第7回社会保障の在り方に関する懇談会
(平成17年3月18日)提出資料
社保審―医療保険部会 資料3
第14回 (H17.4.20)


医療制度改革について


平成17年3月18日
厚生労働省



1. 我が国の医療費の水準について



総医療費(OECDベース)の将来推計(対GDP比)

 2015年度の総医療費の対GDP比は10 1/2となり、現在のドイツ(10.8%)と同水準。
 2025年度には総医療費の対GDP比は12 1/2となるが、現在のアメリカ(13.9%)よりも低い。
 他のOECD諸国も将来は高齢化等により対GDP比が上昇すると予想される。

  2004年度
(平成16)
2010年度
(平成22)
2015年度
(平成27)
2025年度
(平成37)
総医療費(OECDベース)(兆円) 41 53 64 90
  対GDP比(%) 8 9 1/2 10 1/2 12 1/2
国民医療費(兆円) 32 41 49 69
  対GDP比(%) 6 1/2 7 8 9 1/2
総医療費/国民医療費 1.28 1.29 1.30 1.31

(注)  総医療費は、OECDの手法に基づき算出した保健医療支出であり、国民医療費に加え、介護費用の一部、予防・公衆衛生、運営コスト、正常分娩費及び一般薬の費用等を含むものである。将来推計はOECD Health Dataによる推計値を基に、一定の前提により試算を行ったものである。

<推計方法>
国民医療費は、平成16年度予算を足下とし、1人当たり医療費の伸び(一般医療費2.1%、高齢者医療費3.2% 平成7〜11年度実績平均)を前提に、人口変動(人口高齢化及び人口増減)の影響を考慮して医療費を伸ばして推計。
介護費用に相当する部分は、平成16年度予算及び最近の認定者の状況を足下とし、サービス利用状況、最近の経済状況、賃金上昇率、人口変動(人口高齢化及び人口増減)の影響、及び従来国民医療費の対象から介護保険に移行した部分を考慮して推計。
予防・公衆衛生及び運営コスト等は、平成13年度の推計値を足下に「社会保障の給付と負担の見通し(16年5月推計)」の名目国民所得の伸びで伸ばして推計。
その他(正常分娩費、一般薬等)は、平成13年度の推計値を足下に上記国民医療費の伸びで伸ばして推計。



OECD加盟国の医療費の状況(2001年)

国名 総医療費の
対GDP比(%)
  順位
アメリカ 13.9 1
スイス 10.9 2
ドイツ 10.8 3
フランス 9.4 4
カナダ 9.4 4
ギリシャ 9.4 4
ポルトガル 9.3 7
アイスランド 9.2 8
オーストラリア 9.1 9
ベルギー 9.0 10
スウェーデン 8.8 11
デンマーク 8.6 12
オランダ 8.5 13
イタリア 8.3 14
ノルウェー 8.1 15
 
国名 総医療費の
対GDP比(%)
  順位
ニュージーランド 8.0 16
日本 7.8 17
オーストリア 7.6 18
イギリス 7.5 19
スペイン 7.5 19
ハンガリー 7.4 21
チェコ 7.3 22
フィンランド 7.0 23
アイルランド 6.9 24
メキシコ 6.0 25
ポーランド 6.0 25
韓国 5.9 27
ルクセンブルク 5.9 27
スロベキア 5.6 29
トルコ 6.6

出典: OECD「HEALTH DATA 2004」
注1) トルコは2000年データ
注2) 上記各項目の順位は、OECD加入国間におけるもの
注3) 医療費については、現地通貨で発表の統計数値を該当する年の年間平均為替レートで換算



「抑制すべきは公的医療費であり、医療費全体は伸びてもよい」との議論について

 いわゆる「混合診療」問題については、患者の立場から個別に見たときに保険外負担が過大な事例があり、国内未承認薬や必ずしも高度でない先進技術等について保険診療との併用等を求める患者の切実な要望に迅速かつ的確に対応するため、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」という国民皆保険制度の理念を基本に据え、「保険導入検討医療(仮称)」の創設等の改革を行うことで合意に至ったところ。(平成16年12月15日 厚生労働大臣、規制改革担当大臣による基本的合意)

