05/04/20 生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会第1回議事録      第1回 生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会 議事録 日時 :平成17年4月20日(水) 18:30〜19:37 場所 :霞が関東京會館 シルバースタールーム 出席者:谷本石川県知事、岡ア高知市長、今井総務副大臣、谷垣財務大臣、     尾辻厚生労働大臣、木村地方財政審議会委員、     京極国立社会保障・人口問題研究所所長 議題 :(1)協議会の運営について     (2)生活保護制度及び母子家庭自立支援策の現状等について     (3)意見交換 (尾辻厚生労働大臣)  それでは、定刻になりましたので、ただいまから「生活保護費及び児童扶養手当に関 する関係者協議会」を開催させていただきます。  本日は大変お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日の進 行をさせていただきます厚生労働大臣の尾辻でございます。よろしくお願い申し上げま す。  それでは、まず、本日御出席の皆様方を私から御紹介をさせていただきます。  谷本石川県知事でございます。  岡ア高知市長でございます。  麻生総務大臣の代理で今井総務副大臣でございます。  谷垣財務大臣でございます。  木村地方財政審議会委員でございます。  京極国立社会保障・人口問題研究所所長でございます。  それでは協議に入ります前に、まず本協議会の議事運営等について確認させていただ きます。資料1をお手元に差し上げてあるかと思いますが、これにつきまして、事務局 から説明をいたします。 (小島厚生労働省社会・援護局長より資料1「生活保護費及び児童扶養手当に関する関 係者協議会の開催について(案)」に沿って説明) (尾辻厚生労働大臣)  最後に申しました「協議会の内容は公開とする。」という意味は、こういう形で皆さ んに公開しながらやらせていただきたいということでございます。そのことを含めまし て、以上御説明申し上げました本協議会の議事運営等について、このような取扱いとす ることでよろしいでしょうか。  それでは、本会議の議事運営については今申し上げたような形とさせていただきたい と思います。  続きまして、早速意見交換を進めたいと思います。  あらためまして、まず私からごあいさつを申し上げたいと存じます。この会議での私 の立場は微妙なところでありまして、一言で言うと、私がお願いしてお集まりいただい たという立場でございます。あらためて本当にお忙しい中お集まりいただきましたこと に感謝を申し上げます。ありがとうございます。  この会議はどういう経緯、いきさつでお集まりいただいたかということは、もう皆様 方御案内のとおりでございますから、あらためて申し上げません。ただ、この間、私も 次のことは申し上げてまいりました。ある意味一番肝心なことだと思いますから、そこ のところだけはあらためて強調して申し上げたいと思います。すなわち、この協議会で は、国庫負担率の見直しを前提として議論を行うものではなく、保護費や児童扶養手当 の急激な増加など、昨今の生活保護制度及び児童扶養手当制度を巡る状況にかんがみ、 保護率の地域格差の原因分析、給付の適正化に資する種々の改革、国と地方の役割や費 用負担の在り方等について、実際にその実施に携わっておられる地方団体関係者の率直 な御意見を幅広く伺い、総合的に検討をお願いしたいと考えております。そのことを申 し上げまして、あと色々申し上げるべきこともありますが、どうぞよろしくお願いしま すとだけ申し上げて、まず、私からのごあいさつにさせていただきたいと思います。  それでは、続きまして担当局長から資料の説明をいたします。 (小島厚生労働省社会・援護局長より資料3「生活保護制度の現状等について」に沿っ て説明) (尾辻厚生労働大臣)  それでは、引き続きまして母子家庭自立支援策の現状等について、資料に基づいて説 明をさせていただきます。お願いします。 (伍藤厚生労働省雇用均等・児童家庭局局長より資料4「母子家庭自立支援策の現状等 について」に沿って説明) (尾辻厚生労働大臣)  以上で説明は終わりましたので、この後、まず委員の皆様方からお一人ずつ御発言を いただきたいと思います。  なお、勝手なことを申し上げるようでございますが、今日は7時半までとさせていた だきたいと存じますので、どうぞ、私が何を申し上げたいか御理解の上、御発言をいた だきたいと思います。  