05/04/18 へき地保健医療対策検討会第4回議事録について              第4回へき地保健医療対策検討会                        日時 平成17年4月18日(月)                           15:00〜                        場所 霞ヶ関ビル17階                           NTTデータ第2・3会議室 ○宮本指導課長補佐  ただいまから第4回「へき地保健医療対策検討会」を開催します。委員の皆様にはお 忙しいなか、遠方よりご出席いただきましてありがとうございます。まず出席のご報告 をさせていただきます。本日は吉田委員がご欠席です。高橋委員は20分ほど遅れてお見 えになると伺っています。本日、初めてご出席いただく委員を改めてご紹介させていた だきます。冨澤委員です。 ○冨澤委員  冨澤でございます。よろしくお願いします。 ○宮本指導課長補佐  また本日は瀬棚町国民健康保険医科診療所所長の村上智彦様にプレゼンテーションを お願いしているほか、株式会社NTTデータ様に通信情報技術の実演をお願いしていま す。それでは座長に進行をお願いします。 ○久座長  ただいまから始めさせていただきます。最初に資料の確認を事務局からお願します。 ○宮本指導課長補佐  お手元にお配りしている資料は1〜4までございます。そのほかに前回の会議録とし て参考資料と、机上の配付ですが、本日、吉岡キヨコ委員より2種類のパンフレットが 配付されています。ご確認をお願いします。 ○久座長  皆さん方のお手元に資料があると思いますが、なければ事務局のほうにお願いしま す。早速、議題に入ります。前回の議事録の確認を事務局からお願いします。 ○宮本指導課長補佐  議事録は予め皆様方にご配付していますので、確認いただいているものでございま す。4つのテーマについてプレゼンテーションと質疑を行っていただきました。前回は 島根県と長崎県から、それぞれご発表いただいたというのが自治体からの説明でした。 島根県からは、「しまね地域医療支援センター」の取組みについて紹介いただき、医師 を呼ぶ、育てる、助けるといった機能で取り組んでいらっしゃるということ。専門医の 研修プログラムということを始めるなど、さまざまな取組みを行っている結果、少しず つではありますが、医師のほうの養成も進んできているということでした。長崎県の紹 介では、「離島・へき地医療支援センター」の取組みなどの紹介をいただきました。県 の職員として医師を養成し、それを地域に派遣するといった取組みについてご紹介いた だきました。  3番目に、地域医療振興協会の取組みについて、吉新委員より紹介いただきました。 学生や医師などの研修の取組みの状況や、病院の運営による、病院を中核とするへき地 ・離島医療の支援について紹介いただきました。4番目に、インフォメーション・テク ノロジーによる診療支援ということで、吉田委員より紹介いただきました。離島等の遠 隔地に対する眼科診療支援の状況と、そういった結果として交通費などの費用が全体と して大きく削減できることを紹介いただきました。以上が前回の内容です。 ○久座長  前回のこの委員会の議事録について、特にご質問はないと思います。本日は情報通信 技術についての実演を、株式会社NTTデータさんにお願いしています。よろしくお願 いします。 ○菅野氏(NTTデータ)  NTTデータの菅野でございます。よろしくお願いします。今日は、インターネット を使って安く簡単にできる点をやってほしいと言われましたので、やらせていただきま す。私どもにとっては非常に難しい課題なのですが、1件当たり初期導入が100万円以 下で、月々2万円ぐらいでインターネットを使い放題と、そういうところを考えて作っ てみました。内容的にはそう高等なものではないので、こんなものかなと思われるかも しれませんが、大体、地域の医療で使えるのではないかと思っています。よろしくお願 いします。 ○松尾氏(NTTデータ)  早速、本日のデモの概要をご説明させていただきます。本日ですが、三重県鳥羽市の 神島診療所と、ここの委員会の霞ヶ関の会場をインターネット経由で、先ほど菅野が申 したとおり汎用のテレビ会議システム、簡単に構築できるツールを使いまして、離れた 所の遠隔地の医師相互間でのコミュニケーションを活用する例として、ご説明していき たいと思います。  まず神島診療所ですけれども、こんなロケーションの所にございます。鳥羽港の約14 km北東です。愛知県の伊良湖からは約3.5kmのところに位置している離島です。島への アクセスは往復4回ぐらいの船があるという所ですが、三島由紀夫の『潮騒』の舞台と なったことで、映画のロケとかで吉永小百合さんとか山口百恵さんなども訪れている島 でございます。  これが伊良湖のほうから見た神島の風景です。3.5kmしかないのですが、非常に潮の 流れが強いということで有名な所です。いま、繋ぎます神島診療所は離島開発センター という建物の中の1階にございます。今日、実施させていただくイメージですが、汎用 のパソコン、テレビ会議に使うカメラを、それぞれ神島診療所とこちらの委員会会場に 設置して、インターネット経由で繋がっているという状態です。  適用の画像としては、今日、お見せしますのは実際のテレビカメラによる画像、ある 患者様のケースとして想定した、事前に撮ったX線の写真、CTの画像、デジタルカメ ラで撮った臓器の画像等を、実際にテレビ会議を使って送受信してやり取りしてみたい と考えています。このようなケースでテレビ会議を使って、緊急性の比較的高いもの、 実際に患者様の表情とか皮膚、外傷とか見えますので、それらを鑑みて総合的な診断支 援ができるケースではないかと思っています。  遠隔診断するときに最もポイントとなるのが、患者の個人情報が流れますのでセキュ リティという面だと認識しています。今回はオンデマンドVPNルーターを使い、ここ にご覧いただいているとおり、セキュリティ基盤サービスセンターという所で、それぞ れの拠点の機器の認証の管理、VPNネットワークを張るときのネットワーク管理、認 証の管理ということをやっています。当然、VPNを張りますので暗号化された拠点同 士の秘話を管理する形になっています。今日の機器もその機器構成でやらせていただき ます。  それでは実際にデモをご覧いただきたいと思います。いま奥野先生が出てきますけれ ども、神島診療所である患者様の診断支援をお願いしたいということで、神島診療所の ほうから事前に撮っておいた一般のX線の画像を送っていただきたいと思います。その 画像に対して、向こうから見ていただきたいところの箇所を、アノテーションですね、 そういうものを付けていただいたり、こちらから診断した結果を、やはりアノテーショ ンを付けたり、お絵描きツールで絵を描いたり、診断結果のコメントを文字で入れると いうことも可能になっています。  いま、ご覧いただいているのが神島診療所のほうから送られてきたX線の画像です。 ちょっと見ていただきたい部分にアノテーションを入れていただけませんでしょうか。 容量としては500キロバイトぐらいのデータです。これが実際にインターネット経由で 送られてきています。ご覧いただいているのは、神島診療所のほうで見てほしいポイン トにアノテーションを入れていただきました。またこちらでこれを診断しながら、こち らのほうから同じようにアノテーションを入れる。あるいはテキストの入力をすること も可能になっています。  続いてCTの画像をご覧いただきたいと思います。いまご覧いただいているX線の画 像ですが、JPEGの形式の画像で送られてきています。500キロバイトぐらいですの でネットワークの帯域にもよりますけれども、実際にはいまぐらいのタイミングで画像 が送られてくるということになります。ツールとしては同じツールを使っていますの で、向こうからアノテーションをこれに入れて、この辺を見ていただきたいということ で画像を見ることができます。この部分を拡大して見ていただいたり、これに対してこ ちらの診断結果を付けるということも当然可能になっています。  次に事前にデジタルカメラで撮っておいた臓器の画像を、ご覧いただきたいと思いま す。このデータも事前にデジタルカメラで撮影して、そのデジタルデータをパソコンに 取り込み、このテレビ会議のツールを使って、こちらのほうに送っているということに なります。もうしばらくすると臓器の画像が出てくると思います。  いま映りましたけれども、デジタルカメラによる臓器の画像をご覧いただいていま す。このように事前にデジタルカメラ、あるいはフィルムスキャナーで取り込んだ画像 を、このテレビ会議の画像を共有するようなツールに貼り付けて、遠隔地とお互いにそ の画像を共有して、アノテーションも一緒に共有できるということですので、この1つ の画像を見ながら相互間でカンファレンス、あるいはコンサルティングができるという 形です。  いまJPEGの画像でご覧いただいたのですが、今度はダイコムフォーマットの画像 を神島のほうから送っていただきたいと思います。いまご覧いただいているとおり、超 音波のダイコムフォーマットの画像、MRIのダイコムフォーマットの画像がファイル 転送で送られてきました。こちらに到着した状態になっています。それをこちらのほう にビューアーが入っていますので開いてみます。  これはMRIの画像ですが、ダイコムフォーマットで送られてきた画像ですので、こ のように参照することができます。もう1つ送られてきた超音波のほうですが、これも このように送られてきた画像を参照することができます。当然、ダイコムフォーマット ですので、今日の例はUSとMRですけれども、当然CTとか、その辺のダイコムフォ ーマットの画像をファイル転送することによって、参照することができるという形にな っています。  これらの実際にご覧いただいているデジタルカメラで撮った画像、およびファイル転 送で送られてきたダイコムフォーマットの画像以外に、テレビ会議を使っていますの で、テレビ会議自体のカメラで実際の患者様の表情を撮ったり、患者様の皮膚の状態、 あるいは外傷があるときにはその外傷の画像を見ながら、診断支援を遠隔地からすると いうことが可能ではないかと思っています。  当然、両者間の医師同士の顔と音声も聞こえていますので、そこでコンサルティング をしながら、医師相互間の意思の疎通を図っていただけるようなツールではないかと思 っています。本当に一般的な汎用のPC、OSに付随されてくるテレビ会議のツールを 使っていますので、費用、構築期間等も本当に簡単に構築できる形です。  最後に、神島診療所の奥野先生に、ご挨拶をいただきたいと思います。奥野先生、よ ろしくお願いします。 ○奥野委員  奥野でございます。東京の空気が吸えなくて残念なんですけれども、朝から患者さん も診ることができまして、非常に便利なものだと思っています。ただ、カメラ目線で喋 らないといけないというのと、皆さんのお顔が見られないというのが若干残念ではあり ます。