 米国においては、公的医療保障制度の対象者を限定し、大部分を民間保険等で対応しているが、
  ・  他の先進諸国に比して医療費が高く、かつその増大が著しい
  ・  公的医療保障制度は多額の給付を要する高リスク層を対象としているため、対象が限定されていても、公的医療給付費の増大は避けられない
  ・  国民の約15%(約4,500万人)の無保険者の問題が長年にわたり国民的課題となっている
  ・  福利厚生の一環として民間団体医療保険を提供する企業の保険料負担増大につながっている
 といった問題が生じている。
(注)  米国における公的医療保障制度としては、65歳以上の高齢者と障害者を対象とするメディケア(連邦政府)、低所得者を対象とするメディケイド(州政府)があるのみ。



2. 医療費の伸びに関する分析



「社会保障の給付と負担の見通し」における将来推計の前提

 2025年度までの医療給付費は、3%台後半〜4%台前半の伸びを示す見込み。
 医療給付費の伸びには、人口の高齢化による伸びも1.5%程度含まれている。
 1人当たり医療費は、制度改正による影響を除いた過去のトレンドを踏まえ、2.6%の伸びを見込んでいる。(うち一般医療費は2.1%、老人医療費は3.2%)

  2004年度〜2010年度 2010年度〜2015年度 2015年度〜2025年度
医療給付費の伸び 4.2% 4.0% 3.6%
  人口の伸び 0.0% ▲ 0.2% ▲ 0.4%
人口の高齢化 1.7% 1.6% 1.4%
1人当たり医療費 2.6% 2.6% 2.6%
  うち一般 2.1% 2.1% 2.1%
うち高齢者 3.2% 3.2% 3.2%

(注) 「人口の伸び」は、「日本の将来推計人口」(平成14年1月)の中位推計による。
「人口の高齢化」は、年齢別にみて1人当たり医療費の高い中高齢者の割合が将来増加することによる「医療給付費の伸び」への影響を示したもの。
「1人当たり医療費」の伸びは、平成7〜11年度の平均。ただし、加入員の年齢構成の変化による増減分(「人口の高齢化」)と、制度改正による一時的な伸びの減少分を除いたもの。



1人当たり医療費の伸び率の構造(平成7〜11年度)
〜診療報酬明細書の診療実日数、医療費による分析〜

 1人当たり医療費の伸びは、医療の単価を示す1日当たり医療費と受診頻度を示す1人当たり日数に分解可能
 1日当たり医療費の伸びは、医療の高度化等によるもので経済成長率にかかわらず3%程度で推移
 1人当たり日数の減は、主に受診日数(在院日数)減などの適正化により減少傾向

  年平均伸び率(%) 伸びの要因
全体 70歳未満 70歳以上
1人当たり医療費
(人口1人当たり医療費)
2.6 2.1 3.2
  1日当たり医療費
(受診1日当たり医療費)
3.1 2.8 3.3 医学、薬学の進歩による高度な医療の開発と普及
疾病構造の変化による受診単価の変化
1人当たり日数
(人口1人当たり受診日数)
▲0.5 ▲0.8 ▲0.1 入院期間の短縮、長期投薬の制限撤廃など適正化の効果
疾病構造の変化による受診日数の変化

(注1)  「社会保障の給付と負担の見通し」(平成16年5月 厚生労働省)において設定した医療費の伸びについて、その内訳を示したものである。
(注2)  人口の伸び、人口構造の高齢化等による医療費の伸びについては、各年で異なるためここでは、これらの人口に関連する伸びの影響については、含んでいない。



国民医療費、GDPの伸びの比較

 岩戸景気やいざなぎ景気、バブル景気といった高い経済成長が実現された時期や健保本人1割負担導入、介護保険施行などの年を除き、国民医療費の伸びは名目GDPの伸びを上回って推移している。
 近年は、バブル崩壊後の低成長の下で、累次の制度改正・医療費改定にもかかわらず、国民医療費の伸びは名目GDPの伸びを上回っている。
国民医療費、GDPの伸びの比較のグラフ



3. 医療給付費の伸びを名目GDPの伸びに
抑制した場合のミクロ的影響



医療給付費の将来推計
(医療給付費を患者負担の増によりGDPの伸びの範囲に抑えるとした場合)

