05/05/12 第2回 医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する 検討会 議事録 第2回医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会 日時 平成17年5月12日(木) 17:00〜19:00 場所 共用第7会議室 ○赤熊補佐 ただいまから、第2回「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等 のあり方に関する検討会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、ご多 忙のところ、当検討会にご出席いただき、誠にありがとうございます。本日は、金川 委員よりご欠席の連絡を受けております。  はじめに看護課長より、前回ご欠席の2名の委員の方のご紹介をさせていただきます。 ○田村看護課長 それでは、お二方の委員のご紹介をさせていただきます。皆様のお手 元にメンバー表もあるかと思いますが、小島恭子委員です。北里大学病院看護部長で いらっしゃいます。 ○小島委員 小島です。よろしくお願いいたします。 ○田村看護課長 そして、坂本すが委員です。NTT東日本関東病院看護部長でござい ます。 ○坂本委員 坂本です。よろしくお願いいたします。 ○赤熊補佐 それでは山路座長、議事進行のほど、よろしくお願いいたします。 ○山路座長 それでは議事に入ります。本日は「看護師資格を持たない保健師及び助産 師の看護業務について」検討していきたいと思います。まず事務局より資料の確認を お願いいたします。 (資料確認) ○山路座長 それでは、資料1について事務局からご説明をお願いいたします。 ○野口看護職員確保対策官 それではご説明いたします。本日から個別の議題をご検討 いただくことになります。資料1は、今回の議題に関する業務の問題、養成、国家試 験等の現状について説明しようという意図です。  最初に保助看法の該当条文が抜粋されておりますが、これを飛ばして過去の経緯が書 いてある絵をご覧ください。過去の経緯に遡って少し理解を深めていたただこうとい う趣旨です。いちばん左側に「保健師・助産師・看護師」とありますが、これは現在 の名前です。助産師を当時は「産婆」といっておりましたが、日本においてはそれが いちばん最初の資格です。  江戸時代から産婆と言われ、職業として成立をみていました。実態は未亡人、まさに 身寄りのない老婆の生業として行われていた面があります。まさに名前が産婆となっ ておりますが、その名前と言葉が一致するようなイメージもあったようです。今日は 男性の問題がこの助産について議論されたりしておりますが、どうも当時は男性も産 婆をやっていたこともあり「取り上げ翁」と言われることもあったらしいです。ただ し、多くは按摩の副業として行われていたそうであります。  当然ながら知識や技術は非常にバラつきがあって、多くは不十分であったと言われて おりました。また、産婆といいながら堕胎を行うことも見られたということです。明 治新政府になり、明治元年から早速、太政官布告が出され、売薬なり堕胎が禁止され る取締りも行われております。  近代的な衛生行政としての始まりである医制、明治7年に文部省から出されておりま す。当時は衛生行政は文部省から始まっておりますが、衛生行政全般と医学教育につ いて第75条のプログラム規定がここの中に盛り込まれ、衛生行政機構を整備する、あ るいは西洋医学に基づく医学教育を確立する、医療機関を整備する、医療関係者の資 格を確立するといった目的で、この医制が発布されたのが明治7年です。この医制の 中に保助看の資格としては産婆が唯一取り上げられ、第50条から第52条まで産婆の 部分がありました。  簡単に中身を紹介しますと、婦人や小児の解剖生理、病理の大意を体得していること、 産科医の前で平常産、平易なお産を10例、難産を2例取り扱い得たという実験証書を 得て、免状を下付するという規定が設けられておりました。これはプログラム規定で あって、実際の取締りは各地方ごとに取締規則によって行われるという実態でした。 例えば東京府においては、東京府の病院内に産婆教授所が設けられ、産婆の新規の養 成と、現に営業している産婆についての再教育が行われた上で、営業の認可制を取る という規制になっておりました。  そのような中で、初の全国的規制として確立したのが明治32年の勅令による「産婆規 則」です。中身は、産婆の教育を行うこと、一定の教育を得た者について試験を行う こと、試験を受けた者に対して免許を出すこと。いわば資格としてのワンセットがこ こで確立いたしました。ただ、これは中央の規則でありますが、現実には各地方にお いて名簿を整理し、免許を出し、試験も実施するという取扱いになっておりました。 なお、この規則については明治43年に改正が行われ、内務大臣が指定したレベルのき ちんとした学校については、試験は要らないということで一部規制緩和が行われて、 その学校を卒業すれば免許は与えられるという形になりました。このような形で産婆 の養成が進められたわけですが、大正初期においては、ほぼ3万人を数え、昭和10年 には倍増して6万人のレベルになったということです。  看護師ですが、女性が業として看護を行う形態は日本ではあまり一般的ではなかった と言われており、幕末の戊辰戦役において傷病兵に対する救護を組織的に行ったのが 始めであると言われております。当時のイギリス公使パークスに官軍が依頼をし、そ の大使館付きの医官でありましたウイリアム・ウイルスを傷病兵の救護に当たらせた。 その際に、臨時に相当数の既婚の婦人を雇って救護に当たらせた。したがいまして、 実態としては専門知識を持った方ではないということです。  その後、実は明治時代というのは、内乱なり戦争が相次ぎました。西南の役が明治10 年、濃尾大震災が明治24年、日清戦争明治27年、日露戦争明治37年、第一次世界大 戦が大正3年という形で災害なり戦争が相次ぎます。その戦争や災害における救護に 関して、女性の看護の方々が活躍することが社会的にもかなり評価され、社会的評価 は高まる一方であったという状況です。そういう意味で社会的評価が徐々に確立して いく状況であります。  一方、看護教育についても明治17年からアメリカ人の看護師を呼んで教育が始められ て以来、徐々に組織的な教育が行われるようになってきます。ただ、実際の資格の取 締りは各地方に委ねられておりました。それが中央の規則として作られたのが大正に なってからで、それが「看護婦規則」、内務省令です。この背景は、いま言いました ように社会的評価が高まる中で、資格として確立すべきだということと、一方では病 院が増えて病院におけるスタッフとしての需要が高まった、それに伴いさまざまな学 校が設立され、そのレベルも統一する必要があるという中で、この看護婦規則が全国 的規制として作られたということです。なお明治44年には、ほぼ1万3,000人余りの 看護婦がいたと言われております。  保健師ですが、資格としての確立は最近ですが、実態としてはそれより前からありま した。1つは都市部における結核予防ないしは母子保健です。今日で言うと訪問看護 ないし巡回指導という形でさまざまな方が関わっていた、その中の一部が今日の、い わば保健所の原型を形づくったという1つの歴史の流れがあります。もう一方は、農 村部で貧しい農民に対する保健指導です。いわば社会事業の一環として取り組まれた という流れもあります。当時の農村問題は日本における最大の問題で、昭和恐慌とか 農村恐慌と言われる中で農村が疲弊するという状況です。その後、国民健康保険がで きる経緯もあるわけですが、その中で農村の指導を保健という形で携わったという流 れがあります。  そういう中で戦争のほうに突き進んでいくわけですが、当然農村は食糧の基地であり ますし、また、兵隊の供給源でもあります。健兵健民政策の中で国家的な事業として 保健が取り組まれることになるわけです。昭和12年には「保健所法」が成立し、行政 機関として保健所を全国的に整備しようと取り組まれます。この保健所の規則の中で 初めて保健婦という名前が使用され、以後それが一般化していくことになります。実 は保健関係の名前は数10種類あったと言われております。保健婦という名前から、社 会看護婦、社会保健婦、巡回看護婦という名前など、挙げればきりがないほどさまざ まな名前で呼ばれていた実態があります。そのような中で、資格を確立して一定の質 の確保を図る必要があるということで、昭和16年に「保健婦規則」ができました。こ れが戦前における3つの簡単な流れです。  その後、戦争が本格化し「国民医療法」が昭和17年に公布されます。ご存じのとおり 昭和16年12月に太平洋戦争が始まりますが、その直後から帝国議会が開かれます。 いわば戦争国会と言われた議会です。その中で戦時立法が次々と提案され成立します。 その戦時立法の1つとして国民医療法が成立したわけです。当時は開業医が中心で自 由診療が中心でありました。日本の医療体制の中で、どうしても都市部集中で無医村 が増加する、これが農村問題に絡みつき、何とかして医療の普及を図ることと、戦時 として総動員体制に医療としても協力していくという中身が入っていたわけです。そ の中で今日でいう医療法なり資格法なりが1つの法律で、すべてまとめられることに なっておりました。  その国民医療法に基づいて保助看もそれを根拠にし、具体的には命令で定めるとされ たわけですが、実際の施行はすぐにはされず、初めてされたのは昭和20年5月の「保 健婦規則」でした。これは戦時体制の中で国民医療法に根拠を置いて保健婦規則が新 たに作られたということではないかと思います。