諸外国の労働時間制度の概要

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法定労働時間 (1) 法定労働時間の原則等
 1週40時間。使用者は、週40時間を超える労働に対して、当該労働者の通常の賃金率の1.5倍の率で割増賃金を支払うことが必要(公正労働基準法(Fair Labor Standards Act)第7条)。
(1) 法定労働時間の原則等
 労働者の労働日における労働時間は、8時間を超えてはならない(労働時間法(Arbeitszeitgesetz 1994。以下「法」という。)第3条)。
 なお、小売業の営業時間が、平日および土曜日は6時から20時までに制限され、日曜日は、駅のキオスク等を除き営業が禁止される(閉店法(Ladenschlussgesetz))。
(1) 法定労働時間の原則等
 1週35時間(労働法典(Code du Travail)L.212-1)。
(1) 法定労働時間の原則等
 使用者は、原則として、各労働者が任意の17週の期間(基準期間(reference period))を平均して各週48時間以上労働しないようにするため、あらゆる合理的な措置をとらなければならない(労働時間規則(Working Time Regulation 1998)第4条第1項、第2項)。
(2) 適用除外
 以下の職業・職種に属する者については、公正労働基準法第7条の適用が除外される(公正労働基準法第13条)。
(1) 管理職エグゼンプト、運用職エグゼンプト、専門職エグゼンプト(ホワイトカラー・エグゼンプション)
(2) 外勤営業職エグゼンプト((1)の「ホワイトカラー・エグゼンプション」に含める見解もある。)
(3) 季節的なレクリエーション事業所の被用者
(4) 農業、水産業の被用者
(5) 船員
(6) 自動車運送業、鉄道運送業、航空運輸業の被用者 等
(2) 適用除外
 以下の者については、労働時間規制の適用が除外される(法第18条第1項)。
(1) 事業所組織法(Betriebsverfassungs-gesetz)第5条第3項の管理的職員
(2) 公務機関の長及びその代理者、公務に従事する労働者で人事決定権限を有するもの
(3) 家政共同体において、その保護の下にある者と共同生活をし、この者を独自の責任で育児、介護又は看護する労働者
(4) 宗教施設で雇用される者
※ その他別の法律の適用がある者として、(i)18才未満の者(年少者労働保護法(Jungendarbeitsschutzgezetz)による)、(ii)船員(船員法(Seemannsgesetz)による)等(法第18条2項,3項、第20条、第21条)。
(2) 適用除外
ア 以下の職業・職種に属する者については、労働時間制度の適用が除外される。
(1) 土地の耕作、畜産、林業等(農事法典上の労働時間規制による)
(2) 海洋漁業、商船等の海上労働(海上労働法典等による)
(3) 国、地方公共団体、行政機関の公務(特別の身分規程による)
(4) 商業代理人(voyageurs,représentants et placiers)(判例、学説)
(5) 経営幹部職員(cadres dirigeants)(労働法典L.212-15-1) 等
(2) 適用除外
ア 軍隊・警察その他市民保護サービスの特定の活動に従事する者等は、規則による労働時間規制の適用が除外される。(規則第18条)
イ 幹部管理職(managing executive)、家族労働者(family workers)、宗教的儀式の司祭労働者の労働時間は測定対象外労働時間として、法定労働時間、休息・休日及び深夜労働の規定は適用されない(規則第20条第1項)。
ウ 家事使用人(domestic servant)には、法定労働時間、深夜労働の規定は適用されない(規則第19条)。
エ 労働者により署名された書面による個別的オプト・アウトの合意により、法定労働時間の規定の適用を排除することができる(規則第4条第1項)。
※ 個別的オプト・アウトの制度については、EU欧州委員会における改正労働時間指令の検討の中でも意見が対立している。
(3) 法定労働時間の特例
