(資料2)

「今後の児童家庭相談体制のあり方に関する研究会」
質問票に対する回答(抜粋)


II 児童相談所と市町村との連携について
 市町村との連携(市町村への後方支援を含む)について、(1)具体的に取り組んでおられること(2)連携を推進・強化するための課題や提案があれば、回答して下さい。

 ((1)については、)市町村内の社会資源が活用できる程度であれば、市町村内の関係機関との連携で済ませている。
 ((2)については、)児童相談所が関わる必要がある事例については、児童相談所の都合に合わせて検討会を行っている。
 それぞれが把握している事例については、極力共有化を図るようにしているが、児童相談所に直接相談のある事例については、現在のところ児童相談所の判断で事例の紹介がある場合とない場合があるようである。そのために、一時保護された家族からの相談という事例があったときにその事例を把握していなかったために、児童相談所の指導に違和感を感じたことがある。

 ((1)については、)県が働きかけて行う定期相談、巡回相談に職員を派遣して、共同で相談を受けている。虐待防止ネットワークが設置されている市町村については、個別ケースの検討を市町村と協働して開催している改正児童福祉法施行に向けて、市町村と具体的に役割分担を検討している。
 ((2)については、)市町村が法改正の趣旨をしっかり認識し、市町村に課せられた役割をしっかり果たすよう、住民(国民)にPRする必要が有る。市町村が児童相談を受けるためのモデルケースを具体的に示す必要がある。要保護児童対策地域協議会の設置を強力に働きかける。財政的裏付けを明確に示してあげる。

 「市町村向け子どもの虐待対応マニュアル」を発行し、市町村職員と県職員を対象に研修を始めている。このマニュアルの中で、共同研究の成果のひとつであるサインズオブセイフティアプローチ(ターネルら、1999)を取り入れた「安全な養育のための評価と支援計画票p56〜57」が、児童相談所と市町村で共通に使えるアセスメントとプランニングの方法のひとつとして紹介されている。
 この書式はひとつの例であるが、児童虐待ケースの通告から終結まで、あるいは子どもの保護から見守りまで深刻度に応じたひろい対応に際して、児童相談所と市町村が共通に使えるケースマネージメントの方法が必要である。しかも、子どもの安全な養育を実現していくためには家族との協力が欠かせないので、家族のマイナス面と同時にプラス面を見ていきながら家族とともに支援計画を立てる手法が重要である。このような方法論を(例えばサインズオブセイフティアプローチをもとに、私たちが日本の現場で使えるように考案したツール類)を児相と市町村で共通にもつことが、連携体制作りと並行して必要であると思う。

 虐待相談の増加にともなって、市町村との連携は年々強化されつつある。しかし、市町村の相談体制は、格差があるため、連携の取り方は均一ではない。今年度は県として、児童相談のあり方検討委員会を設置し、「市町村児童相談対応の指針」を策定した。改正法の施行に向けて、各児童相談所ごとに市町村職員の研修を実施している。また、児童相談所の受理、処遇、診断の三会議に市町村職員を出席させている。市町村、特に町村においては、担当職員が児童以外の業務を担当していることが多く、今後相談体制を確立するためには、いかにして担当職員を確保するかということが最大の課題といえる。

 ((1)については、)現状では基本的にはケースを通して、ネットワーク会議での検討が主たる支援である。広域で実施される養成講座や現任職員の研修会の講師といったところだろうか。県では、新任児童相談担当者の連続研修会と、半年後のフォローアップ研修を実施する準備が進められている。児相として系統だった研修会が必要との議論もある。
 ((2)については、)支援の理論や方法といった共通の土台と専門性を維持するためのトレーニング共有する事が必要である。ただ現場を持たない機関の専門性は低下していくから、トレーニングをする機関や講師は支援の現場を持っている必要があると思う。また、市町村の相談支援の現場の直接の管理者の無理解による動き難さを耳にする。管理職教育も大切かと思われる(できれば専門職が望ましい)。こういった体制の上にしか連携というのは難しいと考える。

 ((2)については、)市町村でどこが、誰が窓口か明確にし、内外に明示する現状では4月からの法施行に対し、未確定や福祉部門、保健部門、社会福祉協議会等の外部機関を予定しているなどかなりの混乱状態にある。新制度定着に支障とならなければよいと思われる。
 同様の業務に関わる場合、同様の用語、様式、統計等で認識を共有する必要がある。現在、市町村と児童相談所等の県機関、市町村間で用語、様式、統計に互換性がない。
 県の福祉現場がどんどん縮小する中で、市町村に対し専門的支援を行うための水準維持は緊急の課題ではないかと思われる。具体的相談対応のできない県職員が、市町村に対し専門的な点で信頼を得るのは困難である。