それでは、まず谷本知事からお願いします。 (谷本石川県知事)  今日は第1回目の協議会ということで、今大臣の方からお話がありましたように、負 担率の引き下げを前提としないで、この協議会を開催するというお話がございました。 そういう文書もいただきましたので、私どもは、この協議会に参加をさせていただいた ということであります。  第1回目の会合でありますので、これまでも申し上げてきたことでありますが、もう 一度生活保護にかかる事務の制度上の位置付けというものをおさらいしておく必要があ るのではないかと思います。  基本的な考え方でありますが、平成10年に当時政府の地方分権推進委員会において、 地方分権推進計画が策定されました。その中で生活保護や児童扶養手当に係る事務をど う位置付けるかという議論がなされ、法定受託事務という分類がされたわけでありま す。  御承知のことと思いますが、具体的には、全国の単一の制度、全国一律の基準により 行う給付金の支給に関する事務ということになるわけであります。さらに敷衍すれば、 生存にかかわるナショナルミニマムを確保する事務ということになるわけです。そうい った意味では、全国一律に公平・平等に行う給付金等に関する事務という位置付けがな され、その後、平成11年7月に地方分権一括法が国会で成立したわけであります。した がいまして、法定受託事務という形で、法律上もオーソライズされたということでござ います。こうした経緯を考えてみますと、法定受託事務ということでありますから、突 き詰めて言えば、経費負担も国が100 %でいいのではないかという思いがしておりま す。要するに、国が責任を持って制度設計を行う。そして、事務処理に必要な処理基準 も国が責任を持って、きめ細かく定めるということであります。こうした制度設計の過 程においては、実際の実施機関である自治体の意見を取り入れる仕組みというものが必 要になってくると思います。あくまでも、生活保護費及び児童扶養手当に係る事務は、 国が責任を持って制度設計を行う事務だということであります。  今回負担率の引き下げを前提としないということでありますが、一昨年、昨年の議論 等を見ておりますと、この負担率の引下げについて、相当議論になっておりました。私 ども、分権改革を進めるということで三位一体の改革、この言葉がいいかどうかについ ては、今、知事会で議論をしておりますが、要するに、補助制度を廃止し、財源を地方 に移譲して、地方の自由度、裁量の余地をもっと増やしていこうという趣旨で取り組ん でいるわけであります。法定受託事務は、そういう観点から言いますと、全く別世界の 話であるという位置付けをしております。仮にこの負担率の引下げがなされれば、地方 への負担転嫁以外の何者でもないと、私たちは考えているわけであります。  また、地方負担を増やすことによって、保護率を引き下げるというインセンティブが 働くというお話もあったようにお聞きしておりますが、この生活保護事務そのものがナ ショナルミニマムの確保ということでありますから、そういう形で進めていくと、この 制度そのものを否定するということになりかねないのではないかと思います。  今、事務局の方から説明もございましたが、保護率が上昇しております。これは色々 な分析もしてみなければいけないと思いますが、社会的な要因、経済的な要因によるも のだと私どもは理解しております。そうした意味では、景気対策や雇用対策などの総合 的な政策の推進が、むしろ大事なのではないかと思っているわけです。生活保護費や児 童扶養手当の給付の適正化ということも、これから恐らくテーマにはなってくるのでは ないかと思います。その場合には、負担率の引下げを優先させるのではなく、制度全般 にわたる検証を進めていき、そうした中で必要な見直しをやっていくべきではないかと 思います。  それから、今最低の富山と最高の北海道で相当の開きがあるというお話もありました が、格差はおそらく自治体の認定が甘いということではなく、やはり地域ごとの社会 的、経済的な要因によるところが大きいのではないかと理解しています。こうした点に ついては、色々な原因分析もやっていく必要があるのではないかと思います。  生活保護費及び児童扶養手当は、法定受託事務でありますから、これは国において、 先ほども申し上げましたが、詳細な事務処理基準が示されており、自治体はその基準に 従って事務処理を進めておりますので、地方の裁量によって保護率に格差が生じるもの ではないと、私どもは理解しています。もし仮に、自治体の取扱いが異なることによっ て格差が生じるということになれば、さらに基準を国の責任で明確化していただくこと が第一義ではないかと思っております。  