05/04/20 第14回社会保障審議会医療保険部会議事録           社会保障審議会医療保険部会 第14回議事録                         日時:平成17年4月20日(水)                            13:00〜15:04                         場所:厚労省専用第18〜20会議室 星野部会長  定刻になりましたので、これより、第14回医療保険部会を開催いたします。委員の皆 様には、本日はご多忙の折、お集まりいただき、御礼申し上げます。  まず、本日の委員の出欠状況についてご報告いたします。本日は、磯部委員、岩村委 員、西村委員、北郷委員より欠席の連絡をいただいております。なお、久保田委員、山 本委員、箱崎委員は、若干遅れているようです。  それでは、本題に移りたいと存じます。本日は、前回に引き続き議論することとなっ ていた政府管掌健康保険の改革について議題とし、関連して健保組合等の再編について 議題としたいと考えております。  それでは、事務局から説明を願います。 今別府課長  保険課長でございます。ご説明をいたします。  「政府管掌健康保険の改革について」という資料をお開きをいただきたいと思いま す。前回もご議論をいただきましたが、1ページに基本方針が書いてございます。改め て申し上げるまでもございませんが、基本方針においては、政管健保は財政運営を基本 的に都道府県単位とすること。それから、都道府県別の年齢構成や所得について調整を 行ったうえで保険料率の設定を行う。国庫負担の配分方法の見直しや、被保険者等の意 見を反映した自主性・自律性のある保険運営が行われるような仕組みについて検討す る。ということが前提になっております。  2ページは、これも前回お出しをしましたが、現在の政府管掌健康保険制度の運営に ついての問題点を克服し、保険者機能をより発揮しやすいような形としてどういうもの が考えられるかということで、A、B、Cと三つご提示をいたしました。  Aは、独立行政法人的なイメージでありますが、これは国が保険料率を決定をすると いうことでございますので、自主性・自律性という観点から限界があるのではなかろう か。  Bは、前回、解散のできない健保組合ということで申し上げました。これがあります と、被用者と経営者が理事会を構成をしてそこで意思決定をするという形で、自主的・ 自律的な保険運営がはかられるのではないかということでございます。解散ができない と同時に、これは自主的な設立ではなくて法律によって強制的に設立をする被用者保険 の最後の受け皿ということで、強制設立で、かつ自主的な解散ができない健保組合とい うことで意義を書いてございます。  Cは、それをさらに進めるような形で、保険者を県単位で分割をするというところま で進めた形でございます。これも前回申し上げましたが、こういう形にいたしますと、 指導監督の権限が国ではなくてむしろ各県になるのではないだろうかということ、それ からこういう形で県ごとにしますと、新たに別に財政調整の仕組みをつくらなければな らないこと、その場合に、財政調整の範囲として政管という保険者だけでいいのかどう かという問題点が生じる、ということをご説明をいたしました。  3ページは、いわばB案をベースにいたしまして、敷衍した形で書いております。左 にありますように、現在は厚生労働大臣と社会保険庁、同じく国でありますので、保険 料率の変更が制度改正と一体として議論されることが多かった。それから、被保険者等 の意見が必ずしもよく反映できないのではないか。全国一律の運営でありますので、受 益に応じた保険料負担になっていないのではないか、という問題点がございます。  矢印にありますように、受益と負担の公平、運営の自主性・自律性という観点から保 険者機能を発揮するという形で、右にありますような国とは切り離した公法人という形 で運営してはどうか。そこにありますように、各県ごとに支部をつくりまして、そこで 協議会というようなものを設けて、ここで県単位で財政運営について色々意見を聞く。 具体的には、その県独自の保健事業をやるのにこれくらいの保険料が必要だというよう なものを上乗せをしていただくなりということを想定しております。  そういう各県ごとの保険料の原案のようなものを、最終的には業務執行機関の上に事 業主、被用者で構成をする意思決定機関としての理事会、ここで承認をしていただくと いうことで考えております。  それから、後ほど触れますが、この資料の最後に、官邸において官房長官のもとで行 われております社会保険庁の在り方に関する有識者会議というのがございますが、そこ でグランドデザインというのが出されております。そこで議論されておりますのが、意 思決定機関、業務執行機関、それから監査機関の役割をきちんと明確にすることだとい われておりますので、それを反映するような形で、理事会のところに意思決定機関、各 県の本部、それから支部のところが業務執行機関、それから監査機関並びに外部監査と いうことを強調いたしました。  続きまして4ページでございます。前回、明確に議論をしておりませんので改めて整 理をいたしましたが、2ページのA案、B案、C案、これはいずれも国から政管の保険 者組織を分離するという前提の案になっております。その分離をする意義について改め て整理をいたしましたのがここでございます。  まず一つ目は、年金と違って医療保険の保険者は医療費適正化努力によって保険料水 準が決まるということで、努力によって効率的な保険運営が期待をできるということが 前提でございます。  二つ目は、保険者機能を十分発揮をするということで、事業主と被用者の意見に基づ いて事業運営をするというときに、今の国が直接やる事業運営ではなかなか難しい面が ある。  3点目、保健事業などでマンパワーを柔軟に増やしたいというときにも、今の国とい う組織では限界があるということでございます。  それから、先ほども申しましたが、制度設計主体と一緒では柔軟な対応が困難であ る。  以上のようなことを踏まえまして、新しい政管の保険者組織は国から分離をするとい う整理をして議論いたしたところでございます。  それから、*で書いてございますが、前回も出ましたが、現在、社会保険事務局で行 っております行政事務については、新しい政管の保険者組織ではなく国で実施をする方 向で検討しておることを、念のため書かせていただきました。  5ページは、前回、口頭ではご説明申し上げましたが、新しい政管の保険者の機能と して、適用、徴収、保険給付、保健事業、保険料設定と1番目の〇に書いてございま す。国から切り離した公法人で実施をするというふうにご議論をいたしましたが、それ は保険料を決めたり、あるいは保険給付をしたり、保健事業をしたりというところにつ いての議論でございまして、事業所の適用をし、保険料を徴収するという事務について は引き続き国で実施をすることが適当ではないかと考えております。理由は、そこにあ りますように2点でございます。  1点目は、政管健保は健保組合と違いまして自主的に適用する、あるいは自主的に保 険料を納付することが期待しにくい事業所も含んでおりますので、強制的な公権力の行 使として職権適用、強制徴収という場合が出ております。現在でも年間2万件程度、こ ういう滞納処分を実施をしております。したがって、こういう公権力の行使という立場 から国が適当なのではないか。  2点目は、政管健保の事業所は厚生年金の適用事業所と重なっておりますので、別々 で実施をするのは非効率ではないか。  以上2点から、政管健保の適用徴収については引き続き実施をするのが適当ではない かと考えております。  6ページは、現状の説明でございます。現在は、厚生年金も政管健保もそれぞれの根 拠法に基づいて、社会保険庁で一体として徴収をしております。したがいまして、片方 だけ納めたいというような運用は認めておらないわけでございます。今ご説明しました 案でありましても、政管健保の保険料の徴収事務は、公法人ではなくて引き続き国で実 施をするということでございますので、この運用については特段変わりはないというこ とでございます。  7ページは、今ご説明をしたことを絵にしたものでございます。左にありますよう に、保険者の機能のうち、適用、徴収の部分は引き続き厚生年金と同じ実施主体で、一 緒に実施をする。給付の部分について、政管健保としては新しい公法人ということで実 施をする。そういう形で考えております。  右は、それを今の組織に引き移して書いたものでございます。したがいまして、保険 料の徴収、滞納処分というものは、引き続き全国312か所の社会保険事務所を通じて実 施をする。そうやって集めていただいた保険料を年金のほうの組織から新しい政管の実 施組織に移すということで、その保険料を前提として給付の事業を新政管の公法人で実 施をするということを考えております。  8ページは、法律的に整理をするとどうかという資料でございます。保険者の機能 を、今申し上げましたように保険料の適用・徴収という部分と保険給付をするという部 分と分けて考えまして、適用・徴収をするという任務は国が担う。保険給付をするとい う任務は新しい公法人が担う。保険者機能をこういう形で分担することが可能かどうか という議論でございまして、ここは法制局ともよく相談をしまして、こういう形で保険 者機能を分担することが可能かということで、今、検討をしております。  下は、参考までに、もしそういう構成がとれないとするとどういうことになるかとい うのをお示しをしたものでございます。国でもちます適用・徴収から給付までの保険者 機能のうち、適用・徴収以外の給付の機能を公法人に代行させるという法律構成が可能 であろうということで、ご参考までにお示しをいたしました。  9ページ以降は、先ほど申しましたが、社会保険庁の在り方に関する有識者会議で、 新しい組織のグランドデザインということで示されたものでございます。政管健保に関 連するところの抜粋をおつけしております。  1の(1)の○の三つ目に、政管健保の今後の在り方については、現在、平成18年の 通常国会への法案提出に向けて、社会保障審議会及び社会保障の在り方に関する懇談会 において、医療保険制度改革の一環として検討が進められている。こうした議論も踏ま えると、政管健保については被用者保険の最後の受け皿の機能は確保しつつ、医療費適 正化等の保険者機能を強化する観点から、国とは切り離された公法人において運営する ことが適切と考える、と書かれております。  11ページに、先ほど、図で若干ご説明をいたしましたが、意思決定機能、業務執行機 能、及び監査機能をきちんと分類をして、それぞれの分担を明確にする、機能強化をは かるということが記述をされておりますので、ご参照ください。  以上が政府管掌健康保険についての説明でございますが、引き続き、資料2に基づき まして、健保組合についてご説明をいたします。  1ページ、同じく基本方針でございます。これは、健保組合については、小規模・財 政窮迫組合の再編・統合に資するよう規制緩和等を進めるとともに、再編・統合の新た な受け皿としての都道府県単位の地域型健保組合の設立を認める、というのが新しい宿 題として書いております。  2ページに、健保組合の全体的なイメージを書いてございます。左側にありますよう に、下のほうにまず全国展開の健保組合、約400組合、それから、真ん中にありますそ の他の組合、1100組合と書いてあります。