 小売業又はサービス業について、その労働者の通常賃金率が法定最低賃金率の1.5倍以上かつ賃金に占める歩合給の割合が5割以上の場合、割増賃金の支払いを要しない(公正労働基準法第7条(i))等、特定の業種、企業に関する法定労働時間の特例がある。
(3) 法定労働時間の特例
ア 緊急の場合及び非常の場合における一時的労働については、法定労働時間、深夜労働者の労働時間、休息・休日に関する規定を適用しないことができる(法第14条第1項)。
イ 比較的少数の労働者が、それが行われないと労働の成果に危険を及ぼし、又は著しい損害を及ぼす結果となり得るような労働に一時的に従事する場合又は研究及び教育の仕事、延期できない準備後始末運動並びに延期できない人の治療・介護等で、使用者の他の予防措置が期待できない場合には、法定労働時間、深夜労働者の労働時間、休息時間及び一部の日曜・祝日の休息に関する規定を適用しないことができる(法第14条第2項)。
(3) 法定労働時間の特例
ア 換算労働時間制度(heures d'équivalances)
 不活動時間を常態的に含む一定の職業及び職務に関して、法定労働時間(35時間)を上回る一定時間の勤務を法定労働時間に相当する勤務とみなす制度。
 法定労働時間に換算される労働時間は、一定の職業及び職務について、産業部門別労働協約・協定の締結を経たデクレ等によって定められる(労働法典L.212-4第4項)。
(1) 河川運輸(船上従業員):59時間28分
(2) 食品小売商店(販売員):42時間54分
(3) 守衛・監視企業:52時間39分
(4) ホテル、カフェ、レストラン調理人:44時間54分 等
イ 恒常的特例(dérogations permanentes)
 通常の労働時間の枠外で実施することが必要な、準備的又は補助的業務等については、デクレに基づき法定又は換算時間を超えて、1日10時間、1週48時間を上限として、1日につき30分から2時間の範囲で労働させることができる。当該労働時間については、割増賃金の支払い及び代償休日の付与の対象となる。
ウ 一時的特例(dérogations temporaires)
 急迫する事故の予防、救護措置の組織又は事故の修復のために、即時の実施が必要な緊急業務等については、デクレに基づき、法定又は換算時間を超える業務を命ずることができる。当該労働時間は、割増賃金の支払い及び代償休日の付与の対象となる。
(3) 法定労働時間の特例
ア (1)労働者が職場から遠く離れて暮らしている場合、(2)警備産業の場合、(3)役務又は生産の継続が必要な場合等には、基準期間を26週まで延長することができる(規則第21条)。なお、これらの場合には、休息・休日及び深夜労働の規制は適用されない。
イ 労働の編成に関する客観的で技術的な理由に基づいて労働協約又は労使協定が例外規定を置く場合には、基準期間を52週まで延長することができる(規則第23条b号)。
(4) 罰則・救済の方法
(1) 罰則・民事罰
ア 故意に違反した場合(40時間を超えて労働させた場合において割増賃金を支払わなかった場合)、1万ドル以下の罰金又は6か月以下の禁固に処せられる(公正労働基準法第15条、第16条)。
イ 再度又は故意の違反に対して、労働長官は、民事・刑事の責任に加えて、1万ドル以下の民事罰を科すことができる(公正労働基準法第16条(e))。
(2) 連邦労働省賃金・労働時間局による監督
(3) 民事訴訟
ア 被用者及び労働長官は当該被用者と「同様の立場にある他の被用者」のために訴訟を提起できる。
イ 使用者は、未払額に加えてそれと同額の附加賠償金(liquidated damages)を被用者に支払わなければならない(公正労働基準法第16条(b))。
(4) 将来の違反を禁ずる差止命令
 労働長官は、割増賃金規制等に係る将来の違反を差し止めるための訴訟を裁判所に提起することができる(公正労働基準法第17条)。
(4) 罰則・救済の方法
(1) 罰則
ア 法定労働時間を超えて労働させた場合、1万5,000ユーロ以下の過料が科される(法第22条)。
イ 小売業において、法定の営業時間を超えて労働させた場合には、2,500ユーロ以下の過料が科される(閉店法第24条第2項)。
ウ 当該行為を故意によって行い、それによって労働者の健康又は労働能力に危険を及ぼした場合等には、1年以下の自由刑又は180日数罰金以下の罰金が科される(法第23条、閉店法25条)。
