05/04/20 雇用創出企画会議議事録             平成17年度第2回雇用創出企画会議 1 日時 :平成17年4月20日(水)13:00〜14:00 2 場所 :資生堂物流サービス(株)関東物流センター 3 出席委員:小野旭委員(座長)、大矢和子委員、二宮隆一委員、久本憲夫委員        八幡成美委員   ヒアリング対象者    社団法人日本ロジスティクスシステム協会    石井理事 4 行政側出席者:太田政策統括官       (労働政策参事官室)田中政策企画官、千葉室長補佐、川端企画第二係長 5 議題   ロジスティクス業に関する有識者ヒアリング 6 議事経過 ○小野座長  平成17年度の第2回目の雇用創出企画会議を開催いたします。雇用創出企画会議の委 員を代表して、一言ご挨拶いたします。  資生堂物流サービス様におかれましては、本日、大変お忙しい中を会場の設営の労を お取りいただきまして、誠にありがとうございました。心から御礼申し上げます。これ まで雇用創出企画会議においては、雇用の創出が期待できる、見込まれる業界を中心 に、ヒアリングを行ってまいりました。ロジスティクス業界はこれから伸びることが強 く期待されている業界です。しかしながら、ここで働く人々の状況については、一般に はまだあまりよく知られていないということで、私どもは大変強い関心を持っているわ けです。  本日はロジスティクス協会の方にお越しをいただき、業界の現状についてお話を承る ということになっております。ご多忙にもかかわらず、ご参加をいただきましたこと を、心から感謝いたします。それでは議論に入りますが、実りある成果が得られること を期待しております。ヒアリングに移りたいと思いますが、事務局から、ご説明いただ く方のご紹介をお願いしたいと思います。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  本日ご説明いただく方について、ご紹介をいたします。社団法人日本ロジスティクス システム協会でJILS総合研究所長でもいらっしゃる石井理事から、ロジスティクス 業界の現状、職務、求められる能力などについて、本日はお話を賜ることとしておりま す。 ○小野座長  それでは石井理事様にご説明いただきますが、大体1時間ぐらいでお話とディスカッ ションを含めてお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○石井理事(日本ロジスティクスシステム協会)  ご紹介いただきました石井です。私どものところは日本ロジスティクスシステム協会 という公益法人で、経済産業省と国土交通省共管の社団法人です。1992年の設立ですか ら、社団としての歴史は12、3年しかありませんが、それ以前に旧団体の時代が22年ほ どあります。1970年に日本能率協会と日本生産性本部の中に同じような物流の団体が誕 生し、それぞれ20年余の活動実績をもっていましたが、1992年6月にこれら両団体を統 合し、当時の通産省、運輸省の設立許可により社団として再スタートしました。  社団法人日本ロジスティクスシステム協会という名称は長いので、JILSと呼んで います。事業としては、ロジスティクスに関する調査研究、教育研修、普及活動など、 いろいろ取り組んでいます。その中で、教育研修は我々の事業の大きな柱のひとつで す。  今日は資生堂さんのご好意によりこういう場がセットされたわけですが、資生堂さん については旧団体のころから役員になっていただいておりまして、現池田社長にも理事 にご就任いただき、会の運営に深くかかわっていただいているところです。私どもの研 修事業でも、常にご利用いただいており、この場をお借りして御礼を申し上げたいと思 います。  今日のテーマに関連する資料として5点ほど用意しました。まず、先ほど配付してい ただいたパワーポイント「物流の定義」、これが資料1です。つぎに、「運送業界・倉 庫業界の現状と課題」資料2とあるものです。資料3は「職務と求められる能力」で す。資料4は「ロジスティクス分野におけるキャリア形成の例」です。