05/05/09 「平成17年度第1回2007年ユニバーサル技能五輪国際大会有識者会議」議事録      平成17年度第1回2007年ユニバーサル技能五輪国際大会有識者会議                          日時 平成17年5月9日(月)                             10:00〜                          場所 省議室9階 ○事務局  ただいまから平成17年度第1回2007年ユニバーサル技能五輪国際大会有識者会議を開 催いたします。委員の方々におかれましては、大変ご多忙のところをご出席いただきま して、誠にありがとうございます。会議の冒頭にあたりまして、委員の方々の異動がご ざいましたのでご紹介申し上げます。この有識者会議もほぼ発足してから2年ほど経過 したわけですが、発足当初から委員でいらっしゃった方々には、ご依頼の文書をお送り 申し上げて、手続が終了したわけですが、今回2名の方に異動がありました。資料の最 後に参考として、新しく委員としてお願い申し上げた方々のお名前を載せております。 下から4番目の西澤委員が、職業能力開発総合大学校の教授で、現在は同大学校教授の 中野委員の後任として、技能五輪国際大会の技術面での国の代表を務めていらっしゃい ますので、この有識者会議においても、中野委員の後任として、今回からご参画をお願 いしたわけです。西澤委員をご紹介申し上げます。 ○委員  西澤絋一です。西澤先生と同じ名前で1字だけ違うということですが、だいぶ若輩で す。今回、こういう会議にお招きいただきまして、非常に光栄に存じております。私は 2001年から技術代表を務めさせていただいており、ソウル大会で見習いをさせていただ いて、前回のセントガレンで技術代表としてお世話をさせていただきました。なかなか 事が思うように運ばずに、ご迷惑をかけたことが多いかと思いますが、もう来たるべき 今度のヘルシンキ大会は2回目ですので、全知全霊を上げてお役に立ちたいと思ってお りますので、よろしくお願いいたします。 ○事務局  それからもうお一方ですが、NHKアナウンサーの國井委員です。大変ご多忙という ことで、昨年度いっぱいでご退任です。それでは座長よろしくお願いいたします。 ○座長  引き続きまして会議を司会させていただきます。第1の議事ですが「2007年問題」に ついて事務局からご説明をお願いいたします。 ○事務局  資料2です。2007年問題について文献、ものづくり白書、新聞報道などを基にして、 概要をまとめたものです。今回の討議の基礎としていただければと考えています。この 資料は、2007年問題とはどういうものであるのか。そこで言われている団塊世代という のはどんな業種、どんな職種に就いていることが多いのか。さらに製造業に関し、技能 がどのように見られているのか。ものづくり力の現状がどうなっているのか、というこ とを説明し、さらに企業において技能継承をどのようにやっているのかということを、 データをまとめたものと具体例を新聞報道等で拾ったものをご紹介しております。  (1)です。2007年問題とはということですが、現在2007年問題について、厚生労働 省で公式に定義したものはありません。種々の文献を参考にして、次のようにまとめて います。若年者の製造業離れが依然として見られて、製造業においては新規学卒入職者 数の減少、雇用労働者数の減少、高齢化の進展などが進んでいますが、こういう中で団 塊の世代、1947年から49年という3年間に生まれた方々が、2007年以降に60歳になって 一斉に定年を迎えるという状況です。  このため、長年企業において現場の中核を支えてきた熟練技能者が退職をしていくと いうことで、製造現場における技能労働者の技能継承等が困難となる問題を、私どもは 2007年問題とここでは捉えています。  (2)の背景や経緯ですが、これをそもそもこういう問題があると提唱された方は、 私どもの調べではコンピュータ関連企業で、(株)CSKの有賀さんという方です。発 端となったのは皆様方もご記憶に新しいと思いますが、2002年にみずほ銀行やUFJ銀 行の合併時にトラブルが起き、そういうようなものを例として、IT業界を中心に注目 されていました。  ただその後、日産自動車のカルロス・ゴーン社長も社内でこの問題を提起されたとい うこともあり、最近では広く新聞報道、あるいはテレビなどでも言われており、多くの 企業が危機感を持っていることが報道されています。  下にあるのは(参考)として、有賀さんがどうして継承がなされてこなかったのかと いうことを分析されたわけですが、5点あり、このような問題についてはコンピュータ システムという視点からの分析ではありますが、製造現場の技能にも当てはまるものが あると考えており、紹介しています。  2頁です。団塊の世代、先ほど1947年〜49年の3年間にわたった世代と言いました が、この方々がいまどのような状況にあるかというものを、図1でグラフにして示して います。出生数が約806万人、2003年時点においても613万人いるということで、総人口 の7.03%を占める状況ですが、図1を見ると、少し濃い青でグラフが並んでいますが、 ほかの年代と比べると突出している状況が見えるわけです。  そのような団塊世代の方々が、どんな業種に就いているか、3頁以降にあります。2 「団塊世代の就業状況等について」という資料です。産業別にどういうところに就業し ているかということですが、団塊世代が学校を卒業した時期は、ちょうど高度経済成長 期の時期で、製造業が全盛期にあったわけです。そのために、その方々の多くが製造業 に就職したと言われています。定年年齢に近い現在に至っても、製造業の就業者の構成 比は高く、具体的には表1でも見えるように、男性と女性で全産業における全就業者数 分の団塊世代というパーセントを出しています。  男性では全産業における団塊世代の割合は12.6%ですが、それとの比較で下の業種を 見ていきますと、具体的な業種の3番目、鉱業の20%、建設業14.4%、製造業の13.0 %、運輸・通信業、卸売業が14.0%というように、こういう業種で平均を上回っている 状況です。中でも年齢構成を見ていくと、製造業や運輸・通信業というのは60歳を過ぎ ると就業者が大きく減少するという構造になっているので、団塊世代の方々は60歳を過 ぎるとこういう業種からは退職していかれると思われます。そういうためにこのような 影響が大きいと予想されます。  また、製造業の中でも繊維工業が15.4%、化学工業も同様15.4%、鉄鋼業で17.1%と いうように、重厚長大型産業とか、素材型産業において、それが就職当時に盛んだった 産業分野を反映しており、未だにこのような業種で多くの方々が就業している状況で す。  次頁では、どのような職種に就いているかというものを文章で書いています。職種別 に見ると「技能工、採掘・製造・建設作業者及び労務作業者」という括りの中の割合の 方が非常に多く、就職してから30年以上経った現在もこういう状況が続いているという ことです。しかも、団塊世代の前までは、このような職種に非常に多く就職しておられ ますが、その後の若い世代というのは、こういう職種においては減少傾向にありますの で、同様に団塊世代の方々が退職していった後、このような職種に就かれる方々が相当 減ることが予想されるわけです。  とりわけ製造業において、多く団塊世代の方々がいらっしゃるということなので、3 以降では製造業に注目して、少し分析をしてきました。3が「製造業における就業者の 年齢構成等」です。ここはもう皆様方もすでにご案内のとおり、若年者が非常に少な い、製造業離れが顕著であること、高齢化が進んでいることです。(1)に若年者の製 造業離れの進展を書いていますが、図2は製造業における新規学卒入職者数の推移を棒 グラフで示しています。棒グラフの長さから見ると、92年をピークにしてだんだん減少 しており、2002年、いちばん右側の棒グラフでは16万2,000人となっています。92年の ピーク時と比較すると、52.3%減少しているということで、ほかの産業と比べても、そ の産業を上回る減少幅となっています。  その中で高校の卒業者がどうなっているか、次頁に図表があります。高校は工業高校 などがありますがここは普通高校です。図3に普通高校の卒業者における就職率の推移 を見ていますが、赤い棒グラフが製造業に就職した人の数です。同様に右肩下がりとい うか、だんだん年が新しくなるに連れて減少している傾向にあります。この中で卒業者 に占める製造業就職者の割合をいちばん古い90年の棒グラフで見ますと、下から2番 目、×にもう1つ直線が入ったような*のようなマークが付いているものがあります が、これが製造業就職者の割合です。同様に減少傾向で人数は90年に約23万4,000人程 度いた就職者で、占める割合は13.3%であったものがだんだんと減少して、2003年には 約6.7万人、占める割合は5.2%になっています。製造業への就職者数の減少する傾向 は、工業高校や高等専門学校においても見られるわけですが、特にこのような普通高校 において顕著になっていると分析されています。  