資料2

基準病床数制度に関する現状の評価と今後のあり方について(メモ)


【基準病床数制度に関する問題意識(検討の背景)】

 基準病床数制度に関する「医療計画の見直し等に関する検討会」ワーキンググループ報告書(WG報告書)や規制改革・民間開放推進3か年計画(改定)の指摘を踏まえると、患者本位の効率的で質の高い医療提供体制を構築するため、現状の基準病床数制度について、次の観点から、その必要性について改めて検討してはどうか。

 検討に当たっては、単に基準病床数制度の存否にとどまらず、医療の質の向上と効率化という観点に立って、基準病床数制度の現状の評価と今後のあり方を考える必要があるのではないか。

 以上のような前提に立って、まずは、WG報告書で指摘された、医療の質の向上と効率化に関する4つの条件について、それぞれどのように考えるべきか。
(参考;適切な医療提供体制を確保するために最低限必要な条件)
I. 入院治療の必要性を検証できる仕組み
II. 入院治療が必要なくなった時点で退院を促す仕組み
III. 医療機関の診療内容等の情報が公開され、患者による選択が促進され、医療の質の向上と効率化が図られる仕組み
IV. 救急医療やへき地医療等政策的に必要な医療に関し、医療機関の経営、あるいは特定診療科の経営が採算に乗らない地域では、それを担当する医療機関に対して、補助金や診療報酬上の評価その他の手法により、引き続き医療サービスの提供を保障あるいは促進することができる仕組み


【医療の質の向上と効率化に関する条件と現状の評価(案)】

I. 入院治療の必要性を検証できる仕組み
II. 入院治療が必要なくなった時点で退院を促す仕組み
(上記条件に対する現状の評価)
 EBMの推進や地域連携クリティカルパスの導入など、疾病ごとに、標準的な治療方法、入院治療の必要性及びその期間について客観的に把握できる体制の構築に向けた取組を進めているところであり、その効果も検証されつつあるが、これについて現段階では、EBMは特定の疾患に限られ、また、地域連携クリティカルパスは全国的な展開が未だ行われていない。このため、現状では、様々な病態の患者ごとに、それぞれ入院治療が必要か、また、入院治療が必要なくなったかについて、患者の自らの選択という視点も加味しつつ、治療の必要性や退院の時点を客観的に判断できる仕組みは存在しないことから、上記2つの条件については、まだ整っていないと判断すべきではないか。

III. 医療機関の診療内容等の情報が公開され、患者による選択が促進され、医療の質の向上と効率化が図られる仕組み
(上記条件に対する現状の評価)
 個々の医療機関の診療内容等の情報について、都道府県がとりまとめ、医療計画等を通じて公開する仕組みを早急に検討することによって、患者が医療サービスの質について選択できるような基盤の構築に向けて、現在の医療計画の見直しの検討が推移しているところであるが、現段階においてはこのような仕組みはまだ整っていないと判断すべきではないか。

IV. 救急医療やへき地医療等政策的に必要な医療に関し、医療機関の経営、あるいは特定診療科の経営が採算に乗らない地域では、それを担当する医療機関に対して、補助金や診療報酬上の評価その他の手法により、引き続き医療サービスの提供を保障あるいは促進することができる仕組み
(上記条件に対する現状の評価)
 現在の検討推移を踏まえ、救急医療やへき地医療等政策的に必要な医療サービスの提供を保障あるいは促進することができる仕組みとして、地域で必要な医療サービスを指標でもって客観的に把握し、それに基づいて都道府県が実効性ある医療計画を立案する過程を通じて、政策的に必要な医療サービスの提供を保障あるいは促進するべきではないか。


基準病床数制度(いわゆる病床規制)の存否に対する各方面からの意見(参考)

◇「医療計画の見直し等に関する検討会」ワーキンググループ報告書(抄)

II 今後の医療計画制度のあり方について
 2.医療計画に盛り込まれるべき内容
  (3) 基準病床数
2) 適正な医療提供の確保との関係でみた基準病床数の存否
 基準病床数を廃止し、医療機関の参入又は撤廃を全く自由にするという意見の論者も、限られた医療資源を効率的に活用し、医療の必要度に応じて入院治療が必要な患者が速やかに入院治療を受けることができるよう適切な機能別の病床数を確保することの必要性は認めるところである。他方で、供給側による誘導の結果として入院の必要度が低い患者が入院治療を受けるといった事態が生じることがないようにしなければならない。
 このため、基準病床数を廃止する場合には、適切な医療提供体制を確保するために最低限必要な条件として次の事項が必要であると考える。