資料2から4ま では、厚生労働省所管の中央職業能力開発協会(JAVADA)が、包括的職業能力評 価制度整備事業という、非常に大がかりな調査をやっておられ、その一環としてロジス ティクス分野について私どもが受託して取り組んでいます。そこでは、ロジスティクス において求められる能力要件、評価基準、キャリアパターンなどをとりまとめています ので、JAVADAさんのご了解をえて、本日ご紹介させていただきます。  5つ目の資料として、私どもは教育研修事業をいくつかやっているのですが、そのパ ンフレットが配付されていると思います。これら5つの資料を使って説明いたします。  最初に、ロジスティクス業界の現況についてお話しするように、とのご注文ですが、 実はロジスティクス業界というのはないのです。と申しますのは、ロジスティクスは産 業横断的な業際機能、どの業界でも発生する機能なのです。ロジスティクスに関連する 業界として、例えばトラック運送業界や倉庫業界というのはあるのですが、これは、ト ラック運送業や倉庫業は業として成り立つからです。しかし、ロジスティクス業という のはありません。ロジスティクスは荷主企業の経営管理機能です。  例えば資生堂のロジスティクスとか化粧品業界のロジスティクス、あるいは自動車業 界のロジスティクス、鉄鋼業界のロジスティクス、などとはいいますが、ロジスティク ス業界となれば、違和感があります。鉄や石油など産業資材のロジスティクス、電機や 自動車など耐久消費財のロジスティクス、化粧品・洗剤・加工食品など消費財のロジス ティクスというふうに、商品により形態は自ずと違うのですが、荷主企業の経営管理手 法としてのロジスティクス機能という視点は共通しています。しかし、それにしても、 ロジスティクス業界というような言い方はしないのです  その辺のことを話すとすれば、今日お配りした資料1で、ロジスティクスがいきなり 誕生したわけではなく、当初は物流という概念が発生し、それが徐々にロジスティクス へ転化していったという経緯がありますので、まずそこから話を始めたいと思います。  物流または物流管理は日本では高度成長期に完成した概念で、大量生産・大量消費を つなぐ大量流通・大量販売を機能させるために誕生した考え方です。  しかし、高度成長を達成すれば市場は飽和し経済は成熟化します。日本では昭和48年 のオイルショック以降、成熟化に向かい、生産も流通も多品種少量化し、物流の多頻度 小口化が加速します。この構造変化は重大で、従来の物流概念では対応できなくなっ た。サービスの高度化と機能の拡大を実現する新しいコンセプトが不可欠となり、そこ に登場したのがロジスティクスだった。大まかにいえば、そういう経緯だと思います。  では、物流あるいはロジスティクスはどう定義すればいいのか。これについては、学 会でもいろいろな意見があり、物流用語辞典、ロジスティクス用語辞典など、出版社に もいろいろな書物があり、いくつかの定義があるのですが、国の公的な定義としては、 JISに物流用語というのがあります。ここでは、それを紹介したいと思います。  JISの物流用語は1985年に制定され、99年に1回目の改正が行われました。いちば ん新しい物流の定義は資料1の2段目にある「物資を供給者から需要者へ、時間的、空 間的に移動する過程の活動。一般的には、包装、輸送、保管、荷役、流通加工及びそれ らに関連する情報の諸機能を総合的に管理する活動」というものです。  一方、ロジスティクスについては、1985年の物流用語の制定当時は、まだ登場しませ んでした。99年に最初の改正が行われたときにロジスティクスを追加し、2004年度に2 度目の改正原案が作られました。このとき、ロジスティクスの定義も見直し、バージョ ンアップしました。それがいちばん下の2004年度改正原案です。そこでは、ロジスティ クスを、「物流の諸機能を高度化し、調達、生産、販売、回収などの分野を統合して、 需要と供給の適正化を図るとともに顧客満足を向上させ、あわせて、環境保全、安全対 策をはじめ社会的課題への対応をめざす戦略的な経営管理である」と定義しています。  ちなみに、JIS物流用語の原案を策定したのはわれわれJILSです。  