05/04/28 女性の坑内労働に係る専門家会合第3回議事録            第3回女性の坑内労働に係る専門家会合 1 日時: 平成17年4月28日(月)14:00〜16:00 2 場所: 厚生労働省 専用第20会議室 3 出席者:櫻井座長、鈴木委員、中窪委員、名古屋委員 ○座長  ただいまから、第3回「女性の坑内労働に係る専門家会合」を開催いたします。本日 は小畑委員、長井委員が欠席です。本日の議題は2つあり、「現地調査の状況について (追加)」と「報告書スケルトン案について」です。事務局から、資料の説明をお願い いたします。 ○事務局  本日ご欠席の委員から意見を頂戴しておりますが、これにつきましては、後ほど各項 目の議論をしていただく際に、こちらから若干補足する形でお伝えいたします。  資料の説明に入ります。本日は2つの資料を用意しております。資料1「坑内労働現 地調査(概要)」は、第2回の会合に提出したものに、一部記述を追加したものです。 資料2「女性の坑内労働に係る専門家会合報告書スケルトン案」は、前回までに議論し ていただいたことを基に作成したものです。  資料1ですが、前回の会合の際に、5カ所の現地調査についてご報告いたしました。 その後、追加的な調査として、山岳工法の小断面のトンネルに調査を行っております。 それで概要資料に追加する形で作っております。追加したところだけご説明いたしま す。  先にA3判の真ん中よりちょっと右側の「D農業用水路」と書いてある所が追加調査 を行った所です。規模としては小断面で、断面積が7.0平方メートル、直径が2.7mぐら いですので、かなり小さなトンネルです。掘削方法は機械掘削です。従事する業務内容 は、現場作業員については、トンネル掘削がインバート工や支保工の据付作業、コンク リートの吹付、配管延長等々となっております。管理監督者の業務については、施工・ 工程・安全・品質・環境管理、測量、材料の検証等となっております。内容自体は、大 規模のものと大差ないということになっております。1日の平均入坑時間については、 大体8〜9時間です。  このトンネル工事のリスクファクターについて挙げていただきましたのは、切羽の崩 壊、鋼製支保工の転倒、粉じん(吹付けコンクリートのものも含む)、バッテリーロコ の運行、夏場の高温、狭い場所での重機作業などとなっております。  坑内での筋肉労働の内容ですが、資材の積み下ろし、支保工の据付け、コンクリート の吹付け、これは吹付けロボットではなく、手で持って吹き付けるということです。各 種の配管延長、軌道の延長となっております。大きな断面のトンネルよりもかなり多い 形になっております。  女性を坑内労働に従事させる場合に配慮していくべきと考える事項として、妊産婦の 坑内労働は規制すべきである。重機の操作以外は、筋肉労働が必要となる。トイレや宿 舎の設置について配慮が必要という意見をいただいております。  その他として、労働者以外、発注者や地元住民の見学会が行われており、その場合に 女性が参加していることがあるということでした。  資料1の1(2)「山岳工法」に後半部分として、農業用水路について記述を追加し ております。内容としては、D水路においても掘削は機械化されているが、その他の作 業、支保工の据付け、軌道の延長といったことについては、坑内が狭いので重機を搬入 できないため、人力による作業が主体となるというものです。  視察時は、たまたまコンクリートの吹付作業を行っていたため、相当量の粉じんが舞 っている状態でした。これは、白くなるぐらい舞っている状態でしたが、それ以外の坑 内の空気は清浄でした。その粉じんについては、以前に行った大断面のC高速道路と同 様ですが、防じんマスクで対応が図られていた、ということでまとめております。以上 が、資料1の現地調査の概要についてのご説明です。  次は、資料2スケルトン案についてですが、こちらでは5項目立てております。1番 は「はじめに」、2番は「坑内労働の概況と特徴」。3頁からの3番は、「坑内労働に 係る規制について」ということで、国内と海外の状況について記述しております。7頁 からの4番では、「女性の肉体的・生理的特殊性と坑内労働との関係」について記述し ております。8頁の下のほうで5として、「坑内労働に係る規制の課題」ということで まとめとしております。このような項目立てにしておりますが、「はじめに」からご説 明いたします。  「はじめに」では、今回の検討の経緯を記述しております。1ポツは、規制の経緯に ついて書いておりますが、後ほど出てまいりますので省略させていただきます。  2ポツは、昨年9月から男女雇用機会均等の更なる推進について、労働政策審議会に おいて検討が行われていること、またこのような中で女性の坑内労働に関して、女性技 術者が監督業務等に従事できるようにするなどの規制の見直しが要望されている、とい うことを述べております。3ポツは、こうしたことを踏まえて、当専門家会合は、女性 の坑内労働の規制のあり方について、坑内労働の作業対応や、女性の健康に与える影響 などについて、専門的見地から検討を行ったものであるとしております。  