EUにおける母性保護(危険有害業務)について


○ 根拠・・1992年の指令第85号(92/85/EEC)
妊娠中の労働者及び出産直後又は授乳中の労働者の職場における安全衛生の改善を促進するための対策導入に関する指令

 保護のしくみ ( 詳細は、別添1参照 )

(1) 事業主は妊産婦等にリスクがあると考えられる業務についてリスク評価を行い、
(2) リスクが明らかになった場合は、リスク回避の措置(※)をとる
  ※ 労働環境の改善、労働時間の調整、配置転換、休業
(3) 一定のリスクが明らかになった場合は、妊婦及び授乳中の労働者は当該業務に就くことを強制されない

 リスク評価に関するガイドライン

(1) リスク評価の基準とするため、欧州委員会は妊産婦等に有害と考えられる化学物質等の評価等についてのガイドラインを制定、加盟国はこれを広く労使に周知することとされている。
(2) ガイドラインでは、妊産婦等に有害と考えられる要因(化学的要因、物理的要因、生物的要因、労働環境等)と対応するリスク回避のための措置を例示
 ガイドラインでは、以下のように表示されている(詳細は、別添2 参照)

物質名 どのようなリスク(障害・危険)
があるのか。
どのようにリスクに対処するのか。
予防手段の例
水銀及びその化合物  有機水銀化合物は胎児に有害な影響を与える可能性がある。
  動物実験と人についての報告によれば、妊娠期間中にこれらの水銀化合物にばく露すると、胎児の成長が遅れたり、神経組織が破壊されたり、母親が死亡したりする、ということが示されている。
 有機水銀は血液から母乳へと運ばれる。女性が、妊娠前や妊娠中に、高度に有機水銀にばく露すると、胎児を危険にさらすことになりうる。
 ばく露を防止することが第一の優先事項とされなければならない。ばく露を防止することができない場合には、良い作業計画及び管理を伴う技術的手段と個人用保護具(PPE)の使用との組み合わせが、ばく露の制御方法となりうる。PPEは、他のすべての方法が適用できない場合にのみ、ばく露を制御する措置として用いられるべきである。PPEは、また、他の方法と組み合わせて二次的な防護対策として使用してもよい。

(3) 事業主は、リスク評価に当たっては、既存のばく露限界値(※)を考慮するとともに、妊産婦等のリスクに特別の考慮をしなければならない
 通常は妊産婦又は胎児にリスクを与えないレベルに設定されている。場合によっては、妊婦にはより低いレベルが設定されている場合もある。



(参考)REACHシステム

 EUにおいては、化学物質の管理について、登録、評価、認可等から構成されるREACH(Registration, Evaluation and Authorization of Chemicals)システムの導入が提案され、その導入に向けた作業が進められている。その概要は次のとおり。

 登録義務
 EU内で、年間1トン以上の物質を製造する事業者等は、欧州化学品庁に、有害性情報の概要等の登録書を提出しなければならない。

 評価
 EU各国の規制当局は、登録された化学物質に関して登録者が提案する試験実施計画を評価し、必要に応じて当該物質の登録者等に対して試験の実施を要求する。

 認可
 発ガン性、変異原性、生殖毒性のカテゴリーが1及び2の物質、難分解性・生体蓄積性及び毒性物質等の物質については、使用前に認可されていなければ、また、認可の条件内でなければ使用してはならない。

 分類
 発がん性、変異原性、生殖毒性のカテゴリーについて。
 (参考:指令67/548/EECによる発がん性の分類の例
 ・・・変異原性、生殖毒性についても同じ)

  カテゴリー1:人に対して発がん性があることが知られている物質(ある物質の人へのばく露とがんの発生の因果関係を確立するに十分は証拠を有する。主に疫学的なデータによって判断される。)
  カテゴリー2:人に対して発がん性があるようにみなされるべき物質(適切な長期の動物での調査、その他の関連情報により、ある物質の人へのばく露ががんを発生させるおそれがあるという強い推定を与えるための十分な証拠がある。)
  カテゴリー3:発がん性作用を及ぼす可能性があるため、人に対して懸念を引き起こすが、利用可能な情報では、これについて評価が適切に行えない物質(適切な動物での調査から、有る程度の証拠はあるが、カテゴリー2に含めるには不十分である。)

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