き合い、歯科診療を通して「QOLの向上」に努めて いる姿勢を示し、本事業の必要性と現状を説明し改善を訴えましたが、厳しい財政状況 と時代に即した取り組みとして、神奈川県が示しました「神奈川県エイズ歯科診療ネッ トワーク体系(案)に沿い、本事業に代わるものとしてネットワーク体系(案)に移行する ことになりました。 次に、本事業への今後の取り組みでございますが、  相模原歯科医師会では、平成8年度からの経験と実績より築き上げたものとしまし て、(1)全国で唯一のHIV感染者・エイズ患者さんの受け入れ歯科診療施設であるこ と、(2)研鑽を重ねた歯科医師・歯科衛生士・保健師によって診療が維持されているこ と、(3)HIV感染者・エイズ患者さんが安心して受診できる環境を神奈川県、相模原 市の協力により整備されていること、(4)北里大学病院、相模原協同病院及び国立国際 医寮センター等との連携により、地域歯科医寮の拠点として期待されていること、(5) HIV汚染事故発生時の緊急事態の対応として、北里大学病院と契約・連携を執ってい ること、(6)歯科診療に止めず、HIV感染者・エイズ患者さんの「QOLの向上」に 努めていること等が挙げられ、これ等を新しいネットワーク体系(案)に生かし、協力し て行こうと存じております。  ここで、現在までの事業の展開と経験より考慮される今後のHIV感染者歯科診療推 進の課題をお話し申し上げますが、その前に、歯科診療の状況を理解していただくため に感染予防の準備とエア・タービンによる飛沫汚染の状態(実験)を、アルバムに整理し お回しいたしますので、参考にしてください。このアルバムはモデル事業開始直前のも のであり、現在の感染予防体制はもう少し簡素化されております。  資料8ページから、歯科診療に際しエア・タービンで歯を削った場合に、どのような 飛散状態になるかを、エア・タービンのウォーターラインに歯垢染色剤(赤色)を入れ、 水が飛び散る様子を実験的に行ったものであります。これ等により術者と補助者、さら に患者さんとその周囲への飛沫汚染状態がお分かりいただけると思います。この写真の 術者の装備は実際の診療(術者の防御マスク等)と違いますのでご理解いただきたいと存 じます。  写真35〜36は、上顎の前歯にエア・タービンを使用した飛沫汚染の状況で、バキ ューム装置等の吸引を行わない状態です。写真35は、作動30秒後の汚染の状態で、 術者の指・患者さんの顔や胸、口腔周囲が汚染されております。写真36は、作動後1 分30秒後の汚染の状態で、いかに広い範囲が汚染されているか、実際は約2m四方に 飛散しており大変な汚れであります。これ等の状況から万が一を考えて、患者さんごと にエプロンの交換やブラケット・テーブル等のビニールカバーが必要になります。  写真37は、同様な実験で口腔内バキュームを使用した場合とさらに口腔外キュームを 併用し吸引操作をした状態で、いかに飛散が抑えられているかお分かりのことと思いま す。  写真38〜39は、エア・タービン等ウォーターラインへの逆流を示したものでありま す。ご存知のように、エア・タービンは高速で歯牙等を切削するため、切削時冷水で冷 却する必要があり、切削終了と同時に瞬時に止まるため陰圧がかかる機構になっており ます。その際に、口の中の唾液や血液を吸引してしまいます。吸引を防止するため逆流 防止装置の付いたエア・タービンの使用と空ぶかしを行うことが感染予防には重要であ ります。  写真29は、飛沫汚染状況を考慮した診療に際しての一般的な防御体制であります。こ れ等の防御体制は、全身の症状や処置内容によって対応するものであって、決して患者 さんによって変わるものではありません。  感染予防に対して、ほんの一部をご紹介いたしましたが、これらのことから歯科診療 には付帯設備とそれに要する時間がいかに係るかご理解いただけたと思います。  さて、資料の5ページに戻っていただき、相模原歯科医師会でのHIV感染者・エイ ズ患者さんの9年間に亘る診療から得られた「HIV感染者歯科診療を推進するための 課題」として、重要な解決しなければならない幾つかの課題を挙げてみたいと存じま す。  1つは、平成15年度〜16年度に厚生労働省で実施いたしました「HIV感染症の医療 体制の整備に関する研究」でのアンケート調査によりますと、拠点病院に歯科診療施設 を併設しております病院は約60%。その中で常勤歯科医師は1〜2名と少数で対応に苦慮 している状況、しかも収益性の面より、拠点病院の中から歯科診療施設が順次閉鎖され ているのが現状であります。さらに、感染予防対策に関しましても、拠点病院に併設さ れております歯科診療施設の50%において、エア・タービンを患者ごとに変えられるほ どの余裕が無く、設備が整っていない状況でした。拠点病院だからといって安心して患 者さんを紹介できない状況であります。病診連携と専門性を有し高度医療を展開できる 拠点病院歯科診療施設が重要視されます。  今後は、個人の診療所や地域歯科医師会等からの紹介に対応できるように、歯科を併 設していない拠点病院に常勤歯科医師・歯科衛生士を配置すると共に、感染予防に対す る設備の充実を行うことが、歯科診療の推進に大きく繋がると思います。  2つ目は、院内感染予防に関する設備等でございますが、歯科診療は観血処置を伴う ことが多く、感染予防には特に配慮が必要であります。特に、先ほどお話いたしました ように、エア・タービンの逆流防止装置、一人一人の患者さんに取り替えることができ る体制の確保、付帯設備等に関する感染予防体制への対応等、医科に於ける感染症対策 病院への対応と同じく歯科診療に対しましても感染予防対策費等の対応策をお願いいた します。  3つ目は、病診連携システムの確立でございます。地域歯科医師会や個人診療所での 診療に際し、処置内容や全身状態、免疫能の状態により限られた設備での診療に限界を 感じたことが多々ありました。普通に日常生活をしておられる患者さん(免疫能が保た れており、しかも血中ウイルス量が少ない時期:HIV感染無症候期)には、地域歯科 医師会や個人診療所でも対応が可能ですが、重篤な症状、結核等の種々の疾患に罹って おられるAIDS患者さんの診療処置と事後管理には、十分なる配慮と対応が要求され ますので、専門性を有し設備等が整った拠点病院での安心した診療が、患者さんにとり ましても術者にとりましても望ましいと存じます。拠点病院歯科と地域歯科診療所との 連携システムの確立をお願いいたします。  4つ目は、HIV感染者歯科診療に関しての診療報酬と自己負担に関してであります が、診療報酬に関しては、100/100加算がありましたが、1年間で廃止されており、歯科 診療の付帯設備等を考慮いたしますと、個人診療所では大変困難な状況におかれており ます。  当面の策として診療報酬に50/100加算を適応していただくことと、HIV感染者の方 々に対し、精神面・経済的面より一部負担金の補助を考慮することも、受診に繋がるも のと思います。  5つ目は、文部科学省に働きかけ、大学教育の場で徹底した感染予防対策を図ること も重要と存じます。  6つ目は、総合的に見ての今後の歯科診療推進対策でございますが、各拠点病院に設 備の整った歯科診療施設を配置して、そこを核にして専門性を有する協力歯科診療所を 育成し、病診連携を密にしてHIV感染等の患者さんが受診しやすい環境整備を図るこ とが最も必要なことかと存じます。  これは、個々の組織では対応できませんので、国等のご配慮をお願いいたします。  雑駁な説明でございましたが、相模原歯科医師会の地域での取り組みと、それらから の課題等についてお話しさせていただきました。有り難うございました。 ○木村座長  どうもありがとうございました。歯科診療につきましては、写真でご覧いただきまし たように、エアゾルがかなり広範に飛び散るのでバキュウムが必要であるということ で、ハンドピースが足りないなど感染対策上、問題が多く、整備が十分整っていない拠 点病院の歯科もあるということでございます。そしてまた、自治体においては予算削減 の中、いろいろ厳しい状況にある。そういう中で歯科診療ネットワークを立ち上げ、努 力していただいているというお話でございますが、これは報告書の中に歯科診療につい てどういうふうにまとめるか、事務局でもご検討いただきたいと思いますが、ご意見あ りますでしょうか。 ○大平委員  取り組みありがとうございます。患者からしますと、エア・タービンの問題ですと か、感染制御の問題について1つお伺いしたいのは、B型肝炎、C型肝炎の患者さんに ついてはどういうふうに対応されているのかということ。それから、タービンの問題で は、国立国際医療センターにACCが設置されるときに、歯科の問題でタービンの問題 についても特別な部屋の中で特別な扱いをすることが必要ないとして、患者が差別のな い適切な診療を受けて行くという方向性が示されて、私たち患者として既に解決されて いると思いましたが、歯科診療現場として、こういう写真で出てくるというのは私たち としても意外に思っておるところです。これだけの体制を整えるとなりますと、費用も かかりますし、特定の病院でしか治療できないということになると思うので、私たちと しましては、今実際に一般の歯科診療施設で受診しておりまして、逆流防止装置等につ いては一般の開業医さんでも頑張ってやっていただくということで、よほど大きな手術 とか、そういうことでない歯科診療は東京都では歯科診療ネットワークの中でやってい て、拠点病院とか特殊な病院に行かなければ歯科診療が受けられないという状況は取り 払われていると理解しておりました。それがきょう、こういう場面でこういう形で出て きたというのは大変意外でありますし、実際にどういう偏見というか、そういうものが 私たち患者にもたれているのか、疑問なんですが、歯科の先生たちが、患者さんに来ら れることで迷惑だという、新聞にも出ていましたが、そういう問題が一つ大きく根底に あるのかなあと思います。  日本エイズ学会とか、そういうところでも、眼科、歯科の受診の問題で、エイズ患者 を特別みたいに言われますけど、実際に感染症にかかっている患者さんというのはいっ ぱいおられまして、B型肝炎の患者さん、C型肝炎の患者さんなど、大変多うございま す。そういったところで、じゃあ、ユニバーサルプロポーションがきちんとできている のかどうかという問題に到達しないで、HIV感染者についてはこういう装備が必要で ある、こういう体制が確立しないと患者に来てもらっては困るという、科学的に見ても その論理立てがないのではないかなと思うんですね。  