先ほど物流からロジスティクスへの進化を促した大きな構造変化が生じたと言いまし たが、それをまとめれば、資料1の2ページにある表のとおりです。産業構造、市場動 向、流通チャネル、ビジネスドメイン、キーワード、行政施策、団体の動向、の7項目 で物流の時代背景とロジスティクスの時代背景を整理しています。いちばん下に、やや 手前味噌ですが、団体の動向があります。NCPDMというのはアメリカの物流団体で す。PDMとはphysical distribution managementの頭文字で、これを物流管理と和訳 したわけです。NCPDMは1963年に設立され、1985年にCLMに名称を変更しまし た。Lはロジスティクスです。JPDMAとJCPDMというのは、最初に申した我々 の旧団体です。1970年にそれぞれ日本能率協会と日本生産性本部に誕生しました。これ が92年にJILSに統合されました。ここでも、Lはロジスティクスです。  資料1の3ページにある図はロジスティクスと物流の輪郭と構造を整理したもので す。JISで物流を定義したなかで、包装、輸送、荷役、保管、流通加工など5つのキ ーワードが出てきましたが、これらは物流のサブシステムと呼ばれています。このサブ システムをサポートするのが情報管理です。包装以下5つの機能をサブシステム、情報 管理をサポートシステムと呼ぶこともあり、物流はこれらを総合管理するトータルシス テムであるという考え方です。  ロジスティクスは、このような物流管理を高度化して、さらに調達、生産、販売、消 費、回収という分野の統合をめざしています。中でも生産と販売がいちばん重要です が、生販統合などと言って、生産と販売をできるだけ同期化して、無駄のないスリムで 高品質のサービスを提供することが眼目です。調達から回収に至る5分野の全体最適化 を図っていこうというのがロジスティクスの考え方です。  近ごろ、SCMとかサプライチェーンマネジメントということが盛んに言われます。 この図にもサプライチェーンとディマンドチェーンを書いていますが、SCMで強調さ れるのはコラボレーションです。企業間連携を非常に重視しています。しかし、機能に ついてはあまり議論されてないように思います。コラボレーションや情報連携が強調さ れるあまり、具体的な機能論が手薄になっているのが、SCM議論の現況のように思い ます。的確なロジスティクス機能なしにSCMは達成できないと思います。  いずれにしても、議論はSCMあるいは企業間連携の中で最適化を求める方向で進ん でおります。  さて、ロジスティクス業界は成立しないが輸送業界や倉庫業界は成立するといいまし た。その辺の状況を説明しておきたいと思います。これについては資料2に、まず運送 業界の現状、つぎに倉庫業界の現状が書かれています。平成14年度末現在でトラック運 送事業者は5万8,146社、約6万社あります。最近は増加しつづけると同時に倒産も多 いのですが、この背景は規制緩和です。かつて運輸業は典型的な規制業界で、事業免許 と許可料金の2つでがんじがらめでした。平成2年に規制緩和が始まり、参入規制も料 金規制もすこしずつ緩和され、自由化と自己責任の時代になりました。当然というべき か、参入も多いが倒産も多くなりました。  2段落目にこの業界の特徴として99.9%が中小業者であると指摘されていますよう に、非常に零細性が高い。かつてはトラックの最低保有台数という規制があり参入障壁 を形成していたのですが、それがなくなりました。車両10台以下の事業者が50%、従業 員10人までの事業者が約半数という状況で、トラック運送業界というのは極めて零細企 業の多い業界です。  つぎに指摘しなければならないのは、参入規制や料金規制など経済規制の自由化は大 幅に進展した反面、環境規制や安全規制など社会規制は強化されています。トラック事 業者はディーゼル車で軽油を使うので、環境規制に対応できるようトラックを買い換え ないといけない。安全性の面では、大型トラックにスピードリミッターの装着義務が課 されることになり、一定のスピードを超えると自動的にエンジンが切れるので、いきお い強制的にスピード違反ができなくなる。