これはそれなりに今の自主性・自律性のある 保険運営を引き続きやっていただくということで整理がされていること。問題は、その 上の財源率90%を超える組合、これは財政窮迫の組合。それから縦に入っておりますが 小規模組合。これは設立認可基準を下回るような規模の小さい不安定な組合でございま す。それらの財政窮迫の組合と小規模な組合については、従来から補助金を出す、ある いは財政再建計画を立てて指導をするということで、財政運営の安定化あるいは合併に よる安定化をはかってまいりました。  それが個別にどういうことをやっておるかというのは、3ページをご覧ください。3 ページに、財政窮迫組合について、指定組合制度ということで指導をする。それから、 給付費の補助をする、共同事務事業に対する補助をする、ということが書いてございま す。  同じく2の小規模組合についても、合併促進の補助と共同事務事業。  以下、4ページ以降に個別にこれらの事業の中身が書いてありますので、適宜ご参照 いただくことにして、8ページ、9ページに「新しい地域型健保組合について」という ものを整理をいたしました。基本方針にもありますように、小規模・財政窮迫の組合を 統合するということで、今、簡単に申し上げましたが、従来も補助金を出したりという ことで、そういう受け皿づくりはしておりましたが、今回、この地域型健保組合という 新たな制度をつくることによって、もう一つ、統合の促進をはかろうではないかという 趣旨でございます。  2で書いてありますように、地域型健保組合ということで三つほど今の考え方を変え るという部分をつくって統合を進めようということでございます。  一つ目は保険料率であります。今は組合が統合する場合には、当然保険料率は合わせ ていく。ここはなかなか難しい課題になっておりますが、まず統合してしばらくのあい だは2本立ての保険料率で経過措置を設けてやってもいいようにしようではないか、と いうのが1つ目でございます。  2つ目は積立金でございます。これはどちらかが積立金をもっているときに、積立金 をもったまま一緒になるのは難しいという現状がございますので、これも特例的に一定 期間、もともともっていた積立金を別勘定で保有をすることを認めてはどうだろうかと いう点でございます。  9ページは、従来、同種同業の健保組合でないと統合できないということでございま したが、こういう小規模なり財政窮迫の組合の統合を進めるためには、その部分の要件 も緩和をして、異業種の健保組合同士でも統合を認めるようにしてはどうかということ でございます。  以上、保険料率、積立金、同種同業の要件という三つについて規制緩和をして統合を 進めようということでございます。  大前提は、地域型で同一県内の健保組合に限るということでございますので、その下 に念のために書いてありますが、政管健保の適用事業所がこれに参加をするということ は考えておりません。それから、これは前回も申し上げましたが、そういう形で統合を 進めていくということでございますので、例えば同一県内にこういう形で統合した組合 が複数できても、それは全く問題がないと考えております。  10ページは、今申し上げたものをまとめて書いたものでございます。  11ページ以降に、今の組合員の現状、財源率、規模、あるいは都道府県別という形で 整理をしておりますので、適宜ご参照いただきたいと思います。  最後に健保組合の活動範囲が、単一県内か、あるいは全国的にまたがっておるかとい う表も参考につけております。 星野部会長  どうもありがとうございました。それでは、ご意見、ご質問等をお願いいたします。 齋藤委員  まず資料1からです。ただいまのご説明並びにこれまでの議論の確認にもなります が、経団連としては、政管健保の財政運営は全国一律から各都道府県単位だけでなく、 前回の委員会でも申し上げましたように、ブロック単位に分割することよりまして、被 保険者等の意見を反映できる自主性なり自律性のある保険運営が可能な仕組みを構築す べきと考えます。財政単位ごとに効率化がはかれるような保険料率を設定して健全な財 政運営を確保していただきたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思いま す。 星野部会長  ありがとうございました。 清家委員  細かいところに入る前に、一つだけ確認をしておきたいと思います。  今のお話にもありましたが、地域をどのように分けるかは別にして、地域別に保険者 機能をもたせるということは、給付はユニバーサルに行うとしても、保険料等が地域別 に異なってくる可能性があるということです。どのぐらい異なるかどうかは別として も、保険料率等を地域ごとに決める。それは、例えば県ベースで県ごととか地域ごとで 健康に対する投資を行うためのインセンティブとか、これまで議論があったようにそう いう地域ごとに例えば保険料に格差をつけるというのは、私は基本的に賛成です。  ただ、逆に言えばそのことは、一方で地域ごとに保険料が異なってくれば、それは当 然、企業立地とか労働移動に影響を与えます。つまり、保険料の安いところに立地しよ う、あるいは保険料の安いところに引っ越して生活しようという動機が生まれてくる。 これも,競争を促進するという意味では私は賛成です。ただ、ここでもし皆さん方が、 地域ごとに保険料率が違ってもいいよということに同意されるということは、例えば具 体的にいえば新しいベンチャー企業がつくられるような場合には、一般的には保険料の 低いところにそういったものが多く立地するようになる。逆に言えば、保険料が高いよ うなところはそういう点で不利になる可能性があることも認めることだということは認 識しておいたほうがいいと思うのです。  もう一つは、何らかの理由で、例えば非常に年をとっていてほかに移転できないと か、そういう人に、つまり経済学の言葉でいえば足による投票が行いにくいような立場 の人にとっては、たまたま住んでいたところの保険料率が上がったりするということ は、必ずしも選択のできないところで不利益をこうむることがあり得ることも受忍しな ければいけない、あるいは受忍しなければいけないのか、そういう点については別途な んらかの救済策といいますか方策を講じることを考えるのか、その点を確認というか整 理しておいたほうがよろしいのではないかなと思いました。 浅野委員  政管健保についてですが、資料1の4ページですが、3ページも同じことですが、〇 でいうと四つ目、国は制度設計主体でもあるし、だから面倒くさいのだとなっていて、 柔軟な対応が今はできていないということ、これをデメリットのように書かれています が、そうなのでしょうか、と。つまり、政管健保において保険料率がどう決まるかとい うことは、複数の利害関係者、プレーヤーを巻き込んだ、例えば医師会とか薬用メーカ ー、患者、納税者、保険料負担者、みんなそれぞれ保険料負担は低いほどいい、医師か らすれば診療報酬は高いほうがいい、そういう複数の利害関係者、そして変数があっ て、それが調整された結果、保険料率というのは出てくるのだと思うのです。「べき」 というよりも「である」のです。単なる計算上でポンポン出てくるものではなくて、変 数の中に診療報酬表というのがあるわけです。医療費の単価ということがあるわけで す。であるからこそ、国会の場で決められているわけです。  つまり、これはゲームを構成するわけでありまして、保険料率をどう決めるかという ゲームをどう構成するかというときにそういう複数のプレーヤーがいて、その利害の調 整をどの場でやるかという議論がスポンと抜けているのではないか。そしてこれをデメ リットのように書いてありますが、これは法律を制定するのと同様にやはり国会でやら なければ無理ではないでしょうか。これは、「であるべき」とかというのは別に、赤裸 々な現実からいってこれは無理ではないかと思います。これが一つ。  ですから、この叙述をもうちょっと吟味すべきだと思います。これをデメリットとし てとって、だから分離すべきだというのは、すこぶるラフな議論ではないかと思いま す。今はどうしてこうなっているかというか、それはどのように機能しているのかとい うことをちゃんと吟味すべきであると思います。簡単に、地域別にすればそれぞれ保険 者という単位で競争とかそういうのが起こってよくなるというのは、これはいかがでし ょうか。  それに関連してですが、今の引用したところの一つ上ですが、「保健事業等について 各都道府県ごとの」とあって、これは前回だったか議論があったと思いますが、都道府 県と書かれたときに、為政者、例えば知事を執行者とする県というふうにいわれている のか、単なる地理的な広がりとしての県といわれているのか、これがまぜこぜにいわれ ています。これはどちらなのかよく分からないのですが、たぶん保健事業ということに ついては知事を執行権者とする為政者としての県ということがイメージされているのだ と思うのです。全体についてそうなのですが、保健事業というのが医療保険の文脈で語 られると、医療費を引き下げるためにやられているというか、それが前面に出ているの ですが、やっている知事側というか県側とすればそんなことはございません。かわいい 県民のために、病気にならないように、健康を増進するためにとやって、その反射的利 益として医療費が下がるかもしれないということで、べつに医療費を引き下げるために 必死になってやっているという意識でもないし、実態もそうではないのではないでしょ うか。  これを前提として県単位とか何かというのが議論として進められるとすれば、これは 理屈というよりは実際のパフォーマンスというか実態の現実的な評価という面からいっ てもちょっとラフな議論ではないかと思いまして、今の2点ついてはやや決め打ち、決 め込みではないでしょうか、と疑問を呈したいと思います。 松原委員  私も、今おっしゃった2点については近い意見をもっております。2番目の、本来、 保健事業というのは医療費を抑制するために行われるべきものではなくて、国民の健康 をいかに保つかということのために使われるべきものだと私は思っております。そこの ところがまず混同されている点について、私は間違っていると思っております。  第1点目の保険者の機能をとおっしゃいますが、その原点となるところの、どれだけ 費用を徴収するかということは、まずそもそものところから議論しなければならないの でしょうか。経団連は競争、競争とおっしゃって、競争に勝った者が非常に恵まれて当 然だといつも主張されるわけでございますが、私どもも個人の尊厳を守るということに ついて自由主義社会が一番正しいと思っております。その自由主義社会の中で競争する ことについて文句をいっているものではございません。しかし、病気になったら、どん なにしっかりした方でも競争はできません。つまり、ある一定のレベルから病気になっ て健康を失って落ちた方々を、どのようにして健康に戻すかということが医療保険の最 大の目的でございます。その元に戻すというところに関して、これも競争を入れること についてはいかがなものかと思っております。  そういった考え方からすれば、当然、保険料率というのは国民全体を支えるものでご ざいます。今回は政管健保でございますので、比較的経営基盤が大きくないような企業 において、そこに勤めておられる方々、そしてその家族の方々のための保険でございま すが、そういった保険の中で、はたして個々に分割して保険料率を別個にすることが正 しいのかどうかという議論をきちっとしないままに、すべての保険料率は各ところで別 々に決めなさいという話を、突然もってこられてそういった議論から始まって、A案、 B案、C案のうちのどれかから選べとおっしゃるのは大きな間違いだと思います。  