医療給付費の伸びは、GDPの伸びを2%程度上回って推移

患者負担の引き上げにより給付費をGDPの伸びの範囲に抑制するとした場合、必要な給付削減額は徐々に増加し、2025年度においては、約21兆円程度。

診療報酬の単価引き下げにより対応する場合の問題点については、前回資料P18を参照。

これをすべて患者負担で賄うとした場合、当初見込んだ自己負担率(15%)を3倍程度引き上げ45%程度とする必要がある。

なお、一般に患者負担を引き上げた場合、医療費が縮減する効果(長瀬効果)があるといわれるが、これを見込んだ場合であっても、自己負担率を34%程度とする必要がある。
医療給付費の将来推計(医療給付費を患者負担の増によりGDPの伸びの範囲に抑えるとした場合)のグラフ
 (注)  計数は「社会保障の給付と負担の見通し」(平成16年5月推計)による。ただし、GDPの伸びは、「社会保障の給付と負担の見通し」で設定した名目国民所得の伸びと同じとしている。



給付費の縮小分を自己負担増のみで賄うとした場合のイメージ

 2025年度の医療給付費をGDPの伸びの範囲内に抑制し、給付費の縮小分を自己負担のみで賄うとした場合、2025年度の自己負担率(実質15%)を2〜3倍程度引き上げることが必要

 これは、制度の前提の置き方により異なるが、現在の

  3割負担 を 6〜7割負担 に
  1割負担 を 4〜5割負担 に

引き上げることに相当

(注1)  自己負担率が2倍になれば高額療養費の負担限度額も2倍になるように変化させると仮定した場合
(注2)  患者負担を引き上げた場合に医療費が縮減する効果を見込むと、現在の3割負担を5〜6割負担に、1割負担を3〜4割負担に引き上げることに相当
(注3)  医療提供の効率化や公定価格の見直しを図ることにより、実際の患者負担はこの試算よりも低くなる。



平均的な自己負担額に与える影響(月額、粗い試算)

 ○ 高齢者世代(70歳代後半の高齢者夫婦世帯の場合)
高齢者世代(70歳代後半の高齢者夫婦世帯の場合)のグラフ
(注1) 医療提供の効率化や公定価格の見直しを図ることにより、実際の患者負担はこの試算よりも低くなる。
(注2) 「社会保障の給付と負担の見通し」(平成16年5月 厚生労働省)を基にした試算。高齢者世代の給付費、自己負担額は、老人医療受給対象者の1人当たり給付費、自己負担額に基づいて推計を行っている。
(注3) 年金額は、夫が平均的収入で40年間就業し、妻がその期間全て専業主婦であった世帯における年金の受給開始時の見込みであり、名目額である。
(注4) 患者負担を引き上げた場合に医療費が縮減する効果を見込んだ場合、2025年度の医療費は231,000円、自己負担分は69,000円となる。



4. 医療費適正化のための取組と
そのマクロ的効果の試算



医療費適正化のための取組

【長期的に効果の現れる取組】
 ・ 生活習慣病対策の推進

【中期的に効果の現れる取組】
 ・ 医療機能の分化・連携の推進、平均在院日数の短縮
 ・ 地域における高齢者の生活機能の重視

【短期的に効果の現れる取組】
 ・ 公的保険給付の範囲の在り方の検討等

(参考) これまで議論されてきた医療費の適正化対策
日本型参照価格制度、OTC(一般用医薬品)類似薬(ビタミン剤等)の扱いや免責制など公的保険給付の内容及び範囲の見直し、老人医療費の伸び率管理制度



(1) 生活習慣病対策の推進 − 糖尿病を中心として

生活習慣病対策による医療費適正化効果
(一定の前提に基づき粗い試算を行ったもの)

 糖尿病の発症予防・重症化予防の対策は、心疾患、脳卒中等の対策とも共通しており、それらの対策も合わせると、生活習慣病全体の医療費について、一定の医療費適正化効果があるものと考えられる

(単位:兆円)
  平成14年度
(2002年度)
平成16年度
(2004年度)
平成27年度
(2015年度)
平成37年度
(2025年度)
国民医療費 31.1 32.1 49.2 69.0
  うち生活習慣病分 7.2 7.5 12.2 18.0
(国民医療費に占める割合) (23%) (23%) (25%) (26%)
医療費適正化効果 1.6 2.8
(注1)  この表における生活習慣病分の医療費の範囲は、糖尿病(糖尿病性慢性腎不全含む)、脳血管疾患、虚血性心疾患、悪性新生物としている。(高血圧症、高脂血症等は含まれていない。)
(注2)  適正化効果については、健康フロンティア戦略の目標値を勘案し、糖尿病は2015年度△10%、2025年度△20%、虚血性心疾患・脳血管疾患は2015年度△25%、2025年度△25%と仮定して算定している。
(注3)  悪性新生物の適正化効果は見込んでいない。