この影響を最も受けるのは宅配便です。九州 や北海道などに送るのは急ぐ荷物は航空便を使わざるを得ないし、そうでないものは翌 日配送などできなくなります。サービスレベルを下げるしかない。このように、運輸業 界は環境規制と安全規制への対応に迫られています。さらに言えば、去年の後半くらい から石油価格が高騰しているので、三重苦の状況だと思います。  最後に指摘したいのは、サードパーティロジスティクス(3PL)についてです。荷 主企業がロジスティクスの戦略強化を進めており、また、一方ではロジスティクスのア ウトソーシングも拡大しており、これに対応して荷主のロジスティクスを代行できるよ うなサービス、場合によっては、荷主に業務改革あるいはシステムの改編などまで提案 できるような機能や能力が求められています。物流事業者にも、幅広い知識、企画・設 計、提案力を有した人材の確保育成が急務となり、積極的な事業者はビジネスチャンス とみて、競争が活発化しています。  倉庫業界の事業者数はトラック業界よりも少なく、平成12年は3,852社で、これをピ ークにほぼ横這い状況が続いています。これは普通倉庫の統計ですが、さらに温度管理 をする冷蔵倉庫が1,271社あり、両方を合わせても約5,000社で、トラックの10分の1ぐ らいの規模です。倉庫業界でも資本金1億円以下が8割以上を占めており、トラックほ どではありませんが、やはり同じように零細です。  倉庫業界でも、保管だけをしていればいいということではなくて、荷主のスピード化 に対応できる出荷機能や流通加工サービスが求められる。今日これから見学させていた だく現場でも流通加工をやられているのではないかと思います。ただ、ここで気を付け なければいけないのは、資生堂さんの物流センターは、国土交通省が管轄する倉庫業で はありません。倉庫業というのは他社の荷物を預かって(寄託をうけて)お金をいただ くというビジネスですが、資生堂さんは自社の商品を管理されるわけですから倉庫業で はありません。機能としては保管や出荷をされるのですが、業法に規制されることはな い。この3,852社には入っていません。  倉庫業界というのは自家倉庫でなく営業倉庫という意味です。しかし、ここでも流通 加工や情報処理はじめ、倉庫を戦略的拠点として活用していく、販売戦略と連動させ て、それをサポートするような機能が重視されてくる。一般の倉庫業でも、かつての保 管型から、立地も高速道路に近い所など、出荷機能を重視した機動的なサービスを提供 できないと商売できない。倉庫業もそういうことが求められています。  そこで問われるのが人材の確保と育成です。我々はJAVADAさんから包括的職業 能力評価制度を受託して取り組んでいるのですが、それについて説明したいと思いま す。  JAVADA事業は、職能要件と評価基準を、職種、職務、能力ユニット(共通/選 択)、能力細目、職務遂行基準、知識、の6段階で表現しようとしています。これが基 本的な枠組みです。資料の下の表に、職種、職務などの用語の説明が付いています。  我々はそのフレームに基づいて、職種として、ロジスティクスのシステムデザイン、 運送サービス企画、運送業務、車両整備、倉庫サービス企画、倉庫運営管理、倉庫内作 業、の7つを考えています。レベルは1から4まで設定しています。レベル区分の考え 方は表にまとめてあります。簡略していえば、レベル4は部長相当、レベル3は課長相 当、レベル2は係長ないし主任相当、レベル1は入社直後から数年の方、というイメー ジです。ここでは正職員だけを対象にしています。経営者とパートタイマーは想定して いません。4つのレベル以外に、レベル0とレベル5があり、パートタイマー・臨時社 員はレベル0、経営者・役員はレベル5、だと考えていただければいいと思います。  このような職能要件を策定するにあたり、キャリアステップのモデルを設定していま す。資料4です。運送業部門と倉庫業部門に分けています。上段は総合職、中段または 下段は専門職または技術職というイメージです。説明は以上です。 ○小野座長  ありがとうございました。それではお伺いしたご説明に関し、何かご質問がございま したら、お出しいただきたいと思います。