(2) 州の労働保護監督官による監督
(3) 民事訴訟(労働裁判所による裁判)
(4) 罰則・救済の方法
(1) 罰則
 法定労働時間を超えて労働させた場合、第4種違警罪(contravention)としての罰金が適用される。
(2) 労働監督官による監督
(3) 民事訴訟(労働審判所による裁判)
(4) 罰則・救済の方法
(1) 罰則
ア 法定労働時間、深夜労働及び代償休息についての違反は犯罪を構成する(規則第28条、第29条)。
イ 規則上の権利を侵害された労働者は、権利行使が許されるべきであった日から3か月以内に、補償裁定を求めて雇用審判所(Employment Tribunal)に救済を申し立てることができる(規則第30条)。
(2) 安全衛生執行局又は地方行政機関は、法定労働時間、深夜労働等に関する規定を施行する(1974年職場等安全衛生法)。
(3) 民事訴訟等
ア 休息・休日、年次有給休暇の権利が侵害された場合には、雇用審判所(Employment Tribunals)に対する救済(賠償金)の申立て
イ 斡旋・調停・仲裁委員会(Advisory, Conciliation and Arbitration Service)に対する調停手続の依頼
時間外労働(割増賃金等) 「法定労働時間」の欄を参照。 「法定労働時間」及び「弾力的労働時間制度」の欄を参照。
割増賃金について、法令上の規定なし。
(1) 最長労働時間(durée maximale du travail)
ア 使用者は、1日について実労働時間10時間を超えて労働させてはならない(労働法典L.212-1第2項)。
※ この上限は、拡張適用される産業部門労働協約・労使協定又は企業・事業場協定により、12時間まで引き上げることができる(労働法典L.212-1等)。
イ 使用者は、1週について実労働時間48時間を超えて労働させてはならない。また、継続した12週間で平均した実労働時間が週44時間を超えてはならない(労働法典L.212-7)。
※ 継続12週平均の最長労働時間については、産業部門労働協約の締結に基づくデクレにより週平均46時間まで引き上げることができる(労働法典L.212-7)。
(2) 労働監督官の許可
ア 法定労働時間を超える労働をさせる場合には、使用者は、企業委員会又はこれがない場合は従業員代表に通知した後、労働監督官の許可を得なければならない。
イ デクレで定められた年間枠(contingent annuel d'heures supplémentaires)(180時間)内での超過時間労働の実施には、労働監督官の許可はに代えて通知で足りる(労働法典L.212-6)。
※ 拡張適用される産業部門労働協約・労使協定により、異なる年間枠を定めることができる。
(3) 割増賃金
 週35時間を超えて労働させた場合には、拡張適用される産業部門労働協約・労働協定によって定められる10%以上の割増率の割増賃金を支払わなければならない(労働法典L.212-5I)。
※ 拡張適用される産業部門労働協約、労働協定がない場合には、週35時間を超え週43時間以下の時間を労働させた場合には、25%の割増賃金を、それを超える部分については50%の割増賃金を支払わなければならない(労働法典L.212-5I)。
(4) 代償休日(repos compensateur obligatoire)
ア 従業員数21人以上の企業において、使用者は、労働者に対して、超過時間労働の年間枠の枠内で行われた週41時間を超える労働については超過労働時間の50%に相当する有給の代償休日を、請求権発生後、7・8月を除く2か月以内に、全日又は半日単位のうち労働者が希望する単位で付与しなければならない。
イ 従業員数20人以下の企業については、超過時間労働の年間枠を超えた部分の50%に相当する代償休日を付与しなければならない(以上、労働法典L.212-5-1)。
「法定労働時間」の欄を参照。
割増賃金について、法令上の規定なし。
弾力的労働時間制度 (1) 26週単位の変形制(公正労働基準法第7条(b)(1))
ア 労働協約により26週あたり1,040時間を上限として、特定の週に法定労働時間を超えても割増賃金の支払いを要しない。
 ただし、どの26週をとっても1,040時間以内であることが必要。