糖尿病を中心とした生活習慣病等の進行例

患者の主傷病が糖尿病であるものに、その疑いのあるものを含めると、各種の生活習慣病等に大きな影響がある。

糖尿病を中心とした生活習慣病等の進行例の図

 出典: 患者調査(平成14年)、国民医療費(平成14年度)、人口動態統計(平成14年)、糖尿病実態調査(平成14年)、わが国の慢性透析療法の現況(2003年12月31日)等より



糖尿病の発症予防・重症化予防の対策のイメージ

糖尿病の発症予防・重症化予防の対策のイメージの図

糖尿病の発症予防・重症化予防の対策は、心疾患、脳卒中等の対策とも共通しており、さらに相乗効果がある
(主傷病が虚血性心疾患の67%、脳血管疾患の57%、腎不全の80%、悪性新生物の29%は、副傷病まで含めると糖尿病・高血圧・高脂血症のうちいずれかを保有している)

※ 糖尿病実態調査(平成14年)、N Engl Med 2002;346:393-406、Diabetes Research and Clinical Practice 28(1995) 103-117(熊本スタディ)、社会医療診療行為別調査(平成14年)等より



生活習慣病の発症予防・重症化予防の流れ(イメージ)

生活習慣病の発症予防・重症化予防の流れ(イメージ)の図



生活習慣病対策の具体策

<科学的根拠に基づいた効果的な保健事業の手法の開発・普及>
 ○  科学的根拠に基づき健診項目の重点化を図るとともに、健診の精度管理のための取組を強化しつつ、健診受診率の向上を図る。
 ○  生活習慣病の発症・重症化予防や医療費適正化について一定の成果を上げている保健事業(事後指導等)の取組について検証を行った上で、科学的根拠に基づいた効果的な手法の開発・普及を図る。

<都道府県健康増進計画の見直し>
 ○  国は、都道府県が作成する健康増進計画の基本方針を示し、重点的に取り組むべき対象疾病やその克服に向けた具体的な目標、手法等を提示する。
 ○  都道府県は、国の基本方針に即し、また、地域の実情を踏まえ、管内の医療保険者、市町村等による健診及び事後指導等の実施方針を示し、それに沿った具体的な事業内容、医療保険者と市町村等の連携方策を健康増進計画に明記する。
 ○  都道府県のイニシアティブの下で医療保険者と市町村等の協議・連携の場を設置する。

<医療保険者による取組の積極的推進>
 ○  医療保険者と地域保健が一体的に保健事業に取り組む体制を構築し、両者の役割分担と連携の在り方を明らかにしつつ、医療保険者自らがより積極的に推進できるようにしていくことを目指す。
 ○  特にこれまで十分に行われてこなかった健診後の事後指導・フォローアップについて、医療保険者が中心となって取り組んでいく体制を強化する。
 ○  都道府県単位での保険者協議会の設置等により、医療保険者同士の連携や地域と職域の連携を強化し、サラリーマンに対する現役時代・退職後を通じた一貫した健康管理や被扶養者に対する保健事業の取組などを推進する。

<重症化予防のための取組の推進>
 ○  健診実施後における要医療者への受療勧奨を強化する。
 ○  合併症等の予防法の研究・開発・普及を図る。
 ○  生活習慣病の重症化予防に関する診療報酬の見直しを検討する。



(2) 医療機能の分化・連携の推進、平均在院日数の短縮、
地域における高齢者の機能の重視

平均在院日数が短縮した場合の医療費適正化効果(粗い試算)

 全国の平均在院日数(37.9日)が、最も短い長野県(28.8日)と同程度(24%減)となるものと仮定して、医療費の適正化効果について粗い試算を行うと、2.2兆円程度(2002年度ベース)となる。
 (注1)  2002年度の入院医療費+入院時食事医療費は12.5兆円
 (注2)  平均在院日数(病院・診療所の全病床に係る数値)は「患者調査」(平成14年)
 上記程度の効果が2025年度に現れるとすると、医療費の適正化効果は2025年度には4.9兆円程度となる。
(上記の半分程度の効果が2015年度に現れるとすると、2015年度には1.7兆円程度となる。)

