05/04/15 第12回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会の議事録について         第12回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会             日時 平成17年4月15日(金)                14:30〜             場所 厚生労働省9階省議室                  ┌――――――――――――――――――――┐                  |(照会先)               |                  |厚生労働省職業能力開発局        |                  |総務課企画・法規係           |                  |TEL:                |                  |03−5253−1111(内線5918・|                  |               5313)|                  |03−3502−6783(夜間直通)  |                  |FAX:                |                  |03−3502−2630        |                  └――――――――――――――――――――┘ ○諏訪座長  それでは第12回の研究会を開催させていただきます。本日は研究会のとりまとめに向 けて、報告書の素案をご議論いただくという作業を続けさせていただこうと思っており ます。そこで、まず事務局から叩き台としての資料がお手元に配付されておりますの で、これについてご説明をお願いいたします。 ○総務課長(妹尾)  それでは私の方から説明をさせていただきます。お手元に職業能力開発の今後の在り 方に関する研究会報告書(案)を資料Iとして出しております。ほかに資料が2種類、 参考資料と横長の表組になった資料がありますが、これは従来から出してあるものに手 を入れたものです。今日は今諏訪座長からもありましたように、研究会報告書(案)に ついて、ご議論いただきたいと思っております。  目次です。前回の研究会の場所でも同じような報告書の叩き台ということで出させて いただいていますが、そこから目次として大きくは構造は変わっていません。後ほどご 紹介しますが、報告書の形をとる上で、「はじめに」というのを入れています。その後 が、大きく2つに分かれており、「I職業能力開発の現状と課題」です。その中の「1 現状」では、「(1)職業能力開発の現状」と、「(2)踏まえるべき社会・経済情勢 の変化、(1)労働力の供給面(2)需要面の変化」を記述しております。  「2課題」です。「1現状」の変化を踏まえた上で、職業能力開発に関する課題とし て、何があるのかというのをまとめたものです。「(1)基本的考え方」のところで、 大きな課題をいくつかまとめています。その課題を受ける形で「(2)職業能力開発の 社会的な必要性、意義」を述べさせていただき、その課題、職業能力開発の必要性を受 ける形で、「(3)関係者に求められる役割・課題」という形にしております。関係者 としては「(1)労働者(2)企業(3)教育訓練機関(4)行政(5)その他」としています。  「II今後の施策の方向性」ということで、関係者に求められる役割・課題をより支援 していく、あるいは促進していくという形で行政施策として何が求められているのか、 という形でまとめています。「1教育訓練の実施及びその機会の提供に関する支援」、 「2職業能力評価制度」、「3職業能力開発を行うにあたっての相談・情報提供」、 「4その他(1)若年者の職業能力開発支援の充実(2)職業生涯を通じた職業能力開 発の取組みの推進(3)技能継承への対応(4)国際協力」としています。  1頁です。報告書として「はじめに」という章立てを設けております。この「はじめ に」の中身は報告書の内容のエッセンスの重点という形にしています。1つ目のエッセ ンスは人口の減少と職業生涯の長期化が続いていて、その中で職業能力を高め、十分に 発揮できるような社会の形成が重要であるということです。12行目、今後の我が国の活 力の維持というところで、雇用の安定を図り、社会的な公正・公平を実現するために、 人材への投資が強化されるべきである、そのために労働者も企業も、あるいは国、地方 公共団体、教育訓練機関が連携・協力して行っていく必要があるという、この辺りが中 心的な記述ではないかと思っております。  2頁以下が報告書の本文です。お手元の資料でアンダーラインを付けた部分が、前回 までにお配りした資料に新たに付け加えた部分とご理解いただければと思います。前回 までの資料は箇条書きのような形での資料でしたので、体裁は相当入れ換えたり、並べ 直したりしていますが、記述されている内容の要素として、新しく付け加わった部分に アンダーラインを引いているとご理解いただければと思います。最初の部分が職業能力 開発の現状です。現在の職業能力開発がどのような状況になっているのかということを 記述しています。2頁の20行目辺りまでは企業の職業能力開発の状況で、15行目のとこ ろにあるように、企業の総合的な人材育成機能が最近低下してきているのではないかと いう指摘がなされているという点、18行目、OJTを従来重視して取り組んできてお り、この方針も維持されるであろうけれども、外部委託・アウトソーシングを進めてい くという企業も4割程度あるということです。22行目からのパラグラフは、正規労働者 と非正規労働者を比べております。どうしても、非正規労働者、パートタイム労働者の 場合には教育訓練を受ける対象とならないということです。27行目が職業に必要となる 技能や職業能力の評価の部分です。職業能力評価制度を多くの企業では導入しています が、導入している一方で現行の職業能力評価制度については難しい点があるというよう な評価を下している企業が多いということです。33行目辺りからは、労働者に対して企 業はどのように求める能力について知らせているかという点の現状です。2頁の一番下 の行からは、職業能力開発の責任主体をどう捉えていくかという点です。個人の責任だ と考えている企業が増える方向にあるということです。3頁の3行目、労働者側につい て記述しています。これまでと比較して、今後は自分で職業生活の設計を考えたいとす る割合が増加しています。ただし、職業能力開発を行う際には、忙しい、あるいは費用 がかかりすぎる、休暇などがとりにくいという問題点の指摘があるということです。8 行目からのパラグラフでは、今後、企業が職業能力開発を行う、あるいは自己啓発を行 っていく際の民間教育訓練機関のウエイトが増えてきているという記述をしています。 専修学校に在校している人が80万人を超えている、あるいは今後は大学院、専門職大学 院という形での高度な教育訓練機関が増加しており、その役割が増えるということで す。  次に、踏まえるべき社会・経済情勢の変化ということで、労働力の供給面の変化を最 初に述べています。2006年をピークに総人口が減り始める、あるいは労働力人口も減っ ていくという点、2007年問題といわれる団塊の世代の集中的な引退が始まる点、28行目 の若年者の雇用が厳しいという現状、ニート(NEET)やフリーターが増加している という点、36行目の長時間労働者の割合が増えてきており、それが職業能力開発に対し ても悪い方向での影響を与えているという点です。40行目からは労働者の就業意識につ いて述べています。特に若年者では将来の目標が立てられない、目標を実現する実行力 が不足している者も増加しているということです。4頁の4行目からは、労働者の職業 生活の長期化が見込まれ、その節目ごとの計画的な職業能力開発の必要性がさらに増す ものと考えられるという点を書いています。労働力の需要面の変化では企業全体の変 化、グローバル化などを踏まえて人事戦略や人材育成方針にも大きな変化が生じている という点、産業構造を通して第三次産業、特にサービス産業化が進展しているという 点、20行目からは非正規労働者が増加しているという点、さらに22行目からは労働者に 対して求める能力が複雑化・多様化しており、即戦力志向が高まっているという点、賃 金体系については、年功重視体系から能力主義体系に移ることが検討されているという 点を書いています。  このような変化を踏まえた上で、将来に向けて何が課題になるのかということ次に述 べています。課題について第1から7までということで、大きく7つに分けて整理して います。  第1の課題は、人口減少への対応ということです。特に5頁の1行目、労働者あるい は企業のどちらかが中心的な役割を果たすというよりも、両者が連携し協力して職業能 力開発を行っていくことが重要ではないかということを挙げています。  第2の課題は、人材投資が社会全体にとって意義があるのだと、経済活力の活性化や 雇用機会の創出という点で大きなメリットがあり、したがって、社会全体として職業能 力開発を進める必要性に対して共通の理解を深める必要があるのではないかということ です。この中で、13行目辺り、社会全体として職業能力開発に取り組む際に、例えばど ういう人材が必要とされているか、どういう職業能力が必要とされているのかというこ とを、将来に向かって明確に示し目標を設定することが必要ではないか、2007年問題の ような問題へ我が国全体として取り組むことも課題であるということを挙げています。  