それからもう一つ、第1回の協議会でありますので確認させてください。大臣がおっ しゃいましたように、負担率の引き下げを前提としないという趣旨でこの協議会が開催 されたということであります。これから保護率の地域間格差の原因分析や給付の適正 化、国と地方の役割分担、費用負担の在り方などを含めて、これから議論を積み重ねて いくことになろうかと思います。  余り先の話をしてもどうかと思いますが、議論が収れんしないで平行線をたどるとい うことがあり得ると思います。そうなったときには、結論が出ないということになるわ けですから、この補助率の引下げというものはあり得ないと我々は受けとめているわけ であります。また意見集約をする際に、強引に一つの方向に持っていくというやり方は 決してとっていただきたくないと思います。  私は、以前、地方分権改革推進会議の委員もやっておりまして、そこで非常に苦い経 験をいたしました。委員の間の意見が分かれました折りに、最終的には多数決という方 式で報告書を取りまとめるという経緯がございました。我々は報告書には反対である旨 の意見表明をいたしました。委員間の意見が割れたというときには、基本的には両論を 併記して報告書を作成するというのが私は常識ではないかと思いますので、分権会議の ような轍は絶対踏んでほしくない。このことも我々は是非確認をさせていただきたいと 思います。  そして給付の適正化についても、これから議論をしていくことになりますが、まずは 生活保護制度全般にわたっての検証というものを通じて必要な見直しを是非やっていく 必要があるのではないかと思います。  基本的な考え方を少しお話させていただきました。 (尾辻厚生労働大臣)  すでに申し上げましたように、一通り皆様方から、まず御意見を伺いたいと思いま す。それでは、私から勝手に指名させていただき恐縮ですが、次に岡ア高知市長の御発 言をお願いします。 (岡ア高知市長)  高知市長の岡アでございます。市長会の立場からの意見を踏まえまして、少し発言を させていただきます。  私は実は公務員になって最初の仕事として生活保護のケースワーカーを6年間経験し ておりまして、この生活保護の担当を経験したことが私の公務員としての原点でござい ますので、そのことも踏まえ少し御意見を述べさせていただきたいと思っております。  今回、この協議会は先ほどの資料で出ておりましたとおり、まさに生活保護全般にわ たりまして地方の意見を幅広くお聞きいただくというところが、この協議会の趣旨であ ると思っております。先ほど石川県知事さんがおっしゃられましたように、単なる負担 金の引下げだけの問題に終始をするということになりますと、前回の協議会と同じよう になってしまいます。今の生活保護の急増、これは都市問題の一つとして我々も危機感 を持っておりまして、国の制度設計にかかわる部分、地方で対応する部分など、色々区 分けをして考える必要が当然あると思っております。  市長会からもカラー刷りの資料5という形で配らせていただいておりますが、負担金 の引下げと生活保護の保護率が下がることには相関関係はございません。資料5を開け ていただきますと、失業率と生活保護の推移を1つのグラフにしております。棒グラフ のところが失業率でございますので、当然、近年の景気後退によりまして失業率が上が ってきております。それによりまして、それぞれ政令指定都市とか、中核市、一般市に 分けておりますが、保護率が急増しており、この失業率との相関関係が非常に高いとい うふうに考えております。この中でも特に、この一番上のグリーンの部分が政令指定都 市の保護率の部分でございます。私はケースワーカーとしての経験からしましても、従 前の生活保護の保護率の上昇と、今の生活保護率の上昇とは少し形態が違うと考えてい るところです。ここはもっと深く分析する必要があろうかと思うのです。  実は都市の華やかさの影に隠れておりますので、国民の皆様は広く理解されていない と思うのですが、私のところは、色々な地域性等もございまして、生活保護が28‰とい うことになっております。大都市圏を見てまいりますと、例えば北海道の札幌市、これ は意外と知られていませんが26‰あります。京都が25.6、それから大阪市が38.7、神戸 で26.1、これは一つの都市の問題としてとらえるべき時期が来ているのではないかと私 は考えております。これは単なる負担率を引き下げるという方法では、恐らく解決はで きないと考えておりまして、我々は、市長会の代表でもございますので、都市の問題と して生活保護の急増をいかに解決していくかという、その分析が必要であると考えてお ります。  