(参考)平均在院日数の各国比較
アメリカ イギリス ドイツ フランス 日本
(2003年)
6.7日 8.3日 11.6日 13.5日 (全病床) 36.4日
(一般病床+療養病床) 28.3日
(一般病床のみ) 20.7日
出所: 日本以外の各国はOECD Health Data 2004、日本については厚生労働省「病院報告」(平成15年)
(注1) 日本以外の各国の対象病床は以下の通り。
アメリカ:American Hospital Associationに登録されている全病院の病床 イギリス:NHSの全病床(長期病床は除く)
ドイツ:急性期病床、精神病床、予防治療施設及びリハビリ施設の病床(ナーシングホームの病床を除く)
フランス:急性期病床、長期病床、精神病床、その他の病床
(注2) 日本については、診療所の病床は含まれない。



熊本市内のある急性期病院における「医療連携クリティカルパス(連携パス)」について

(1) 連携パスの基本構造
疾患別に診療ネットワークを形成し、連携パスの共通様式を作成の上、使用する。
連携パスの基本構造の図

(2) 現在使用されている連携パス
人工骨頭置換術  ・ 大腿骨頸部骨折骨接合術
人工膝関節置換術  ・ 人工股関節置換術
頸椎椎弓形成術  ・ 腰椎椎弓切除術
肩腱板修復術  ・ 下肢骨折手術
脳血管障害  ・ 胃癌手術
大腸癌手術    

(3) 年間連携パス使用数(平成15年)
大腿骨頸部骨折:  189例  頸椎手術:  16例
脳血管障害:  132例  人工膝関節:  12例
腰椎手術:  24例    

(4) 大腿骨頸部骨折(人工骨頭置換術、骨接合術)における連携パスの導入効果
 (1) 当該病院における平均在院日数の変化
  事例数 平均在院
日数
(A)に対する
減少率
連携パス導入前
  (平成11年1月〜12月)
72例 28.5日
(A)
連携パス導入後
  (平成13年1月〜8月)
77例 19.6日 約31%減
連携パス導入後
  (平成15年1月〜17年1月)
423例 15.4日 約46%減

 (2) 連携先病院(ある回復期リハビリテーション施設)における平均在院日数の変化
  事例数 平均在院
日数
(B)に対する
減少率
連携パス導入前
(平成15年)
55例 90.8日
(B)
連携パス導入後
(平成16年)
53例 67.0日 約26%減



医療機能の分化・連携、平均在院日数の短縮の具体策

<医療計画の見直し>
 ○  主要な疾患や医療機能ごとに定められた指標に基づき、都道府県が医療提供体制の具体的数値目標を設定する。
 ○  医療計画の内容を、患者・住民の生活の質(QOL)向上の観点から、医療機能の分化・連携を推進する内容に見直す。

<専門性に応じた機能の明確化>
 ○  急性期入院医療を担う医療機関について、地域のニーズを踏まえ、それぞれの専門性に応じた機能の明確化を図る。

<必要な医療資源の集中的投入>
 ○  急性期の入院患者に対し、必要な医療資源が集中的に投入されるようにし、在院日数の短縮を図ることにより、急性期医療の質の向上と効率化を図る。

<急性期入院医療に係る包括評価の検討>
 ○  急性期入院医療に係る診断群分類別包括評価(DPC)について、その導入の影響を検証し精緻化を図りつつ、疾病の特性や重症度を反映した包括評価の実施に向けて検討を進める。

<急性期から回復期、慢性期を視野に入れた診療計画の作成>
 ○  急性期医療を担う病院が、地域(在宅)に復帰することを前提とした上で、当該病院を退院した後の回復期(亜急性期)、慢性期の医療をも視野に入れた診療計画を作成することなどにより、地域の医療機関との連携の強化を図る取組を進める。



質の高い効率的な医療提供体制の構築
−医療機能の分化・連携/在宅医療の推進等による平均在院日数の短縮−
医療計画や関連する補助金等の医療提供制度改革を行うことにより、質の高い効率的な医療提供体制の実現に向け、都道府県による実効性の高い施策展開を推進し、これを国が支援することとする。