後ほど内容をご紹介しますが、保健 婦の業務内容の拡大を見ております。  その後、助産と看護については国民医療法に根拠を置くことなく、勅令ないし省令と して効力を保っていたわけです。日本国憲法が昭和21年11月3日に公布され、半年 後、昭和22年5月3日に施行される状況の中で、いわば法治主義の徹底を求められた わけです。法律に根拠を置いたルールにする必要があるということで、急遽形式改正 が行われたのが、「助産婦規則」と「看護婦規則」です。そういう意味で昭和22年5 月1日、2日とバタバタと成立しております。  日本は終戦を迎えGHQの指導の下に置かれるわけですが、GHQは当時9つのセク ション、局なり部が設けられて、各省庁に対応する部局を設け、いわば間接統治をし ました。具体的には日本政府が統治をしますが、その裏に控えて指導するという体制 をとったわけです。その部局の中の1つに公衆衛生福祉部が置かれ、公衆衛生福祉部 の1つの課として看護課が置かれました。その看護課の課長、オルトさんという方で すが、その方を中心に戦後の看護職のあり方について真剣な検討が始まります。それ が昭和21年3月から「看護制度審議会」と日本側では呼んでおりますが、その検討が 始まり、昭和21年末に「保健師法案」がまとまります。これはかなり思い切った内容 で、保健、助産、看護の3つの資格を1つにまとめて保健師にすると、この保健師は いま言っております保健師と全く同じ字です。学歴については高卒を求め、その後3 年間の専門教育を行う。また、国家試験を必ず受けて国家免許にする。こういう中身 の保健師法案が提案され、まとまりかけるという状況に至るわけです。  ところが、それが公に提案される前に覆り、やはり資格は3つであるべきだというこ とになりました。なぜかといろいろ言われておりますが、1つは3年間の専門教育期 間は3資格全部行わせるには短いのではないか、保健師として一本化するには、当時 の女性教育の現状から見た場合、看護スタッフが不足するのではないかという懸念も あったと言われております。結果的には、看護職としての一体性を持ちながら、資格 としては3つに分けて作るべきだということになりました。それが具体的にルールと してできたのが「保健婦助産婦看護婦令」です。根拠としては国民医療法を根拠に、 今度は政令の形で3つについての統一的ルールができました。  ただし国民医療法自体は、やはり戦時立法の性格が強いということで、一部緊急の手 直しが行われていましたが、新しい医療体制を作るべきだという議論の中で廃止され ます。したがって、その廃止と併せて保助看について法律で単独立法をすべきである、 ということで成立したのが1年後の昭和23年の保助看法です。この時は同時に医師法 や歯科医師法もつくられております。  保助看法の一部改正が昭和26年に、これは議員立法で成立しております。この保助看 法が作られたときには甲種と乙種という形で、従来の看護婦の資格を分けて、乙種に 一部業務制限をかけて、学歴としては低くてもいいという資格を作ったわけです。そ れが現場でさまざまな混乱が起きたということで、看護業務を同じにして准看護婦を 作るという改正が昭和26年に行われ、それが今日に至っています。以上のような流れ の中で、具体的にはどのような変遷を経たかについて条文に則してご紹介いたします  最初は保健師です。昭和16年にできた「保健婦規則」ですが、第1条では、これはほ かの資格に見られない特徴である名称独占が付けられております。保健婦の名称を使 用して、業務としては「疾病予防の指導、母性又は乳幼児の保健衛生指導、傷病者の 療養補導その他日常生活上必要なる保健衛生指導の業務を為す者」と規定されていま す。当時はさまざまな名称が乱立していて、資格も背景もバラバラだったという中で 質の確保を図っていこう、という中でこの名称の話も出てきたのではないかと推測さ れるわけです。  保健婦規則第7条では看護業務の関係が規定されています。「保健婦その業務執行上 必要あるときは看護の業務を為すことを得」ということで、このときに保健婦も看護 の業務ができると書かれていますが、よく見ると業務執行上必要あるときは、という 限定が付けられており、必ずしも無条件に認めていたわけではないということだろう と思います。ただ、これについてはその後、先ほど国民医療法の中で一部先に施行さ れたという昭和20年5月の規則ですが、この規則の中で「業務上必要あるときは」と いう条件が外されて「保健婦は一般に看護業務をなすことが可能となった」というこ とです。この背景は、特に保健婦は農村のほうに常駐をし、農村の方々の保健指導を していたわけですが、医師がどんどん戦地に送られていく中で、医師がだんだん少な くなってくるので肩代わりをせざるを得ないという状況の中で、このような規制にな っていったのではないかとも考えられます。  免許については、保健婦規則では年齢18年以上の女子であること、免許は地方長官、 いまでいう知事です。どういう人に免許を与えるかというと、保健婦試験に合格し、 3カ月間インターンというのでしょうか、修業した人に免許を出すということです。 保健婦試験は地方長官が実施することになっております。これが1つのルートです。 2つ目のルートは、大臣が指定したしっかりした学校を出れば無試験で免許を与える。 この2つのルートができたわけですが、これは明治43年の産婆規則の改正と平仄が揃 っているのではないかと思われます。  この場合の指定した学校というのは、これが下に書いてあります入学資格です。指定 した学校については、第一種、第二種、第三種という3つのカテゴリーが作られまし た。題名が「私立」の指定規則となっておりますが、今から思うとどうかと思います が、官立、公立については無条件で指定といいますか、水準が高いと位置づけられて、 民間の学校についてはこの指定申請をしなければいけないということでしたので「私 立」という規則になっております。ただ中身は私立も公立も、この内容を満たすとい うことで同じであったと思います。  第一種の学校は、高等女学校卒業者で修業年限2年。要するに資格を持っていない方 です。高等女学校というのは、今でいう高卒とお考えいただければいいと思いますが、 高卒のレベルを求めたわけで、これはかなり高いレベルだと思います。第二種は、看 護婦の資格をすでに持っている人、そういう方は修業年限は6カ月。第三種は、産婆 の資格を持っている方、修業年限は1年。それぞれタイプを分けて学校をつくる形に なっております。ちなみに数で言うと、昭和17年末では、第一種は6校、第二種は 11校、第三種は2校、計19校の養成校が指定をされたと記録にあります。第一種の 学校は、看護と保健を統合カリキュラムで行う学校と思われます。  その後、この規則が改正され、更に改正されたのは昭和22年ですが、これらの区分が 一本化され1つだけの種類になります。このときに入学資格が高等女学校卒業となり、 修業年限が3年となっております。おそらく看護婦だけ2年間であったので、それに 保健を加えた2年というのはかなり無理があったのかもしれません。それで3年とし ながら、やむを得ない場合は2年という形で一部改正されたのが昭和22年です。  保健婦の試験は、試験科目は1〜13まで科目が出されておりますが、このうち太字で 書いております解剖学、生理学、救急及び消毒、繃帯及び治療器械、看護方法という のは、いわば看護の世界で行われている科目で、試験問題としては看護の問題も入っ ていたのが初めの保健婦の試験です。但し書にありますが、看護婦をすでに持ってい る方については、1、2、8、9、10、は試験科目の免除という取扱いがなされてい たわけです。  このような保健婦規則が昭和22年に大幅に変えられ、先ほど言いましたとおり、保健 婦助産婦看護婦の1つの政令にまとめられたのが昭和22年です。このときに、業務に ついては第46条2項、保健婦は第5条に規定する業、第5条というのは看護業務です。 看護業務をなすことができるとなっております。戦争中の昭和20年5月の規則で、一 般に看護業務をなすことが可能となったものをそのまま引き継いだ形になっておりま す。この政令については、その前に保健師法案がありましたが、基本的には保助看の 資格を非常に高める、教育レベルを高くし、質を確保する狙いがあった。このときの 理解では、看護を基礎資格にし、その上に助産と保健が載るという意識のもとで、こ の政令が組み立てられているということだろうかと思います。免許についても前は地 方免許であったわけですが、試験は大臣が実施しますし、免許も大臣がすることに変 わりました。  試験を受けるためには受験資格が必要です。大臣の指定した学校ないし養成所を出な ければなりませんし、保健の専門教育を受けたことを保健婦試験の前提にしておりま すが、保健の学校に入るためには看護の勉強をしていなければいけないという条件を 付けたのが入学資格欄の意味です。また、保健の学校の修業年限は1年以上とされま した。そういう意味では、第二種の学校が看護婦の資格を有する者で修業年限が6カ 月以上となったのですが、期限としてこの時点で2倍に延長された形に整理されてお ります。  その後、この政令を基本的に引き受ける形で法律化したものが保助看法です。基本的 には同じ規制がそのまま引き継がれております。ただ、入学資格は保助看法の成立に 伴って改正された規則によって変わっており、以前は看護の勉強をしていればよかっ たのですが、看護の国家試験に合格しなければ保健の学校に入学できないことになり 規制が強化されております。ただ、この規制は非常に強すぎるということで、看護婦 に合格しないと保健の学校に入れないということになると、少なくとも半年間のタイ ムラグ、場合によっては1年近く待っていて入らなければいけないので、その後昭和 26年の改正で、試験合格という要件は外され、また、1年を6カ月に元に戻されてお ります。  