今後の検討の進め方について(案)


 第41回労働政策審議会労働条件分科会において、事務局から中間取りまとめについて報告したところ、別紙のとおり意見が提出された。

 意見は、労働契約法制の在り方全体に関わるものから、個別的なものまで広範囲にわたるものであったが、いずれも労働関係の実情を踏まえた貴重なものであることから、今後の議論に当たっては、これらの意見も参考として、次のとおり検討することとしてはどうか。

(1)  今後、最終報告に向けて、それぞれの項目について、検討の方向性が既に示された案についての検討を深めるに際しては、その案の必要性や留意点についてもできる限り併せて検討する。
(2)  中間取りまとめにおいて検討の方向性が示されていない項目や、今後新たに検討する項目については、最終報告においてできる限り複数の案を取り上げ、それぞれの案のメリット、デメリットを示した上での検討結果を示すことを念頭において検討する。
(3)  審議会の意見のほかにも広く国民から意見を募集する予定であるが、各項目についての検討が一巡した段階で、それらの意見を参考にしつつ、労働契約法制の全体像や理念などの基本的な問題を掘り下げて検討する。



別紙
労働政策審議会労働条件分科会(平成17年5月10日)に
おいて出された本研究会中間取りまとめに関する意見の概要

 中間取りまとめの全般について
 労働契約法制の必要性の認識は一致している。しかし、中間取りまとめでは、雇用継続型契約変更制度のように二つの案が並列されている項目もあるが、方向性が断定的に示されているところが多い。
 研究会の報告はあくまで審議会での議論の参考にするというのであれば、最終報告では案を並列的に示し、また、こういう論点にはこういう案がある、この案を採ればこういうメリットがある、こういう方向に行くのであればこういう問題がある、といった書きぶりにして欲しい。
 審議会でいろいろな視点からの検討ができるように、研究会で議論を尽くして欲しい。(労働者側委員)

 労働契約法制はどの項目も重要であり、労使に与える影響が大きいので、研究会の場でもいろいろなケースを考えて現実に立脚した議論を尽くして、拙速を避けて欲しい。(使用者側委員)

 中間取りまとめの内容について
(労働契約法関係)
 労働契約法制についての具体的な要望としては、第一に、規制緩和の視点から労使自治を尊重し、現実にあったルールの設定をお願いしたい。第二に、労働契約法制であるので労使対等の考え方に立って労使双方の義務のバランスをとって欲しい。第三に、事前規制から事後的監視へという流れもあり、またあらかじめ予測できない事態が起こることもあるので、判例の法制化による規制の設定は必要最小限にとどめて欲しい。第四に、労使ともに使い勝手の良いシンプルでわかりやすい法律をお願いしたい。(使用者側委員)

 労働契約法制は企業の人事労務担当者にとっても、労働組合にとっても影響が大きい。労働契約法制全体の必要性と個別の項目の妥当性をよく議論する必要がある。個別の項目でいえば、各個別企業の労使で話し合って実施してきた昇進・昇格等の人事制度等は法制化になじむのかという感じがする。(使用者側委員)

 基準法における指針は意味があるとしても、民事法である労働契約法制において解雇についての指針がどういう意味を持ちうるのか。ルール化できるものについては、指針に委ねるのではなくできる限り実定法化してほしい。それが、透明・公正なルールの設定という要請に応えることになる。(労働者側委員)

(労使委員会関係)
 労使委員会が労働組合の権能を代替するような記述がなされているが、労使委員会で労使の対等性が確保できるのか。労使委員会は労使当事者が「実質的に対等な立場」で自主的な決定を行うことに資するという表現は不適切ではないか。労使委員会の設置により労使の対話を促進するのはよいが、労使委員会に強大な権限を与えることは適当ではないのではないか。(労働者側委員)
 労使委員会と労働組合の関係が不明確であり、現在ある労働組合の位置付けがどうなるかを明確にしなければいけない。(労働者側委員)
 労使委員会の委員の5分の4以上の多数による決議で就業規則の変更の合理性を推定するとしているが、これでは労使の対等性が確保できず、全会一致を原則とすべき。(労働者側委員)
 労使委員会が労働契約法制の一つのポイントとなる。労働組合の役員の選出に使用者が介入したら不当労働行為となるように、労使委員会についても不当労働行為的なものへの規制が必要ではないか。(労働者側委員)
 労使委員会をどう構成するかは労働契約法制の成否に関わる重要な問題である。労使委員会の手続をきちんと確保した上で内容は労使委員会に任せるという考え方に立てば、例えば労働委員会において労使委員会委員の選挙管理を行うことが考えられるのではないか。(公益委員)
 労使委員会により労働組合の意義が低下することは懸念材料ではあるが、一方、労使委員会の活用により未組織労働者の使用者との対等性をどこまで担保していけるかも重要な課題である。(労働者側委員)

(労働時間法制関係)
 労働時間法制についての記述がなぜ労働契約法制に係る研究会報告に出てくるのかわからない。労働時間法制は労働基準法で対応するはずのものであり、ここで方向を出すのは反対である。(労働者側委員)

(その他)
 労働契約法制については内容も広範にわたり、戦後労働法の大改定にかかわる重要な問題であるので、別途労働者側の意見を聴く場を設けてもらえないか。(労働者側委員)

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