社保審―医療保険部会 資料7-2
第15回 (H17.5.25)


中医協の在り方に係る論点(たたき台)

 診療報酬改定に関する企画・立案の在り方との関係を含めた中医協の機能・役割の在り方について

【現状】

 ○  診療報酬とは、保険医療機関等が行う診療行為に対する対価として公的医療保険から支払われる報酬であり、
(1)  保険適用とする診療行為の範囲を定める「品目表」
(2)  保険適用とされた個々の診療行為の公定価格を定める「価格表」
としての性格を有する。

 このような診療報酬、薬価等については、厚生労働大臣が決定する権限を有しており、決定に当たっては、厚生労働大臣は中医協に諮問することとされている。

 ○  (1)「保険適用とする診療行為の範囲」については、診療報酬改定の際に、医療技術の進歩を踏まえつつ、中医協において、保険適用範囲の見直し(新規技術の保険適用等)について審議が行われている。

 なお、保険診療と保険外診療との併用の在り方について、「将来的な保険導入のための評価を行うものであるかどうか」の観点から現行制度を抜本的に見直し、保険導入のための評価を行うものを「保険導入検討医療(仮称)」と位置付け、保険導入手続の明確化を図ることとしている。

 ○  (2)「保険適用とされた個々の診療行為の公定価格」については、診療報酬改定の際に、予算編成過程において決定された改定率を前提として、中医協において、個別点数について審議が行われている。
 その際、改定年の前年12月には、4月頃からの議論を踏まえ、中医協において「診療報酬改定の基本方針」が取りまとめられ、これに沿って、個別点数について審議が行われる。

 ○  改定率は、医療費に係る予算編成の際の算定根拠となる係数であり、その決定は政府の権限である。
 一方で、個別点数の設定と改定率とは密接に関連するものであることから、中医協においては、全国の医療機関の平均的な収支状況等、物価・賃金の動向等のマクロの経済指標、保険財政の状況等を踏まえつつ、改定率についても議論を行い、年末の予算編成に向けて、議論の成果を「審議報告」として取りまとめている。

 例えば、平成16年度改定においては、支払側委員は現在の厳しい経済状況等を踏まえマイナス改定を主張し、診療側委員は医療安全等の観点からプラス改定を主張したが、公益委員による調整の結果、診療報酬±0%、薬価等▲1%の改定率とすべきことで合意がなされ、これが政府の予算編成過程においても認められた。
 平成14年度改定においては、中医協において「賃金・物価の動向や最近の厳しい経済動向、さらには、医療保険制度改革全体の流れの中で、改革の痛みを公平に分かち合うという観点からも、相応の見直しを行うべきである」との審議報告はまとめられたものの、改定率については意見の取りまとめに至らず、診療報酬▲1.3%、薬価等▲1.4%の改定率は、政府の予算編成過程において決定された。
 平成12年度改定においては、中医協において、審議報告も含めて取りまとめに至らず、診療報酬+1.9%、薬価等▲1.7%の改定率は、政府における予算編成過程において決定された。

【論点】

 
「保険適用とする診療行為の範囲」について
 我が国の医療の在り方といった大きな視点から考えていくべきであり、専門家による組織など、中医協の外で議論するべきではないか。  支払側委員と診療側委員とが公益委員の調整の下で合意を得ることを基本として考えていくべきであり、中医協で議論するべきではないか。
「保険適用とされた個々の診療行為の公定価格」の前提となる「基本方針」について
 「基本方針」には、(1)医療技術の適正な評価(ドクターフィー的要素)や医療機関のコストや機能等を適切に反映した総合的な評価(ホスピタルフィー的要素)といった診療報酬体系の在り方に係る基本的な方向性に係る視点のほか、(2)回復期リハビリテーション、救急医療、小児医療等に係る適切な評価など、どの領域の評価を充実するか、といった視点も含まれる。
 「基本方針」については、我が国の医療の在り方といった大きな視点から考えていくべきであり、社会保障審議会の医療保険部会など、中医協の外で議論するべきではないか。  「公定価格」のみならず、「基本方針」についても、中医協で議論するべきではないか。
予算編成過程における「改定率の決定」について
 政府の権限であり、中医協で議論する必要はないのではないか。  個別点数の設定と改定率とは密接に関連するものであることから、政府の権限であることを明確にしつつも、中医協において議論するべきではないか。
 中医協の機能・役割の在り方や三者構成を維持するかどうかとの関係も踏まえつつ、厚生労働大臣の権限と中医協の機能との関係についても、議論が必要ではないか。