国による基本方針の提示 (新設)
 ○  国は、都道府県が作成する医療計画に関し、国としての基本方針を示し、あるべき医療提供体制のビジョンを提示するとともに、都道府県の目標値設定の基となる指標を提示
医療計画の役割・作成手法の見直し(案)
 (1)  主要な疾患や医療機能ごとに定められた指標に基づいた都道府県による医療提供体制の具体的数値目標の設定
地域の疾病構造の特徴、住民ニーズを踏まえた目標値の設定
 (2)  目標達成に向けた具体的な実施計画として医療計画を位置付け
 (3)  国の提示する政策評価項目による都道府県の定量的評価の実施とそれに基づく医療計画の見直し
住民にとって、現状、目標、整備手順等が数値でもって客観的に明らかになる(都道府県ごとの状況が容易に把握できる。)
具体的で実効性のある計画的な医療提供体制の構築が可能になる。
 
医療計画の内容の見直し(案)
 (1)  患者・住民の生活の質(QOL)向上の観点から、医療機能の分化・連携(病院間、病院・診療所間、福祉サービスとの間の連携)を推進する内容に見直し
「急性期→亜急性期・回復期→かかりつけ医の下で在宅(多様な居住の場)での療養」といった流れを、原則2次医療圏内で完結する医療提供体制の確保
 (2)  医療安全、小児医療・小児救急、在宅医療等、今後政策的に重点的に推進すべき内容を医療計画の記載事項として位置付け
 (3)  介護保険事業支援計画や健康増進計画と連携した医療提供体制の位置付け



「脳卒中」に係る保健医療提供体制の実現に関する国と都道府県の役割 <イメージ>

「脳卒中」に係る保健医療提供体制の実現に関する国と都道府県の役割 <イメージ>の図



地域における高齢者の生活機能の重視の具体策

<多様な居住の場の質的・量的充実>
 ○  医療機関からの転換を含め、多様な居住の場(ケアハウス、グループホーム、高齢者向け住宅等)の質的・量的充実を図るとともに、介護保険施設の個室ユニットケア化など施設における生活環境の改善を進め、退院後の患者の受け皿を確保する。

<入院医療提供者と在宅医療・介護サービス提供者の連携強化>
 ○  入院から在宅(多様な居住の場)での療養生活に円滑に移行できるよう、入院医療提供者と在宅医療・介護サービス提供者の間の連携を強化する。

<生活機能を重視した総合的サービスの提供>
 ○  既に要介護認定を受けている高齢者が心身の状況に応じた必要な医療を受けるため、地域において医療・介護の間で一層連携がとられ、生活機能を重視した形で総合的にサービスが提供できるような仕組みを検討する。
 在宅でサービスを受ける後期高齢者に対して、地域で主治医やケアマネジャーが一層協働できるようにする。

<医療・介護で共通するサービスの機能分担の明確化>
 ○  療養病床、訪問看護、訪問リハビリなど医療保険と介護保険に共通するサービスについて、その機能分担の在り方を明確化する。

<終末期医療の基盤づくり>
 ○  終末期医療については、長寿化の中での人生の終末期における生活の質(QOL)をどのように向上させるかという観点を踏まえつつ、患者の意思を尊重した適切な終末期医療が在宅で受けられるような基盤づくりの在り方について検討する。



試算のまとめ

生活習慣病対策の推進、医療機能の分化・連携の推進、平均在院日数の短縮、地域における高齢者の生活機能の重視を一体的かつ計画的に行うことにより、構造的な医療費適正化を進めると、中長期的に以下のような効果が期待できる。

  2015年度 2025年度
「給付と負担の見通し」の推計額    
  国民医療費
(対国民所得比)
49兆円
(11%)
69兆円
(13%)
給付費
(対国民所得比)
41兆円
(9%)
59兆円
(11%)
生活習慣病対策の推進((1)) 約1.6兆円 約2.8兆円
平均在院日数の短縮((2)) 約1.7兆円 約4.9兆円
医療費適正化効果総額((1)+(2)) 約3.3兆円 約7.7兆円
  対国民所得比 0.7% 1.5%
給付費減少総額 約2.8兆円 約6.5兆円
  対国民所得比 0.6% 1.2%