これを負担金の話だけにすり替えられますと本質的な部分は解決できないと我々は認 識をしておりまして、これは先ほどの石川県知事のお話と同じように、負担金の問題で はなくて、やはり制度設計上、色々な制度関係での問題が生じてきております。それか ら現場サイドから言いますと、生活保護の急増によりまして、面接の件数、いわゆる新 規の申請件数が非常に多くなりました。それからケースワーカーの生活保護の持ちケー スは、国の基準でいいますと大体80が基本になっていますが、生活保護は非常に増えて きていますので、都市部では1人のケースワーカーが100 近いケースを持っておりま す。言うところの「手が回らない」という状況もございます。それと自立支援をいかに かみ合わせるか。これは総合的に見ないと本質的な問題は解決できないと思っていま す。  制度上の根幹にかかわる部分もいくつか課題があると思っていますので、この本会の 進行状況に応じまして、また市長会側からの意見を出したいと考えておりますが、今日 は時間がございませんので、総論的に申し上げておきます。決して負担金の問題ではな くて、我々は特に市長会の立場として、都市の問題であると考えております。郡部の福 祉事務所は県が所管していますが、市の福祉事務所は市が所管していますので、ますま す市としての分析、または解決、ここが重要になると考えております。  よろしくお願いします。 (尾辻厚生労働大臣)  どうもありがとうございました。それでは、次に今井副大臣御発言をお願いいたしま す。 (今井総務副大臣)  麻生大臣に所用がございまして、副大臣をさせていただいております今井でございま すが、代わって発言をさせていただきます。御了解いただきたいと思います。  今、谷本知事さん及び岡ア市長さんから悲鳴に近いと言ったらどうかと思いますが、 大変な危機感を持って御発言がございました。自治体の財政運営にとって大変な脅威に なっているということは事実です。大変な勢いで給付が伸びているからにほかならない と思っております。  この関係は基本的には失業者の増大、言うなれば、生活保護の保護率と完全失業者の 割合が高い相関関係があるのではないかと、このように見ているところでございます。 失業者が増加することによって、保護者が同じように増加をしていく。こういう状況で ございます。  今、岡ア市長から都市の問題でもあるというお話がありましたが、今、話題の大阪市 を例にいたしましても、例のあいりん地区で色々とお聞きいたしますと、大阪市以外の 人が78%というデータが出ております。多くがいわゆる大阪市の出身ではないというこ とでございますので、ただ単なる大阪市だけの問題ではないのだろうと思っておりま す。  いずれにいたしましても、現在の保護費の伸びの要因を、その実態を踏まえてきっち りと精査していかなければならない。伸びの要因がどのあたりにあるのか、しっかりと した検討を加える必要があろうかと思います。御指摘のように、負担率を低くすること だけがその対策ではないと考えているわけですし、地方自治体といたしましても、さま ざまな積極的な対応を行っていらっしゃるのもよく承知はしております。ケースワーカ ーの数の御発言がありましたが、こうした地方自治体の厳しい財政状況の中でも、ケー スワーカーは増加してもらっているということも承知をしているところでございます。  また、保護率の地域間格差の指摘もあるわけでございますが、実際に保護率が平均以 上に伸びているのは7都道府県だけでございまして、いずれにいたしましても、失業率 の悪化あるいはさまざまな歴史的な背景等々構造的な要因が背景にあると認識している ところでございます。  私は草加市の市長をかつてさせていただいていたのですが、本当に東京の隣接地です が、平成15年度の保護率で5.2‰ということですから、全国平均から比べますと低いわ けです。  この問題につきましても要因については、国、地方お互いに連携を深めながら、お互 いに納得してきちんとした分析をする必要があるのではないかと思っておるわけでござ います。この保護費の適正化を図るために、生活保護制度の抜本的な見直しが欠かせな いものと考えております。  前向きに建設的に実際サイドの提案をしっかりと受けとめながら、制度自体の見直し を視野に入れて議論を行うべきだと考えております。  以上が総務省としての考えでございます。 (尾辻厚生労働大臣)  どうもありがとうございました。それでは、続けて木村委員お願いをいたします。 (木村地方財政審議会委員)  財政審議会委員の木村と申します。よろしくお願いをいたします。私も何点か意見を 述べさせていただきます。  まず、問題意識が生活保護費の高騰というところにあるものですから、本日のような 自立支援に論点を絞るというのは、私はいかがかなと思います。と申しますのは、自立 支援も重要な論点でありますが、現状の生活保護の扶助種類で言いますと、医療扶助が 全体の6割を占めますし、世帯類型別で申しますと、高齢者が5割弱、その他傷病、障 害者世帯で4割なのですから、こういったことを分析しないのはどうかと思います。現 状分析をすることが第一点ではないかと思います。  昭和40年代は郡部の方が生活保護率が高かったのですが、現在は市部と逆転しまし て、郡部の方は相変わらず低下傾向にあると考えられますが、市部の方は本当に伸びて おります。そういった複合的に分析しないと同じ土俵に立てないのではないか。もし国 庫補助負担率を引き下げると、地方が保護率を引き下げるのではないかというような思 い込みがあるとしたら、それはおかしいし、間違いだと私は思います。  あと重要な論点は、ほかの国と比べましても、日本の生活保護というのは、ほかの制 度で歯止めがないために、そこからこぼれ落ちたものが生活保護のところに集まってく るという状況にあります。ですから、ほかの医療保険とか、年金とか、失業保険との絡 みで、その制度を分析していかないと、単に保護率が高くなったから引き下げなければ ならず、その手段として短絡的に国庫負担率の引き下げというのは、私はちょっと筋が 通らないと思います。ほかの制度との関連を考えるべきです。  それから、次はお願いですが、やはり、共通の土俵に立つためには、データによる分 析が非常に重要だと思いますので、できましたら、昭和40年ぐらい、1965年ぐらいから 40年間、各市町村について保護率のデータをいただけたらと思います。その中で取れる 範囲でよろしいのですが、高齢者、それから母子、それから傷病、障害者世帯について の保護率も、それぞれにいただけたら、非常に分析がしやすいと思うので、よろしくお 願いします。  以上です。 (尾辻厚生労働大臣)  今の部分だけ、ちょっと事務局は何か答えられないでしょうか、今の資料の話につい て。 (小島厚生労働省社会・援護局長)  調べてみます。 (尾辻厚生労働大臣)  では、調べておいてください。それでは、京極所長から御発言をお願いいたします。 (京極国立社会保障・人口問題研究所所長)  国立社会保障・人口問題研究所の京極でございます。3月31日までは日本社会事業大 学の学長を10年やっておりまして、研究所の所長としては新人ということでございます のでよろしくお願いいたします。  私は長年、地方自治体の色々な調査もお手伝いし、また国の審議会にも参加してきま したが、やはり、今回の見直しは日本の社会保障の歴史の中で、また社会保障全般の中 できちんと議論するということが前提で、皆様がおっしゃったように、国が苦しいから 地方へということでは済まされないだろうと思っております。  ただ、歴史的な流れで見ますと、戦後は、国が保護する、国家保護プラス弱者救済と いう社会保障の理念から、やはり全体としますと21世紀型になって、国のみならず、国 はどこまで差し出すかというのは後で議論になると思いますが、国、地方、そして市民 の力、企業の力、そういう社会連帯でいかに自立支援を行っていくかというふうに、社 会保障全体が大きく移っていると思います。介護保険などは、その例だと思います。  そういう中で、戦後ややもしますと、憲法の解釈では、これは色々学者によって違う ようでございますが、生存権はイコール生活保護請求権というふうに、非常に狭義にと らえた向きがありました。しかし、実は生活保護請求権は一部でありまして、生存権を 保障するのには、さまざま他法他施策があるわけでございます。他法他施策という場 合、戦後スタートしたときは、ほとんど他法他施策もないわけでありまして、政府が唯 一頼りという状況から、介護保険しかり、その前の国民健康保険しかり、年金しかりと いうことで、非常に施策が充実してきたことも事実でありまして、そこはやはり、受給 率が増えているからといって見過ごすことはできない。したがって、そういうものをい かに生かすかという条件がかなり違っていると思います。  生活保護の本質は確かに現金給付だというのは現象面を見ればそうでございますが、 今の福祉事務所がこうでいいということではなくて、やはり自立助長というもう一つの 目標を持っているわけですから、金だけ配って、あとはどうぞということではなくて、 入口だけは大変厳しくて適正化を行うが、1回支給するとあとは見ないというのは正し くありません。