第六次看護職員需給見通し策定方針


 需給見通し策定の必要性

 医療技術の進歩、患者の高齢化・重症化、在宅医療の推進等により、療養生活支援の専門家としての看護職員の役割はますます重要となっている。具体的には、看護職員には、複雑な医療機器を確実に操作・管理し、多種類の医薬品を誤りなく与薬し経過を緻密に観察するなど、正確かつ高度な知識・技術、判断が求められている。さらに、在院日数の短縮化と重症者割合の増加により、頻繁な入退院に伴う看護業務、医療処置や観察、患者・家族への療養生活指導、退院調整業務等が増加している。このように、看護業務は複雑多様化し、その業務密度は高まっている。
 一方、少子化に伴う18歳人口の減少等の傾向から、看護職員の養成数の増加に、今後、多くを期待することは困難な状況である。他方、資格を持ちながら看護職員としての業務に従事していない潜在看護職員数は約55万人と見込まれ、これは就業者数の4割強を超えることとなる。また、経営管理の観点から、必ずしも看護職員でなくてもよい業務に看護職員が従事している現状の改善が求められている。そのため、潜在看護職員の就業促進を一層図ること、また、看護補助者やその他の職種の登用や連携を図ることなど、効率的に人材の活用を図っていくことも必要である。
 このような中で、「医療提供体制の改革のビジョン(平成15年8月)」に沿って、医療安全の確保、適切な在宅医療の提供など、患者本位の質の高い医療サービスを実現するためには、上記の状況を踏まえ、時代の要請に応えられる看護職員を質・量ともに確保しなければならない。
 しかしながら、そのような看護政策の方向を考える上で重要な基礎資料である「看護職員の需給見通し」については、現行の見通しが平成17年末までであることから、平成18年以降についても、引き続き需給見通しを策定する必要がある。


 策定の方法

(1)  策定方針
 本策定方針及び調査票に沿って、各都道府県が調査を実施し、算定した需要数・供給数の積み上げを基に、厚生労働省が全国の需給見通しを積み上げ、「第六次看護職員需給見通しに関する検討会」において検討し、その結果を踏まえ、全国の需給見通しを決定する。
 また、国や各都道府県の保健医療福祉政策推進の観点から、需要については、望ましいと考えられる事項を提示した上で、各医療機関等の判断を踏まえ把握することを基本とする。供給については、現状及び今後の動向を踏まえて把握するが、その際、一定の政策効果も加味する。
 なお、算定に当たっては、看護職員全体を積み上げることとするが、助産業務については業務独占であることを踏まえ、助産師については別掲とする。

(2)  需要数の算定方法
 看護職員の就業場所別に必要数を推計する。
短期労働者(パート、アルバイト等)の算定方法については、実労働時間を踏まえて常勤職員数に換算する。

(3)  供給数の算定方法
 算定式は次のとおりとする。
 年当初就業者数+新卒就業者数+再就業者数−退職等による減少数
短期労働者(パート、アルバイト等)の算定方法については、実労働時間を踏まえて常勤職員数に換算する。