 公益機能の強化について

【現状】

 ○  「支払側委員と診療側委員とが保険契約の両当事者として協議し、公益委員がこの両者を調整して合意を得る」という三者構成の中で、公益委員は、中立的な立場で、支払側委員及び診療側委員の意見を調整する役割を担っている。

 ○  「中央社会保険医療協議会の在り方の見直しについて」(平成16年10月27日中央社会保険医療協議会全員懇談会了解)においては、「中医協の中に、公益委員を中心として、診療報酬改定の結果の検証のための新たな部会を設置する」こととされている。

【論点】

 
 三者構成を維持する必要はないのではないか。

 例えば、介護報酬に係る厚生労働大臣の諮問機関である介護給付費分科会においては、三者構成は法定されていない。
 三者構成については、今後とも維持していくべきではないか。

 診療報酬においては、原則として、公的保険から現物給付されるサービスの対価のほかに、診療側がサービス利用者側に金銭的負担を求めることは認められておらず、その決定に当たっては保険契約の両当事者の合意を尊重すべきとの推定が働く。なお、介護報酬においては、公的保険から現金給付される額のほかに、サービス提供側がサービス利用者側に金銭的負担を求めることは認められている。
―――  三者構成を維持しつつ、公益委員の人数を増やすべきではないか。
―――  診療報酬改定の結果の検証の機能など、三者構成における調整機能のほかに、公益機能として位置付けるべき機能はないか。


 病院等多様な医療関係者の意見を反映できる委員構成の在り方について

【現状】

 ○  支払側委員8名、診療側委員8名、公益委員4名の合計20名で構成されている。

 ○  「社会保険医療協議会法」において、支払側委員及び診療側委員の任命は、各関係団体の推薦によることが規定されている。

[支払側委員の構成]
 社会保険庁1名(健保保険者)
 健康保険組合連合会1名(健保保険者)
 日本労働組合総連合会2名(健保被保険者)
 日本経済団体連合会1名(事業主)
 全日本海員組合1名(船保被保険者)
 日本船主協会1名(船舶所有者)
 国民健康保険中央会1名(国保保険者・被保険者)

[診療側委員の構成]
 日本医師会5名
 日本歯科医師会2名
 日本薬剤師会1名
 *  平成11年5月より、日本医師会の推薦する5名の委員のうち1名については、全日本病院協会の関係者を日本医師会が推薦している。

 ○  「社会保険医療協議会法」において、専門事項を審議するために必要があると認められる場合には、10名以内の専門委員を置くことができることが規定されている。

 現在、専門委員としては、老人診療報酬担当2名、薬価担当3名、保険医療材料担当3名、看護担当1名の合計9名を委嘱している。

【論点】

 
 支払側委員及び診療側委員に係る関係団体による推薦制を維持する必要はないのではないか。

 例えば、介護報酬に係る厚生労働大臣の諮問機関である介護給付費分科会においては、関係団体による推薦制は法定されていない。
 支払側委員及び診療側委員に係る関係団体による推薦制については、推薦制が三者構成と密接に関連するものであることを踏まえつつ、今後とも維持していくべきではないか。