最近、随分改善はされておりますが、やはり、その点ではもう少し原点 に戻ってやる。そして、他法他施策についても、相当見直してみる必要がある。特に就 労支援については、かつては厚生労働省という名称ではありませんで、労働省と厚生省 が分かれて、厚生省は給付ばっかりやっていて、労働省は就労支援ばっかりやっている というので、本来一緒にやるべきところ、戦前は社会政策として一緒にやっていたとこ ろが、ばらばらになっていました。これが、先ほどの御報告のように、随分めどが出て おりますが、まだまだ端緒だというふうに思っております。  国の責務という場合に、戦後スタートしたときの議事録その他を見ますと、国が100 %持ってもいいのではないかという議論もありましたが、地方のモラルハザードを防止 するためとして一定の負担を持っていただくということでした。しかし、今日、60年ぐ らい経ってみますと、果たして、地方といっても、特に都道府県の役割は大きいわけで ありまして、地方分権化の中で、生活保護は100 %国の責務と言っていいかどうかとい うことは、これから議論を尽くしていただきたい。ただ、広域的な見方というのは非常 に大事で、逆にたまたま福祉事務所を持ったからといって零細町村も制度の責任を負わ なければいけないというのは、何か矛盾があると思います。  それともう一つ、細かい論点でございますが、実は国民皆保険、皆負担と申しまして も、介護保険は国民介護となりましたが、医療保険はちょっと疑問がありまして、医療 扶助を受けると国保から抜けるわけです。それは市町村にとっては、国保財政は被保護 者が入ってくると一発でやられちゃうということで、怖いということがあるかもしれま せんが、やはり、国民皆保険という考え方を貫いて、例えば介護保険と同じように、今 まで国保に入っていたわけですから、国保の保険料を払えなくなったら、保険料を生活 扶助で出し、3割負担なら3割負担、2割負担なら2割負担のその負担部分を医療扶助 として出すというのが筋です。その分、財源がつかないで、ただただ市町村がやれとい うのは、市町村の代表の方がおっしゃるとおり困ると思うのですが、きちんと財源を付 けた上で対応すれば、私は相当大きな変革はできるのではないかと思っています。  社会保障全般ということでありますので、医療保険の在り方がどうなるか、国保の在 り方がどうなるか、年金の在り方がどうなのかと色々あります。やはり、全体的な観点 の中で見る必要があります。スウェーデンの場合はちなみに、年金は国がやって、医療 は市町村の団体みたいなもので県がやって、そして福祉サービスはコミューンというふ うに非常にシンプルなわけです。もっとも北欧の国は必ずしも日本のような大国に当て はまらないので、何でもスウェーデンがいいという見方を私はとっておらず、日本型の 新しい福祉社会の構築というのは大事だと思っておりますが。日本はそうはいかないの で、中二階というか、中二階というと失礼かもしれないが、都道府県の役割はかなり大 きいし、政令指定都市になりますと、相当なことをやられています。だから、これを真 似するということではなくて、やはり、あるものは広域的であるし、あるものはかなり コミューン密着型ということで、生活保護についても、例えば就労支援みたいなもの は、国がやれと言ったって、市町村とか、県の力でないとできないわけでありまして、 そういうことも考えて、ともかく、結論を申し上げますと、歴史の中で今日の21世紀の 視点の中で、社会保障全般の中で生活保護を見直す。それから、さっき児童扶養手当の 話も出ましたが、全体の中で見ていかないと立地点は立たないというふうに思っており ます。  ちょっと長くなりました。 (尾辻厚生労働大臣)  どうもありがとうございました。それでは、私の時計で7時25分でありますことを申 し上げて、谷垣大臣よろしくお願いを申し上げます。 (谷垣財務大臣)  ありがとうございます。生活保護につきましては、今もお話のように、被保護人員が 増加してまいりまして、財政負担も大変増えてきている。先ほど失業率と保護率の関係 も御議論がございましたが、最近では、我が国経済は回復局面になり、つまり、失業率 も改善傾向にあるわけですが、生活保護費は約10%増えているというのが現状でござい ます。国の財政を考えていく上では、生活保護を含めた社会保障関係費、これはもう一 般歳出の4割を平成17年度は超えておりまして、財政を考える上では最大の構造問題と なっておるわけですが、その中で生活保護費の負担金も一般会計でお出ししている分は 年々増加して、現在1兆8,933 億円になっておりまして、これをどうしていくかという のが重要な課題となっているわけであります。  