第3の課題は、企業の職業能力開発の機能について、従来はOJTを中心に企業が大 きな役割を担ってきたわけですが、22・23行目では企業のそのような職業能力開発 の機能が、経営環境の厳しさを反映して弱まってきているのではないかという問題点が 指摘されており、その中で、特に職業能力開発を指導する人材の不足を訴える企業も多 いということを挙げています。  第4の課題は、職業生涯の長期化への対応ということです。長期にわたり能力を十分 に発揮できるようにするとともに、求められる能力の変化へ対応していくことが課題で あろうということです。その中で、33行目、特に自己啓発、自ら行う能力開発が効果的 に行われる必要があるのではないかということを挙げています。  第5の課題は、雇用形態の多様化ということです。パート労働者などが増加している ことはもちろんですが、起業やボランティア活動などの雇用形態以外の働き方も増加し てきているということへの留意が必要ではないか、特にパート労働者などでは、企業の 中で職業能力開発が十分に行われないケースが多いので、そういう人に対していかに教 育訓練の機会を確保するかということが課題であろうとまとめています。  6頁です。第6の課題は、若年者、フリーター、ニート(NEET)のような若年無 業者への対応が必要であろうということです。  第7の課題は、国際協力ということです。従来から職業能力開発分野での国際協力の 取組をしていますが、将来に向かって国際協調や経済的安全保障の面からも、引き続き 国際協力を行っていく必要があるのではないかということをまとめています。  このような課題の中で、それぞれの関係者がどう取り組んでいただく必要があるのか ということを、以下にまとめています。(2)として、その前提となる職業能力開発の 社会的必要性や意義をどう捉えるかをまとめています。20行目、積極的に職業能力開発 に取り組むような社会を作るためには、社会全体として能力開発の必要性、意義につい て十分に意識することが重要である。これが職業能力開発を進めるインセンティブにも なっていくということで、職業能力開発の意義を訴えているわけです。23行目、経済社 会の様々な変化の中で、労働者は的確な職業能力開発を行うことが自らの職業の安定や 地位の向上を実現していくことになる、その意味で職業能力開発は最大のセーフティネ ットであろうということです。特に労働市場における個人の雇用可能性を高める、ある いは職業の安定を達成する、あるいは社会的な公正・公平を実現するという意義がある のではないかということです。若年期における能力開発の意義、あるいは職業生涯が長 期化していく中での職業能力開発の意義もまとめています。  他方、企業の中で職業能力開発を行うことが労働生産性を高めていくわけですが、企 業にとっての職業能力開発の意義については、その趣旨の記述を6頁の37、8行目から 7頁にかけてまとめています。7頁の3行目、4行目辺りでは、職業能力開発を企業が 積極的に行うことは、優れた人材確保に資するわけですし、労働者のモチベーションや 適応力を高めるという意味で、企業にとってもメリットのあるものであろうと書いてい ます。6行目以下で、企業が人材育成に取り組むことは、社会の一員としての使命を果 たしていく上でも大きく評価されるものである、そういう意義もあるという記述をして います。労働者や企業を引っくるめて、社会全体としての生産性向上や新たな雇用機会 の創出、社会的な公正・公平の実現という大きな利益があるものではないかと位置付け ています。  (3)の関係者に求められる役割・課題ですが、まず(1)労働者です。25行目辺り、 個人が主体的に能力開発に取り組むことが必要であるとしています。職業生涯の長期化 の中で、労働者個人が能力を発揮して充実した人生を送るためには、労働者がキャリア ・デザインの考え方に基づいて、自ら選択したライフスタイルに合わせて、起業やボラ ンティアなども含めた様々な働き方を念頭に置いた、職業生涯の節目ごとの棚卸しのよ うな経験や能力を振り返りつつ、職業生活における目的を考え、職業選択や職業能力開 発を行っていくということが重要ではないかと位置付けています。  8頁、(2)企業です。5行目ですが、事業主としては雇用する労働者に対し、能力開 発を積極的かつ計画的に取り組んでいくことが必要であろう、OJTは今後も企業内の 能力開発の重要な部分を占めるわけですが、特にOJTを担う現場の管理者、あるいは その上司という職責の方が計画的なOJTを行いやすくするという観点での人事配置等 の雇用管理面の配慮も企業にとって必要ではないかということです。13行目辺りでは企 業は労働者が能力開発に取り組みやすい環境を整備するとともに、その前提としてどの ような能力が求められているか、あるいはどのような成果が期待されているのかという ことを示していく。取り組んだ結果をどう評価していくのかという点を示すことが必要 だろうということです。21、2行目ですが、企業は労働者が能力開発を行いやすい体制 を整備する、あるいは必要な支援を行うような環境を会社の中で作っていくことも必要 ではないかということです。27行目辺りですが、若年者など職業能力開発を受ける機会 が少ないものを企業として受け入れた上で、能力開発を行う機会を与える取組も求めら れていると考えています。労働者に対する具体的な支援策として、金銭的な支援、ある いは時間上の配慮も必要なわけですし、さらに社内のキャリア・コンサルタントの配置 など、相談・支援体制を整えるということ、さらには35行目辺り、職業能力開発推進者 の活用も不可欠だろうと考えています。  9頁、(3)教育訓練機関です。多様な教育訓練機関による多様なニーズに合った教育 訓練機会の提供が重要だろうということです。その際、多様なニーズに応じた教育訓練 機会が提供できるように、10行目辺り、組織的に労働者や企業のニーズを汲み取れるよ うな、あるいはどういう訓練を行っているのかという内容について、労働者、企業に情 報提供をしていくような取組が教育訓練機関に求められるであろうとしています。特に 求められる能力の高度化などに対応する形で、15行目辺り、専門職大学院、あるいはそ の他の大学院などの高等教育機関の活用も、教育訓練支援の有効な活用ということで重 要ではないか。他方、インターネットの活用等によって、生活の身近な場所で教育訓練 機関を提供できるような制度を作ることも重要ではないか。例えば既存の公的施設やそ の他の民間施設も含め、教育訓練のための社会的なインフラを整備していく必要がある のではないかと考えています。  (4)行政です。社会的な職業能力開発の位置付けを踏まえた場合に、国や地方公共団 体が労働者や企業が行う職業能力開発を引き続き積極的に支援していく必要があるとい うことです。このために、国及び地方公共団体は、能力開発の必要性に関する社会の共 通認識の形成をまず図って、能力開発を希望する者は、いつでも機会を得られるよう に、そのためのインフラの整備を推進していく、あるいは企業や労働者の取組に対して 支援をしていくということが行政に求められているのではないかということです。その 際には、34行目、どういう人材が求められているのか、その育成のためには各関係者に 何が求められているのか、どのような支援が必要なのかという点について、行政として 十分に社会に示していくことが重要ではないかということです。特に能力開発を行う資 源が比較的少ない中小企業などに雇用される労働者、あるいは能力開発が企業によって 行われにくい非正規労働者や若年者などに対しては雇用のセーフティネットの観点、あ るいは雇用のミスマッチを解消するという観点からの行政としての取組が必要であろう と書いています。10頁の3行目以下ですが、具体的な支援のツールとしては、従来の助 成金や公共職業能力開発施設を設置するということに加えて、情報提供、あるいは労働 時間面での配慮を企業に促すというような手法を合わせて、より効果的な支援策を検討 していくべきであろうということで書いています。10行目辺り、能力開発を社会全体と して推進していくために必要となるような指導的な人材の養成、高度・先導的な分野に おける訓練カリキュラムの開発、職業能力評価基準の整備、能力開発に関する情報提供 システムの整備など、行政に求められている具体的な項目を並べています。こういうも のを含め、継続的かつ積極的に能力開発を行うためのインフラ整備が行政に求められて いるのではないかということです。また、最近の考え方ですが、18行目辺り、このよう な行政としての機能を高めていくためには、「ソーシャルマーケティング」という考え 方も取り入れた上で、何を行政として行っていくことが最適なのかということの検討が 必要ではないかということです。  (5)その他です。ここで書いているのは、1つ目は労働組合です。職業能力開発の場 面で、労働組合が果たす役割が最近増えてきているという点、企業が行う能力開発に関 しても、労働組合が協力をしていく必要がある、労働組合が果たすべき役割が重要性を 増していくということです。35行目以下では、さらにそのほかの担い手として、NPO の役割が増すであろうという点、若年者の職業意識形成に関しては、学校教育機関との 連携が重要であろうという点を踏まえ、広汎な関係者が有機的に連携することが必要で あるとまとめています。  11頁、II今後の施策の具体的な方向性です。1教育訓練の実施及びその機会の提供に 関する支援ということで、8行目辺り、企業が職業能力開発に積極的に取り組むことを 支援する観点から、その意義について情報提供をしていく。社会的に評価されるような 仕組みの整備が必要だろうということです。OJT、Off−JT、その他のものも含 め、企業の中での職業能力開発がより効果的に行われるような情報提供による支援が重 要だろうという点を、14行目辺りで書いています。