(4)  見通し期間
 平成18年から22年までとする(5年間)。

(5)  都道府県の需給見通し結果報告期限
 平成17年度から、各都道府県において調査に着手し、9月末までに集計のうえ、厚生労働省に提出する。


 各都道府県の調査方法

(1)  検討の場の設置
 各都道府県において、関係団体、有識者、住民代表等の参加協力を得て、需給見通しに係る検討の場を設置(既存の審議会等の活用を含む)する。

(2)  実態調査の実施方法
 各調査対象施設に調査表を送付し、各施設が現状及び今後の運営方針を踏まえて記入したものの集計を踏まえ、都道府県が取りまとめる。

(1)  以下の施設については、全数調査を基本とする。




病院、有床診療所、介護老人保健施設、訪問看護
ステーション、助産所、介護老人福祉施設、看護師等
学校養成所、保健所、市町村、その他行政機関





(2)  以下については、既存統計資料の活用又は抽出調査でも可とする。




無床診療所、介護保険関係施設・事業所(介護療養型
医療施設、介護老人保健施設、介護老人福祉施設を除く)、
社会福祉施設、事業所(行政機関を除く)、学校




 抽出調査の場合は、統計的に適正な抽出率を用いて算出する。

(3)  調査項目
 需給見通しに必要な基本的な調査項目に加え、看護職員の離職原因、今後の確保方針・方策、看護サービスの質の向上に向けた取組など、看護職員確保対策の参考となる調査項目も盛り込んだ調査表を基本とする。
 各都道府県においては、地域の特性を考慮し、独自の調査項目を追加する。


 需要数の算定

(1) 前提とされる勤務条件等(労働時間、休業・休暇、夜勤、研修)
(1) 労働時間
 所定労働時間、ただし、所定労働時間が週40時間を超える場合は、週40時間労働・週休2日制を基本とし、算定する。
 過大な時間外勤務がある場合には、その削減を目指して、必要な増員を考慮する。

(2) 産前・産後休業
 妊娠・出産した者全員が取得することを基本とし、算定する。
 休業した場合の代替職員の確保も見込む。

(3) 育児休業
 出産者全員が、子が1歳になるまでの休業を基本とするとともに、子が1歳6か月になるまで休業する者も適宜見込んで算定する。
 公務員の育児休業期間の延長も踏まえる。
 休業した場合の代替職員の確保も見込む。

(4) 介護休業
 実情を踏まえ算定する。
 休業した場合の代替職員の確保も見込む。

(5) 年次有給休暇
 法定休暇日数を消化することを基本とし、現状に対する改善を見込んで算定する。

(6) 夜勤体制
 複数夜勤を原則とし、医療密度の高い一般病床の場合は、3人以上の夜勤体制を基本として算定する。
 1人当たりの夜勤時間は、1月当たり64時間以内を基本とする。
 3交替の場合、1人月8日以内とする。
 2交替の場合、就労時間により適切な回数を見込む。

(7) 研修体制
 看護職員の研修に必要な人員(指導者、代替要員等)を適宜見込んで算定する。
 特に、新人看護職員研修については、新人看護職員研修指導指針・到達目標を踏まえ、適切な研修が行われるよう考慮する。

(8) 短期労働者の取扱い
 短期労働者(パート、アルバイト等)については、所定労働時間を基に常勤換算し、所定労働時間が週40時間を超える場合は週40時間勤務者を1人として算定する。

 なお、次世代育成行動計画を策定している施設については、その内容も考慮する。

(2) 病院(介護療養型医療施設は除く。)

(1) 病床数
 病床機能及び入院患者数の推移を考慮して算定する。
 病床過剰地域については、増床がないことを基本として算定する。
 病床非過剰地域については、必要病床の範囲内において、具体的に整備の計画がされているものを基本として算定する。
 今後の医療計画見直しの動向を考慮する。
 精神病床のあり方の検討結果をできる限り反映させる。

(2) 勤務場所の特性に対する配慮
病棟部門
 在院日数の短縮化による看護業務密度の高まりに対応した看護職員配置を見込んで算定する。
 ハイケアユニット入院医療管理料及び亜急性期入院医療管理料の導入等による需要の増加を考慮する。
 産科・産婦人科病棟においては、分娩件数、産前・産後のケア、育児不安への対応等を踏まえた助産師数を算定する。
 専門性の高い看護業務を担当する看護職員の配置を考慮する。

外来部門
 医療ニーズの高い外来患者や日帰り手術の増加、医療機関の機能分化の進展等による外来機能の変化を踏まえ算定する。
 産科・産婦人科には、産前・産後のケアを考慮し、助産師数を算定する。
 専門性の高い看護業務を担当する看護職員の配置を考慮する。