もし、そういう危惧があるとしましたら、感染制御全体の問題としていろいろな感染 症の患者さんが病名を言わずに受診するということを前提として了承するかという方策 を考えていただきたい。その前提で私たちが医療機関にかかるということでないと、患 者側としてはいつまでも医療機関の偏見があるんだなあというふうに受けとめてしま う。ここの議論は指針の方針として、患者は国民であって、国民が安心して医療を受け られる体制はどういうふうにつくっていくのかというのが良質な医療の提供と偏見差別 の解消という観点から重要なところだと思います。ですから、HIV感染症の患者の治 療には、特別な装備、特別な問題があるということについて、社会がそうだというよう な前提となる根拠が乏しいということです。木村先生の班研究にあると思いますが「H IV・エイズ歯科診療における院内感染予防の実際」という研究班の研究が長年の研究 において偏見と医療差別を解消する方向性はなく研究そのものが遅れているのではない かと思います。もう少し社会性をもった研究テーマで取り組んでいただきたいなと思い ます。 ○河原会長  私たちは常々、大平委員がおっしゃったよう形で取り組んでおります。しかし、歯科 医師会組織での診療体制と各診療所での診療体勢とでは、診療設備と緊急体勢等の環境 に違いがあります。診療に関しまして現在は、B型肝炎・C型肝炎の患者さんに対する 感染予防体勢レベルでの診療をしていれば、問題ないという認識をしております。ま た、今回お見せいたしました資料等の感染予防対策は、一般的に感染予防の啓発の動機 付けということで、厚生労働省エイズ対策研究事業の改訂版の中から提出させていただ いた資料です。これ等から、多くの方々に対する医療上の際は種々の対応が必要とさ れ、処置等により予防体勢をとりながらの診療をしている状況を理解していただくため の資料であり、決して差別とか偏見があるということではありません。  今度のネットワーク体系(案)では、神奈川県は東京都のネットワークを参考にしてい ると思います。今、大平委員がお話になられたように、安心してどこでも受診できる状 況を念頭に置き、神奈川県らしい体系作りに協力して行きたいと思います。個人個人に なりますとそれぞれ温度差がありますが、組織として前向きに対応して参ります。 ○木村座長  診療の実態について確認したいんですけども、こういうエア・タービンを使われると きには、口腔内バキュームは使われるんですね。 ○河原会長  そうです。 ○木村座長  ですから、診療の実態においては10ページの一番上の37番の写真にあるような状況と 考えてよろしいわけですね。 ○河原会長  誤解のない様にお願いいたしますが、提示させていただきました資料の写真は、あく までも実験としての参考資料であります。通常はこのように飛散するけれども、口腔内 バキュームや口腔外バキュームを使用・併用しますとこのように飛散が極端に減少する 状況をお示し致したものであります。現在はこのような状況のもと診療が行われてお り、大平委員もこの状況であろうと思います。感染予防にはこの他沢山ございます。お 示しいたしましたのはほんの一例であります。 ○木村座長  白い帽子を被った写真になっていますけど、これは飛散の状態がわかりやすいように するためにやっているのであって、治療でこうしているということでもないわけで、こ れは実験レベルだということですね。 ○雪下委員  私も日常診療している実地医療家ですが、今歯科の現状についてお話がありました が、大平委員が言われているような差別とか偏見とかという段階の問題ではないわけ で、前にもちょっと申し上げたかもしれませんが、現状の医療体制で普通の診療として はできないということは、これは承知していただかないといけないと思っているんです が、例えば、細菌による感染制御の問題とウイルスによるものの対応、これは全く違う のはご承知のとおりでありまして、特に今医療体制としては、ウイルスによるC型肝炎 体制というレベルで実際に診療しておりますので、普通の診療に際しては、これは歯科 の場合も河原先生も言われたとおり、私どもの医師会としても一向に問題ないわけで、 それについてどうこういうということではないんですが、今の場合のような観血的な操 作をする場合には、それなりの準備はどうしても必要で、例えば、C型肝炎を防御し て、手袋をして、マスクして、それでいいのかというと、これはご承知のように針刺し 事故によっても感染が起こるわけで、それに対して十分な配慮をしていかなければいけ ないということがありまして、今のマスクで顔を覆っているのは実験段階だと言われま したけれども、SARSの問題のときなんかでも防御をして医師会は対応したときで も、それなりの、普通の感染症とは違う対応が必要だということ、これはご承知いただ きたい。もちろん、医療機関においては、誰でも、観血的な治療も、何でもやってあげ たいという気持ちはあるわけですが、でも、これは程度によってはどうしても拠点病院 なり、専門の病院にお願いしなければならない面が出てくるということをご理解いただ ければと思います。 ○長谷川氏  2点ほどお話したいと思います。1つは、この飛沫汚染ということがこういう形で出 されている。それが実験であるということも十分理解しています。ただ、ここの中で飛 沫汚染と感染の因果関係が果たしてどのくらい問題があるのかというところがないまま 語られてしまうと、どういう状況なのか、若干疑問に思いました。その点はここの研究 の意図として十分理解できるんですけど、例えば、現在ここで議論されているのは、H IV感染がわかった者に対してどう処置をするかということだと思います。ところが、 実際には、木原先生のお話ですと、20%ぐらいの捕捉率しかないと。残りの80%の、お そらくいるであろうと予測されるHIV感染者、これは大平さんからユニバーサルプロ ポーションという言葉が出てきましたけれども、そこに関してはどう対処されている か。つまり、ここで感染がわかった人間だけを対象にして研究がたされること自体に、 それ以外の残りの8割の感染が未確認の人たちの存在は分けておいて、わかった人だけ を対象にして研究がなされる。そのことに若干違和感を覚えます。ですから、逆にむし ろユニバーサルプロポーションをどう進めていくかという議論の中でこの話はなされな ければならないんじゃないかというふうに感じました。 ○木村座長  今までのエビデンスとしては、エアゾルを吸入して感染したという例は報告がありま せん。粘膜に飛沫を浴びた場合は感染の可能性は否定は出来ない。あと、感染がわかっ ている患者さんにだけ何か特別な対応をするということではなくて、区別しないでスタ ンダードプリコーションの精神でやるのがいいんじゃないかという趣旨かと思います。 先生、何かコメントがございますでしょうか。 ○河原会長  会員の個人個人としての対応を考慮いたしますと、それぞれ諸環境と状況により一律 に捉えるのは難しいものがありますが、ユニバーサルプリコーションを行うということ は、どのような歯科処置におきましても同様な感染予防体制を、全ての患者さんに行う ことであり、前にもお話いたしましたように、症状や処置内容により対応するものであ り、医寮人として区別して診療することはありません。以前は、HIV感染の患者さん を診療し、現在はB型肝炎・C型肝炎の患者さんを診療しておりますが、診療時は感染 者の方を診ているとは思いませんし、一人の患者さんとして診療しております。テーブ ル上では様々な議論がされますが、個人の診療所では症状と処置内容等によって限界が あることを念頭においていただきたいと存じます。 ○木村座長  エア・タービンの話と、もう1つ、逆流防止弁の装置の話がありましたが、これにつ いては次の診療を受ける患者さんへの影響がありますので、できるだけそういうものは 整えていく方がいいと。 ○大平委員  ユニバーサルプロポーションを進めていく中で歯科の先生たちがいろいろ頑張ってき て、感染制御の技術的な面で医院負担等ボランティア的な感じでやってくださる方もい らっしゃる。私たちにとって心苦しいところがあります。ですから、医療保険点数での 補完が大切です。誰でもが診療に行って、差別というか、そういう問題なく治療が受け られる。そういう体制については財源的な問題がしっかりなければ、診療する側も安心 して機器整備をしたり、いろいろなこともできない。患者も差別感なく受診できるため には、歯科の先生たちが必要な機器整備や安心して診療することのできる手当等が必要 ということを、この指針や報告書の中でもぜひ訴えていきたいと思います。 ○木村座長  私の研究班で池田班員に歯科の方の検討をしてもらっていますけれども、そういう中 でも患者さんの人数分ハンドピースがないために、1日の診療の中でハンドピースを使 い回ししなければならない状況があるといった、そのへんの問題点もあって、改善をお 願いしているということがございます。それは一重に予算の関係があると思います。ほ かにご意見ございますか。 ○藤原氏  基本的には、全部を全部ひとつのところでやるということではなくて、せっかく連携 先をつくっていただいていますので、どういう状態になったら連携先に送るかというガ イドラインであるとか、そのときの説明責任とか、そういったものを初期の段階では果 たしていき、将来的には歯科ですから、大学病院の歯科に通っていると、どうしてかな と思われるという声もあったりしますので、どこの病院でも診てもらえるというのをゴ ールとしますと、今の段階ではせっかく連携先をつけていただいているので、ガイドラ インをつくって、こういう症状であればそちらに渡す、みたいな形のきちんとしたもの をつくっていただいて、医療者、患者双方が納得するような形というのはとても重要で はないかと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○木村座長  ネットワークをつくりながらガイドラインで対応するという形に神奈川県もいくので はないかと思いますが、症例によっての固定的棲み分けというのはなかなか実際には難 しいと思います。いろいろな総合的な形の中で、プライバシーを守る形で簡単な部分は 近隣ででき、難しいところは専門家性に任せる。これはやむをえないと思いますので、 そういうものを作成していくということかと思います。  どうもありがとうございました。河原会長におかれましては、この後予定がおありと いうことで、時間になっていますので、どうもありがとうございました。 ○河原会長  本日は、歯科に関するお時間を頂き有り難うございました。経緯と課題等をお話しさ せていただき、要望にはあまり触れませんでしたが、厳しい状況と環境下で真剣に取り 組んでおられる先生方が全国にもおられると存じますので、先ほどの「HIV感染者歯 科診療推進の課題」をご検討いただき、よりよい環境整備を確保していただくことを厚 生労働省の皆様方と見直し検討会の皆様にお願い申し上げます。どうもありがとうござ いました。 ○木村座長  どうもありがとうございました。  それでは次に、資料(6)−2で、私の名前が入っている「患者行動アンケート調査結 果」をご覧下さい。これは時間がなくて、非常にラフな集計にとどまっていて、お示し するのはちょっと恐縮なんですが、外来の患者さん353名に対してアンケートの依頼を いたしまして281名の方から回答をいただいた。これは今年の3月1カ月間の調査であ りますが、患者さんの背景などはその下にあります。  ごらんいただきたいのはまず2ページの下の2つでして、相手に自分のHIV感染に ついて告げられているか、いないかという状況ですけれども、281名の中で、告げたと いうのが約100名ですね。それから、告げていないというのが100名で、相手によって、 安心して告げられる相手かどうかということを見極めて告げたり告げなかったりしてい るという方が60名程度でした。  異性間セックスということで、コンドームの使用状況はどういうかというようなこと も調べましたが、これが右下にありますように、使おうという意志に関してで、いつも 使おうと思っている、というのが100%と表示されているところですが、100名強で、半 分以上の場合に使おうと思っていたという方が70名ぐらい、半々ぐらいというのが60名 程度、そのような比率になっています。そう思っていて、実際に行動の面ではどうかと いうのは、次のページの左ですが、いつも使えていたという人が50人強ということで、 半分以上使えていたというのが100人、意志はあったけれどもなかなかそのとおりには 行えなかったというような実態がこのへんに少し見えているような気がいたします。  実際に使えなかった理由については、相手が使うことを好まないのでできなかった、 というような理由が割と多かったように思います。  あと、性的接触の時点でアルコールの飲用があったかどうか、あるいはドラッグを使 用していたかどうか、という調査では、アルコールについては、無し、あるいは時々あ り、というのが半々ぐらい。ドラッグについては無しがかなり多くて、時々ありが80名 弱です。 あと、最後のページについては、回数がどういうふうに変化したか、安全な 性行動が陽性と知ったあとに変わってきたかというような状況についてのデータでござ います。  この症例の中には女性も若干含まれておりますし、感染経路、7割例はおそらくMS Mだと思いますが、そのへんの層別を行っておりませんのでラフな集計で、行動変容、 どういうふうにしてより安全な行動にもっていくかというのは、日常の診療でいつも患 者さんに話をしているつもりではいるんですけど、実態としてはなかなか実行が難しい 面があるんだなあと、このデータを見て感じております。  患者さんの行動変容を促すために、医療従事者はどういう技術、テクニックを身につ けていくべきかというようなことについては、今研究班で、コーディネーターナース、 あるいはカウンセラーの方の協力を得て医療者向けの手引書みたいなものをつくってい るところでございます。このデータについて市川先生、何かコメントがございました ら。 ○市川委員  実際に陽性になった方たちの情報がなかなかない状況で、特に現在の生活の中での健 康管理に関する情報が非常に少ないということがあると思います。そのような現状を含 めて、陽性者の人たちとどう向き合って、どう生活支援をしていくかということを、医 療側、あるいは保健側で取り組みをどのようにしていったらいいかを考えていくことが 必要だと思います。このように情報を集めてくるというのは必要だと思います。ただ、 この情報の解釈については、例えば、このあと、陽性者の人たちと一緒にこういったデ ータを解釈するということをして、その中から陽性者の人たちへのかかわり方や、関わ る内容が見出せるんじゃないかと、この調査結果を見ながら思いました。  木村先生、この調査内容は過去のことではなく、現時点のことですね。実際にアルコ ールの性交渉に及ぼす影響、あるいは、ドラッグ使用がどう影響するかということにつ いては、欧米ではそういった報告がございます。日本ではまだそういう情報がきちっと 分析されていない現況であります。私たちの研究班で、アンケート調査に協力してくれ ている人たちの回答でいきますと、セックス時に使用しているものとして、アルコール はまだ聞いていませんが、ドラッグ関係では、これは違法ドラッグではなくていわゆる 脱法ドラックについては、コンドームを必ず使っている人たちの方が、全く使わない人 より、それらのドラッグを使っている割合が高いという結果が出ています。その人たち はみな大丈夫だということではないのですが、必ずしもドラッグを使っているから危な いかというと、そうではないとも言えるわけです。こうした点について、感染リスク行 動ということについては日本ではまだ十分分析できてないという現状にあると思ってお ります。  今日のこの報告は陽性の人の現状ですが、最初に申し上げましたように、こういった ドラッグやアルコールが性行動にどう影響しているかということを、もう少しヒアリン グをするとか、あるいはその結果をもってどんな取り組みが必要なのかということな ど、もう一歩進めた調査をすることがいいのではないかと思いました。コメントになっ ているかどうか。 ○木村座長  どうもありがとうございます。これは前の課長補佐からの相談もありましてこの見直 しのときに少しでも参考になればということで急遽調査を行ったものですが、このアン ケート項目についてはたしか木原先生の以前の調査項目を一部使わせていただいていま す。 ○木原(正)委員  それは承知しておりませんでしたが、実は調査の後の流れですが、患者であろうと、 一般の若者であろうと同じなんですが、例えば、医療従事者からこうすべきである、と 「指導」すれば、それによって行動変容が期待できると思われているのであれば、それ はずいぶん大きな間違いだと思うんですね。若者でもそうですが、ある行動をとるには いろいろ理由があって、心理的な問題、仲間や相手との兼ね合いとかいろいろありま す。ですからただ患者さんを管理する、指導するという形でのガイドラインになるので あれば、それはあまり効果がないと思います。むしろ、問題を話し合いながら、考えて いくような形にいたしませんと、ちょっとまずいんじゃないかと思います。 ○木村座長  その手引書についても、まだ出来上がっていないんですが、内容的にはおそらくクラ イイエントといいますか、その側に立って、そういう人たちとディスカッションしてい きながら行動変容に結びつけていく。その際にはどういうふうなアプローチをしたらい いかというふうな方向性の手引書になる予定で、一方的に指導するというふうな教育調 のものにはならないと思います。 ○池上委員   私たちは、ゲイコミュニティ、あるいは若者等々でコンドーム使用の困難性につい て検討してきましたけれども、一番の困難性は相手がいる行動であり、自分ひとりでは 決められないということでした。これはゲイあるいはヘテロ、HIVの有無にかかわらず、 同じことがいえるようです。それともう1つの共通した点では、わかっていてもコンド ームを実際に使用するというところにおけるいろいろな負担感がある。効果があるのは 百も承知しているけれど、実際に使用しにくい。この負担感の内容はいろいろあると思 うのですね。ここらへんを今後さらに調査をしていって、負担感をいかに軽減するかと いうことも含めて、できればパートナーと話し合っていくような場を設けたりとかコミ ュニケーションの支援をするという方向性は必要だと思います。そして、これは1つの グループでうまくいくと、セクシャリティや性別を越えて有効な手法になる可能性があ ると思います。 ○木村座長  そういう面での成果、研究結果が出てきているんでしょうか。 ○池上委員   池上班では昨年ゲイコミュニティでの調査をしましたが、さらに突っ込んで分析し ていきたいと思っています。 ○木村座長  ぜひそういう点を進めていただきたいと思います。 ○長谷川氏  これは私自身も10年近く前からいろいろ申し上げたりしていたんですが、周囲の医療 者の方たちに。まず、性に対して医療の現場で理解されていない状況があるということ です。それをまず1つ申し上げなければいけないと思います。それはどういうことかと いうと、おそらく今まで、性の問題というものが、HIV感染症が性感染症でありなが ら、医療の現場では本格的に本気で取り組まれていなかったのではないかと感じます。  例えば、実はおそらくこの353分の1の人間だと思うんですけれども、これは調査票 は出されてないんですが、アンケートに答えていまして、性が非常に単一的に捉えられ ているという感じがしたんですね。つまり、性行動というのは多様性があって、コンド ームの使用の意志というのがどういう性的接触を想定されているかということは排除さ れて問われているとか、そういった理解が医療の現場で進んでないのではないか。つま り、コンドームを必要としない性的な接触もあり得るんだという前提がまずなされてな かったように思います。  そういった性行動の多様性とか、あるいはまた医療者の方たちが病院の中で私たち患 者に接するときに性的な問題で実はさまざまないわゆるハラスメントに近い状態の指導 を受けることがあるということが幹事会のネットワークの中で報告されています。その 中で実は、かなり重篤なケースとしては1年以上の心因性の性的不能に陥ったというケ ースも報告されています。ですから、そういうところで、これからもっと医療者、医療 の現場の中で性に対しての理解を進めていく必要があるというふうに感じております。  そして、おそらく、今の患者たちの中では、病院では性のことは話さないというムー ドが主流になってきています。それはそういったハラスメントの経験とか、あるいはハ ラスメントまではいかないまでも、ディスコミュニケーションであるということで諦め のムードが実は強いんですね。ですから、そういったコミュニケーションの前提がない 段階の中でおそらく指導、教育だけでは性行動の変容は起きないだろうと思います。  