人材育成の担い手、教育訓練を担当 する担当者の育成についての問題点の対応を書いています。20行目辺り、現場の管理者 や上司の役割についてです。25行目以下では労働者に対してですが、28行目、多様な能 力開発の機会の確保、相談情報提供体制の整備のほか、減税や奨学金制度のような資金 面での支援も有効ではないかということです。雇用だけではなく、様々な働き方が増え てきていることも踏まえた対応も必要だろうということです。36、7行目、企業におけ る取組を推進するのはもちろんですが、企業による支援が受けられない労働者に対して の公的なサービスが必要だろうということです。12頁、非正規労働者、あるいは女性、 高齢者、障害者などの支援も重要だということです。7行目以下では国と地方公共団体 の連携について書いています。9行目、資源の適切な選択と集中を行いながら、国と地 方が連携かつ役割を分担し、施策の対象者ごとにきめ細かな施策を実施していく必要性 について書いています。18行目のパラグラフでは、民間教育訓練機関の活用に関して、 企業や労働者のニーズに応じた民間教育訓練機関の活用ができるように、その企業や産 業政策との企業内ニーズとの橋渡しが必要ではないかということです。  13頁、2職業能力評価制度に関してです。6行目、職業能力開発に関して、労働者と 企業の双方が明確かつ客観的に識別でき、社会全体に通用するような共通の基準につい て、引き続き国が業界団体と連携を図りつつ、整備をしていく必要があるという点、10 行目、若年者に対しては早期から明確な能力開発のための目標を定め、その目標を達成 するための道筋が示されていくような仕組みが重要で、そのための社会的な整備を推進 する必要性についても書いています。  3職業能力開発を行うにあたっての相談・情報提供です。24行目から職業能力開発が 効果的に行われるためには、職業能力開発を行う労働者や企業が必要な情報を容易に入 手し、職業能力開発のための様々な支援策を活用しながら実施できるような、そのため の情報提供が必要である、特にIT技術の発達を踏まえた情報提供システムの整備の継 続的な推進や年者に対しては職業観の涵養という面での情報提供も必要だろうと考えて います。情報提供や職業相談を行う際には、キャリア・コンサルタントの活用が不可欠 だろうということで、31行目以下に書いています。  14頁、4その他として(1)若年者の職業能力開発支援の充実についてです。最近の ニートやフリーターの増加を見ると、若年者に対して特にきめ細かい対応が必要なわけ ですが、10行目辺り、若年者の自立を促進するために若年者自身がよく考えて、円滑に 職業生活に移行し、職業を選択することが可能となるように企業や学校、家庭、行政が 連携して、若年者に対して適切に助言を行う、あるいは教育訓練の機会を提供するとい うきめ細かな支援が必要であろうということです。その際には、より若年者に近いとい う意味で、地域の創意工夫を生かしていただくことも重要だろうということです。他 方、若年者に対して能力開発を実施するためには、企業に積極的に取り組んでいただく 必要がある、若年者に能力開発の機会を提供するということは、社会的な使命ではない かということです。企業側にとっても指導者の育成や職場の活性化につながるという面 もあるのではないかということです。  (2)職業生涯を通じた職業能力開発の取組の推進ということで、職業生涯が長期化 していくという点からの対応を書いています。31行目、長期にわたって働き続けられる ような中長期的な視野に立った職業能力開発に適切に取り組んでいく必要があるという ことで、労働者が職業生活設計に取り組むための相談体制の充実が必要であろう、企業 の中での職業能力開発に取り組みやすい雰囲気づくり、環境整備も必要ではないかとい うことです。15頁の3行目、職業生涯の中でNPOにおいて活動する、あるいは業を起 こすというような雇用以外の様々な働き方を選択するという方も増えてきているわけで すので、こういう働き方に対応した形での能力開発の機会を提供する、確保していくと いう施策も必要ではないかと考えています。  (3)技能継承への対応です。2007年問題への対応ということですが、15行目、企業 に対し十分な情報提供をしていく、あるいは中小企業を中心に的確に対応し、技能水準 の低下を招かないようにするための支援が必要である、さらにはこの問題を抜本的に解 決するために、子供から大人までの国民各層にこの問題の重要性を認識していただく、 あるいはものづくりに親しむ社会を形成していくということが重要ではないかというこ とです。  (4)国際協力です。アジアをはじめとする諸外国との密接な相互依存関係がある中 で、国際協調が重要である、その1つの形として人材育成に関して従来も支援を行って きたわけですが、将来に向けても引き続き行っていくことが重要ではないかという記述 をしています。  以上、報告書の案の説明でした。よろしくお願いいたします。 ○諏訪座長  どうもありがとうございました。それでは早速ご質問、ご意見をいただこうと思いま す。どうぞご自由に始めてください。 ○佐藤委員  この前の議論を踏まえて、特に企業内、職場でのOJTを書き込んでいただいたの と、専門職大学院のことを書いていただいてどうもありがとうございました。もし可能 であれば追加で1つ新しく起こせないかということと、あとは細かい点です。  新しく起こせないかというのは、職業能力開発に関わる政策立案や評価に資するデー タの整備で、もちろん資料にあるようにいろいろ調査はやられているのですが、私が1 つ欠けているのではないかと思うのは、個人調査をやってはいるのですが、企業を通じ て従業員に撒いてもらっているということなのです。でも、職業能力開発を考えるとき は地域サンプルで個人調査をしなければいけない。それはなぜかというと、企業を通じ てやると、ある一定規模以上、例えば30人以上規模ですと29人以下の規模の企業で働い ている人が捕捉されていない。それと非正社員については、企業を通じて調査を行うと なかなか捕捉率が落ちるのです。正社員に比べて非正社員の方にはきちんと調査票が撒 かれることは非常に難しい。非正社員については、大企業と中小企業で言うと、規模が 小さい所ほど従業員に占めるウエイトが大きいのです。そういう意味でも非正社員をき ちんとカバーするという点では、企業を通じての調査はなかなか難しい。つまり、能力 開発についていろいろ議論しなければいけない者が落ちてしまうのです。  もう1つは無業者なのです。無業者について、どういう人的支援のストックがあっ て、これから働こうという人が、例えばどういうような人的資源投資をする機会がある のか、しているのかというところが全部落ちてしまう。しかし、これからの日本の人的 資源開発を考えるときに、無業者のところをどうしても考えなければいけない。これも やはり企業を通じた調査ではなくて、地域で無業者も含めてサンプリングして、その人 たちが働いている人、企業に雇われている人からすると、企業からどういう教育訓練機 会を受けているのか、あるいは企業に働いている人、働いていない人も含めて、どうい う自己投資をしているのか、あるいは情報についてどういうものを知っているのか、役 所はきちんと情報提供をするといっても、どの程度本当に知っているのか、例えば私た ちが最近調査した人たちは、教育訓練給付金について、そういう制度があることを正社 員でも65%は知らないのです。政策立案をする上でも、個人を通じた調査が必要ではな いかと思いますので、どこかに入れられないかというお願いです。これは後ほど議論し ていただければと思います。  細かい点を2つ。1つは8頁の下から5行目、キャリア・コンサルタントが労働者の 能力開発を支援、下から2行目で職業能力開発推進者を活用と書かれているのですが、 ここで労働者を支援というところを少し広げて、管理者も入れられないか。職場で部下 の能力開発を担っている管理者への支援もセットで労働者個人と職場の管理職支援と両 方書けないか。労働者というところのその前に、例えば職場で部下の育成を担っている 管理職についての支援というのが入れられないかというのがお願いです。  もう1つは、資料の57頁で、インターシップの受け入れ目的のデータがあり、学生の 就業意識向上だけではなくて指導に当たる若手社員の成長などがあると書いてあるので すが、この調査は確かインターンシップを受け入れて、どういう効果がありましたかと いう質問があったと思うのです。そうであれば、そちらの方がいいかと思います。これ も細かい点ですが以上です。 ○諏訪座長  これは特にお答え等は要らないと思いますので、ほかのご意見、ご質問をお願いしま す。 ○上西委員  若年問題についていろいろと言及していただいているのは、大変ありがたいのです が、問題の取り上げ方が私には少し疑問のところがあります。例えば3頁目の28行目ぐ らいから、若年の雇用問題は厳しい状況にあるということについて、「これは、将来の 目標が立てられない、あるいは、目標を実現するための実行力が不足している者が増加 しているなどの若年者側の問題のみならず」というように、何かまずは職業意識の問題 が大きな原因としてあって、労働市場の問題もあるよねというような書き方になってい る気がするのです。ほかの部分も若年者の職業意識を何とかしなければいけないという 話がたくさん出てくるのですが、そもそも、なぜ若年者の職業意識が曖昧になっている かということを考えると、もともと長期安定雇用の時代に、はっきりした将来の目標を 持っている人だけが就職していたのかというと、そうではないと思うのです。そういう 移行のシステムが崩れているからこそ、若い人が戸惑っているのであって、基本的な原 因は企業が若者を受け入れて、育てなくなったというところにあるのではないかと思う のです。  