私どもは、あくまでも医療保険というのは競争する前の前提、機会の平等を保つため の仕組みだと思っておりますので、国民の健康を守るためにはどうあるべきかという視 点からまず考えねばならないと思っております。経団連のおっしゃる、競争すればすべ てがいい結果が出るとは私どもは全く思っておりません。 齋藤委員  我々はそういうふうには全然思っておりません。今、浅野委員、松原委員がおっしゃ いましたが、保健事業や健康増進事業を事前に展開するのは当然のことです。それらの 事業をよりわかりやすく見えやすくするためには、国全体よりも、もう少し地域に密着 した形で行うべきです。それから、いくら保険料といいましても青天井にできるわけで はございませんので、今の日本の国力なりを考えて医師会にもご発言ていただきたいと 我々は思っております。 星野部会長  ありがとうございました。 松原委員  私どもは、青天井にしろと申し上げているわけではございません。これは、国の最高 機関である国会で料率の最高金額を決めて、その中で私ども中医協でまた議論をしてい るわけでございますから、すべてが青天井になるということで、いくら医療費がかかる かわからないから、そこのところを今からなんとでもしなければならないという議論で おっしゃるのは、私たちは間違いだと思っております。 星野部会長  では、どうぞそこを。 今別府課長  いくつかございましたので、ご説明をします。  まず、地域の医療費に応じた地域の保険料ということになると企業立地が変わったり する、そういうことを認識をしなくてはいけません、というお話でした。ちょっと今日 はご説明が不足したかもしれませんが、これは、年齢構成と所得構成については財政調 整をするということが基本方針にもうたわれておりまして、前回も資料でお示しをしま したが、生の数字そのままだと、全国で一番高いところと低いところで23/1000ぐらい 差が出ますが、そういう調整をして、一番高い北海道で87/1000、長野で75/1000、そ ういう二つの要素はまず調整をするということをつけ加えさせていただきます。  それから、県というときに自治体の県と地域の広がりということでございました。先 ほどのA、B、C案のC案で(自治体)と書いておりましたが、ここは新しい保険者組 織を指導監督するという意味の県は自治体でありますから、その他のところで書いてお りますのは、概ね地理的な広がりとしての県についてご説明をいたしたつもりでござい ます。  保健事業についてでございますが、保健事業はそれなりの保険料を使ってやることは 当然でございますが、将来的にそういうことによって医療費が抑えられるということ も、これまた生活習慣病対策そのものでありますので、当然のことであろうと認識をし ております。 清家委員  もちろん、地域間の調整のことは知っていますが、いずれにしてもそうした調整をし たあとで地域間に格差が出る場合には、それは当然、企業や個人の行動に影響を与える ということをしっかりと認識しておかなければいけないということでございます。 星野部会長  どうもありがとうございました。 久保田委員  政管健保改革の最大のテーマは、保険者機能をどう強化するかということではないか と思います。そういう意味では、現状の政管健保ということでみますと、被保険者に対 する情報提供とか健診事業の不十分さとかいうものがあるのではないか。  また、保険者による医療費適正化に向けた努力が保険料に反映される、そういうイン センティブなり努力が仕組まれている格好になっているかどうかという点では、極めて 問題があるのではないかと思います。  そして三つ目には、当事者といいますか事業主、被保険者、それが直接的に参画をし ているという実感なり、またそういう仕組みになっていないのではないか。すなわち、 保険料率の決定とか事業運営に保険料を負担している当事者が実際に参画をしている実 感がないというか、そういう仕組みになっていないところに多くの課題があると思って います。  したがって、保険料率の問題もございますし、またそれを地域というくくりで切った ときのご懸念なりそういう議論はあると思います。ただ、組合健保も各組合ごとに保険 料は異なって、自主的に決めています。また国民健康保険も、あるいは国保組合も保険 者ごとに保険料を設定しているわけで、政管健保だけが全国一律という、それが都道府 県がいいのかどうかという議論はあるでしょうけれども、なぜ一律であるべきかという ことについては説明になっていないのではないかと思います。  そういう意味では、連合の基本的な見解としては、財政運営を都道府県単位として、 各都道府県ごとの保険料率の一定の格差を公費で財政調整を行っていくべきではない か。そして、予防を含めて努力したところが保険料に反映するようなインセンティブと なる仕組みを盛り込むことについて、前向きに考えるべきではないか。  もう一つ大きな視点として、労使が参画をする運営評議会の設置について、政策的に 一貫して要望してまいりました。そういう点では前向きに受けとめるべきだと思いま す。  また、競争云々、あるいは自由主義社会か社会主義社会というのでしょうか、わかり ませんが、そういうあまり原則論をいっていてもらちがあかないのではないかという感 じがいたします。医療の質を含めてどれだけ納得性のある、しかも質の高い医療を提供 するかということと同時に、年金も含めてこれほどの少子・高齢化の中で、負担を含め てまさに日本が置かれている状況の中で、医療だけではありません、年金や介護を含め た社会保障全体の負担と給付、そして国民の納得性をどう設定していくのかということ は、これは論点としては欠かせない課題ではないか。  財政の問題だけをやるということについては連合は反対です。また、一部、財政諮問 会議でしょうか、全体でキャップをはかせてGDPの伸び率の云々などという非常に荒 っぽいやり方についてはとんでもないと思っておりますが、かといって、そのことを抜 きに国で議論をするということで答えは出るはずはないのではないかと私は思っており ます。  それから、少しほかの件で技術的なことになるかもしれませんが、今、議論になった 以外のところで指摘なり質問をさせていただきたいと思います。  まず第1点は、政管健保の具体的改革とその設計図の具体化についての今後の進め方 とスケジュールについての質問です。社会保険庁の在り方に関する有識者会議で一定の 方向性は確認されたと聞いておりますが、新組織の具体的な在り方については、この医 療保険制度改革の議論と合わせて詳細な検討を行う。したがって、本医療保険部会で検 討を行うことになるのではないかと思いますが、いつまでにどういうスケジュールで具 体化をしていくのか。方向性や理念ということだけではなくて、実際にワークをさせて いく、機能させていくとなると相当組織の在り方等々も含めて詰めていく必要があると 思うのですが、その辺は非常に大事なスケジューリングだと思いますので、ぜひ教えて いただきたいと思います。  大きな二つ目です。4ページの一番下に※がございますが、保険医療機関の指定等の 行政事務についてでございます。現時点において、国とした場合に、具体的な実行組織 はどこになるのか。いわゆるブロック単位、あるいは県単位、色々構想があるやに聞い ておりますが、具体的な実行組織はどこかということを教えていただきたい。  と同時に、ここに1行書いていることについて十分把握ができておりません。保険医 療機関の指定取消しに加えて指導監督も行う、ということになっていると思いますが、 現状、いったいどういう体制で、そして保険局と社会保険庁及び地方事務局の組織と人 員体制はどうなっているのか、そして指導監督の実情はどういうことになっていて、ど ういうケースが今まであったのか。ここに掲げている項目に対して実際に機能はしてい るのかどうか、そして今後はどうあるべきなのだということについて、資料つきでぜひ 教えていただきたいと思います。これは次回で結構ですが、この一番最後の実態と今後 の対応についてぜひご説明をいただきたいと思います。  最後に三つ目でございますが、5ページから9ページに書かれていることの中で、厚 生年金と政管健保の一体的な適用・徴収はぜひ必要だと考えております。ただ、7ペー ジの表では実際の適用・徴収と給付が実質的に分離されることになります。そのことが 保険者としての集めることの大変さ、それをしっかりコスト意識をもって使っていくと いう一体的なマネジメントの仕組みが分離されることによって、非常に甘くなっていく ということになりはしないか。取るところは取るだけ、それを給付する側は給付するだ けみたいなことになりますと、本来の保険者機能を強化をして、そのことをしっかりマ ネジメントを働かせながらどう反映をさせていくかということに危惧をされる部分が基 本的にあると思います。  そういう意味からしますと、7ページのブロックの表でも右から左に矢印がいってお りますが、やはり左からも右に矢印があり、さまざまな往復の関係性の中でしっかり討 議をしていき、答えを出していくという仕組みが必要ではないかという感じをもってい ます。例えば8ページの上のカッコの二つ、三つを読んでいきますと、本部理事会と各 県支部との関係性でございますが、どうも各県のところでは「保健事業等の支部ごとの 事業内容に応じた料率を加算し」というところについてのみやるという見方になります が、保険者としての給付や医療費の適正化のインセンティブはちゃんと確保されている のか、あるいは各県支部における保険者としての努力反映は、保健事業等だけで法定給 付には向かっていかないのか。例えば本部理事会の決定する保険料率に異議申し立てみ たいなことについてはできないのか。  要は、徴収と給付、そして保険料設定の間の密接な連携といいますか、そういうこと についてワークする仕組みをもう少し検討してつくっていく必要があるのではないか、 という意見でございます。 星野部会長  ありがとうございました。それでは、第1点と第3点について、お答えください。 間杉課長  今、進め方についてお話がございました。まず、政管健保ということにつきまして は、保険課長からもご説明申し上げましたが、官房長官のもとでの在り方懇談会が5月 に大まかな方向性をとりまとめるやに聞いております。したがいまして、私ども、5月 にも本部会、5月からは高齢者医療制度を中心にご議論賜りたいと思っておりますが、 また、並行してそういった折りの節目にご議論をいただけるように準備をいたしたいと 思っております。  いずれにいたしましても、これは平成18年、来年の通常国会に提出する予定でござい ますので、医療制度改革全体の中身の一つということになろうかと思いますので、夏ま での議論、さらには年末までに私どもとしては成案をとりまとめる、そんなスケジュー ルで議論を進めていただきたいと思っております。  それから、保険課長からお答えすればよろしいのかもしれませんが、指導監督業務の 現状ということで、医療機関の指導監督でございます。これまでどうなっていたかと申 しますと、私どもで申しますと国、保険局医療課などをやってきたのですが、そこが県 の社会保険事務局、これは社会保険庁組織でございますが、そこの力を借りまして、ま た一方で国保の医療機関の指導監督は今は県にお願いしておりまして、そこの両者が一 緒に指導監督をさせていただく、こんなことになっております。  