2番の「坑内労働の概況と特徴」の(1)では、坑内労働の概況について述べており ます。(1)は鉱山です。鉱山における坑内労働について、昭和39年と平成15年を比較す ると、鉱山の数で4分の1、鉱山労働者数で約20分の1に減っている、また坑内労働を 行う者の数も大きく減少している、現在稼行している主な坑内掘り鉱山は19カ所であ る、鉱山の採掘法については、切羽内での掘削、運搬機器の発達等により、筋肉労働の 比率は低下しているということを記述しております。  (2)は、ずい道工事等、鉱山以外における坑内労働の記述です。ずい道工事等用途別 に見ると、道路41%、鉄道24%、水路21%などとなっていて、これら3つで全体の8割 以上を占めています。  2ポツは、建設業に従事する労働者のうち、坑内労働に従事する労働者の数について は、統計的なデータはありませんが、今後も引き続き一定数が従事すると見込まれると いうことを書いております。  施工法については、山岳工法が44%、シールド工法が28%等となっております。ずい 道工事等においても、NATMやシールド工法といった施工方法の進化・発展など技術 の向上、機械化の進展などにより、筋肉労働の比率は低下していると述べております。  (2)坑内労働の特徴と労働災害の状況の(1)として、坑内労働の特徴についてまと めております。こちらでは、鉱山とずい道に共通して見られる特徴と、鉱山に見られる 特徴に分けて書いてあります。鉱山やずい道に共通に見られる特徴として、ほかの作業 場に比べ、自然環境に左右される面が大きい。地層によってはガスや地下水の流出、落 盤などの可能性があるとしております。また、断面の大小や、工法の違いによって、坑 内環境や機械化が可能な範囲が異なってくる。さらに、坑内での作業は重機を用いたも のがほとんどであるけれども、小断面になると重機が入らないため、支保工の組立てな ど人力による作業が必要となるとしております。  鉱山のほうに見られる特徴として、特に石炭鉱山においては、可燃性ガスが発生して いることもあり、ガスの検知器など、さまざまな装備を装着した上での作業になる。金 属鉱山の中には、岩盤が非常に高温であって、作業環境が厳しい鉱山もあるとしており ます。  (2)は労働災害の状況を記述しております。近年のずい道新設事業及び鉱業における 労働災害の発生率は、産業平均よりは高いものの、昭和30年代、昭和40年代に比べて大 幅に減少しております。  3「坑内労働に係る規制について」は、第2回までに提出いたしました資料と、その 後入手できた範囲の情報も含めて記述しております。(1)は我が国における坑内労働 規制についてです。(1)は坑内労働に係る女性に特有の規制についてです。(ア)は現 行規制で、労基法第64条の2について書いております。女性一般の坑内労働を原則とし て禁止しており、例外的に医師・看護師、取材、自然科学研究について、臨時的入坑の みを許容している、なお、坑内の施設の状況などが、妊産婦の身体の安全・衛生にとっ て好ましくないと考えられるので、母性保護の観点から、妊婦と産後1年以内であって 申し出た者については例外も認められない、と現行規制を書いております。  (イ)では、過去の経緯について記述を置いております。1つ目は、労基法の制定ま での経緯です。1ポツは、現在の労基法第64条の2の前身に当たる規定が、鉱夫労役扶 助規則に挿入されたのですが、その規定が置かれる昭和3年までは、多くの女性が鉱山 の坑内労働で働いていました。大正11年ごろの記録によると、20万5千人ぐらいいる坑 内労働者のうち、女性が5万5千人を占めていたとしております。  しかし、当時の鉱山における坑内労働の内容は、つるはし、スラ、カゴ、炭車などを 使い、人力による筋肉労働が主である大変厳しい作業条件であったと述べています。鉱 夫労役扶助規則の規制は、そのような厳しい作業条件の下で、法令により一定水準の保 護を確保しよう、という意図があったとされております。  しかし、その後制限が緩和されていき、戦中は特例によって女性の坑内労働も認める こととされた。戦後、この特例は廃止され、昭和22年の労基法制定時においては、特殊 な作業環境による風紀上の問題も指摘され、肉体的・生理的に特殊性を持つ女性につい て、適当な労働とはいえないとの考え方に立って、女性の就業が全面的に禁止されまし た。  次のところでは、ILO条約について述べておりますが、我が国は昭和31年にILO 第45号条約を批准しているということを書いております。  4頁では、規制の見直しについて記述しております。1975年の国際婦人年以降、男女 の機会均等に際して、妊娠・出産以外の女性保護規定は、むしろ男女の機会均等を阻害 するものであるとの考え方が一般的となって、1979年に国連総会で、女子差別撤廃条約 が採択されましたが、その中でこうした考え方が明確にされました。  