それは今回の大きなテーマである人材育成というところに、直接関わってくる問題で あって、「若年者が今いろいろ問題になっているから、では育てなくてはいけない」と いう前に、そもそも企業が若い人を育てなくなってきているのではないかという大きな 問題意識を、きちんと提示しておいた方がいいと思うのです。例えば、若者自立・挑戦 プランにしても、最初の一文が、「今、若者は、チャンスに恵まれていない」というと ころから始まるのです。「今、若者の職業意識が」ではないのです。彼らの可能性を高 め、それを活かす場がないというのが基本的な問題であって、若者の職業意識の問題に 矮小化してはいけないというようなこともこの若者自立・挑戦プランに書いてあるので すが、どうしても、今、若者問題というと「若者の職業意識が」という、何か若者バッ シングみたいになっていく傾向があるので、そうではないのだという基本的なスタンス は、きちんと示しておいたほうがいいのではないかと思います。 ○諏訪座長  この点は若者問題の専門家もいらっしゃいますから、もし関連してご意見があればも う少しお願いします。よろしいですか。では、その辺のスタンスは少し見直して検討す ることにいたします。ほかにご意見、あるいはご質問はいかがでしょうか。 ○高橋委員  前回は欠席したので一生懸命読んできて宿題をしてきたのですが、その分も含めてい くつかあります。今の上西委員のお話は全く同感です。もう1つは、いくつかの場面で 出てくる企業側の話で、細かい表現上の問題です。5頁でOJTが機能しなくなってい るのは人員不足や経営環境が厳しいからだという話があって、11頁で企業において短期 的な成果主義が志向されてきた結果、企業における人材育成の担い手も十分に育成され てこなかったのではないかとあります。4頁辺りに、即戦力の志向が非常に増えている とあり、それは確かにそうだと思うのですが、原因として経営環境が厳しいという話で スッといってしまっています。いずれにしても大学の研究会で、今年、なぜ企業の中で 人が育ちにくくなっているかということをもう1回きちんと調査し直そうと始めている ところなので、まだ結論じみたことは言えないのですが、いろいろディスカッションを 企業の方々としていますと、短期志向の成果主義みたいな話は1つの原因としてあるけ れども、実はもっといろいろなことが絡んでいて、本当にone of themみたいな感じなの です。それが原因だったら、アメリカなどもっとひどいはずではないか。なぜアメリカ の方が人材育成投資がずっと多いのかと考えたとき、人材の流動化が進んでいて、少な くとも日本より業績に対するプレッシャーはずっと強いはずだと。しかし、人材育成投 資はアメリカの企業の方がやっているというのは、この説明だけだと明らかに矛盾する なという感じがします。ではなぜなのかという話になると、どうもいろいろな原因があ って整理し切れていないのですが、それこそ人口構成上、例えば前に入った新卒から10 年ぐらい新卒の配属がない。そうすると、先輩が10年上だからコミュニケーションがで きないという、いわゆる少子高齢社会という形で、やむを得ず出てくる問題もあります し、ものづくりの伝承という話もありましたが、これもある企業の方がおっしゃってい ましたが、前に工場がすぐ隣にあったときに、開発の若い技術者が何かを開発すると工 場の班長が飛んできて、「お前の作ったものが引っかかってこうなった」みたいな話だ ったのが、工場だけが中国にいってしまったのでうまく伝わらないとか、そういう生産 現場が離れてしまう問題がある。  あとはノミニケーションみたいなものが機能しない。これは若い人とのコミュニケー ションスタイルが違うことと、例えばダイバーシティを考えてみると、外国人女性とい うのはあのスタイルでのOJTというのは当然機能しないとか、そういう問題などたく さん出てくるのです。ですから、欧米と一口に言ってはいけないのですが、どちらかと いうとアメリカの企業はOff−JTが多くて、OJTは比較的弱い、日本はその逆と いうイメージがあったのが、どうも日本特有のOJTの効きやすい環境みたいなもの が、成果主義だけでなく崩れてしまっていて、もう元に戻しようがないような形で崩れ ているので、これを元に戻しましょうという話は無理なのだろう。人口構成を変えるわ けにはいかないということも含めて、ノミニケーションを急に復活しようというわけに はいかない。そうなってくると、では新しい形のOJTとOff−JT、自己啓発を両 方2本立てで作り直さないといけないということに、おそらくなるのだろうと思うので す。  即戦力も確かに即戦力というのですが、なぜと聞いてみると、5、6年前にやったあ るアンケート調査で、「これから必要な職種は何ですか」と、メーカー直販営業、ソリ ューション営業とか、営業でも3つぐらいに分けて聞き、この2つの営業というのはこ れからも人材を増やしたいと答えている企業が多いのです。では、その増やす人材とは どのように調達しますかというと、新卒から採って育てたいというのと、即戦力で採り たいという選択肢があるとすると、ソリューション型は結構即戦力に丸を付けるのです が、メーカー直販営業は新卒から育てるに丸を付ける企業が多いのです。なぜと聞く と、ソリューションは人材育成に時間がかかるのでは、突然必要になるから間に合わな いというのです。  だから、育成するのにかかる時間と、急に必要になるときの時間的な制約が逆転して いて、変化が激しく、事業継承法などの関係もあって、事業の売却、撤退と合併が急激 にここ数年増えてきた中で、もう先が読めなくて人材が急に必要になってしまう、ある いは必要だと思っていたのに要らなくなってしまったみたいな話の中で、新卒からじっ くり時間をかけて育てていくような計画性がもてない、人事が先が読めないというので す。このような問題がこの中にはやはりあるのだろうと思うのです。ですから、この辺 の問題を全部含めて、単純に経営環境が不景気で、成果主義になったからという話だけ で全部片付けてしまうと、全然問題の本質にならないのではないか、そんな感じがしま した。表現の問題で結果としての事実はそのとおりなのですが。  もう1つは、それ以降にも何回も出てくるのですが、13頁に、キャリア・コンサル タントの行うキャリア・コンサルティングということで、ずっと企業内でのキャリア・ コンサルタントの話が出てくるのですが、キャリア・コンサルタントという言葉に限定 しない方がいいのではないかと思いました。というのは企業によっては、私の知る範囲 ですが、キャリア・コンサルタントという言葉ではない言葉を使っている会社が結構多 いのです。先々週アメリカに調査に行っていたのですが、例えば社内で社員のキャリア の相談に乗る人間をキャリア・コーチと呼んでいるのです。日本でも例えば日産、富士 通はキャリア・コーチと呼んでいるし、キャリア・アドヴァイザーと呼んでいるところ も結構あるのです。役割は微妙に違うのですが、私のイメージだと、会社によってはキ ャリア・コンサルタントというと、どちらかというとアウトプレイスメント系のイメー ジに近い捉え方をしている会社もあって、そうすると、そういう言葉は使わないので す。いろいろ呼び方はありますが、ここでは、以降こう呼ぶけれども、こういうものも 含めてというような、少し名称を広げた形で最初に説明していただいた方がいいのでは ないか。いちいち全部名前を書く必要は全然ないと思います。  全体としては賛同する部分が非常に多いのですが、もう1つ、これはそんなに大きな 問題として取り上げていただけるかどうかわからないのですが、14頁の職業生涯を通じ た職業能力開発の取組の推進は非常に重要な部分だと思うのです。若者問題ももちろん 重要ですが、こちらもとても重要だと思うのです。そのときに時間的な配慮云々という のはあるのですが、もう1つあるのが選択肢の問題というか、キャリアチェンジに対し ての体制があるような気がするのです。端的に言うと、そもそも社会的にも企業の中で もキャリアチェンジに対するイメージが悪いのです。それはやむを得ずそうなってしま った人、あるいは落ちこぼれた人と。キャリアというのは一貫性があって作っていくも のであって、突然違うキャリアに行くことは、それまでの自分のキャリアを捨てること であり、ネガティブなことというイメージは、本人にもすごく強い。だから急にキャリ アチェンジしてというと、なぜ俺がそんなことをしなければいけないのだというような 本人の抵抗感もすごく強い感じがするのです。  一方で、自立的なキャリアチェンジを社内公募でやりましょうといって、会社によっ てものすごく多くの会社がたくさん入れているのですが、ここ数年の傾向を見ると、も う頭打ちになって数が増えていないのです。かなり大きい会社でも年間200人というぐ らいから先がなかなか伸びない。会社によっては緊急避難的なものになってしまって、 どうも社内公募のイメージがうちは悪くなっていますみたいなところもある。別にアメ リカの真似をする必要は全然ないのですが、今回のアメリカの調査でも伝統的な大企業 に聞いてもIT系の企業に聞いても、アメリカの数万人から10万人の規模の会社だと、 社内公募で動く人数は年間で3,000人とか5,000人です。それに比べて100人とか200人 で、そこから先にいかないというのは、いろいろな原因があるのだろうと思うのです。  このままでずっといってしまって、なおかつ急に中高年になって、やはりキャリアチ ェンジが必要になったときというのは、会社にとっても本人にとっても問題だという気 もするのです。