内容的には皆さんもお感じのように、若干のタイムラグがあるというふうなこと はありますが、画像的には非常にきれいで十分耐えるものかなというふうな‥‥。 ○松尾氏  ありがとうございました。ちょっとこちらのカメラを操作したので、最後のほうの音 声が途切れましたけれども、すみませんでした。このような形で実際に音声、映像を使 いまして、遠隔地の遠隔診断支援をするツールということで、ご紹介させていただきま した。ありがとうございました。 ○久座長  ありがとうございました。いまのプレゼンテーションについて、どなたか、ご質問や ご意見ありますか。方法も重要ですが、受ける相手側がちゃんと対応してもらわない と、その点が重要でしょうね。 ○吉新委員  遠隔画像診断を当会でもやろうと思っているのですが、ダイコムのサーバーに入れて いて、それは専門の放射線科医が見るということですけども、レポーティングをどうす るかという問題があるのです。所見を書く。この人は肺がんだという情報が画像と一緒 にくっつくシステムを考えたのですが、それをやるとたぶん個人情報保護の立場からす ると、ちょっと問題だろうと思います。要するにレポートと名前と診断名がくっついて いくとまずいということで、レポートはレポートで別に出す。写真は写真でサーバーに ストックしておこうということなのですが、実際にやってみると結構混乱するのです。 その辺、個人情報保護にうまく乗っかった形で、画像とレポートは全く別物という形で やっていくと非常にお金がかかってしまうと思うのですが、NTTのほうでお安くでき る方法を見つけていただけると、現場は非常にやりやすいと思うのですけれども。 ○菅野氏  安くというのは、いろいろあるかと思いますが、いまネットワークのほうはインター ネットを使ってセキュリティを確保すれば、画像等の所見を一緒に送っても特に問題な いのではないかと思っています。 ○吉新委員  1対1の対応の場合はいいのです。A病院とB診療所という関係ですといいのです が、A病院にBもCもDもいっぱい来る、場合によっては全国から来るということが起 こった場合に、非常に混乱しやすいのではないか。 ○菅野氏  そのために、我々、どこにでもVPが張れるような仕組みをいま考えています。 ○吉新委員  いま高久座長が言われたように、スピードが速ければいいのですが、いままでの感じ だと相当いらいらしながらやっているという感覚が否めないと思うのです。 ○菅野氏  これが、いまADSLというNTTの回線を使っているのですが、大体2メガぐらい の回線です。これはBフレとなると大体10メガとか出るところは出てきますので、もう 少しいいのかなと思っています。 ○吉新委員  たぶん全国のへき地はISDNの64が、いま精いっぱいと。 ○菅野氏  おっしゃるとおりです。沖縄の琉球大にはADSLしか引き切れません。1メガぐら いの帯域が出ないところです。だから格差があります。 ○吉新委員  NTTがへき地に優先的に高速回線を引いていただけないかと思っているのです。 ○久座長  この場で、すぐには返事できないでしょうね。 ○樋口委員  ただいま見せていただいた画像に関しては、十分読むに耐える画像だと思います。で すから医師がそこにいて専門的な相談をしたいときは、この画像で十分通用すると私は 思いますが、問題はそこに医師がいなければならないわけです。そこに医師がいない所 がいまいちばん問題になっているので、分けて考えなければいけないだろうということ です。 ○久座長  ほかに、どなたかございますか。それではNTTさん、ありがとうございました。引 き続き村上智彦先生に、へき地保険医療の実践について、よろしくお願いします。 ○村上参考人  初めまして、北海道の瀬棚町から参りました村上と申します。今日はこのような時間 をつくっていただき、ありがとうございました。あまり時間がなくて申し訳ないのです が、急いでやりたいと思います。                 (スライド開始)  簡単に自己紹介をさせていただきます。私は村上智彦と申しまして、北海道の枝幸郡 歌登村、皆さんご存じないと思いますけど、そこの出身で、ちなみに今朝5時に起きて 出て参りまして昼ごろに着きました。今日も話をして早々で申し訳ないのですが、退席 して今日中に帰らなければならないということでお許しください。  私は自治医大の地域医療教室というところで研修し、先ほど出てきた奥野先生とか、 今日いらっしゃる鈴川先生、吉新先生に指導いただいたという立場でございます。いま は専門は何かと聞かれたら、地域医療と答えるようにしています。私、実は薬学部を1 回出て、薬剤師として勤務してから医学部に入り直して、自治医大に研修に行ったとい う立場でございます。  皆さん、北海道の地図をご存じだと思いますが、私がいま歌登と言いましたけれど も、歌登というのはこの辺です。私のいる瀬棚町はこの辺です。地震がありましたね。 これを大きくしたのがこれです。私が今日来た経路が、ここから車で1時間、汽車で千 歳まで2時間、それから飛行機という感じです。大体、手術が必要な患者さんが瀬棚で 出ますと、救急車で1時間の八雲という所まで運びます。脳外科とか専門的な医療が必 要な場合は函館まで2時間半ぐらいです。一度、瀬棚町で急性心筋梗塞の患者さんが出 たときに、札幌にヘリコプターで搬送したことがありました。このときは45分で着きま した。さすがにすごいと思います。  瀬棚町というとご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、女医の第1号の荻野 吟子さんという方が開業した地として知られています。これが瀬棚町の人口構成で高齢 化率が29%、人口が2,700名ぐらいです。これが瀬棚町の全景です。私の勤める瀬棚町 医療センターというのは、ここです。国鉄の跡地にありまして、診療所と保健福祉課 と、ここが社会福祉協議会です。要するに保健・医療・福祉を1ヵ所にまとめている作 りになっています。  最近、洋上風力発電施設というのができています。洋上に造ったのは日本初だそうで す。これは海水浴場です。キャンプ場などがあり、非常に自然に恵まれていて釣りなど でも大変有名な所です。  今年の冬の写真がこれで、これでも雪がまだ降っていない時期です。一見降っていな いように見えますけれども、駐車場の雪を掻くとこれぐらいの高さになって、車と比べ ていただければわかると思いますけど、今年はこのぐらい降りました。非常に自然環境 の厳しい所です。着雪警報というのがよく出るのですが、これが着雪です。こっちの方 はよくわからないと思いますが、こんな感じでへばりつくような地吹雪が生じる所で す。  これはうちの前です。こんな所でやっています。いま私が勤務する荻野吟子記念瀬棚 町医療センターというのは16床の有床診療所で、平成12年にできました。もっと保健・ 医療・福祉・教育を連携して予防医学を実践するというのをキャッチフレーズにして、 今日は読売新聞のマエノさんなどもいらっしゃっていますが、肺炎球菌ワクチンを公費 助成したとか、ピロリ菌の尿中抗体検査などを普通の健診に繰り入れたりして、予防活 動を一生懸命やっています。  何で瀬棚町にこういう病院ができたかという話ですが、瀬棚町というのは実は平成8 年まであった民間病院がなくなってしまったのです。夜とか休日は全然無医地区になっ ていたのですが、無医地区になったのに瀬棚町というのは平成元年から老人医療費が日 本一だったのです。大体1人当たり140万円ぐらいになったという現状があって、医療 過疎なのに高額医療の状態がずっと続いていたという状態です。町では、この状態を何 とかしようということで全町民を対象にアンケートを取り、7割ぐらいの住民が入院の できる医療施設がほしいということで、いまの医療センターができました。  大体概要はどこでもあるような感じです。16床の有床診療所に歯科と訪問看護ステー ション、何でもかんでもあります。ヘリカルCT、エコー、人工呼吸器も含めて、私は よく重武装の診療所と表現するのですが、とにかく何でも診ようという姿勢でやってい ます。  これが診療所の風景です。これは待合室です。これはトイレです。これは外来です。 これは処置室です。この辺はどこの医療機関でもそんなに変わらないかなと思います。 通所リハビリもこのような所でやっています。これは実際にやっているところです。こ れはリハビリです。施設基準の3を取って、一応、理学療法士と作業療法士が田舎です が1名ずついます。  病床は療養型の規格で作ったのですが、一般病床として使っています。こんな非常に いい造りになっています。CTとかレントゲンが入っていて、このCTは、先ほど遠隔 画像の話が出ましたけれども、セコムのホスピネットシステムが入っていて、画像を送 って1件2,000円ぐらい取られるのですが、それでも放射線科の診断が紙でその日のう ちに来るシステムを入れています。  これはエコーです。これは処置室です。海が近い所なので溺れが来るのです。海水浴 客や釣客が結構溺れて来るので、挿管とか人工呼吸器を使う機会もあります。要するに 1時間救急車で運ばなければならないことを考えると、心肺停止の方が来て1時間救急 車で送っていくと、どうしようもなくなるという事態がありますので、ここである程度 のことができなければならないということで、こうなりました。  これは裏庭です。私はよく基本理念と言ってこんなことを書いています。いろいろ書 いてありますけれども、要は人も金も物もないので、みんな力を合わせてやりましょ う、社会資源を有効に活用してやっていこうということを合言葉で実はやっています。  地域医療と先ほど私は言いましたが、札幌医大の山本教授の説によりますと、プライ マリーケアとかジェネラリストの姿勢は利用者の視点に重きを置く。そのときに行政を 巻き込んだ活動をする者は自分たちを地域医療と呼び、入院患者全般を見る者は総合医 療と呼び、家庭を中心に見る人は家庭医と呼ぶと言っていました。私もわかる気がしま す。  ところで、何でこんな話をするのかというと、健康の定義というのを思い出してみま した。こんなのを昔、皆さんは学校で習ったのではないかと思います。私も地域に行っ てからこれを見直してみたのです。要は人の健康とか地域の健康を考えるときに、これ は書いてあるとおり、病気でないということがイコール健康だということではないのだ ということが、昭和26年に書かれていました。私の生まれる前ですから、これはあまり にも古いというので新しいのを探してみました。そうすると、こうなっています。平成 10年版です。あまり変わりないです。要するに病気でないということが健康ではないの だということを、ここでは一生懸命謳っています。  住民の健康ということを考えたのですが、高度な医療の充実というのは、地域の健康 や寿命を約束するものではないと思います。というのは、日本で最も平均寿命が長いの は長野県だと思います。だけど長野県が大学病院とか総合病院の高度先端医療が充実し ているというわけではなくて、「プロジェクトX」でやっていたように、住民健診を日 本で初めてやった地域だというのをテレビなどで私も見ました。  