試験科目の変遷ですが、保助看の政令ができた段階ではほぼ従前の試験科目が維持さ れております。その後、「保健婦助産婦看護婦法」ができ、指定規則が改正される段 階に至って、この規則が改正されております。1〜10まで科目が出ておりますが、簡 単に申し上げれば、それまでの看護に関する試験科目が削除されたということです。 この形を今日まで、基本的に引き継いでいるとご理解いただければいいのかなと思い ます。ただこの当時、看護科目が削除されたということですが、現実には看護と保健 と両方の資格が得られる学校自体が存在しなかったのも事実です。  次は助産です。「産婆規則」が明治32年に作られ、その規則が「助産婦規則」と名前 が変えられましたが中身は同内容で、産婆を助産婦に変えたということです。業務の 特徴は、実は実態先行型が反映していたかと思いますが、産婆あるいは助産婦はどう いう業務を行うのかということについての直接的な規定は一切ありません。こういう ことをしてはいけないという規制がかけられており、要するに、異常出産の場合には 医師の診療がなければ駄目だとか、手術をしてはいけない、医療器械を使ったり薬品 投与してはいけないというようなことです。ただ消毒や臍帯や浣腸はこの限りでない という規制が付けられていたのが産婆についての特徴です。  免許は、これは明治43年改正以後の話ですが、産婆試験に合格する。この実施は地方 長官です。試験及び資格自体は地方ですが、学校については内務大臣の指定になって おります。内務大臣の指定したきちんとした学校を卒業すれば試験はなく、免許は受 けられます、その免許は地方が出しますという規制です。内務大臣が指定した学校は どういう学校かというと、学歴は高等小学校の卒業が要件です。高等小学校卒業とい うのは、6年プラス2年、いわば8年の教育ということです。8年の教育を受けて修 業年限は2カ年という規制です。助産の試験は、これは最初から産婆ないし助産に関 する専門的な科目をずっと試験科目にしてきており、今日まで変わっておりません。  昭和22年の一本化政令のときに、実は保健と同じく並びで、この助産も同じような位 置付けが与えられております。助産についての定義が第3条で初めて行われておりま す。これは基本的に現在の保助看法に引き継がれております。第46条第2項では、保 健婦又は助産婦はということで、助産婦は看護業務ができるという規定が保健婦並び で入っております。これは先ほど業務について規定はなかったと申し上げましたが、 当時の理解では産婆ないし助産婦は看護業務はできないと理解をされていたというこ とです。したがいまして経過措置で、第63条で施行日現在の助産婦、要するに新しい ルールが適用される現時点において、助産婦の免許を持っている人については、助産 の業務をできることにはしているのだけれども、この規定は適用されない、というこ とは看護業務はできない。したがって、新しいルールに従ってきちんと勉強した人で 資格を取った人は看護をしてもいいが、それ以前の人は看護業務はさせませんという 経過措置であったわけです。  免許も国家免許で第7条に書かれております。また入学資格も、保健婦で説明したと 同じように、看護婦の勉強をした人です。また受験資格も同様です。保助看法が成立 したことに伴い指定規則が改正され、昭和24年段階では看護婦の国家試験に合格する ことを求めておりましたが、2年後にはそれが外され、修業年限は6カ月以上になり ました。  次は看護師です。大正4年に「看護婦規則」が作られ、基本的には同内容で昭和22 年に衣替えをしております。まず業務の中身ですが、最初の規則では「公衆の需に応 じ傷病者又は褥婦看護の業務を為す女子」と定義されております。免許は18年以上で 地方長官の免許です。これは他の資格と並びで、ただ年齢は18年以上となっておりま す。それと看護婦試験に合格するか、地方長官の指定した学校を卒業した者。地方長 官の指定した学校を卒業すれば無試験で免許は受けられるということです。ここで看 護婦だけは大臣指定ではなく地方長官指定となっております。  指定した学校の要件ですが、これは産婆・助産と同じで高等小学校卒業程度で修業年 限は2年以上となっております。保助看令ができたときに、この看護業務については、 実質的には同じであると理解されています。言葉としては「傷病者若しくはじょく婦 に対する療養上の世話又は診療の補助」、いわば2つの業務として規定したのが昭和 22年です。免許についても、今まで説明したものと同じ規制です。  入学資格は、これは現在に引き継がれておりますが、高等学校卒業です。以前の中卒 未満であったものがかなり引き上げられたのは事実で、高卒以上、しかも、その後3 年の専門教育と。かなり思い切って教育内容を昭和22年の段階で引き上げたことにな ります。それが基本的に保助看法に引き継がれていく流れになっています。  看護婦の試験を受けるための受験資格は大臣指定の学校で勉強した者です。この受験 資格があることが、それぞれ保健と助産の学校の入学資格になっています。試験科目 は、人体の構造及び主要器官の機能、それと保健のところで説明したこと、あと看護 方法、衛生及び伝染、消毒、繃帯及び治療器械、救急と。基本的にその当時における 看護について必要な知識・技術についての教育と、それを確認するという形で試験科 目として行われ、それが今日的に引き継がれて、名前は少し変わっておりますが今日 的水準に応じて、それが引き継がれています。以上簡単に流れを振り返りました。  次は11頁をお開きください。保助看法が成立した直後、ないし昭和20年代はほとん ど問題はなかったのです。と言うより最近までほとんど問題はなかったと言っていい と思います。ところが複数の受験資格を付与する学校、養成所、大学が近年になって 非常に増えてきております。データがはっきりしている昭和60年から取っております が、それでもまだ1桁です。保健師と看護師の国家試験の同時に受験資格を与えられ 学校が、6校からチョボチョボ増えている状況で、2桁になるのが平成4年からです。 それから以後は急増し、平成16年は119校となっております。なお、括弧書きで書い てあるのは、その中で更に助産も取れるという学校がこれだけの大学があるというこ とです。養成所については統合カリキュラムを行っており4校からと、これは1桁台 で推移している状況です。いずれにしても、法律制定当初とは状況が変わってきたの は確かかなと思われます。  その次の頁は、保健、助産、看護、の学校の基準です。第2条は保健の学校で、入学 資格は看護の勉強をした人です。修業年限は6カ月以上。教育の内容は後で説明しま すが別表1に定めるもの以上となっております。助産も同じような中身です。看護に ついては、1号で高卒以上ということです。修業年限は3年以上、教育内容は別表3 という形になっております。  別表1は保健で、中身は地域看護学から疫学・保健統計、保健福祉行政論、臨地実習 ということで、いわば理論と実習を併せて教育していただくことになっております。 単位は21単位です。これは6カ月という修業年限が頭にありますので21単位となっ ております。ただ、現実はなかなか厳しいということで、現実には1年間の教育期間 で行われております。  単位の計算方法は大学設置基準によります。1単位は、講義・演習で15〜30時間。実 験・実習・実技は30〜45時間。臨地実習は、1単位45時間で計算されます。  別表2は助産の学校です。助産についての専門教育を受ける、ないし助産学の臨地実 習をするということです。この特徴的なところは、実習中分べんの取扱いを10回程度 行わせる。医制のときの規制を引き継いだとは言いませんが、何かそれと少し関係が あるなとも思われます。  別表3は看護です。看護は基礎資格として広い領域をカバーする必要があるというこ とで、基礎分野、専門基礎分野、専門分野と大きく3つに分けられており、専門分野 についても看護についての基礎である基礎看護学から始まり、分野ごとの在宅から精 神までやる。臨地実習はそれぞれの分野ごとにするということで93単位になっていま す。  17頁は指導要領です。これは厚生労働省所管の養成所に関し、私どもがさらに細かい 中身として解説なり指導しているものを抜粋したものです。例えば、地域看護学は一 体どういうことを勉強するのかということで、公衆衛生看護及び継続看護の基本理念 と目標を学ぶというようなことが、それぞれ書かれています。臨地実習についてもど ういう所で実習するのかと。具体的には保健所や保健センター。産業保健ということ で、事業所で実習することもあるということです。時間数としては675時間以上を求 めております。  助産は22単位を求めており、720時間以上の講義・実習等を行うとされております。 看護も93単位、具体的には2,895時間以上の講義・実習等を行うことになっておりま す。現在のカリキュラムの組立て方は、保健と助産と看護はそれぞれかなり独立性が 高く、なるべく科目は重複しないという整理になっております。統合カリキュラムも ありますが、保健師・看護師統合カリキュラムは21頁。助産師・看護師統合カリキュ ラムは22頁にありますが、ほとんど単位数は省略されない形になっています。  23頁以降は、指定規則は指定規則といたしまして、実際の養成所においてどのような カリキュラムになっているかという例を示したものです。23〜24頁は保健師の養成所 で、単位数は指定規則をはるかに超えて33単位です。時間数は990時間。その他を入 れると1,000時間を超える時間で、現実には1年間で教育が行われているという例で す。同じように2例目を24頁に示しております。