どなたからでも結構です。 ○石井理事  資料がもひとつありました。我々は実際にどういう教育をやっているかを示す能力開 発プログラム、教育事業の全貌が見えるような総合パンフレットです。このうち、資格 取得に連動したものが好評です。物流技術管理士講座などは、資生堂さんからもかなり 受けていただいておりますが、JILS開設以来、12年間で5,000名ぐらいこの資格を お持ちの方を輩出しています。管理士講座はいわゆる中堅マネージャーの育成を目指し ているわけですが、さらにロジスティクス経営士の認定講座があり、経営者層を念頭に 置いた、言ってみれば管理士講座の上級コースを想定しています。先ほどのJAVAD Aの仕組みの中にも、この2つは組み込んでいます。関連資格にどういうものがあるか ということを書く欄があり、それにはこの2つを入れています。 ○二宮委員  ロジスティクスという業界はないというお話だったのですが、ロジスティクスに従事 されている方を、おわかりになる範囲で、例えば協会の会員の方でもいいのですが、従 事する方々が大体何名で、その方々が増えているのかどうなのか。あとは先ほど非典型 社員というか、正社員でない方というようなお話がありましたが、その方々の割合、そ れとその動向みたいなものを教えていただければと思います。 ○石井理事  私どもの会員は約1,000社、荷主企業と物流事業者がほぼ半々です。物流事業者とい うのは運送業や倉庫業など物流サービスの提供側、荷主企業はユーザー、自分の会社の 製品を送ったり保管したりするために物流事業者を利用するという立場です。  メンバーは1,000社ですから、日本産業から見ればカバー率は微々たるものです。た だ、会長はトヨタの張社長ですし、メンバーは資生堂さんもそうですがほとんど大企業 です。だから、どこまで我々がカバーし切れているか、評価は分かれると思います。  人数が増えているかどうかは、我々が接触しているのは各企業のロジスティクス部あ るいは物流部というようなセクションが多いのですが、そこの人数は総体的には減って いると思います。ロジスティクス部門や物流管理部門でもリストラの波がきていて、毎 年コスト調査をやっていて、いろいろな会社の状況もお聞きするのですが、顕著に出て きたのは3年ぐらい前からリストラがこの部門にも及んでいるなという感触を持ってい ます。  パートタイマーとの割合は申し訳ありませんがデータをつかんでいません。ただ、我 々の会員の中に人材派遣会社がこの2、3年増えているのです。ということは、資生堂 さんも多分ご利用されているのではないかと思うのですが、荷主企業の荷動きは、お中 元お歳暮など季節波動が大きいので、そこで必要な人材は圧倒的にパートさんが多いよ うに思います。正職員は管理部門だけで、多くはパートタイマーではないかと想定しま す。倉庫部門、保管部門、物流センターなどのような庫内作業では、パート比率が極め て高いように思います。しかし、トラック事業は運転免許が必要ですし、パートさんに 任せるのは安全上からも問題です。トラック業界では正職員の比率がやや高いのではな いかと思います。ただし、そうはいっても、引っ越しサービスなどで一時に大量に来る 人がすべて正職員とは思えませんので、パートさんの確保と育成はトラック業界でも、 大きな課題になっていると思います。季節的に3月には引っ越しが集中するようです し、常にあれだけの人間を抱えているわけにはいかないでしょう。トラック業界もサー ビスメニューが増えていて、運転のところは免許もありますから他人任せにはできませ んが、パートタイマー化できるところは切り換えられているはずです。  あるいは、全日本トラック協会さんや日本倉庫協会さんなどでは、そのへんの流動性 の実態を把握されているのではないかと思います。 ○大矢委員  倉庫業的な仕事と運輸業的な仕事と、ロジスティクスの考えというのは職種が3つあ るということですね。 ○石井理事  そうです。そういうモデルを設定しました。 ○大矢委員  こういったキャリア形成の図が出てきているわけですが、このキャリア形成の中で、 その職種ごとの移転というのは、人員の動向という形で見ると難しいのかどうかという のが1つと、ロジスティクスのシステムデザインなどの場合は、倉庫業と運送業的な部 門の人材の移転というのは、あり得るのかどうかを伺いたいと思いました。それと逆 に、ほかの業界から、業界はないと伺っていますが、ほかのこれ以外の職種から、典型 的に特徴的に移転してくるような職種の方がいらっしゃるかどうかという、その2点を お伺いします。 ○石井理事  このキャリアパスの図で上下に矢印を付けているように、流動性あり得べしと考えて います。これを作るにあたって、トラック事業者や倉庫事業者の方10社ほどにヒアリ ングしました。運送業部門でいうと、いちばん下の、車両整備などは極めて特殊技術の ようでして、自己完結的なことが多いようです。ドライバーさんの世界も一匹オオカミ というのか、やや固定的です。ヒアリングの感触では、企業規模にもよりますが、一般 的にはそれほど活発に流動するものではないようです。  倉庫業務も同様で、倉庫内作業などはこれに終始する傾向が強いようです。 ○大矢委員  倉庫的な仕事と運送的な仕事で、ロジスティクスシステムデザインの部分では、移管 は流動性というのはあるのかどうか。 ○石井理事  運送業あるいは倉庫業はそれぞれ独立しているように見えますが、多くは兼業です。 たとえば、日通さんといえば日本一の運送業者ですが、同時に、日本一の倉庫業者でも あります。運送業と倉庫業、業法は分かれるのですが、実際には兼業が多いのです。社 内の異動はあっても、外部との流動性はそれほどではないといえそうです。  ロジスティクスについては、ここではサード・パーティ・ロジスティクス(3PL) を念頭に策定しています。サードパーティの意味は、荷主でも物流事業者でもない第三 者が荷主のロジスティクスを代行するサービスをいいます。荷主企業と長期契約を結 び、情報共有を進め、業務分析やコンサルティンク手法を駆使して改善提案を行い、コ ストダウンを実現できたら、削減効果を折半する(ゲインシェアリング)ことさえある といわれています。車両や倉庫などのアセットを持たなくても事業化できるだけの運営 ノウハウを売りにビジネスを展開するわけですから、ハードルはかなり高いといわなけ ればなりません。  そういうノンアセット型が3PLの本来像なのですが、日本では皆無にちかく、トラ ックや倉庫などのアセットをお持ちの方がサードパーティを目指している、それがブー ムになっているというのが日本的現状だと思います。 ○大矢委員  業際を超えて移動するということは、いまのところ難しいと考えられるということで すね。 ○石井理事  そうですね。パートさんはともかくとして、正社員の場合、そういえると思います。 ○八幡委員  この間の規制緩和でこの業界も随分変わっているという話でしたが、企業はかなり集 約される傾向にあるのですね。あるいはいままで顧客企業の社内でやっていた仕事が、 アウトソーシングされる。人の問題も含めた変化はどのようですか。庸車が増えると か、構内下請的なところだと運送会社が人を集めてきて、ある部門の荷役作業を受ける とか、そういうことは以前からやられてきました。その辺の変化というのは最近はどう なっているのか、お聞きします。 ○石井理事  規制緩和の影響でトラック業界では変化が顕著に出ていると思います。事業免許とい う規制がなくなり、参入は増え、かつては4万社と言っていたのがいまは5万社ぐらい になっています。しかし、残念ながら倒産も多くなっています。淘汰されていくかとい うと、新規組が出ては消える状況だと思うのです。大きな所に吸収されているかという と、若干あるとは思うのですが、そんなに顕著な傾向としては出てないように思いま す。 ○八幡委員  アウトソーシングの傾向はどうですか。 ○石井理事  それは大きいと思います。日本にノンアセット型はないと言いましたが、サードパー ティロジスティクス志向は非常に強いですから、これは荷主企業のアウトソーシングニ ーズをキャッチして、そういう状況になっているのだと思います。ただ、そうはいって も3PLに踏み込むには、荷主企業が情報開示をしないといけないわけです。