ただ、前回もお話し申し上げましたが、そういう意味で社会保険庁というのか、政管 の保険者たる社会保険庁というものと、まさに社会保険業務の手足としての社会保険庁 というのが渾然としていたしております。基本的には私ども、保険者を仮に公法人にと いうことでこの整理をするとしますと、行政的な事務は行政的な事務としてはこれを国 の経路でやっていくということで再整理をしたいと思っております。  今、現状を含めて次回にでも資料を添えてというお話がございましたので、私どもも 至急検討いたしまして、次回にでもまたご相談させていただきたいと思っております。  それから、浅野委員から、色々なプレーヤーの代表としての国がさまざまな変数の中 で保険料率を決めてきたのではないかというお話がありました。これまではまさしくそ うだったろうと思います。そういう意味では、診療報酬という医療費の大きな要素、あ るいは医療提供体制、そういったものをつかさどる政策的な主体としての国、さらに、 ではそれと社会保険庁、保険者はどういう関係だったのか。たまさか私どもの膝元にあ ったものですから、政策当局としての国、厚生労働大臣というものと、それが社会保険 庁、政管の保険料率の法定化ということにつながっていた。  ただ、ひるがえってみますと、今、国保などは完全に一つのリーガル調整者を生んだ うえで保険料率を決めてくる、健保組合なども一つの合理的な手続を踏んだうえで決め てくるということになると、国がもっているそういった政策決定機能というものと、ま さに保険者としての保険料の決定過程を分けて考えてもいいのではないか、そこがどう か、そこのご議論をぜひいただきたいということで書かせていただきました。 浅野委員  今の最後のところなのですが、逆に考えて国保は、診療報酬もそのまま使うのです が、制度設計は国に任せて、保険者とその部分が切り離されています。組合健保もそう です。唯一政管健保だけがそこの連携をもっていて、ディシジョンメーキングのある意 味では、合理的かどうかは分かりませんが、利害の調整という形ができるゲームのルー ルになっているということなのですが、その最後のところも今回は切ってしまうという のは本当にワークするのでしょうかということなのです。  政管健保の保険料率をめぐっては、もう40年ぐらい前には、内閣も飛んでしまうよう なまさに政治問題なのです。いい悪いは別として。であるからこそ決めることができた のですが、これを切ってしまって本当にできるのですかというのが率直に心配なので す。だからここの書き方で、制度設計主体と保険者を分離することによって柔軟な対応 が可能となるといっているのは全く逆で、ここをつないでおかなければ制度としての、 私が何度も言っているゲームがワークしなくなりはしませんか、というのが大変に心配 なのです。今の間杉課長の最後の説明は、いや、国保も組合健保もやっているからとい うのは、私は逆にそれが論拠なのです。であるからこそ、ここはつないでおかないと政 治的なディシジョンメーキングというのはできないのではないでしょうか。これはやは り保険料率は法律で決めるべきなのではないでしょうかということをいっているつもり なので、ちょっとかみ合わない議論ではありますが、大事な議論だとは思っています。 河内山委員  都道府県ごとに料率を決定をする構成要素で、もちろん年齢の問題と調整の問題、そ れから保険料率の安定性のことを考えますと、一定の規模をもっているかどうかという のが非常に重要な要素ですが、政管健保の場合は十分な被保険者の数というか加入者の 数はあると思いますが、全国的にみてどれぐらいのそれこそ格差が出てくるのかという のが、これは実態として知りたい。それが一つです。  それから、よく読んでみたら、本音ではそうなのかなと思うのですが、2枚目の資料 の下側の枠の中で、現行とA、B、Cの比較表の中でメリット、デメリットが書いてあ るのですが、先ほど、B案を主体としてご説明になったのですが、「自主的な運営なの で機動的、弾力的に料率引き上げが可能」と書いてあるのですが、これは引き上げに限 らないですよね。変更が可能。まあ実態としてはそうなのかもしれませんが、やや誤解 を招くのではないかと思いますので、それはご訂正をいただきたいと思います。  前半の部分は、どれぐらいの格差があるかなということが知りたいということでござ います。 星野部会長  ちょっと答えてもらいましょう。 武田課長  社会保険庁医療保険課長でございます。  規模というご指摘でございましたので、今、政管全体で約1900万人の被保険者がござ いますが、これを都道府県ごとにみたらどうなるのかということでございます。平成15 年度の数字で申し上げますと、全国で1881万5000人の被保険者でございますが、一番大 きなところが東京で180万6000人。100万人を超えますのが、東京、愛知、大阪、北海道 の4か所で、一番小さいところは、鳥取県12万2163人、山梨県12万3531人になります。 ほかの県はこの間に入るということでございます。 山本委員  色々なご意見やら出されておりますので、それらは大変いいことだと思うのですが、 私は思うのですが、保険の保険者が大別すると三つに分かれているのですが、こういう 機会に、健保も政管も国保も一つにしていくのだという議論はどうしてしないのか。こ こは、しないのか、できないのかということが一つ、どうしても疑問。これは一挙にい こうとは思っていません。それは長い時間がかかって、あるいはできるかできないかわ かりませんが、やはり議論はすべきだと思います。ところが、今まで1回もそういうこ とが出たことがないので、いかなる理由でこういうところで議論がされないのか、それ を一つ教えてください。  それから、今はこういう保険関係についてはほとんど財政論ばかりが議論されていま す。ところが、医療というのはそういうものではないと思うのです。一番大事なこと は、人の命、人命を大事にするということ、先ほどお話があったとおりなのです。です から、財政だけで議論していきますと、人間というものはその次になってしまうわけで す。単純にいうと、これだけしか財源がないからこれだけの治療しかできないよ、とい うことになっていくわけです。これは間違っていると思うのです。ですから、先ほどど なたかが言っておりましたが、人命を尊重してやっていくことが大事だ、まさにそのと おりだと思うのです。  ですから、こういう議論をするときには、これと相手方の資料が十分出ていないと議 論ができないのです。例えば、私はこの部会で一回話したことがあるのですが、私の母 が亡くなるときに、東京にいってくるから、帰るまで生かしておけと言って家を出たの です。そうしたら、それは無理だというのです。なんで無理かといったら、要するにも う老衰なのだ。老衰は手当のしようがないというわけです。悪口をいうわけではありま せん。老衰は手当のしようがないのが、どんどん入院するではないですか。だから、1 回目のときはいいです。年寄りがこうなったからといって入院する。そのときに、これ は治療しても治療効果はないということをちゃんと明らかにすることが必要なのです。 ですから、老人の人たちが亡くなる前に、おうちに帰りたい、家で死にたいとみんな言 うでしょう。それは、治療の効果のないものを治療することをやっていることにほかな らないと思うのです。  ですから、人命を大事にすることはいうまでもないのですが、人命を大事にするため にカラ運転をやってはならないということもあり得ると思うのです。ですから、保険を 議論する場合に、財政論だけでなくて人の命を大事にするのだ、医療の本質はそこにあ るのですから、そこらあたりも併せて議論をしないと、財政論だけでいくと角が立った 議論になってしまうのです。どうしてそれを出していかないのか。ただこれは、あなた 方のほうにしてみれば、そういうものは出しませんというかもしれませんが、そこらあ たりをもう少し考えた文言がこの中に入ることが必要だと思います。それを考えていた だければと思います。  ですから、保険料についても、先ほどのどなたかがお話ししておりましたが、国民健 康保険だけ取り上げても、各保険者はばらばらなのです。保険料は統一されているもの は何一つないわけです。全部ばらばらなのです。もちろんそれは、ばらばらでうまくや っているからそれでいいじゃないかといえば、それきりかもしれませんが、これは保険 料のほうが不足しているわけです。政策的な保険料を決めていっているものですから、 どうしても別の負担が起きてくるのはおわかりでしょう。  そういうことを考えていくならば、保険料というものをここに書いてあるようなこと だけで議論していっていいのか、あるいは政管にしても、例えば私の言うように一本化 できないで政管だけを議論するとするならば、そういうことで保険料を決めるようなこ とが簡単にできるのかどうか、非常に疑問だと思うのです。だから、もう少しこの組み 立て方があるのではないかと思うのですが、そこらあたりは、私のひとり勝手の考えか もしれませんが、できれば教えていただきたいと思います。  以上、二つ三つ申し上げましたが、それに対してお尋ねしているのですから、お答え をしてください。お願いをします。 間杉課長  一元化ということ、一本化ということについて、今日、なぜ政管健保のお話、個別個 別のお話をさせていただいているかと申しますと、閣議決定の中でも一元化というもの を目指す。まず、国保は国保、被用者は被用者の中でどこまで再編ができるかというこ とをやってみようということがあったものですから、まずはというところで、では政管 はどうしましょう、健保組合はどうしましょう。国保はどうしましょうという議論もま たやらせていただきたいと思いますが、そんなことで進めさせていただいているという ことです。  おそらくおいでの委員の方々の中にも、そういった問題をめぐってさまざまなご議論 があると思いますので、今日はそういったところまでご議論をということであれば、ぜ ひ私どももお願いをしたいと思っております。  2点目の、人命を尊重しているということで、このあとに実は議論させていただこう かと思いましたが、今、一方で医療費を経済の範囲の中にとどめたらどうかという議論 があって、私どもも大変苦慮しております。私どもは、そこは人の命、人の健康をどの ようにまず考えるかということで、今日、このあとにご説明申し上げようと思って資料 も用意してきました。ただ、その中では、まだ私どもも、例えば今おっしゃいました終 末医療、あるいはどういう死に方を選んでいくかというところまで、浅学なものですか らまだそこまで議論が立ち至っておりません。おりませんが、非常に大事なところだと 思っておりますので、ぜひこの部会でも改めてそこはご議論いただけるよう、私どもも 終末というところを少し勉強させていただきたいと思っております。 山本委員  今、私がいった老衰のところの話、それから人命の話は、だれが一番いっていると思 いますか。私の横に医師会の代表の松原さんがおるからあまりいわれないけれど、医師 会の方が一番いっているのです。一生懸命に治療してこの人たちを助けたい、この人た ちの病気を軽くしてあげよう、怪我を治してあげようと努力をしているにもかかわら ず、片一方で財政的な締めつけだけをされたのでは、この二つをやればこの人は助かる のにな、早く治るのになと思っても、どうしても一つになってしまうというわけです ね。  