05/04/04 労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会第1回議事録      第1回労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会                         日時 平成17年4月4日(月)                            15:00〜                         場所 厚生労働省共用第7会議室 ○中央じん肺診査医(山本)  ただいまから「第1回労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会 」を開催させていただきます。座長が選出されるまでの間、事務局で進行します。本来 であれば、ここで労働基準局長からご挨拶申し上げるべきところですが、本日は所用に より欠席ですので、小田安全衛生部長よりご挨拶を申し上げます。 ○安全衛生部長(小田)  委員の方々には、新年度のお忙しい時期に私どもの委員会にお集まりいただき、誠に ありがとうございます。すでにご承知の方もいらっしゃるかもしれませんが、昨年6月 に結核予防法が改正されました。学童、あるいは老人等も含めて、職域の胸部エックス 線写真の対象者も、かなり大幅に変わりました。特定の方を除いて、必要ないという形 になりました。  私どもの労働安全衛生法もご承知のように、一般健康診査は、基本的には結核予防法 の健康診査という形で扱われてきていました。そういった関係上、本来であればこの4 月から時を同じくして改正をすることも一つの方策であったわけですが、内容的に労働 安全衛生法の健康診査というのは、結核予防法の健診のみではない。いわゆるじん肺、 あるいは特定の肺がん等の健診にも、ある程度役立っているのではないかということも あり、一応委員の方々にきちっと見直しをしていただいて、来年4月からその結果を踏 まえて、安全衛生法の一般健康診査についてどうするか、ということを決めたいと考え ています。  それと同時に、現在、労働安全衛生法の一部改正案を国会に提出しておりまして、そ の中で過労死、あるいはメンタルヘルス対策というのが大変重要な課題になってきてい ます。こういった観点についても、折角、一般健康診査の項目の見直しをしていただく ということですので、結核に限らず、こういった観点からも合わせて見直しをお願いし たいということで、呼吸器疾患以外の先生方にも入っていただき、検討をお願いしたい と考えています。  日程的には、夏ぐらいを目途に検討会の報告書をまとめていただき、それを基に私ど ものほうで改正作業に入ることにさせていただきたいと思います。もちろん審議会等で も議論をしていただかなければいけないという手続上、若干早めに報告書をまとめてい ただきたいと考えていますので、労働者の一般健康診査という重要な課題ですので慎重 に、しかし見直しに当たっては、ある程度大胆にも考えていただきたいと思っています ので、よろしくお願いします。 ○中央じん肺診査医  今回は第1回会合ですので、各委員より自己紹介をお願いします。相澤委員からお願 いします。 ○相澤委員  北里大学医学部公衆衛生学の相澤です。専門は、労働衛生です。よろしくお願いしま す。 ○江口委員  東海大学の呼吸器内科をやっている江口です。専門は肺がんです。よろしくお願いし ます。 ○及川委員  日本医科大学第三内科、及川です。研究領域臨床は、糖尿病、高脂血症、肥満などの 生活習慣に関わるものです。どうぞよろしくお願いします。 ○加藤委員  結核予防研究所の加藤です。よろしくお願いします。 ○工藤委員  日本医科大学第四内科の工藤です。専門の領域は呼吸器内科です。どうぞよろしくお 願いします。 ○西村委員  埼玉医科大学の循環器内科の西村です。私の専門領域は虚血性心疾患の診療です。 ○藤村委員  日本医師会の藤村です。産業保健を担当しています。よろしくお願いします。 ○堀江委員  産業医科大学産業生態科学研究所の堀江です。専門は産業医学です。よろしくお願い します。 ○矢野委員  帝京大学公衆衛生の矢野と申します。健診や予防活動の評価を、この数年勉強してい ます。 ○柚木委員  崇孝会の北摂クリニックの柚木です。よろしくお願いします。 ○中央じん肺診査医  本日は坂谷委員、土肥委員、村田委員が所用のため欠席です。引き続き、事務局のご 紹介をさせていただきます。 ○計画課長(中沖)  計画課長の中沖です。よろしくお願いします。 ○労働衛生課長(阿部)  労働衛生課長の阿部です。よろしくお願い申し上げます。 ○主任中央じん肺診査医(土屋)  主任中央じん肺診査医の土屋です。よろしくお願いします。 ○主任中央労働衛生専門官(高橋)  主任中央労働衛生専門官の高橋です。よろしくお願いします。 ○中央じん肺診査医(山本)  中央じん肺診査医の山本です。よろしくお願いします。  本日は第1回の会合ですので、議事に入る前に、本検討会の座長を置くこととなって いますので、どなたかご推薦していただければと考えていますが、いかがでしょうか。 ○堀江委員  本検討会の主な検討事項は胸部エックス線検査の取扱いですので、呼吸器がご専門の 工藤委員にお願いしたらいかがかと思います。 ○中央じん肺診査医  ただいま工藤委員とのご推薦がありましたが、いかがでございますでしょうか。                  (異議なし) ○中央じん肺診査医  それでは、工藤委員に座長をお願いしたいと思います。工藤委員、議事進行をよろし くお願いします。 ○座長(工藤)  ご指名をいただきましたので、座長を務めさせていただきたいと思います。この検討 会は大変大きな課題を検討するということですが、どうか委員の先生方、よろしくご協 力のほどをお願いします。  この検討会の要領では座長代理を置くことになっていますので、私のほうから推薦さ せていただきます。労働衛生全般にお詳しい相澤委員にお願いしたいと思いますが、い かがでしょうか。                  (異議なし) ○座長  相澤委員、よろしくお願いします。 ○相澤委員  よろしくお願いします。 ○座長  それでは、早速議事に入りたいと思います。事務局のほうから、本検討会を設置する 目的等についての説明をお願いします。 ○労働衛生課長  お手元のあり方検討会の議事次第、配付資料が1〜8まで、参考資料が1、2とあり ますので、一応ご確認ください。資料1に基づいて、あり方検討会設置及び設置の目 的、検討内容等について説明します。  