キャリアにおける変化対応力という、1つのキャリアをずっと全うする のは無理な時代になったときの柔軟な変化対応力を本人にも付けてもらうし、会社もそ ういうものに対して対応するようにしていくためには、変化というのは、例えば要介護 の人が出たときのファミリーフレンドリー企業みたいな話も含められると思うのです。  キャリアチェンジ、社内公募みたいなものも含めて、あるいはキャリア・アドヴァイ ザー、キャリア・コンサルタントのようなものの提供も含めて、柔軟にキャリアをチェ ンジしていくことが悪いことではない、そうやってキャリアの寿命を長くしていくとい うような部分の取組が、職業生涯を通じた部分に何かあったらいいのかなという感じが しました。  最後にもう1つ、政策的な部分で付け加えるほどのものかどうかわかりませんが、私 が最近思っているのは、Off−JTのノウハウが足りないというのが結構問題意識と してあり、あまりにも座学でただやるというだけではちょっと難しい。ビジネスリーダ ーの育成というのは各企業でやはりすごく取り組み始めているので、どちらかというと そちらにばかりお金を使っているという部分があるのだと思うのです。あの部分につい ては企業もノウハウがまだ極めて不十分だと思いますが、新しいアクション・ラーニン グだの新しい取組が少しずついろいろ出始めています。  それ以外の部分の教育の仕方が、まだまだ研究が足りないという感じがして、その辺 は欧米は、もともとアメリカなどはOJTが弱くてOff−JTにずっとお金をかけて きた経緯がありますから、いろいろな試行錯誤のノウハウも溜まっているので、もう少 し日本で直接公的な機関が教育プログラムを提供するというより、企業などが人材育成 をOff−JTとOJTをうまく組み合わせて、場合によってはeラーニングなどを全 部うまく組み合わせて、人材育成上、投資対効果の出るようなノウハウの研究をどこか でやるという部分は、レバレッジの効いた投資にならないのか。まだ具体的なイメージ はないのですが、その部分の各企業の取組を見ていると、その辺がとても不十分だとい うイメージがあるので、何とかここを少し押せないかと思います。漠然とした話で恐縮 なのですが、入れられるとしたら、そんな話が入れられないか、そんな感じがしまし た。 ○諏訪座長  ありがとうございました。もう少し皆さんからご質問、ご意見を伺った後、事務局側 からもご意見を言っていただくことにして、ほかの先生方、いかがでしょうか。 ○黒澤委員  大きく2点ほどあります。1点目は9頁の行政の役割ということについて、上から2 番目ぐらいに、職業能力開発というものは雇用のセーフティネットとして機能するのだ とあります。このセーフティネットというのはいろいろな所に散りばめられているので すが、なぜ今期、こういった職業能力開発のセーフティネットとしての意義が大きいの かということについての背景を、どこかに含めた方がいいのではないか。それはどうい うことかというと、先ほど上西委員からもありましたが、いわゆる非正社員が増加して いる状況というのは、企業によるふんだんな訓練というものに支えられた長期雇用の体 制が崩れていることを表わすのだろう、だからこそ、労働者が自分の意思で自らの能力 に投資して、市場を介して市場全体で雇用保障される環境を実現することこそが、労働 者にとってのセーフティネットとしてより重要になってきていると考えることができる のではないかと思いますので、そういった背景の部分をどこかに入れた方が、この能力 開発がセーフティネットなのだということが、より引き立つのではないかと思いまし た。  そのあと、なぜ行政が能力開発に介入しなければいけないかというところでは、社会 全体としての生産性の向上や新たな雇用機会の創出につながるとともに、セーフティネ ットとして機能するからということになっています。そのあとの具体的な施策にいく と、情報の提供といったことが出てきますが、どうしてその情報の提供をしなければい けないかの根拠は、この部分にはないわけです。ですから、経済全体の生産性の向上と いうのは経済学でいうと外部性ですが、それ以外の、国あるいは地方公共団体が職業能 力開発政策として、人々の能力開発という行動に介入しなければいけないかの根拠を明 らかにする必要があるのではないか。例えば、資金制約や労働市場での情報が偏在して いる状況があります。それは何について能力開発してよいのかわからないということと か、能力開発機関で何がなされているのかがわからないことだけではなくて、労働者の 能力がどのようなものなのか、求人の状況がどのようなものなのかがわからないという 情報の非対称性などが、労働者や企業による職業能力開発を不十分にしているというこ とから、そうした要因を取り除くために行政の介入が必要になるのだということを一言 入れておく必要があるのではないか。そういったことが結局は、後ほど出てくる具体的 な施策である情報の提供云々になると思うので、それは入れたほうがいいのではないか と思いました。  2つ目は、求職者に対する支援の部分だけが見えてこない点です。企業の在職者にお ける能力開発の部分と求職者、特に失業者、ニートなどの無業者も含めて、そういった 人々に対する支援は在職者と違う部分が大きくあると思いますし、そこでの行政の関わ り方は非常に重要だと思いますので、求職者に対する支援としての職業能力開発施策の 在り方というものを、どこかにもうちょっと際立たせる形で記述をなさってはどうか。 そこで重要なのは、能力開発の入口と出口です。入口、出口というのは特にキャリア・ コンサルティングのようなことですが、それを一貫して実施することが求職者に対する 能力開発をやるのであれば、その有効性を高める上で非常に重要だという点について、 13頁のキャリア・コンサルティングのところにも何も記述がないので、できれば加え ていただければと思います。以上です。 ○廣石委員  私からは意見というか感想になってしまいますが、特に前回、前々回にお話したこと を取り上げていただいたということで、御礼申し上げたいと思います。  全体的な感想として、課題がズラッと並んでいる。課題というのは解決されなければ いけないわけで、それが今後の施策で果たして本当に解決できる方向性が示されている のかという素朴な感覚です。要するに、課題にたくさんいろいろなことが書かれていま す。今後の施策の方向性として、この中のどれがこの方向性でクリアできるのか。しか しながら、やはりクリアできない部分は何かがどうも見えてこないというか、I−2の 課題のところと今後の施策の方向性というところで、ブチッと切れているような感じが してしまう。これは研究会の報告書で、しかも今後の施策の具体的な方向性というとこ ろであるので、一般論化してしまうのは仕方がないという宿命もあるのかもしれませ ん。ただ、これだけを読むと、いちいち見てみなければ細かいところはわかりません が、この課題が果たしてクリアできているのかという思いを持ちます。ですから、ちゃ んとこの課題はこの方向性の中で全部クリアできる方向が盛り込まれているということ であれば、それはそれで結構だと思いますが、いまザッと読んだ限りでは、どうもその 辺の感覚が短い時間では読み取りにくかったということを感想として申し上げます。 ○北浦委員  1つは感想で、ほかに細かいことが2つほどあります。1つ目は10頁のその他につい てですが、そこには今回は修正がない。ほかのところはいろいろなことをよく入れてい ただいていますが。その他として、労働組合の役割が確かに入ってはいますが、ちょっ と問題に思うのは、労働組合として本当に職業能力開発を真剣に取り組むようなことに なっているか。今の段階ではまだまだここまでいっていないのが現状だと思います。福 利厚生やそういったようなものと横並びで、職業能力開発も確かに労使協議制の中にお ける協議事項の中に入ってはいますが。  先ほどの高橋委員の話ではありませんが、もっとキャリア形成というような視点から 個人が企業の中において、高橋委員流に言うと幸せになっていくことになるかもしれま せんが、そういったようにキャリアを安定して発展させていくための環境整備を求めて いく。そのために必要なことなのだという視点が重要です。つまり、これは諏訪座長が おっしゃっているようなキャリア権のような考え方につながっていくと思います。そう いったような視点をもっと強く出して、それを推進するのが労働組合だというふうに本 当は持っていった方がいいのかと思います。ただ、そこまで思い切って書くことはなか なか難しいと思いますが、この書き方ですと非常に受け身的な、成果主義的な流れの中 でキャリアの関心が高まっているからというようにもなります。むしろ、もともとそう いうものは労働者の一番大事なことだから、それを吸い上げて主張していく立場に推進 者として労働組合があるのだと、同じ段落の後ろの方に書いてあることを先に持ってい った方がいいのではないかという感じがします。  そういった意味合いでいうと、ここの各役割の中で労働者のところも、自分では頑張 りなさいということは書いてありますが、それをどこで実現するかまではあまり明確で はない。随所にちりばめられているので、それをよく読めばいいわけですが、おそらく その環境を社会的ではなくて企業という場において形成をしていくこと。そうすると、 それは企業の中の役割というのが非常に大きい。同時にそのときの考え方というのは、 今までのような福利厚生といったような横並び、あるいは人事管理施策としてではなく て、個人の立場でまさにキャリアをどう形成していくか、それを援助できるような環境 づくりである。そのための主張だという整理にしていくと、今までとは違う職業能力開 発の政策の方向性が見えてくる感じがしました。これは感想ですので、触れていただく かは結構だと思います。  あとは、細かい点を2つです。