免許保持者の届出義務について


(現状)
 保健師助産師看護師法第33条に基づき、業務に従事する看護職員は2年毎にその就業状況について、就業地の都道府県知事に届け出ることが義務づけられている。
 その趣旨は、就業者の実態を把握し、就業者に対する指導監督や需給バランス等看護行政の推進に資するためとされる。
 様式は「業務従事者届」として同法施行規則で定められており、氏名、免許の種別とその登録番号、就業場所等について記載することとなっている。 届出違反には、罰則が課せられている。
 届出違反には、50万円以下の罰金が課せられることとなっている。

○届出制の経緯
 「保健婦規則」、「産婆規則」、「看護婦規則」においては、業務を行わない者は免許を返納することとされていた(いわゆる業務免許。3年以上業務を行わない場合は廃業とみなし、免許の返納を義務付け)。
 「保健婦助産婦看護婦法」(昭和23年)においては、業務従事の如何に関係なく、籍登録後は終身の資格を付与した(いわゆる身分免許)。その際、届出については、業務従事者からの届出という形とされ、今日に至っている。
 なお、当初は、業務開始の届出、業務継続の場合2年ごとの届出、業務廃止の届出、就業地移転の届出があり、都道府県には就業者名簿を備え付けるとともに届出者には業務従事証を交付することとなっていたが、昭和29年改正で業務従事証が廃止され、昭和42年改正でこれら届出及び名簿が廃止されるとともに1年ごとの業務届出に改められた。さらに昭和57年改正で2年ごとの届出に簡素化された。また、平成13年改正で罰則が5,000円以下から50万円以下に引き上げられた。

 ※1 看護婦規則(大4・6・30内務省令第9号)
 第9条 看護婦廃業シタルトキハ20日内ニ免状ヲ住所地ノ地方長官ニ返納スヘシ
看護婦3年以上其ノ業務ヲ営マサルトキハ廃業シタルモノト看做ス
3〜4(略)

 ※2 保健師助産師看護師法(昭23.7.30法第203号)
 第33条 保健婦、助産婦、甲種看護婦又は乙種看護婦がその業務を開始しようとする場合又は廃止した場合には、就業地の都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
 2 前項の規定による開始に関する届出をした者が、業務を継続する場合においては、2年毎に、就業地の都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
 3 前二項の規定による届出に関して必要な事項は、省令でこれを定める。
 第34条 都道府県知事は就業保健婦名簿、就業助産婦名簿、就業甲種看護婦名簿又は就業乙種看護婦名簿を備えて、前条の規定による届出に関する事項を記載し、業務開始の届出をなした者に対しては、保健婦業務従事証、助産婦業務従事証、甲種看護婦業務従事証又は乙種看護婦業務従事証を交付し、業務継続の届出をなした者に対しては、それぞれ従事証にその旨を記入する。
 2 前項の名簿及び従事証に関する事項は、省令でこれを定める。

 ※3 歯科衛生士及び歯科技工士に対する届出の見直し
 上記、昭和42年改正において、それまで歯科衛生士及び歯科技工士免許保持者には届出が義務付けられていたが、従事者に対する届出に改められた。

 ※4 医師の例
 旧法においては、医師は住所を変更した場合に、都道府県知事に対し届出の義務があったが、必ずしも厳格に実行されておらず、かつ住所のみであったため、医師の業態が不明であり衛生行政上支障が多かった。このため、昭和23年の医師法により、医師の分布及び業態を正確に把握するため、医師免許保持者に対して厚生大臣への届出が義務づけられた。

○届出の方法
 2年毎に都道府県知事に届出。保健師業務、助産師業務又は看護師業務のうち、2以上の業務に従事する者にあっては、主として従事する業務について届け出ることとされている(別紙様式)。
 都道府県から厚生労働省には、統計資料(衛生行政報告例)作成のため従事者数のみ報告されるため、厚生労働大臣には個別の情報が提供されない。
 医師、歯科医師、薬剤師は都道府県知事を経由して厚生労働大臣に届出。

 ※5 届出の状況
 平成14年の衛生行政報告例における病院での看護職員の業務従事者数は780,950人、医療法施行規則に基づき医療機関から報告される同年の病院報告における病院での業務従事者数は792,124人であり、その差は11,174人となっており、約1万人の看護職員が届出を行っていない可能性がある。

(問題点として指摘される点)
○免許取得者全体の把握ができない。
 現在、届出が業務従事者のみとされていることから、潜在看護職員を含む免許取得者全体の把握ができず、全国で約55万人存在すると推計される潜在看護職員を特定することが困難。