資料1の「目的」ですが、結核予防法においては、原則としてすべての労働者に対し て、いままで年2回、2回目というのは結核のおそれがある場合のみ実施していたわけ ですが、結核健康診断の実施を事業者に義務づけていたわけですが、昨年6月23日に同 法の改正が公布されまして、平成17年4月1日から施行になりましたので、事業者が行 う結核健康診断の対象者が、これによって学校、病院、診療所、助産所、介護老人保健 施設及び社会福祉施設の労働者に限定して、年1回の実施が義務づけられる形に改正、 施行されました。  一方で、現行の労働安全衛生法ですが、法の第66条、規則の第44条等に基づきまし て、原則としてすべての労働者に対して、年1回の胸部エックス線検査等の実施を義務 づけているわけです。先ほどの結核予防法改正に伴い、労働安全衛生法に基づく定期健 康診断等におきまして、これらの健診項目、即ち基本的には胸部エックス線検査です が、どのように取り扱うかということをまずご検討いただきますとともに、医療技術の 進歩や定期健康診断の有所見率等を踏まえて、健康診断項目について所要の検討を行っ ていただくことを目的としているわけです。その結果を労働基準局長のもとに本年の夏 頃を目途として、報告書を提出していただきたいと考えたわけです。  2の所に「検討内容」がありますが、これは先ほど申し上げましたように労働安全衛 生法に基づく定期健康診断等における胸部エックス線検査等の実施の意義、対象、頻度 ということを書いています。この検討内容には胸部エックス線検査そのものだけではな く、それと関連する検査領域も含めた上でのご検討をお願いしたいと考えているわけで す。基本的には結核予防法から発しまして、呼吸器疾患の早期発見等を目的としてやっ てきたわけですが、例えば生活習慣病等にどの程度効果があるか、あるいは関連の検査 項目としてどのようなことが考えられるか、あるいは今後考えたらよいか等を含めまし て、ある程度広くとらえて検討をお願いしたいと思います。  3の所は、先ほど座長、座長代理等、この議事に関する部分です。繰り返しになりま すが、資料2は、こちらの委員の名簿です。本日お休みの委員の方々もいらっしゃいま すので、目を通していただきたいと思います。  資料3に「必要性」ということが書いてありまして、もう委員の方々はご承知のこと と思いますが、まず1で、結核予防法が平成16年6月23日に改正法が公布されまして、 10月6日に施行規則が改正、公布され、施行が平成17年4月1日からということになっ ています。  改正の概要は、事業者が、定期の健康診断を行わなければならない対象を、二次感染 を起こす危険性が高い学校、病院、診療所、助産所、介護老人保健施設及び社会福祉施 設の従事者に限定したということです。広く一般の方々全部に、結核健康診査を義務づ けていたわけですが、リスクの高い施設の従事者となったわけです。これによりまして 結核予防法上は、健診として胸部エックス線等を行う必要のある方々の絶対数は、相当 に絞られてくると思われます。ところが労働安全衛生法ですと、事業者に主に結核対策 として、原則としてすべての労働者に対して胸部エックス線検査等の実施を義務づけて います。これは原則、1年に1回ということです。  問題点ですが、労働安全衛生法が結核予防法と異なる点は、結核対策はもちろんです が、結核対策だけではなく、労働者の一般的な健康の保持増進を目的に、定期健康診断 等の実施を義務づけている点がある関係上、それによる例えば心臓循環器疾患等に関す る所見なども、一応レントゲンで見てきたということになっています。さらにはじん肺 等ですが、結核と密接な関係があることが知られている職業性の疾病があるということ で、結核予防法も重要ですが、労安法は労安法独自の立場から、胸部エックス線を中心 とする検査のあり方を検討する必要があるということで、この検討会を設置させていた だいたわけです。  次の頁に結核予防法の改正の内容が出ています。これは結核感染症課からの資料です が、これを簡単に説明します。左のほうに結核を取り巻く状況の変化があります。近年 改善が鈍化した。結核罹患率の低下傾向が止まってしまったということで、改善してい ない。さらに国際的に見ると、ロシアを除きますと、先進諸国中まだ罹患率で最下位で あるという現状があり、依然として「中まん延国」であるということです。  ただし、罹患状況は変化が見られていまして、若年者中心の罹患から高齢者、ハイリ スク者中心の罹患に変わってきている。実際に結核の感染事件というのも、ハイリスク グループである病院、あるいは高齢者の福祉施設等による感染事例が増加しているとい うことです。さらには地域格差が拡大していて、大阪市の罹患率が長野県の6倍という ように、かなりの地域の格差が出ているということです。  予防・医療に関する知見の蓄積ということで、予防接種の要否判定のためのツベルク リン反応検査の必要性の否定、この否定というのはちょっと強い言い方かと私は思いま すが、最初にツ反をやって必要性を判定した上でBCGを接種するというやり方を変え ようという科学的知見があります。どうするかというと、生後直ちにBCGそのものを 接種するというやり方に変えるということです。右側に、その結果として具体的にどの ように変わるかということが書いてあります。国・都道府県は結核の予防対策等につい て、基本指針を策定するということになります。  (2)のリスクに応じた定期健康診断の実施ですが、こういう形が重要であるというこ とで、リスクに応じたというのは一律的・集団的対応をするところから、従来申し上げ ているように結核患者が多い、あるいは再燃、再発するリスクの高い所の従事者に、集 中的に行うということです。3番目が、先ほどのツ反を廃止して、BCGを早期に直接 接種して、予防措置に代えるということで、施行期日が平成17年4月ということです。  次の頁は、結核予防法施行令の一部改正ということで、少し細かくなっていますが、 結核予防法第2条の関係で定期健診という所があります。これが今後変わってどうなる かというのが、こちらに網掛けで書いてあります。集団感染防止という所で、学校にお ける健診、これは学校保健法ですが、入学時に高校生、大学生が健診として行います。  施設の入所者、これは刑務所が20歳以上毎年度。社会福祉施設(老人ホーム、障害者 施設等)は、65歳以上は毎年度行うということです。さらに事業所で考えますと、先ほ どから申しているように学校、病院、診療所、助産所、老健施設、社会福祉施設の従事 者は毎年度という形です。市町村における健診は65歳以上で、これも毎年度です。結核 の発生の状況、定期健診の結核患者の発見、その他の事業を勘案して、特に必要と認め る者とありますが、これは先ほどの地域格差等を勘案して、自治体が決めるという形で す。BCGの予防接種は、生後6カ月以内に全部ツ反による判定なしに行って、一律予 防策を講じてしまうという形です。  