(1)入院治療の必要性を検証できる仕組み
(2)入院治療が必要なくなった時点で、退院を促す仕組み
(3)地域に参入する医療機関の診療内容等の情報が公開され、患者による選択が促進され、医療の質の向上と効率化が図られる仕組み
(4)救急医療やへき地医療等、政策的に必要な医療に関し、医療機関の経営、あるいは特定診療科の経営が採算に乗らない地域では、それを担当する医療機関に対して、補助金や診療報酬上の評価その他の手法により、引き続き医療サービスの提供を保障あるいは促進することができる仕組み







 この仕組みを支えるためには、各医療機関により、1)正確な分類に基づいたケースミックス(各種疾患を診断群に整理分類する方法)を用いた患者構造の明確化、2)治療結果、3)在院日数、4)費用(経営指標)が一定のルールにより都道府県に報告されることにより、医療の透明性が確保され、患者の選択の促進と競争環境の整備が図られるものと考えられる。
 なお、これらは基準病床数制度廃止のみを目的としたものではなく、医療の質の向上と効率化に資するという点に留意すべきである。



◇規制改革・民間開放推進3か年計画(改定)(平成17年3月25日閣議決定)

II 16年度重点計画事項
 4 医療計画(病床規制)の見直し等
  (1)いわゆる病床規制の見直し
   (1) いわゆる病床規制については、既存の医療機関の既得権益を保護することによって、新規参入を阻害し、もって医療機関の健全な競争が働かない等患者視点に立ってみると弊害も見られるところである。したがって、医療計画制度における都道府県の役割も踏まえながら、質が低く、都道府県の改善命令に従わない医療機関に対する開設許可の取り消し等実効的な手段によって退出を促すことにより、地域が真に必要とする質の高い医療サービスを提供する医療機関の参入を阻害することのないような方策を検討する。
 なお、いわゆる病床規制を撤廃するためには、どのような条件整備が必要かについても検討する。【平成18年の医療制度改革で措置】

III 措置事項
 9 医療関係 <ク その他(救急医療、小児医療、医療事故対策等)>
  b 医療計画制度における都道府県の役割も踏まえながら、質が低く、都道府県の改善命令に従わない医療機関に対する開設許可の取り消し等実効的な手段によって退出を促すことにより、地域が真に必要とする質の高い医療サービスを提供する医療機関の参入を阻害することのないような方策を検討する。いわゆる病床規制を撤廃するためには、どのような条件整備が必要かについても検討する。



基準病床数制度の存否に関する各委員からの御指摘(抜粋)


◇第1回(平成15年8月)
 ○ 医療で必須なのは、病床ではなく人。これまで医療提供体制の整備と言えば、病床が大きな意味を持っていたが、病床の確保から人手の担保に考えをシフトする必要。病床不足ではなく、人手不足が医療の質、効率、安全に深刻な影を落としている。法令上の多くの規定は、病床に関するものだが、これを人を規定するものに変えていく必要がある。これにより、病床規制の意味合いも変わってくるのではないか。