この場合でも総計で1,000時間を超 えるボリュームになっております。助産師については25〜26頁で、これも同じように 単位数で33単位、総計930時間。2例目は非常に充実をしており、学生が大変かなと 思いますが38単位で1,230時間をかけています。  以上で学校を出て試験に臨んでいただくことになるわけですが、27頁に現在の試験の 概要を付けております。試験科目は、保健、助産、看護とそれぞれ養成カリキュラム に沿った形で、その知識なり技能を確認するという形で同じような試験科目になって おります。時間数は、保健と助産は午前80分、午後60分で計140分、2時間20分の 試験時間です。なお、看護については取り上げていません。看護については非常に範 囲が広いということで、午前中に165分、午後に150分、合わせて315分、5時間15 分の試験時間です。1日で試験を行うのは、おそらくこれが限界ぐらいの状況かと思 われます。看護については必修問題が午前の中にあり、これは基礎的な理解が不可欠 だと思われるところについては、それができないと他がいくらできても駄目だという 意味で必修問題という特別の問題枠も作られております。  国家試験日は最近は例年年1回で平成17年は、保健師は2月24日(木)、翌日に助 産師の試験があり、1日置いて看護師の試験があったということです。  保健師・看護師、あるいは助産師・看護師の重複受験者は一体どのくらいいるだろう か、その合否状況はどうなっているかを、データが取れた平成6年以降まとめたのが 28頁です。平成6年は、保健師・看護師の重複受験者は461名で、このときには保健 師は合格されたが看護師は不合格だったと、今回問題になるような方はいなかったと いうことです。それから以後、ずっと重複受験の方が増え、平成17年は6,600名を超 える数になっている状況です。それに伴い、看護師が不合格だった方が2桁を数える に至っており、場合によっては3桁に近くなっています。この数に若干波があるのは、 看護師の国家試験の合格率が年によってややバラつきがあることを反映しています。 その横に助産と看護がありますが、助産のほうは数が少ないこともあり、保健に比べ ると数はまだ少ないという状況です。ただ潜在的に同じ問題をはらんでいるというこ とだと思います。なお、重複受験しないで、あえて例えば保健師しか受けないという 方もいると伺っていますが、その数の把握は困難ということで付けておりません。  次頁は看護師国家試験の再チャレンジの合格率です。新卒というのは学校を卒業して すぐ国家試験を受けられた方です。平成17年は全体で95%余りの方が新卒で合格さ れておりますが、既卒で再チャレンジされる方は51.4%とかなり合格率に差がありま す。再チャレンジされる方は、かなり合格率は低くなっているのが現状です。そうい う意味で、看護師は不合格であった方が翌年以降も受けられることもあると思います が、受からなくて、取れなかった方が残る可能性があると思われます。  30頁は学校卒業者の就職の状況です。これは大学であれば基本的に保健と看護の両方 の資格を取得できる教育になっております。ここに書いてある養成所は統合カリキュ ラムの養成所で、その方々の保健師としての就業は、実はかなり低く、大学では1割 に満たず、養成所で15%ぐらいです。実は多くの方、8割近くが現実には看護師とし て就業されるという実態です。  31頁は、医療法標準で一定のスタッフを備えていただく、あるいは診療報酬で算定す る際にスタッフの数に応じて算定するという取扱いですが、その中で看護職員を配置 しなければいけないとなっております。看護師免許のない保健師の方はどうなるのか という問題ですが、現状の取扱いとしては、看護師として算入可能になっているとい う取扱いです。2つ目は、看護師でない保健師の方が、例えば仮に病棟で入院患者の お世話をされているときに、看護師という名札を付けることはできるのだろうかとい う議論があります。これは次回名称独占が議題に挙がると思いますが、明文による禁 止規定はない状況ですので、そういう方もいる可能性はあると思われます。  行政処分は、看護業務に関して、例えば、残念ながら何らかの医療ミスがあり行政処 分を受けざるを得ないといった場合に、看護師を持っていない保健師の方はどうなる のか。あるいは、看護師と保健師の両方を持っている方はどうなるのかということで す。これは看護師の部分は保健師または助産師の資格についても、現実は処分対象と する取扱いになっています。以上が現状の説明です。  なお参考資料として、前回委員からご要望がありました需給関係について若干の資料 を付けております。検討会の資料自体はもっと多かったのですが、分量の問題もあり ますのでいくつか抜き出しております。  1頁は看護職員の現行の需給見通しです。平成17年で130万人で、需給がほぼ均衡す るという見通しの中で、現実にほぼ順調に数字上は推移しています。以下、養成所の 施設数及び定員の推移、就業者数の推移、病院の100床当たりの看護職員数。これは 4頁にあります。現実には、100ベッド当たりの看護職員数は年々じりじりと改善が 図られているという現状にあります。男性の比率も5頁にありますが徐々に上がって きています。一方、6〜7頁に18歳人口がありますが、18歳人口は減っていくとい う中で、新卒の職員に期待していくのは難しい時代を迎えつつあるということです。 8頁には退学者の割合が出ておりますが、この10年間で残念ながら退学者の比率は2 倍のレベルに達しており、これが問題視されるようになってきております。10頁に新 規採用者の存続率、11頁に新卒看護職員の離職状況ということで看護協会の資料を付 けております。一般職種と比べてどうかという議論がありますが、残念ながら新人で 辞めている方々が相当程度のレベルであるということです。  12頁は医療提供体制の各国比較です。日本の場合はよく言われますが、平均在院日数 が長く、病床数が多い、その結果、ベッド当たりのスタッフ数が手薄になる。諸外国 との比較で見る限り、いま言われているということです。  13頁では、新たな検討会を昨年の6月から立ち上げており、ご検討をいただいており ます。平成17年末で現行の見通しが切れますので、平成18年以降5年間の見通しと いうことで現在検討作業をしております。その検討の日程が15頁に書かれております が、この4月から各都道府県では実態調査に取り組んでいただき、その結果をいただ き、本年末に全国ベースの推計を出したいという状況です。なお、この検討会の議論 の中でも、現場における不足感と、看護職員の需給見通しが順調だと言うことが、実 感が乖離しているのではないかというご指摘があり、現場における不足感が十分に反 映されるような推計をすべきだというご指摘を踏まえ、16頁以降、策定方針を作り、 具体的に各医療機関においてはこの策定方針をご参照いただきながら、正確にその需 要を把握いただきたいということで、いまお願いをしているところです。  簡単ですが資料1及び参考資料の説明を終わらせていただきます。 ○山路座長 どうも長々とありがとうございました。本当に膨大な資料ですが、ただい まの事務局の説明について、ご質問、ご意見等がありましたらお願いいたします。 ○遠藤委員 膨大な資料を、とてもわかりやすく概観させていただき本当にありがとう ございます。資料1の30頁で、卒業者の就業状況に関して質問させていただきます。 この資料の出典に関しては看護課の調べとなっておりますが、例えば助産師として就 業というところに280人のうち4.2%という数値が出ております。この実態は看護部 という所に看護職員の場合配属になりますし、あるいは辞令の関係上、看護師という 辞令をいただくところが多いのでこういう数値にもなろうかなと推測はできるわけで す。一方、業務従事届が2年に1回あります。これで新人が助産師として従事届が出 ているかという、それは2年に1回だからわからないと、この出典に関してお教えい ただければと思います。 ○野口看護職員確保対策官 ご指摘のとおり就業届という形で、自分がいちばん関係し ていると思われる資格、重複で資格を持っている方については、例えば助産師として 助産業務をやっているということであれば、助産師として○を付けて就業届が出てく るわけです。その中で新卒であるかどうかについては把握ができない状況です。全部 一緒のデータとしては、どういう所にいらっしゃるということはわかりますが、抜き 出して、卒業者がどうなったかというのは、データとして把握できないのが現状です。 ○辻本委員 ごく基本的な質問をさせていただきます。患者の立場ということで、看護 師の資格を持たない保健師さん、助産師さんが看護師さんとして働いている実態とい うことを正直知りませんでした。この度勉強させていただいたわけですが、現場では、 特に管理者の方々がいる中で、そのことでどういうことが問題になってきているのか、 その辺りを少し、私が理解できる程度にご説明を願いたいと思います。 ○山路座長 実害があるのかどうかということですね。 ○辻本委員 はい。 ○田村看護課長 私どものほうで、例えば医療安全に関連するヒヤリ・ハットの報告だ とか、そうしたものをいろいろいただいてはおりますが、具体的にそうした資格免許 のところでケースとして把握しているというものはありません。医療事故に関わる行 政処分についても、そういうケースもありません。したがいまして、実際にどういう 支障があったかということについては、はっきり申し上げて、わからないと言わざる を得ないというのが現状です。 ○辻本委員 この度、議題ということでこの問題が提起されているわけですが、なぜい ま提起しなければならないかという背景がおありだと思いますが、そこのところをお 願いします。 ○野口看護職員確保対策官 ただいまの件は資料2のほうに影響するかもしれませんの で、その辺の説明も少し。 ○山路座長 そうですね、資料2と資料3の説明がまだ残っておりますので、その説明 を受けた後、具体的なご意見なり、ご質問をもう少し突っ込んでいただいたほうが議 事進行上いいのではないかと思います。いまのご説明に関してのご質問がなければ資 料2と資料3の説明に入ってよろしいでしょうか。 ○青木委員 養成所についてはだいぶわかりました。養成所における統合カリキュラム も、いま比較して理解できたのですが、大学はどうなっているのでしょうか。 ○田村看護課長 大学のほうも文部科学省において、これと同じ指定規則を用いて指定 をしております。ただ大学の場合には、現実、すべてこれは教育内容として指定規則 上示しています。養成所においても、むろん大学においては、さらにと申し上げたほ うがいいと思いますが、教科目そのものはかなりいろいろな名称で、科目が設定され ているのが現実です。  たぶん、文部科学省において、申請があったときには指定規則と、その大学が考えて いる教科目との対応表を作られていると聞いておりますので、そういった中で具体的 に、この科目はこの指定規則上の教育内容の何単位に該当するか、といったようなこ とが分かるような形で指定がされていると聞いているところです。 ○青木委員 そうしますと、大学の教育にあっては、基本的に看護の部分、助産の部分、 保健師の部分は、こういう形で、ほぼ行われていると。プラス、各学校のいろいろな 特徴が、そこに自由に入れられているというぐらいに考えていいのですか。 ○田村看護課長 そこは大学によってかなりいろいろな表現がありますので、私どもも 必ずしもよく把握できているわけではありません。委員の中で大学の先生もいらっし ゃいますので、具体的にご質問を受けていただけるとありがたいと思います。 ○遠藤委員 保健師と看護師は大学の課程を終えると全員受験資格があるように、大学 のカリキュラムを設定しています。プラス、助産師に関しては選択という形で取れば、 3つの国家試験を同時に卒業時に受けられる教育を現在しています。  青木委員のご質問を受けまして、認可を受けるときに文部科学省のほうに当然、自分 のところのカリキュラム一覧表を横軸に、保健師・助産師・看護師、いわゆる指定規 則のどの課目に該当するかというものを、全部対応表という一覧表を付けて出して、 課目の中身で審査を受けます。そして、了解というところで教育がスタートするわけ です。現実的には大学は124単位ぐらいが標準だと思いますが、看護の大学は指定規 則がありますので、実際には多分なるべく過密にならないようにと言っておりますが、 124で終わっている所は少ないのではないかと思います。助産師をそれにプラスする と、ここで言うと大体22単位プラスという状況です。一般教養のところでカウントで きる、例えば社会学、心理学等の課目の読み換え等もありますので、プラス22という ところは少ないですが、大体17単位ぐらいは増やしていますので、卒業時に4年間で 140から150単位近くこなしている所が多いのではないかと思っています。 ○山路座長 ありがとうございました。いまの設問に対するご質問はほかによろしいで しょうか。ご意見はあと、資料2と3の説明を受けてからということにしましょうか。 なければ、資料2と3の説明をお願いします。 ○野口看護職員確保対策官 資料2、資料3のご説明をいたします。まず、当時の状況 と比べて今日これが問題になる状況として何があるのか。先ほども説明させていただ いた現状の中で、かつて、昭和26年当時というのは両方取れる学校が現になかったの です。初めてできるのが、昭和27年の高知女子大が日本における看護大学の初めです。 それ以降、大学教育というのはそれほど進まずにずっと1桁できていた。昭和60年ま でずっと、日赤や聖路加、東大などあったわけですが、そのような状況が続いてきて いたということです。実際上、問題になるようなレベルではありませんでしたし、当 時の政策担当者に取材して聞いたところによると、今回のような問題は当時議論もさ れていないし、意識もしていなかった。当時、制度を考えていた人たちの頭には現実 的になかった問題であったのだろうということが1つあります。  実際、実は審議会の先生から「何とかしたほうがいいのではないか」というご指摘を 受けたことがあります。それが資料2です。平成13年度の保助看の分科会で委員から 出されたご意見です。このときは前回、第1回の検討会の資料として付けていますが、 看護師の国家試験の合格率が平成13年、14年と84%であった。看護師というと9割 ぐらい受かりそうな感覚をお持ちかもしれませんが、この当時は非常に少なかった。 現実問題、保健師に受かりながら、看護師に落ちてしまったという人たちが委員の身 の回りでかなり発生したという状況があります。  そのような背景の中で、いろいろご意見をいただいたというのが資料2です。1つが 看護婦国家試験に不合格となったのだけれども、保健婦、ないし助産婦の試験に合格 した。しかし、実際の就職は看護業務で就職したという例を知っています。ないしは、 先ほど試験日程が近接して3つの試験が行われると申し上げました。看護が体力的に もいちばん大変だと思いますし、相当な問題数で、5時間以上の試験ということです。  それに比べると、保健婦のほうが範囲も限定されているし、試験勉強という目だけで 見れば手がけやすいということもあって、「将来看護婦として働きたいのだけれども、 大変だからとりあえず保健婦の試験だけ受けておいて、そこで合格しましょう」とい う人がいることを実は知っていますというものでした。こういう問題というのは、制 度的におかしなところがあるからこういうことになっているのではないか。何らかの 対応をすべきではないか、というご指摘を当時から受けています。前回、委員からも ご指摘があったように、具体的な危険ないし問題事例があったのかというと、そうい う事例としては報告を受けていないということです。  資料3をご説明します。何らかの対応をすべきではないのかということで、「当面考 えられる対応案」がいくつかあり得るのか。これはあくまでも、皆様方の議論の材料 としてたまたま作っているという性格のものです。大きく言えばまず「業務制限」、 看護師以外は看護業務をできないようにしたらいいのではないか。いちばん単純、か つなかなか厳しいやり方が1つです。  もう1つ、看護業務ができるという以上は、看護業務に必要な知識や技能を確認する という手段を中に入れておくことが求められるのではないか。これにはいくつか選択 肢を付けていますが、例えば保健師ないし助産師の免許を与える際には看護師免許が あることを「免許付与の要件として追加」をしたらどうかという案があり得ます。2 つ目は、かつて提案されて、制度としてあったこともありますけれども、看護師国家 試験に合格した者だけが保健師ないし助産師国家試験の「受験資格」があるというや り方もあり得ないわけではないだろう。  3つ目に、そうなると同時受験ができなくなるという問題があります。合格基準に入 れるという形で、保健師の国家試験合格のとき、合格を判定する際にその時点で看護 師国家試験に合格していれば、あるいは合格していなければ保健師も不合格にさせる という「合格基準」として整理する考え方もあり得るのではないか。  最後ですが、「国家試験科目」として、これはかつて保健婦の制度が始まったときの やり方ですが、保健師国家試験の試験課目自体に看護師国家試験課目を位置づける。 そのような形にして、そもそも看護師としての合格水準を達成しなければ、保健師の 試験が合格しなかったということにしてしまったらどうかという案もあり得るのでは ないか。そういうことで、いくつかの案を考えたということです。 ○山路座長 対応案も出されたわけですので、この案についてのご意見でも結構ですし、 その他独自のご意見でも結構です。ご質問、ご意見をお願いします。 ○平林委員 まず1つ、現実にどういう問題があるのかということについてデータがな いとおっしゃられました。おそらく、それはそういうデータの取り方をしていないか らデータがないのではないかと思います。したがって、本来、この問題を考えるとき にはそういうデータを改めて取って、ヒヤリ・ハットの報告をしてもらうときに少し 区別して報告してもらうということは考えられるのでしょうか。 ○野口看護職員確保対策官 まず1つ、すべての医療機関ではないと思うのですが、例 としてはいま2桁の数が出ているということなのですが、例えば保健師に合格して、 看護師に不合格だったという方がすべて看護師として採用されているかというと、ど うも医療機関の対応は分かれているようです。むしろ、看護師に落ちた場合は、採用 内定は取り消すという医療機関もあるやに聞いています。ないしは、一応採用してお いて、1年後にもう1回再チャレンジしなさいということもあると思います。  そういうことで、必ずしも保健師だけ持っている人が現実に就業しているとは限らな いだろう。その意味で、130万の看護職からすると、バラければ非常に少ない数にな るのかなと思います。それをヒヤリ・ハットという報告で集めることに有意的な意味 が取れるかどうか、という議論がおそらくあり得るのだろうと思います。その辺は少 し検討させていただきたいと思いますが、一般的にはそういう問題が考えられるかと 思います。 ○菊池委員 本会としても、実態についてあまり把握していなかったものですから、新 卒者を多く採用する大病院21病院ぐらいにヒアリングを急拠行いました。絶対数が少 ないということがあって、21病院中「そういう人が昔いた」というところが2病院あ りました。