あと自治医大にいたときに、ナゴ先生という先生に、健診を受ける人のほうが受けな い人たちより寿命が長い、これはどうしてかというのを聞きました。一般には早期発 見、早期治療されるからだと答えるのですが、そうではなくて、もともと健康意識が高 い人が健診を受けるから平均寿命が長いのだという話を聞きました。これはバイアスの 説明で使われた話です。それで、瀬棚のように社会資源に恵まれない地域でも、住民の 健康意識が高ければ医療費が減って、健康な人が増えて労働力が維持されるのではない かというので、実はいまのシステムを私は考えました。  これはホワイトさんという方が、1961年に『New England Journal Medicine』という 雑誌に発表した論文で、2002年にも同じ内容で発表されています。難しい話は抜きにし て、住民が1,000人いて、この人たちが1ヶ月間にどういう受療行動を取るかを見てみ ると、何らかの問題が750人に発生して、実際に病院に行くのは250人で4人に1人で す。この中で一般病院に行くのが9人、専門病院に行くのが5人、大学病院に行くのが 1人です。だから本当に専門医の医療が必要なのは、実際、ここで受ける人たちの中の 1桁ということです。地域という目で見ると、残りのこの人たちのほうが多いわけで す。だからいかにこの人たちに目を向けるかというのが、実は私たちの課題でした。  それで私の仕事というのをざっと見てみると、こんなことをやっています。いまは実 は3人体制になっていますが、最初は1人で4年間やっていて大変忙しかったわけで す。これは忙しそうに見えるけれども、いちばん給料の高い人間がいちばん働くのは当 たり前だということで、こき使われて働いていました。ちなみに北海道というのは、医 師の平均給与が公的医療機関で見ても倍ぐらいなのだそうです。そういう所ですけど、 うちは半額で頑張っています。  話が飛んで申し訳ないですが、何をやりがいに私はやっているのかと考えてみると、 こんなことかなと思います。要は医療だけやっているわけではないというのが、いまや っているいちばんの楽しみではないかと思います。逆に何が大変かというと、若い人が いないとか、コンビニが1軒しかないとか、教育レベルが低くてとか、こういう書き方 をして地元の人の前でも出すと怒るのですが、実際そうです。田舎で医師が来ない大き な理由に子どもたちの進学という問題があるのです。  いろいろ教育関係の本を見てみると、いま都会では40人学級を目指すなんていう話が あるのですが、私の瀬棚町で1学年10人とか20人なのです。それだけ少ない人数の教育 をしているのに何で教育レベルが低いのか非常に疑問で、私も田舎の出身で思っていた のですが、実はいろいろ話したら、議員さんたちが学校の先生とPTAと住民を集めて セミナーみたいなのを開いてくれて、そこで私もシンポジストとして発言しました。私 は先生方に対して、あなたたちは手を抜いているのではないかという話をしたら、先生 方も反論していろいろ話合いになったのですが、たぶん、子どもたちの学力、教育が確 保されたら、田舎で働きたいという医師は相当増えるのではないかと私は思っていま す。  北海道に行ったときに、地域で働く先輩の先生に最初に言われた言葉が、「親のロマ ンは子の不満」という言葉でした。親は理想に燃えて頑張るけれども、子どもはいじめ に遭ってひどい目に遭うという話なのです。私はいま7年目ですが何とか乗り越えてい ます。あとはプライバシーがないとか、情報が少ないというのですが、いまインターネ ットがこれだけ普及している時代なので、ずいぶん情報面では助かっています。  5年間で何をやってきたかというと、診療所を立ち上げて運営し、予防医学を実践し て医療費を削減し、意識改革をして共同作業をやってきた。こんなことをやってきたの かなと思います。  具体的に見てみますと、うちの保健活動がこれです。今日のメインはこれだと思いま す。瀬棚町は人口2,750人ぐらいですが保健師が5人います。非常に多いと思います。 これは首長さんの先見の明があったと思うのですが、これだけ活動しています。実は肺 炎球菌にしても何にしても、これは保健事業としてやっているので実は保健師たちの仕 事なのです。うちはインフルエンザの予防接種を高齢者は9割打っていて、肺炎球菌ワ クチンは6割ぐらい打っています。これだけ健康相談なりいろいろな教室を開いてやっ てくれています。後から出てくると思いますが、たぶん瀬棚町は医療費が削減されたと いうのは、これのおかげではないかと私はいま思っています。  肺炎球菌ワクチンについては、あまり各論的なので飛ばしますけれども、簡単に話し ますと、日本には1988年に入ったということと、アメリカの高齢者の半数以上が打って いるワクチンだということは理解してください。実はインフルエンザの流行のときの肺 炎の原因菌の55%が肺炎球菌であるということから、両方一緒に打つのがよく話として 出てきます。実際、文献でもインフルエンザと肺炎球菌ワクチンの両方を打つと、CO PDの患者さん、呼吸器のもともと悪い方の入院を6割、死亡を8割低下させるという 報告もあります。  これはスウェーデンで26万人を対象に行われた。やはりワクチンを打つとこれだけ有 効であるというデータが出ていました。接種量も先進国はこれだけ上がっているのです が、日本はこの辺をちょろちょろしています。ただ、2003年、2004年になって数千だっ たのが16万とか、これだけ伸びてきているというのが、最近出てきています。  公費助成ですが、もともと保険が利かなかったものでなかなか普及しなかったので す。うちが最初にやってから、いま正確には22市町村で公費助成がされるようになりま した。これは接種率で飛ばします。  ごくごく簡単な理屈で、肺炎の予防はワクチンでやって、治療は抗生剤、インフルエ ンザの予防はワクチンでやって、治療は抗インフルエンザ薬です。どうしても日本の医 療というのは治療に偏っていて、例えば抗生剤をやたら使って耐性菌を生むとか、イン フルエンザも、抗インフルエンザ薬は世界中の半分以上を日本で消費しているという事 実があるわけです。それで耐性のビールスが出てくるとかいろいろ問題があるわけで す。やはり予防して治療するというのが普通のことではないかと思って、うちの町では 取り組んでいます。  どうやって入れたかというと、これは行政と私たちの話合いの中で、最初、役場の方 に文献などを持って行ったのです。話がよくわからないので、こういうことだというふ うに話しました。ある本を見ると、高齢者が肺炎になると25万円くらいかかるという話 があったのです。肺炎球菌ワクチンは原価が5,000いくらだと思いますが、公費で2,000 円負担して、住民が3,000円ぐらい払うわけです。1人2,000円負担して100人で20万円 ということは、100人に1人肺炎を予防できれば採算が合うという考え方だと思います。 それで説得して実は公費助成になりました。  医療従事者と行政の人たちが噛み合わないことの1つに、スピードの差というのがあ るのです。医療従事者というのはとりあえずすぐ判断しなければならないという宿命が あって、せっかちな人が多いのですが、行政というのは議会を通して条例を作って予算 を取ってものをやっていくという人たちなのです。それで駄目な行政の3つの言い訳と いうのが、予算がない、前例がない、条例がないの3つだそうですが、逆に言うと、議 会をちゃんと通して条例を作って、予算を取って前例を作ると非常にやりやすいという のがわかって、うちの町のようにどんどん普及したということだと思います。  一応、やるからにはこういう自治体の保険があるので、こういうのにも入りました。 もちろん医薬品救済基金というのもあるのは知っていますが、独自にやって保険に入り ました。これはうちの平田町長がご存じで、こういうのがあるからちゃんと入っておこ うということで入ったようです。  こういうふうに新聞に取り上げられて、読売とか北海道新聞で取り上げられてやりま した。これも広報活動の一環ですから、うちの保健師たちがこういうのを一生懸命やっ てくれています。ワクチンの接種状況が先ほど言ったように6割ぐらいになりました。 うちみたいに狭い町のいいところなのですが、これはインフルエンザと肺炎球菌ワクチ ンの地区別の接種状況を調べるわけです。低いところに保健師が出かけて行っては、打 ったらどうだいということをやっては、実は接種率を上げているという状況です。  これはピロリ菌です。これもちょっと端折りますが、実はピロリ菌も肺炎球菌ワクチ ンもどちらもそうなのですが、我々にしてみるとツールなのです。予防医学とかリスク マネジメントというか、少しでも病気に対する危険を減らすための具体的なお試し例み たいな意味です。そう考えて実はやっています。ピロリ菌をやったときには、北大の3 内科で結構、このピロリ菌を一生懸命やっているアサカ教授という方がおられるのです が、このときは確かカトウ助教授に来ていただいて、町で講演などもしていただきまし た。  うちの町はすごいと思うのですが、子どものピロリ菌の感染率が出ています。実は小 学生に対しても、いまピロリ菌尿中抗体というので簡単に見れるので、親御さんの同意 を取ってやりました。どういうことかというと、子どもにもピロリ菌が感染している子 がいます。その子どもに対して、もちろんプライバシーを守った上で、あなたが将来、 タバコとかお酒とかストレスにさらされると、一般の方よりも胃がんとか胃潰瘍になり やすいかもしれない。だから将来、君はそういうのをやらないようにしようとか、ある いは除菌治療をするなり自分で選択して考えてはどうかという教育の材料として、これ はやりました。  これは市街地と郊外の感染率の差を出しました。これはどういうことかというと、詳 しい話は抜きにしますけれども、ピロリ菌というのは一般的に発展途上国で感染率が高 くて、先進国では低い。上下水道の発達と関係していると言われています。市街地と郊 外を比べて感染率の差があったら、行政に、郊外のほうの上下水道の整備をもっと早め てくれという働きかけをしようと思って、実はこれは出したのですが、両者に差はあり ませんでした。瀬棚町の場合、親子間の感染がほとんどでした。  いま、うちの患者さんがどうなっているかというと、平成11年から平成15年まで見る と大体平らになっています。人口2,800人で延べ患者数が2万5,000人、だからかなり多 いと思います。町内の患者さんはだんだん減ってきて、町外の方が増えている傾向が出 ています。外来とか入院の医療費を見るとだんだん減ってきています。  これは救急搬送ですが、いま救急車はほとんどうちに入っている状況です。これも数 がだんだん減少してきている。印象としても重症者が減ってきていると思います。それ で最終的な医療費の動向ですが、高齢者の医療費は絶対評価だと難しいので相対的なも のを見てみると、ここは平成1年、2年、3年、4年と北海道の中でも瀬棚町は1位で した。