我が国においても、この条約の批准のために、雇用の分野における法整備を検討し、 昭和59年に、当時の婦人少年問題審議会の建議があり、その建議の中で公労使一致した 見解として、一時的に入坑する者等、我が国が既に批准しているILO第45号条約にお いて、入坑の認められている者については、禁止を解除することとされております。  当時、特に要請の強かった医師・看護師の業務、それから取材の業務については臨時 的に入坑できるよう例外規定が設けられた、ということを記述しております。さらに平 成6年にも、臨時の場合に高度の科学的な知識を必要とする自然科学研究の業務に従事 する女性については入坑することができるとされました。  なお、労働基準法においては、女性の坑内労働の規制のほかに、女性保護規制とし て、女性に対する時間外、休日労働、深夜業の規制が設けられていました。しかし、先 に述べたような機会均等といった考え方に沿い、平成9年の改正時に廃止されたことを 書いております。  (2)は、坑内労働に係る男女共通の規制について書いております。昭和22年に労働基 準法が制定され、労働時間についても1日8時間までとされ、安全衛生関係の規定も置 かれました。その後、鉱山保安法、じん肺法、安全衛生法などの制定がなされ、それぞ れその後充実が図られてきていると述べております。  (3)は、坑内労働以外の労働にも適用される、女性特有の規制について記述しており ます。これは母性保護の見地から、労基法第64条の3が、妊産婦の妊娠・出産・保育等 に有害な業務への就業を制限していること。そのうち、女性の妊娠及び出産に係る機能 に有害な業務として、重量物を取り扱う業務、有害ガス等が発散する場所における業務 への就業も制限していることを述べています。なお、この規制については、女性労働者 が坑内に入るという場面においても適用される、ということを書いております。  (2)は諸外国における坑内労働規制の状況です。諸外国の状況について、ILO、 EU、イギリス、オランダなどの各国に対し、文献調査とヒアリングを行ったところ、 以下の情報が得られました。  (1)は、ILO第45号条約についてまとめております。ILO第45号条約は、年齢の 如何を問わず、女性の鉱山における坑内作業を禁止しており、例外的に、管理の地位に あって、筋肉労働をしない場合、保健及び福祉の業務、実習の訓練を受けている場合、 筋肉労働の性格を有しない職業のため随時坑内に入る必要がある場合について、入坑を 許容しているとしております。  ILOが、こうした条約を制定した意義として、安全・衛生上の理由とされており、 鉱山の坑内労働は最も困難な労働の一つであって、このような著しく過酷な条件から女 性を保護するために設けているものであるとされています。それがゆえに、筋肉労働を 行わない作業に女性が就労することが可能となるように例外が設けられているというこ とを書いております。なお、この条約については、鉱山における坑内労働を対象として いるものであって、ずい道工事等、鉱山以外の坑内労働については対象外となっている ことを述べています。  調査対象国中、現在ILO第45号条約を批准している国はフランスとドイツです。批 准していない国は、イギリス、オランダ、フィンランド、アメリカとなっていることを 述べています。  (2)は、諸外国における規制の概況です。鉱山以外の坑内労働について、女性の就業 を規制している国はないとしております。鉱山については、フランスとドイツは女性の 就業を規制しています。イギリス、オランダ、フィンランド、アメリカは規制がないと しております。かつては、鉱山における坑内労働は非常に危険な重労働であって、この ような労働は女性には適さないということで、多くの国で規制が置かれてきました。し かしながら、国際婦人年以降、雇用における男女の均等な機会の確保の観点から、女性 保護規制を見直す動きが活発になってきています。そういったことから、調査対象でも ありましたイギリス、オランダ、フィンランドなども含め、各国においてILO第45号 条約の廃棄や国内規制の撤廃が行われているとしております。  (3)は、各国における規制の考え方についてです。調査対象国に、坑内労働が女性に 与える影響等についての科学的知見について、政府の報告書があるかどうか照会したと ころ、「ない」又は「存在を確認できない」という回答でありました。実際に女性が坑 内で働いているアメリカの担当者によれば、女性が坑内労働を行うことに関して問題は 生じていないという回答があったと書いております。  条約を廃棄し、国内規制を改正した国について、その理由として、機会均等の観点か ら、安全技術が向上し、労働環境が改善した。さらに坑内で男女がさらされるリスクは 同様である、といったことが回答の中に挙げられていました。なお、これらの規制を撤 廃した国についても、妊娠中や授乳期の女性労働者を保護するための規制は設けている ということを書いております。  女性の坑内労働の実態については、統計的なものはなかなか得られなかったけれど も、イギリスとオランダについては、坑内労働に従事する女性はほとんどいない。