このようにしますと、現在安衛法ですべての事業所のすべての労働者が、毎年度胸部 レ線による結核と呼吸器、あるいは循環器疾患のチェック項目として、一般健診の中で 検査が行われているわけですが、結核予防法だけで見ていきますと、このような事業所 等を除くと、ほとんどの事業所が、胸部エックス線検査が必要なくなるという形になる わけです。果たしてそれが、今後の労働安全衛生施策にとってよい形であるかどうかと いうことをご議論いただきたいということです。大体、最初の説明は以上です。 ○座長  ありがとうございました。ただいま資料1に基づいて、あり方検討委員会の目的、そ れから資料3に基づいて、労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方を検 討する必要性に関してご説明をいただいたのですが、何かご質問はございますでしょう か。 ○堀江委員  ただいまのご説明にありました最後の資料の結核予防法施行令の一部改正ですが、い わゆる事業所における健診の矢印の手前にあります「感染の危険の高低に拘わらず発症 により二次感染を起こす危険性が高い」、この枕詞ですが、これに私が2つほど考えつ いたことがあります。1つは感染した人がいると、その周りに感染しやすい、感受性の 高い人がいるという考え方があること。もう1つが周りに非常にたくさんの人がおられ て、特に二次感染しやすいわけではないのですが、何しろ人がたくさん接触しやすい集 団があるというような概念もあり得るかと思いますが、この辺は、両方ここに入ってい るという考え方でよろしいのでしょうか。 ○中央じん肺診査医  基本的には両方含まれていると聞いております。 ○堀江委員  そうしますと、いま例示として事業場における健診で並んでいる施設が、どちらかと いうと感染性の高いという概念が強いというイメージがあるのですが、即ち人がたくさ んいるということになりますと、もう少しいろいろな所もある可能性はあるかと、例え ば会社の寮などですね。 ○中央じん肺診査医  その辺りを踏まえて、結核観点でご議論いただいて、いまの結果がおそらく出ている というように我々は承知しております。 ○座長  病院、診療所などは、実際そこの医師や看護師が結核患者になっていると、患者さん にうつるという問題もありますが、逆に感染率、受けるリスクが高いということもある かと思います。  ただ、ここに学校というのがあります。私も改定の委員会で事情はわかっています が、これは基本的には集団発生、あるいはリスクの高い所を抑制しようというところ で、この予防法自身は先週の4月1日から施行されていますので、その中身についてい まご説明をいただいたわけですが、いまおっしゃったように、両方ということでよろし いですね。 ○堀江委員  承知しました。 ○座長  ほかに何かご質問はございますか。労働衛生の関係ではない臨床の委員もたくさんお られるので、必ずしも労働安全衛生法を十分ご存じでない方もあろうかと思いますの で、少しご説明を。 ○労働衛生課長  若干そちらのほうを説明させていただきます。資料4が結核対策についてを、結核感 染症課からコピーの資料としていただいたものです。  資料5は「労働安全衛生法に基づく健康診断の概要」です。1.「健康診断の種類」 があります。ここで主に話題になっているのは一般健康診断です。これは法第66条第1 項になり、これにいろいろありますが、雇入時の健康診断、これは入社するときに通常 でいきますと、新入社員がみんな受けるということが、規則第43条で決まっています。  いま問題になっている定期健康診断、規則第44条ですが、この内容は2.のほうにあ ります。これはまたあとで説明します。  そのほかに特定業務従事者の健康診断があります。これは特殊健診といわれるもの で、危険物や化学物質等を扱う方々の健康診断項目です。それから、海外派遣労働者の 健康診断と、結核健康診断、これは結核予防法と連動をして規則第46条にあるもので す。給食従事者の検便もありまして、これは食品衛生法と連動している部分です。自発 的健康診断というものもあります。  先ほどのものと違う特殊健康診断があり、じん肺法等に関わる部分ですが、高圧作 業、潜水作業、放射線業務、特定の化学物質等有害な業務に従事する場合には、かなり 特殊な健康診断が行われるわけです。じん肺健康診断は、じん肺法によってまたありま す。大事なことは、これらの健康診断は、事業主が義務として労働者に行う健康診断で あるということです。現在問題になっている定期健康診断ですが、議論の中心の胸部エ ックス線検査及び喀痰検査は、定期健康診断の項目の中に入っています。2頁目のいち ばん上にあるように、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回という定めにな っています。  1頁の健康診断項目をざっと読ませていただきます。(1)既往歴及び業務歴の調査、 (2)自覚症状及び他覚症状の有無の検査、(3)身長、体重、視力及び聴力の検査、(4)胸 部エックス線検査及び喀痰検査、(5)血圧の測定、(6)貧血検査、(7)肝機能検査(GO T、GPT及びγ−GTP)、(8)血中脂質が3種類、(9)血糖の検査、(10)尿検査、 (11)心電図検査というのが入っています。  次の頁ですが、医師が必要でないと認める場合の健康診断項目の省略ということが、 可能になっています。医者が「必要ない」と言う場合には、喀痰検査あるいは身長検 査、貧血、肝機能、血中脂質、血糖検査、これらの検査項目については、40歳未満の者 については医師が必要ないと認めた場合には、省略することができることになっていま す。35歳の者は除くというのは、35歳が節目ということで、やるようにという形になっ ています。  3番目に結核健康診断の項目がありますが、結核発病のおそれがあると診断された労 働者に対しては、健診をおおむね6カ月後に、次の項目について健康診断を行わなけれ ばならないということで、これは健康診断の項目として、エックス線の直接撮影検査と 喀痰、聴・打診、その他必要な検査となっています。ただ、これは実行上は、ほとんど 結核発病のおそれ、若しくは結核等の疑いがあった場合には、ほとんどの場合は医療機 関に紹介、精密検査というパターンになっていると聞いています。  このように、労働安全衛生法に基づく健康診断は、基本的には労働者の健康確保、安 全確保義務というのが事業主にかかっていまして、これは事業者側の負担責任で、労働 者に義務として行わせている健診ということになるわけです。衛生法上、事業主はさせ なければならないと決まっていますし、労働者は受けなければならないというように、 二重に義務がかかっているという点をご承知おきいただきたいと思います。  いま私の手元にある詳しい健診結果等のデータを、委員の方々のご要望に応じて次回 以降出していきたいと思いますが、おそらくこれは5,000万労働者のほとんどが、この ような健康診断の幾何かの部分を、若年層は医師の判断により省略できる部分というよ うに省略されているケースは結構多いですが、何らかの形で受けていくことになります ので、おそらく労働安全衛生法に基づいて胸部エックス線検査、その他の精神病関連検 査を受けている、定期的に受診している方の数が最も多いだろうと思うわけです。