そういうのは、東京の人は知りません。私は九州のほうですから、みんな医師の人た ちがそう思っているのです。医師のいうことがオールマイティとは言いませんが、直接 治療をしている人たちがそういうことを言っているわけです。だから、人の命が一番大 事であることを忘れて保険料とか財政論ばかりを押しつけてくるのは適当でない、こう いうことをいっている。これだけ覚えておいてください。今日、申し上げておきますか ら。 対馬委員  私ども健保連も、そういう意味では患者中心の医療ということですから、決して人の 健康、命を粗末にというのは毛頭考えていない。むしろそれを第1番目に考えていると いうことなのです。ただ、今現在議論されているのは保険者の再編統合論、そういう中 でどう考えていくかということだろうと思うのです。  前回からお話しさせていただいて、私どもの基本的考え方は、清家委員、齋藤委員、 久保田委員などと非常によく似ていると思っているのですが、保険者機能論というのが 今の政管の最大の問題ではないかということから議論がきていまして、それはまさにそ のとおりであろうと。私どもも同じ保険者として政管をみていますと、保健事業の観 点、例えば健診一つとってもいかがなものか。料率もなかなかということでは、なかな か保険者機能は発揮できないだろう。そういう中においては、今回、できるだけ地域の 実情を反映していく。料率の決定についても保健事業についてもそういった方向性です から、それはそれでいい方向、これまでの議論の延長線上にあるのではないかなと思う のです。  ただ、私などからみますと、逆に例えば今日の資料1の、先ほどちょっと久保田委員 が触れましたが、例えば8ページあたりに「政管健保における国と公法人の関係」とい うことで、左側に絵が書いてありますが、あたかも適用・徴収、これは国がやるかどう かというのは、社会保険庁の年金の議論との関係もあるわけでしょうけれども、仮に国 が適用・徴収したとしても、どうも国から公法人のほうにといった姿になっているよう ですが、そうではないのではないか。保険者として一番重要なのは、お金を集めること は重要で、それは否定しませんが、給付とか保険料率の決定とか保健事業、こういった ものが役割として最大の中心課題であろうということからしますと、むしろ適用・徴収 は国に委託する、矢印が逆ではないか。  例えば介護保険でありますと、私どもは市町村から委託を受けまして、被保険者の40 歳から64歳の保険料を徴収しているわけです。それと同じような形で、公法人のほうが むしろ国に委託する。それを踏まえて国のほうは適用・徴収を行っていく。こういうこ とのほうが、全体的な流れ、特に保険者機能論との関係からいうと素直ではないかと思 います。  今の議論について、できればどういうふうにお考えなのか、意見を聞きたいと思いま す。 星野部会長  先ほどの久保田委員の第3番目の質問もその関係なので、両方含めて議論してくださ い。 間杉課長  今の8ページの図に関してでありますが、これは下の参考の図で国から公法人にとい う矢印が、むしろ公法人から国へ適用・徴収を出したらという考え方もあるのではない かというお話です。基本的に、保険者機能をまず分担できるかどうかというのを議論し たのがその上の図であります。これも、どちらがどうということではなくて、保険者機 能を分担することが可能だということでございます。  あとは参考でつけておりますのは、国で現在やっております社会保険の事業、政府管 掌の健康保険事業を前提にして国に全部今やっておりますので、それを公法人に代行さ せるということは、現状から出発をしてこういうことは可能だということを申し上げた わけであります。  先ほどの久保田委員のご議論の中でありましたが、あくまでも保険料の決定自体は公 法人では実施をするということで、今、対馬委員もおっしゃられたように保険料の決定 から保健事業、保険給付までをやるということで、そこは当然、適用・徴収をされた保 険料が足りなければみずから保険料を決定するということでありますので、そこは、た だ使うだけという保険者というイメージとちょっと違うのではないかと考えておりま す。  それから、もちろんこれは片方だけから情報なりものなりが一方的に流れるのではな くて、まさに分担をする以上、両者の連携は当然考えていかなくてはいけない。それ は、先ほどご指摘にありました今後の制度設計においてさらにご相談をしていきたいと 考えております。 対馬委員  現行からいうと、今、説明されたことなのでしょうけれども、今回、新たに公法人を つくるということですから、そういう意味からしますと現行の仕組みを頭の隅にはおか なくてはいけませんが、あくまで今度の新しい公法人がいかに保険者機能を発揮できて いくか、料率を決定できるか、こういった視点ですから、そういう面からしますと、公 法人から国のほうへという流れがあってもいいのではないかと思うのですが、再度。 間杉課長  さらに申し上げますと、対馬委員がおっしゃるように公法人から適用・徴収を国に委 託をするという議論は、国に業務を委託できるかという別の法律論になりまして、その 問題をクリアをしておりませんので、現実には立てなかったということでございます。 松原委員  先ほどの山本委員のお話に追加を申し上げます。  私ども医師は、患者の命を守り、健康を守ることが義務だと思っておりますので、最 大限、努力しているわけでございます。ただ、終末期医療につきましては、最終的には 個人の尊厳の問題であり、あくまでも病人を治す、病人を癒すという観念から考えれ ば、さまざまなパターンがあるとは思っております。これは個人の考え方によって、個 人が一番幸福にあるようにすべきであり、そういったことも医師の仕事のうちではない かと思っております。これを決めるのは個人だということでございます。  そういったことから考えて、先ほどのGDP比で全体の総枠を規制するという案が一 部にありますが、あくまでも反対してまいりたいと思っております。それが第1点でご ざいます。  第2点は、今、対馬委員からおっしゃられた点は、私は厚労省と同じ考え方でござい まして、法律で国だからこそ徴収できるという点がございます。公法人から国に頼んだ 場合にそれができるのかどうかという議論をしたうえでないと、できないのではないか と考えております。その点は、十分な議論が必要だと思っております。  3番目は、統合一本化の問題はかつてから議論をされているところでございますが、 私ども、目の前の問題で考えるに、どうも一つわからない点がございます。例えば国保 組合はすべて患者さんの家族の場合もお金をいただいて、負担金だけでなく、組合員と して、その中の家族としてお金をいただいているわけでございますが、政管健保にしろ 健保組合にしろ、そういったこともなしに、実際のところ、家族の方の費用は全く徴収 していないわけでございます。そういった制度的な矛盾点もいくつかある中で一本化の 話をするにはどうしたらいいのかということを、常々考えているわけでございます。  国保は家族の方が費用負担を一番最初にされているのに、健保組合の場合には家族が お金が全くゼロ、つまりお子さんが多いというのは非常にいいことでございますが、何 人いてもゼロであり、扶養家族が何人いてもゼロである。というような仕組みになんで なっているのかということについて、昔から疑問をもっております。そういった色々な 各制度間の問題点を改善しない限り、一本化はなかなか難しいのではないかと思ってお りますが、いかがでございましょうか。 間杉課長  3点目につきまして、ご指摘のとおり、国保は世帯単位で徴収いたしますが、対象が 1人ということでございます。被用者保険は被扶養者制度ということで、被扶養者から は直接保険料をいただかない。その分はどうなっているかというと、これはゼロになっ ているわけではなくて、ほかの単身の世帯の方も含めて、被扶養者の分はみんなで薄く カバーをしている、こんなことでございます。したがいまして、制度全体として医療費 に要する費用が賄えているかどうかという点からいきますと、取り方の違いはございま すが、国保なら国保で、被用者保険は被用者保険、それぞれの中の納得づくでとってき ているということかと思います。  ただ、ご指摘のように、おそらくそこは被扶養者というものの考え方、これは自営業 者と違いまして、会社はご本人を雇う。その本人に対する給与を中心に家族を養ってい く。おそらくサラリーマン、あるいは企業形態、そういったものから派生してきたもの ではないかと私は思っておりますが、そこを国保と比べてみたときに基本的にみてどう 考えたらいいのかというご議論は、一度やっていただく必要があるのではないかと思っ ております。  特に、これから高齢者医療制度の論議をお願いしたいと思いますが、私もかねてか ら、高齢者医療制度については、どのような方であっても一人一人保険料を頂戴すると いう形を基本にしたいと考えております。そのときに、若年世帯というものをどのよう に考えていったらいいか、その辺の議論もぜひお願いをしたいと思っております。 松原委員  ということは、国保の場合には個々の方が払っている分を、社保では働いている方が 代理で払っている形になっているということですね。そうすると徴収の比率は、本来、 国保と比べたら見かけ上、高めになっているということになると思うのですが、いかが でしょうか。 間杉課長  働いている方が代わりにみていますから、働いている方がみんな払っておられます。 そのときに、ご家族のいらっしゃる方々の分をご家族のいらっしゃらない方々も含め て、そこはみんなで薄巻きに乗せているということだと思います。一度、その辺も数値 的な資料を準備いたしたいと思います。 河内山委員  松原委員が、国保とそれ以外の制度間の問題をお話しになりましたが、実は全国市長 会で約1年間かけまして医療制度改革についての意見書を、先般とりまとめをいたしま した。また今後、皆様方の議論の材料として供したいと存じますが、実は市町村国保の 中でもばらばらでありまして、保険料といっているところもあれば、保険税といってい るところもあります。それから、今の賦課の対象につきましても、応能の部分と応益の 部分、とりわけ応能の部分で資産割といいまして、固定資産税のほうにも課税をすると いうこともございまして、将来の一本化、一元化ということを、市としても、都市自治 体としても目指すとするならば、まず国保の中を少し、色々と経緯、いきさつはあるけ れども、一定の方向にまとめていこうではないか。したがって、保険税ではなくて保険 料のほうに統一をしたらどうか。それから、資産割というのを廃止したらどうか。これ は1年間、かなり実務担当者のレベルでいうと相当な議論があったのですが、行ってま いりました。  私が考えますに、長期的に、先ほど山本委員もお話しになりましたように、将来的に 一元化、一本化をするとするならばということは常に念頭に置きまして、政管健保はど うするのか、健保組合はどうされるのか、そして国保はどうするのか、それぞれが一本 化、一元化に向けて安定的、継続的に医療保険制度が維持できるように考えていくこと がこの部会にも求められている基本ではないかと思っています。ぜひそういう方向での お話も、一度時間をおとりいただいて少し議論を深めさせていただければということ を、部会長にもお願いをしたいと思います。 星野部会長  承知しました。 