坑内労働現地調査(概要)


 我が国における坑内労働の実態について、昨年12月から本年4月にかけて現地調査(6カ所)を行ったところ、以下のとおり(別添表参照)。

1.鉱山以外の坑内労働(トンネル工事)
 (1) シールド工法
 シールド工法によるトンネル工事については、シールド機外径約7.5mの工事(A共同溝)と、シールド機外径約2.9mの工事(B水道管)の2カ所について現地調査を行った。
 坑内での作業は機械化が進んでおり、現場作業員についても基本的に筋肉労働を伴う作業はほとんどない。B水道管においては、坑内が狭いため、腰をかがめて通行するところがあり、重機を搬入できずに一部人力により行う作業(配管延長の際の管運搬、セグメントのボルト締め等)もあるが、作業全体に占める割合は低いとのことであった。
 また、B水道管の工事現場はメタンガスが発生するリスクのある地層とのことで、帯電防止作業衣の着用により対応していた。

 (2) 山岳工法
 山岳工法によるトンネル工事については、大断面の高速道路トンネル建設工事(C高速道路)及び小断面の農業用水路トンネル建設工事(D農業用水路)について現地調査を行った。
 C高速道路においては、坑内での作業は機械化が進んでおり、筋肉労働を伴う作業は少ない。掘削そのものはすべて機械化されており、現場作業員も他に一部筋肉労働を伴う作業(支保工据え付け、ロックボルトの差し込み等)もあるが、作業全体に占める割合は少ないとのことであった。また、視察時の坑内の環境について、シールド工法と比較すれば、坑口付近は多少の粉じんは感じられたが、切羽付近の空気は清浄であった。
 D農業用水路においても掘削は機械化されているが、その他の作業(支保工据え付け、軌道延長等)については、坑内が狭いため重機を搬入できずに人力による作業が主体となるとのことであった。視察時、坑内は、切羽付近でコンクリート吹付け作業のため相当量の粉じんが舞っている状態であったが、それ以外の坑内の空気は清浄であった。
 リスクファクターとしての粉じんについては、いずれの現場においても電動ファン付防じんマスクの装着、散水、風管の設置等の対応が図られていた。


.鉱山における坑内労働
 鉱山における坑内労働については、E金属鉱山とF石炭鉱山の2カ所について現地調査を行った。
 E金属鉱山では、坑内での作業は機械化が進んでおり、掘削そのものもすべて機械化されており、他に浮き石を落とす作業等、一部筋肉労働を伴う作業もあるが、作業全体に占める割合は少ないとのことであった。
 リスクファクターとしての粉じんについては、発破後15分以内の入坑禁止、散水、マスク装着等の対応が図られていた。
 F石炭鉱山においても、掘削を含め坑内での作業は機械化され、支保材の積み下ろし等、一部筋肉労働を伴う作業もあるが、作業全体に占める割合は少ないとのことであった。粉じんについても、散水、マスク装着等の対応が図られていた。



坑内労働現地調査概要
※ヒアリング調査等により作成
  トンネル工事 鉱山
シールド工法 山岳工法(NATM)    
視察場所 A共同溝 B水道管 C高速道路 D農業用水路 E金属鉱山 F石炭鉱山
1 工事概要            
  (1)規模
シールド機外径7,470mm
シールド機外径2,900mm
大断面(掘削断面積190.0平方メートル)
小断面 (掘削断面積7.0m2 )
坑道の入り口から数キロ。
坑道の入り口から数キロ。
(2)掘削方法 泥水式シールド工法(密閉型) 泥水式シールド工法(密閉型) 機械掘削 機械掘削
トラックレス方式(軌道を用いない)
採掘方法:ベンチストーピング法(上下坑道の間を発破で掘削し採掘)
軌道あり
採掘方法:後退式長壁式払法(自走枠とドラムカッターを用いて採掘)
(3)従事する業務内容            
  (ア)現場作業員(主に坑内作業)
資材吊り降ろし
資機材運搬
セグメント組立
各種配管延長
軌道延長
資材吊り降ろし
資機材運搬
セグメント組立
各種配管延長
軌道延長
シールド機運転
測量手元(管理・監督者が行う測量業務の助手)
掘進データ計測等の記録
トンネル掘削(重機操作)
インバート工(鉄筋、型枠、生コン打設)
支保工据え付け(ロックボルトの差し込み含む。)
二次覆工
仮設電気配線
トンネル掘削(重機操作)
インバート工(支保工、吹 付)
支保工据え付け
コンクリート吹付け
各種配管延長
軌道延長
資材積み下ろし
資機材運搬
仮設電気配線