ほと んど全人口の半数近くの方が、この法律に基づいて健康診断を受けるという状態かと考 えております。以上です。 ○座長  いま追加のご説明をいただきましたが、先ほどの前の項目も含めて、何かご質問はご ざいますか。  じん肺法の場合も、指定された職場では、年1回の胸部レントゲン写真が義務づけら れていますね。 ○主任中央じん肺診査医  3年に1回、または年に1回で、管理区分によって違います。 ○座長  なるほど。その場合はその当該年度に関しては、通常の定期健康診断の胸の写真は撮 らないのですか。こちらの労働安全衛生法との関わりは、どのようになっているのです か。 ○主任中央じん肺診査医  労働安全衛生法の一般健康診断は、毎年胸の写真は撮るのですが、じん肺法に基づく じん肺健康診断は、3年に1回または1年に1回ということです。 ○中央じん肺診査医  じん肺法にその部分の規定がありまして、事業者はじん肺健康診断を行った場合にお いては、その内容に応じて安衛法の一般健診を行わなくてよいことになっていますの で、2度被曝のためにエックス線を撮ることはないというように法律の整理がされてい ます。 ○座長  資料3の「問題点」の所にありますが、結核対策としてだけではなく、労働者の健康 の保持増進のためと書いてありますが、これは労働安全衛生法のどこに相当して、そう いう文言が出てくるのですか。健康増進法との関わりは、どういう格好になるのです か。 ○中央じん肺診査医  安衛法の健康の保持増進がどこに出てくるかというご質問ですが、安衛法の第7章が 健康診断を定めているもので、第7章の見出しが「健康の保持増進のための措置」とい うことになっていまして、そこの章の中に第66条の中で健康診断という項目があるとい うのが法令上の記載になっています。 ○座長  あとは健康増進法ができて、それとの関わりが多少出ているのだろうと思いますが、 その辺はいかがですか。 ○労働衛生課長  基本的にきれいに区分けされているわけではないのですが、安衛法というのは基本的 にはまず労働者の安全を守るというところから始まっていますので、職業関連疾患を対 象として、安全と健康を守るための法律として発足して、いままできているわけです。 例えば肝機能というような検査項目も、法令に入れるときには相当議論があったやに聞 いています。  もう1つ、結核関係の部分については、職場というのは多数の人が集まるというとこ ろから、集団感染の最も重要なターゲット疾患であった結核を考慮して、時代背景もあ って、このように入れてきたという形になっているわけです。  特殊な危険性のある部分については特殊健診等が出てきていまして、安衛法の中で一 般的な労働者の健康増進という形を、どこまで事業者に義務づけていくのかということ では、まだ完全にそこまで事業者の責任であると義務づけるというところまではいって いないと思います。私どもはTHPの施策の点では推奨はしているということです。 ○江口委員  個別の質問になるかもしれませんが、喀痰検査というのがありますが、現行では、実 際にどのような喀痰検査が行われているかということで、例えば結核を対象とした喀痰 検査だけではなく、おそらく肺がん健診などに用いられるような喀痰検査も、この中に 含まれているのではないかと思うのですが、その辺は実際にはどのような形になってい るのでしょうか。 ○労働衛生課長  資料5の2頁目で、「以下の項目については、医師が必要でないと認めるときは、省 略することができる」とありまして、そこに「かくたん検査」とありまして、「胸部エ ックス線検査によって病変の発見されない者」、2として、「胸部エックス線検査によ って結核発病のおそれがないと診断された者」ということで、大抵の場合は喀痰検査は 省略されているというように聞いています。 ○江口委員  現実的な実績からいっても、喀痰検査というのはやられていないのですか。 ○中央じん肺診査医  喀痰検査としての数字は出ています。 ○安全衛生部長  どのくらいありますか。 ○中央じん肺診査医  喀痰検査として、要するにガフキーを見ているのか、それとも細胞見を診ているの か、その中身がどうかということですので、次回以降もしわかれば把握していきたいと 思っていますが、行政が把握しているのは実施率という形で、何件行われて有所見者が 何名だったというところは、報告がある程度わかる部分もありますが、それ以外にその 中身についてまでは定常的に把握していない部分があるので、その辺りは可能な限り把 握して、もし可能であれば次回以降、ご検討の中身にしていきたいと考えています。 ○江口委員  医学的にはずい分違うことなので、是非その辺の実態がどうなっているかというのを 教えていただければと思います。 ○安全衛生部長  有所見者の中に、要するに結核の検査だけではなくて、がんの細胞診なども含めて有 所見としているかどうかだけ聞きたいのですが。 ○労働衛生課長  そこは資料7がありまして、定期健康診断実施結果という項目別の平成15年の有所見 率等という資料があり、ここに喀痰検査というのがあり、有所見率は1.6%です。いま の胸部エックス線の検査の有所見率が3.4%で、いまのところはこれだけの資料を準備 させていただいたのですが、江口委員がおっしゃったように、これらの内容を分類し て、どのような所見があったかというようなところまでも調べられれば、次回までに準 備して検討の内容として挙げたいと思います。  今回は、議論のポイント等についての委員の方々から資料の要求や、こういう点を出 してくれというようなことがありましたら、事務局としては承りたいと思います。 ○座長  引き続き、資料6についてのご説明をいただきたいと思います。 ○労働衛生課長  資料6に「労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方に係る議論のポイ ント(案)」とありますが、これは事務局の考えた案です。先ほどの胸部エックス線検 査及び喀痰検査というものがありますが、これにその背景が書いてあります。その下に 「検討の方向性」というのがあります。まず、結核予防法令で定める者以外の者に対し て、胸部エックス線検査及び喀痰検査を従来どおり一律に実施する必要があるのかと。 これにつきまして、要するに、現行の労働安全衛生法に基づいて、すべての労働者に年 1回レントゲンを撮ってよいかというような検討の内容です。  結核予防法令で定める者以外の者については、胸部エックス線検査及び喀痰検査を完 全に廃止してよいのか、という逆の視点です。