「平成18年の医療制度改革を念頭においた医療計画の見直しの方向性」に係る論点整理(案)
◇全国規模の医療機能調査と主要な疾病・事業の「指標」について |
(データに基づいた医療計画の作成と全国規模の医療機能調査)
● | 住民・患者の視点を尊重し、住民・患者に分かりやすい保健医療提供体制を実現するため、主要な疾病又は事業(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、小児救急を含む小児医療、周産期医療、救急医療、災害医療、へき地医療など)について、都道府県においてどのような対策が講じられているか、住民・患者に分かりやすいものとしてその内容を医療計画に明示するとともに、医療サービスの提供者・住民(患者)双方が情報を共有し、客観的に評価できるような方法を検討するものとする。 |
● | 都道府県が客観的なデータに基づいて保健医療提供体制を構築することを支援するため、国は全国規模の医療機能調査を実施することによって、主要な疾病又は事業ごとに地域においてどのような医療サービスが必要とされているのかについて判るようにするとともに、把握したデータを公表し、かつ、すべての国民が活用できるような環境を整備するものとする。 |
● | あわせて、都道府県が地域(患者の受療行動に応じた圏域)ごとに必要とされる医療サービスを把握できるよう、国は患者の疾病動向や医療機能等に関する全国共通の指標を提示するものとする。 |
● | また、都道府県は全国共通の指標を基に将来の望ましい保健医療提供体制の構築に向けた数値目標を医療計画に明示し、その改善プロセスを住民に公表することによって、実効性のある医療計画を作成するものとする。 |
(全国共通の指標の視点とその内容)
● | 国が提示する全国共通の指標については、
(1) | 保健医療提供体制の視点のみではなく、患者の視点を中心としたものであること |
(2) | 量的な整備目標という視点のみではなく、保健医療提供体制の質的な観点を重視し、国民に対し良質かつ適切な医療を効率的に提供できる体制の構築に向かうものであること |
(3) | 個別の医療機関の医療機能だけの視点ではなく、地域全体の医療機能を概観する複数の視点でもって質の高い効率的な保健医療提供体制の構築を検証できるものであること |
を基に検討するものとし、都道府県が医療計画に明示する数値目標についてもこれに準拠するものとする。 |
● | また、全国共通の指標に関しては、これまで主流であった「構造」面の評価に加え、可能な限り、「プロセス」や「アウトカム」評価の導入を検討するとともに、指標は現状の評価にとどまらず、質の高い効率的な保健医療提供体制の構築に向けたものとする。 |
● | さらに、都道府県は5年ごとに見直しする医療計画において、全国共通の指標を基に地域の保健医療提供体制を把握・分析するとともに、都道府県の任意の指標でもって現状を把握・分析することも可能であるものとする。 |
● | 具体的な全国共通の指標については、患者の視点に立って、疾病の予防(検診)、治療・診療そしてリハビリテーション・在宅医療・ターミナルケアといった患者の病状の経過や治療のプロセスに対応したものであることを基礎として、質の高い効率的な保健医療提供体制の構築に資するものとする。 |
医療計画における指標一覧(疾病系)(案)
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把握したい概念 |
調査可能性※1 |
指標 |
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そのほか参考となる指標 |
がん |
脳卒中 |
急性心筋梗塞 |
糖尿病 |
住民は、どのくらい健康に関心があるのか |
○ |
健診・検診受診率 |
がん検診受診率 |
基本健康診査受診率 |
基本健康診査受診率 |
基本健康診査受診率 |
|
病気の可能性がある人が、どのくらい病気を自覚しているのか |
△ |
精密検査受診率 |
精密検査受診率 |
|
|
|
どのくらい病気を治そうとしているのか |
△ |
有病者の受診割合 |
有病者の受診割合 |
有病者の受診割合 |
有病者の受診割合 |
有病者の受診割合 |
・ | 情報提供施設割合 |
・ | セカンドオピニオン 選択可能施設割合 |
・ | 受療率 |
・ | 有病率 |
・ | 合併症り患率 |
・ | かかりつけ医保有率 |
・ | 診療可能施設数 (対象患者あたり) |
・ | 入院可能病床数 (対象患者あたり) |
|
病気だった人が、どのような経過で日常生活に復帰したのか |
△ |
早期社会復帰率 |
平均連結入院日数(年間) |
平均連結入院日数(年間) |
平均連結入院日数(年間) |