対馬委員  今、お話がありましたが、私ども健保連も、3月末に私どもの、特に高齢者医療制度 を中心にした提言をとりまとめいたしましたので、次回、どういったテーマになるかに もよりますが、高齢者医療制度の議論のときにはぜひ説明をさせていただきたいと思っ ていますので、よろしくお願いしたいと思います。  もう1点は、扶養家族の問題が出ていますが、先ほど事務局のお答えのとおりではあ るのですが、具体的な事例のほうがわかりやすいかと思うのです。介護保険というの は、40歳以上から64歳のところは基本的には人頭割で、各健保組合が人頭割でやっても いいよ、と。そうではなくて、各健保組合の中で人頭割したもの全体を標準報酬で割り 戻してもいいよ、こういう二つのやり方があるのですが、健保組合は全健保組合が標準 報酬比で割り戻しをしているということでございますので、医療保険の中でも、同じ健 保組合の中で家族が、子供が何人もいる、子供がいないといったところも全部、健保組 合の中で議論をして、それで、やはり標準報酬がいいのではないかとなっていることを 申し添えおきたいと思います。また、子供の数で割り振りをしていくということは、少 子・高齢化の中で望ましいのだろうか、こういった問題もあるのではないかと思いま す。 齋藤委員  先ほど久保田委員から問われて、次回にでも説明いただけるということなのですが、 資料1の4ページ、ここで「国に残すことが適当」とあります。また、競争というとお こられそうですが、医療機関の間での競争を促す視点から、被保険者等の代表が参加す る形で、例えば都道府県が指定する仕組みも考えられるのではないかと経団連では考え ています。その辺も参考にしていただいて、次回、ご回答願えればと思います。 星野部会長  ありがとうございました。対馬委員、健保組合との再編統合のことについては、何か ご意見はございませんでしょうか。 対馬委員  再編統合についてはこの中でも書かれていますが、基本的には保険者機能がいかに発 揮できるかどうかがポイントだと思うのです。したがいまして、確かに小さい組合、財 政的に苦しい組合、こういったところが保険者機能が発揮しにくいというところはある かもしれませんが、逆に非常に顔がみえる関係でよく保険者機能も発揮している。被保 険者の動向もよく把握しているし、また、色々な情報提供もやっている。サービスもき っちりやっている。そういったところもございますので、都道府県単位でやっていくと いうのは一つの選択肢としてやっていくということですから、それは行政、役所のほう では選択肢を増やす、規制を緩和する、そういうことでやっていただきまして、各健保 組合、自主・自立・自己決定といったところが選択肢の中で選択していくのだ、こうい う形をぜひよろしくお願いしたいと思っています。 松原委員  この政管健保の問題は、厚労省にとってみたら突如ではないのかもしれませんが、社 会保険庁の特に年金の問題から派生して、年金の個人データを流すようなふらちな問題 もありましたので、そういったことで非常に議論されているところでございますが、政 管健保の保険者としての考え方を決める、特に私は国全体の年金の問題がきちっと片づ いてからでないと、組織的にはなかなか難しい問題があるのではないかと少し思ってい ます。そういったもの並びに老人保健も、いったいどこが保険者をお引き受けになるの かということもわからないあいだで、非常に大きな組織である政管健保、全体にいえば 1/3近くになると思うのですが、そういったもののあり方をこんな急いでA、B、C 案から選べといわれても、とても無理なのではないかと思っております。十分議論して いただきたく思っています。 星野部会長  ほかにございませんか。 久保田委員  十分議論という点では全く同じで、心配をしている点もございます。先ほど間杉課長 の今後の進め方、スケジューリングの中でちょっと言われましたが、来年度の法改正と いうことで間に合わせようとすれば、もともとこの夏場ぐらいでしっかり論点を整理し たうえで、さらに秋に向かってということだったと思います。そして、最大の課題は高 齢者医療制度の在り方。しかし、そこはほとんど入り口の段階で、本当に本格的な議論 が始まってはいないと思います。そこにこういう課題も出てきまして、私は政管健保の 問題として保険者機能がもともと発揮されていないではないかというのは、ずっと一貫 して労働組合としては主張していますので、年金問題と政管健保の見直しに因果関係が あるとは思っておりません。むしろ遅きに失したぐらいのことで、やるべきではないか と思っています。  しかし、そこが非常に微妙に絡んでおりますし、制度設計とか具体的に本当に機能を 発揮させていくことになれば、しっかりとした組織論やそういうことについても担保し なければ非常に不安になってまいります。そういう意味では、先ほどの間杉課長の言わ れた大きなスケジューリングそのものが実は大きくおくれているという点は非常に懸念 をしておりますし、そのことでまた政管健保のことについては節目ごとに議論をしても らいたいということになっていますが、併せて今後の議論をどういうスケジューリング で、どういう形で、しかもそれは大丈夫なのかということについては、さらに心配にな ってきている点もございますので、一度整理をして出していただけないかなと思いま す。 間杉課長  色々ご心配をおかけいたしました。ただ、私どもも、これは再編統合の柱と高齢者医 療制度の柱と、いずれも大変大きな柱だと。したがいまして、国民健康保険についても ご議論いただきます。それから、またこれからも議論しなければならない。それから、 政府案も今こうして、社会保険庁問題と並行してということでございますが、ここは非 常に大きなご議論をいただいているということになると思います。5月からは高齢者医 療制度をいよいよ中心にということでお願いをしたいと思っておりますし、その際に は、部会長ともご相談いたしまして、また5月冒頭にでも、今後、どんな進め方をする かということについて少しスケジュールをつくり、ご相談させていただきたいと思って おります。 漆畑委員  健保組合等の再編統合についてというご説明の中で、28ページですが、地域型健保組 合の設立を認めるということで、小規模財政窮迫の組合の統合を促進する観点からと書 いてございます。このことは対馬委員もおっしゃるように保険者機能の強化ということ から、私ももちろん賛成なのですが、詳しいことがわからないので教えていただきたい のです。一般的にいうと、小規模で財政が窮迫しているようなところを一緒にするとい うのは、現実の話として非常に難しいというイメージを受けるのですが、その前のペー ジに、小規模健保組合の合併促進に対する補助とか、あるいは小規模の健保組合に対す る色々な補助的な施策のご説明がございますので、そういうものをさらに進めておやり いただくということだと思います。  ぜひこれが合意形成してこのことでいくとすれば、特に過渡期的な経過の期間が長く ならないように、こういう制度をつくって進めるときに、さらにそういうものの促進が できるような補助的な支援の仕組みをきちっとつくっていただいて、なるべく早くこう いうことができるような仕組みをご一緒に議論いただければと思います。 星野部会長  ありがとうございました。 齋藤委員  今の漆畑委員の発言に関連して質問です。いわゆる小規模、財政窮迫組合の統合を進 めることになる、地域型健保組合という場合に、現行の補助金の取扱いがどうなるかと いう質問でしたが、この資料に書いてあります複数の保険料率を一定期間認めることに ついては、統合後の提供されるサービスの内容や水準が、たぶん同一でないといけない と思うのですが、そのときに保険料率が違うことで、本当に納得がいくのだろうかとい うのが1点目です。  2点目は、同一県内に複数の地域型健保組合が設立される場合に、どの組合に加入す るのかという選択肢が与えられるのかどうかということです。 今別府課長  今のご質問の1点目の、そもそも保険料水準が違って給付が同じでいいのか、これは あくまでも臨時的な経過措置として、むしろ統合させるためにこの部分は、原則を変え るつもりはもちろんありませんので、こういう場合についてのみ認めてはどうかという ことでございます。もちろん、一定期間。今、漆畑委員から経過措置が長くならないよ うにというご指摘もいただきましたが、そういうことで考えております。  それから、もちろん相手があっての話で、こういう小規模、財政窮迫同士では難しい のではないかという点もあるので、そういうものが通常健全な組合とくっつくことをも ちろん考えておりますので、これはそういう評価で進むことになります。  齋藤委員の二つ目の質問も、相手があってそういうことなので、ここはそのときの選 択をそもそも個別に統合するという意思を表示して相談をいただいての話ですから、何 か強制的な措置で統合させようということは毛頭ございません。 河内山委員  きわめて簡単な質問をさせていただきます。資料の健保組合のほうの13ページ、私は 全く不勉強なのですが、都道府県別の健保組合の状況というのを拝見していたのです が、これは山口県とどこかがないのですか。 今別府課長  すみません、確かに。これは古い資料が出ておりまして、山口は単一組合が6、総合 が1、合計7でございます。 河内山委員  あるのですか。 山本委員  1ページ目の健保組合の再編統合のところに共済組合が書いてあるのです。共済組合 のことはこれだけしか書いていないのですが、それはここに書いてあるとおりでやれと いうわけですか。 今別府課長  共済組合については、今、資料を集めてレビューをしておりますので、次回以降でま たご案内いたします。 山本委員  ではいいです。 星野部会長  それでは、まだご意見が残っているかもしれませんが、本日はもう一つ議題がござい まして、次に、さる3月18日に開催された社会保障の在り方に関する懇談会において、 医療制度改革が引き続き議論の対象となっており、当部会における議論に密接にかかわ ることから、報告を求めたいと思います。それでは、事務局からご説明をお願いいたし ます。 間杉課長  資料3でございます。これは何かと申しますと、今ございましたように、前回、この 部会で、官邸の社会保障の在り方に関する懇談会で医療費の総枠管理ということについ て議論になっているということで、そのときに、私ども、医療費については総枠管理と いうような機械的な抑制には反対である。むしろ中長期的な対策も含めて、保健あるい は生活習慣病等々を含めた総合対策で向かうべきだということをご議論申し上げたとい うことで、前回、資料をご紹介いたしました。そのときに、医療費に対してどのぐらい の金額的な影響があるのか、試算してもってこいというご宿題がございました。それで 私どもで計算をして、3月18日の在り方懇談会に提出したものでございます。  この中で、全体の宿題がいくつもございますので分厚うございますが、14ページをお 開きをいただきたいと思います。これは、前回、私どもから在り方懇談会に医療費の総 枠管理という問題に関連をして、長期的な取り組みとして生活習慣病対策の推進、予 防、それから中期的なものとして平均在院日数の短縮等々、それから看取り、ターミナ ルというご議論がございましたが、最終的な地域の高齢者の生活機能をどうみていくか という問題。それから、短期的には公的な保険給付の範囲の在り方ということもこれま で議論され、また、その中にはこれまで実施に移されてきたものもございます、という お話をしました。