このように生活保護費の増大は、国それから地方の財政にとって見過ごすことのでき ない問題になってきているわけです。生活保護や児童扶養手当の補助率の問題は、昨年 の三位一体でも随分議論させていただきまして、国と地方の協議の場でも随分激しい議 論がございました。今年はこの新しい場で協議をさせていただくわけですが、そういう ことでありますから、地方団体側には、国とは異なるお考えがあるということもよく承 知しております。しかし、それと同時に執行の現場におられるわけですので、そこでの 様々な問題意識を持っておられるのではないかと思うわけでございます。  こういうことを踏まえて考えますと、生活保護、それから児童扶養手当制度、これは 国と地方が車の両輪でやっているわけでありますので、よりよい制度にするという観点 から、この協議の場で、国と地方の役割分担というのはいかにあるべきか、あるいは費 用負担の在り方、幅広く議論を深めていくことができればと思っているわけでございま す。  そういう中で、先ほどもちょっと申しましたが、それぞれの執行の現場で、色々な問 題に直面されて、それぞれ色々な知恵をお出しになりながらやっておられると思います ので、制度の在り方について議論を深めるに際しては、執行に当たっての経験や、執行 されながら制度に対して色々持っておられる問題意識というのを、この場で十分伺うこ とができたらなと私は思っているわけでございます。  いずれにせよ、協議会がせっかくこのように設けられたわけでございますので、実態 を踏まえた議論、私も立場にとらわれることなくやらせていただきたいと思っておりま す。どうぞよろしくお願いいたします。 (尾辻厚生労働大臣)  さすがに谷垣大臣でございまして、2分残していただきました。残り2分で、今後の 進め方についてだけは御相談申し上げておきたいと思います。資料7というのがござい ますが、お探しいただけますでしょうか。1枚紙でございます。  まず、これを御覧いただきながらお聞きいただきたいと思います。目安として、1か 月に1、2回程度開催をさせていただく。なぜ月に1、2回というお願いをするかとい うことでございますが、実は先ほど御説明申し上げましたように、この会議が政府・与 党合意を受けておりますが、その中に本年秋までに何らかの取りまとめを行ってほしい ということも言われております。そうしたこともあり、月1、2回程度開催していただ いて、秋までに何らかの、できたら答えを出したいということを申し上げて、そして案 として、その資料7でお示しをしておりますような、こういう議論の進め方ではいかが でしょうかと御相談申し上げておるところでございます。  いかがでございましょうか。 (谷本石川県知事)  今日中に帰らなければならないものですからこの発言で失礼します。今日1回目とし て2回目で国・地方双方が問題を提起という点はよく理解できるのですが、今、木村委 員の方からもお話がありましたように、自立支援ということも一つのテーマでありま す。財務大臣もおっしゃいましたが、生活保護制度全般についてやはり色々な問題があ るように思います。今、高知の市長さんも色々言っておられましたが、今の生活保護制 度そのものは、実態とうまくマッチングしているのかどうかという点です。市長会の中 では制度疲労を起こしているのではないかという御議論もあるようですから、生活保護 制度全般について問題提起をするというやり方が、私はいいのではないかと思います。  それからもう一つ、3回目は自治体の関係者からのヒアリングも結構だと思うのです が、これについては、どこでどういうふうに関係者を選定されるのか、地方六団体と十 分に協議をしていただきたいと思います。このことだけお願いをしておきたいと思いま す。  そして、4回以降は論点の検討というのがあがっておりますが、これは別にシナリオ があるわけではありませんので、問題提起をして議論をしていく中で、どの事柄を最優 先にやっていくのかという点について、2回目に問題提起をし、その中で、次、何を論 点にするのかということを整理していってもいいのではないかと思っております。よろ しくお願いいたします。 (尾辻厚生労働大臣)  岡ア高知市長、どうぞ。 (岡ア高知市長)  それともう1点でございますが、我々市長会の中で、例えば関係する100 市にアンケ ートを取るなど、色々な作業部会のワーキングチームをつくっております。