14頁の「職業生涯を通じた」というところは重要だと 思います。若者の問題は先ほどのお話を聞かせていただいて全く同感ですが、ただここ の最初のパラグラフの33行目に、「職業生涯の節目ごとに職業能力開発」と書いてあり ます。これは確かにそうですが、果たしてどうなのだろうかと。能力開発だったら、も っと継続的にやっていくべきではないか。学習はもっと継続的にしなければならない。 環境の変化は待っていてくれないのだから、節目では間に合わないのかなと。確かにそ ういったキャリアの設計を、さっき言ったキャリアチェンジも含めて考えていくチャン スを与えていくということは節目ごとであるかもしれませんが、職業能力開発もそうい う節目ごとというのが、なんとなく違和感を感じます。職業能力開発はむしろこれから は、いつでもどこでもというような感じの、継続的に行えるような体制整備の方がいい のかなという感じがしました。ここのところは、そういった意味では従来からの発想が 少し残っている感じがしました。  15頁を皆さんは全然触れていませんが、国際協力のところに書いてあることはそのと おり、いいことだと思います。ただ折角、技能実習制度という施策があるわけですね。 これについての評価がそれなりにあると思います。それから、技能実習制度以外に研修 制度、研修枠で入ってくるのがある。今の日本の1つの貢献のところに技能移転の問 題。向こうに行ってというのもありますが、日本においての移転の問題としての実習制 度なり研修制度の役割というのは結構あるわけです。今それについて施策的に何か問題 があるとか何か大きく変えなければいけない点があるのかどうかはよくわかりません が、少なくともそういったような言及が具体的な制度名は出さない方がいいかもしれま せん。この書き方からは読みにくいのでそこの部分も触れていただいた方がいいのでは ないか。以上です。 ○諏訪座長  ありがとうございます。あとお二方の大先生がそれぞれ沈黙を守っていますから、玄 田委員からどうぞ。 ○玄田委員  あまりないので沈黙していました。強いて言えば、もうちょっと高齢者のことを書い てもいいかと思いました。中高年と書いてあるけれど、これから高齢者のことが大変で はないかと思います。「高齢者の学び直し」というキーワードを作るのはどうか。60歳 労働市場における職業能力開発が、これからの日本の社会の大きなキーになるというの は、どうですか。さっき、若者の職業意識の低下を強調するのはいかがかという上西委 員がおっしゃったのと同じ意味で、もしかしたら意識改革が本当に必要なのは60代ぐら いの人たちで、広い意味では職業能力開発を、働き直しというので多分、中小企業に行 ったらお茶も汲まなければいけないよということをちゃんと教えて差し上げるとか、こ こにも出てくるけれども、本当に中小企業はあなたたちのノウハウを必要としていて、 職業能力開発の担い手になる人材が本当にこれだけ必要だよという情報が行っていない とか、実は地域の中には、あなたたちのことを非常に必要としているけれども、今のあ なたではちょっとまずいので、ここはもう1回学び直しをしてもらわないと困るという 具体的な能力開発のプログラムが本当は必要で、そういう60代労働市場の強化。60代 は、能力開発をしなくていいという前提ではないはずなので、現に元気だし、若い年寄 をもっと育成していかないといけないというのを強く出していった方がいいのではない ですか。  15頁の1行目、「研究を深めていくことが必要である」というのは、研究をしている 段階ではないので、特に今、目の前に大変な台風が来そうな状況になっているときに、 実際は60歳になろうとしている大規模集団を誰がこれから面倒を見るのだろうと。もし かしたら、企業が雇用延長と代替的に再就職支援みたいな形で、能力開発のパッケージ を出そうとしている企業があるかもしれないけれども、実は企業は60代に関してはほと んど考えていないかもしれないし、今の既存の高齢者の能力開発や就職支援の体制で、 十分にこの大嵐に対応できるかどうかを緊急に調べて、足りなければやっていく。  私の限られた知識では、案外若い人にやっているジョブカフェは、仕組みとしては高 齢者に有効な気がする。特にカウンセリング、やりたいことが見付からないのは若い人 だけではない。特に団塊の世代は、やりたいことは多分絶対に見付かっていないから、 かなり使えると思う。ただ、空いているジョブカフェには高齢者は来てもらってもいい けれども、忙しいジョブカフェに高齢者が来ると大変なことになってしまうので、考え 方としては60代労働市場能力強化、学び直しということをやると、ちょっと目が覚め る、そこをもう少し書いてもいいのではないか。「職業生涯」というと、将来がある人 のことを書いてあるけれども、将来もあるけれども将来がかなり限られている人でも、 職業能力開発を一生していくことが、実はみんなにとってとてもいいことである。それ は能力開発をして、労働力として強化する面もあってもいいし、健康のために働きたい 人には健康になるためにちゃんと能力開発をしてもらう面があっても本当はいいわけ で、そこを非常に思いました。 ○諏訪座長  新たな研究領域を開拓されつつあるという予感がします。樋口委員お願いします。 ○樋口委員  前回、いろいろと申し上げて大分入れていただいたので、もういいのではないかとい うのが本音です。それでも言えということであれば、会議に出ている以上は何か言わな くてはいけないかなと思いますが、1つ目はキャリアチェンジというのが出て、これは 重要だろうと思います。その上で、労働者のカテゴリー別に見ると若い方が出て高齢者 が出て、男性がなんとなく出ている感じがします。女性でも継続就業者については、そ の会社の中でということで出ていると思いますが、一時職場から離れて再就職する人た ちに対する支援はどうなのか。  いくつかの所で気になる言葉があって、それとの関連でいうと7頁の関係者に求めら れる役割・課題で、最初に労働者が出てきます。労働者ではなくて、個人かなという気 もしました。労働者というのは、どちらかというと働いている人ということで、ここで はその中に「起業やボランティアなども含め」ということが出てくるので、それであれ ば必ずしも雇用保険の対象としている人だけではなさそうだというニュアンスがあるわ けですから、ここは労働者ではなくて個人として何をするかがまずあって、その中には 無業者も、これから再就職しようという人もいるし、いままで全く就職していなかった 新規就業をしようという人たちも、ここに入ってくる項目かなと思うのが1つです。  それとの関連でいうと、14頁の(2)に「職業生涯を通じた」ということで、生涯職 業をしている人ですか、これをどう考えているのかがわかりませんが、途中で仕事をブ レイクして再び入ってくる人もいるでしょうし、いろいろな人がいるだろうと思いま す。ここでいう職業生涯というのは何なのかというのがあって、学校を卒業して就職し て、引退するまでずっと続ける人を想定していろいろと書かれているような気がしま す。  けれども仕事というのは暮らしの中のあるアクティビティだと考えると、これ以外の アクティビティをやっている人たちもたくさんいるし、特に少子高齢化の社会を考えて みると、すべて働かなければいけないですよという息の詰まってしまうことはないわけ で、企業間の移動の話と同時に労働市場に出たり入ったりする人というのが、かなり出 てくるだろう。それをまた許すような制度というものをどう作っていくかも、職業教育 や職業能力開発といったところでは重要なポイントで出てくるのではないかと思うの で、少しそこは視野に入れた方がいいのではないかという感じがします。あえていえ ば、そういうことです。 ○諏訪座長  ひととおり先生方からご意見をいただきましたので、事務局側からもご意見をどう ぞ。 ○総務課長(妹尾)  貴重なご示唆をありがとうございます。ご指摘いただいたばかりですので、なかなか すぐにまとまりませんが、上西委員が最初におっしゃった若年者の問題について、確か に若年者の職業意識や仕事に対する意欲みたいなところが問題だということで書いてあ ると思います。企業の受け入れ方の変化も背景にあって、そもそも若年者のチャンスが 少なくなっているということは、企業にも若年者を受け入れることが社会的な在り方と して必要と書いたところもあるように、気分としては持っていたのですが、もう少し原 因や背景のところでは、そういうことを書いた方がいいかなと思います。少なくとも、 若年者の問題は若年者本人が一番原因だというような、バッシングにつながるようなこ とは毛頭考えていませんので、そこは工夫をしたいと思います。  高橋委員がおっしゃった企業における人材投資が減少してきていることの原因の書き 方が、少し表面的というか単純だったのではないかということかもしれません。今おっ しゃったようなデータも見ながら考えてみたいと思います。いずれにしてもというか、 先ほど先生がおっしゃったことに触発されて考えていたのですが、OJTやOff−J Tなど、企業の中での訓練が従来十分に取り組まれていたものが、仮に今は十分でなく なってきた。OJTやOff−JTを復活させる必要がある企業に、もう一度しっかり やってもらう必要があるということはそのとおりだと思いますが、昔に取り組まれてい たような形でのOJT、ノミニケーションとかそういう形でおっしゃいましたが、そう いうものが復活することは無理だと我々も思いますので、そうではないのだと、新しい 形の企業内の職業能力開発みたいなものを復活させる手掛かりがあるように思います。 キャリア・コンサルタントという言葉については、何か工夫をしてみたいと思います。  