6頁(2)です。高齢化の進展があります。これも、もうすでに皆様方はご案内のと おりですが、若年者の入職者数が減少する中で、高齢化が著しく進展しているという状 況で、図4で書いています。ピンクのやや太いものが55歳以上の全産業の割合です。赤 い点線で書かれているものが、同様に製造業における55歳以上の方々の割合です。これ で見ると全産業における55歳以上の割合のほうが製造業よりは上回ってはいますが、高 齢化が非常に進展していることがわかり、具体的にはピンクの実線と赤い点線との差 が、90年には少し開いていましたが、だんだんそれが縮まってきて、2003年には55歳以 上全産業が24.6%という割合に対して、製造業においては55歳以上の方が23.2%で、 1.4%しか差がないというような形になってきている状況です。  では、そのような業種において、ものづくり人材、技能はどのように見られているか というのが4に書いてあります。「ものづくり人材のニーズと能力」とまとめています が、(1)熟年者の技能の重要性についてはどのように見られているかということで す。我が国のものづくりは企業における製造部門の人材をはじめとして、開発部門や営 業部門でのさまざまな人材によって支えられてきました。グローバル化などの環境変化 の中で、人材に期待される役割も変化しているわけですが、とりわけ製造現場において は熟練者の技能の重要性が非常に認識されているという状況があります。  図5に具体的に書いてありますが、重要な熟練技能を次世代へ継承する必要性がある かどうかという質問をしたところ、回答を得たのが全体で「必要がある」といっている ものが白で、約68%が熟練技能を次世代に継承していく必要があると言っています。下 に若干規模を分けていますが、大企業においては85%にものぼっています。ここにおい て中小企業というのは従業員300人未満、中堅企業は300人以上1,000人未満の企業、大 企業は1,000人以上の企業とここでは分類しています。継承すべき技能は企業によって も異なりますが、例えば機械化できない技能、トラブル対応能力、保全技能、生産管理 技術、高精度加工技術、設計技術など、多岐にわたるようでした。  次頁です。なぜその熟練技能の継承が必要なのかという理由を尋ねています。全体の 平均的な回答が棒グラフで、あとは同様に規模を3種類の折線グラフで分けています。 業種別の違いはここではあまりなかったようですが、規模で若干の特性があります。規 模が小さいほど多品種少量生産など、現実面での対応が理由となっているのに対し、大 企業では中ほどにある四角の折線グラフは中ほどにピークがありますが、新技術への対 応など、先を見越した上での対応が理由となっているというのが、ここでは特徴です。  次頁は図7です。図7、図8は、企業が発展するために目指すものづくりと人材育成 の位置付けを示したものです。規模別も含め、今後どのようなものづくりを目指してい くかというもので、非常に回答の多かったものは左の2つです。具体的には納期等を着 実に顧客や市場の要求を満たすものづくりであるとか、市場のニーズへの対応を第一に 考えたものづくりをやっていきたいということです。  次頁は図8です。そのようなものづくりを目指していくために、今後、力を入れてい く取り組みは何かと尋ねたら、人材育成という企業が多く、次いで新製品の開発、コス トダウンなどと続いています。  11頁(2)です。いま(1)で示したように熟練技能は非常に重要としている企業が 多い中で、ものづくりにかかわる人材の能力をどう見ているかということです。製造業 において同様に尋ねています。営業、開発、製造はどの部門においても「低下している 」、あるいは「以前と変わらないが求められるレベル自体が上がっている」というもの を合わせ、過半数の企業がものづくり人材の能力に関しては、懸念を感じているという ことが出ています。いちばん下の製造部門で、ものづくり人材の能力状況が低下してき ていると思う、というのが灰色で17.1%、以前と変わらないが求められるレベル自体が 上がっているので、相対的に下がっていると言っているものが40.6%で、過半数を占 め、60%に近い数字になっています。  これをさらに規模別に見たものが12頁の図10です。製造部門だけを取り出してものづ くり人材の能力状況を規模別に見ています。いちばん上は先ほどの全体のグラフです が、中小企業、中堅企業、大企業と分けると、同様に懸念をしている企業が非常に多い わけですが、いちばん左側の「低下してきていると思う」というのと、いちばん右側に ある「向上している」というものを比較すると、どの企業の規模においても「低下して きている」という回答のほうが、「向上している」というものを上回っています。これ が非常に特徴的であると見られています。このように製造業、とりわけ製造部門の人材 の能力レベルについての懸念は広く見られており、これへの対応は急務の課題と考えて います。  13頁です。さらに業種別に見たもので、製造業の中の細かい分類です。低下してきて いるとする割合が20%を超えるものでは上から3番目の繊維工業、1つおいて化学工 業、1つおいて金属製品製造業や一般機械器具製造業、いちばん下から2番目の精密機 械器具製造業です。  14頁です。ものづくり力の向上のためにどのような取り組みが必要かを5でまとめて います。「技能継承に向けた取り組み」としていますが、まず(1)技能継承への危機 感です。ものづくり力の源泉となっているものは現場の技能の継承で、それに関して懸 念を持っていると答えているものが図12の表にあるように、いちばん上が全体で、「強 く持っている」「ある程度持っている」を合わせると63%の企業が危機感を持っている ということです。どうしてこのような危機感を持ったのかということについては、製造 現場の高齢化が最も多く、次いで実際に製品の品質が低下した、不良品が発生したとい うようなことが続いています。  15頁です。(2)ものづくり力の強化・継承のための人材育成はどのように行われて いるかということですが、高齢化に対しての対応を図13に示しています。高齢化に対応 するものとしては左から3つぐらいが主な回答で、退職者のうち必要な者を選抜して雇 用延長あるいは嘱託として採用、中途採用、新卒若年者の採用が続いています。  16頁の図14で、ものづくり力の強化・継承のための対策として5年間に行い始めたこ とが書かれています。さまざまなものが書いてありますが、中小企業においては現場主 義の徹底、教育の充実、ノウハウを明確にするなどが言われています。中堅企業では順 番が若干変わっていて、そのようなもの。大企業においては四角い印が付いた折線グラ フで、さまざまなところで取り組みがなされていることが伺われますが、教育の充実の ほかに、右側にセル生産方式導入など、いろいろな取り組みがなされています。  次頁では、製造部門の人材の能力を向上させるための取り組みとして、どのようなも のがあるのか図15に書いてあります。教育の充実がいちばん左にありますが、ここにお いては過半数の企業で行われている状況です。具体的にはOJTの充実が多く、次いで 基礎技能の向上、複数技能の習得とあります。規模別では大企業においては折線グラフ で左から4番目、国家技能検定取得の奨励、あるいは中ほどに能力開発目標の設定が目 立っています。  次頁、図16として、技能者の育成強化に関連して行われている施策を規模別に問うて います。中小企業においては×マークの点線グラフで、自社の技能マップを作成する、 技能検定の取得を奨励する、ノウハウをデジタル化する、マニュアル化の促進をするな ど、取り組みもなされていますが、その右側に「特に何も行っていない」という回答も 若干あります。 大企業においては技能検定の取得奨励や、右側から3番目、優れた技 能を持った技能者の顕彰制度の導入などが目立っています。  19頁は図17です。熟練技能の継承を図る方法として、どんなものがあるかを尋ねた ら、やや規模別に違いはありますが、全体として多いのは左から3つのものです。OJ Tにおけるマンツーマン指導の充実、退職したベテラン技能者を指導者として活用す る、技能のデジタル化・マニュアル化です。大企業では先ほどからの流れと同様、右か ら3番目、熟練技能者へ称号を与え社内の技能尊重風土を醸成していくというものも、 かなり回答として見られました。以上がデータからの状況です。  最後に6として、ここにもご参画しておられる委員の方の企業もありますが、いくつ かの企業で具体的にどのような取り組みがあるのかというものを、最近の新聞等でまと めてみました。不足の点がありましたら、後ほどご紹介いただきたいと思います。(1 )トヨタ自動車においては技能継承チームを立ち上げて「伝道師」として技能を継承し ているということ。(2)三菱重工業においては技能系社員教育の抜本的な見直しをし たこと。「技能塾」の実施、「熟練技能の映像化」で本人の解説付きというものを試み られている。(3)新日鉄八幡製鉄所においては、「徒弟制度」を設ける、熟練度を競 う「技能トライアスロン」を開催し、「技の達人」を任命する、定年退職者の再雇用 (シニア雇用制度)も実施している。