特に上の二つに関連をいたしまして、少し数料的な説明をせよという ことでございました。  15ページをご覧をいただきたいと思いますが、まず生活習慣病対策でございます。現 在、平成14年度というところでご覧をいただきますと、国民医療費が31.1兆円。この中 で生活習慣病といわれる部分が7.2兆円、約23%でございます。これが、平成37年度、 2025年度には国民医療費そのものが69兆円、生活習慣病が18兆円ということで、これは 一つの推計でございます。  その中で注2にございますように、私どもはもう既に生活習慣病の中で特に糖尿病に ついては、例えば10%ないし20%、それから虚血性心疾患、脳血管疾患については25% 等々の予防や削減をするという目的を今、政策どおり始めたところでございます。そう いたしますと、将来的に生活習慣病の医療費に与える効果は2.8兆円ということになる のではないか。これは一つの具体的な試算でございます。  申しましたこと、16ページをご覧いただきたいと思いますが、左上に、喫煙、加齢、 肥満、運動不足というような生活習慣でございます。これが、例えば糖尿病に転嫁する ということで、医療費1.4兆円ということが出ております。さらに、高血圧という途中 段階を通りまして、脳動脈硬化、これが脳血管疾患とか虚血性心疾患を引き起こすとい うことで、それぞれ医療費が出てくる。それから糖尿病そのものが進行いたしますと、 右にございます慢性心不全、人工透析。  こういったことに対して、現在、進めておりますのは17ページでございます。上の左 は、予備軍、要指導群というのが約880万人ほどいるだろうということで、健診のカバ ー率、生活習慣病改善のための指導実施率を上げるということ、網かけを増やすという ことでございます。それから、要求医療群が740万人でございますが、その中での血糖 コントロールの対象者数を増やしていく。この2段構えで先ほどのようなプログラムを 実施をしたいと考えておりますので、それが奏功いたしますれば先ほどのような数字に なろうということでございます。  もう一つの要素が、21ページでございます。医療費にもう一つ密接な連関をもつと思 われます平均在院日数でございます。これは粗い試算でございますが、今、全国の平均 在院日数は37.9日でございます。これが仮に、最も短い長野28.8日と同程度、1/4ほ ど減るということで仮定をいたしますと、医療費の適正化効果は2025年度には4.9兆円 程度ということでございます。  これは、例えばこの審議会でもご紹介をいたしましたが、22ページをご覧いただきま すと、どうやってやるかというお話でございます。熊本で連携パスという形で、最初の 急性期に入ったときに、もうリハビリのときから最終の過程まで、あるいは施設まで、 どのように転院をしていくか、そのためにどのように治療するかということで、最終に たどり着くまでの連携パスという形をつくっているということをご紹介申し上げまし た。  その後、私どもで調査をいたしますと、右にございますように、連携パスの導入後に 明らかに最初の病院の平均在院日数は約3割から4割減っている。同時に、連携先の病 院でも平均在院日数が減ってきている。そんな効果が出てきている。  私どもは今、24ページでございますが、ここでも何回かご議論いただきました医療計 画の見直しを進めております。そのときに、右のほうですが、例えば二次医療圏、例え ば病気ごとにそういう地域の具体的な急性期から回復期を経て在宅に至るまでの流れを できるだけ具体的に描いていただこうということで、これまでの医療計画とは趣をがら っと変える、そんなことをご議論をいただきたい。そういうツールをぜひもちたいと思 います。  そういたしますと、27ページは今の試算のまとめでございます。2025年度で国民医療 費ベースで69兆円、患者負担を除きました給付費ですと59兆円でございますが、今申し ました生活習慣病対策の推進、平均在院日数の短縮、これを合わせて適正化の効果総額 は7.7兆円ということで、ほぼ69兆円の1割強という、これは機械的な試算でございま すが、数字であります。  したがって、私どもはこういった総合的な対策を積み重ねていくことが大事であっ て、機械的に経済の動きから管理をするという手法はなじみにくいのではないかという お話をさせていただいたというところでございます。まだ、官邸の在り方懇談会はこれ からも続きますので、また機会をみてご報告させていただきたいと思います。 星野部会長  どうもありがとうございました。それでは、ご意見、ご質問等をお願いいたします。 井伊委員  医療の質というものを考えたときに、日本の医療にはまだまだ医療費を増やしてもい いのではないかと私は思っております。例えば1ベッド当たりの医師の数とか看護師の 数は、台湾や韓国に比べても今は低い状況ですし、安全などの面を考えても医療費は増 やしてもいい。一方で、むだなところは見直していかなければいけない。  そのときに、前半の社会保険庁の議論とも関連しているのですが、例えば社会保険庁 の病院は全国に50ぐらいあると思いますし、厚生年金病院ですか、それらの統廃合とい ったものをどう考えていくのか。同じ地域に同様の医療を提供している医療機関がある 場合に、地域における役割を考えたときに、その病院が赤字を出しているかどうかとい うだけではなくて、地域の役割としての公的な医療機関のあり方をとらえるべきで、そ うした公的な医療機関の存在意義は政策医療とよくいわれているのですが、政策医療と いうのはほとんどの民間の病院でもやられていることですし、はたして特定の開設主体 の病院のみ補助金を繰り入れる理由が不明であるように思っておりますので、そのあた り、ご意見をお聞かせいただけますか。 武田課長  社会保険病院についてのご指摘がございましたが、ただいま、国会にも年金保険料な どを使いました施設の売却に関する独立行政法人設立の法案を出しておりますが、社会 保険病院については、平成15年度から3年間をかけて経営改善計画を立てまして、その 結果をみて整理合理化の計画づくりをやっていくことにしておりますが、今ご指摘があ りましたように、単に経営で採算性がとれるかだけではなくて、地域における機能の重 複をということになりますと、よりその範囲が広がりまして、例えば公立病院、自治体 病院と社会保険病院、または大学病院が同時にあった場合に、その機能をどちらに調整 するかという、より広いご指摘かと思います。  それにつきましては、先ほどご紹介もありました医療計画の中で二次医療圏ごとの必 要病床数ということでは計画を自治体が立てておりますが、実際に病院ごとの機能を調 整するというところまでは、そういう議論または調整の場はまだできていない。地域ご とに話し合いの場をつくってはどうかという状況にとどまっているのではないか。担当 者ではございませんので、直近状況ではありませんが、そういう状況かと思います。  そういう中で、先ほど紹介もありましたが、連携のクリティカルパスのようなもの で、現実には診療報酬点数の動向もみながら、それぞれの病院で独自に機能分化の試み が広がっている状況ではないかと思います。いずれにいたしましても重要なご指摘では ないかと思います。 岡谷委員  医療費の適正化ということで、生活習慣病が今、三大死因のほとんどですので、生活 習慣病をいかに予防して国民の健康を守るという観点からもそういうことに取り組んで いくのは非常に重要だと思いますが、ここの医療計画などのところでも、平均在院日数 の短縮とか医療機能の分化、連携といったところで、おっしゃるように在院日数を短く して、できるだけ早く退院をして、それでその地域のそれぞれのかかりつけ医とか、あ るいは訪問看護とかそういったところと連携をして必要なケアを提供するという考え方 自体は、患者にとっては非常にいいことだと思います。  ただ、今の医療の現状で、平均在院日数の短縮ということが、クリティカルパスとか そういうことをして個々の病院が努力をするのですが、それは今の人員の体制をそのま まにしてそういうことが行われているのか。私は、おそらく平均在院日数が短くなって いるところは、それなりに看護師の数がほかと比べて多かったり色々なことがあるのだ と思うのですが、そういうことを付加するとか、あるいは平均在院日数を短縮しても、 その病院のベッド数は変わらないわけですので、早く退院させれば、そのベッドの稼働 率を高めるためには患者をどんどん入院させなくてはいけないということで、今、急性 期の医療機関などは回転ドアのような形になっていて、看護師等の数は増えないわけで すから、本当に過重労働というようなことが行われている。そういうものの上に立って の医療費適正化という考え方は、本当に安全とか安心の医療ということを考えたときに はいかがかなと思っています。  医療計画のところでも、病床の適正な数とかそういうものをどうやって出していくの かという議論をおいたままで、とにかく平均在院日数を短くするとか、地域との連携を 深めるとかということが話し合われているのですが、本当に急性期の病床とか医療の機 能分化はどうやって具体的に進めていくのか、十分に議論をしていただきたい。それ は、人員の確保とかそういうことも含めて考えていただきたいと思っています。そのう えでの医療費の適正化ということであれば、本当に国民の皆さんにとって非常にいい医 療になるのではないかと思います。 星野部会長  ありがとうございました。 岩本委員  事務局の説明がありましたように、医療費の削減の計算は、厚生労働省がどこからも いわれず自分ですすんでやっているものではなくて、そういうことを求められて計算さ れているものだと思いますが、こういうことをすることも財政論だけに偏るという批判 もあるかもしれませんが、必要なものであって、医療の質を落とさずにどういうことが できるのかという大前提で話が進んでいると思うのですが、医療の質を落とさないとい う前提を守るうえでもこういうことが役に立つのではないかと思っております。  それはなぜかといいますと、経済財政諮問会議なりあるいは財務省なり、財政を考え ている人からみますと、総額の財政の支出というものが最大の関心事であって、しかも 医療だけではなくてあらゆる分野からの要求を入れて予算を編成しているわけです。そ の場合、医療は命にかかわるから非常に大事なものだということは、この部会の中では 共通認識かかもしれませんが、それは予算編成のところでは一省庁の一つの要求にすぎ ないという形に映るわけです。ですから、現在、財政状況が厳しい中で支出の削減を進 めなければいけないわけですから、そういう数字の議論をやらないと、最後にはそれに 乗っていかないといきなり押し切られる。それによって医療の質の低下を招くおそれも 考えられますので、こういう議論を厚生労働省さんが出したことはそれなりに意義があ ると思います。  あと、その内容なのですが、金額でみますと、2025年度で見通しからしますと1割ぐ らいの削減になっておりますが、私の専門が財政でもありますので、将来見通しという のを考えておりますが、医療に関してもこれくらい削っていかなければいけないのかな と思っております。その場合は、ほかの支出も当然、同時に削って、さらに色々と批判 が出ています例えば公共事業ではもっと削るとか、削減の努力は相当やっても、増税し なければ日本の財政は将来にかけては非常に大変な状況になるということでありますの で、1割削減というのは厳しいかもしれませんが、こういったことを目指さざるを得な い状況にあるのかなという気がしております。  