イ アにかかわらず、1日12時間、1週56時間を超える労働に対しては1.5倍の割増賃金を支払わなければならない。
ウ イを怠った場合又は26週について1,040時間を超えて労働させた場合は、26週の各々について1週40時間の規定が適用されることとなる。
(2) 52週単位の変形制(公正労働基準法第7条(b)(2))
ア 労働協約により、(1)52週について1,840時間以上2,080時間以下の時間、時間分の賃金が保障されること、(2)52週について2,080時間を超えた時間について1.5倍の割増賃金が支払われること、かつ、(3)2,240時間を超えて使用されないことが規定されている場合に、特定の週に法定労働時間を超えても割増賃金の支払いを要しない。
イ アにかかわらず、1日12時間、1週56時間を超える労働に対しては1.5倍の割増賃金を支払わなければならない。
ウ イを怠った場合又は52週について2,240時間を超えて労働させた場合は、52週の各々について1週40時間の規定が適用される。
(1) 6暦月又は24週以内の期間(調整期間)を平均して週日の労働時間が1日8時間を超えない場合に限り、1日10時間まで労働時間を延長することができる(法第3条)。
※ 労働協約又はこれに基づく事業所協定により、これより長い調整期間を設定することができる(法第7条第1項第1号b)。
 なお、法令上の制度ではないが、こうした長い調整期間の枠内で各労働者の労働時間を銀行口座のように記録・管理し、1日8時間を超える時間外労働を休暇で補償する労働時間口座(Arbeitszeitkonto)が普及している。
(2) (1)の特例として、労働協約又はこれに基づく事業所協定により、労働時間の中に常態としてかつ相当程度に手待又は呼出待機が含まれている場合には、(1)法定労働時間の規定(法第3条)及び1日8時間を超える深夜労働の禁止の規定(法第6条第2項)にかかわらず週日の労働時間を110時間を超えて延長でき(法第7条第1項)、(2)法定労働時間の規定(法第3条)、最低11時間の休息時間(法第5条第1項)及び原則として1日8時間を超える深夜労働の禁止(法6条2項)にもかかわらず、1日の労働時間を時間外労働の補償なしに8時間を超えて延長することができる(法7条2a項)。なお、(2)の場合には、当該労働者の個別の書面による同意も必要である(法第7条第7項)。
(3) 上記のほか、法令上の制度ではないが、コアタイムのないフレックスタイム制度である信頼労働時間制度(Vertrauensarbeitszeit)が、近年大企業の協約外職員を中心に普及し始めている。
(1) 年単位の変形労働時間制(modulation du temps de travail)
 使用者は、(1)拡張適用される産業部門労働協約・労使協定又は企業・事業場協約・協定を締結して、一定事項を記載すること、(2)労働時間が年間1,600時間を超えないこと(協約・協定によって年間1,600時間より低い上限時間を定めることも可。)、(3)1日及び1週単位の最長労働時間を遵守すること(労働時間が1日10時間以下、1週48時間以下、12週平均44時間以下であること)を要件として、1年単位の変形労働時間制を導入することができる(労働法典L.212-8)。
 この場合、当該協約・協定の範囲内でなされた労働時間は、法定労働時間(1週35時間)を超えている場合であっても、法定外労働時間とならない。
※ 使用者は、変形制のプログラムの実施前に、企業委員会又はこれがない場合には従業員代表委員の意見を聴取しなければならず、かつ、少なくとも年に1回はその実施状況報告書を企業委員会、これがない場合には従業員代表委員に通知しなければならない(労働法典L.212-8)。
(2) サイクル労働(cycles de travail)
 労働時間の配分がサイクル(数週単位の期間)ごとに同様の形で繰り返される労働について、(1)継続的に操業される企業において、(2)デクレで定められている場合、又は拡張適用される産業部門労働協約・労使協定若しくは企業・事業場協定の締結がなされた場合、サイクル労働を実施することができる(労働法典L.212-7-1)。
 この場合、労働サイクル期間を平均して週35時間を超える労働時間のみが超過労働時間とされる。ただし、1日及び1週単位の最長労働時間の規制(1日10時間以下、1週48時間以下、12週平均44時間以下)の適用は除外されない。
