へき地保健医療対策検討会 資料 1
第5回(H17.5.23)


野口参考人発表資料



へき地診療所における看護職の活動の実態と課題


I 常勤医師がいないへき地診療所看護職(92人)の活動の実態1

1.対象
平均年齢 45.6歳±9.4歳(最低年齢23歳、最高年齢79歳)
同居家族あり 89人(96.7%)
常勤 45人(49.0%)、非常勤 47人(51.0%)

図 通院患者の主な受診理由

1.看護職が捉えた地域に特徴的な健康問題
1位 生活習慣病が多い(高血圧、糖尿病、高脂血症等) 28件(30.4%)
2位 高齢者の問題(要介護になると在宅困難となり入所となる、老老介護の増加、健康管理困難、冬季の問題) 26件(28.3%)
3位 整形外科系疾患が多い 17件(18.5%)
4位 食生活に問題(塩分・カロリー・アルコールの過剰摂取、食事の偏り、食品保存に関わる習慣) 12件(13.0%)
5位 健康認識に問題あり(体調が悪くても限界まで頑張るという態度、薬への依存、健康問題に対する認識の低さ) 5件(5.4%)
6位 不安、不眠、うつ等精神的問題 4件(4.3%)
7位 救急時の対応、急患への対応 3件(3.3%)
8位 通院困難、負担大(遠い、通院手段がない) 2件(2.2%)

2.看護活動
 20項目に対し、5件法で問い、「大変よくあてはまる」「よくあてはまる」「ややあてはまる」と回答した人の割合
1位 往診や外来での診察の介助や処置 87人(94.7%)
2位 外来患者への日常生活指導 74人(80.4%)
3位 健康診断や予防接種、乳幼児健診時の介助 57人(62.0%)
4位 関係機関との連絡 54人(58.7%)
5位 要介護高齢者家族に対する助言 52人(56.5%)
5位 地域住民同士のネットワークや支え合い、人間関係を把握 52人(56.5%)
7位 医師不在時の応急処置や初期対応 48人(52.2%)
8位 要介護高齢者家族に対する介護方法の指導 47人(51.1%)
9位 健康面や生活面における電話相談 46人(50.0%)
10位 地域に必要とされる社会資源の把握 45人(48.9%)

3.看護活動における問題・困難感
 19項目に対し、4件法で問い、「かなり感じる」「少し感じる」と回答した人の割合
1位 研修研鑽の機会が不十分・最新情報の入手困難 61人(66.3%)
1位 担当・専門以外の仕事をしなければならない 61人(66.3%)
3位 設備や物品が不足している 59人(63.0%)
4位 看護活動に関して困った時に頼りにできる人がいない 45人(48.9%)
5位 職場の中で業務が明確にされていない 41人(44.6%)
6位 自分が行った援助内容を確認評価してもらう機会がない 40人(43.5%)
7位 休暇が思うようにとれない、休日・夜間に急に仕事が入る 40人(43.5%)
7位 相談できるバックアップ機関がない 39人(42.4%)
9位 看護に関するマニュアルや引継ぎが不十分 37人(40.2%)
10位 地域住民との付き合いが多い 30人(32.6%)

4.意見・感想
《地域の健康問題》
 ・人口の割合からみても糖尿病が増えている。
 ・生活習慣病が多い。
 ・内科の患者さんの中には薬が治療と思っていて、患者さんの言うとおりに処方し、12〜13剤になっている人がいる。
 ・農業・林業で腰痛、関節痛に苦しみながら働いている高齢者が多い。
 ・若い人が働きに出てしまっているので、具合が悪くてもがまんして受診がおくれる人が多い。
 ・そのような人に飲酒による食事の偏りがあったり、保存食による塩分の摂りすぎがみられる。
《看護師の役割や対応、他職種との連携》
 ・状況がよくない人に毎日電話して様子を聞いている。
 ・受診してこない人に電話し、又、診療所まで来ることができない人に出向いて検査し、医師に報告して処方してもらい薬を届けている。
 ・住民と医師のパイプ役に務めている。
 ・保健師と連携をとり、生活のこと、高齢者介護のことを、住民と共に考えている。
 ・高齢者の将来への不安や家族のことなど悩みに耳を傾けるようにしている。
《看護師の想い》
 ・住民とのコミュニケ−ションを大事にしたい。
 ・保健・医療・福祉との包括ケアに力を入れていきたい。
 ・へき地だからこそ、能力も人間性にも優れた看護職が必要だと痛感している。

II へき地における看護職の課題
 ・必要性をとらえ、又、住民からの求めに応じて、時と場所を問わず機会をとらえて行う健康相談、電話相談、生活指導、訪問看護、心の支援、又、薬や医療にたよる住民に対して予防意識を育む看護について
 ・医師不在時の定期処方薬の投与・救急対応について



1 自治医科大学看護学部(地域看護学)による「へき地診療所における看護活動の特徴」(平成15年)、並びに、「へき地診療所における看護活動の特性と課題〜へき地診療所全国調査報告〜」(平成16年)より

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