(免許保持者への届出制導入に対する積極論、慎重論)
〈積極論〉
 潜在看護職員も含め、看護職員の地域の分布状況を正確に把握することで、適正な需給見通しの策定及び達成状況の把握が可能となり、より効果的な看護職員確保対策が可能となる。
 届出先を厚生労働大臣とすることで、必要な集計、資料の作成を行うことが可能となる。

〈慎重論〉
 従来、求めていなかった者に対し、罰則をかけてまで届出の義務を課すことは、国民に過大な負担をかけることにならないか。
 就業していない看護職員に届出の義務を課したとしても、長年にわたり未就業となっている者については、届出を期待できないのではないか。

(その他の論点)
 個人情報の保護が求められる中で、届け出られた情報は、行政資料としてどこまで活用することが許されるのか。
 人材確保の観点から、業務に従事していない看護職員に届出を義務付け、確保対策に活用してもよいのではないか。
 免許の更新制についても併せて検討すべきではないか。



医療関係職種における届出義務

資格名 対象者 届出期間 届出先 法律 罰則規定
看護師 就業者 2年に一度 就業地の都道府県知事に届出 保健師助産師看護師法第33条 50万円以下の罰金
保健師 就業者 2年に一度 就業地の都道府県知事に届出 保健師助産師看護師法第33条 50万円以下の罰金
助産師 就業者 2年に一度 就業地の都道府県知事に届出 保健師助産師看護師法第33条 50万円以下の罰金
准看護師 就業者 2年に一度 就業地の都道府県知事に届出 保健師助産師看護師法第33条 50万円以下の罰金
医師 免許取得者 2年に一度 その住所の都道府県知事を
経由して厚生労働大臣に届出
医師法第6条第3項 50万円以下の罰金
歯科医師 免許取得者 2年に一度 その住所の都道府県知事を
経由して厚生労働大臣に届出
歯科医師法第6条第3項 50万円以下の罰金
薬剤師 免許取得者 2年に一度 その住所地の都道府県知事を
経由して厚生労働大臣に届出
薬剤師法第9条 50万円以下の罰金
歯科衛生士 就業者 2年に一度 就業地の都道府県知事に届出 歯科衛生士法第6条第3項 50万円以下の罰金
歯科技工士 就業者 2年に一度 就業地の都道府県知事に届出 歯科技工士法第6条第3項 50万円以下の罰金



(保健師、助産師、看護師、准看護師)業務従事者届 (PDF:51KB)



医療関係職種の法に基づく届出によって作成された統計について


【衛生行政報告例】
目的
 各都道府県・指定都市・中核市における衛生行政の実態を把握し、国及び地方公共団体の衛生行政運営のための基礎資料を得ることを目的とするものであり、毎年実施しているものと2年ごとに実施しているものがある。

根拠
 地方自治法第245号の4第1項(地方自治法の自治事務となったものの資料の提出の要求)

対象
 都道府県・指定都市・中核市

報告内容
(1) 環境衛生、食品衛生、医療、薬事等の業態許可数や立ち入り検査件数、准看護師免許交付数等(毎年実施)
(2) 各資格の就業状況等(2年ごとに実施)

保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、歯科技工士について
(1) 調査系統
I 看護師等は従事者届を都道府県知事に届出
II 都道府県は(1)の従事者届をもとに集計し、厚生労働省大臣官房統計情報部あて報告

III
看護師等→(保健所)→都道府県 →厚生労働省大臣官房統計情報部

(2) 統計表
I 保健師、助産師、看護師、准看護師
 就業場所・性・年齢階級別  (助産師は「性別」除く)
 就業場所・都道府県別(性別)(助産師は「性別」除く)
 人口10万対数及び率(都道府県別)

II 歯科衛生士、歯科技工士
 就業場所・性・年齢階級別 (歯科衛生士は「性別」除く)
 就業場所・性・都道府県別 (歯科衛生士は「性別」除く)
 人口10万対数及び率(都道府県別)
 ※統計表は平成14年の報告書による

【医師・歯科医師・薬剤師調査】
目的
 性、年齢、業務の種別、従事場所及び診療科目名(薬剤師除く。)等による分布を明らかにし、厚生労働行政の基礎資料を得ることを目的とするものであり、2年ごとに実施している。

根拠
 医師法第6条第3項、歯科医師法第6条第3項、薬剤師法第9条

対象
 医師、歯科医師、薬剤師

調査系統
 医師等は届出票を都道府県知事を経由して厚生労働大臣に届出

  医師等→(保健所)→都道府県→厚生労働省大臣官房統計情報部

統計表
(1) 人口10万対(都道府県別)
(2) 業務の種別・年齢階級・性別
(3) 業務の種別、従業地による都道府県別
(4) 従事者数・平均年齢、性・年齢階級・従業地による都道府県別
  他多数

統計表は平成14年の報告書による



第44 就業看護師の年齢階級別状況 (PDF:91KB)

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