フィ ンランドについては、鉱山、採石場などに働く労働者のうち、約1割が女性である。ア メリカについては、鉱山における坑内労働者の5%から10%が女性であるという情報が あったと書いてあります。  (4)は、国際機関の動向です。1つ目は、ILOの動向です。第45号条約については 84カ国が批准している。一方、ILOの理事会の法令問題及び国際労働基準委員会があ り、基準の見直しに係る作業部会報告を1996年にまとめておりますが、この報告では第 45号条約について、この条約を公式に改定した条約ではないけれども、新たな条約であ る第176号条約、「鉱山における安全及び健康に関する条約」を批准することを推進し、 併せて古い条約は廃棄することを勧めています。  考え方として、就労禁止は古いアプローチであり、新たな基準のほうはリスク評価と リスク管理に標準を合わせ、地上・地下を問わず、性を問わず保護・防止策を提供する ものである、ということを記述しております。  EUの動向としては、欧州委員会が、オーストリア政府を、均等待遇指令に違反して いると言って提訴したことを記述しております。オーストリア政府の反論は、運動器官 系への負担、粉じん、窒素酸化物、一酸化炭素といった要因や、温度、湿度といった環 境があります。女性について、筋力や肺活量、酸素吸入量等々についての男性との差が ある、ということを理由に反論していました。  判決としては、均等待遇指令は、男女が同様にさらされ、かつ女性特有の保護の必要 性とは無関係な危険から、女性をより保護すべきだとの理由のみにより、特定の種類の 雇用から女性を除外することを許容していないという判断が1つです。さらに、オース トリア政府としては、指令に違反しないためにILO第45号条約を廃棄することが求め られる。しかしながら、直近の廃棄の機会の時点では、いまだ均等逮遇指令違反か否か が明確ではなかった。したがって、加盟国としての義務を果たさなかったとはいえない という判決が出ている、ということを記述しております。  4「女性の肉体的・生理的特殊性と、坑内労働との関係」について、当専門家会合に おいては、以上のようなことを踏まえて、女性の肉体的・生理的特殊性と、坑内労働と の関係について専門的見地から検討を加えたところ、以下のような結論が得られた、と しております。  坑内労働の主なリスク要因として、典型的には落石、落盤、出水、ガス爆発等が挙げ られるが、これらは男女双方が等しく遭遇しうるリスクであり、その防止のための措置 は法令等において規定された結果、労災が減少していると述べています。  特に、男性に比べて女性に対して影響を与える可能性が高いと推測されるリスク要因 として3つ挙げております。(1)は有害化学物質等による影響、(2)は高温、気圧、粉じ んなどによる影響、(3)はこれら2つと筋肉労働が重なったことによる影響が考えられ るとして、以下それぞれについて記述しております。  (1)の化学物質については、女性に対する影響が男性に比べて強い場合があるが、労 基法第64条の3により、妊娠及び出産に係る機能に有害な化学物質等が発散している場 所における業務は、坑内・坑外を問わず規制されている。このリスク要因について、坑 内労働に特有の問題として考慮する必要はないと考えられる、ということを記述してお ります。  (2)は、高温、気圧、粉じんなどについてです。熱や気圧が女性により高い負荷を与 える可能性や、粉じんについてより低い濃度で女性にじん肺が起こる可能性について は、現段階では完全には否定できないとし、その次に現在の法制上、労基法第64条の3 により、高熱や異常気圧の下での業務については、妊婦及び産後1年を経過しない女性 については規制が置かれているところであるが、妊産婦以外の女性については特段の規 制は設けられていない。また粉じんについては、鉛など有害物の粉じんを除いて、妊産 婦も含め、女性全般について規制は設けられていないことに触れ、これまで坑内労働以 外の業務で、こうした作業の女性の就労が認められているけれども、これらについて女 性の健康や安全面で、男性と比較して特別に問題が生じるとの明らかな知見は得られて いないということを述べています。  一方、このように既に女性の就労が認められている坑内労働以外の労働に比べて、仮 に坑内労働の安全衛生管理の水準が劣っていれば、その違いが女性に特有の問題を招く 可能性も残るとしております。その上で、しかし現行の労働安全衛生法令などの下で、 熱についてはクーラー、風管の設置などにより、また粉じんについても散水、風管の設 置、マスクの装着等により管理がなされているところである。実際、ずい道工事等にお けるじん肺の新規有所見者数は大きく減少し、年間数件となっている。これらの管理が 適切になされていれば、通常女性が熱による健康障害やじん肺を発症することは想定さ れないとしております。