坑道の掘進
採鉱
路盤の整備
保坑(坑道の傷みや支保の補修)
通気冷却用設備(ファン及びクーラー)の設置
坑道スケッチ
品位調査のためのサンプリング
試錐作業
坑内設備の保全(機械・電気・温泉(抜湯保全))
坑道の掘進
採炭
保坑(坑道や支保の補修)
通気制御
坑内設備の保全(機械、電気)
(イ)管理・監督者(坑内作業、坑外作業含む)
施工・工程・安全・品質・環境管理
測量
材料の検証
シールド機運転(坑外の管制室)
施工・工程・安全・品質・環境管理
測量
材料の検証
さらに、発注者の地方公共団体の職員が行う監督業務として、
工事請負契約の適正な履行の現場確認
施工・工程・安全管理状況の確認
請負者に対する指示、指導
材料の検証
施工・工程・安全・品質・環境管理
測量
材料の検証
施工・工程・安全・品質・環境管理
測量
材料の検証
保安管理
施工・工程管理
保安管理
施工・工程管理
測量
(4)1日の平均的入坑時間等
(休憩時間含む)
           
  (ア)現場作業員 8時間
(昼勤、夜勤の2交替制)
8時間
(昼勤、夜勤の2交替制)
8時間
(昼勤、夜勤の2交替制)
8,9時間
(昼勤、夜勤の2交替制)
5〜6時間
(一部昼勤、夜勤の2交替制)
8時間半
(3交替制)
(イ)管理・監督者 8時間(坑外での作業含む)
(昼勤、夜勤の2交替制)
4時間
(昼勤、夜勤の2交替制)
8時間(坑外での作業含む)
(昼勤、夜勤の2交替制)
8,9時間(坑外での作業含む)
(昼勤)
5〜6時間(坑外での作業含む)
(一部昼勤、夜勤の2交替制)
4時間
(昼勤)
(5)当該トンネル工事のリスクファクター
酸素欠乏
メタンガス
温度
メタンガス
異常出水
電気トラブル
バッテリーロコの運行
騒音
切羽の崩壊
鋼製支保工の転倒
粉じん(吹付けコンクリートモルタルの飛散含む。)
騒音
振動
夏場の高温
狭い場所での重機作業
切羽の崩壊
鋼製支保工の転倒
粉じん(吹付けコンクリートモルタルの飛散含む。)
バッテリーロコの運行
夏場の高温
狭い場所での重機作業
粉じん
騒音
振動
温度
排ガス(重機)
坑内ガス(二酸化炭素(酸欠ガス))
粉じん
騒音
振動
坑内ガス(メタン)
2 坑内における筋肉労働の内容  
セグメント組立及びセグメント増締め(ボルトの締め付けは力仕事)
各種配管延長(人力で60kgの配管を切羽付近はコロの上を人力で運搬・取付)
支保工(一部人力が必要)
ロックボルトの差し込み(人力)
資材積み下ろし
支保工据え付け(インバート含む)
コンクリート吹付け(インバート含む)
各種配管延長
軌道延長
浮き石を姑息棒(1〜2kg)を用いてたたき落とすこと
穿孔機に装着して使用するロッド(1本あたり7〜12kg)の持ち運び
支保材の積み下ろし等
(取付は機械化)
3 女性を坑内労働に従事させる場合に配慮していくべきと考える事項(現場の見解)
妊産婦の坑内労働は規制すべき
作業の内容によっては、筋肉労働が必要となる場面もあるので、適性を見て作業員を配置。
トイレ等の設備(現在は携帯トイレで対応している。)
妊産婦の坑内労働は規制すべき
妊産婦の坑内労働は規制すべき
重機の操作以外は筋肉労働が必要となる。
トイレ、宿舎等の設置
重量物を扱う必要がある場面はあるが、通常の工場作業と同様。
妊産婦については、一般的な危険有害業務と同様の母性保護がなされるべき。
安全灯、工具等を装着しての歩行、重量物を扱う場面など、体力的な負担は大きい。
4 その他
坑内の女性見学者は今までに50人以上。主な女性見学者は、外国視察者・雑誌取材・大学生・小学生・自治会等。
見学会で女性を入坑させたが問題はなかった。
見学会に女性が参加したことは何度かある。その際、発注者のほうでスカートは遠慮してもらった。
発注者や地元住民の見学会に女性が参加したことがある。
卒論研究、地質調査研究者等の見学の受け入れを実施。
報道機関、一般市民の見学会などで女性が入坑。

トップへ