(4)松下電器産業は技能五輪に再参戦している こと、生産技術を担当する高卒の採用を継続している。(5)セイコーエプソンも同様 「ものづくり塾」を開設した。技能五輪にも再参戦をしている。熟練技能者を「エプソ ンの名工」として認定しているという状況です。以上が資料2の2007年問題の資料でご 説明申し上げました。  引き続き資料3において、本日ご討議いただきたい視点を説明します。資料2を踏ま え、私どもは今後の取り組みを検討していきたいと思っています。その際の視点があろ うかと思っており、6項目を挙げています。1は「2007年問題の及ぼす影響」について です。2007年問題の及ぼす影響については、安全確保に係るノウハウの継承や製品の品 質維持等についての指摘がなされていますが、ものづくり技能に関しては生産現場にお ける技能継承の円滑な実施において大きな影響があると考えてよいかどうかです。2は 「対応を検討すべき対象」として、先ほど来若干の業種の説明をし、後半は製造業を中 心に説明していますが、2007年問題に関する取り組みを検討すべき対象業種として、製 造業とすることについてはどうか。さらにこの中で業種を限定すること、企業規模を特 定することについてはどうかということです。3はいくつか企業の取り組みを紹介しま したが、「取り組むべき内容」としてどのようなものが必要なのか。4はそのうちの 「企業、国等の役割分担」です。3の取り組むべき内容のうち、企業や業種別団体が自 主的に取り組むべきものはどのようなものか。国等の支援が必要なものはどのようなも のかという視点。5は「先進的な取り組みの活用」です。先ほどの資料の最後に具体的 な先駆例を説明しましたが、そのような取り組みを中小企業等に対して応用することが 可能かどうか。この場合どのような工夫が必要か。6としては、まさに私どもこの大会 を推進したいわけですが、「2007年ユニバーサル技能五輪国際大会の活用」として、こ の2007年問題との関係でどのような役割を果たすことが期待されるかです。  この視点でさらに不足な点がありましたら、これも併せてご指摘いただければと思い ます。 ○座長  どうもありがとうございました。大変重要な構想を極めてよく整理されて、我々によ く問題認識ができるようにしてあったと思います。この議題は、昨年度の会議の中でも 次回の会議の主要なテーマにするということになっていたもので、今日も是非とも活発 なご討議をお願いしたいと思います。 ○委員  私は言いたいことはたくさんありますが、2つあります。差し当たり2007年とは限ら ずに、継承すべき技能の内容を、もう少しPRしたほうが得ではないか。それは大きな 情報機関ですと政府もできますし企業もできると思うのです。どういうことかという と、高度熟練と書かれていますから、そう書かれると、普通はいわゆる巧みの技術、あ るいは名人上手、左甚五郎というと語弊がありますが、それはもちろん大事です。大事 ですがおそらく私は経済で技術は素人ですが、たくさんの職場を回っていると、実はそ うでないタイプが圧倒的に日本の競争力に貢献しているのです。それは何かというと、 かなり知的な分析力、先ほど事務局が問題やトラブルを解決するとおっしゃいました が、それもあります。また、間接的に伺ったのですが、委員がいう設計に発言する力が まさにそうなのです。  知的分析力で2つの例を挙げますと、1つはここ数年生産技術者のほうを回っている ので、生産職場ではないのですが、驚くほど新しい。自動車を例にとると、新しい製品 の設計に対して、生産職場の全員ではありません。位でなくて、技術上トップ10%の発 言は極めて大事です。それは具体的にどうするかというと、いま作っている車のこうい う部品設計、こういう作り方では不具合いが出やすい、あるいは働きにくい、あるいは 日本ではまだ問題になっていませんが、アメリカのカリフォルニア州ではさんざんいま 日本はやられていますが、安全上疲れが少ない、エルゴノミックス問題と言われていま すが、そういうようなことは車の設計者はそれほどご存じではない。  それを日本の生産職場の中の30前後の方々を中心に、言葉ではパイロットチームとか トライチームというのがあるのですが、普通は普通の生産をしているのですが、そうい う人たちが車の設計の構想段階、まだ詳細設計に入らない段階で、どんどん意見を言 う。それが次第に広がって、私は先月と先々月、アメリカとダービーのイギリスのトヨ タ工場に行きましたら、イギリス人もアメリカ人も少しやっているのです。立派なこと です。これがいちばん日本のある意味競争力、ほかとの差を付けていると思います。  そのためには自分の仕事を分析する力がないと駄目で、手練の技も大事なのですが、 それだけでは駄目なのです。これが1つです。つまりそういうことは例としてしか私に は説明できないので、その例をどんどん出すことによって、若者なり、あるいはこれか ら就職しようとする人、いま就職してこれから精進しようとする人たちなりに伝えてい くということは非常に大事のように思います。何か高度熟練ということだけで括ってし まうともったいない。  もう1つは、後ほど2007年の製造業を対象とするかという問題にもかかわりますが、 実は案外製造業とITは分かち難くなっているわけです。例えば設計に発言するという のは、昔の難しい設計図だとなかなか生産職場の人は発言しにくいのですが、いまはご 存じのようにDA、3次元グラフで実際に部品を入れたりということをやり始めて、か つて金型職場だけにあったそういう発言が非常に広がってきたというのが私の印象で す。  さらに、機械をやるにしても、今度プログラムを作る。これは統計上は製造業ではな く情報産業なのです。対事業場サービスだと思うのです。しかし、それなしにはナビゲ ーター1つとっても自動車は売れないわけです。ナビゲーターの中のSEは情報産業の 者が作るわけです。あるいは機械にしてもCAD、CAMでもいちばん元のプログラム は製造業ではないところがやっているはずで、統計上はおそらくサービス業になるわけ です。そういうわけで、非常に融合してきます。そういう知的な明るさみたいなことを PRしていくと、2007年だけでなく、技能オリンピックへの関心も出るのではないかと 思います。 ○委員  技能五輪の最近のトレンドを申し上げておきます。1つは、いわゆるスキルという 面、高度な技能を競技するという面と、もう1つはボケーショナルトレーニングという 職業をいかにPRしていくか。そういう2つの考え方があり、どちらかというと、サー ビス業は職業で雇用の能力がありますから、そういうところに目がいきがちです。だか ら、本来の意味の基本技能を競うというところが、少し薄れてきているのではないかと いう傾向があります。これに対して我々は警鐘を鳴らしているわけです。それに関連し て製造系の職種とサービス系の職種のバランスが、ややもすると悪くなっているという のが1つあります。  もう1つは、スポーツのオリンピックでもそうでしたが、いわゆる商業主義という か、ビジネスオリエンテッドな考え方をするのか、あるいは現場主義に拠り所を設ける かという1つの対立のような問題があります。商業主義というのはそれを排する動きも あるのですが、私は商業主義がオリンピックの中に入ってくることは決して悪いことで はなく、例えばスポーツのオリンピックでもモントリオール大会というのはものすごく 赤字を出した。その次がモスクワで、その次のロスアンゼルスが商業主義を導入して非 常に成功して、それがいま現在に通じている。逆な言い方をすると、マスコミ受けとい うか、世の中の人に関心を持っていただくことが一方で大事ではないかと思います。そ れは国際大会でも非常に1つの大きなトレンドとして動いています。そういうことで技 能五輪もいろいろな考え方がぶつかり合いながら、いま動いている状況です。特に我々 がいま主張しているのは、ベーシックな議論、ベーシックな技能が職種として消えてい くことに対する、抵抗をしている状況です。  サービス業と製造業における競技の特徴は、サービス業はどの国でも存在するわけで すが、製造業は本質的にローカライズしていくという面があります。それだからこそ、 逆に貿易という形で、全世界の人たちがその結果を享受するわけですから、ローカライ ズするということは本質的な流れであるにもかかわらず、参加国が少ないというだけで 競技そのものが消えていくというのは、何としても防止しなければいけないということ で、そういう運動を本省とも協力しながら進めている状況です。 ○委員  ものづくりというのがいちばん大事だというのはわかるのですが、特に技能継承の件 で、若い人たちにどうやって伝えていくかというのも、もちろん大事です。もっと言え ば、若い人たちがそういうものに対してどれだけ興味を持ったり、自分たちでやろうと するのか、この辺のところが逆に遅れているのではないかと思います。  この間の総務省の調査で、15歳以下の子供たちの数が1,765万人ということで全体の 人口比率の13.8%、要するに24年間連続で減っています。