そのうちの1病院について、対応はどうしたかというと、その方は看護師 が不合格で、保健師だけ取れたのですが、保健師としてとりあえず採用する。ただし、 業務については直接的な看護業務には就かせないで外来業務に従事させて、国試に通 るまでは看護助手とほとんど同じような業務をさせたという対応をしていました。  おそらく、看護管理者は、看護資格を持たない保健師が就業した場合には、今回の低 にあげたような対応をする可能性がかなりあるかなと思っています。その意味で、問 題状況があまり出てこないという部分もあるかと思います。とりあえず、看護管理者 の方にお聞きしてそういうことがわかりました。例えば、大学の先生方に教え子が卒 業後どうなっているかをお聞きすればもう少し把握できるのかなという気もしますの で、もう少し実態、問題状況等を何らかの形で把握していただければと思います。 ○平林委員 そういうことであるとすると、問題は違う観点から捉え直す必要があるの ではないかと思います。要するに、看護師の免許を持っていない保健師が看護師とし て働くことの危険性というのではなくて、むしろ保健師が看護師の免許を持っていな いということ、そちらのほうに具体的な問題点が生ずるのか。あるいは、助産師が看 護師の免許を持っていないということによってどういう問題が生ずるのか。それは制 度的問題ではなくて、むしろ教育内容やカリキュラムの内容、あるいは看護の内容を 勉強していない保健師、看護師としてきちんとしたライセンスを持っていない保健師 が保健師として働くことにどういう問題点があるのか。そういう観点から問題を考え 直すほうが、実は現実的には大きな問題なのではないかと思います。  というのは、例えば在宅や訪問看護、難病の訪問看護の講習会等で若干お話をさせて いただきます。保健師に対しても、難病の訪問活動をするときには、やはり保健師で あろうともきちんと患者に対してケアをしていかなければならない。場合によっては、 看護業務をしていかなくてはならないということを申し上げています。そうすると、 講習会が終わったあと、ある保健師が私のところに来て、「先生、理屈はわかるので すが、私はできません。なぜならば看護の免許を持っていないし、看護の実務をやっ ていないから怖くてできません」とおっしゃるわけです。ある意味、非常に誠実な保 健師だろうと思います。個人的にはそれでいいと思います。ただ、保健師として活動 をしていくというときにはたしてそれでいいのか。その観点のほうが現実問題として はとても大きな問題を含んでいるのではないかと思います。  そのことは、先ほど法律の変遷をずっとご説明いただいた中で、昭和24年のとき、看 護師の資格を持っていなければ保健師になれない、あるいは助産師になれないという 規則があった。そのときに、前にあった看護関係の課目が全部試験から落ちたわけで す。  今度、もう1回引っくり返って、そうでなくてもいいというときに元に戻らないで、 看護師の資格があることを前提とした試験課目がそのまま続いている。法律の枠組み からいくと、そこで本来の筋が少しずれてきてしまっているというところに、この問 題の根源があるのだろうと思っています。 ○川端委員 質問をもう少ししておきたいと思います。要するに、現実的な不都合があ るのかどうかということをもう少し知りたいのです。法律制度に不整合があるという のはそうだと思うのですが、実際問題として、看護師試験に落ちた人が保健師だけを やっているというのであればあまり問題ないだろうと思います。少なくとも、看護師 の教育は受けているわけですから、試験は受けなくてもその教育によって十分な実力 を備えていれば保健師の実際の業務で事故を起こすこともないから、問題になること もないだろうという気もするのです。  そこでもう少し聞きたいのですが、保健師の試験は通ったけれども、看護師試験に不 合格になった人が何人実際の看護師プロパーの業務に従事しているか。その調査はど うもなさっていないようですが、それでよろしいのですね。そういう人が看護科目に おいてどのような成績を取ったか、という調査も当然していないということになるの でしょうか。 ○田村看護課長 何点で看護師の国家試験を不合格になったかということは、いまお示 しできるようなデータは準備しておりませんが、個別に当たればデータとしてまとめ ることは可能だと思います。 ○川端委員 あと、大学での成績というのは追跡できますか。 ○田村看護課長 いや、そこまではちょっと無理だろうと思います。大学の評価という のはこれまた、いろいろバラバラだろうと思います。同じ試験の中で、何がどこまで 出来たかということだけは可能かと思います。 ○川端委員 あと、保健師合格、看護師不合格の数はわかっているということは、具体 的な人もわかっているということでしょうね。 ○田村看護課長 受験番号でしか見ていませんが、それが誰かというのは。 ○川端委員 その追跡調査はできるのですか、どういう仕事をしているという。 ○田村看護課長 私どもとしては、これまでそこまで調査をしたことはありません。大 学において卒業生を出す段階で、この人はどうかということはお分かりになると思い ます。厚生労働省としては「入学者・卒業者調査」というものを行っていますので、 各大学、あるいは養成所からデータはいただきますが、個別識別はできない仕組みに なっています。 ○谷野委員 同じことを言うようですが、保健師は名称独占ですね。その中には多分、 「療養上の世話」の横に保健師が書いてある。それが医師の指示がかかるかどうかと いうことによって、保健師独自の問題を起こした場合に、保健師独自が刑事責任、同 様なものでもかまいませんが、医療責任を負うようなことになるのか。  「療養上の世話」のところも見解が分かれました。ご存じのように、いちばん問題は 准看がそこに入ってきている。准看というのはご案内のように看護師、医師の指示が かかるわけです。ところが、療養上の世話というのは業務独占で、これは医師の指示 がかからないということの横並びに保健師があるとすれば、保健師独自の業務があっ てそういうことになるのか。  何を言いたいのかというと、看護業務というのはその辺の整理をしないと。保健師業 務とは何ぞや、看護業務とは何ぞやということをきちんと整理していないと、保健師 の業務と看護師の業務がかなりダブる場合もあるわけです。その辺、看護師以外の看 護業務を禁止といっても、実際そういうことが可能なのですかということも含めて、 どのようにその辺を整理したらいいのですか。 ○野口看護職員確保対策官 十分にお答えできるかどうかわかりません。そもそも、最 初の保健婦規則ができるときから、保健婦は業務執行上必要あるときは看護業務がな せることとされています。言わば、臨床看護と公衆衛生看護というのは密接なもので あるという理解のもと、どちらなのかわかりにくい。限界というか、看護としてやる 例もあるし、公衆衛生看護としてやっている部分もある。おそらく、ダブルで見たほ うがいいのではないかという部分があり得たのではないかと思います。その意味で、 業務執行上必要があるときは看護業務になすことを得る。  ただし、保健婦という仕事はあくまでも保健指導なので、例えば当初の規則において 考えれば、病棟で保健婦が入院患者の世話をすることはおそらくできなかったという ことなのだろうと思います。あくまでも、保健指導を行う際にということで、一部の 看護業務ができるという理解だったのだと思います。  いまご指摘があった「療養補導を為す場合において主治医師あるときはその指示を受 くることを要す」とございます。これはまさに、1人の患者に対する公衆衛生看護と いう一環で指導するときに、その患者は主治医の治療方針のもとにおいて治療も行っ ている。その主治医の治療方針との調和、整合性を保った上で保健指導、療養指導を しなければいけない。そういう意味で書かれているのだろうと思います。  その際、一体どのような事故が起きた場合にどのような責任に問われるのか、という のは具体的な事例によらないと。単にこの条文だけ見ても具体的にどういう指示があ ったのか、どういう指示をどう守ったのか、個別具体的な事実認定と判断を経ないと なかなか責任関係は、はっきりしないのだろうと思います。 ○谷野委員 ともかく、いま言われたとおり、保健師の場合は主治医が存するときのみ なのです。ところが、保健師活動というのはそれだけではないわけでしょう。そうい う場合にどのような法体系になるのか。そういう方々の行った行為の責任というのは、 あくまでも本人責任というように考えていいわけでしょう。 ○野口看護職員確保対策官 そういう意味では、純粋な保健指導というのは医療行為と されていないのです。逆に言えば、そこはある意味、保健師でなくても誰でもできる 世界なのです。いま言った看護業務はいわば診療の補助業務、ないし療養上の世話で すから、診療の補助であれば医師の指示を受けてやる。しかし、保健師であって、た またま保健指導を行った際に診療の補助的なケアをするとすれば、それは医師の指示 を受けてやらなければいけない。それは看護師と同様と考えています。 ○菊池委員 資料3「業務制限」の書き方なのですが、ちょっと誤解を招くのではない か。「看護師以外の看護業務の禁止」という書き方ですが、実際には先ほど平林委員 からもご意見が出ましたが、保健師が難病の患者に医行為に関する看護業務をするこ とがあるわけです。看護師資格をもつ保健師が看護業務をすることを禁止するという 意味はないわけですよね。何か、誤解を招くのではないかと思います。 ○野口看護職員確保対策官 ちょっと紛らわしい表現でした。そういうことも含めて未 定稿にさせていただいています。看護師の資格を持っていない人が看護業務をしては いけないということで、保健師を持っておられて、看護師を持っておられれば看護師 というようにこの文面では考えています。