 診療報酬においては、原則として、公的保険から現物給付されるサービスの対価のほかに、診療側がサービス利用者側に金銭的負担を求めることは認められておらず、その決定に当たっては保険契約の両当事者の合意を尊重すべきとの推定が働く。
 なお、介護報酬においては、公的保険から現金給付される額のほかに、サービス提供側がサービス利用者側に金銭的負担を求めることは認められている。
 診療側委員については、病院関係者の数が増えるよう、推薦制を維持する場合にあっては、病院関係団体に直接推薦依頼をすることを含めて、検討するべきではないか。  診療側委員については、日本医師会、日本歯科医師会及び日本薬剤師会がそれぞれ医師、歯科医師及び薬剤師の職能を代表しているものであり、現行のように、日本医師会が推薦する形による病院団体の代表の参加を継続するべきではないか。
 多様な医療関係者の意見を反映させるため、専門委員制度を活用してはどうか。  多様な医療関係者の意見を反映させるための手法としては、専門委員制度の活用だけではなく、審議の際に参考人として意見を聴取することも含めて検討してはどうか。

 現行の専門委員の中には、看護師のように職能を代表している委員と老人診療報酬、薬価及び保険医療材料のように専門的な分野を代表している委員とが混在しているのではないか。
 その他、委員構成について見直すべき事項はないか。


 委員の任期の在り方について

【現状】

 ○  中医協委員の任期については、「社会保険医療協議会法」により1期が2年とされており、また、各種審議会に共通のルールとして、閣議決定により10年を超える任命は行わないこととされている。

 ○  「中央社会保険医療協議会の在り方の見直しについて」(平成16年10月27日中央社会保険医療協議会全員懇談会了解)においては、「支払側委員及び診療側委員の在任期間については、各関係団体において、任期が6年を超えてからの新たな推薦は行わないことを基本として、厚生労働大臣に対し推薦を行うこととする」こととされている。

【論点】

 
 委員の任期が長すぎると、長い在任期間を持つ委員が、他の委員に勝る診療報酬に関する知識・経験を通じて、中医協における議論の方向性を事実上決定してしまうような事態が生じるのではないか。  診療報酬体系は専門的かつ複雑であり、委員の任期が短すぎると、診療報酬改定について実質的な議論ができなくなってしまうのではないか。


 診療報酬の決定手続の透明化及び事後評価の在り方について

【現状】

 ○  中医協においては、平成9年から会議を公開するとともに、「中央社会保険医療協議会の在り方の見直しについて」(平成16年10月27日中央社会保険医療協議会全員懇談会了解)を踏まえ、昨年から議事録を厚生労働省ホームページ上で公開している。

 ○  「中央社会保険医療協議会の在り方の見直しについて」(平成16年10月27日中央社会保険医療協議会全員懇談会了解)においては、「非公開の協議を行った場合には、公益委員から、協議の経過について、公開の場で報告する」こととされている。

 ○  平成15年に中医協の審議に資するためそれぞれ専門的な立場から調査を実施する「診療報酬調査専門組織」が設置され、客観的なデータの収集に着手している。

 ○  「中央社会保険医療協議会の在り方の見直しについて」(平成16年10月27日中央社会保険医療協議会全員懇談会了解)においては、「中医協の中に、公益委員を中心として、診療報酬改定の結果の検証のための新たな部会を設置する」こととされている。

【論点】

 
 中医協においては、審議過程の一層の透明化や客観的なデータに基づく議論の一層の推進が図られてきており、引き続きこのような取組を進めていくべきではないか。
 客観的なデータに基づく議論の推進のためにも、医療におけるIT化をより一層推進していくべきではないか。
 例えば、診療報酬改定の基礎となる社会医療診療行為別調査は、6月審査分のデータのみに基づくもの
 診療報酬点数について、中医協に諮問され、即日答申が行われるのは、不透明ではないか。中医協における審議の中で、国民の声をより一層反映させるための方策について検討するべきではないか。
 診療報酬改定の結果の検証を進めていくべきではないか。


 その他、医療の現場や患者等国民の声を反映する仕組みの在り方について

【現状】

 ○  「中央社会保険医療協議会の在り方の見直しについて」(平成16年10月27日中央社会保険医療協議会全員懇談会了解)においては、「中医協委員が国民の意見を聴く機会の設定の在り方について検討する」こととされている。

【論点】

 
 診療報酬改定に医療の現場や患者等国民の声をより適切に反映させるため、中医協委員が国民の意見を聴く機会を設定していくべきではないか。

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