 ((1)については、)児童相談所と連携して対応している全てのケースについて、年に1回、地区担当の児童福祉司と市の担当者により、現状および支援方針を確認するための会議を開催している。
 ((2)については、)「児童相談所の敷居が高い」というのが市の担当者としての正直な思いである。専門機関として市町村のスキルアップを図り、(良い意味で)市町村を上手く利用した方が、お互いにとって有益であると考える。
 市町村と児童相談所が、それぞれの持つ支援手段について、十分理解し合えていない状況があるのではないか。特に規模の大きな市の場合、組織が複雑で改正なども多いことから、市の窓口機関でさえ十分な情報収集ができていないと感じることも多くある。

 ((2)については、)今までの児童相談所機能の一部を移管して、通告受理や在宅児ケアを担うとなると、市町村側に、事務局機能と共に、事例対応(親面接・子どもの評価・ケアマネージなど)の中心となるSW技術職が不可欠である(組織化を担う中心は事務職も可、チーム員に保健師がいることも可)。

 SW機能を持つ家庭児童相談室が最適である(家庭児童相談室を持たない市もある)。だが、非常勤職だけの職場が多く(個人的判断になりやすい・組織対応に結び難い)、危機対応しにくく(危機に不在で、時間外勤務が難しく、カバーする人もいない)、継続援助しにくく(転職が多い)、関係機関への指導性も、責任を負えないことが多い。虐待は子どもの命や機関責任や司法が絡む事態があり、責任が非常に重いために、非常勤専門職だけでできる仕事ではない、SWの常勤配属が不可欠である。
 医療機関にとっては、市町村毎に機関名や窓口が異なると、窓口を捜すことは困難で、結果的に連携を諦めることにつながる。また、市町村毎に取組み差が大きいと、複雑すぎて、連携そのものを困難にする。市町村側の対応機関と、基本的役割を、国として決め、実行を確実にする必要がある。
 市町村は、設置者が異なる機関(都道府県・国・民間、児童相談所・保健所・医療機関など)への情報提供を拒み、連携し難いことが多い。情報交換についての法での保障や、関係者間のルール作りに国の指導が不可欠。
 一方で、市町村内では(職員の個人的交流を通して)個人情報が漏れやすく(それが近隣へ知られることにつながりやすく)、親が相談を躊躇し、家庭内情の開示を拒むことが(かなり)多い。このため、虐待相談がなりたたなくなることがしばしばあり、役所内での情報管理についてもルール整備が必要である。
 市町村は地域差・職員差が大きく、担当者の理解・知識・技術についての教育・養成が不可欠である。

 現在は、改正児童福祉法の内容を周知する活動にとどまっている。1月2月に全体の説明会及び研修会、3月には児童相談所別にワークショップを含む相談の実際をシミュレーションして行った。
 今後は、家族の見方、インテークの方法、協議会の活用の仕方等々、継続的に市町村職員への研修が必要ではないかということで、現在企画中である。
 連携強化のためには、基本的には市町村が、それなりの体制を整えて、自分たちでできることを明確にしていくこと、その上で児童相談所の業務を理解してもらうこと(相互に業務内容を理解し、共通認識を持っていること)が前提。それぞれの機関で担う役割が違うことを理解しないと、単なる依存になってしまう可能性もある。
 地域協議会などに積極的に参加したいとは思うが、それだけの余裕が児童相談所側にあるのかどうか気になるところである。緊急受理会議だからということで呼び出されることが多くなると、身動きがとれなくなりはしないか心配。市町村が一定の対応力を身につけてこそ、必要な事例での協力もスムーズにいくのではないだろうか。

 逆説的であるが、市町村との連携を強化するためには、児童相談所の専門性の強化が不可欠だと思っている。個別のケースのスーパーバイズ体制をどうするのかということもそうであり(困難ケースを自分でしっかり対応できる人でないと他人のケースのスーパーバイズはできない)、市町村の相談体制をどう作っていくかを考える際にも、市町村任せというわけにはいかないし、国が全部援助することもできないだろうから、結局体制作りについても児童相談所が一定の役割を果たす必要がある。体制づくりが進んでいない自治体にあっては、各児童相談所に「市町村相談体制強化担当」を置くぐらいでないといけないのではないかと思う。
 次に、具体的なケースの第1次的なケースのふりわけを誰がするかという問題である。今の現状をみると、多くの人が「困ったことがあれば警察」と考えていて数字にはあがってきていないものも含めて相当数については警察官に連絡がいっており、警察官が一定の振り分けをしている部分もあるとは思う。本当はこれもどうするのかという問題はあるが、これはおくとしても、児童福祉機関の中では、本来、いったんはひとつの機関を必ず経由するようにして、そこがふりわけをするのが望ましいと思うが、今回の改正ではこの点が不明確だと思う。本来は、児童相談所がふりわけを行うべきだと思う。

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