保健師活動の中において、してはいけない という意味ではございません。看護師資格を持っていない人がしてはいけないという 意味で、ここでは書かせていただいたつもりです。表現がわかりにくくて申し訳あり ません。 ○川端委員 いまの場合、第35条はこのままにするということなのですか。保助看法の 第35条、主治医があるとき「傷病者の療養上の指導を行うに当たって」という、この 療養上の指導は資料3の「業務制限」との関係ではどう取り扱うのでしょうか。 ○野口看護職員確保対策官 療養上の指導ですが、これが純粋な保健指導の部分と療養 上の指導という中で、診療の補助的なことが入るのか入らないのかということにかか っていると思います。一般的には、診療の補助ではなくて療養上の指導、いわば保健 指導の一環で書かれている文脈だと思います。そういう意味では保健指導の部分で、 ただし主治医がいらっしゃる場合に治療方針と整合性を取らないような保健指導はあ ってはならないという意味です。その部分は、例えば看護業務ができないとしても、 療養上の指導の中に看護業務以外の療養上の指導があるということであれば、これは 論理的には残るということだろうと思います。 ○小島委員 いま、現実的に不都合があるのかないのかということが出ています。これ は患者の立場から見たときに、保健婦の免許だけで仕事をしていることを患者に表明 して仕事をしているわけではないという現実的なことがある。それから、2例ほどの 実際の事例から少し考えて述べてみると、現実的にあまり大きな不都合はない。その 代わりに指導者とペアで、必ず組んで指導ができるような立場で業務に当たるといっ たことがあります。  実際の臨床の場面では、療養指導だけ、保健指導だけを保健師が取り出しているとい うことよりも、その診療上の中では非常に複雑に、いろいろ入り組んで臨床看護も公 衆衛生の看護も指導も、複雑に入り込んだ中で、人間として全体の中で指導するとい う場面も多くあります。いずれにせよ、それが具体的にどのようになっているかとい う実態調査はしたことがありません。そういうことも含めて、現実的にどのような不 都合があるのかないのか。そのことについては、どのような対応を考えて行っている かといった、基本的な考えのもとになるデータを改めて取っていくことが大切なので はないかと思います。  先ほどご意見がありましたようにヒヤリ・ハットの報告、そこに特にヒヤリ・ハット が集中して起きるかということはあまり体験上からはありません。それも調べてみる 必要があるかもしれませんが、むしろ「現実的に、どのような不都合がありますか」 という側面で、基本的なデータを持つことが大切なことではないかと考えています。 ○谷野委員 私自身の結論から言えば、不都合なのは法的に当たり前の話だと思います。 保健師が診療上の補助行為をやっているということは禁止されているわけです。そう いう実態があるのかどうかわかりませんが、多分見受けられるからいまこういう問題 が挙がっているというように認識しています。そういう問題がなければこういうこと を議論する意味がないわけでしょう。 ○田村看護課長 保健師が診療の補助行為を行うことができることには、現在、法律上 なっているわけです。 ○山路座長 国家資格はなくても、看護業務はできるということですか。 ○田村看護課長 保健師の資格があれば、看護業務ができるというのが保助看法上の第 31条の2項に書かれているので、そこでこういう問題提起をしているということです。 ○谷野委員 いま座長が言われたように、国家資格を伴わなくてもそういうことなので すか。 ○田村看護課長 できるのです。 ○山路座長 法律上そうなっている、ということだから問題にしているわけです。 ○谷野委員 それが問題なわけでしょう、むしろ。それを私は言っているわけです。 ○坂本委員 私どもの病院にはまだ1人もそういう方がいらっしゃらないのですが、現 実的に看護師の国家試験を受かっていないのに保健師として働いていて、保健師業務 と看護師業務を分けることがなかなか難しいことがあります。いま、在宅が病院の中 で盛んになってきていますので。そうすると、看護師業務を持っていない。ならば、 看護師の国家試験とは一体何だったのか。保健師しか受からなくて、看護師が落ちて いるにもかかわらず同じことをしている人と、看護師の国家試験を受かった人とが一 緒に並んで本当に働けるのか。現実的にスタッフ同士の不信感というか、看護師試験 の国家試験の意味は何なのかというところが出てくるような気がします。先ほど辻本 委員がおっしゃったように、「そのようなことは知りませんでした」と外から見たら 言われるぐらい、中身は大変差が出てくるような気がします。  そうすると、看護師の国家試験は一体何なのか。落ちてもいい人がいるのかというこ とになってくると、まだそういう方を迎えていませんので論議していませんが、現実 的には病院の中で働けなくなるのではないかという気がします。働いていて、そこで 仕事をしながら分けるということは、はっきり言ってできないと思います。  助産師もそうです。助産師ばかりしていればいいかといったら、病院の中ではそうで ないことも起こってくるのです。社員として雇っていながらお産が減ったとき、その 方たちをどうするかといったときに辞めてもらうしかない。やはり、看護師業務とし て働くところはいっぱい病院の中にはあるので、最低限それは持っていないといけな いのではないかという気がします。 ○谷野委員 そこのところが問題なのです。 ○川端委員 いまの点、まさに先ほど平林委員が言われたことだと思います。そうする と、現時点で看護業務ができない保健師、あるいは助産師というのはどれぐらい意味 があるのか。意味がある、独自の領域がそれぞれあるということになれば、業務制限 をかけても看護師の資格を持たないで看護業務をやっている保健師はいないというこ となのだから、大した現実の問題はないでしょう。独立の領域は実はいまではない、 看護業務もできない保健師、助産師はあまり意味がないということになれば、むしろ 資格統一に向けて動いたほうがいいだろう。  当面考えられる対応策の2番目にいくと、独自の保健師領域というものがあるとして、 それだけやりたいという人は実は非常に困ったことになってしまう。そこが一体どう なのか、ということをまず私としては知りたいと思います。 ○平林委員 川端委員のご意見に若干補足をさせていただきたいと思います。先ほど、 私も申し上げたように保健師独自の領域、例えば解剖学や生理学などを必要としない ような保健師業務がそもそもあり得るのかという問題になってくると思います。もし、 それがあるならば看護師の免許を持たないで、あるいは看護師の能力について一定の 国家的試験を受けて、能力が担保されなくても、独自のものがあればやっていいかも しれません。  だけど、そうでないとするならば保健師の業務を行っていく中で、例えば先ほど伺っ たような生理学や解剖学というものはやはり必要と看護保健の専門の方がおっしゃる のであれば、やはりそのことをどうやって担保していくのか。そのためにどういう制 度を作っていくのかということを考えていかなければならないのではないかと思いま す。 ○山路座長 そこのところ、なかなか難しいようですがいかがでしょうか。なかなか答 えづらい話だと思います。 ○遠藤委員 私自身は助産師・看護師でここまでやってきています。ただいまの川端委 員、平林委員のお話に対して、やはり全部同じというわけではございません。いわゆ る助産ということに関しては、明らかに全く同じということではありません。ただ、 根底には日本はもう看護教育をベースにして、その上でミックスの状況で保健師と助 産師をやっていますので、既に教育を受けていない人は1人もいないわけです。戦後 の移行の措置のときはそういう方がいたかもしれません。看護教育を受けているから いいという論理ではなくて、それが水準に達しているかどうかという国家試験をクリ アしていなければ、クライアント、消費者の方の責任に応えることにならないと思っ ています。そういう意味で、現実的問題があるかどうかというよりも質を担保する意 味で、私はやはり看護師の資格は全員が持って、さらに業務の独自性で保健師、助産 師というものを現実的に入れていく。今回は全部をすぐ、3つ一緒にできるかどうか という議論ではないと理解しています。看護師免許がない保健師や助産師というのは、 実際にあり得ないだろうということと、落ちている方の人数を見ると大体1%ですか。  ちょっと危険な発言かもしれませんが、成績と対応するかということに関してはやは り体調等もありますので、対応するとまでは言えませんが、かなり対応するというよ うに思っています。そういう方は翌年必ずクリアしますので、1年間のロスは本人の 免許という責任において、もしそこで看護の職がなかったらいた仕方ないことだなと 私自身は思います。 ○山路座長 せめて国家資格は持ってもらわないと、保健師も助産師も困るということ ですね、単に教育を受けるだけではなくて。ほかにいかがでしょうか。 ○川端委員 資料28頁、「受験者、合格者、不合格者」の数ですが、全く看護師試験を 受けずに保健師試験に合格した人の数というのは入っていないわけですよね。これは どれぐらいいるのですか。 ○野口看護職員確保対策官 それが最初、ご容赦いただければということでお断り申し 上げたものです。その数字が把握できなくて、例えば短大なり養成校で看護師の資格 を持って、大学に編入して保健の勉強をして保健師の試験を受けるという方もいらっ しゃるわけです。単純に、保健師の試験だけを受けた方がそうなのだということには ならないわけです。データの把握上は実は困難なのが現状です。