平均連結入院日数(年間) |
患者が、希望する医療が受けられるのか |
○ |
地域医療カバー率 |
診療科医師割合(対象患者あたり)※2 |
診療科医師割合(対象患者あたり)※2 |
診療科医師割合(対象患者あたり)※2 |
診療科医師割合(対象患者あたり)※2 |
患者は、地域の医療機関でどのくらい切れ目なく診療が受けられるのか |
△ |
地域連携支援率 |
連携パス利用率 |
連携パス利用率 |
連携パス利用率 |
連携パス利用率 |
地域では、どのような病気が多いのか |
○ |
死亡率 |
死亡率 |
死亡率 |
死亡率 |
死亡率 |
・ | 要介護認定者率 |
・ | 往診/訪問診療実施率 |
・ | 往診/訪問診療可能医師割合 (対象患者あたり) |
|
病気になった時、在宅でどのくらい医療を受けられるのか |
△ |
在宅支援率 |
在宅死亡割合 |
地域リハビリテーション実施者率 |
在宅復帰率 |
|
※1 | ○はほぼ同義で調査可能、△は定義の若干の変更を加えれば一部調査可能 |
※2 | 県民ニーズに応じた医療資源の適正配置を促すための指標 |
(診療ネットワークのねらい)
● | 患者を中心とした地域の医療機関の医療機能と医療機関間の医療連携の状況(診療ネットワーク)を主要な疾病又は事業ごとに医療計画に明示することによって、住民・患者の診療のために地域の医療機関がどのような連携体制を組んでいるのか、更に、患者自身の病態に応じて適切な医療機関にどのように紹介するのかといったことなどを分かりやすく理解することができるようになり、その結果として、住民・患者が安心感をもてるようにする。 |
● | 診療ネットワークを通して医療情報が患者と医療提供者との間で共有されることにより、患者が医療への参加意識を持ちやすくなるとともに、かかりつけ医から納得して適切な医療機関の紹介を受けることができるという、患者とかかりつけ医を中心とした質の高い効率的な保健医療提供体制を構築するものとする。 |
● | 診療ネットワークは、一つの医療機関だけで完結をめざす医療から、地域の医療機関が医療連携によって地域全体で患者を診ていく医療への変化を促進するものであり、病院の自主的な機能分担と連携を推進するものとする。 |
(診療ネットワークの実現に向けた留意点)
● | 地域の診療ネットワークの実現に向けた国・都道府県の支援に当たっては、
(1) | 特定の疾患しか診療せず患者全体の状況を診ないという過度な専門医療を助長するものであってはならないこと |
(2) | 一つの医療機関が地域で患者を独占してしまい結果として医療サービスの質の競争が低下するものであってはならないこと |
(3) | あくまでも病院の自主的な機能分担を支援するものであり、国・都道府県が医療機関に対し強制的に機能分担を迫るものであってはならないこと |
に留意する必要があるものとする。 |
(診療ネットワークの内容)
● | 各診療ネットワーク内では、各医療機関は、患者に対し治療開始から終了までの全体的な治療計画(地域連携クリティカルパス)を共有した上で、各医療機関がそれぞれ担当する部分の治療計画(院内クリティカルパス)に沿った治療を行い、日常生活への復帰に向けた作業を患者と各医療提供者が共同して行うものとする。 |
● | また、診療ネットワーク内では日常生活の復帰に向けた各患者の治療経過について再検証できるようデータ整備に努めるものとする。 |
(診療ネットワークの構築に向けた医療機関の役割と国・都道府県の役割)
● | 診療ネットワークの構築に当たっては、住民、診療に関する有識者、保健事業を実施する者、市町村(保健・介護・福祉)、医育機関や臨床研修病院の代表など地域医療に関与する者が、協議・検討することからはじめ、地域に適した体制を構築するものである。その際、調整が必要となる事項等については、地域が選んだ医療連携の調整を進める医療機関(核となる医療機関)を定めるなど、円滑に推進される体制を整えるものとする。 |
● | なお、核となる医療機関は、診療ネットワークの構築に向け、
(1) | 各医療機関が有する医療機能を患者に適切に情報提供できるよう調整する |
(2) | 自院だけでなく診療ネットワーク全体でもって、患者に対し切れ目のない医療サービスの提供に向け調整する |
(3) | 診療ネットワーク全体の医療の質の向上のため、医療従事者の研修などに積極的に取り組む |
役割を果たすことが求められるものとする。 |
● | その上で、国・都道府県は、(1)住民・患者に対し各医療機関の適切な医療機能の情報が提供される基盤整備を推進するとともに、(2)すでに各地域で自主的に取り組まれている医療連携をより一層推進するためにどのような支援ができるのかという視点に立って検討するものとする。 |