そういう部分で、これから性行動に介入するのであれば、お互い、患者と医療の現場 の方たちとの相互理解が必要になってくると考えています。  最後にもう1つ、お話させていただきたいのは、ここにおいてそういう問題が出てき たということは、おそらく、耐性ウイルスの出現の問題がきっかけになったと思いま す。私の記憶では、日本での耐性ウイルスの出現率は19%ぐらいで、予防に同じように 失敗したアメリカでは40%前後になっている。つまり、日本のHIV薬剤耐性ウイルス の出現率はアメリカの約半分程度で、成功したオーストラリアが30%前後だったと思い ますので、そこと比べてもかなり低い。つまり、今の段階では、言い訳めいて聞こえる かもしれませんけれど、日本の患者さんたちはかなり自律的なコントロールがまだでき ているのではないかというふうに私は認識しています。ですから、これを維持してい く、あるいはさらに広げていくということが重要だと思います。そのためには、検査か ら病院に入るプライマリーの段階での対応が非常に重要ではないかと考えています。 ○藤原氏  私は、医療者が他の社会資源、特にセーフサポートグループを活用していくというこ とがとても重要なのではないかと思います。市川先生のところにしても、大平先生のと ころにして、池上先生のところにしても、長谷川先生のところにしても、そういったグ ループの中で活動するために、そういったところで実績を出して、まさに市川先生のと ころなどは、(過去1年の受検率の上昇、コンドーム常用率の上昇という成果もありま すので、)そういったところへの理解が医療者、特にコーディネートをされる方から、 あまり理解されてないのではないかというふうに、それはどこから出てきたかといいま すと、先生の研究班の内野先生のアンケート調査において、医療者側からピアカウンセ リングに対する理解が少なかったというふうな意見というか、尺度が今までの医療者の 尺度でありますので、どことなく通用しなかったりするようなことがあったという気が しております。先生のことですから、経過を見ていただいていると思いますので、あら ためてする話でもありませんが、そういったところをご理解いただきながら、よりよい ガイドラインみたいなものをつくっていただきたいと思いますし、つくっていただく際 には、先生の東大系、医科研系、ACC系でかたまらずに、できましたら、いろんなと ころの視点、意見を聞きながらつくっていただければ本当によいものができるのではな いかと思います。患者といえば何々さん、学校といえば何々さん。ドクターといえば何 々さんといった形でつくっていかれますと小さいものになってしまうような気がします ので、もしそういったものをつくっていただくのであれば、患者側に立ったとか、そう いった視点はちょっとおいといて、平場でつくっていただければいいものになるのでは ないかと思います。よろしくお願いします。 ○木村座長  ほかによろしいでしょうか。 ○市川委員  このことをどう活かすかという話が出ましたが、もう一方で、たぶん木村先生の方で 調査されていた意図というか、考えなければいけないことの一つとして、なかなか予防 というのが難しい。さっき池上先生がおっしゃった相手との関係性ということがある。 それをどうしていったらいいかという問題があるんだということが、今の陽性者の人た ちの中でも起こっていると思います。  もう1点は、アルコールとかドラッグで、いってみればいわばセーファーセックスを ある程度阻害しているようなファクターのものも使用されているという現状があるとい うことで、その点について、今後行動変容という視点でどういう取り組みが必要かとい うことを示していると思うんですね。どういうふうに解釈し、どのような取り組みをし ていくかということを考えることが、今後は必要だということを示していると思いま す。  そのような観点で、私が最初に申し上げたのは、陽性者の人たちと実際にどういうふ うに、どういう言葉でかかわっていくか、なかなか伝えられない。あるいはどういう場 面で相手との関係性の難しさがあるのかなどを具体的にして、取り組んでいく必要があ るということをこの報告は示していると思っています。そういうことを考えていく上 で、例えば、患者の会の方とか、カウンセリングにかかわる人たちと一緒に課題整理を していく必要があると思います。 ○関山課長  一点、よろしいでしょうか。これは先ほど、座長、池上先生におっしゃっていただい たのですけども、実はエイズ動向委員会で、なぜ同性愛の方々が平成11年から急に増え てきたのか。行動変容は、この実態はどうなっているのか、ということで調べてみる必 要があると指摘されましたので。これはまさにエイズ予防指針の見直しでありますか ら、こういうようなデータは、木原先生がおやりになったデータがかつてあったのです が、現在の状況というのがないということで、急遽、木村先生にお願いしたということ であります。とり方としては、急遽お願いしましたのでラフな集計という形であります が、ただ、流れとしては大体こういうような流れではないか。一方、今委員の先生方に お話いただいたようなところが問題としてありますので、後ほど報告書案がありますの で、参考にしていただければと思います。 ○市川委員  次の話として、これは陽性者から得られた情報ですが、予防という視点でいろいろな 啓発をしているところにも同じような課題があるということを考えなければならないと いうことを、この報告は示していると思います。そのようなことへの取り組みは、例え ば、研究班で取り組むことも必要でしょうし、もう一方で、実際にこれは(アルコール やドラッグ)リスクとなっているかどうかといったことを明らかにしたデータはないの で、そういうことがわかるような調査を行い、調査の分析結果について議論していくこ とが必要であると思います。 ○木村座長  このような調査の機会をいただきましたので、データを元にまたこういう情報を患者 さんにどう活かしていくかというような方向で活用していきたいと思います。 ○木原(正)委員  調査する側、される側、それから指導する側、される側ということではうまく行かな いと思うんですね。私どもの研究班で、井上君という研究者が、患者さんと一緒に調査 をして、患者さんとともに何が必要かというパンフレットをつくり、また、医療者とも 話し合って、医療の現場では何が必要かというものをつくって、それを今評価しており ますので、そうしたものもぜひ活用していただければと思います。 ○木村座長  ありがとうございます。それでは、きょうこの後、資料(6)−3、報告書案に今まで の議論の総括が出ておりますので、これを中心にご意見をいただいて、あと、次回第7 回の1回を残すのみとなっていますので、きょうの議論をもとにまたご意見をいただい て最終的な案を次回まとめたいと思っております。  この報告書案につきまして、概略を事務局からご説明いただきます。 ○事務局(川口課長補佐)  事務局から簡単にご説明申し上げます。この報告書でございますが、これまで四段表 の方に検討内容を打ち込んで議論を整理してきたところですが、今回、その四段表の中 の対応策を踏まえまして、指針に基づいて実施されてきた施策の今後目指す方向性と、 指針の見直しの際、参考とするべき基本的な考え方等を事務局として取りまとめまして ご提案させていただくものです。  1ページめくって、目次の部分をごらんいただきます。こちらで大体の構図がわかっ ていただけると思います。 「はじめに」で本検討会の位置付けと目的、検討経過を整理しました。  次に、Iで発生動向と現状の問題点について整理いたしまして、II以下に、見直しの 方向性の議論を書いております。  見直しの方向性では、まず、総論的事項、基本的方向として三本柱をお示ししていま す。それにしたがいまして、各論を見ていこうという流れになっております。  では、1ページ「はじめに」では、まず第1パラグラフでは、エイズ対策の法的な枠 組みについて説明しています。感染症法がありまして、この6年間、それに基づき施策 を進めてきたところでございます。  次のパラグラフでは、それら施策を講じてきたにもかかわらず、新規HIV・エイズ 患者発生数は増加傾向にあり、指針の見直しに伴いまして、しっかり議論していく必要 があるということに言及しております。  あと、下の方に本検討会の位置付け、議論の経過を主に記載しております。  1枚おめくりいただいて、I.我が国におけるHIV・エイズの発生動及び問題点の、 1の(1)発生動向 では、発生動向調査開始以降、皆さんご存じのとおりと思います が、累積感染者・累積患者は1万件を越え、特に近年増加傾向が上昇しているという点 に触れました。  1の(2)で、新規感染者の傾向としては、全国への拡大、若年層が多いこと、さら に若年層の性行動の早期化、活発化にも触れまして、あと、感染経路別には、性交渉、 特に男性同性間の性的接触が多いということについて記載しております。  1の(3)として、これらの分析から、現状としてリスク行動をとっている国民への 対策が重要である。また、若年者における感染者増加の可能性があるような社会環境が 進行しつつある現状を鑑みまして、国民一人ひとりにおいて他人事ではないというまと めを行っております。  1ページおめくりください。この発生動向を踏まえて、2で現状の問題点を、特に大 事な問題点を5つ挙げております。  まず、(1)では、診断時に既にエイズを発症している事例が多い。よく言われる表現 としまして「いきなりエイズ」が多いということでございまして、その原因として、普 及啓発の効果がなかなか行動につながっていない現状、それから、利便性の高い検査体 制が必要であること、などを記載しております。  次に、(2)若年層や同性愛者における感染拡大の傾向への対応が十分でない。という ことついて言及しています。  (3)では、一部の医療機関への感染者・患者の集中が生じている。その原因として、 質の格差、病院間の連携不足等を記載しております。  (4)では、国と地方自治体の役割分担が不明確である。指針におきましては、国及び 地方自治体の両者がその責任を負うことになっておりますが、その役割分担がこれまで 明確になっておらなかったために、有効に機能しなかった部分があったのではないかと いうことでございます。  最後に、(5)で、各種施策の効果等の評価が十分になされていない。という点に触れ ました。その要因としまして、そもそも適切な目標設定がされていなかったのではない か。