その関係 の、例えば色々な意味での分析ですね。我々は大都市問題でもあるととらえていますの で、どうして地域間にこれだけ偏在があるかというところもしっかり分析をする時間も 要るわけでございまして、それを考えますと、月1回ぐらいのペースでないと無理では ないかなと考えております。その点を少しお含み置きをいただきたいと思っておりま す。 (尾辻厚生労働大臣)  目安として、月1、2回というふうにお願いをしておりますが、いずれにいたしまし ても、それぞれ委員の皆様方の御都合をお聞きして日を決めますので、月1回、月1、 2回という言い方、これは言い方でございますので、それぞれ御相談申し上げます。ま た、御都合をその都度言っていただいてということで、とりあえず、こういう言い方に させていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。余り厳密に言ってい るつもりはないものですから、よろしいでしょうか。 (木村地方財政審議会委員)  谷垣大臣もおっしゃったように、やはり全般の現状把握ということが大事だと思いま すので、母子家庭等の自立支援策とかというのをタイトルに出す必要はないのではない かと思います、第2回目ですけど。進め方です。  それから、第7回目以降は、その取りまとめに向けた議論だけでよいのではないでし ょうか。国と地方の役割や費用負担の在り方等とわざわざ書き込む必要は、私はないと 思います。通常のこういう議論の進め方といたしまして、3回目まで出たものを4回目 で論点整理して、それから論点について5回、6回、7回ぐらい議論をしまして、それ で最後は取りまとめに向けた議論だけ書くというのでよろしいのではないでしょうか。 (尾辻厚生労働大臣)  それでは、もう今日の御議論もあったところですから、余りこんなところで喧嘩して いてもしようがないですから、次回以降、取りまとめに向けた議論と、こういうふうに させていただきます。  それから、今お話になった2回の母子家庭等の自立支援策に関する問題提起、これは どういう扱いにしましょうか。 (木村地方財政審議会委員)  「自立支援」を消したらいいのではないでしょうか。それだけにかかわらず全体の現 状分析、問題把握ということになりますので。 (谷本石川県知事)  市長会も言っておられましたが、生活保護制度全般について、やはり色々な問題があ るのではないかという問題意識をお持ちですから、それについて色々な問題提起をし て、そして議論し、論点を整理していけばいいのではないかということです。母子家庭 の自立支援だけが唯一最大の焦点ということではなしに、せっかくこういう形で協議会 をスタートしたわけですから。 (尾辻厚生労働大臣)  わかりました。それでは、いずれにいたしましても、大きく月1、2回という表現の 仕方は御理解いただきたいと思いまして、お願いいたします。  それから、大きく7回に分ける議論という、まずそこのところは御了承いただいたこ とにさせていただきまして、あと、次回の話でございますが、これはどうしましょう か。まず、国及び地方の双方が問題提起ということになっていますが、いきなり問題提 起するのか、事務局が御相談申し上げて、色々お話を伺って、少し整理させていただい て、こういう問題提起ですというふうにいたしますか、いかがいたしましょうか。それ によって、先ほどの御提案というか、御意見についての答えも出てきそうな気がするも のですから、申し上げているのですが、どうしましょうか。 (岡ア高知市長)  よろしいです。自立支援だけに絞られますと、非常に論点が狭くなりますので、少な くとも2回目は市長会でも色々な課題、問題点を完全には整理できていませんが、少し 全般的にお話をさせていただきたいと思いますので、自立支援だけじゃなくて、2回目 は少し全般的な問題提起、解決策まではいかないと思いますが、問題提起をさせていた だきたいと思います。 (尾辻厚生労働大臣)  いずれにいたしましても、誤解のある表現になるといけませんから、自立支援という のは消します。消して広く御議論をいただいて問題提起をさせていただく。それで次 回、皆さんの方からぱっとそのときに、問題提起していただくということでよろしゅう ございましょうか。それでは、その御準備をいただきますようにお願いを申し上げまし て、次回はそういうことにさせていただきます。  それでは、5分ぐらいオーバーしてしまったのですが、申し訳ありませんでした。今 日は御苦労様でございました。 (照会先) 社会・援護局 保護課 企画法令係       電話 03-5253-1111(内線2827)