これは当然少子化ということ なのですが、こういう数字から、これからその人たちが大人になって日本を担っていく ためにはどうするのかということを考えれば、やはり基本的には教育にいくのではない か。教育については学校教育、家庭教育、社会でのいろいろな生活の中における教育も ある。企業の教育もあるというように、いろいろな教育があると思うのですが、これら を一つひとつしっかりやっていかないと、将来の日本のためにうまくいかないのではな いかということが思われます。  もちろん家庭教育は両親の子供に対する教育が大きいのですが、いまの親自体が生ま れ育った時代が非常に環境に恵まれて、世界でも最も裕福な生活をしてきている。しか も、テレビやインターネット、その前の段階で何不自由なく生きてきたということで、 子供に対しても厳しくいろいろなことを伝える、親自体が例えば料理の仕方だとか、縫 い物はすべてミシンでやってしまう、要するにそういった手仕事的なものを伝えていな いということが、子供たちに影響している。特に最近のインターネット時代にはゲーム もそうなのですが、頭でいろいろなこと考えたり、想像するというようなことが、だい ぶおろそかになってきているのではないかということが言えます。これは、もちろん家 庭もそうですが、学校もそうだと思うのです。学校が1人当たりパソコンを1台ずつ持 たせるということの意味は何があるのか。確かにパソコンは便利ですしいろいろあるの ですが、それによってどういうことが起こるのかということを、もっと分析する必要が あるのではないかと思います。  そういうことを考えていったら、これから次世代の人材づくりをどうするかというこ とで、例えば学校の先生も自分たち先生自体も楽ないい時代に生きていますから、なか なか教育ということに本当に子供と向き合って元気いっぱいで闘っていくような先生が 少なくなっている。そのような心構えも必要だと思います。  教育といえばやはり大学の先生が研究のほうに中心になっていて、教育に頭がいって いないのではないかということも言われています。ですから、例えば産学連携で1つの 教育を一緒にやってもいいではないかということも考えられます。政府は昨年度から若 者の自立や挑戦プランという新しい政策を打ち出して予算を付けて、経済省も厚労省も 関係してやっておられますので、これは非常にいい傾向にあると思いますので、特にフ リーターやニートの若い人たちを自立させることは非常に大事なことなので、そこのと ころをしっかりやっていただきたいと思います。  そういう意味では人材育成のための専門的な組織も政府だけではなく民間も自治体も 大学もと、いろいろな所を含めて、みんなでこれから先、日本はどうしたらいいかとい うことを考えていかなければいけないのではないかと思います。少し大上段に振りかぶ ったような感じですが、要するに製造業のものづくりにしても、そういったところが基 本にあるのではないかと思いますので、この辺のところをうまくやっていきながら、次 の世代の人たちを育てていくことが必要ではないかと思います。 ○座長  ここでお話を伺うばかりでなくて、先生方からも是非反論も出しておいたほうがいい のではないかと思いますが、そんな意味で少し私からも申し上げますと、大学が教育に 熱心ではないというお話があったのですが、先端的な研究をやりますと、世の中ででき ない技術が必要になってくるわけです。例えば東北大学に化学係数研究というのがあっ たのですが、そこの人で、世界でいちばん小さな穴を開ける技術を持っている人がいる のです。なんだ穴ぐらいと思われるかもしれませんが、断面をとってみるとバリが出て 丸くなってしまうのです。そんなのではなくて、本当に板がプスッと切れているよう な、きれいな平行で穴が開いているような、そういう穴を開けるという技術で、大変評 価された人がいまして、特進で教授待遇か何かの技官になっていたのです。  そういうような例が昔はあったのですが、最近はそんなことは全然やらせてもらえな い。大学の工房は全部統一するという指令が出てくるわけです。そういうのでは駄目な ので、研究室についてそういう特殊技術を開発するということが先端的な研究のために も必要ですし、それはやがては引き続いて産業にいったわけで。そうやって大学で養成 された特殊技能者が、例えばものを工業化しようというときには一緒に付いて行ったの です。というようなことで、非常に産学間の協調もそれでうまくいったという例がたく さんあるのですが、そんなこともあるかなということを、ちょっと申し上げておいたほ うがいいのだと思うのです。  やはりそういうクリエイティブな仕事をしないで、当たり前のことだけ教えていれば いいというようになって、シラバスを決めておいてなどというようなことになってき て、だんだんにこうなってきているのではないかと懸念しているわけです。 ○委員  私も別に研究そのものが悪いということではなく、研究がいちばん大事なことなので すが、ただ、やはり研究する中で、そのものを先生が学生に対していろいろ教えるのは 当然ですが、教育というか人格形成みたいなところにもいかないと、次のところにいか ないのではないかという。そこのところがどうも、いま座長がおっしゃったように昔は 一緒にやったけれども、逆におろそかになっているのかなという気がします。 ○座長  クリエーションということをできるように教育をするという建て前からいえば、当然 そういう技術を養成する仕方も教えるということになってくるのではないかと思うので す。ご趣旨は大変賛成です。 ○委員  私、2007年問題という形で、ものづくりの大切さや技能の伝承の重要性がクローズア ップされてきたことは、大変良いことだと思います。問題は、2007年に限らず全般的 に、いま退化しつつある日本のものづくりの機能を、もう一度再認識していくことが必 要であり、この2007年問題を取り上げるのは大変良いことだと思っています。加えて、 それと関連してユニバーサル技能五輪大会も、ものづくりの大切さをクローズアップさ せて、特に子供や若い人たちに着目させて、どんどんそういう分野に引き込んでいく良 いきっかけになるのではないかと思います。従って、この技能五輪大会に向けて、全国 から大会への出場意欲をかき立てるような、いろいろな企てが広がっていくことを期待 します。静岡県は開催の地元だということもあって、そういうことに取り組んでまいり ましたが、この取り組みはそれなりの効果があるのではないかと期待をする手応えを感 じています。ですから、これをどうやって全国的に広げるか、これが非常に重要だと思 います。  そういう意味でいえば、毎年の技能五輪の全国大会もかなり盛り上がりを見せている と思いますので、これを一時的なものに終わらせないように、ユニバーサル技能五輪大 会が終わったら火が消えたというのでは困るし、当面する2007年問題を製造業に焦点を 合わせたらどうかという提案ですが、そこのところをクリアしたら関心が薄まったとい うのでは非常に残念だと思いますので、2007年問題は、息の長い視点から、盛り上げの いいテーマだと私は捉えてもらいたいと思います。  それに対してどうしたらいいかという答えになるかどうか、必ずしも定かではありま せんが、最近私自身が静岡県内で行き合った事例をまずご紹介をして、参考に供したい と思います。静岡県の掛川市に外資系のガラスメーカーがあります。いまは液晶の基盤 マスクの有力プレーヤーで活躍していますが、いまや増産に次ぐ増産をして工場を増設 しています。この会社は、アメリカに本社があって、アジア地域の日本と韓国と台湾に 拠点を持っているわけです。本社は、このアジア3局の中でアジア地域を中心とした需 要増に、どこを拠点に拡大するかといつも競わせているわけです。そして、この会社の ジャパン社は韓国、台湾といつも競争させられているわけですが、今回その競争に勝っ て、3局の中でどこで増設するかというのを日本の掛川市の工場の増産で本社は決定し てくれたのです。  競争に勝ち得た要因が2つあって、1つは工場を増設する工期を韓国、台湾と比べる と、日本での工期が最短、これは一定の規模の工場を増設するのに9カ月でできるとい うのがジャパン社の提案です。台湾が確か12カ月、韓国にいたっては18カ月というよう なことで、工期でまず勝てた。それからコストの面ではいままで韓国、台湾にも勝てな く、いつも本社から日本はコストが高いと言われていたのが、今回は1つも苦情がなか った。なぜコストをクリアできるようになったかというと、5年前からジャパン社が、 トヨタウェイを導入しようというので真剣に取り組んできたというのです。  5年前に社員をトヨタのどこかは知りませんが派遣をして、勉強させたそうです。そ れで行って帰ってきた社員が言うのに「トヨタのほうに行くと、アフターファイブで居 酒屋に寄ってもトヨタの社員やトヨタに関連している人たちは、酒を飲みながら仕事の 話をしている。もう全くいけすかない連中だ」と言って帰ってきたというのです。とこ ろが、5年経った今日どうなっているかというと、トヨタウェイを導入する前は、休憩 時間に当然たばこを吸いながら、何か飲み物を飲みながら、携帯電話で外と話をしてい た。