たまたま私は独立に1割という数字を考えておりまして、ここでたまたま合致する数 字が出てきましたので、全く根拠は違いますが、同じところにいっているのかなという 気がいたしました。  この議論ですが、今後も骨太の方針から、さらにもっと長期のことを考えて、こうい ったことはこれからも議論されると思うのですが、そのときの議論としては、厚生労働 省さんへの要望といいますか希望なのですが、医療の質を落とさないでやっているのだ ということは前提として伝わるように。ただ、医療費の削減が第一なのだということに ならないような説明の工夫は必要だろうと思います。  もう一つ、医療費、それから社会保障全般の削減ということをおっしゃっている方 は、総額に着目しておりまして、もともとこういうものは1人当たりの金額がどうなる かということが大事なのですが、高齢者の人口の増加によるある種の自然増のようなも の、これが予算編成をしている段階では自然に映らないというようにみえるわけです が、その部分、自然増というのはある程度いたしかたないということを説得的に議論を していって、理解を求めることが必要ではないかと思います。そのうえで、見通しの増 える部分から1割なり、もっとほかにも有効に削減できるものがあればするという形の 戦略を練っていくのがいいのではないかと思います。  さらに出している粗い試算といいましたが、私はかなり粗い部分もあるかなと思いま すので、さらに数字の精査もこれから進めていただきたいと思います。 星野部会長  どうもありがとうございました。 大内委員  私は、医療の現場いる者の立場として、ただいまの平均在院日数短縮、色々な病院で 平均在院日数を短縮しようとしているわけですが、先ほど岩本先生がおっしゃったよう に、医療の質を落とさない視点は極めて重要であって、先ほど熊本の連携のパスで平均 在院日数が非常に短縮しているというデータを出されましたが、医療の質は色々な視点 から考えていかなくてはいけない。岡谷委員は、医療スタッフの労働の量という点を申 されましたが、医師の視点もありますし、医療ということを考えますと、患者の満足度 がどうなのか、それから治療効果はこれできちんとあがっているのか、こういった調査 がぜひ必要なのではなかろうかと思います。熊本は非常にこういうことがうまくいって いると聞いていますが、そういった調査がなされているのかどうかということを、もし あれでしたらお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。 山本委員  この2025年の数字を出しています。そして、何%ずうっと見込んでこういう数字にな ったと書いてあるわけです。これは総合的に出した25%とか20%なのか。もう一つは、 20年もすれば医療の技術もずっと進歩する、薬も器具も機械も全部進歩していくと思う のです。それらがこの中に入っているかどうか、この次でいいですが教えてください。 松原委員  岡谷委員のおっしゃったことはごもっともだと思います。私もそう思っております。 現場の医療のところにしわ寄せをしてという考え方は非常に大きな間違いでございまし て、まず、医療の質を落とさないとおっしゃいますが、私はむしろ逆に上げていかなけ ればいけないのではないかと思っております。現在の看護師の配置で本当に人の命が 100%守れる形になっているのかといいますと、やはり大変な過重な労働のもとにやっ ておられるのは私も認識しております。また、医療界全体においてもその傾向はござい ますし、勤務医の先生にしろ、また開業医の先生にしろ、かなりの負担をかぶってやっ ております。つまり、医療の質を落とさないという発想ではなくて、さらに医療の安全 を高めていかなければならない時代にきているのではないかと思うのです。  日本の国が今現在、財政の問題が起きているのも事実でございますが、しかし、アメ リカのGDP比で考えますと、日本は半分でやっております。半分でやっているという ことを十分ご理解いただいたうえで、さらにこれから国民が何を望むのかといえば、こ れはより安全な医療だと私たちは思っておりますので、より安全な医療を実行するため には、そこにはそれなりの財政的な支出はしていただかなければいけないのではないか と思います。  未来、日本国がこのレベルで一歩も進歩せずに、そしてまた新しい医療が発展しても それが使えないというのが当然だとお考えであればしかたがございませんが、今、医療 も徐々に進歩、2%ぐらいの進歩はしております。また、老齢化は2025年のピークまで になんとかしなければいけないのもわかりますが、医療の安全を高めるためにはそれな りの支出はある程度お許しいただかなければならないのではないかと私は思っておりま す。 星野部会長  ありがとうございました。 浅野委員  今のお話にも関連して、チェックされるべきは、額、量だけではなくて質、安全性と いうことなのです。問題は、それをだれがやるか。これはシステムの問題だと思いま す。例えば医療費の点から言っても、アンネセサリーサージェリーというのがあるので す。不必要な手術、これはアメリカで20年ぐらい前に大問題になりました。不必要な手 術によって子宮を摘出された。これはむしろ、医療費の問題というよりは個人の尊厳の 問題です。その際に一つの方向として、アメリカなどではある程度確立しているわけで すが、それはピアグループなのです。つまり、同じ産婦人科医の中でそういったアンネ セサリーサージェリーがされていないかどうか、自分たち仲間うちでチェックをすると いうこと。  さらにいえば、これは医療費の問題と関係あるかどうかわかりませんが、医師免許の 問題です。つまり、何年かごとにちゃんとチェックをする。そしてパフォーマンスをち ゃんとチェックをする。例えば学会に何回出席しているかとか。しかも大事なのは、そ れを行政がやるのではなくて、本来の専門性のある自分たち仲間うちがちゃんとやる。 行政がやるべきは、仲間うちでやるようなインセンティブ、モチベーションとか、また は規制というものを間接的にかけるということだと思います。これは医療保険の議論で すからちょっと違う議論になるかもしれませんが、質を確保したうえでの医療費の抑制 ということからいっても、そういったチェックのシステムが非常に重要だと思います。  そういう中で結構機能しているのが、病院のランキングなのです。例えばがん治療の ランキングというのがあって、何例やって、延命率いくらとそのランキングがあだにな って、非常に必要なのだけれど、その手術をやると延命率が下がってランキングが下が るから、その手術を断ったとか、別な意味での弊害が出ています。  この医療費の問題も含め、質も量もしっかり確保するためのチェックのシステムを、 今、早急に考える必要がある。そういう中で、例えば在院日数にしても安全性の問題に ついても全うされるようなシステム。その結果としてそれが医療費の削減になるかどう か、これはわからないが、たぶん質は確保されるということにはなるのでしょうけれど も、これは今ご出席の違う部署の話なのかもしれませんが、連携して、この議論と並行 してぜひやるべきではないかと思います。 大内委員  私は先ほど質問もしたのですが、お答えがないのでぜひお願いしたいと思います。  ひと言だけ、松原委員が質を落とさないという発想ではだめだとおっしゃいました が、それは当然で、今の医療の質が100%満足できるとはだれも思っていないわけです。 ただ、私が申し上げたかったのは、たぶん岩本委員もそうだと思いますが、医療費の削 減といったときに、どうしても医療の質の低下を伴うおそれがあるということで、それ を防止しして、さらに医療の質を上げる方向で、これは当然の発想だと私は思っていま す。 間杉課長  熊本の事例、患者の満足度などがフォローされているかというお話だったと思います が、現状まだそこまでいっておりませんが、今、評価というお話もございましたし、専 門家集団の中で一度見てもらうことも大変大事なことかと思いますので、私どもは熊本 の1グループとも勉強をさせていただいておりますので、その辺の評価というものもま たご報告させていただきたいと思います。 大内委員  あそこが非常に向上しているということであれば、非常に意味のあることですが。 間杉課長  わかりました。 松原委員  今おっしゃっていたように、まず私どもは医療の安全をさらに高めたいと思っていま す。一人の命がなくなることについて、もっと重たく受けとめていきたい。その原因は 何にあったのか、そういったものを突き詰めていけば事故が起きないようになると思っ ています。そういったことにおいて、先ほど申しました過重労働の問題とか色々な問題 がございますので、そういったものを改善するにはやはり費用がかかるという話を申し 上げました。  あと、医療の安全を担うべき者の資質についてですが、私どもは、浅野委員がおっし ゃいましたように、とにかくこれについては一番大事なことである。日本医師会としま しても、今回、医療の安全課をつくり、さらに医師の生涯教育をどのようにすべきかと いうことを十分に議論しております。生涯にわたって勉強していくのは医師の義務であ ると私たちは思っておりますので、内部の問題としてもきちっと対応していきたいと思 っております。  そういったことを考えたうえで、先ほどからのお話で、やはり財政論を議論するうえ では医療の安全をまず頭の中に置いておいていただいて考えていただきたいということ でございます。 大内委員  そういう趣旨には私は全く賛成でございます。 松原委員  もう1点、今、浅野委員がおっしゃった病院のランクの問題ですが、私ども、一番危 惧しているのはまさにそのとおりで、内部の者から考えると、例えば助かる可能性のあ る手術だったら多くやって、助からない手術だったらやらないということがあり得るわ けでございます。これを医師の良心の問題としてはならないのはあたりまえですが、組 織の中の問題として決してそのようなことが起こってはならないと思っていますので、 そういったことが組織的なことで起きないようにするためにはどのようなことが必要か という議論が十分になされていないままランキングをつけられますと、非常に間違った ことが起きるのではないかと、私たちは危惧しているところでございます。 星野部会長  それでは予定の時間になりましたので、ご議論の真っ最中ですが、これまでとさせて いただきたいと思います。 松原委員  私は最初に申しましたように、まず料率を変えることありきというところから考える のは間違っていると思いますので、A、B、C案の中から選べとおっしゃいましても、 なかなかできません。また、ご指摘がありましたように、例えば一つの県で、事業所が よそへ移ったら安くなるというようなことが本当に正しいことなのかどうなのか、そう いうことも十分ご議論いただいたうえで判断しなければならないと思っております。追 加して申し訳ございません。 星野部会長  それでは、次回以降、新たな高齢者医療制度の創設についご審議いただくように運ん でいきたいと思っています。なお、次回の開催につきましては、事務局より追ってご連 絡することとしたいと思います。  本日は、ご多忙の折お集まりいただき、ありがとうございました。                                     −了− (照会先) 保険局総務課企画調査係 内線3218