「法定労働時間」の欄を参照。
深夜労働 法令上の規定なし。 (1) 深夜労働(23時から6時まで。製パン・製菓は22時から5時まで)は、1日8時間を超えてはならない。1か月以内又は4週以内の期間を平均して週日の労働時間が1日当たり8時間を超えない場合、1日について10時間まで深夜労働の時間を延長できる(法第6条第2項)。
(2)ア 労働契約に調整規定がない場合、深夜労働に対しては、深夜労働時間分に相当する有給休暇の付与又は適当な率の割増賃金の支払が必要(法第6条第5項)。
イ 深夜労働者は、就業前及びその後3年以下の定期的な周期で、使用者の費用負担による労働医学上の検診を受ける権利を有する(50歳以上は1年の間隔)(法第6条第3項)。
ウ 使用者は、緊急の経営上の必要性に反しない限り、(1)深夜労働を継続した場合に健康に危険を及ぼすと医師が判断した場合、(2)12歳以下の子を有し、その育児を頼める同居者がいない場合等には、その請求により深夜労働者を昼間の職場に配転しなければならない(法第6条第4項)。
 深夜労働(21時から6時まで)は、労働者の安全や健康の保護の要請を考慮に入れ、かつ、経済活動や公共サービスの継続性を確保する必要性によって正当化される場合にのみ例外的に実施することができる(労働法典L.213-1条以下)。 (1) 深夜労働を含む労働時間は、17週の基準期間を平均して、24時間ごとに8時間を超えることはできない(規則第6条第1項)。なお、労働が特別な危険又は重度の肉体的精神的緊張を伴う場合には、基準期間による平均化は認められない(規則第6条第1項)。
 なお、深夜労働とは(1)7時間以上の労働であって、かつ、(2)(i)「適切な合意」により決定された午前零時から午前5時までを含む時間又は(ii)その特定がない場合は午後11時から午前6時までの時間に行われた労働のことをいう。
(2)ア 使用者は、深夜労働を命ずる場合、労働者に対して事前及び定期的な無料の健康審査の機会を提供しなければならない(規則第7条第1項)。
イ 深夜労働により生じ又は悪化した健康上の問題を抱えているとの診断が医療専門家によりなされた場合には、使用者は、昼間の仕事に配置転換しなければならない(規則第7条第6項)。
※ 労働協約又は労使協定により、深夜労働に関する規制の適用を修正、排除することが可能(規則第23条)。
休息・
休日
法令上の規定なし。 (1) 休息時間(Ruhezeit)
 労働者には、1日の労働時間の終了後に連続した11時間以上の休息時間が与えられなければならない(法第5条第1項)。
 (2) 日曜・祝日の休息
ア 原則として、労働者を、日曜及び法定祝日の零時から24時まで就労させてはならない(法第9条第1項)。
イ (1)緊急・救急隊及び消防隊における場合、(2)病院その他の人の治療、介護及び介助の施設における場合等については、平日に労働をすることが可能でない範囲において、日曜・祝日に就労させることができる(法第10条第1項)。
(1) 1日の休息時間(repos quotidien,repos journalier)
 使用者は、2労働日の間に少なくとも継続した11時間の休息時間を保障しなければならない(労働法典L.220-1)。
※ 業務の例外的増大がある場合、拡張適用される産業部門別労働協約・労使協定等において、1日の休息時間を9時間まで短縮する規定を置くことができる等の例外がある(労働法典L.220-1、D220-1等)。
(2) 週1週の休息時間(週休)(repos hebdomadaire)
(1) 使用者は、同一の労働者を1週につき6日を超えて労働させてはならない(労働法典L.221-2)。
(2) 週休は少なくとも継続する24時間((1)の休息時間11時間を加えて合計35時間)としなければならない(労働法典L.221-4)。
※ 救護、急迫する災害の予防、災害の復旧の場合の緊急労務など、労働法典に列挙された一定の場合には、週休が停止する等の例外がある(労働法典L.221-12等)。
※ 18才未満の若年労働者には、連続2日の週の休息時間を付与することが必要(労働法典L.221-4)。
(3) 日曜休日制
 週休は、原則として日曜日に与えなければならない(労働法典221-5)。