それがずっときて、私が赴任した平成11年、12年、13年とやってきて、187位ま で急に落ちたのです。額にして大体半額です。70万円ぐらいまで落ちてきました。この ように結果が出ました。  まとめますと、日本一だった医療費が予防医学と保健活動を一生懸命やった結果、結 果的には落ちたというのがわかりました。かといって患者数が極端に減るとか、診療所 の収益が落ちるということはなくて、いま、うちの医療センターの一般会計からの持ち 出しは実は年間800万円ぐらいです。多いか少ないかは何とも言えないですが、ちなみ に1年間の除雪費が、うちの町だけでも3,000万円です。だから私は安いと思っていま す。 これぐらいのことができると思います。  今後の取組みということですが、いままでのことをちゃんと評価して報告書を作りま す。公費でやっているので、こうして喋っているよりも何よりも、住民に対して結果を 必ず報告しようという姿勢でやっています。だから肺炎球菌ワクチンの結果もピロリ菌 の結果も全部広報で流すようにしています。それと、いま禁煙に力を入れていて、うち は禁煙の指定施設になり、いま禁煙に一生懸命取り組んでいるところです。またダイエ ット教室をやって、メタポリックシンドローム対策に取り組んだり、リハビリテーショ ンを普及したり、いまある社会資源でできる当たり前のことを一生懸命やっているだけ の話です。  これは北海道新聞に取り上げられて、いま、ニコチンパッチというのがありますけれ ども、これの半額を助成して禁煙の人を少しでも増やそうとしています。ちなみに肺が んで入院すると大体80万円前後かかるので、これは計算してみると助成しても元が取れ るという話でです。  ダイエット教室のことも出ています。これは半年間、30名以上の方が参加して、体 重、体脂肪率、腹囲、血液データを取って、どれぐらい改善したか本人に見せようと思 って、いま、この結果をまとめています。大体こんなところです。ありがとうございま した。                 (スライド終了) ○久座長  ありがとうございました。いまのお話に、どなたかご質問ありますか。 ○土屋委員  3人のドクターで、これをやっていらっしゃるというお話でしたね。先生がいま言わ れたように、地域の医療資源を最大限に活かして、やれることをやっているという模範 的な取組みに敬意を表したいと思います。新臨床研修医制度の研修医を受け入れるとい うことについてはどういう状況になっていますか。 ○村上参考人  現在、北大と札幌医大と自治医大のほうから、随時希望者を受け入れていますし、札 幌医大の指定施設にはなっています。 ○土屋委員  これは吉新先生のお話にもあったかと思いますが、現場をこうやって若いうちに見て もらっておくことが大事です。それと先生方のように、実際に実践をしていらっしゃる 先生方が直接の指導医になるということは、いちばん求められている大事なことではな いかと思います。そういう所に研修に行ける研修医の先生方は大変幸せだと思います。 ○久座長  いまの3人というのは、常勤の方ですか。研修医も含めてですか。 ○村上参考人  2人が常勤で、1人は1年間の予定で、うちの5年目のレジデントが研修したいとい うことで1人来ています。 ○久座長  そうすると先生を含めて3人ですね。その先生以外の2人は、どういう形でリクルー トされたのですか。 ○村上参考人  もともと私が北海道出身で希望してここに行って、あとから来たのは、これも本人の 希望なのです。たぶん地域でやって何らかの魅力とか、やりがいがないと人は来ないと 私は思っているのです。都会ですと、やりがいがなくても他に魅力があります。例え ば、こうやって前向きにいろいろやっていることが魅力になるのではないかと思います し、住民が参加してくれるということで私自身もやりがいを感じるわけです。そのこと で少なくともやる気のある先生は来たくなると思います。だから、これは住民の問題で もあると思って、私はいつも住民にそう語りかけているつもりです。 ○久座長  ほかに、どなたかございますか。よろしいですか。村上先生、ありがとうございまし た。また北海道に帰られるようですから、お気をつけて。  それでは引き続きまして吉岡委員から、市町村合併の影響についてお話いただきま す。よろしくお願いします。 ○吉岡(キ)委員  貴重な時間をいただいて申し訳ありません。新見市哲西支局の保健師の吉岡です。こ の3月31日に1市4町が合併しまして、新しく新見市となりましたので、その影響と、 いままでの診療所設立までの経過についての報告をさせていただきたいと思います。資 料をご覧ください。  それと今日、急に持って来たのですが、「市報にいみ」というのが合併してすぐの新 市の広報誌です。この中で何を見ていただきたいかというと、6頁、7頁に岡山県の地 図があります。地域的なところを特に持って来ていませんので、この岡山県の地図と新 しい新見市の場所を地域状況としてご覧ください。もう1つは哲西町の診療所というこ とで、内科の診療所と歯科の診療所がありますので、このパンフレットを持ってきまし た。これに診療所の中のいろいろな設備が載っていますので、参考に見ておいてくださ い。  簡単に説明させてもらいます。第1回の会議のときに自己紹介も兼ねて、哲西町でい ろいろ発表させてもらっていた資料も含めて持って来ましたので、その経過を大体まと めています。旧哲西町ですけれども、人口は約3,300人で、高齢化率が36%の高齢者の 多い町でした。  保健医療福祉施策の整備の経過ですが、これが前回持って来た資料の大体のまとめで す。平成3年から7年までに総合福祉施設を新設しました。特養、ケアハウス、在宅介 護支援センター、デイサービスセンター、高齢者生活福祉センターなどの建設をしまし た。  平成9年に町民の意識調査を実施しました。そのときの要望で保健医療の充実が40.6 %、診療所建設要望が66.2%と出ました。町内には高齢の内科の先生お1人と、歯科の 先生お1人が何とか地域の医療を支えてくださっていた現状でした。  平成11年から12年にかけて、町内にありました内科の医院と歯科医院が、それぞれ医 師の体調不良のために閉院となりました。その後は1年2ヶ月、医師がいない状況とな りました。体調不良で内科の医院を閉院した段階で、内科の先生の家族の方にお医者さ んがいらっしゃったので、全部の患者さんの紹介状を書きまして、近辺の病院にきちん 受診できる配慮をしました。  それと保健事業に関しては、管内の新見医師会が行政に協力してくれて、健診とか予 防接種の対応をしてくれました。また隣町の医師が近くの往診の対応をしてくれまし た。結果的には紹介状をもらっても、寝たきりに近い状況とかで近くの病院に行けなか った人が、少し未受診で残ってしまったという状況でした。  その後、平成12年に診療所建設の準備として診療所準備室を開設し、課長と事務職と 保健師2名、そのあと内科の医師、これは保健医療担当理事(地方公務員)として採用 して、そこで行政職とドクターが一緒に活動し、地域包括ケアとか医療の話し合い、住 民への広報など意思統一を図りました。その後、法人の職員として歯科医師を採用し、 その後、歯科衛生士・看護師等を法人職員として採用しました。内科の医師は、この後 も民生委員会、役員会、栄養委員会などいろいろな会議があるのですが、そこにも出席 していろいろ考え方の広報等を行っていました。  平成13年になって役場の新築移転がありました。それで町総合センター「きらめき広 場・哲西」というのを建設したのですが、役場の本庁と診療所、歯科診療所、保健福祉 センター、教育委員会、生涯学習センター、図書館、文化ホールと、すべての機能を1 つの施設に合わせたものを造りました。これは町長が、町民がいちばん望むものを行政 サービスの中心に置くということで、内科の診療所、歯科診療所を全面に押し出した建 物を建てたということです。  診療所ですが、内科の医師を公務員として雇用していましたので、この方を診療所長 として法人に派遣しました。CT等を整備したので内容はパンフレットをご覧くださ い。併せて歯科診療所も開設しています。同建物にあるので待合室とかは共有で、内科 と歯科の両方を受けて帰れる体制にしました。そこでやっと1年2ヶ月の無医町を解消 しました。その後、保健スタッフについてですが、それまでは保健師2名で栄養士はい なかったのですが、保健師を1名増員、管理栄養士1名を新採用してスタッフの強化を 図りました。  医師が町長、教育長と一緒の施設にいることで、「町の方向性」についてすぐ提言で きる体制が可能となっています。行政と診療所の協力としては、夜間とか休日の緊急の 対応について、住民からの医師への連絡は、役場の日直、当直のほうに連絡が入り、そ こから医師のほうに連絡して、医師からその患者に連絡がいくという対応をしていま す。患者が直接、医師の自宅のほうに連絡を取らない体制にしたのは、プライバシーの 関係と、あと医師の家族が対応して、そのまま連絡が付かなかったときのために、役場 が間の連絡の責任を持つという体制にしました。その後、健康づくり推進協議会という 組織があったのですが、それを再編して医師・歯科医師を含むメンバーで、すべての世 代の健康づくりの推進をしました。  平成14年には、基幹型在宅介護支援センターを役場の中に開設して、地域ケア会議を 開催しました。これにも医師・歯科医師が入っています。高齢者の福祉施策の検討と か、各種福祉施策への提言を行います。この中で診療所へのバスの運行などの提言も行 われました。  平成15年ぐらいからは、内科の診療所のほうで自治医大とか済生会の先生など、いろ いろな研修医の先生の受入れを積極的に行っています。  平成16年に、また福祉のほうの組織の改革があり、老人ホームの嘱託医として内科の 先生が対応するようになりました。  平成17年3月31日に1市4町の合併となりました。この次の5月に、1年以上かかっ て探していた内科の医師を、もう1人雇用したいということだったのですが、やっと1 名確保できまして2名体制となります。合併後ですが、所長としての内科の先生は保健 ・医療担当参与として、公務員の立場は継続ということになりました。  次に平成17年3月31日に合併した後の状況です。先ほどの「市報にいみ」の地図を見 てください。岡山県の左上のほうですが、1市4町の合併で人口が約3万7,000人にな りました。面積は岡山県で2番目に広い市となりました。これは平成12年の国勢調査の 数値なので多少人数が多く出ているのですが、参考として見ておいてください。  新市での基本方針ですが、補助金のあるものについては継続する。町単独事業のもの については実施か中止かも含めて再検討という指示が回りました。哲西支局で実施して いた内容について、前回配付した資料のものを少しまとめたのですが、合併後の状況と 比較して出しています。子育て支援等の関係については出生祝い金は廃止されました。 その他の制度については多少やり方を変えるものもありますが、継続しています。  