結核予防法に準拠して、それ以外の者を 全部やめてしまってよいのかというところも、また議論になろうかと思います。結核予 防法令で定める者以外の者であっても、何らの条件を満たす者に対しては、一律又は、 医師の判断により胸部エックス線検査及び喀痰検査を実施する必要があるのかというこ とです。例えば高齢者等につきましては、結核予防法上でも一応チェックをするという 形になっているわけでして、そのような配慮を安衛法で、例えば年齢等につきまして、 何らかを行ったほうがよいのかということです。  個別に議論すべき事項として、結核以外の目的で、安衛法における胸部エックス線検 査及び喀痰検査を実施する場合、どのような疾病が対象となるかということです。医師 が胸部エックス線検査及び喀痰検査を必要と判断するのは、どのような場合であるかと いうことにつきましても、ご専門の立場からご意見をいただきたいと考えています。  その他の健康診断項目がありますが、結核予防法はあのような形でもう施行になった わけですが、私どもの安衛法では、新たに着目すべき疾病はあるのかどうか。これは基 本的には事業主が労働者の健康確保を全面的にどこまで義務があるのかというのは非常 に難しい議論になるかと思いますが、少なくとも何らかの疾患を予防できるという形で あれば、質の良い労働力をきちんと確保し、労働者の健康を確保するという立場から、 追加すべき、ターゲットにすべき疾病、そのために健康診断を行う必要があるかどうか ということで、その点で追加または削除すべき健康診断項目があるかどうかということ です。  さらには、現在医師の判断において省略している項目のうち、必須の検査とする必要 性がある健康診断項目はないか。また必須の検査のうち、医師の判断により省略してよ い健康診断項目はないかということです。要するに胸部レ線で、肺を見る、結核を見 る、感染症を見る、あるいは昨今ですと閉塞性の肺疾患等を見る、あるいは循環器系の 状況を診る、さらにその上で何か足すべきもの、あるいは必要がないと考えられるもの を広く含めてご検討をいただきたいと考えているものです。  現行の資料7に、先ほどの定期健康診断の実施結果という説明があり、ざっとした各 検査項目ごとの有所見率等を出しています。  資料8は、胸部エックス線検査の対象疾患として、一般健康診断のハンドブックより 抜粋していますが、いま考えられるものを事務局が準備したものとして、これだけのも のを挙げさせていただいています。  参考資料として、健康診断結果に基づいて事業者が講ずべき措置に関する指針をお示 ししています。参考資料2として、二次健康診断等給付があります。一次の健康診断と いうのは、年1回義務づけられている定期健康診断ですが、ここで有所見の方々は二次 健康診断を受けることができ、それに対して給付が行われるということの資料です。以 上です。 ○座長  ただいま阿部課長からご説明いただきました、特に資料6で論点のポイントを2つに 分けて検討したらどうかということです。1つは胸部エックス線検査及び喀痰検査につ いて、2つ目はその他の健康診断項目です。資料7の有所見率、資料8の胸部エックス 線検査の対象疾患を見ていただきながら、少しご意見をいただきたいと思います。何か ご質問等ございますか。 ○藤村委員  国民の健康を守るために、あるいは健康を増進させるために、周産期から始まって学 校保健、職域保健、地域保健が連携して一連のつながりを持った健康チェックをしてい くことが望ましいと思うのです。生活習慣病の一次予防で、先ほど座長から「健康日本 21」や与党のフロンティア戦略に関係しても考えてみるというお話がありましたが、や はり基本は健康を守る視点において、職域領域でやや下がっているのではないか。例え ば高齢者の老人保健法による基本健診などは、市町村が実施母体になってきています。 そうすると、そこでは市町村独自の検査項目の追加などがあるわけです。前立腺のPS Aのような腫瘍マーカーをチェックしたり、糖尿病などはいまヘモグロビンAIcまで 見ておりますね。ところが、職域の健診は、比較的健診項目も少ないですし、5,000万 〜6,000万の労働者の健康を守ることは、日本の国民の健康状態を改善するためには非 常に大切なことです。したがって、私の考え方として申し上げますと、仮に結核予防法 が改正されたからといって、安衛法の健診も右へ倣えしていいものかどうか。私はすべ きではないと思います。大きな企業はよろしいです。50〜100人の従業員を持っている 小規模事業所において、安衛法の健診だけが唯一の健康チェックの場所である人たちが いるのです。地方の工場の社長が、このときだけ胸のレントゲンを撮って安心できたと いう状況があるわけです。それを結核予防法の改正に伴ってすぐ止めていいかどうか、 これが第1です。  それからもう1つ、健診による結核の発見率は、1万人に1、2人なのです。専門の 先生がいらっしゃいますが、そうすると、5,000万〜6,000万の労働者の中にはどのくら いいるかわかりますね。労働環境は、必ず1つに密閉された場所で大勢の人間が働いて いるわけです。ですから、仮に結核患者が非常に少ないとしても、集団感染する可能性 はあくまでも0ではないのです。日本は、先進国中で特に結核有症率の比較的高い国で すから、これを改善するためには、やはり集団感染率が0でない限りはなるべくチェッ クする方向で考えていくべきだと思うわけです。  結核だけではなく、当然ここでも触れていましたが、心臓が大きいとか大動脈瘤があ るなど発見されるわけでしょう。だから、生活習慣病の一次予防としてそれなりの意味 があると考えていかなければいけないと思っております。 ○座長  ありがとうございました。いまのご発言には、実はいろいろな内容が含まれていると 思うのです。座長として少し整理させていただくと、いま労働安全衛生法の枠の中で議 論をしているわけですが、それを超えて国民の健康の立場でどうかというお話が1つ。 もう1つは、胸部エックス線検査が結核の集団感染等々に対して今日どのぐらいの意義 があるかという内容だったと思うのです。もう1つはこれからの議論の進め方に関わる ものですから、それは置いておいて、まず後者のほう、結核との関係について先にお話 いただきたいと思います。 ○主任中央じん肺診査医  いま、藤村委員の発言も踏まえて座長から結核などの関連について言われたことで、 結核予防法の改定に伴ってそれに右へ倣えしてよいのかにつきましては、確かに改定結 核予防法で義務づけている学校、病院、診療所、助産所、介護老人保健施設及び社会福 祉施設、ほかにも密集度の高い職場もあるかもしれないのですが、おそらくそのことも 踏まえて結核感染症課の審議会で議論された結果でありますので、結核については結論 が出ていると考えざるを得ないかなと思います。労働安全衛生法で胸部エックス線写真 を撮る必要があるかないか。