ところが、いつのころからか休憩時間に行ってのぞいてみると、仕事の話をしてい るというのです。そうなったというのです。そういうことから、とにかく非常に生産効 率というか、生産性が上がった。加えて最近ではパートの人たちまでが真剣に改善やい ろいろな提案の中に加わってきて、そういう人たちの発言を聞いていると、中間管理職 は要らないと。我々に全部現場を任せてくれたらうまくいくのに、何か主任や係長など 役職の人たちがいるのは邪魔くさいと言わんばかりの発言が、いろいろ提案の中に出て くるというのです。  さらに、これからはそういう製造ラインのコストダウンから、あとはロジスティッ ク、物流、生産管理一切が対象になってきて、ものすごい生産性が上がったと言ってお られるわけです。その結果、台湾と日本を比べると、ジャパン社の場合、人件費ベース で日本は3倍だと。ところがその3倍の人件費を要する日本のほうが生産性コストが低 くて勝てたというのです。工場長はトヨタウェイを導入した効果を賞賛すると同時に、 現状ではすごいことを達成できたということを自慢をしながら報告していましたし、併 せてまだまだ改善の余地があると言っておられるわけです。  こういう話を聞くと、先ほどものづくりというと製造業で、製造業はラインのことば かりだと思うと、実は製品が入ってきて出てくるまであるわけです。場合によったら出 ていった先の物流のところまで、いまや促えて、いろいろ生産性の向上に取り組んでい るわけです。従って、ものづくりの典型である金型等を、いわゆるブルーカラーという イメージだけで促えることなく、幅広くものづくりを捉えていく必要もあるのではない かと考えます。  また、静岡県では現在3つの先端的な新しい産業力を高めようというプロジェクトを 推進中です。その中で、浜松の光産業と電子産業を一緒にしたオプトエレクトロニクス 産業の集積構想を進めていますが、その中で一昨年暮れに半導体の高出力レーザー溶接 装置が生まれました。これを実現した会社は、2社の機械メーカーが主力となって、静 岡大学工学部と本県の工業技術センターと産学官三者の共同作業の中から、そういうも のが生まれたわけです。この話を、全くかかわりがないと思われる夜の会合で、こうい うことがあって成果があったと自慢したら、出席していた静岡市内の開発型の小企業 で、地元で前々からやっていた会長がニヤニヤして聞いていて、「私の会社は、その研 究プロジェクトにかかわっている」と言うのです。私は全然知らず、「そうですか、そ れは良かったですね」と言って、今日、最初に紹介したガラスメーカーの話をしたので す。そうしたら、これまたニコニコして聞いていて、その会社にも関係していると言う のです。  というように、非常に先端的だと思われている所は、実はかなり据野が広く、いろい ろな所と連携していることが分かりましたし、それを支えている小規模の企業群が関連 して、かなり重要な基盤技術というか、ものづくりの部分を支えていることが浮き彫り になったのです。私も、いろいろな企業がかかわって良い成果が出てきていることは抽 象論としては十分わかっていたつもりですが、具体的な事案として、そういう事例に行 き当たったわけです。  問題は、企業秘密や企業のノウハウを、結果的にあちこちに暴露するというか漏洩す ることにつながってはいけませんが、非常に高い重要な機能、あるいは機能を支える作 業や活動が、社会の中でいっぱいあるのだということを、どうやってうまく若い人た ち、あるいは若い人に影響を与える親なり、義務教育や高校教育に携わる先生方に伝え るかということが非常に重要だと思います。委員などに期待するところは大ですが、国 を挙げて、いかにそういう情報をうまく集めて伝えていくかも、非常に重要ではないか と思います。 ○委員  製造業の立場でお話をさせていただきます。とりわけ社内的には高度熟練技能の継承 みたいな部分については、仕組みとして仕掛けとして現実にやっていて、4万2,000人 の技能系社員のうちの115名を、現在は高度熟練技能者として認定しています。そうい う方たちに対しては、自分自身の技能を棚卸ししていただいて、それを誰に、いつまで に継承していくのかという仕掛けはしていますが、現実の問題として、その世代の人た ちは、長い間、自分の身体を使って手を汚して、頭で考えながら、ものづくりをしてき たという経験があります。ところが、若い人はそういう環境にない製造業現場で育って いるという部分では、仕掛けとしてはやっているが、難しい部分もあるのが実態です。  もう1つは、全体の製造現場の技能向上を図っていかなければいけないという社内的 な使命もありますから、最初の有識者会議でお話したように、仕掛けとして1991年から 制度を作っています。最終的に制度、仕組みとして残していくときには、それを評価・ 処遇に連動させていくような形を絶対作っていかないと、制度としても定着しないし、 崩れてしまうという話になって、ここでは盛んに先ほどのデータなどで、大企業につい ても国家技能検定を奨励する。私どもも奨励はしていますが、国家技能検定だけでは全 技能系社員をカバーできません。評価・処遇に連動させていくためには、公正に全技能 系社員に光が当たる場がある形を作っていかないと、評価・処遇には連動していかな い。  そういうことで考えていくと、ここでは全然出てこないのですが、社内検定制度とい うのがあります。それは企業ニーズに応じて、ある一定の基準に従い、どういう内容 で、どう評価をしていくかという、いわば学科試験があって、実技試験があるという技 能検定と同じような仕掛けです。  これは許認可の話ではありませんが、私は3年ぐらい前に愛知県の産業労働部に行っ て、うちの制度を社内検定として認めてもらえないかと申しました。私は2年前から愛 知県の社内検定の評価委員に選ばれて実際に評価をしていますが、決められたフォーマ ットで、膨大な資料を1職種立ち上げるのに必要な時間と工数を割いているという部分 で、「基本はこういうフォーマットで、こういう様式で、こういう形でやっていただか ないと受けられないので、トヨタさん、それはちょっとご勘弁ください」と。単純に我 々がやっている制度というのは、職務遂行能力全体を評価して、あるレベルに達したら 実技と学科試験があります。そのベースの部分のいちばん大事な職務遂行能力だけでは なく、最終的に確認をする実技試験、実践技能評価と言っていますが、その部分を、あ る決められたフォーマットに従って記入してもらい、提出していただければ認可をしま すという話になると、膨大な数を持っていますので、とてもそんなことをやる気にはな れないし、それだけの工数を割く必要もありません。  ですから、社内的なこの制度はグローバルなスタンダードでいい。うちの制度を私ど もの事業体にもこれから展開していこうということです。そういう部分の国等の支援が 必要なものはどうかという切り口があったのですが、そういう部分にも、もう少し柔軟 性みたいなものを付けていただけると我々としては非常に有難いと、私どもの体験から も感じました。 ○座長  大変現実性に近い、具体的なご提案がいろいろ出て有難いと思います。  これも三河になるのでしょうか、尾張になるのでしょうか分かりませんが、今の学生 に日吉丸の草履取りの話をしてやるのですが、全然わかりません。あのようにどんな仕 事をしていても自分の技能レベルを上げていくことが非常に大事なのだということが、 国民的な1つの感情まで到達し得なければ、かつての技術王国日本、手づくり王国日本 の真価を維持することは難しいのではないかと思います。 ○委員  最近、企業内のキャリア形成をどうしていくかということで、企業の方々と話合いの 場を持ったときに、これまで企業においての経営上の重点課題は、社員の能力の再開 発、質的向上などが上位に挙げられていましたが、今回話し合ったときに、CSRの問 題、次世代リーダーの育成、それとともに技術・技能の継承に大変危機感を持っている というお話がありました。技術・技能の継承に対して危機感を持っているというのは、 先程ご説明がありましたように、団塊の世代が一斉に定年を迎えるということで、大変 危機感を持っているということでした。  一方で、就職採用がどのような状況になっているかと言いますと、景気が少し回復し てきたことによって採用人数を増加する傾向がみられます。また、団塊の世代が辞めて しまうので、技術・技能の継承のために採用人数を増やしているような状況も見受けら れます。採用人数を増やしてはいますが、採用内定者に対する評価がどうかというと、 最近、若い人たちの職業観や勤労観などが多様化していると言われておりますが、採用 人数を増やしても、採用された人たちに対する満足度は低下しています。  どういう点が不満なのかと聞きますと、挨拶ができない、コミュニケーションがとれ ないなど、本当に基本的なところに問題があると考えているようです。私どももいろい ろ研究を行って感じたのは、私どもは小さいころ、いろいろな手づくりの遊びをしなが ら、ものづくりというのは楽しいなと思った経験がありますので、早い段階から子供た ちにもものづくりの楽しさを教えていかなければいけないということです。