キャリアチェンジについては高橋委員も樋口委員もおっしゃっていましたが、高橋委 員がおっしゃったキャリアチェンジというのは、企業の中で従来取り組んでいた分野か ら別の分野へ変わるというイメージでしょうか。 ○高橋委員  それもありますし、場合によっては外に出て行くというのも含めてですが、さっきの 話は玄田委員の話と結構近い部分があって、要するに団塊の世代が全然違う職種に就く とか、外に出て行って、中小企業や地方自治体に勤めるとか、いろいろなパターンがあ ります。どっちにしても、例えばキャリアチェンジを支援するような育成プログラムが 過去に50代の後半をターゲットにして何社かでやっていますが、聞くと全く効果が上が らないのです。それで、うまくいった人はどのぐらいですかというと10%にも満たない ということで、それはやり方の問題と本人の意識の問題といろいろとあって、ただカウ ンセラーをつけて徹底して時間をかけてやると、もう少しいいという話も一部の企業で はあります。  ですから、今おっしゃった学び直しというのはとてもいいキーワードだと思います が、キャリアチェンジは学び直しと表裏一体の関係にあって、今までの経験だけで食べ ていけるのだったら学び直しをしなくてもいい。きっと、その部分があると思う。だか ら、企業内外問わず、新しい環境に対応し、柔軟に違う仕事などにもチャレンジしてい くような学び直しを本人も意欲的にする、あるいはそういうことを支援するとか、そう いう教育のノウハウの開発が重要です。  逆に言うと、さっきから出ている皆さんもよくご存じのように、ビジネスリーダーみ たいなコアの人材に対する育成投資は、企業は今とても熱心です。その次ぐらいに熱心 なのは、おそらくビジネスリーダー以外のコア人材で、例えば若い人たちの就業の部分 に支援すべきだという話は、すべての会社とは言いませんが、そこそこ会社は問題意識 を持っているし、日本経済団体連合会のようなところでも一生懸命活動をしていますよ ね。あの辺は多分、少しずつ動き始めているような気もしますが、意外に動いていない のは中高年55歳以上の分野です。なぜ動いていないかというと、玄田委員も言われたよ うにこのままでは大変だというのはわかっているけれども、やり様がわからない。やっ てもやっても効果が上がらない、拒否されてしまう、本人も嫌がる、圧倒的に失敗が多 いというので、企業の側も半分ギブアップしている感じがします。だからといって65歳 定年もあるし、必要ないとは思っていないけれども、プライオリティーはイメージが湧 かないから後送りの感じになっている気がするので、そこをなんとか支援できないかと いうイメージです。 ○総務課長(妹尾)  ありがとうございました。なんとなくわかったような気がします。企業の内外を問わ ず、樋口委員が先ほどおっしゃったようなことも含めて言えば、労働市場の内外を問わ ずといういろいろな働き方があることにし、それに必要な職業能力開発というか、キャ リア・プランみたいなものが重要だということではないかということでしょうか。 ○高橋委員  そうですね。表現が抽象的ですみません。1つは、そういうノウハウの開発という か、中高年の学び直しを効果的に行うような仕組みをもっと開発しなければいけない し、それを企業にどんどん取り入れてもらわなければいけないし、もう1つはキャリア ・アドバイザー、キャリア・カウンセラー系のサービスも必要でしょう。あるいは、そ ういうことに対する受け入れ体制や、年齢に関係なく人を見る部分も必要でしょう。キ ャリアチェンジというものをもっと自律的に、もう少し若い段階から社内公募なども含 めて、自らの意思でキャリアチェンジしていくようなことが社外内問わず、特に社内マ ーケットでそういうことが行われることの常態化をもう少しするとか、そういうことに 対してもっと本人も柔軟になっていく。いろいろな要素があると思います。具体的な思 いでいくと、そんな感じの要素になります。 ○総務課長(妹尾)  いろいろな働き方ができる、いろいろな仕事というかいろいろな雇用になったり雇用 でない働き方も、1人が1つの生涯の中で経験をしていくようになることがいいのだろ うと思いますし、していかざるを得ないということでしょうから、それに対応して情報 提供も含め、職業能力開発をどんどん進めていく必要があるだろうと。 ○高橋委員  その中の働き方の部分でも選択肢があって、中小企業という話もありましたが、そこ で起業やNPO、ボランティアの話もありましたよね。ただ、「起業」という言葉だけ だと、まだどうしても起業というのはベンチャーみたいなイメージがあって、そこにあ まりにもメンタルな隔たりがあるので、今流行りの言葉でいうのもあれですが、インデ ィペンデント・コントラクターというと変ですが、独立と起業とニュアンスはちょっと 違いますよね。おそらく、日本でもそういうものがもっと増えてくる可能性があるの で、それっぽい言葉を起業と分けて両方入れていただいた方が選択肢が広い感じがしま す。フリーと言ってもいいです。「起業」というと、他人のことみたいな感じになりま すよね。 ○樋口委員  職業能力開発との関連でいうと、開発したものをどう使うかというところが、どうも 日本の企業は弱い感じがとてもします。一生懸命にコストをかけて、あんなに留学させ て、帰って学んだものを使おうという意識がほとんどないのではないですか。だから、 大学院の職業人についても同じようなことがあって、帰ってきてそういったものを活か すというか、本人がそういったものを活かせる仕事に就きたいと思っていても、そこで 矛盾が起こって、結局会社を辞めてしまうという話になるのがとても多いように思うの で、単に能力開発をしなさいというだけではなくて、得たものをどう使っていくか、あ るいは、そこまで入れた能力開発をどうしていくかが重要な気がしました。 ○総務課長(妹尾)  順不同になりますが、今の議論でまた触発されて思いますが、樋口委員の職業生涯と いう書き方をしているのはどうなのだろうかというご指摘があって、私どもも職業生涯 という言葉を使っていますが、何もずっと学校を出てから引退するまで職業に就いてい ないといけないとか、雇用の下にいなければいけないという意味で使っているつもりは ないのです。例えばいいか悪いかは別にして、女性のようにいろいろな状況の中で労働 市場に出たり入ったりせざるを得ない場合があることは確かでしょうし、それを自ら選 択するような場合には、うまく再参入できるような仕組みが必要だろうということは当 然考えています。うまく、そういうのが表わせられる、そういうものも引っくるめた何 か職業生涯に代わるようなタームがあれば、全く入れ換えるにはやぶさかではないので すが、今すぐには思い付かないので考えざるを得ないと思います。  黒澤委員のご指摘に戻ります。確かに行政側の役割が求められる理由、先生は行政が 介入する根拠ということでおっしゃっていましたが、資金制約や情報の非対称性という ものも含めて、もう少しわかりやすく書いた方がいいのかなという気がしています。セ ーフティネットの背景や、どういうコンテクストの中で必要になっているのかも含めて だろうと思いますが、そこは工夫をしたいと思います。求職者への支援が見えてこない というご指摘がありまして、確かに抜けていたと思いますので、そこは考えたいと思い ます。  廣石委員のご指摘です。課題を7つぐらいに整理していますが、それと施策の具体的 方向性のところでうまく対応がわからないというご指摘がありました。これは一重に、 報告書をまとめた事務方の責任ですが、私の気持としてはそれぞれの課題がうまく施策 の中で、報告書の中で言えば後半で解決されるような、少なくともその糸口があるよう に書いたつもりではありますが、すぐにどう整理すればわかりやすくなるかのアイディ アがありませんが、整理を考えたいと思います。  北浦委員からは、組合の役割の話がありました。確かにこの分析は、まだ足りないか もしれません。本来の組合の役割や使命として、職業能力開発なりキャリア権を推進し ていく部分があるだろうと思います。国際協力についてはご指摘がありましたので、少 し検討したいと思います。  玄田委員については先ほども少しありましたが、高齢者の学び直しを進めるような能 力開発ということですが、「学び直し」という言い方がわかりやすくていいかなという 気がします。多分、高齢者に限らないのでしょうけれども、いろいろな働き方があり得 る。先生は健康のための働き方があってもいいのではないかということもおっしゃって いますが、NPOや起業、ボランティアといろいろな所で若干言っていますが、そのあ たりはいろいろな働き方が特に高齢期を目指してというか、高齢期にあっていいのでは ないかということを踏まえて考えて書いていたつもりですが、高齢者の部分は、もう少 し工夫をする必要があるかと思います。  佐藤委員からデータのところのご指摘があったものは、少し整備をしたいと思いま す。佐藤委員が最後におっしゃったこと、同じ調査の中で何を採用するかというところ は工夫をしてみたいと思います。同じくデータについて、個人についての調査や無業者 の調査が今のところは手薄なので、そこを将来に向けて何かできないかということも含 めたデータの整備が、行政として必要ではないかというご指摘だろうと思います。そこ まで書き下ろすかどうかは別にして、行政施策の必要性の中で書ければと思います。  キャリア・コンサルタントと職業能力開発推進者は労働者支援だけではなくて、管理 者に対しても必要だと。人的資源を養成していく立場としての管理者の役割を、先生方 のご指摘もあって何箇所かで触れさせていただいていますので、その一環というような 書き方になるのか、いずれにせよ考えてみたいと思います。大体お答えできたでしょう か。 ○諏訪座長  この間、かなりいろいろなご指摘を毎回いただいて、それを次々に盛り込みつつきた わけですが、何であれ推敲というのはいくらやっても切りがないというものですが、今 回もそうなっています。あと30分ぐらい時間がありますから今日が大体最後ぐらいの予 定ですので、この際もう少し指摘をしておきたいことがありましたら、あるいはご示唆 をいただけることがありましたら、もう1回ぐらい皆様からご発言をいただきたいと思 いますが、いかがでしょうか。 ○上西委員  質問ですが、出来上がった報告書にこの参考資料と資料IIが付くのでしょうか。 ○総務課長(妹尾)  参考資料のデータは付ける予定です。資料IIは先生方のご指摘をそのまま並べてあっ て、これを組み替えしたのが今ご説明して議論していただいているものになったという 位置づけで考えていますので、資料II自体は付けないと思います。 ○樋口委員  報告書のタイトルをどうするのか。「職業能力開発の今後の在り方に関する研究会報 告書」は、いつでも通用します。10年後のものがあってもいいと思いますが、一言で言 うとこの研究会報告書は何が特徴であるか。サブタイトルがあれば付けて欲しい。この 研究会で言いたかったことは何か。是非ご検討ください。 ○諏訪座長  それが最後に私もお諮りしたかった部分で、是非お知恵をいただきたいと思います。 例えば「職業能力開発を見直すと社会が変わる、企業が変わる、個人はもっと変わる」 とか、いろいろなタイトルがあり得るだろうと思います。少し魅力的な名前で、今まで 以上に職業能力開発というのは、まさに国家戦略として非常に重要な論点になってきて いる。EUにおいてもアメリカにおいても、アジアの諸国においてもそうである。  しかも対GDP比の比較をすれば、日本はこの点においてはかなり見劣りすると一般 に言われている中で、職業能力開発に関する戦略を今後重視していこうとするときに、 そのうちのある重要な枠組みを変えていこうということで我々は研究会を進めてきたわ けです。そこで、何か現状を変えていく転換点になるという思いを込めたサブタイトル なり、あるいはそちらを本タイトルにしてサブタイトルをいつもながらの何々報告書に する。このような方向に行けたらと希望していますので、是非お知恵を拝借したいと思 います。どうぞ、ご遠慮なくお願いします。研究会を続けてきて今が一番発想の沸きそ うなときなので、何でも結構ですから、今思い付くようなタイトルを教えていただけれ ばと思います。 ○高橋委員  後の方になると、格好いいのを言わなければいけなくなるとまずいので、最初の方で 言っておきます。「学び続ける社会の実現が新しい日本を作る」。  1つだけ質問ですが、この具体的なアウトプットのタイミングと今後の活用のイメー ジを簡単に教えてください。 ○総務課長(妹尾)  報告書としては、タイトルを含めて考えさせていただいて、今日ご指摘いただいた部 分を折り込む形でまとめたものを座長ともご相談しながら、世間には問うていきたいと 思います。新聞発表ということになりますが、今のタイミングですので連休を挟んで、 前後どういうタイミングになるかはわかりませんが、新聞発表したいと思います。  その中身を私どもとして、今後どう活かしていくかということですが、1つは法律 上、職業能力開発基本計画の作成が義務づけられていて、現在の基本計画は今年度いっ ぱいが計画期間です。したがいまして、来年度以降の新しい基本計画を作る作業が私ど ものマンデイトになってきますが、その際にこの研究会の報告書の要素は折り込んでい きたいと思います。そのほか当然、来年度以降の予算作業やそれ以外の行政施策の対応 ということには反映させていただくことになっていこうかと思います。 ○北浦委員  今までの流れを見ていると、かつて個人指導の能力開発まできましたが、もはや能力 開発という用語よりも最近は学習という感じになっていますし、むしろ先ほどからの議 論でのワードを拾っていくと、キャリア形成というのはかなりキーワードにはなってき ている。そこまで書ききれるかどうかはわかりませんが、何かキャリアという言葉が入 るようですと、今までとはかなり印象が変わる。ようやく社会も企業も、そこに着目を してきたような環境になっていますから、転換点を表わす意味では、その辺が1つの注 目どころかと思います。  感想を1つ忘れていました。それは何かというと、職業能力開発の行政の中の枠組み は非常によくできていると思いますが、どうしても限界があって縦割的になっている。 労働政策全体で見たときとの整合性がどうか、そこは触れるべきか触れない方がよいの か。具体的に申し上げれば雇用政策でいけば高齢者雇用の促進が最大の課題になってい て、65歳までというのは既にレールが作られて走っている。そのことと先ほどの議論が まさに噛み合うわけですが、職業能力開発はどうなのか。あるいは、そこにいる人たち はどういう能力開発をすべきなのか。確かにそこのビジョンが出てこないと、片方で継 続雇用と言っておきながら、それと能力開発の施策はいったい何だということが問われ てくると思います。  もう1つは違う行政の分野でいけば、ワークライフバランスというのがある。ライフ サイクル論の議論も少し入っていますが、ワークライフバランスというものと、こうい った能力開発の関係はどうなのか。いろいろ休暇を取るというようなことも入っている し、ゆとりを作ることが職業能力開発と書いてありますが、そういう視点が滲み出るよ うにするなど、ワークライフバランス論の政策との関係はどうなのか。  もう1つ女性の問題で、ポジティブ・アクションがある。能力を発揮させるチャンス を与える。その機会を与えて能力開発をする。そういう女性の人材育成というか、そう いったような視点が1つの行政としての最重点分野になっている。そのことを推進して いるわけですから、それとこの能力開発の方向は無関係ではない。当然この中でも読み 取れますが、そういったようなことも睨み合わせて見ていった方がいいのではないかと いう感じがしました。これは、この本来の研究会の趣旨であったかどうかはわかりませ んが、なんとなくそういうような視点を持っていないと、ここだけの目で見てしまうと 狭くなってしまう、抽象的になってしまう感じがしました。 ○諏訪座長  ありがとうございました。ほかにいかがですか。よろしいですか。それでは少し予定 した時間より早いですが、本日まで12回にわたりまして諸先生方にお集まりいただい て、職業能力開発の在り方を巡りまして、新たな視点を導入するための議論をしまし た。12回にもなったのかという感じもしていますので、今回で一応の区切りをつけて、 研究会としての報告書を取りまとめることにさせていただければと思います。今日いた だいたご意見等をさらに報告書の中に盛り込んで、発表をする所存ですが、そのために もう1回研究会を開くことをしていると、お忙しい先生方も大変ですし、またいつまで も研究会が終わらないということにもなりかねません。そこで、完璧なものは人間には できっこないと割り切りますと、ほどほどのところ、あるいはそれよりはきっといいと ころへ来ていると思いますので、これまでに到達した辺りで一応取りまとめをしたいと 思います。  そこで、今日出たご意見などの報告書への反映の仕方ですが、事務局でまとめていた だいて必要に応じて先生方にも個別にフィードバックをさせていただき、それ以外の部 分に関しては私と事務局とで相談をしながら、最終案をまとめるということでご了解を いただければと思います。それでよろしいですか。                  (異議なし) ○諏訪座長  ありがとうございます。では、最後に当たって、事務局からのご挨拶をお願いしま す。 ○総務課長(妹尾)  本当にありがとうございました。本来ですと上村局長が皆様方に御礼を申し上げるべ きところですが、今日はタイミングの悪いことに国会が入ってしまいましてそちらへ行 っていますので、私が代わりまして御礼を申し上げたいと思います。  今、諏訪座長からもありましたように、12回にわたりましてこの研究会を開催しまし て、お忙しい中を各先生方にはご参加いただきまして、本当にありがとうございまし た。特に、諏訪先生には座長として非常に的確に会議を進行していただき、事務局を助 けていただきまして、改めて御礼を申し上げたいと存じます。この研究会の中で、職業 能力開発行政について非常に広い立場、広い分野にわたってのご議論をしていただけた のではないかと思います。今後、我々がいろいろな面で行政を進めていく際に、是非こ の研究会の中でご指摘いただいた点を踏まえて取り組んでいければと思います。  なお、先ほどの高橋委員のご質問に答えさせていただいたところですが、今後この研 究会の報告書を基に能力開発の基本計画を作成するなど、具体的な形で政策形成あるい は行政運営に反映させていただくことになろうかと存じます。また、その際には各先生 方のお知恵を個別あるいは別の形でお借りするような場面もあろうかと思いますので、 よろしくお願いしたいと思います。改めまして、12回の研究会でお知恵をお借りできま したことについて御礼を申し上げまして、最後のご挨拶とさせていただきます。ありが とうございました。 ○諏訪座長  どうもありがとうございました。以上をもちまして、本日の研究会及び研究会そのも のを終了します。委員の皆様方におかれましては、顧みれば昨年6月3日からですか ら、ほぼ10カ月の間に12回、大変お忙しい中をご無理申し上げまして申し訳ありません でしたが、大変素晴らしい示唆に富んだご議論をしていただきまして、新たな職業能力 開発の在り方を打ち出すに当たって1つの基礎となる研究会になれたのかなと思いま す。私自身も、たくさんのことを改めて勉強しました。どうもありがとうございまし た。また、事務局の皆様、どうもありがとうございました。