気圧については、最近ではシールド工法以外でも、圧気工法は 一部を除いてほとんど採用されていないため、リスク要因自体が格段に少なくなってき ている、ということを記述しております。  (3)は要因が重なった場合ということです。これについては、熱、気圧、粉じんなど による負荷と、筋肉労働による負荷と筋肉労働による負荷が、男性と比べて女性により 高い負荷を与える可能性は完全には否定できないとしております。しかし、女性の坑内 労働が禁止され、第45号条約が採択された当時のような筋肉労働は、今日では存在して いない。機械化や工法の進展により、坑内労働で想定すべき作業は、重機操作が主なも のとなっている。若干ありうる筋肉労働といっても、坑内作業にのみ特殊であるとはい えないような内容になっている。  また、労基法第64条の3により、重量物の取扱い業務については、女性に規制があ る。さらに(1)や(2)で記載したように、安全衛生法令等の規制もあり、作業環境の水準 自体が向上している。こうしたことを考慮すれば、これを理由としてその他の労働との 間に特段の区別を設ける必要はないと考えられる、という記述をしております。  最後にまとめとして、以上から総じて坑内労働については自然環境に左右される面が あるが、作業環境及び作業対応は施工技術の進歩や法規制の充実等に伴い、格段に高い 安全衛生が図られるようになってきている。それが守られている状態を前提とすれば、 現在では女性の就労を一律に排除しなければならない事情は乏しくなってきているので はないかとしております。  その上で、ただし妊産婦については、入昇坑時に時間を要するなどの特殊性もあり、 坑内の施設の状況等が妊産婦の安全衛生にとって好ましくないと考えられるので、母性 保護の観点から十分な配慮が必要なのではないかとしております。  5「坑内労働に係る規制の課題」についてですが、1つ目に男女雇用機会均等法が施 行されて20年を経て、女性がさまざまな職域に進出している。従来女性労働者があまり 多いとはいえなかった、いわゆる技術系の職場にも女性の進出が予想される、というこ とを述べております。  女性が、意欲・能力に応じて幅広い職業分野に進出しようとする際に、合理的理由の なくなった特別措置を存続させることは、女性の保護というよりは、かえって女性の職 業選択の幅を狭める結果となる。今般の検討結果を踏まえ、女性の坑内労働に係る規制 のあり方の検討に当たっては、適切な対応措置を講じることが望まれる、という記述に しております。  以上、スケルトン案のご説明とさせていただきます。 ○座長  現地調査の状況についての追加資料についての説明と、報告書スケルトン案の説明を していただきましたが、まず現地調査の状況の追加資料についてご意見、ご質問があり ましたらお願いいたします。 ○委員  1つ教えてほしいのですが、たぶんこれは坑内が小さいと思うのです。そうすると、 風管の設置というのは吹き出しですか、吸い出しでしたか。 ○事務局  坑内の空気を吸って、坑外に出すという形式をとっていました。 ○委員  風管の大きさや風量はわかりますか。 ○事務局  風管は、400mm径とお聞きましたが、風量はわかりません。 ○座長  ほかにないようでしたら、報告書スケルトン案についてご議論いただきます。項目ご とに順を追って議論する予定ですが、まず全体的に何かありますか。                 (特に発言なし) ○座長  ないようですので、それぞれの項目について議論していただきます。1頁の1「はじ めに」についてはいかがでしょうか。                 (特に発言なし) ○座長  1頁から2頁にかけて、2「坑内労働の概況と特徴」はいかがですか。 ○委員  2頁の(2)の(1)の坑内労働の特徴の鉱山・ずい道に共通に見られる特徴のところ で、「他の作業場における労働と比べ、自然環境に左右される面が大きい」とあります が、この場合の「自然環境」というのは地質とか地熱ということなのですか。雨や風と いう感じがするのですが、それとは違うのですね。 ○事務局  はい。地盤の特徴などを想定しております。 ○事務局  ご質問の趣旨は、そういう例示を入れたほうがより理解が進みますよ、ということで しょうか。 ○委員  文章にするときに、「自然環境」という言葉の意味がはっきりわかるような書き方を していただければということです。 ○座長  もう少し適切な表現がありそうな気がするけれども、ちょっとパッと浮かんで来ない ですね。私は、意味はわかりましたけれども、そういうふうに受け取れる面もありま す。その下に書いてある、ガスや地下水の流出、落盤ということを想定しているという ことなのです。 ○委員  「地質等の自然条件」ぐらいでどうですか。 ○委員  「自然条件」のほうがいいですね。 ○事務局  「地質等の自然条件」ですね、ありがとうございます。 ○座長  考えてみると、屋外労働も非常に自然環境にさらされますから、いまおっしゃられた 「地質等の自然条件」のほうがいいと思いますので、それでよくご検討ください。