産業界とし ても、学校でこういうことをやればいい、家庭でこういうことをやればいいと言ってい ますが、家庭だけ、あるいは学校だけでできるということでもないと思いますので、社 会全体で危機感を持って取り組まなければいけないのではないかと思っています。  私ども産業界としても、ものづくりだけではありませんが、学校教育に対して産業界 としてはこういうことを求めているということを、機会を捉えて伝えていくことが大事 ではないかと思っています。今回、技能の継承ということで言いますと、企業の方々か ら言われるのは、もちろん外の公の資格ということで技能を競わせることも大事です が、今いる自分の会社で自分はどの程度の位置にいるかということに、気づくことが大 事だということです。社内で技能を競わせることも大事だということで、いま計画をし ていますという企業の方々が大変多くなってきました。わが社としても、次世代を担う 若い人たちをいかに育て上げるかということで、いま企業の方々とも議論を行っている ところです。 ○座長  大変大事なポイントで、私は前の審議会のときに、小学校で再び肥後守を使わせろ と。鉛筆削りから1つ技術が入ってきます。あれで切っても、大怪我はしません。いま のカッターなどは骨まで切れてしまいますから、へまをしても大怪我をしないような機 械は子供たちに使わせる必要があるので、あの辺から子供たちの技能が上がっていった のです。私などもうまい子に1本削ってもらって、「あの男に削ってもらった鉛筆はこ れだ」とみんなに見せびらかした覚えがあります。そういう技術尊重の気分もあのころ にできたのではないかという気がいたします。 ○委員  継承すべき技能という形で見ますと、分析力や知識、理論を兼ね備えた技能者が企業 にとって必要になってくると思います。そういう人たちが企業にとる価値や競争力を生 み出してきます。例えば、図面があって最終的に製品になるわけですが、図面があった ら、まず試作品を作らなければなりません。試作品というのは、世の中にないものです ので、技能者と技術者が一体になっていろいろなことを試行錯誤しながら、まず形にし ます。形にしたら生産現場に大量生産できるように落とし込まなければなりません。  そのためにもいろいろな工夫が要ります。当然のことながら、現場に行ってから、現 場の中できちんと仕事ができる。そういう意味で、まず1つは分析力、知識、理論を持 ったしっかりした技能者が1人。あとは企業の中で普通の人がきちんと仕事ができるシ ステムがないと品質が安定しなかったり、ミスが出てしまったり、生産性利益にもつな がってきませんので、その2つにきちんと取り組んでいくことが必要ではないかと思い ます。  そういう中で、例えば技能五輪ですと、普通の人たちの現場の中でのリーダーという 役割と、理論と知識を持った技能者、その2つの役割を担っています。技能というと、 一般的な感覚では、これを教えればああ技能だ、できた、できた、それは技能と思われ がちですが、そういう技能はあまり意味がありません。1週間で身に付けたものは1週 間で使えなくなってしまいます。本当の技能というのはもっと時間のかかるものだし、 例えば技能五輪で考えているのは、大地という意味で、技能者としての資質、土壌をつ くるということで捉えています。技能五輪だったら、それで十分熟練技能者などという ことは全くありません。技能五輪でやったそういう資質、土壌を持って、初めて現場に 行く。現場の中で新しい非常にたくさんのことを勉強します。吸収力が速かったり、今 まで現場でこういう問題があったが解決できない、では私がトライしましょうというチ ャレンジ精神。自分でトライする気持を、今まで10回やったら駄目だった。しかし、自 分は100回でも200回でもいろいろな形でトライしてみるという人たちを育成する。それ が技能五輪の役割ではないかと思っています。  よく「読み、書き、算盤」と言われますが、技能者にとっての読み、書き、算盤がし っかりできる。自信を持ってトライできるような技能者をしっかり育てていかないと、 見せ掛けだけの技能者、例えば検定をやったからもう1級の技能者だというだけだと意 味がなくて、1級にトライしたその過程、なぜ1級の検定が要るのか。この課題で難し いのは何、どうしてそういう加工をしているのということまで、きちんと理解できる技 能者を育てていくのが私たちの役割ではないかと考えています。  もう少し大きな目で見ますと、教育というお話がありましたが、ものづくりをなるべ く若い世代から体験させようというのも重要なことだと思います。個人的な意見になり ますが、それよりも例えば、小学校だと挨拶がしっかりできる、人間の基礎、倫理、道 徳などをできればしっかり身に付けておいてもらいたいのです。中学校になったら自分 の夢を持ってもらい、高校生ぐらいになったら現実の仕事のことをいろいろ勉強してい ってもらう。企業に入ってきた若者たちに対して、私たちは躾教育からやっています。 躾というのはすごく時間のかかることです。きれいな仕事を1つさせる。きれいな仕事 は何かというのはわからないのです。技能五輪の選手が入ってきて、きれいな仕事をさ せる、それだけで1年かかります。そういう意味で基礎的なことをしっかり小学校で教 えてもらい、中学校は自分の夢を抱いてもらう。そういう形で育った子供たちは、例え ば、製造業に行ったら、製造業でしっかり製造のことを教えてもらえば伸びていくと思 います。または生業系に行っても、IT関係に行っても、そういうものがしっかり備わ っている子は、他人とのコミュニケーションもとれると思いますし、その道で伸びてい くことができると思います。  そういう意味で2007年問題や技能五輪の国際大会も一過性のものとして捉えるのでは なく、国として長期的視野で、100年先の日本をどうしたらよいか、というぐらいの視 点で捉えていっていただけると、私どもとしては非常に有難いと思います。 ○座長  大変大事なご指摘だと思います。技能オリンピックが1つのPRといったら悪いかも しれませんが、国民がそういうことを意識する絶好のチャンスだと思います。 ○委員  そうですね、それが大事なことだと思います。 ○委員  対象を製造業とすることはどうかというのがありました。今日の事務局のお話で、何 となく数字は製造業の将来は悲しいように見えます。私は経済ですから、経済から見ま すと、名目的にはこの通りです。ところが、実質で見ますと、製造業のウエイトは、先 進国はどの国も全く下がっていません。  もっと大事なことは、経済学の中で投入産出分析というのがあります。私はそのプロ ではありません。つまり、製造業の作ったものが、どれだけほかの産業の産出に貢献す るかといったら、サービス業よりはるかに高いのです。その内容は、例えば委員がおっ しゃった据野は広いとか、そのようなことがあると思います。  これは余計なことかもしれませんが、いまの日本は輸出に迫るぐらいの勢いで海外の 製造業からの上がりが雇用に役立っています。つまり、19世紀のビクトリア、イギリス にやや近づきつつある。トヨタがいま伸びているのは海外です。  委員がおっしゃったことで1つ弁解させていただけば、厚生労働省の言う社内検定 は、私は実は責任があるのです。私は昔、審議会の委員で作ったのです。ただし、その ときの意図はデンソーの制度を日本に広げようということです、当時はデンソーがいち ばん良かったのです。ところが非常に書類が多くて、それは何回も労働省内部で言った のですが、私の資料は表面上はなくなりました。むしろ1つの会社が自分の制度を作っ て、そのいい所を、これはいいなと思って広げていくのがいいのではないでしょうか。 ○委員  先ほど委員がおっしゃったことは、非常に大事なことだと思います。この有識者会議 は厚生労働省の職業能力開発局が主催するから、「ものづくり」というと、製造業に特 化しましょう、焦点を合わせましょうかという議論になってしまうのですが、実はいま 問われている我が国におけるものづくりの問題は、人づくりがベースになっていかない と、本当の問題解決にならないし、しかも、いわゆるものづくりで語られる、いま日本 が直面している問題は、製造業の問題だけではないように思います。  と言いますのは、いま日本のアニメ、漫画を中心としたサブカルチャーが、外国の若 者や子供に非常に受けて、日本にも利益をもたらしつつあります。経済的な意味で収益 をもたらすし、サブカルチャーといえども、外国の子供や若者に対して、すごく喜んで 受け入れられるようなものになってきているわけです。この面で、漫画はなぜ受け入れ られるかというと、日本の文化が基になって物語やキャラクターが作られて、これが受 け入れられるわけですが、受け入れられる基になっている、例えば漫画1つを取ってみ ると、オタクキングと自称しておられる岡田斗司夫さんに以前聞いた話ですが、日本は 絵筆で直接描く人口が膨大な数いるそうです。ワープロや最近はパソコンでどんどん文 字や画像を描くようになったが、それでも手描きの文化がまだ相当ある。この手描きの 文化を基に、自ら漫画を描く同人は何百万人もいる。