※ 即時に消費される食料品の製造、ホテル・レストラン業等法令により認められている業種(労働法典L.221-9〜)等については、日曜に労働させることが可能。
(1) 1日の休息時間(daily rest period)
 労働者には、24時間ごとに少なくとも11時間の連続した日ごとの休息時間が与えられなければならない(規則第10条)。
(2) 1週の休息時間(weekly rest period)
 労働者は、24時間以上の週ごとの休息時間の権利を有する。この時間は、14日の基準期間を平均して24時間であればよい。
※ 労働協約又は労使協定により、休息・休日に関する規制の適用を修正、排除することが可能(規則第23条)。
年次有給休暇 法令上の規定なし。 (1) 取得要件・付与日数
ア 労働関係の継続が6か月以上の労働者は、1暦年につき24日以上の有給休暇を取得する権利を有する(連邦休暇法(Bundesurlaubsgesetz)第3条第1項、第4条)。
イ 以下の場合には、労働者は継続勤務1か月当たり12分の1の有給休暇を取得する。
(1) 待機期間(6か月の労働関係の継続)が満了しないために当該暦年内に完全な休暇請求権を取得しない場合(法第5条第1項a)
(2) 労働者が待機期間満了前に当該労働関係から離脱した場合(この場合、休暇として取得することはできないが、弁償の権利が生じる。)(法第5条第1項b) 等
(2) 付与方法
ア 有給休暇の時期の確定に当たっては、労働者の希望が配慮される。ただし、差し迫った事業上の理由に抵触する場合又は他の労働者の有給休暇の希望があって、社会的観点から当該他の労働者の希望を優先させるべきときに当該者の有給休暇の取得と抵触する場合は、この限りではない(法第7条第1項)。
イ 有給休暇は、まとまって与えられる。ただし、差し迫った事業上又は労働者個人の理由により必要な場合は、有給休暇を分割することができる。この場合、労働者が12日を超える有給休暇の権利を有している場合、分割された有給休暇は少なくとも12日を連続させなければならない(法第7条第2項)。
(1) 取得要件・付与日数
 労働者には、(1)年休基準年度(6月1日〜翌年5月31日)の間に、同一の使用者の下で少なくとも実労働1か月に相当する期間(4週又は24週日)勤務した場合は、(2)1か月に相当する期間の継続勤務につき2.5労働日の有給休暇権が発生する(労働法典L.223-1、L.223-2)。
※ 労働者は、有給休暇権発生後、年休基準年度の終了を待たずに、年休を取得することができる。
※ 有給休暇権の合計は年間30労働日(5週)を超えることはできない。
(2) 付与方法
(1) 有給休暇の取得時期は、5月1日〜10月31日を含む期間で、(i)労働協約・労使協定により、又は(ii)これを欠く場合には企業委員会及び従業員代表委員と協議した後、慣習に従って、使用者が決定する(労働法典L.223-7)。
(2) 12労働日を超えない有給休暇は、継続して与えなければならない。ただし、継続して与えられる休暇の期間は24週日(4週間)を超えてはならない(労働法典L.223-8)。
(1) 取得要件・付与日数
 労働者は、年次休暇年に4週間の年次有給休暇を取る権利を有する(規則第13条第2項、第7項)。
(2) 付与方法
ア 年次有給休暇は、分割して取得することができる(規則第13条第9項)。
イ 年次有給休暇は、それが発生した年次休暇年内にのみ取得することが可能(規則第13条第9項)。年次休暇取得に当って、労働者は取得しようとする休暇期間の2倍の告知期間が必要である一方、使用者は休暇を禁じようとする休暇日数に相当する告知期間をもって、特定の日の休暇の取得を拒むことができる。また、休暇取得を禁止しようとする日数の2倍の長さの告知期間をもって、一定の日に休暇の取得をするよう労働者に求めることができる。
ウ 年次有給休暇を手当に置き換えることはできない(規則第13条第9項)。ただし、雇用の開始から付与された年次休暇をすべて取得せずに雇用を終了した場合、使用者は労働者に対して「適切な合意」による金員、適切な合意がない場合には休暇日分の賃金額を支払わなければならない(規則第14条第2項)。

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