必要性というのは、結核ではなく、それ以外の胸部疾患、 心疾患等で胸部エックス線検査を実施するべきかどうかを考えるべきではないかと考え ております。 ○座長  おそらく労働安全衛生法が出発した当時は、国民の結核の年間発生率は大体10万対 500〜600だったと思うのです。いまは、それが大体10万対25で、しかも高齢者に非常に シフトしておりますので、65歳以上は今回の改正でも義務づけられておりますね。通常 の15〜60歳までの年齢階級別の罹患率はどのくらいになっているかは、次回に資料をも う一度出していただいたほうがよろしいのではないでしょうか。 ○労働衛生課長  はい、わかりました。 ○座長  結核との関係については、予防部との関係で加藤委員がいちばん詳しいので。 ○加藤委員  一応、最近の状況をご説明したいと思います。いま労働安全衛生法との関係で集団感 染事件の話がありましたので、そこを抜き出しますと、2000年から2004年で全国で170 件の集団感染事件が報告されています。そのうち、事業所において28%、ですから約50 件ほどの集団感染事件が報告されています。集団感染事件は定義がありまして、1人の 患者が2家族以上にまたがって20人以上に感染させたものを言っていますから、集団感 染事件に至らないものであっても、事業所における感染事件はこれ以外にもあるという 理解をすべきだと思うのです。  実際どういう所で起こっているかは、データがなくてわからないのですが、最近経験 的にあったことで、特徴として若干ご紹介しますと、外国人の職場がいくつか報告があ ります。これは今後の問題として、もし労働市場が外国人に開放された場合、特に東南 アジアから来る場合は非常にハイリスクグループになります。私は3年ほどフィリピン で仕事をしていたのですが、罹患率が日本の約10倍なのです。ところが、こういった国 ではまだ結核は若い人で、生産人口の疾患ですから、同一の年齢層で見た場合はおそら く日本の20〜30倍か、非常に高い罹患率があります。これは、今後の問題として事業所 においてもよく考えていかなければならない問題ではなかろうかというのが1点です。  それから、これもデータがないのですが、コンピュータ関連の職場でときどき集団感 染事件が起こります。データがどうなのかはわかりませんが、おそらく非常に労働密度 が高い所、あるいは密閉された空間なのでしょうか。よく起こります。飯場の労働者 は、一般事業より非常にリスクが高い所になっていますので、数字としてのデータがあ りませんが、この辺りを現時点で少し考える必要があるのかなと思います。  今回の法律改正の中で、健康診断でハイリスクな、つまり罹患の高い可能性があるの はデンジャーグループと言いまして、その人の発病によって二次感染と、この2つの観 点から整理されていますが、先ほども少し話があった零細企業は、高齢化が高いことも ありますし、おそらく社会経済的に低い階層の人たちがいるのかなということもあるか と思います。こういった所でも、健診をやりますと、一般の事業所よりかなり高い患者 発見率だということがわかります。一応ご報告です。 ○座長  ありがとうございました。いまのことに関連して、何かございますか。 ○堀江委員  コンピュータ関連の事業所の話がありましたが、私が以前1万人ぐらいを対象にいろ いろな業種の人たちを10年以上健康管理をしていたときにも、集団感染の定義に当ては まったかどうかわかりませんが、2件ほどコンピュータ関連で発生したのを記憶してお ります。そのときの理解は、必ずしも労働集約型だけではなく、実際には業務請負、あ るいは派遣労働の形態で短期間その場に所属して、すぐ移動する方が大勢おられます。 その中には、常時使用していないものですから、健診そのものを受けていない若い人、 あるいは派遣元で健診をしているのだけれど、情報がきちんと伝わっていない。したが って、職場である派遣先では、どういうリスクの方かわからずに使っているといったと ころから感染が広がっているのかなと理解していました。そのような所では事業者が複 数にわたりますので、非常に責任や管理のあり方の問題が生じやすいことも、併せて経 験しました。 ○座長  改正結核予防法で指定している施設は、「等」がついていないのですか。最後が「社 会福祉施設の従業者」などと、「等」がないのですね。ですから、確かにそこから漏れ るハイリスクの施設がいろいろあるのだろうと思います。そういうものは、むしろ労働 安全衛生法のほうでくくることになるのでしょうか。その辺はどのようになっているの か、私は制度がよくわからないのですが。 ○労働衛生課長  いままで、現行では結核予防が変わっても、このまま変えなければ労働安全衛生法で 一応全部カバーされる形になる。結核予防法は、結核についてはそれ相応の考え方があ って、胸部エックス線と喀痰について、ほかの事業所では省略しているということで す。私どもとしては、いま加藤委員がおっしゃったように、事業所の感染事例50いくつ が多いか少ないかの判断と、それらをもって行うべきかどうかをもう一度検討し直すこ とになろうかと思います。さらには、ほかの疾患が胸部エックス線上でどのくらいつか まっているのかも、いまできる限り資料を整理しておりますが、次回辺り提出してご検 討いただきたいと思っているわけです。 ○相澤委員  確かに、外国人労働者の問題はかなり大きいと思うのですが、雇入れ時の健康診断 は、診断の項目として胸部エックス線を加えているわけですね。ですから、水際にきち んとやれば防げるのではないかと思います。こちらへ来てから発病する人は、定期健康 診断がないといけないと思うのですが、そういう理解でよろしいでしょうか。 ○座長  今回のメインのテーマは定期健康診断になっておりますが、雇入れ時はまた別途にな っております。 ○相澤委員  同じだという理解でよろしいですね。 ○柚木委員  労働安全衛生法に基づく健康診断ですが、資料5の2番の項目の中でいろいろ書かれ ておりますね。ただ、やはり4番目の胸部エックス線検査は、労働安全衛生法の主要な 項目だと思うのです。結核もさることながら、呼吸器疾患をスクリーニングして見た場 合欠かせないものではないかということで、藤村委員がおっしゃるように、0でない限 り外せない項目ではないかと思っております。 ○主任中央じん肺診査医  いろいろなご意見をいただきました。具体的に結核やそれ以外の疾患がどの程度発見 されているかのデータを、次回にお示ししたいと思います。いまの議論を踏まえて、デ ータを収集させていただこうと考えております。 ○座長  資料8をご覧いただきたいのですが、ここに書かれている対象疾患は、すでにハンド ブックの中に記載されているわけです。その実態が、これまでの健診の中でどの程度把 握されているのかの資料は、次回お示しいただくということです。 ○江口委員  その場合に、住民健診などですと、精検受診率がよく健診の制度として問題になるの ですが、職域健診の場合に精検受診率のようなものは把握できているのでしょうか。要 するに「要精査」とされた場合に、その人が精査機関にちゃんと受診しているかどうか です。 ○中央じん肺診査医  行政としては有所見率までで、どれぐらい受診したかの全日本的なものは、実は入手 しておりません。あとは論文等々の個別の報告で見ていく形になろうかと思っておりま す。 ○江口委員  健診の場合のいちばん大事なポイントは、やはり質がいいものなのかどうなのかだと 思うのです。ですから、有所見のところから、その先がどうなったかも、是非チェック していただきたい。それによって、やられている健診が本当に精度が高いものかどうか がわかると思います。 ○座長  5,000万全部でなくとも、限定的な集団に関して最終的にフォローした結果がわかっ ているデータはあるのですか。 ○中央じん肺診査医  次回までに少し整理して、それも含めてお出ししたいと思います。 ○労働衛生課長  整理されているものはあるわけでしょう。 ○江口委員  特に最近よくいろいろな所で聞くのですが、職場健診ですと、やはり事業主がより安 い健診のほうにシフトしてしまうことが多々あると聞いております。実際それがどのく らいなのか私は把握していないのですが、そのような話が出てくるということは、やは り健診の質をもう一遍見直さなければいけないのではないかと考えております。 ○安全衛生部長  全衛連には、個別の精度管理事業はやってもらっているのですか。 ○中央じん肺診査医  はい、やっています。 ○座長  その辺りは、次回また資料を出していただくことにしたいと思います。  資料8を見ますと、肺気腫や慢性気管支炎、いわゆるCOPDと肺がんは、両方とも 基本的には喫煙関連疾患で、どちらかというと健康増進法に相当する疾患対象になって います。サルコイドーシスに至っては、一般的な健康診断としては、まさにこれらの疾 患を全部含めて対象にして見るわけです。問題は、先ほど藤村委員からお話のあった労 働安全衛生法の枠の中となると、大変厄介な話になってくるのではないか。ここが、や はり今後のいちばん大きな問題になってくると思うのです。  議論の進め方としては、まずこの健診でどのような対象疾患がどの程度見つかってい るのか、まず実態を明らかにした上で、そこをどのようにしていくかに、最終的な議論 の収斂をさせていったほうがいいのではないかと私は思っております。従来の定期健康 診断で肺がんがどのぐらい見つかっているのかなども、一応データで出していただい て、自由な討論をしていただいたほうがいいと思います。特に、年齢も非常に大きな問 題になろうかと思います。何も20歳から30歳台まで全部やる必要はないかもしれません ので、どの法律の枠でやるかは別として、胸の写真の一般論を先にしていただいて、そ こから労働安全衛生法に合致するかどうか、その部分はどこでやっていったらいいの か、この場の議論のテーマからは外れるのかもしれませんが、その辺りを念頭に置いて 進めていったほうがいいのではないかと思います。 ○労働衛生課長  事務局といたしましては、今日は第1回目ですので、まず問題点を把握していただ き、座長がおっしゃった資料を極力次回までに揃えた上でご議論いただきたいと思いま す。さらに、この検討会は必要に応じて関係者からヒアリングを行うことも可能なよう に要綱で作っております。例えば、健診者団体等はいろいろな精度の管理の方法やデー タ等をお持ちなので、場合によってはこちらにご出席いただいて、専門家の先生方にヒ アリングを行う。向こう側で意見の陳述書を作っていただくことも可能かと思いますの で、ヒアリングをしたいことがありましたらご検討いただきたいと思います。 ○矢野委員  資料6で議論のポイントが2つ挙がっておりまして、全体の取りまとめが今年の夏ま でということですが、1は特に結核予防法の改正を受けて急ぐ。これはわかるのです が、胸部レントゲンや喀痰以外のことも含めて、定期健康診断のさまざまな点すべてを この夏までにというおつもりなのかどうか、事務局の考えを知りたいのですが。 ○労働衛生課長  なるべく早くご報告いただきたいと思っているわけです。健康診断項目全体を見直す のは、結構大変なことだろうと思います。ですから、今回は胸部エックス線検査や喀痰 検査、結核予防に関連する部分とそれに関連する周りの部分です。 ○矢野委員  もう1つ、いままで出ていた議論のいくつかは、おそらく結核予防法関連のために結 核感染症課が主催した会のときに、すでにデータを基に出てきた議論がかなりあるので はないかと想像するのです。折角前に議論をなさっているのですから、その辺りを事務 局として整理して出していただきたいと思います。 ○労働衛生課長  わかりました。 ○座長  次回までにこのような資料があったらいいということはありますか。 ○主任中央じん肺診査医  いま藤村委員が第2点として問題提起された、人間の健診は学校健診、事業所健診、 老人保健法の健診とあって、労働安全衛生法の項目が少ない気がするということを言わ れましたが、いちばん比較の対象になるのが老人保健法ですので、老人保健法との項目 の比較表を作ってお出ししようと思います。確かに労働安全衛生法の項目は少ないと思 われる方もおられるかもしれませんが、やはりそこは事業主の全額の費用負担で、従わ なければ罰則規定もあって、事業主はそれ以外に労働者の健康診断の結果を記録して、 就業所の措置に生かさなければならないなど、いろいろ厳しい規定があります。なの で、そこは是非ともご理解いただければと考えております。 ○矢野委員  関連の資料で言いますと、先ほど少し出ておりましたが、じん肺合併の肺がんにおけ る健診の議論が、2年前の座長もおいでの会であったかと思いますが、その主な内容と 結果がここにあったほうがいいかなと思います。加えてもう1つ、ワーキングのレベル ではありますが、特殊健診のほうの胸のレントゲンの議論が中災防で具体的なデータが 出ている。例えば検査をすればするほどいいわけではなく、放射線を浴びるなどのいろ いろな問題がありますので、その辺りも含めてのデータを出しての議論が、そういう所 で出ているかと思うのです。それも生かしていただいたらいいかと思います。 ○座長  これはリスク・ベネフィットの問題ですか。 ○矢野委員  そうです。すでに細かい計算等もその中でなされているようですので、0からやるよ りは、なるべくそのような所から出発したほうがいいかと思います。 ○座長  江口委員、健診での肺がんの発見率は委員のほうがご専門ですが、何かデータはある のですか。 ○江口委員  あります。私が覚えているのは、日本対がん協会などの年報にある程度全国的な数値 が出ています。もし必要であれば、次回に。 ○座長  それは、年齢を40歳以上など限っているわけですね。 ○江口 そうです。 ○西村委員  私の分担は循環系ですが、胸部エックス線検査の中に異状率3.4%と書いてあります。 その中で心臓血管系にどのくらいの異状があったのかどうかが1つ。もう1つは、胸部 エックス線検査の異状度、例えば心電図検査と血圧の項目を横断的に見て、組み合わせ から何か特定の母集団などに関連づけて出ているデータがあれば拝見したいと思いま す。 ○座長  わかりました。委員のほうからも提供していただける資料があれば、全部事務局で収 集していただいて、整理をして次回に提出させていただくことにしたいと思います。 ○安全衛生部長  資料8の関係で、「胸部エックス線検査の対象疾患」となっているので少し誤解を招 くかなと思うのです。これだと、がん検診も対象としてやっている感じのニュアンスに もなり兼ねない。ハンドブックから抜粋してきたわけですが、私は、こういう検査で発 見される疾患と認識したほうがいいのかなという気がしています。お願いしたいのは、 例えば労働安全衛生法上では通常のがん検診をやっていませんね。もちろん、アスベス トといったがん起因性の作業に従事するものについては、特別の健診をしていますが、 その辺りもどういう目的なのかをもう少しはっきりしないと、これを「胸部エックス線 の対象疾患」という形で出すと、何となく誤解される可能性があるかなと思います。先 ほど藤村委員がおっしゃったように、職域健診と一般の地域住民健診とはかなり目的が 異なっている気もしていますので、その辺りを少し整理したほうがいいのかなと。老人 保健法の住民健診等は、がん死亡、脳卒中、心臓疾患を防ぐものが主なターゲットにな っていて、それに対しての健診をしている。では、安全衛生法は何をターゲットにし て、どういう健診になっているのかを整理したほうがいいと思うのです。 ○座長  最終的にその辺りがいちばん大きな問題なのですが、資料8にあるのはあくまでも一 般健康診断のハンドブックですから、従来の労働安全衛生法に基づく健康診断は結核を 発見することが基本だけれど、結核の病変だけでないものが見えてくるわけなのです。 位置づけとしては、それも拾えればちゃんと拾いなさいという付随的なチェック項目に なっているのだろうと思いますが。 ○江口委員  まさに、そこがいちばんのポイントではないかと思うのですが、実際にいまの職場環 境や、事業主から見て優秀な働き手が次々に倒れていくところでいくと、中にはやはり 悪性腫瘍なども十分入ってくると思います。ですから、こういうもので健診をやる意味 は、これが作られたときと今とでどのように様変わりしてきているかも、ここで考え直 す必要があるのではないかと、私たちは考えているわけです。 ○藤村委員  いま小田部長がおっしゃった、健診にはそれぞれターゲットがあって、ターゲットが 違うからというお話だったのですが、国民の健康を守るという意味、そのうちの労働者 の健康を守る意味をそんなに切り離すべきではないと思うのです。だから、胸部レント ゲンでわかるものがほかにもあったら、当然結核だけに視野を狭めていく必要はないこ とだし、すべてやるべきであります。先ほど座長がデータを見ましょうとおっしゃって いましたが、データが少ないからよろしいのだと、これはあえて胸部レントゲンを撮ら なくてもいいという結論になることを非常に恐れるのです。少なくとも先ほどお話があ った、まだ日本人は10万対25の結核患者がいて、集団健診が180件、そのうち28%が事 業所だという事実があるわけです。それの頻度が少ないから、無視していいものだとい う結論になっていかないようにしていただきたいと思います。 ○安全衛生部長  いまの1点目のお話ですが、私は別に職域健診で限定するなどと言っているわけでは なく、事業主が主体で実施する健診、ですから労働者にとってはもう一方の健康保険の 保険者が実施する健診、これはがん検診から人間ドックまで含めていろいろやられてい る。そのような主体主体で、法律的な役割等も含めて、ある程度役割も違うのではない か。それをトータルで労働者の健康管理をやればいいのではないかと言っているだけで あって、労働安全衛生法だからこれだけでいい、労働者はこれだけでいいなどと言って いるわけではありませんので、少し誤解がある。 ○相澤委員  次回までの資料についてなのですが、胸部エックス線写真がいちばん必要と考えられ るのは、未規制の化学物質にばく露している方が一般健康診断で見つかることもあると いうことです。業界でも自主的にやっている所があると思いますので、その辺りももし 調べられれば、どういった物質についてやっているかを是非調べていただきたいと思い ます。最近、産業衛生学会でもインジウムという物質で肺損傷が出るものがありまし て、全く警戒されていなかったものですから、そういったものがもし情報として得られ ればお願いしたいと思います。 ○労働衛生課長  わかりました。 ○柚木委員  たまたま労働安全衛生法で胸部レントゲンがあるのは、結核を探すことがもともとの スタートだったかもわかりませんが、資料8にあるように、スクリーニングすることに よってこのようなものが引っかかってきている。肺結核以外に胸部レントゲンでかかる ものはいろいろあるわけです。例えば、いま増えてくるであろうと予想されているCO PDの問題にしても、呼吸器疾患のスクリーニングで、やはりなくてはならない検査項 目だと思うのです。一次の胸部レントゲンで引っかかって要精検であったものから、い ろいろなものが出てくることを考えると、やはりあまり過小評価しないほうがいいので はないかという気がします。 ○労働衛生課長  もう一度いろいろなデータをお示ししますので、見てからさらにご議論いただきたい と思います。 ○座長  ほかに何かご意見ございますか。今日は第1回ですので、この検討会の目的といろい ろな問題点、議論のポイント、ご意見もいただいたわけです。次回は本日の議論を踏ま えて、事務局のほうでもう少し論点を明確にしていただき、併せていまご注文のあった さまざまな資料を揃えていただいて、次回にまた検討をしたいと思います。本日は、こ ういったいろいろな問題があることをご理解いただいたことが、非常に重要なことでは なかったかと思います。どうしても、いまご発言をしたい方はいらっしゃいますか。  よろしいですか。それでは、事務局から何かありますか。 ○中央じん肺診査医  いま座長からありましたように、次回までに論点を再度整理して、検討を進めるため に必要な資料を準備させていただければと考えております。  次回の会合の日程ですが、いまのところ5月17日(火)の17時から、少し遅い時間に なっておりますが、開催させていただければと考えておりますので、よろしくお願いい たします。以上です。 ○労働衛生課長  それでは、これにて終了いたします。どうもありがとうございました。 照会先:労働基準局安全衛生部労働衛生課(内5493)