手術部門
 手術台1台につき、3人以上の配置を見込んで算定する。

中央材料部門
 1人以上の配置を見込んで算定する。

特殊診療部門
 ICU、CCU等1床につき、1人以上の配置を見込んで算定する。

訪問看護部門
 在宅療養の増加、在宅ケアの推進を見込んで算定する。

看護管理部門
 看護職員数に応じて、労務管理・研修企画などのマネージメント機能の強化を見込んで算定する。

病院管理部門
 病床規模に応じて、専任のリスクマネージャー及び感染管理担当者の配置など医療安全のための体制確保を見込んで算定する。
 退院調整担当者の配置など地域医療連携を図るための体制の確保を考慮する。

(3) 診療所(介護療養型医療施設は除く。)

有床診療所
 現状及び今後の動向を踏まえて算定する。
 特に、産科診療所においては、分娩件数、産前・産後のケアを踏まえた助産師数を見込む。
 なお、産婦が入院中の場合にあっては、必ず医師又は助産師が分娩に対応できる体制となるよう考慮する。

無床診療所
 現状及び今後の動向を踏まえて算定する。

(4) 助産所
 現状及び今後の動向を踏まえて算定する。

(5) 訪問看護ステーション
 在宅で終末期を迎える患者や在宅療養の精神障害者等、医療ニーズの高い在宅療養者の増加と今後の需要状況を踏まえて算定する。
 ゴールドプラン21以後の介護サービス基盤整備のあり方を踏まえた介護保険事業支援計画の見直しを考慮する。
 介護保険制度の見直し結果について考慮する。

(6) 介護保険関係(訪問看護ステーションを除く。)
 介護予防における医療と介護の連携、介護施設やグループホームにおける医療機能の強化など、介護保険制度の見直し結果を踏まえて算定する。
 ゴールドプラン21以後の介護サービス基盤整備のあり方を踏まえた介護保険事業支援計画の見直しを考慮する。

(1) 介護療養型医療施設

(2) 介護老人保健施設

(3) 介護老人福祉施設
 入所者の状態に応じ、夜間配置について見込んで算定する。

(4) 居宅サービス



デイサービス、デイケア、ショートステイ、グループホーム、
ケアハウス、在宅介護支援センター等




(7) (6)(3)、(4)以外の社会福祉施設及び在宅サービス



児童福祉施設、知的障害者援護施設、
精神障害者社会復帰施設、身体障害者更生援護施設




 現状及び今後の動向を踏まえて算定する。

(8) 看護師等学校養成所
 看護師等学校養成所の新設・廃止等の状況を踏まえて算定する。
 実習指導の充実を考慮する。

(9) 保健所・市町村
 現状及び今後の動向を踏まえて算定する。
 健康増進法の施行、介護保険制度及び保健事業の見直し、医療ニーズの高い在宅療養者の増加、医療保険制度改革等に伴う需要の増加を考慮する。

(10) 事業所、学校等
 現状及び今後の動向を踏まえて算定する。
 盲・聾・養護学校に1名以上の配置を基本とし算定する。
 健康増進法の施行等に伴う需要の増加を見込む。


 供給数の推計

(1) 新卒就業者数
 学校養成所の新設、廃止等の予定、学生・生徒の入卒状況、進学、就業動向を踏まえて算定する。
 新卒者の域外流出・流入については、厚生労働省から提示する入学卒業状況調査結果を考慮する。

(2) 再就業者数
 実態調査及びナースバンク等を通じて把握した再就業者数の現状及び今後の動向を踏まえて算定する。
 潜在看護職員(約55万人)の活用を図る。
 セカンドキャリア(定年や早期に退職したベテラン看護師がそれまでの経験を活かして医療、福祉・介護、地域活動分野等に就業)の活用についても考慮する。

(3) 退職等による減少数
 退職、他の都道府県への移動等による減少を踏まえて算定する。
 就業を継続できるような諸施策(次世代育成支援、医療安全の推進、再雇用制度、定年延長等)の効果を見込む。

トップへ