またそれを見て、良い、悪いの評 価する人が何百万人もいる。描き手としても批評家としても消費者、バイヤーとして も、ものすごく厚い層がある。例えば、韓国がアニメ、漫画というのは、いけそうだと いうので、大学院までつくって専門家を養成しているが、所詮は層の厚さで絶対日本の ほうが勝ち抜けると言っていた時代がありましたが、手描きでものを作り出していくと いうのは、何もものづくりの製造業に限らず、そういう分野にも影響がある広がりのあ る問題なのです。  こういう問題は、経済産業省や文部科学省も一緒になって、政府全体の一大テーマと して何とか取り上げて、国全体を盛り上げる方向に持っていかなければいけないと思い ます。どうしたらそういうことができるか。我々も中央行政の分野で声を大にして、大 きくテーマとしてアピールしていきたいと思いますが、政府全体の問題として、どうや ったら取り上げていけるか、そういう視点も是非厚生労働省に持ってもらいたいと思い ます。  例えば、先ほど言ったものづくりの分野でも、我々は「技チャレンジ教室」というの を技能士会の人たちを中心に、子供たちを対象に開催しています。これをただ開催する だけでは限界があることから、毎年技能の素晴らしさを県民や若者にアピールするイベ ントがありますが、その中に子供たちを引っ張り出そうと、小・中学生技能競技等を設 け、技チャレンジ教室の中から優れた人間を推薦でエントリーさせて、全県大会で競わ せるわけです。そのようなことをやると、子供たちは非常に燃えるわけです。大勢の人 に見てもらう。自分の力を大勢の人に示すことが、非常に意欲を掻き立てる基になるわ けです。先ほどのガラスメーカーのトヨタウェイを導入した場合に、パートの人まで参 加してきたというのは、一種の達成感を味わわせることができるからです。それが1つ には、成果が出るという企業の場合なら、やったことが企業の成果につながるという達 成感。子供の場合は、何かものを作り上げる達成感で、それをさらに多くの人に見ても らう、認めてもらう。そういうことを通じてより達成感が拡大するということだと思い ます。そういう場をどうやってつくり上げていくかは、我が国全体、社会全体として、 もっと盛上げを図るように、いろいろな方面の力を借りて仕掛けを用意していくことだ と思います。そうすると、これは文部科学省も巻き込む必要があるし、経済産業省も巻 き込んで政府全体の大きなテーマとして取り上げてもらうといいのではないかと思いま す。それぞれについて、良い知恵がいろいろな分野であれば、そういうのを結集してや っていってもらう必要があるのではないかと思います。 ○座長  大変重要なご指摘です。この辺で次の話題に移りたいと思います。法的な整備を、ま ず第一に優先しなければいけないということですが、やがては思想的にも文化的にも、 そういうことに深く理解を持つことが必要ではないか。ものづくりが直に経済に響き、 しかもただものづくりではなく、傑出したものづくりが、場合によっては日本の経済を 左右するのだということぐらいまで、ちゃんと国民全体が認識していく必要があるので はないかと考えています。早くからこの問題を取り上げていただいたことが大変効果的 であったと思います。また、今日お見えの委員の皆様は、いろいろな現場で実績を上げ ていた方で、大変有効な議論ができたのではないかと思います。これについては、次回 に案をとりまとめてくださるそうですのでよろしくお願いいたします。  それでは、第2の議題の「ものづくり立国」の推進事業について、まず事務局から資 料の説明をお願いいたします。 ○事務局  それでは、時間も過ぎかけていますので簡単にご説明したいと思います。資料4で す。昨年度開催した有識者会議において、予算要求ベースの資料を基にして概略ご説明 いたしました。今年度はまだ始まったばかりですが、このような形で具体的に進めてい きたいものをまとめてありますので、資料4をご説明いたします。  今年度の事業の実施概要ですが、2本の柱があって、1つは「ものづくり立国」の社 会基盤の整備です。先ほどから国民に周知を図るとか、理解を深めることが大事という ことがありましたが、ものづくり立国の推進のために技能尊重気運の醸成を図るという ことが、大きな目的の事業です。  具体的には4本あって(1)では、多くの方々に対するシンポジウム、フォーラム等 を開催したい。例えば、技能五輪国際大会の金メダリスト等による実演、新規職種のデ モンストレーションを実施していきたいと考えております。具体的にいま案を作成中で すが、全国主要都市7カ所を今回は対象にして、本年7月〜来年3月までの予定でシン ポジウム、フォーラム等を開催していきたいと考えています。  (2)は、広報サイト「ものづくり情報ネット」を立ち上げていきたいと考えてお り、こういうものの活用によって、国民全体に啓発・広報を進めていきたいと思ってい ますが、内容は下にありますように、どんな所に技能があるのか、どのように自分たち を支えているのか分かりにくいところもありますので、身近にある技能、技能者として どんな方がおられるのか、あるいはいろいろな技能のイベントやものづくり学習として は、どのようなものがあるのかといった情報を提供して、多くの方に実際に近くで触れ ていただくような情報を提供したいと思っています。  2頁です。(3)は紙媒体でも情報を提供したいと思っており、具体的な名前として 「ものづくり情報マガジン」が書いてあります。年3回発行する予定で、企業の紹介、 どのような技能なのかを分かりやすく解説するというものを予定しています。  (4)は、地域単位で多くの方々に理解を深めていただきたいという思いで、各都道 府県において技能五輪国内大会のメダリスト等を委嘱して周知をしていただく形で活動 をお願いしたいと思っています。  2は、「ものづくり立国」を担う若年ものづくり人材の育成と書いてあり、そのとお りで、若年ものづくり人材の育成を支援するための事業を書いてあります。これも4本 に分かれていますが、(1)は、企業の工場・訓練校などで、すでにやられている所も ありますが、それをさらに広げ、公共職業能力開発施設等にも対象を広げて、親子を招 いて、ものづくり体験を実際に経験していただくということをやっていきたいと思いま す。それを推進するために、都道府県において「ものづくり体験推進会議」を設置して いただき、開放に取り組んでいきたいと考えています。  (2)は、高度熟練技能者との交流です。今までの具体的な動きとしては、工業高等 学校等に対して、技能の指導という形で高度熟練技能者にお願いしていましたが、それ に加えて小中高生との交流会も実施していきたいと思っています。  (3)は、若年者によるものづくり技能競技大会の実施です。現在、技能を習得中の 20歳以下の方を対象にして技能競技大会を実施したいと思っており、8月下旬に実施す べく具体的な準備を進めています。ここで優良な成績を収めた方に対しては、技能五輪 全国大会への出場権を与えて、参加していただくことを考えています。  3頁です。(4)の事業として、技能五輪国際大会に向けた高度若年技能者等の育成 です。これは主に中小企業に対する支援ですが、継続の事業として実施しています。今 年度の事業の概要については以上です。  続いて資料5です。それらをこれからまたさらに充実していきたいと思っています。 方向について若干書いてありますので、これに関しては後ほどご意見を頂戴したいと思 っています。  Iの「ものづくり立国」の社会基盤の整備についてですが、これに関しては3本ほど 視点を書いています。1は、シンポジウム・フォーラム等の開催についてで、今年度は 全国7カ所ですが、さらに全国に浸透させる方法として、地方都市に拡大していきたい と考えています。それについてはどうかということです。親は非常に大事だというご指 摘が先ほどありましたが、親子で楽しみながらものづくりを体験する手法として、例え ばデパートやスーパーなど、親子連れが多く集まる場所で疑似体験を実施するという案 については、いかがかということです。  2は、書籍の作成ですが、最近、職業について、若干自分の関心別に職業を見られる ような書籍もありますが、技能やものづくりなどに関して、具体的に深く紹介した書籍 もなかなかありません。そのようなものを作成することについてはどうかということで す。  3は、インターネットの活用で、さまざまな形での技能にかかわる方々が、交流を促 進するという観点から、インターネット上に交流の場を設けることについてはどうかと いうことです。  IIは、「ものづくり立国」を担う若年ものづくり人材の育成という視点です。これは 2つ書いてあり、1は技能五輪国際大会に向けた高度若年技能者の育成です。先ほども 若年者に対する支援を継続でやっていると申しましたが、さらに重点的な職種を絞り込 むことについて、いかがかということです。選手の強化策をもう少し具体的に進めてい きたいと思っていますが、以下のような2つのことです。例えば、諸外国で行われる大 会へ特別参加を勧めていくこと。韓国が成績が非常に良好ですが、大会において好成績 を収めている国々で行われている選手の強化方法についての情報収集を行うことについ ては、どうかということです。  