そうする と、売上げ情報やお得意先などもオープンにしないといけませんから、そこまで踏み込 む企業は決して多くない。できる限りアウトソーシングして荷主企業は本業に、コア・ コンピタンスに特化したいという思いは強い。だけど、自社の情報を売れ筋やお得意先 まで開示する例は少ないと思います。 ○八幡委員  そうすると、情報システムの仕事は出さないということですか。例えばSAPで、サ プライチェーンを組むような仕事は社内に残るということですか。 ○石井理事  システムとコンテンツは区別して考えなければならないと思います。問題はデータコ ンテンツを渡すかどうかです。個人情報保護法が施行されたいま守秘義務でどこまで渡 せるのか。SAPのように大がかりなERPもTMSやWMSなどの業務ソフトもシス テムないしソフトですから、データコンテンツとは区別し、こちらは自社で管理しない と、たいへんなことになると思います。 ○久本委員  いまの関連でアウトソーシングに近いのですが、例えば分社化で分社していたところ を切り離してしまう。切り離して、全く別のところで自立してくれというような形、そ ういうものというのはないのですか。 ○石井理事  それはあると思います。日本には物流子会社が多いのです。資生堂さんもそうです が、ほとんどの荷主企業が物流子会社を持っていると思います。しかし、どうなのでし ょうか、独立してほしいかどうかは会社の方針によって違ってくると思います。 ○久本委員  他のところの仕事も取ってきてくれという意味では。 ○石井理事  それは物流子会社にどういう性格を持たせるかでしょう。資生堂物流サービスさんは ノンアセット型ですね。そういうところでよその荷物を取ってこいなどといっても無理 があるかもしれません。だけど、例えば日立物流さんなど日立系の荷物は半分以下で す。あそこは昔から外販に力をいれてこられたのですが、物流子会社とはいいながら、 あっぱれです。それは多分日立の方針だと思うのです。さらに、たとえば、重電メーカ ーとしてのノウハウ、大きな変圧機や発電機などを運んだり据え付けたり、あそこにし かないようなノウハウの蓄積も大きかったのでしょう。もちろん、ほかの日通さんなど もお持ちですが、日立ならではのものがあるとすれば、それは競争力が強いから、売っ て出ることができる。同じ家電系でも日立物流さんは抜きんでています。なにかノウハ ウの蓄積があったのでしょう。もちろん、重量物だけではありません。一般貨物で堂々 の経営をされています。 ○久本委員  基本的にはもうアセットを持っていない子会社が多いから、あまりそういう話にはな らない。 ○石井理事  業種にもよると思います。電機や自動車のような耐久消費財と資生堂さんや花王さん のような日用品系の消費財、商品形態によって違うと思います。どちらかといえば、前 者のほうが独特のアセットをお持ちでしょうか。自動車業界では、完成車の輸送に使う 大型トラックや輸出用の専用埠頭さえあります。素材系と加工系でも違いがあるようで す。鉄鋼業界では、鉄鉱石や石炭を運ぶ専用埠頭、専用船さえをお持ちです。 ○小野座長  予定した時刻になりました。まだご質問があるかもしれませんが、雇用創出企画会議 はここまでにしたいと思います。本日の内容については事務局において、今後の取りま とめ報告書に反映させていただければと思います。本日、ご説明いただいた石井理事様 と、株式会社資生堂物流サービス様に、深く御礼申し上げます。ありがとうございまし た。それでは事務局からお願いします。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  次回の会議は5月の中下旬辺りを目途として、社会人教育サービスについて、ヒアリ ングを行わせていただく方向で、現在想定しています。詳しい日時等が決まりました ら、ご連絡を差し上げます。 ○小野座長  特段ご意見はございませんか。よろしいですか。それでは、本日の会議はこれで終了 ということにしたいと思います。どうもありがとうございました。 照会先 :政策統括官付労働政策担当参事官室 企画第2係 電話番号:03(5253)1111 内線(7723)