また、Plan・Do・Check&Actionといった姿勢が見られなかったのではないか、とい うことに言及しております。  そういう問題点を踏まえて、今後どうしていくか。  II.エイズ対策の見直しの方向 1.総論:エイズ対策の見直しにおける基本的方向 として、3つ挙げております。 (1)HIV・エイズ対策の疾病特性の変化に対応した施策の展開。ということで、従 来、性感染症として捉えることの重要性が非常に高まりまして、また、HAART療法 の出現によりまして、「不治の病」から「不死の病」に変化してきた。そして、誰でも 罹患する可能性があるということから、疾病特性の変化に応じた施策の対応が必要にな っております。(2)国と地方自治体の役割分担を明確化するべきであろうということ で、それぞれの得意・不得意、比較優位性を整理しまして、これまでの施策を再整理し ようという視点でございます。 (3)予防対策及び蔓延防止対策に係る施策の重点化・計画化 予防指針はエイズ施策 の幅広い分野について記載されておりますが、これまでの原因分析等を基に、重点化す るべき点を明らかにしよう、と記載しております。具体的には、普及啓発、検査・相談 体制の強化、それに伴い新規感染者の増加に対応した医療提供体制の整備を挙げており ます。  2.各論では、(1)原因の究明。現行の発生動向調査では、人権の保護に十分配慮 するということで、感染者・患者の居住地に係る情報が含まれておりませんが、今後、 都道府県が主体的、計画的にさまざまな施策を実施するために、地域における発生動向 を正確・適時把握できるような仕組みを検討する必要があるとしております。 (2)普及啓発及び教育。(1)この基本的方向性としては、従来から感染予防にはコン ドームの使用が重要であるといわれていましたが、これに加えて、豊かな人間性を構築 して言葉によるコミュニケーション能力の向上を図り、さらに家庭における責任につい て言及しております。(2)で具体的推進策として、1点目に、基本的な情報・正しい知 識の提供 2点目に、対象となる層を一定程度特定し、具体的な行動変容を促すような 普及啓発活動が必要であろう。  1点目については、国が中心的な役割を担って、広く国民の方々に伝える内容をテレ ビCM、エイズ予防情報ネット等を活用しながらやっていく。もう一つ、国として、地 方自治体の普及啓発を支援するために効果的な手法を開発するといった役割も担うべき であろうということでございます。  これに対して、地方自治体が中心的に行うこととしては、対象層をある程度特定した 対応ということで、具体的に対象を設定して、効果的な方法を考え、行動変容の結果を 想定しながら、重点的、計画的に実施していただくような方向性をお示ししました。  また、個別政策層を設定する場合には、自発的な行動変容だけではなかなか厳しいと いうことで、社会的環境も醸成していくような施策が必要であろう。そのためには現在 実施しております「青少年エイズ対策事業」や「コミュニティセンター事業」などを活 用しまして、マニュアルなどを作成し、全国の地方自治体が実施できるような形にもっ ていく必要がある。とりわけ、青少年対策に当たっては、関係機関が連携して、その際 には学校医等の専門家のご支援を得ながらやっていく必要があるのではないか、と記載 しております。  また、行政の取り組みだけでは限界があるということで、国においては財団法人エイ ズ予防財団を通じて各地域のNPO、NGO等、民間団体との連携を図る方策を考え、 地方においては、関係機関と連携をとっていくような取り組みが必要だろうということ であります。 (3)検査・相談体制の維持及び強化について。(1)検査の方向性としては、予防及び 蔓延防止の観点だけでなく、早く発見されれば患者さんにとってもメリットがあるので すよ、という方向性で進めていく。さらに検査の機会は絶好の相談の機会であるので、 行動変容を促すような相談事業をやっていくべきであろうということでございます。  具体的には、(2)以下になりますが、国と都道府県等が連携をして、国に関しては、 検査や相談体制のマニュアル類を整備し、国民にその必要性を周知徹底する。都道府県 に関しては、検査・相談体制の中心として、引き続き利便性の向上に努めるために、感 染症法に定める予防計画等に盛り込んで計画的にやっていただく。  また、検査陽性者に関しては、確実に治療につながるよう、医療機関へ紹介するよう な体制を整備していただくということでございます。  次に(4)医療の提供 (1)医療提供の方向性として、感染者・患者増加に伴い、一 部の医療機関に集中が生じており、この打開策として、各都道府県単位で総合的な医療 提供体制が確保されるよう体制の整備を行う方向性でございます。  (2)その推進策は、国としては、感染者・患者さんが医療機関を選ぶ上で必要な情報 提供に努め、新たに「中核拠点病院」制度を創設して、医療提供体制の再構築を図るべ きである。具体的には、中核拠点病院を都道府県に1カ所設置するという考え方でござ います。  中核拠点病院のエイズ診療の質の向上を図るため、地方ブロック拠点病院等による研 修の充実が必要であろう。  さらに、各種拠点病院の外来診療体制充実のために、チーム医療のあり方についてマ ニュアル等を提示すべきではないかということ。病院の入院機能、専門外来機能がより 発揮できるように、医科診療所との連携のあり方についても検討する必要があろう、と しております。  それに対して、都道府県では、HIV・エイズの発生動向に即して、都道府県として 医療提供体制の整備を計画的にやっていただく。その際には、医療計画等に盛り込む等 も考えてはどうか、ということでございます。  また、統合的な治療体制の確保が図れるよう、連絡協議会等を設置して連携が円滑に 進むような方向性を目指すべきとしています。  歯科診療を確保するために、連携体制を構築するとともに、研修会等を通じて正しい 知識と感染防止対策の周知徹底を図っていく必要があるとしています。  次に、外国人に対する医療の対応については、都道府県は、拠点病院等に医療ソーシ ャルワーカーを派遣する。また、都道府県において対応が困難な場合には国において適 切に対応できるような体制の整備を検討する必要があろう。  さらに、母子感染予防対策につきましては、現状、市町村が母子感染の可能性のある 疾患予防のために相談・指導を行っておりますが、引き続きそれを実施するとともに 「母子感染予防ガイドライン」を周知徹底していただく必要があろうということでござ います。(5)研究開発の推進 として、厚生労働省は研究課題の募集に当たっては、 各研究課題の目標や期待する成果を、可能な限り具体的にすべきであり、目標達成度合 いや成果に基づき評価を行う必要がある。  また、適切なマニュアル等が作成され、普及が見込まれる場合には、モデル事業化等 について検討をすべきである、と記載しております。 (6)国際的な連携 に関しては、アジア諸国等にエイズの拡大が懸念されていること から、引き続き協力を推進する必要がある、としています。 (7)人権の尊重 については、正しい知識の普及啓発を通じて偏見・差別の撤廃に取 り組むことがこれからも重要であり、かつ、感染者・患者との共生の理念についても考 慮することが望まれる。  また、本年4月より個人情報保護法が施行されておりますので、その徹底が重要であ る、と記述しております。  次に、III 施策の評価 (1)施策の評価 では、国は「関係省庁間連絡協議会」 の場を活用して、関係省庁が講じている施策について定期的な報告等を行うことによ り、連携を一層進めていく必要がある。  また、地方自治体においては、施策目標を設定すべきであろう。目標の設定に当たっ ては、基本的には定量的な手法に基づく目標を設定することが望まれるところですが、 地域の実情、施策の性質に応じて定性的な目標を設定することも考えられる、とまとめ ました。 国においては、施策の実施状況をまとめて、厚生科学審議会疾病対策部会の 委員会等で実施状況を報告して全国水準より取り組みが遅れている都道府県に対しては 所要の助言等を行うべきである、と記載しております。 (2)エイズ予防財団の機能の見直し及びNPO、NGO等との連携 ということで、 NPO、NGOとの連携を図るために、エイズ予防財団が中心的な機能を担って支援に 相応しい団体等を評価する手法を確立し、連携を深めていくことの必要性を記載しまし た。「おわりに」で、感染者・患者さんの人権に留意しながら、総合的なエイズ対策が 的確に講じられるように期待する旨を記載しております。  以上でございます。 ○木村座長  ありがとうございました。報告書(案)の全体について説明をいただきました。今回 と次回とで最終案をまとめる必要があります。あと1回しか残しておりませんので、今 回は少し浅くなるかもしれませんが、全体について眺めていただいてご意見をいただき たいと思います。それで、最初は、目次でいきますと、Iの我が国におけるHIV・エ イズの発生動向及び問題点という章について15分程度ご意見をいただきたいと思います が、1ページから4ページの範囲について、まだ表現が足りないとか、訂正した方がい いというようなところがありましたら、お願いいたします。 ○木原(正)委員  ここには日本の状況が書いてあるのですが、ぜひアジアの状況にも触れていただい て、そういう近隣の国の状況の中での指針だということがよろしいと思いますので、加 えていただきたいと思います。 ○木村座長  どのへんに、「はじめに」に盛り込むのがよろしいでしょうか。 ○関山課長  2ページのIの1.を「我が国及び周辺諸国におけるHIV・エイズの発生動向」と いうことで、よろしければ、木原先生にまとめていただければ。 ○木原(正)委員  考えてみます。 ○木村座長  私が拝見してちょっと思いついた点ですが、3ページの(1)の診断時に既にエイズを 発症している事例が多い、というところの最初のパラグラフに関係するんですけども、 発症して気づかれることが多いというのは、おそらく後で出てくる検査の普及がまだ不 十分というところに関連していると思うのですね。だから、検査して感染がわかるとあ る時期からハート(HAART)が始まって、エイズの発症がほとんど抑えられるわけです ので、にもかかわらずエイズの発症例が増えているというのは、検査を受けてないで、 ハートが行われていなかったということの証明になるんじゃないかと思われます。こう いう事実が検査の普及が不十分であることを反映している。