集団検診、母子関係、子どもの関係ですが、いままではかかりつけ医ということで哲 西支局の中での健診で、歯科のほうも哲西歯科診療所で診てもらっていたのですが、そ れがすべて新市の中央1会場で実施するようになりました。これについては、支局の中 での出生人数が少ないので健診として成り立たないということと、お母さんたちがほか の子どもに会う機会が少なかったり、同世代の人と触れ合う機会が、どうしても人数的 に少なくなるので、中央1会場ということで移動の距離が長くなって少し不便になるの ですが、大勢の中でいたほうがいいだろうという配慮でした。  やり方で多少変わったのは、単独でやっていた2歳6ヶ月児健診に内科診察を付けて いましたが、医師会の中で検討された結果、内科の診察は削除して、歯科の指導を中心 に実施するように変わりました。  保護者の歯科検診ということで、各種乳幼児健診のときに、毎回お母さんの歯の検診 もしており、子どもを持っているお母さんは歯医者に行かれないので、なかなか好評だ ったのですが、新市では人数が多くなるということで対応が難しいだろうと回数が減少 になり、2歳6ヶ月児健診の時のみ実施になりました。  妊娠中のお母さんの歯科検診を、子どもの健診のときに来てもらって一緒にしていた のですが、廃止になりました。各健診時のフッ素塗布は、中央1会場で実施のときに併 せてするようになりました。  「こころはぐくむ絵本事業」ということで、乳児期の子どもに本を読んだり、本の楽 しさをわかってもらうのと図書館利用の促進ということで支所やボランティアが協力し て実施していた事業ですが、中央で健診時のときにブックスタートということで、本を 配布してボランティアが対応する事業に変わりました。  子どもの健康づくりネットワーク事業を単町でやっていたのですが、小学校4年、6 年、中学校2年生を対象に食事調査、血液検査、運動教室などを実施していました。こ れについてはどこの補助もないということなので、新市では実施を現在検討していると ころです。そのネットワーク事業を通じてできていた地域での健康づくりや生活習慣病 の予防の普及、行政・医療機関・教育委員会・学校・PTA等の連携と行政の栄養士、 学校栄養士の連携等については、教育委員会が新市の中央に移動になりましたので、直 接話すことが難しくなったので、連携がなかなかとれなくなりました。  成人・老人関係の事業では、総合検診ということで、基本健診、大腸がん、胃がん、 前立腺がん、胸部レントゲン検診を1会場で全部やっていましたが、地域での検診が継 続で実施が可能となりました。  ただ、へき地でなかなか健診に来られない人がいるので、送迎バスを走らせていたの ですが、送迎のバスを雇う費用が削減されました。40歳未満の人についても、同じよう に低料金で健診を受けるように配慮していましたが、それも自己負担額が増額となりま した。  合併して良かったことは、今まで支局の中の7日間ぐらいしか健診を受けることがで きなかったのが、1年を通じて市内全域でどこででも受診が可能と変わったことです。  ミニデイサービスの健康づくり講座を、内科の先生と歯科の先生が協力しながらやっ ています。1会場30人程度の高齢者を、15会場程度健康づくりの座談会をしたり、いろ いろ話をしてもらうという事業をやっています。これは単町の事業ですが、支局で実施 することが可能になりました。  会議等については、健康づくり推進協議会を立ち上げたという報告をしましたが、支 局での実施は廃止となり、新市で別組織として作るようになりました。  地域ケア会議についても廃止になり、新市で新たに実施するようになりました。支局 では保健医療福祉担当者会議と構成を少し変えて継続する予定です。  その他は、高齢者世帯が多いので、交通の確保として、75歳以上の高齢者世帯と70歳 以上の独居世帯にタクシー券を配布していました。これは継続という指示が出ました が、他支局で実施していない所もあるので、いまのところは哲西支局のみで、もしかし たら1年のみで打ち切られる可能性も出てきているそうです。福祉バスは、診療所通院 バスですが、継続になっています。  歯科診療所の状況です。歯科は内科と違い、直接生命にかかわることが少ないので、 まず軌道に乗せることにだいぶ時間がかかりました。設立は法人として、雇用状況は医 師1名、歯科衛生士2名、施設は行政が建設し、施設を法人に貸与している形になって います。  診療時間は、月曜日から火曜日と木曜日から土曜日で、午後8時まで、勤務者に配慮 しています。  歯科医師の公募方法ですが、内科の先生は探すのに町長もすごく苦労して、県に行っ たり、つてを頼っていろいろな所へ行って探したのですが、歯科は公募という形で決定 しました。設備を全部用意したところ、地元の人とは言えないのですが、近くの方で大 学病院にいた先生が、地元に帰りたいというタイミングときちんと合ったということで 応募してくれて、歯科医師が無事に確保できました。  行政と歯科診療所の協力体制ですが、庁舎と保健福祉センターと同じ施設にあるの で、子どもの歯科検診を保健センターに歯科のセッティングをせずに、歯科診療所にお 母さんと子どもと一緒に行ってもらい、その場できちんとした対応ができるような配慮 ができました。保健事業と協力することで、先ほどの講演会のようなものですが、それ で歯科診療の広報ができたと思っています。初めて地元に来る先生については、行政は 地元の住民とのつながりをきちんと作る努力をしてあげて、健康教育、その他いろいろ な講師として、ある程度顔を売ってもらうという配慮が要るのかなと思いました。  先ほどと同じように哲西支局で実施している内容と合併後の状況の比較をしてみまし たが、老人大学みたいなものは実施を検討中です。ミニデイサービスでの健康講座は継 続です。ミニデイサービスでの講座によって、高齢者に歯科の先生を紹介できて、ある 程度受診につながったケースが多くあります。  検診については、成人歯科検診を総合検診と同時実施していましたが、集団検診は廃 止となり、医療機関の個別検診に変わりました。  保護者の歯科検診は、2歳6ヶ月児健診のときのみに実施するようになり、妊婦の歯 科検診は廃止となりました。  会議については、地域ケア会議も歯科の先生に参加してくれましたが、保健医療福祉 担当者会議に変更になりました。  その他の事業として、これには載せていませんが、寝たきり老人の訪問歯科検診を行 っています。年間20人程度で、介護度4、5ぐらいで、自宅におられる方を訪問しまし た。肺炎の予防の教育と口腔の手入れを実施し、歯科の先生と歯科衛生士と一緒に行っ て、要望があったら、そこから先は往診に継続しました。  寝たきり老人の訪問歯科検診を運営するに当たっては、内科の主治医や保健師、ケア マネージャーが協力して希望者を募ったりしました。  それらの活動を基にして歯科も高齢者のところで、予防教育に力を入れたりする活動 に協力してくれました。  新見市での医療の状況です。訪問や健康相談などをいろいろな所で把握した中から抜 粋しています。まず小児科の夜間診療の不安を訴えるお母さんたちがおられました。常 勤医は病院に週3回、平日の昼間だけ小児科の開設がありますが、そのほかの時には小 児科の開設はありません。県南への病院への搬送に結構時間がかかるという不安があっ て、住民の有志が署名活動を展開して、3週間で人口が少ない所ですが、1万3,000人 を超える署名が集まり、当時の新見市の市長に小児医療の充実についての要望として署 名を出しています。このきっかけは、食物アレルギーの子どもが呼吸困難になったとき に、新見管内の病院を転々として、最終的には倉敷の病院まで1時間かけて搬送された という状況がありました。  高齢者世帯、独居世帯の通院の不安については、外出支援の関係でタクシー券の配布 が中止されるのではないかということがありました。  認知症の不安の症状が出た場合については、入院中や家族の付添いが必要になるケー スがあって、それについての不安の訴えが何件かありました。  合併後の問題点としては、医師と行政関係者の意見交換の機会がないので、行政施策 に反映しにくいのではないか。保健師と栄養士の活動範囲は、面積が広がり、きめ細や かなサービスができにくいのではないかということがありました。  合併して改善された点は、乳がん検診を実施していない地区があったのですが、次年 度以降、実施できる体制になりました。これは4町で実施していたため、新市の中央で も実施が可能になったようです。  今後の要望ですが、へき地医療支援機構には、医師が技術向上の研修に行くときに、 代診医にいろいろお世話になっており、哲西診療所がいちばん利用していたのだと思い ますが、今度は医師だけではなく、長期休暇の看護師の対応についても派遣の要望がで きないかということです。ナースバンクがありますが、県南の人口の多い場合はそこで 対応できますが、県北にはそういう所の登録もありませんし、1年間のみ雇用したいと いう期間限定の相談がなかなか難しいので、そういう支援に相談に乗ってもらえたら有 難いと思います。  今までの段階で哲西町の場合は、診療所との関係づくりは、結構うまくいっていると 思いますが、合併後の課題がいろいろ出てくると思います。合併してまだ1ヵ月経って いません。新市の市長も決まっていませんので、今後、問題点も次々出てくると思いま す。流れの報告で、まとまりのないものでしたが、以上で終わります。 ○久座長  どうもありがとうございました。どなたかご質問ありますか。それでは、引き続い て、「平成18年の医療制度改革を念頭においた医療計画の見直しの方向性」について、 事務局から説明をお願いいたします。 ○針田医療計画推進指導官 指導課で医療計画を担当しております。現在の医療計画の 見直し状況についてご説明いたします。医療計画の見直しに関しては、一昨年から検討 が続けられており、3月に第7回の会が終わったところです。その第7回に使われた資 料を基に説明いたします。  2頁の「安心して日常生活を過ごすために必要な患者本位の医療サービスの基盤づく り」ということで、大まかな方向性を書いています。最初に、現在の医療計画は、住民 ・患者に分かりやすい保健医療提供体制の実現に向けて検討しようということになって います。これは患者の視点の尊重ということで、これまでの流れの中できていますが、 具体的には主要な疾患又は事業(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、小児救急を含 む小児医療、周産期医療、救急医療、災害医療、へき地医療など)について、どのよう な対策が講じられているかを分かりやすい形で示していこう。そして医療サービスの提 供者側、住民(患者)の双方が情報を共有しながら、分かりやすい体制を作っていきた いというものになっています。  (2)は、質が高く効率的な検証可能な保健医療提供体制を作ろうということで、数 値目標、評価を導入して実効性のある医療計画にしようということで検討されていま す。  (3)は、地域のことは地域がいちばんよく知っていることもありますし、都道府県 が自主性・裁量性を発揮できるような地域に適した提供体制を確立していただきたいと いうことで、地域における医療機関の把握や機能などを住民へ情報提供などを行いなが ら検討していきたいと思っています。  3頁は分かりやすく書きました。今回の狙いはそこに住んでいる方々が、その地域に どのような医療機関があるのか、どのような診療が行われているのかが分かるような形 にしたい、また実際に病気になったときに、どこに行けば、どんな医療が受けられるの かを分かるようにしたい。治って在宅に戻るときに、どのようなことを言って戻るの か、イメージが湧くような形の医療提供体制を作っていきたい。患者・住民に分かりや すい形にしていきたいという思いがあります。  いまお話したものが盛り込まれる内容になりますが、地域における医療機関がネット ワークを組んで患者や住民を支えていく。急性期、回復期、在宅医療を通じた切れ目の ない医療提供体制が作られることが望ましいということを書いています。また国として も、都道府県を支援するためにデータベースを作ったり、財政的な支援も考えなければ いけないということになっています。  5頁の「国が示す保健医療提供体制のビジョンの実現」ですが、それでは国は何をす るのかを書いたものです。国は全国調査をしてどのような状況になっているかを調べ、 地域のことがよく分かるような指標を作って、国がビジョンを示します。がんであれば 罹患率を減らしましょうとか、脳卒中であれば在宅復帰までの流れを地域で完結するよ うにしましょう、小児であれば、いつでも適切な医療が受けられる体制を作りましょう というビジョンを作って、6頁にはそれを受けて都道府県が何をするか。都道府県も同 じように調査を行い、その地域の実情を把握し、また国が示す指標などを参考にしなが ら、それぞれの地域の目標を立てていただく。例えば、この地域では、がんの死亡率を 何パーセント改善するとか、在宅復帰率を何パーセント増やそう。また小児の医療で は、すべての医療圏において24時間いつでも受けられる体制を作りたい。そういうイメ ージが、今回の医療機関の見直しになっています。  全体像を書いたのが7頁で、8頁も全体像を示しております。国がビジョンを示し て、都道府県の役割がいくつかあります。また盛り込まれる事項なども書いています。  9頁、10頁には、それをやるためには調査をしなければいけないということで、全国 的な調査、当面は緊急的なものも行わなければならないと思っていますが、将来的には 必要な統計、機能などを調べられるようにしていきたいと考えています。  11頁、12頁は、その医療計画を現実のものにするために、財政的なものも必要だろう ということで、交付金、補助金などの財政的支援なども検討が行われております。  13頁から疾病ごとのイメージになります。14頁では、がんなら、その地域はどのよう な医療機能があるのかというのは、なかなかイメージしにくいと思いますが、国として いくつかの代表的な指標みたいなもの、例えば健診率や死亡率、在宅復帰に向けて往診 の数、看取られる数、医療提供体制の数などを、ある程度指標としてイメージして、地 域で比較できるようにすれば、住民も、うちの地域はどうなのかということがよく分か るのではないか。そういう指標を作りながら、都道府県は数値目標のような、何パーセ ントがんを減らしましょうといったものを作っていくと、今まで以上に実情が分かって くるのではないかと思っています。  15頁は、同じがんについて書いたもの、16頁は都道府県比較をしたら、かなり地域差 が分かるグラフになっています。がんと同じように脳卒中でも指標を用いて数値目標で はこんな感じになる。疾患ごとにこういうのを作っていくと分かりやすいのではないか と思っています。  20頁に急性心筋梗塞、23頁に糖尿病と、ざっと流れています。26頁は今までの疾病別 とは若干異なり、小児医療という切り口で見たらどうなのかということで、いくつか事 業系のものについても考えていきたいということで、同じく国のビジョンを示し、指標 みたいなものを示して、県の目標値を出していただこうと思っています。  29頁には周産期医療で、これも非常に大事なものだと思います。32頁は救急医療を同 じようなスキームで考えています。35頁は災害医療、38頁はへき地医療です。これに関 しても国がある程度ビジョを示してネットワークの構築というか、いろいろビジョンを 示して、例えば地域におけるへき地診療所の数や、まだイメージになっていますが、こ ういう指標を用いて、地域を比較できるようにしていけばと思います。また都道府県が 医療機関を定めるに当たって目標を設定できるような形にするべきではないかと考えて おります。  いまのが指標、もしくは事業ごとに目標を設け、指標を見ながら住民に分かりやすい 形で医療提供体制を構築していこうということですが、41頁からはネットワークについ てということで切り口が変わっています。  42頁は、今まで1次、2次、3次という概念がかなり定着していますが、患者を中心 とした面で捉えることも非常に大切ではないかということで、患者を中心に、患者のこ とをいちばんよく知っていると思われるかかりつけ医がそばにいて、全体の面で見る形 の地域医療が大事ではないかという表になっています。  43頁も同じように書いています。患者、住民が中心に医療機関が連携し合う。身近な 所に関しては、身近な地域において、ある程度完結するのが望ましいのではないか。地 域の医療機関が連携し合う。それ以外のある程度専門的なものになると、都道府県圏も あるだろうし、それを越えるような連携も必要ではないか。医療機関完結型の医療から 地域完結型医療を目指すということになります。 44頁は、同じくネットワークです が、例えば、がんなら、がんの診療ができる医療機関が連携し合って、その患者を診て いく。小児救急なら小児救急をやっている医療機関が連携をとってやっていくことは、 非常に意義あることではないかと検討しています。45頁も同様です。  そういうネットワークを組むに当たり、ある程度調整する役割も必要ではないかとい うことで、46頁には、核となる医療機関も必要ではないか、またそういうのはネットワ ーク協議会みたいなもので、地域の医療機関などを含めて協議しながら、ネットワーク を作っていったらいいのではないか、と書いてあります。  49頁からは疾患や事業ごとのネットワークの案を示しています。50頁では、がんであ れば専門的な医療機関もあるだろうし、そこで専門的な医療機能が提供されるのだと思 いますが、それだけではなく、緩和ケアや基本的にかかりつけ医が中心になって患者を 支えていく。51頁は脳卒中ですが、救急病院では救急の医療機能が提供されると思いま すし、リハビリ機能も大事ですし、療養される方のために連携をとってサポートしてい きたいとなっています。以後は、疾病や事業ごとにいろいろなイメージ図を示していま す。59頁には、へき地についてですが、へき地だけで完結するのではなく、地域を支援 する医療機関と連携をとったネットワークを形成しながら、地域を支えていく体制が必 要ではないかということで、この資料を提出しております。これが3月に提出された資 料で、引き続き今月も議論は続いていく形になっています。 ○久座長  いまの説明に対して、どなたかご質問はおありでしょうか。これは一応都道府県を中 心というネットワークを作ると言っていますが、実際にはもっとローカルなネットワー クを作らないと動かないのではないですかね。県だけで決められても場所によってです から、一応県でやって、それから市や町に下ろしていくというか、もっと具体的に広げ る必要があるのではないかと思うのです。  ○谷口指導課長  おっしゃるとおりで、医療計画そのものは県の自治事務ですので、県が音頭をとると いうか、レギュレーションするのは間違いないのですが、実際にそこで議論していただ いている診療ネットワークについては、もっと狭い範囲の地域でないと、なかなかうま くいかない。従来ですと、二次医療圏という感覚にいちばん近いのかと思いますが、今 後私どもが考えているのは、二次医療圏と言いますと、どうしてもベッドの多い、少な いということだけしか頭になくて、疾病ごとに医療機能がどれだけ足りているのか、足 りていないのかを検討するには、二次医療圏の言葉を離れたほうがいいのではなかろう かと考えておりました。二次医療圏が中心ですが、それからちょっと膨れてみたり、場 合によっては狭いエリアでも構わないではないかというフレキシブルな考え方の下に、 その中で地域医療協議会のような地元の医師会の先生、行政の方、住民も一緒になった 検討会を作っていただいて、そのエリアの中でどれだけ不足しているのか、今後どうし ていくのかを議論した上で、今度は県の医療審議会辺りで、そのような部分をオーソラ イズするイメージができないだろうかという我々の問題意識で、検討会でご議論いただ いている最中です。またいろいろな甲論乙駁というか、これでいいという意見もあれ ば、こんなのでは駄目だという意見もありますので、まだ振れていますが、議論の中 で、いい形のものができないかと考えているところです。 ○新庄委員  この中でへき地医療のことに触れていますので、本来ならそこの議論に集中すべきな のかもしれませんが、主な疾病ごとにということで、いろいろなイメージを書いていま すが、都道府県によって持っている課題やそれぞれの優先性などは異なるかと思いま す。ここに例として示してある疾患だけではなく、例えば、感染症や健康日本でも介護 予防でも取り上げられている歯の健康など、都道府県独自の自由な課題については、そ れぞれの判断で含めるということを想定されていると受け取ってよろしいでしょうか。 ○谷口指導課長  必要最低限と申しますか、国が進めている健康フロンティアで挙げているような代表 的なものは、どこの県でもできればミニマム・リクワイアメントでやっていただきたい と思っていますが、それに加えて、各県の事情があるでしょうから、自分の県はこうい うものを取り上げていくということであれば、もちろん自主性でやっていくことが望ま しいのでないかとフレキシブルに考えております。 ○橋委員  私はへき地の立場から最近感じていることは、保健医療の提供で、いまお話のあった がんや循環器系の疾患は、へき地は便、不便はありますが、一応提供の受け方も、大体 分かります。最近、精神疾患というか、それほど重度ではないと思いますが、うつ病み たいな人の場合に、どのような保健医療を提供する機関があるのか。すぐ精神科医へ行 けみたいなことでは問題だと思っています。ただ薬を飲んでいるみたいな傾向が見える ようです。そういう人は医療の受け方がよく分からない。あるいは実際に保健師にして もいろいろな人にしても、この人にどういうことをすればいいのか、よく分からないと いうのが、最近は非常に増えてきているように私は思うのです。いまメンタルな面は広 範に広がっているのではないかと思うので、これらについても十分検討していただきた いと思います。 ○谷口指導課長  検討会のほうに、ただいまのご意見を私どものほうから述べさせていたただきたいと 思います。 ○久座長  そのほかによろしいでしょうか。高齢者だけに限らないのですが、うつ病の患者が非 常に増えていると思います。患者自身が精神科に直接行くことには非常に抵抗があっ て、この図の中ではかかりつけ医を通じて、必要に応じて精神科医に紹介をするという 形をとるのが、最も理想的だと思います。特に軽症のうつ病の場合には、適当な薬もい ろいろありますから、それこそネットワークを作って、うまくやっていく必要があるの ではないかと思います。ほかにどなたかございますか。  それでは、次に「へき地保健医療対策検討会報告書骨子(案)」についてお願いいた します。 ○宮本指導課長補佐  お手元の資料4に従ってお話したいと思います。ちょっと早いと言われるかもしれま せんが、最初の会にも「論点」を出しましたので、それに続く形で皆様方の検討の1つ の材料として先に出しております。  もう1つは、現在行っております自治体、医療機関を対象とした調査の結果もまだ出 ておりませんので、現状に関するデータの部分が不十分であることも自覚しておりま す。1つのきっかけとして皆様方のご意見をいたただきたいと思います。簡単に内容を 紹介したいと思います。  まず1ですが、近年の変化ということで4つほど取り上げています。(1)として は、国民の医療に求める意識の変化と医療提供体制の変化で、全般的に求める水準が上 昇しているのではないか。特に若い人たちについては、現状の医療で満足している割合 が低下しているという傾向が見られておりますので、今後とも要求の水準が高まってい るのではないかといったことを示しています。  求める内容としては、第1番目に、医療技術への信頼という部分が大きいのではない かといったところを前提に考えるべきではないかということです。もう1つ付け加えて いるのは、結果として、専門医療の確保が課題になっているということで、その中でも 特に、特定のいくつかの診療科において、医師の需要が高まっているということは、一 面そういった意識の変化に対応した医療提供側の課題ではないかということです。  (2)は、三位一体改革に伴う対応ということで、自治体の皆様方はよくご存じだと 思いますが、昨年度、一昨年度行われた予算の自治体と国における編成の過程で、国庫 補助負担金の縮減、国から地方への税源の移譲、地方財政の依存の低下を目指した地方 交付税の見直しという3つの課題について、同時に改革するという、いわゆる「三位一 体の改革」が行われております。  この中では、へき地医療ということは、必ずしも明示されてないわけですが、へき地 医療のための助成を国庫補助として行ってきておりますが、そういうものが含まれてい るいくつかの事業について、全国知事会などの地方6団体から出された意見としては、 税源移譲すべき国庫補助負担金だとして提示されていたということです。  これに対して現状の対応としては、政府与党の合意として、医療・保健衛生に係る事 業については、保健医療提供体制推進事業として統合補助金、施設整備費については、 保健医療提供体制整備交付金として、それぞれ自治体の裁量を増やした形での整理を行 おうとしています。  またへき地保健医療に関する補助制度については、その中でもさらに国の関与を十分 に確保するという観点等から、現行の補助制度を維持する方向で検討しようとなってい ます。こういうのが2つ目の状況です。  (3)の状況としては、市町村合併が急速に進行しており、平成11年3月には3,232 だった市町村数が、平成17年4月1日現在では2,395、予定されているものだけでも平 成18年3月31日には1,822になるということで、急速に減少していきます。もともと地 方分権の推進に伴い、自治体機能を強化することを目的としていましたので、市町村合 併の効果としては、境界を越えたサービスによる利便性の向上や行政サービスの多様化 ・高度化、広域的な視点に立ったまちづくり、効率化等が期待されており、保健医療分 野においても、例えば市町村合併を機に各地方公共団体が設置した小規模の医療機関を 統合して、より高度な医療を地域のネットワークで展開する取組みが期待されます。  (4)は、情報通信技術の進歩で、先ほど紹介したように、ブロードバンド回線の普 及と一般的なブロードバンド回線を利用した技術の向上によって、回線が引かれている 環境下においては、相当程度の遠隔医療が実施できるだろうということで、そういうも のの利用が広がっているということを紹介しています。このようなことがこれまでのへ き地・離島保健医療に関する検討に、さらに考えていかなければいけない要素として取 り上げました。  2は、へき地・離島保健医療に関するステークホルダーには、さまざまな立場の方が おられますが、それぞれの立場からの視点と今後の対応を、その立場から見た場合の対 応ということで提示しています。  (1)に住民を取り上げており、住民としては質の高い医療を受けたいということ で、その内容は単に診療所があるだけではなく、さまざまな診療科があることもそうで すし、安全性を含めた質の高い医療の提供を受けたいということです。同時に、簡単に 遠くの医療機関に行けばいいではないかということも、搬送手段の確保で、一義的には 費用が嵩むこともあって、そんなに簡単なことではないことも、住民の立場としてあろ うということです。  保健医療対策を検討する際には、同一の情報をもって多くの方の意識を揃えていく必 要があるわけですが、原則は行政を含めた医療提供側と住民との間には、もともと情報 の量に格差が現状としてありますので、そういうものをまず埋めていくべく、分かりや すく住民に医療機関の間の役割や、そもそもの医療が果たす役割などを理解していただ いて進めるべきではないか。そういう取組みの後に、地域での医療提供体制のあり方を 考える際に、積極的に参加していただくことが重要ではないかとしております。  (2)に、自治体として市町村を取り上げています。小規模市町村においては、地域 の中核医療機関が、保健医療福祉の実践の中核として機能し、統一的に住民の健康の確 保・向上に役立っているという例があります。本日紹介されたのもそういう実例かと思 います。これは行政と医療機関が、住民の健康について理想の姿を共有し、小回りよく 必要な取組みが実践されているということですので、そういう取組みを多く期待しても いいのではないかということで取り上げています。また、やりがいという話もありまし た。市町村で総合的なビジョンをまず作り、それに対して共鳴して参画する姿について も必要ではないかとしています。  再び市町村合併を取り上げていますが、市町村合併というのは、医療機関の再編成を 含む既存の保健医療対策を見直す機会であると捉えますと、複数のそれぞれの自治体に もともとあった診療所を統合して、複数の医師を配置するような診療所を置き、一方で 他の診療所をサポートしていくような、いわばサティライトの機能のような形に再編成 するなど、さまざまな取組みによって医療水準の確保とアクセスの確保が同時にできる 方法もあるのではないかとしています。  (3)の都道府県の立場ですが、都道府県においては、これまでもへき地保健医療計 画の策定、そういう内容を含む医療計画の策定の中で取り組んできた中核的な役割を果 たした結果、これまでも一定の前進を見てきたと考えられると思います。  一方、皆様方もおっしゃるように、未だ解決に至らない多くの課題も残っているだろ う。特にその中で、個々の診療所の医師の確保という課題もありますが、専門医療の確 保が課題として顕在化しており、へき地医療を支える地域の中核的な病院についての専 門医療の確保がなかなか簡単ではないということで顕在化しています。これについて は、情報通信技術の活用、搬送手段の確保を含めた都道府県全域での調整が必要です。  また都道府県全域のへき地医療以外の保健医療提供サービスを検討する中で、医療計 画も絡めて、その計画と立案が必要です。また住民の意見を取り入れる工夫も必要だろ うとしています。  (4)の医師・医療機関等ですが、臨床研修の必修化と合わせて、医師全般における 総合診療への高まりがあるのではないか。その中でへき地・離島医療に関心を持つ方々 は、徐々に増えているのではないか。こういう機会を捉えて卒前教育や臨床研修など、 あらゆる機会を捉えて、その関心をさらに高めていくように努めるべきではないかとし ています。  同様ですが、その関心の高まりの中で適切な支援が、診療面、生活面にあれば、へき 地・離島医療に一定期間でも従事しようという意思を持つ方々は、以前よりかなりいら っしゃると言われています。このような方々をさらにすくい上げるような取組みを期待 してはどうかということです。  臨床研修の全般的な話題ですが、魅力あるプログラムを実施する臨床研修病院には研 修医が多く集まり、さらにそういう方々に地域に残っていただくことも期待できる状況 が出てきています。そのため、医療機関における医師確保の観点からも臨床研修の魅力 あるプログラムを実施する必要があるのではないかとしています。  先ほどから繰り返して取り上げている医療資源の集中化ですが、これを行うと、より 高度な医療機能を確保しつつ、医師側の負担も軽減できます。入院機能の集中化と外来 機能の分散の取組みも、その機能と集中化とアクセスの両方の確保ですが、両方のバラ ンスをとりながら計画的に検討すべきではないかとまとめています。  (5)は、医育機関、大学、学会などの専門団体における取組みとしては、これまで の取組みの中で、大学も医師の研修と医師の派遣で地域医療を担うということで、幅広 く対応を行ってきましたが、最近の動きとしては、今年の3月に国立大学医学部、大学 付属病院の方々が集まった会議の中で提言が発表されており、大学医学部及び大学付属 病院の役割として、窓口を一本化した透明性・公平性が確保された医師紹介制度や、へ き地医療の専門履修コースの設定などが提言されていることは、今後の1つの材料では ないかとしています。  (6)の国の役割としては、目的が明確化されているへき地・離島保健医療対策の財 政的な支援は、これまで行ってきたものによって一定の成果を上げてきたことを認識 し、このような財政的支援は、今後とも引き続き重要であるとしています。  そのほかの取組みとしては、関係者を調整する、財政的に支援するだけではなく、事 例や考え方の紹介など、情報面における技術的な支援は、今後とも重要ではないかとし ています。  3は、現在行っている事業を中心として今後の対応をまとめています。(1)のへき 地・離島医療の確保の中での1)へき地診療所は、今後とも重要ではないかということ です。2)の巡回診療は、全般的には需要が低下している状況はありますが、離島など における専門医療の確保などにおいては、一定の役割を果たしています。  移動の手段は、これまでも言われていますので、そういうことを併せて検討してい く。へき地診療所も、すべて毎日診療している所ばかりではありませんので、へき地診 療所と巡回診療との関係について整理する必要があるのではないかとしています。  (2)の従事者への支援ですが、1)のへき地医療支援機構については、一定の役割 をかなり果たしているところは評価できるのではないか。さらに支援機能の向上が必要 ではないかとしています。2)の情報通信技術による診療支援としては、一定の実績が 現在でも示されていますので、こういうものの活用を今後も考えていくべきではないか としています。3)のへき地医療拠点病院については、重要である一方、活動は病院に よってかなり差があり、充実とともに見直しが必要ではないかとしています。4)のへ き地・離島医療マニュアルですが、住民の期待する医療と医療提供側、自治体とそれぞ れの意識を擦り合わせる材料として重要ではないかとしています。  (3)の救急医療の確保支援ですが、さまざまな患者を診る可能性がある一方、そう いう患者を診る直接の機会は限られているのが特色だろうと思いますが、そういうもの に対応すべく確立されたカリキュラムによって勉強していたただく必要があるのではな いか。搬送については、手順と受入れ側の医師が搬送するという仕組みが重要ではない かとしています。  (4)については、高齢者などの対応を意識した搬送手段としてのへき地患者輸送車 は、今後とも重要ではないかとしています。  (5)は、へき地保健医療情報システムの取組みについては、今後とも必要な見直し を行う中で続けていく必要があるのではないかとしています。  4は、医療計画における位置付けです。先ほど紹介しましたように、もともと医療計 画において盛り込まれている事項でしたが、そのほかの医療機能の確定、明確化ととも に、医療計画の中に含めて取り組んでいくべきではないかとしています。以上簡単です が、紹介いたしました。 ○久座長  これはこれまでの論点整理ということで、今後のこの報告をまとめるときの骨子の案 ですが、どなたかご質問、ご意見はおありでしょうか。 ○樋口委員  6頁のへき地医療拠点病院ですが、へき地医療拠点病院というのと、地域医療支援病 院というのがいまありますが、この違いがわからない医師が非常に多いのです。混同し ている医師が多くて、地域医療支援病院というのは、紹介率をうんと上げて、逆紹介を たくさんやるということですから、周囲に医療機関がたくさんないとできないのです。 つまり、医療には不足していない所が地域医療支援病院というのです。ところが、そう いう病院が、へき地を支援しているかというと、全く関係がないのです。ですから、こ れは非常に紛らわしいし、むしろ地域医療支援病院に対して、へき地の診療を応援する 機能を持たせる方向性が付けられないか。あるいは現在すでにそういうことをやってい る病院に対して、何らかの評価をして地域医療支援病院の要件の中に入れて、そういう 病院をすくい上げることが必要ではないかと考えておりますので、よろしくお願いいた します。 ○松村委員  私はへき地・離島の急患輸送、搬送についてお尋ねしたいと思います。例えば、救急 指定病院まで搬送します。ヘリ搬送は別として、例えば対島などの場合は、救急指定の 病院まで遠い所だと30km、15km、20kmという所があります。そうすると、20kmの所だ と、往復では時間的には40kmになります。特に心筋梗塞など心肺機能の停止などは一刻 を争います。心臓の機能が止まったときに一時的に蘇生をさせるAEDとかいう機器が あって、それを法改正で医師ではなく、一般の人でも使えるようになるということも聞 いたのですが、それは本当なのか。救急車の場合は、そういう機器が中に入っているか らいいのです。その機器は聞くところによると30万円とか40万円という話ですが、1つ の集落にそういうものをいくつも置いておくことは可能なのかどうか。全く素人っぽい 話ですが、お聞かせ願いたいと思います。 ○宮本指導課長補佐  いまのお話は、自動体外式除細動器と言って、心室細動という心臓が止まりかけたよ うな状態があるわけですが、そういうときに除細動、電気ショックを流すことによって 心臓の動きを元に戻すという処置のことだと思います。  これまで救急隊員の中でも、医師と救急救命士という資格を受けた人たちだけが使え たのですが、昨年7月から一般の人も含めて使えるという整理をいたしました。使われ る場所はいろいろ想定されていますが、1つは、救急救命士の資格を持っていない救急 隊員に使ってもらうというのは、かなり普及していくのではないかと思っていますが、 ほかにもいろいろな施設やさまざまな場所に置いていただき、使い方もなるべく周囲の 方に勉強してもらって使ってもらうという方向はあるのではないかということで、そう いう面でも、普及を図っているところです。  期待されているのは、機械を買う部分についてではないかと思いますが、いま取り組 んでいるのは、教育の部分での取組みを進めており、普及、啓発のための事業を、一部 の自治体に限られていますが、今年度から始める取組みを進めています。 ○松村委員  モデル的に地域を指定してやってみようという考え方もあるのですか。 ○宮本指導課長補佐  いま申し上げた普及、啓発の事業は、都道府県が行うものですから、そういう中で教 育などが中心ということですが、いま取り組んでいるところです。 ○松村委員  何もかも都道府県を対象にするのではなく、直接でなければいけませんよね。すべて ワンクッションやって、ややこしくてかないません。これからは都道府県を通してやる 部分とダイレクトで市町村でやる部分と整理して考えてもらわないとおかしいのです。 どうしてもしなければいけない部分もあるでしょうが。 ○久座長  先ほどお話がありましたが、へき地医療支援病院、へき地医療拠点病院など、いろい ろな言葉が出ているので、少し整理をしたほうが良いですね。初めに定義をはっきりし ておいたほうが良いかもしれません。 ○冨澤委員  初めて出てきて、今までの議論がわからないのですが、簡単に申し上げます。3点あ りまして、1点目は5頁の、へき地医療は待ったなしの問題で、理念は必要ですが具体 的にどうするかというのは非常に必要だと思っています。具体的にへき地の医師をどの ように確保するのか、生身の人間をどのように持ってくるのかというのは、具体的な方 策の中に少し書いてほしい。全体的なまとめの論点はよろしいと思いますが、高久委員 や樋口委員からもお話がありましたように、例えばITがあるのはいいのですが、IT を使う先生や看護師をどのように確保するのかという具体策を書いていただければ有難 いと思います。  例えば支援機構のようなものもありますが、それはあくまでも医師がいる中で、その 振り分けをどうするかということについては、非常に機能すると思いますが、医師がい ない所で、どのように医師を集めるか。例えば島根県の赤ひげバンクや長崎県のドクタ ーバンクの話が出たかと思いますが、具体的に医師を、あるいは従事者をどのように確 保するのかを、具体的に教えていただければ有難いと思います。それは1頁の、例えば 小児科が少なくなった、産科が少なくなったという辺りは、地元では本当に緊急な課題 ですので、その辺の具体的内容を書いていただければ有難いと思います。  2点目は3頁の2の(2)の1つ目の○の最後に「小回りよく必要な取組みが実践さ れる」とあり、「そのためには総合的な体制を構築」と書いてあります。総合的な体制 についても、できる限り具体的支援方策の中に「巡回診療」と書いてありますが、で は、具体的にどうするのだという内容で書いていただければ有難いと思います。現場に 出てみますと、理念だけではへき地医療は改善されないことがわかってきました。  3点目は、4頁の(4)の3つ目の○に、「魅力あるプログラムを実施する」とあ り、「このため、充実した臨床研修の実施が必要」と書いてありますが、実際のとこ ろ、へき地では産婦人科の先生がいないということで、管理型の病院になりにくく、な かなかそこに居着いていただけません。へき地の近くの大きな病院から、へき地へ行っ ていただくようなシステムは、どのようにすればいいのかという具体策が必要です。  これで2年が終わりますが、宮城県の場合には、県として30万円ほど中核施設に払っ ています。実際の病院では、例えば60万円なり、宿舎を無料で貸したりして、かなりお 金がかかっていますので、あまり先生方を手放したがりません。「へき地に1人回して ください」とお願いしづらいものですから、いま申し上げているのですが、具体的に臨 床研修病院からへき地へ行っていただくには、どのようにしたらいいのかということ も、具体的に書いていただければ有難いと思います。 ○久座長  難しい問題がたくさん提起されたと思います。いまのご意見を参考にして、具体的に 書ける点は書いていただけたらと思います。 ○新庄委員  率直に申し上げて、先ほどの哲西町の例も、今回の報告も、骨子も見て、一抹の不安 が隠せません。市町村合併の中で報告を聞きますと、削減、撤廃、廃止が非常に目立ち ます。それは私自身も感じているところです。この報告の中では、統合や民営化、そし てまた中核病院、拠点病院という機能はあります。確かに救急や二次、三次医療に関し ては、そういう機能が重要かと思いますが、一方、中核化、拠点という方向を進めます と、従来あったプライマリー・ケアの機能が衰えて、むしろ二次とか三次のニーズが逆 に高まってくる。つまり、医療のへき地問題が増えてくるのではないかという危惧があ ります。したがって、一方で拠点を作ることは、その拠点が機能する各地域の機関が必 要ということですので、例えば、分院化や医療機関の分室化など、常時ではなくても、 定期的に週1回ドクターが来るということも含めた、お年寄りが生活の範囲でアクセス しやすい配慮も積極的に進めていただかないとへき地が増えるのではないかという危惧 を持ちました。 ○土屋委員  ただいまの新庄委員に関連したことですが、おっしゃるとおりです。私ども医師会と しても、医療計画の見直し、あるいは社会保障審議会の医療部会等でも申し上げている のは、拠点病院を指定することが第一ではない。地域もいろいろで、その地域における 医療事情を反映した、もっと言うと、その地域医療における医療支援にはどういうもの があるのか、それを最大限に活かすことを第一に考えて、その上で、どういう医療機関 があり、核となる医療機関として指定するのか。それが1つでいいのか、2つでいいの かということを、次に考えるべきである。まず拠点病院ありきではないということを最 初から主張しています。それは新庄委員がおっしゃったとおりです。 ○久座長  どうもありがとうございました。ちょうど時間になりましたので、第4回の「へき地 保健医療検討会」をこれで終わらせていただきたいと思います。次回の予定について、 事務局からよろしくお願いします。 ○宮本指導課長補佐  次回は、5月23日(月)午後3〜5時です。場所は改めてご連絡いたします。 ○久座長  本日は、遠方からもご出席いただきまして、どうもありがとうございました。 【照会先】  厚生労働省医政局指導課  宮本、川畑  03−5253−1111 (内線)2554又は2550