1頁 のいちばん下のポツの「切羽内での掘削・運搬機器の発達等により」というのはちょっ と違和感があります。「切羽内での掘削工法の発達」という意味でしょうか。 ○事務局  掘削機器までかけていたつもりでしたか。 ○委員  掘削する機械も進んでいますし、運搬する機械も進んでいます、2つとも飛躍的に進 んでいます。 ○座長  そうすると、「切羽内での」というのは要らないですね。それは切ってしまって、 「掘削・運搬機器の発達等により」としたらどうでしょうか。 ○委員  坑外でも一緒です。 ○座長  ほかにないようでしたら、3頁の3「坑内労働に係る規制について」ですが、ここは いままでの状況を書いていただいているのですが、何かお気づきの点はありますか。 ○委員  基本的にはよく書かれていると思います。3頁の下から8、9行目ぐらいに、労働基 準法が作られたときの理由が書かれています。こういうことに加えてILO条約で禁止 されている、ということが立法のときには随分考慮されていたのではないかと思いま す。順番としては後ろに出てきますが、そういうのがあったということを書いておいた ほうがいいかという気がいたします。 ○座長  ILO条約そのものはすぐ下に書いてあるように、1935年ですね、それを追加してく ださい。 ○事務局  文章は検討いたしますが、「ILO条約の趣旨も踏まえ」という趣旨を追加させてい ただきます。 ○委員  これは骨子ですから、また文章をふくらませるのだと思いますので、そのときに触れ ておいていただければということです。 ○事務局  はい、ありがとうございます。 ○委員  もう1点、これは文章というより質問になってしまうのですが、4頁の2つ目のポツ で、ILO第45号条約で例外的に認めるものについて禁止を解除する、ということが昭 和59年の建議で出されたということですが、そのときにずい道についてはそもそもIL O条約の対象ではなかったのに、労基法では規制していることについては特段問題とさ れなかったのでしょうか。 ○事務局  当時の担当者にもいろいろ話を聞きましたが、そこはあまり意識されていなかったと 聞いています。当初は、確かに労基法の規定ができたときに主として念頭にあったの は、とりわけ石炭鉱山だったというところは間違いがない。ただ、解釈として、それは ずい道まで入っているものだという理解があった。ただ、こういう見直しの議論が起こ ったときに、そこを峻別して整理をして、ということも一切行っていないと聞いており ます。危険度において、同じと思われていたのではないかと思います。 ○座長  この時点で解除されていたとしても、別におかしくはなかったかもしれません。 ○委員  どうなったか知りませんけれども、少なくとも考えた上でそのまま維持したのかと思 ったのですが、そういうことでもないわけですね。 ○座長  ほかにないようでしたら、4「女性の肉体的・生理的特殊性と坑内労働との関係」に ついてはいかがでしょうか。 ○事務局  ここについては、長井委員からコメントをいただいております。スケルトン案の内 容、方向性自体については概ねこの方向性でよいのではないかというコメントをいただ いております。補足として、鉱山やずい道という場の特殊性よりも、どのような職場環 境、業種、職種においても作業負荷だとか、作業条件そのものを検討していくほうが現 実的なのではないでしょうかというコメントをいただいております。方向性について は、このとおりで差し支えないのではないかというご意見です。 ○座長  ILOの第176号条約と同じような考え方ですね。 ○事務局  そうです。 ○座長  第176号条約というのは、鉱山における安全及び健康に関する条約ということで鉱山 に限定しているのですね。 ○事務局  そうです。 ○座長  でも、リスクアセスメントを基準としている。 ○事務局  はい。 ○委員  リスクについて、7頁で(1)(2)(3)と分けています。(1)については坑内労働は特有で はないということで非常にすっきりしています。(2)では、熱、気圧が女性に高い負荷 を与える可能性、女性により低い濃度でじん肺が起こる可能性については完全には否定 できないというのは、ある意味で重大な指摘のような気がします。  これは、女性一般についてそういう可能性があるということになると、男女で生理的 な機能のというところの意味するところは、例えば、現在の労基法だと第64条の3の2 項で重量物などを規制していますが、そうすると、これは妊娠・出産に係る機能に有害 であるという理由で拡大しているわけです。それと同じような考え方になるのか、それ とも妊娠・出産機能とは違うけれども、男女で体力や体形の差があって、あるいは心身 の機能の差があってこういうことが言えるのか、その辺が私にはよく理解できないので す。仮にそういうことが言えるのだとすると、危険・有害業務について大幅に緩和して いるわけですけれども、そのこと自体の妥当性というのも問題になりそうな気がするの です。私は専門ではありませんけれども、ここはこのように言ってしまっていいのかな という気がするので教えていただければと思います。 ○委員  例えば、じん肺は有所見者の統計を取っていますが、その中には男女の比率は何も書 いてありません。女性の中の濃度は、一般環境等でどうなっているのかを見ない限りは 言えません。そこは、ただ単に有所見者が何人いますという統計からはここのところは ないです。  私たちは医学的な話ですけれども、女性に特別にじん肺があるという話は出てこない と思います。職場として、女性がそういう所に就いていないからデータがないのか、あ るいはそうではないのかということがよくわからないです。せめて統計処理している中 で、女性のところの比率が、ほとんど100%男性というのか、あるいはその中に女性がど のぐらい含まれているのか、その人たちはどこに従事しているのかがわからないと、こ の答えは出てこないのではないかと思うのです。我々が一般に考えている粉じんに関し ては、こういうことはなくて同じだろうと思っています。 ○委員  完全に否定できないというのは確かにわかるのですが、逆にないと言っているのか、 ないとはいえないと言っているのか、趣旨がはっきりしません。 ○座長  わかりにくいですね。実際はそれほどあるという確証もないし、熱、気圧、女性は平 均的にやや体の大きさが小さい、脂肪組織がやや多いということで、同じような熱であ っても、平均的には女性のほうが負担が大きい可能性はあるとしても、それは明確にな っているわけではないという意味ですね。じん肺も同様です。ですから、「完全には否 定できない」という表現は、そういう意味ではちょっと誤解を招きかねないかという気 がいたします。  かつて、女性を保護する立場では確証はないけれども、こういう考え方があって保護 したということなので、それを否定する根拠はないけれどもという程度のことですね。 ○委員  (1)がそういう形であると、(3)はそれと組み合わさったものですから同じような形に なるのですね。 ○座長  そうです。 ○委員  この2つは歯切れの悪い印象を受けます。これは、もう少し整理した書き方にできな いのかというのが率直な印象です。 ○座長  もう少し適切な表現が考えられると思いますが、どうでしょうか。 ○事務局  これは、ご発言の中から取ったところですので、そこはむしろ変えずに入れ込んだも のです。逆に言えば、女性が男性に比べて、より高い負荷を受ける、という証拠がある わけではないということを、違う角度で言っているということなのだろうと思うので す。想定している状態は、たぶんそういうことなのかと思います。 ○座長  もうちょっと丁寧に書く方法はありますね。 ○委員  現場を考えても、こういう所の女性に関するデータはないと思います。もともとそう いう所には女性の職種がなかったわけですからデータ的なものはなくて、「疑わしき」 という形の書き方をされているけれども、完全否定するデータがないと難しいと思いま すので、書き方は少し変えたほうがいいのかという気がします。 ○委員  逆に、それを積極的に裏付けるようなデータもない中で、妊産婦についてはきちんと 保護があるわけですし、粉じんや重量物については適切な規制がある、それでOKでは ないかという方向のほうがいいのでしょうね。 ○事務局  坑内・坑外問わず規制されているものがあって、それでいま何か問題が出てきている かというと、そういうことではないですねと。 ○委員  これから先、これが法制化されていったとしても、高温の職場だとか、気圧の職場と いうのはこれからなくなる傾向にあります。あるのは粉じんだけです。粉じんが特に、 ということはないのかと思います。 ○座長  たとえ気圧や高熱が女性に対して若干負担が大きいとしたら、その条件に応じて環境 の基準を設けるなりしてコントロールすればいいだけの話ですから、基本はそんなに違 わないです。 ○委員  そうですね。 ○座長  全体として、個人差というのが大きいと思います。 ○委員  大きいです。 ○座長  その個人差に比べて、男性と女性の差全体として見たときにはごくわずかであると認 識しています。それは、化学物質についても同様です。 ○委員  個体差のほうが大きいです。 ○座長  個体差を考えて、我々はコントロールするわけです。だから、妊娠・出産機能とは全 く別です。 ○委員  違います、そこはちゃんとしたほうがいいと思います。ほかはないのではないです か。 ○事務局  例えば、EUがオーストリア政府の提訴を受けて書いているのですが、ここはスケル トンということで省略しています。体の小さい男性については何も言っていないという こと、まさに個体差に着目したようなことを、たしかその理由として述べていたと思い ます。 ○座長  私がいま言ったことはそういうことです。基本的には、化学物質なども一般論として いえば差がない、と言えると思います。それは、別の場でよくご検討になると。妊娠・ 出産は別ですが、それ以外のことです。そういうことを踏まえて、ここの書き方は次回 までに少し考えましょう。 ○事務局  はい。 ○座長  その部分を除いて、ここに書いてあることはよろしいでしょうか。 ○委員  最後の、「入昇坑時に時間を要する」というのはどういうことですか、お腹が大きい からということですか。 ○事務局  例えば、切羽の部分にいて、何かあった場合に出るにも距離が長いときには時間がか かるといったことも想定しております。 ○委員  坑内労働においてはそういうことですけれども、妊産婦が時間がかかるとか、そうい うことではなくてですか。 ○座長  妊産婦が坑内にいたときに、不測の事態が起こる可能性がある。 ○委員  人車自体も、ものすごく小さいです。女性でお腹の大きい人が体を曲げて入るような スペースというのは、最近でこそ人車は大きくなりましたけれども、昔のようにものす ごい小さな閉鎖空間の所ではお腹に負荷がかかるのではないかということです。  それから、気圧の差がものすごくあります。一気に4キロぐらい下りていきますか ら、そうすると気圧の差というものもお腹の赤ちゃんにはきついのかということがあり ます。環境の急激な変化は、トンネルに比べると金属鉱山の場合は多いと思います。 ○座長  入昇坑時に時間を要することだけを例として挙げてあるから、もうちょっと丁寧に書 く。これは、中で不測な事態が起こる可能性が大きくて、その際に救急処置が取れない ということの意味だと思います。 ○委員  それもあります。 ○事務局  基準法の中で、技術者などを解除したときの考え方はまさにそういう考え方です。特 に妊婦についてそうですが、産婦については個人差が大きいということで、申出主義に より禁止にした、というのはそういうことであると聞いております。  櫻井座長がおっしゃられたように、不測の事態の対応が難しい場合が多いなどといっ たような、もう少し一般化したような言い方のほうがここの理解は得られやすいという か、わかりやすいということでしょうか。 ○座長  はい。ほかに表現で違和感のあるところはありますか。 ○委員  基本的によくできていると思います。 ○座長  5「坑内労働に係る規制の課題」についてはいかがでしょうか。あまり明確には結論 が書いてありません。「検討に当たって、適切な対応措置を講じることが望まれる」と まとめてあります。 ○委員  そこをどの程度で収めるか。結論をどうするかは別の場でということだと思うので す。仮に鉱山も含めて、女性の坑内労働を解禁するとすると、ILO条約との関係がど うしても出てくると思うのです。それは、批准を廃棄することが必要になるということ は、1つのデータとして、情報として書いておかないといけないのかという気がするわ けです。  批准の廃棄というのは、たしか10年に1回そういう機会がありますので、仮にすると するとそういうところでやらないといけないということは、するしないは別にして何か 書くべきかという気がします。 ○事務局  ILO条約との関係がありますということについて、記載をしておいたほうがよいの ではないかということですか。 ○委員  そういう気がします。 ○座長  10年に1回なのですか。 ○事務局  この条約については、10年に1回と聞いております。改正条約を批准するときには自 動的に廃棄されるという類の条約もあるとか、ものによって違いがあるようなことを聞 いています。少なくともこの条約に関しては廃棄をすることができるのは10年に1回だ と聞いております。なるほど廃棄した年数を見ますと、非常に固まっているのはそこに 原因があったのかと思います。 ○委員  条約そのものに、そういう規定があったような気がします。ILO条約との関係でい えば、一方で女性特有の禁止というのは理由がないですけれども、ILOとしては新し い条約に男女共通のリスクに応じた規制というのがあるわけですから、「単に廃棄の情 報だけではなくて、もし廃棄する場合には、こちらの批准についても真剣に検討すべき である」というぐらいは書きたいという気がするのですが、あまりにも行きすぎます か。 ○事務局  そうなのですけれども、そこは相談をさせていただきながら、主として所管がよその 役所になっていることがありますので、いささかその筆圧について調整を要するかもし れません。 ○委員  ただ、専門家会合としては、少なくともILOとしてはそういう方針をとっているの だ、ということは情報として書いておいていいと思います。 ○座長  そういう情報としてですね。 ○事務局  そうですね。 ○座長  ほかにないようでしたら、本日予定しておりました議事は終了いたしました。次回の 会合の予定について、事務局からお願いいたします。 ○事務局  次回の開催については、6月7日の16時30分から18時30分までということでお願いい たします。場所については、決まり次第ご連絡させていただきます。次回は、本日いた だきましたご意見の内容も踏まえ、報告書案について議論していただく予定としており ます。 ○座長  本日の専門家会合はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課 法規係(7836)