そんなような趣旨のことを ちょっと補足していただいたらわかりいいのではないか。そして、後から出てくる検査 の促進に結びつくのではないかと思います。 ○関山課長  3ページの2の(1)ですね。(2)に今ご指摘のようなことを入れて。 ○大平委員  4ページまでというのは、動向及び問題点を整理したところですよね。 ○木村座長  問題点としては、検査が十分に行われていないということを指摘してはいかがかと。 ○関山課長  今ご指摘いただいた内容をこういうような形で書いてはおりますが、8ページのとこ ろにおいては(3)の(1)の1行目で「並びに個々人の病状の重症化防止のためには」 ということで、そういう趣旨で早期検査による早期発見が望ましい。ということを書い ております。 ○木村座長  既に盛り込まれているだろうと。 ○関山課長  もしわかりづらいというのであれば、足していただければと思います。 ○大平委員  先に問題点のともろを整理して、具体的な問題を次に検討する。じゃなくて、全体に もう言っていいわけですか。 ○関山課長  8ページは関連していましたのでお話したまでですので。 ○池上委員  まだ十分に読んでいる時間がないのですが、4ページの最後の(5)各種施策の効果等 の評価が十分でない、という現状の問題点の指摘があって、これに対応するところの案 というのは、12ページのIII 施策の評価等 になると理解してよろしいのでしょうか。 現状の問題点に対して、案としてはどうするかという対応関係ですけれども。 ○木村座長  まず問題点を指摘して、それを解決するために第II章以下の見直しに入っていくわけ です。 ○池上委員  ですよね。(5)の各種施策の効果等の評価が十分ではない、ということには、12ペー ジのIII 施策の評価等というところが対応するというふうに理解していい。 ○関山課長  そうですね。直接はそこになりますが、ワンクッション、5ページの1に基本的方向 を書いていまして、それから、地方自治体中心の枠組みづくり、あるいは重点的・計画 的に実施する。そういうことを書いて、12ページに行く。 ○池上委員  それで12ページをみると、今までとあまり変わらないなという印象をうけます。省庁 間連絡会議での報告と審議会感染症部会でのワーキンググループ等において報告、とい うと、実際の施策の評価等の基準やプロセスについては触れられてないなという印象を 持ったのですが。 ○関山課長  それはもう既に指針の見直しについては、少なくとも5年を最長として見直すという ことで、指針の見直し過程についてはしています。ただし、施策の評価については、具 体的にじゃあどうやって動かしていくかということが、今まで具体的な施策の方向性が 示されて来なかったのですね。したがって、国のレベルで省庁間のこういうことをやっ たらどうかと。それから、地方自治体においても、施策の目標設定がなされていなかっ たので、定量的な目標、あるいは定性的な目標設定をして、確実な実施をする。そし て、そういうことについて、各自治体の取り組みを審議会のワーキンググループ等の場 に挙げてお話いただく。こういう組み立て方を書いたということで、新たなことであり ます。それによって、感染者・患者数が全国水準より高い地域に対しては所要の助言を 行う。こういう枠組みをつくってやろうということをいうことです。地方自治体はまだ こういったやり方に慣れておりませんので、徐々に徐々に慣れていただく必要があると 思っております。 ○池上委員  それは4ページの(4)の国と地方自治体の役割分担が不明確であるから明確にしよう ということにつながっていくことだと思います。国と地方自治体の役割分担はいいんだ けれども、最終的にどこがリーダーシップをとるのか、もし施策が行われなかったとき にどうしたらいいのかと持っていく先はどこなのか、そのへんがはっきりしていないと 感じます。 ○関山課長  それは、先ほど説明がとんでしまいましたけども、5ページをごらんになっていただ きますと、(2)国と地方自治体の役割分担の明確化 というところの2つ目のパラグ ラフの3行目「具体的には、都道府県等は、検査・相談体制及び医療提供体制の整備を 中心に担い、普及啓発に当たっては、市町村と相互に連携を図ることが求められる一 方、国においては、これらの役割に対し、地方自治体が適切に対応できるよう支援を行 う」という、この支援の中に先ほどの実施状況を評価することによって適切な指導・助 言等を行う。考え方はここで整理させていただいています。  ですから、国がこの施策を当然こういう形できちっと対応していくという整理です。  今まで医療提供については、ACCと370の拠点病院等で行うということで、都道府 県の対応についてあまり記述されていなかったので、そこをきちっとしようということ で、普及啓発、そして予防ということで医療体制と一貫して地方自治体が中心に担う。 そういう仕掛けをつくるということです。 ○池上委員  読み方の問題なのかもしれませんが、地方自治体はどこ、国はどこを担い責任はどこ にあるというところをもっと明確化する方がいいのではないか、という印象を持ちまし た。 ○木村座長  あくまでも地方自治体、都道府県が相談体制、医療体制の中心であって、国はそれに 対して支援なり情報提供をしていくということですね。 ○藤原氏  支援をするためのガイドラインみたいなものとか、指導要項とか、そういったものは 国がつくるんですか。 ○関山課長  まず、ガイドラインといいますか、今の枠組みづくりは、ここに書かれている報告書 の中で整理をしていただくことによって替えられる。 ○藤原氏  そうすると、例えば、イメージでもいいんですけど、具体的な支援というとどういっ たものがあるんでしょう。 ○関山課長  支援というのは、個別具体的な事案が上がってこそ出てくるわけですので、ここでは 抽象的にならざるを得ない。やはり現場の問題ですから。 ○藤原氏  迅速に検査をしていくとか、検査前カウンセリングを充実させていくとか、そういっ た中に行動変容に結びつくようなものを1つ入れていくとか、それを誰がやるとか、そ ういったようなことであると考えておいていいんでしょうか。 ○関山課長  そうですね、後でその話が出てきますが、まさにそういったことです。で、まさにそ ういうノウハウをつくり上げるのが国の役目でしょう。研究班と一緒になって行動変容 のノウハウを国が主体となってつくり、それを普遍化できるようなガイドラインにして 普及・定着化を図るという仕掛けです。 ○大平委員  今の、国と地方自治体の役割分担の明確化ということですが、以前、何回か申し上げ ましたが、国と地方自治体の役割分担というのは大変重要なテーマだと思いますけど も、再三言いますように、危惧するところは、例えば、HIV感染症についての医療、啓 発、患者の社会生活の中で何か誤った時に、地方自治体だけでは解決しきれないとこ ろ、責任を取り切れない。また、地方自治体レベルで格差があった場合に、患者への苦 情処理とか対応策を十分とりきれるのか、公平の原則の問題があります。地域医療を広 めて行く場合に、地方自治体にお任せしていいのかどうかというところは、地方自治体 の財源の確保と執行にその独自の動きがあってかなり変わってくると思います。  ここでは「不治の病」から「不死の病」になったという表現になっていますが、いき なりエイズとか、そういった場合に亡くなっていく方も多いわけで、そこの点で、私の 要望も、患者さんがまとまりきれないのですが、地方自治体に明確に役割分担されてい いのかどうかなというところが正直不安なところです。  その前に、医療に関しては、ACC、ブロック拠点病院、そして中核拠点病院という のもありましたが、その役割分担についても、はっきり決めたところで広報していただ かないと、患者もわからないし、医療者の方たち、そして行政の方たちもわからないの で、今回、指針の中にはっきり盛り込んでもらおうかと思っていたわけですが、ここが 不明確なままに、いろんなHIV医療対策が走っているというところがありますので、 そこをきちっとしてもらいたい。  それから、教育・啓発に関しても、自治体のいろいろな役割は大きいと思いますが、 ただ、ガイドラインも支援といえば支援なのかもしれませんが、国の力が十分発揮され ないと地方自治体では受け切れないのではないかなあというところと、それが全体に広 がっていくときに、偏見とかそういうものが本当にとれるのかどうか。そういう問題に ついて国の関与がかなり必要なのではないかと思っています。  それから、1ページで、(2)保健所等における検査・相談体制の整備を中心にした、 ということがありますが、保健所の体質というのが変わっていなかったことで、検査を 受ける機会ができなかったのではないかということがあって、保健所の体制、そして、 検査体制の問題、いろんなところで受けられる体制づくりが進んでもいいんじゃないか と思います。  また、指針の見直しについては、池上委員からも指摘がありましたが、評価について は実際に評価していく方向でワーキンググループをつくるということで最初は話が進ん でいたわけですが、それができていなかった。これは行政の方も悪かったんだろうと思 いますし、そこに参加していた人たちからも見直しの意見が出なかったということで不 十分だったと思いますが、指針は5年に1度の見直しですけども、その間に何回か作業 をして、できているかどうかというところは見ていかないといけないと思います。 ○木村座長  国といいますか、厚労省はリーダーシップを発揮してほしいというのは前から大平委 員が言っていたことですので、今私も。 ○関山課長  わかりました。地方自治体を中心にやるという枠組みを書くと、国はひょっとして、 という話ですよね。それは全然予期しないご発言だったので、そこはリーダーシップ を、という文言を、国が先導的な立場で、ということを入れたいと思います。 ○藤原氏  すみません、あまり上品な話ではないんですけども、一番重要なことだと思うんです けど、リーダーシップの中には予算措置とかも入っていますか。例えば、エイズ対策推 進事業を国と地方自治体で半分半分にするとかですね。 ○関山課長  予算事業については、それぞれの役割に応じて予算を拠出しあいながら、必要な経費 等確保していくというのは従来と変わっておりません。 ○藤原氏  地方自治体だけの予算でやれということになりますと、かなり格差が出ると思うんで すね、お金持ちの県と赤字の県で。そうしますと変わってきますでしょう。そういった 格差ができないように、国がいくら、地方自治体がいくら、という形にしておかない と。 ○関山課長  必要な経費はですね。ただし、エイズ行政に取り組む地方自治体としての意識を持っ ていただいて、住民に身近な自治体がきちっとやっていただく。こういう仕掛けを組み つつ、自治体として必要な諸経費を手当てしていただきながら、我々も従前の対応をさ せていただく。こんな考え方で、同じだと思います。 ○長谷川氏  これは最初の1ページから4ページで感じたことですが、これ自体はこれまでの議論 でもあったように、予防指針というのは国の包括的な施策が特に必要になってきますよ ね。実質的には国家戦略であるというふうに私は解釈しているんですけれども、そのと きに、予防指針ということで、治療の問題が予防指針の中で出ているのか。つまり、予 防とケアは非常に密接な問題である。治療即予防である、というような位置付けがなか ったので、私も最初、なぜここに医療のことが取り扱われるのか、5年前に見たときに は理解していなかったんですね。そのことを前文なりに入れる。さらに、社会構造的な 問題で、偏見とか差別ということに対するコミットが不明確になっているかなと思いま すので、そのへんの関係性はやはり前文の中にしっかり入れておくべきではないのかな あと感じました。  先ほど、木村先生がおっしゃった、いきなりエイズの問題、それは検査の問題と絡む んですけど、実はなぜそういう状況が起こっているかというと、社会に存在するスティ グマを私たち、あるいは国民自体が内省化させて、検査拒否行動を起こしている部分も 大きな要素だと思います。そういったところを「はじめに」の中でうたっておく必要が あるのではないかと思います。 ○木村座長  まだいろいろご意見あると思うんですが、後ほどメール等でご連絡いただくこととし て、きょうは全体を眺めたいと思いますので、第II章に移らせていただきます。  II.エイズ対策の見直しの方向性 ということで、総論と各論がございまして、5ペ ージから11ページまでです。ここについてご意見を伺いたいと思います。 ○池上委員  6ページ下の(2)普及啓発及び教育の(1)普及啓発及び教育の方向性 というとこ ろですけど、7ページの3行目、感染の予防には、以下、思いやる心の醸成、言葉によ るコミュニケーション能力の向上、親子の会話の重要性とあります。もっともなのです けど、ここだけが、厚労省のエイズ予防指針というより、文部科学省の指針のような印 象です。厚生労働省のエイズ予防対策指針としては、科学的根拠に基づく正しい知識の 普及と予防行動の促進が重要だと考えます。予防行動というのは、何もコンドームを使 うということだけではないわけですが、そこらへんも含めて、厚労省ならではの具体的 な教育の方向性をきちんと示した方がいいのではと感じます。コミュニケーションの重 要性はどこからも指摘されるところで、有効な予防介入のひとつの柱ですが、それだけ をとりだしてわざわざここに入れるのはいかがかと感じます。性感染症の予防指針なの ですから厚労省としてリーダーシップをとっていただきたいという意味も含めて、有効 とされる多様な手法を使って予防行動の促進を進める必要がある、というような書き方 の方がいいのではないかと思いました。 ○大平委員  私は池上委員の話とはちょっと違いまして、ここは厚生労働省の予防指針ですけれど も、国全体のエイズ対策の予防指針でもあるので、文科省のことにも踏み込んだ、もっ と全人教育的なところまで踏み込んだ予防指針を出してもいいんじゃないかなあと思い ます。そうでないと、これは厚労省発の予防指針なんですけども、でも国全体が動く、 そしてまた、文科省がエイズ予防指針をつくるわけではなくて、国がつくるわけでし て、国がどういうスタンスを持ってエイズ予防、教育とか啓発に臨むのかというところ をここにしっかり盛り込んでいただかないと全体としての調和というか、日本がエイズ 予防・啓発、治療、医療という問題についてどう動いているかというような方向からバ ラになると思います。厚生労働省のみの発想の指針というより、広く社会の人たちがわ かりやすく、国としていろいろな面で他省庁も連携した形でこの指針を守っていく。そ ういうような方向がここに盛り込まれないといけないのではないかと思います。国のエ イズ予防政策、そして、治療、医療の問題についての舵取りがここにあるという思いで 私たちも参画させていただいたわけで、そういった面では、こういった文言も必要なん じゃないかと思います。 ○木村座長  ごもっともなご意見だと思いますが、木原委員、どうぞ。 ○木原(雅)委員  普及啓発に関して追加ですが、まだ十分に読んでいませんので不十分なコメントにな るかもしれませんが、7ページの3行目の、「感染の予防には」の後の表現ですが、 「コンドーム使用を普及させること」の前に、誰にでも感染する可能性があることを伝 えることを入れるべきだと思います。まず最初にそれだと思うんですね。そのあとに予 防の方法がくるという順序がいいと思います。コンドームのことだけを説明するのでは なく、まず誰でもかかる病気であるということを伝えるのがまず最初と思います。  そして、行動変容に関わるいろんな予防教育や啓発に関しても、青少年であれば発達 段階と行動段階の両方を配慮した対策が必要ですが、大人に対する場合でも相手が行動 段階のどこにいるかによって発信するメッセージを変えるべきですので、そういったこ とも報告書では考慮する必要があると思います。  国民全般にメッセージを出す場合は、相手の殆どが無関心期にいると思われますの で、誰にでも感染する可能性があることを優先的に伝える必要があります。それをしか も抽象的な表現ではなくて、各地域のいろいろな疫学情報も出しながら、しかもエイズ だけではなく、性感染症あるいは望まない妊娠など性の問題をもっと広く捉えた形で、 リスクが身近にあるということを感じてもらうような伝え方をとるというやり方が必要 です。また、一般に特定パートナーだったら安心という思い込みがありますので、不特 定多数との性交渉だけが危ないのではないということを、性的ネットワークという観点 からも伝える必要があると思います。 ○島宮委員  7ページの同じところ、3行目の感染の予防には、というのは、よく読み込んでない からあれですが、主語がないような気がするんですね。例えば、その下のパラグラフ、 さらに、社会教育の観点からは、各家庭においては、とありますよね。ということは、 さらに社会教育、ということは、上は何なんですか。学校教育を書いたのか、どうなの か、主語がないのでわからないんですが、どうなんでしょうか。 ○関山課長  今までのお話についてですが、池上委員からお話のあった、厚生労働省としての教育 の話ということですが、学校教育と社会教育の、社会教育的な観点から考えていけば、 こういう形で案として書かせていただきましたが、このような書き方はあるのではない かということです。それは何も学校教育でないとできないという話ではなくて、社会教 育でできる範囲として、どういう書き方ならできるのかという観点で整理するというこ とでありますので。  あと、言葉づかいで、主語がないというのは、そこは修正なりご指摘いただければと 思っております。  いずれにしても、ここのところは今までないような書き方をしておりますので、よく お読みいただいて、手法としての予防ということで言葉によるコミュニケーションもあ るじゃないか。ただ、これを書いたのは、木原先生が今、青少年対策としてやっている 「青少年エイズ対策事業」の中でもかなりの成果を上げられている手法の一環でもあり ますので、そういう手法をマニュアル化していけば、普及・定着できる手法だというふ うに考えておりまして、このように記載させていただいたということです。 ○木原(正)委員  行動を表わす言葉にはビヘイビアbehaviorとプラクティスpracticeがあります。ビヘ イビアというのはいわば行為の即物的な表現で、その行為がおかれている文脈を考慮し た表現がプラクティスといわれているものです。もちろんコンドームも予防行動として 大事ですけれども、それだけではなく、社会的文脈という広い形で捉える必要があると 私たちは考えています。実際に行動変容を促すことは容易な」ことではありません。そ の意味でも、より広い文脈から私はみたいと思います。 ○玉城委員  ここの6、7ページの方向性のところで、家庭のことがありますが、それにしても社 会全体というか、社会基盤の中でのインフラといいますか、そういうことを強調しなが ら、家庭ということを言った方がいいのかなという感じがしました。  それから、具体的な施策案の中で、きょうはメディアの方もいらっしゃっています が、ここでメディアの役割というのが述べられているのかどうか、斯様なことをちょっ と考えたものですから触れさせていただきました。  それから、11ページの(6)国際的な連携で、アジアは飛躍的に発展してこれから重 要だと思われますが、エイズ予防、流行という観点で国際協力を考えると、ODAのア フリカ重視なども考えますと、やはりアフリカを入れないことには、という気がしまし たので考えていただけないでしょうかということです。 ○木村座長  国際的な連携のところですね。 ○玉城委員  そうです。アジア諸国等への協力ということになっていますが。 ○木村座長  もう少し広げていいのではないかということですね。 ○長谷川氏  先ほどから話題になっています7ページの、感染の予防には、以下の部分ですが、こ こは予防指針であるということでは、もっと客観的な言葉で方向づけられて全体はそう いう形で構成されていると思うんですけど、先ほど、課長が新しい言葉をお使いになっ た、とおっしゃったんですが、ここの部分に対する若干の違和感というのは、かなり主 観的な要素が入ってきているのではないか。例えば「性交渉はコミュニケーションの一 つの形態である」ということは確かにそのとおりなんですけれども、ただ、それがセッ クスワーカーの場合はどうなのか。そして、セックスワーカーの性というものがこの段 階では排除されてしまうのではないか。  基本方針中での多様性というものがこの言葉によって排除されてしまうような気がす るんですね。「自分の体も大切に、相手の体も大切に」とかいうことは自明の理である と思います。そして「コンドームの使用も有効である」とうたっている。ここはもう少 し客観的な文言、あるいは、具体的文言の方がよろしいのではないか。そして、それを 考える際には啓発対象層の多様性ということをここに入れておかないと、一つの価値観 ではそこからこぼれる人たちがいるのではないかということを考えますので。 ○木原(正)委員  今、長谷川さんがおっしゃったことですが、対象によって書き分けるというようにし ていただきたいと思います。そう考えていきますと、何か抜けているという気がしてい たんですけれども、例えば外国人の問題については医療のことは書いてあるんですが、 予防が書いていないということで、旧予防指針では個別にあがっていたところが少し抜 けているような気がします。国の指針ですので、どこの国でも当然入っている対象につ いて言葉を抜いてしまうと片手落ちという印象になります。なんらかの表現でなんらか の策を講じていく必要があると思います。 ○関山課長  もう一度確認をしていただければと思いますが、報告書と予防指針案というのはまた 別ですので、これは予防指針案を策定する前段階として今後どう具体的な行動をとって いったらいいのかということを盛り込んでいます。指針になりますとかなり抽象的な文 言になりますので、そういったところが違っている。  そして、先ほどお話された少数者の方々の問題について記述がないということについ てですが、具体的にどういうふうに対応したらいいのかということで、研究成果等を拝 見させていただいて、コマーシャルセックスワーカーの方々に対するアプローチとか、 あるいは外国人の方は一定程度あるのですが、これも普遍化するには十分ではないの で、書いておりません。また、今実際に問題になっておるグループの方々に対する対応 をこの5年間きちんとやっていくために重点的、計画的、集中的にやっていくというこ とにしております。ただ、そういったセックスワーカーの方、あるいは外国人の方々へ のアプローチの手法についての研究は当然のことながらやっていく必要があると思って おります。ここではまさに具体策を書いてとりあえず整理させていただいています。 ○木原(正)委員  確認ですが、報告書と指針の区別は、指針というのは公に向けて出すもので、報告書 というのは公に出すものではないということで、具体的に内容が違うということでいい んでしょうか。 ○木村座長  この検討会から出るのは報告書と指針案ですね。 ○関山課長  最初にご説明したように、報告書と、これに基づいて見直していただきます指針案で す。 ○木村座長  時間になってきましたので、最後のところ、12ページ、13ページの第III章 施策の 評価等と「おわりに」というところについて、お意見いただきたいと思います。 ○木原(雅)委員  12ページの施策の評価のところですが、前回の検討会でも少し触れたんですが、プロ セス評価だけではなくアウトカム評価も盛り込む必要があると思います。つまり、た だ、検査数が増えました、相談件数が増えましたというだけで、実際の感染率にきちん と反映されていなければ意味がありません。HIVが無理なら、STDなど、なんらか の形でちゃんとアウトカムをモニタリングしていく必要があると思うんですが、そこを 何か加えていただきたいと思います。 ○木村座長  自治体がやる施策として、どういう施策が好ましいとか、そういう点を検討して、そ れが効果としてどうであったかというような評価をしていく。そんな新しい研究班みた いなものがあった方がいいのかなあという気もしているんですけれど、ちょっと具体的 過ぎますかね。 ○関山課長  まずは、ご議論いただければ、どういうような指標を設けておいたらいいのかという ことで、あまり数が多いと地方自治体も困ってしまいますので、検査については、例え ば、増加率に配慮した検査相談件数、それから、普及啓発ですと、HIV・エイズにつ いての理解、そういう代表的なものを数項挙げていただいて、それで通していく。アウ トカムというのはなかなか難しい。プロセスにおけるインデックス、あるいは、インプ ットにおけるもの、というようなことになるかもしれませんが、ただ、指標の使い方に ついてはこれからというところがありますが、しかしながら、我々としてはなんらかの 指標を入れることによってはじめの第一歩というような形はつけたいと。それでないと きちっとした体制は整っていかないんじゃないかと思っています。これはお知恵をいた だきたい。地方自治体の実行可能性の高い指標はどういうものをいくったらいいか。  それと、指標をどう評価していくかというのは、別にアンケート調査をやらなければ いけないというようなことになりますが、このへんの実施のあり方も考えていかないと いけない。そういうものを含めまして、ご意見いただければと思います。 ○木村座長  私も目標設定をきちっとした計画を各自治体につくってもらうことが大事だと思って います。 ○池上委員  評価は施策を計画・実施するところと分けて別機関がやる方がいいのだろうと思いま す。 ○木村座長  運用上の話として、また議論が必要と思います。 ○長谷川氏  この評価の対象というのは、(1)と(2)をみますと、地方自治体とNGOという 形になっていますが。 ○関山課長  施策の評価については自治体が取りまとめることになりますが、(2)のところは、 前回のご議論にありましたが、財団がいろいろなNPO、NGOを支援するにしても、 どのような団体と手を組めばいいか、そういう評価の目安となるようなものをつくった らどうかというご発言がありましたので、こういうことを書いております。いわばNP O、NGOに対する活動評価ということです。 ○長谷川氏  それは必要だと思います。新しい視点だとは思うんですね。ただし、ひとつ気になる のは、もちろん私たち自身が首を締めることになる可能性もあるんですけれども、もう 一つ、評価というのは、各自治体、民間さまざまあるんですが、予防指針全体に対して の進捗状況全体に対する評価、国全体の施策に対する評価というのはこれには入ってい ない? ○関山課長  入っています。政策の評価ということで、厚生科学審議会のエイズ・ワーキンググル ープ等の場において実施状況を報告する。まさにそこに国全体としての評価を行なうと いうことです。 ○長谷川氏  国、自治体、コミュニティ・民間という3段階すべてに対して総括的に評価する。は い、わかりました。 ○木原(雅)委員  先ほどのアウトカム評価のところにもう一つ追加ですが、この間も申し上げました が、知識の向上とか、意識の変化とかを捉えるような調査は現実的に可能です。国とし て行う場合もそれほど高額な費用な必要ありません。例えばオムニバス形式で頼みます と、かなり安い費用でランダムサンプリングによる代表性のある調査ができます。そう すると、国民のどれだけが必要な知識やリスク認知を有しているということをきちんと 評価することができます。それを2、3年おきくらいに見ていくというやり方もあるで しょう。いずれにしても、膨大なお金はかかりません。 ○大平委員  評価の中で、医療と予防の経済効果を見るという研究というのはないのではないかと 思います。例えば、医療費をこれだけかけているけれどもこれだけ効果が上がっている とか、逆に効果が上がっていないといった問題も、社会一般に、予防医学とかいろいろ な問題で関心を持っていただく、また支持していただくためにはそういう費用対効果も きちっと出すべきだと思うんですね。それで実績が上がっているのかどうか。例えば、 広報にしても、広報にこれだけ金を使っているけれども、どれだけ浸透しているかどう か、というのもスパンとしては短い段階で逐次取っていくことは必要だろうと思いま す。そうしないと、7ページにありますが、普及啓発としてかなり大々的にHIVの問 題について広報していただかないといけない問題がいっぱいあると思うんですが、残念 ながら、エイズ予防の運動もかなり衰退していると思うんですね。企業とかいろんな方 たちの賛同、協賛を得ることも大事だろうと思うんですけど、そのへんに対するインセ ンティブのあるような形をどういうふうにしていくかというのは国としての問題として 取り組んでいただいて、普及啓発ということの大切さ、広報の仕方を検討していかなけ ればいけないと思います。これは実際に緊急テーマだと思うんですね、今これだけ感染 者が増えている段階でマスメディアでもこの問題についてどうすべきか、あまり紙面を 割いていただいてないように思いますので、ぜひ国からもお願いして、各マスコミの紙 面を拝借して訴えていくとか、そういう具体策をとるようになっていくことが今急務だ と思います。それは今回の指針の見直しとは違うと思いますが、具体的なことがどんど んされていないことについての評価もきちっとやっていかないといけないと思います。 ○木村座長  いろんなきっかけをつかんで広く国民の認識を深めてもらう必要があると思いますの で、今の大平委員のご意見と同感です。  ちょうど予定の4時半になりましたので、きょうの議論は以上で打ち切って、ほかに ご意見がありましたら、事務局にお寄せいただくということで、今後の予定等につきま して事務局からお願いします。他省庁とのすり合わせなどの課題が残ったと思います が。 ○事務局(川口課長補佐)  事務局から申し上げます。すみません、報告書で修正点がございます。10ページの3 つ目、さらに、「から」のパラグラフの2行目「標準モデル」とございますが、これを 「マニュアル」と変えていただけますでしょうか。  同じページの下から2つ目の「その際」から始まるパラグラフの下から2行目「都道 府県等医師会」とありますが、「都道府県等歯科医師会」、歯科のことでございます。  その2点を修正ください。よろしゅうございましょうか。  いま座長からご意見があれば事務局に、ということでございましたが、関係機関等と の調整等もございますので、申し訳ございませんが、来週の火曜日までにいただければ と思います。 ○木村座長  ではコメントがある場合には来週の火曜日の夜まででいいですか。 ○事務局(川口課長補佐)  結構です。 ○木村座長  火曜日中にお出しくださいということです。 ○事務局(川口課長補佐)  それらのご意見を踏まえまして関係部局と調整の上、報告書の案を修正させていただ きます。それから、次回ですけれども、次回は5月30日の月曜日、時間は本日と同じ午 後2時から、場所は厚生労働省2階の共用第6会議室を予定しておりますので、よろし くお願いいたします。以上でございます。 ○木村座長  ほかにございませんでしょうか。では、きょうも長時間にわたりましてご協議くださ いまして、どうもありがとうございました。では次回30日にまたよろしくお願いいたし ます。きょうはどうもありがとうございました。                                     (了)