問題としては、この 問題のほかにそういう問題も実はあるということでご紹介申し上げた次第です。 ○川端委員 その関係ですが、いまの大学の1学年の定員、養成所の定員というのはど のぐらいなのですか。 ○田村看護課長 参考資料2頁にここ5、6年の分が載っています。看護師教育の課程 ですが、大学は平成16年4月で8,969の1学年定員があります。実態はそれよりもも う少し学生数が多いようです。 ○川端委員 受験者よりも定員のほうが多いということですか。 ○田村看護課長 平成17年の試験は13年の入学生になりますので6,530人になります。 ○川端委員 わかりました。 ○山路座長 あとはいかがでしょうか。費用対効果の関係があって、なかなか調査が難 しいかもしれませんが、こういう形で何らかの規制をしていく、対応していくという 手立てをとるということであれば、もう少し根拠となる数字がほしいような気もしま す。現実に国家資格を持っていなくて、看護師として就業しているのはどれぐらいな のかがおおよそ分かれば、非常に説得力のある話になると思います。いま「いるであ ろう」という話でやっているわけですから。ヒヤリ・ハットの実例、実害などは難し いにしても、逆に平林委員の言われたように看護師の国家資格を持っていなくて、保 健師として就業している人はどれぐらいいるのか。それはわかるのですか。 ○田村看護課長 今年、そういう人が59名出ましたので、一人ひとりの大学に問い合わ せを個別にして、こういう時代ですから教えていただけるかどうかと思った問題があ るかと思います。 ○山路座長 個人情報保護で。 ○田村看護課長 そういうことをしないと無理だということです。 ○山路座長 数字としてだけ教えてもらうというわけには、なかなかいかないですよね。 やはり、個人の名前が伴う話だから。 ○田村看護課長 結局、その方がナースとして就業しているか否かということになると 思います。私どもはこの59名がどこの大学の卒業生であるかということまではわかり ます。そして、受験者名もむろんわかりますので、その人の行き先がどうなっている かを大学へ問い合わせるという話になるかと思います。 ○山路座長 調査は困難であるということですか。 ○田村看護課長 お答えいただけるかどうかは分かりません。 ○坂本委員 想像すると、おそらくこれからもっと増えるのではないかという気がしま す。というのは、保健師の試験のほうがある意味では焦点を絞れて楽になってくると、 幅広い看護師の国家試験はもう捨てて、保健師になっていこうということで企業など に就職しようという方たちが選びやすい道だと思います。大学が増えてくると同時に、 そういう人たちがおそらく増えてくるような気がします。そうすると、いままでの結 果からどうだったかということよりも、先を見込んで法整備をしておいたほうがいい ような気がします。 ○山路座長 まだまだ増えてくる恐れがあるということですね。 ○坂本委員 はい。 ○川端委員 実態から迫るのが難しいとすれば、理念で決めるしかないということだと 思います。保健師にとって、国家試験に合格する程度の看護業務に対する技能は必須 であるというように言えるかどうか。そこまでいかないで、一応教育は受けて、単位 は取っているのだから、理念上としてはそれでいいと言うのか。それと、さっき言っ たように保健師独自の領域、あるいは助産師独自の領域がそれぞれ専門領域としてあ って、それだけの資格というのは必要だと言えるのか言えないのかを理念の問題とし て議論することにならざるを得ないのではないかと思います。私は全然そこがわかり ませんので、もう少しそちら側のデータを示していただくしかないと思います。 ○辻本委員 非常に不謹慎な発言をお許しください。いわゆる医療消費者、患者の方の 言葉の中に、「患者にとっての常識が医療現場では非常識」という、特に不満を感じ た人から出てくる言葉があります。私もこの世界に片足を入れて長いのに知らなかっ たこと、だけど、いまお話のように、賢い人はそれで看護師の仕事が出来るのだから というようになっている。それがもし仮に医療現場で常識になっているとすると、こ ういうこともやはり患者の不信をあおることになるのかなと思います。  特に、これから医療消費者たちが厳しい要求をする時代です。保助看法というのは、 私が生まれた年にできています。そういう意味で言えばやはり時代の要請、医療消費 者の権利意識の高まりという背景を持って、議論を是非していただきたいとお願いし たいと思います。 ○青木委員 辻本委員がおっしゃったことは非常に重く受け止めなければいけないと思 います。明治の世からいま、平成になって、この世界でどう変化があったか。看護が ベースという流れができたと思います。看護がベースで、いろいろなことを先で考え ていく。それは保健師・助産師の分野だけではない。これは看護協会の考え方に賛成 しますというわけではないのですが、もっとほかにも同じようなカテゴリーで分ける ところが出るだろう。  いま、この局面でこれをどうするかと考えるとき、いちばん簡単なのは助産師・保健 師のところで看護をベースにしなさい。いま私が申し上げたような考え方ということ です。ただ、いま、それで行ってしまってはこれからの世を考えたときに誤まるので はないか。もっと、ベースから考えないといけないのではないか。ベースは何かとい うと、いま申し上げたように看護がベースというように考えます。そこから派生する 形のいろいろな分野があって、それは保健師・助産師だけではありません。そういう 全体を考えていかないといけない。  それから、日本のいまにとって資格というものが何か。医師の在り様がいいとは言い ませんが、医師はどうなのか。医師はとりあえず6年間で合格したら医師なのです。 そこからいろいろ分かれていくわけです。その過程でいろいろ勉強もするだろうし、 いろいろな経験もしていくと思います。日本はいま少子化で、だんだんこういう世界 の人も減ってくる。それは現実に起こるのです。  医療および看護の部分というのはどんどん技術が高度化して、本当なら人がたくさん ほしいのです、お金もほしいのです。だけど、そうはいかない。そういう中にあって、 いろいろな資格を細分化していく。格好良く言えば「専門家」なのかもしれませんが、 そういうことをあまり一生懸命にやり過ぎると、結局空中分解するということがいろ いろな局面で起こるのではないか。いま、保助看法が昭和23年からと委員が言われた ように、根本的にある部分を見直さないといけないのではないか。根本的に見直すた めにはあまり安易な方法、つまり助産師、保健師の資格を取るには看護師もきちんと 取れ、というようにパッと飛びついてやってしまっては間違いではないか。この問題 はペンディングにしておいて、全体の話をした上で保助看法をどういう方向で書き換 えるかを法律家の先生もいらっしゃるから、そういうように持っていけないかと考え ています。 ○平林委員 この検討会がどういうタイムスパンの中で検討するのか。そして、どこま で見通しを持って検討するのかによって、青木委員がおっしゃったことに場合によっ ては賛成するし、場合によってはそれはそれとして、もう少し短い領域の中で当面ど うするかも考えなくてはいけないのかどうか。私にはよくわからないので何とも言え ません。  全体として考えた場合には、青木委員のおっしゃるとおりだと思います。看護という ものがどういうものであり得るのか、どういうものでなくてはならないのかを議論し ていく中で本当に必要に応じて専門職化するのか、専門化するのか。「専門看護師」 と言うと看護協会の用語とバッティングするとするならば、例えば「アドバンス・ナ ース」というものをどうやってつくっていくのかという枠組みでもいいと思います。 そういう形で全体を考えていくという中で、とりあえず、いまどうするのかというこ とまで考えていくのか。  例えば、今日出された資料3の未定稿で見ると業務制限にしろ、あるいは「看護業務 に必要な知識、技能の確認」の上の○3つは、かなり抜本的な法改正を必要とするわ けです。しかし、いちばん最後のところについては法改正を必要としなくとも、とり あえず助産師なり看護師が看護の基本的な知識について持っているかどうかを保健師 試験の試験、あるいは助産師の試験の中でチェックする。そういうことは現行法の枠 組みの中でもできるわけです。とりあえず第一歩を進めて、全体として専門看護師、 ないしアドバンス・ナースの考え方を視野に入れながらさらに検討を続けるというこ とも考えられるのではないかと、先ほどこのペーパーを拝見して思いました。 ○山路座長 わかりました。もうそろそろ時間となりました。最後に課長から、いま平 林委員が言われた、どういうレンジでこの問題について結論を出していくのかについ てお話いただきます。 ○田村看護課長 第1回にお願いしましたのは、来年度の医療制度改革、いま社会保障 審議会でご議論いただいている流れ、つまり患者本位の医療の構築をしていこう。そ して安全で、安心できる医療の体制を整えていこう。そういう流れの中に、今回の検 討会も位置づけて議論をお願いしたいと思っています。青木委員、平林委員のいまの ご議論は非常に本質的な、看護制度全体をどのように組み換えていくかという議論に もつながっていくのだろうと思っています。当面、18年度の医療提供体制の改革に向 けたところでのご議論をいただきたいということでお願いしています。よろしくお願 いいたします。 ○山路座長 本日は具体的な結論を取りまとめるということではなくて、いろいろなご 意見を出していただいた上で、改めてどういう形で取りまとめるかについてはご相談 させていただくことにしたいと思います。閉会します。 照会先 医政局看護課 課長補佐 岩澤 03-5253-1111(2599) 1