2は、先ほど基礎的な技能は非常に大事というご指摘がありましたが、基礎的技能職 種に関する技能者育成を促進するということで、今後参加が多く見込まれているアジア 諸国に呼び掛けをして、プレ大会を開催することについてはどうかです。 ○座長  それでは以上の説明に関して、ご議論を頂戴したいと思います。ものづくり立国の推 進事業は、若年者対策の一環として、今年度新規に開始される事業です。2007年大会 は、この事業における重要なイベントと位置付けられています。来年度以降、さらなる 充実に向け、この場においてご議論いただきたいということです。それでは、委員の皆 様からご議論を頂戴したいと思います。 ○委員  本やいろいろな情報よりも、優れた人と一緒に働く経験が基本だという山勘があっ て、そのためにはお客様のような1、2週間のインターンではなく、半年、1年、それ を学校の単位に振り替える。先ほど委員がおっしゃったことは、私は大賛成ですが、技 術者と技能員が融合しているわけですから、大学の学部でも、1年間ぐらい研修員のよ うにして入ってくるというのがあるといいなと思います。もちろん、ものの情報も結構 です、書けと言えば書きますが。それは日本ではアルバイトとして普及していますか ら、もう少し長期、かつ、しっかりやることが重要ではないか。この前、アメリカの工 場へ行ってつくづくそれを、工学部の3年生が1年間工場へ行って、仕事をして入って くるという傾向があります。 ○委員  私は愛知県の技能士会連合会の理事長を務めております。先ほど委員からお話があっ たのですが、私どもの県も11月に、愛知技能プラザと言って、小学生の親子を対象に、 2日間で約2万人が集まるイベントをやっていて、すでに25年ぐらい経っています。  この開催については700万円ぐらいの費用が必要で、大半は愛知県の技能士会が負担 しています。愛知県からも費用の補助をいただいていましたが、年々補助が少なくなっ ています。愛知県の財政事情は非常に悪く、昨年は200万円の予算があったのですが、 なくなりそうだという話があります。そういうことは非常に大切だと言っているわり に、現実の問題として費用の削減が叫ばれています。愛知県の県議会の2人の議員が非 常に熱心に私どもの支援をしてくれていますので、この方たちを通じて、私は今年の年 初に愛知県の副知事のところに陳情に行きました。やっと予算を確保していただいたよ うですが、何か先細りの感があって、現実の問題としてない袖は振れないという世界も ありますから、そういう部分の各県でやっている子供たちに技能に対する関心を高めて もらおう、あるいは現実にものづくりに参加してもらうことに対する現実的な支援を是 非お願いしたいと思います。 ○委員  技能やものづくりのインセンティブを働かせる必要があると思います。政策の中にも それは活かされていますが、技能五輪というのは1つの象徴的なものですが、コンペを することは日常的にもできるわけですから、できるだけいろいろな業種の中で、いろい ろな地域の中で、業界を横断的にコンペをやっていくことを是非お願いしたいと思いま す。  1例ですが、私がいまやっている情報通信技術は、どちらかというと、今まではアイ ソレートされていた業界だったのですが、昨年度から競技大会をやって非常に業界が活 性化したという例があります。  もう1つは、PR活動を何らかの形で、企業、国も含めてやっていただきたいので す。「プロジェクトX」という番組がNHKで非常に有名になり、あれで技術者に対す る関心が非常に高くなったのですが、あれと同じように、技能、いま議論のあるような ものをいろいろな形で取り上げていただけるよう、企業のほうもスポンサーシップにな っていただいて、テレビなどの媒体を通じて訴えていただきたいと思います。 ○委員  デンソーでもものづくりフェスタとか、サンデースクールという形で、小学校や中学 校を対象に技能教室みたいなことをやっているのですが、随分好評です。また昨年ジム トフ(日本工作機械連盟)で展示ということでデモンストレーションをやりましたが、 デンソーの担当分が4日あって、1時間の競技を1日2回ずっとやっていたのですが、 1人も動くことがなく、ずっと1時間中見ていました。ああいう場でそういうことはま ずないという主催者のお話で、まだまだ知られていなかったり、興味のある方が日本に も非常に多いのではないかと思いますので、こういう場をいっぱいつくっていただくこ とが必要になってくると思います。  またコンペ的なことも非常に重要だと思いますが、だんだんレベルアップしてきます し、例えば社内で1位になったら、日本一になりたいし、日本一になったら世界一にな りたい。そのあとは何をするかというと、目新しいコンペ的なものはなくなってしまい ますので、何とか競争力プラス満足感や充実感を得られる施策が必要になってくるので はないかと思います。 ○委員  先ほどからいろいろ出ていますが、例えば、厚生労働省が昨年度からやっている若者 の自立塾、ジョブパスポート、ヤングジョブなど、いろいろやっておられます。経済産 業省もジョブカフェをやっています。それぞれ政府として予算要求をしてやっていくの は非常に大事ですが、どうしても縦割りのところがまだあるのではないか。横の連携を 政府として1つやっていくにはどうするかと。先ほどの資料の中にもありますが、都道 府県と企業、大学などいろいろな連携は大事だと思います。問題は若い人たちを将来育 てるためにどうするかというと、若い人たちというのは上の人の意見も聞くのですが、 どちらかというと仲間という意識があるので、若者同士の意見を意外に聞きます。その 辺から考えれば、若い人の中でリーダーをうまく育てて、組織的に連携をしながら、全 体的にレベルアップしていくことが考えられないかと思っています。そういう意味で は、来年度の予算要求などにも絡んでくるのでしょうが、若い人の組織化をやっていた だいて、国民運動的に盛り上げればいいのかなと思います。 ○委員  資料5でたくさんの推進施策が書いてあって、大変よろしいかと思いますが、これだ けのことをやって、いかに集客力があるかということだと思います。先ほど委員からイ ンターンシップを長期で受け入れてもらえないかというお話がありましたが、わが社で も全国の経営者協会とともにインターンシップを推進しておりますが、こちらも学生の 二極化ではないのですが、積極的に参加しようと思う学生がいる一方で、単位認定があ るから行こうという意欲の低い学生もいます。こういった施策をいかに活用してもらえ るかが大きな課題ではないかと思っています。  インターンシップを実際にやりますと、親の話を聞くのは嫌でも、例えば年配の方々 とお昼を食べながら、自分の若いころはこうだった、ああだったという話を聞けたの が、いちばん良かったという意見が大変多いのです。これは私も意外でした。まずは参 加することが大事だと思いますので、こういった取り組みをされて、本当に人に集まっ てもらえるのか、こういう書籍も見てもらえるのかという工夫をすることが大事ではな いかと思います。 ○委員  資料5で、来年度の予算要求項目は、すべて私は結構だと思います。是非満額獲得で 頑張ってもらいたいと思います。  1つだけお願いしておきたいのは、技能五輪は22歳以下で、ベテランの人の大会は技 能グランプリですが、この人たちはある意味ではトップレベルになった人たちですか ら、技能グランプリをもう少し盛り上げると、若者にとっても、もう少し先の目標が明 確になるという意味でも、非常に意味があると思いますので、その辺にもスポットを当 てていただく必要があるのではないかと思いました。 ○座長  お一人ひとりお立場を踏まえた大変有効なご発言をいただきまして、効果的ではなか ったかと思います。一応これで事務局にお返しいたします。 ○事務局  今日は貴重なご意見をありがとうございました。いろいろなご意見を参考にして一生 懸命取り組みたいと思います。特に静岡での大会が成功裡に開かれること。それを契機 に、ものづくりに対する国を挙げての取り組みが進むことを基本にして、我々もやって いきたいと思います。何名かの方々から言われましたが、縦割りでどうこうということ についても、当然各省の協力がなければ、大会もその後のこともうまく展開しないだろ うと思っています。我が方の面子にこだわるのではなく、ここであった話もお伝えし、 協力を仰ぎながら取り組んでいきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いしたい と思います。 ○事務局  次回の日程ですが、6月に第2回を開催したいと思いますが、日程は改めてご相談し たいと思います。 ○座長  今回の内容は十分に記録にとどめる価値のあるご発言が多かったのではないかと思い ます。心から御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。 (問い合わせ先)  職業能力開発局  能力評価課  有識者会議担当  電話  (代表) 03-5253-1111      (内線) 5948