◇第2回(平成16年10月)
 ○ 病床規制については、各国の動向等も踏まえ、その規制方式の見直しを含め、基本的には当面維持することが適当であると考えられるが、一定の条件が満たされれば、将来的にはその撤廃も視野に入ってくることがあり得る。
 ○ ドクターを確保しないと医療計画は空回りしてしまう。マンパワーの規制のほうに比重をかけないと、いわんや安全・安心なはずの所でこれだけ紛争が増えてくれば、もっと言えば患者の前に出せるドクターと出せないドクターがいる。そうであればどうするのか。どこがそれを規制するのか。
 ○ 従来の病床規制だけにとどめるのでなく、医療従事者の問題も検討すべき。
 ○ 基準病床数はいろいろ政策的に衝突するところがあるが、これを将来はどうしていくのか。発展的に解消していくような方向として、こういう仕組みを将来作っていくという書きぶりのほうが、むしろ受け取り方としては分かりやすいのではないか。
 ○ 基準病床数を廃止する場合と維持する場合というのがあるが、これを見ると廃止する場合の条件のほうが極めてハードルが高い。先ほどのワーキンググループの座長のお話でも、近い将来というか遠い将来というか、かなり先のほうに視点を置いて基準病床数の廃止までいくかどうか、その中間段階もあるのかなとある。ここで見ると、どうも基準病床数の現在の考え方を維持する方向で書かれている。
 ただ、今時の医療計画においては、特に県のような圏域が患者の受療行動にほとんど関係しないような地域だと、圏域自体に患者は何のこだわりも持っていない。そういう意味で今回の医療計画の中の基準病床の言わば一定の圏域間調整という手法が、かなり巧妙な形で入れ込まれていたことについては、今般の基準病床の算定の仕方については非常によく利用して、当初の政策的に推進すべき医療というものを、ある程度前向きに達成できたかなと思う。もし基準病床数という形を維持する方向性になった場合には、今般のようなある程度の圏域間調整が可能な仕組みを、絶対に維持していただきたい。
 ○ 基準病床数の問題だが、長い日本列島の中で、公平・地域格差なくという形から言うと、やはり基準病床数の最低限の設定というのは、どうしても必要。ここ何年間か続いている営利法人の医療に対する参入の問題がある。この背景に別の意味で病床規制を外せという議論もある。そういった医療の本質に関わる問題、今後の日本の医療のまさに本質に関わる問題で、そういった動きがある中で、先ほど言われた「やめるほうにハードルが高い」という形は、これは非常にうまくまとめられたのではないかと私は評価している。
 ○ 結局どういう需要の病床が必要かということについては、我々がそれをあらかじめ決めてしまうことは非常に難しい。したがって我々、仲間で議論をしていくと、基準病床数をやめてもらいたいというのが根源的な希望。
 ○ 廃止する条件として4つほどあるが、医療関係者はこのことはよく分かるが、特に患者から見ると、とても不思議な条件。(1)必要性を検証できる仕組みというが、いまは必要がないのに入院していることになるのか。(2)必要がなくなった時点で退院を促す仕組みとあるが、必要がないのに入院しているというのが現状で、一般の国民には分からない。(3)も情報が公開されるとか、効率化という話も、では、今はやられていないのかという話だと思う。(4)の政策的にお金の面が大変だという話だが、これも一般の人から見ると、こういうことがきちんとやられていないこと自体が不可思議に思える。つまりこのハードルは一見、医療関係者には高そうに見えるが、一般の人が見ればこれは当たり前のことで、なぜこれがやられていないのかということが疑問に思われる事柄だと思うので、この書きぶりは慎重にしないと、この条件が満たしていないということが、いまの医療の問題点として、むしろ問題にされることがあり得る。これは患者の視点から、このようなことが、今もやられていないのかが理解され得るような書きぶりにしたほうが私はいいと思う。そのことを取り組むべき課題の中に、きちんと明解に示していく必要があろうかと思う。
 ○ ここで取り組むべき課題はまず行政が手を離すこと、舞台を設定するだけ、必要病床数は方法論であるから、今度もう一つ方法でやれば、私は必要医師数、必要医療費があると思う。この医療費をどれだけうまく使うか。病床規制数もあるだろうが、そもそもの原点に戻ってどうしたらいいかを都道府県に要請すれば、ものすごく面白がって作業をやると思う。病床規制というのは19世紀から20世紀の行政ツールだと思うので、これからは安心ということと、患者主体の医療ということであれば、ソフト、人間関係だからこそ、それぞれの都道府県の医療風土、歴史に応じてつくっていく、その主体性を維持するために国が何をしないといけないかということで、これは取り組むべき課題のマイナーな話だろう。

◇第3回(平成16年11月)
 ○ 基準病床数の既得権問題というものがある。これについては大変悩みの深いところ。このためにも、基準病床数制度というものに、できるだけ箍<たが>を外していく方向でやっていただければ。
 ○ 基準病床について、急性期病床と療養病床のどちらが、本当に未だに基準病床が必要なのかというのを明確にしておかないといけない。日本の医療のために、どちらが基準病床をつくっておかないと、プロバイダー・インデュースドデマンドが起きて、どちらかはあまり起きないから、もう外してもいいのではないかというポイントのところを議論すべき。
 ○ 基準病床数制度の計算式は大変難しくて計算できない。解決方法は二つ。一つは基準病床やそういったものを全部なくしてしまえば何の問題もない。もう一つは、一般病床数のほうだけ決めるということはある。というのは、療養病床数については、介護施設による対応可能なケースがあり、参酌標準で使えると思う。

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