(注) 粗い試算の結果であり、今後、具体的な方策について更に議論を進める中で、その効果についても併せて精査を行う必要がある。



5. 保険者の再編・統合 −政管健保を中心に−



医療保険制度改革の方向性

医療保険制度改革の基本的考え方

 (1) 地域の関係者(保険者、医療関係者、地方公共団体等)が協力して、地域特性を踏まえた保健事業や医療費適正化の取組を推進する
 (2) 保険料の水準をそれぞれの地域の医療費水準に見合ったものとする
 (3) 保険財政の運営を適切な単位(規模)で行い、財政運営の安定化を図る

平成18年医療保険制度改革の全体像:今後の取組みの方向性

保険者の再編・統合:都道府県の区域を単位とした保険運営
地域における医療費適正化の取組
国保
広域化=都道府県単位の再編・統合
政管
都道府県単位の財政運営
健保組合
都道府県単位の地域型健保の創設
 
都道府県が地域の関係者と協力して健康増進計画、医療計画、介護保険事業支援計画と整合的な医療費適正化計画を策定
各都道府県に保険者協議会を設置し、地域における保険者の連携を強化
保険者、特に地域保険の基盤・体力の強化
新たな高齢者医療制度の創設

基本方針(※)において示されている改革の方向
 ※ 健康保険法等の一部を改正する法律附則第2条第2項の規定に基づく基本方針(平成15年3月28日閣議決定)

 政管健保については、事業運営の効率性等を考慮しつつ、財政運営は、基本的には、都道府県を単位としたものとする。
 都道府県別の年齢構成や所得について調整を行った上で、保険料率の設定を行う仕組みとし、国庫補助の配分方法の見直しや、被保険者等の意見を反映した自主性・自律性のある保険運営が行われるような仕組みについて検討する。
 こうした取組を通じ、各都道府県単位で政管健保の健全な財政運営が確保され、被保険者の適切な負担の下で、地域の実情に応じた医療サービスが保障される姿を目指す。
 引き続き、政管健保の組織形態等の在り方について検討する。



都道府県単位を軸とする保険者の再編・統合と都道府県の関係

都道府県単位を軸とする保険者の再編・統合と都道府県の関係の図



政管健保の平成13年度医療給付費等実績に
基づく都道府県別保険料率の機械的試算
(単位:‰)
  若人医療給付費分の
保険料率(調整前)
調整の影響 保険料率
(老健拠出金等の所要料率
を加えたもの※)
  若人医療給付費分の
保険料率(調整前)
調整の影響 保険料率
(老健拠出金等の所要料率
を加えたもの※)
  順位 年齢
調整
所得
調整
  順位   順位 年齢
調整
所得
調整
  順位
全国計 43 - - - - 80 - 24 三重 42 34 ▲0 1 0 79 34
1 北海道 56 1 ▲2 ▲4 ▲6 87 1 25 滋賀 41 37 0 0 1 79 37
2 青森 53 7 1 ▲9 ▲8 82 14 26 京都 42 32 ▲0 1 1 80 25
3 岩手 52 9 ▲0 ▲7 ▲8 81 17 27 大阪 42 31 ▲0 2 2 81 18
4 宮城 46 23 1 ▲4 ▲4 79 30 28 兵庫 43 29 ▲0 0 ▲0 80 26
5 秋田 53 4 ▲1 ▲7 ▲8 82 9 29 奈良 45 24 ▲1 ▲2 ▲3 80 28
6 山形 44 26 1 ▲4 ▲3 78 39 30 和歌山 48 16 1 ▲4 ▲3 82 15
7 福島 47 20 1 ▲5 ▲4 80 29 31 鳥取 47 18 1 ▲4 ▲4 81 23
8 茨城 39 39 1 0 1 78 41 32 島根 47 17 ▲0 ▲3 ▲4 81 22
9 栃木 40 38 1 1 1 79 36 33 岡山 46 22 ▲0 ▲2 ▲2 81 19
10 群馬 41 36 ▲0 0 ▲0 78 42 34 広島 45 25 0 ▲1 ▲0 82 11
11 埼玉 37 44 ▲1 3 2 77 46 35 山口 47 21 ▲1 ▲2 ▲3 81 20
12 千葉 38 42 ▲1 3 2 77 44 36 徳島 53 6 0 ▲4 ▲3 86 2
13 東京 33 47 ▲1 8 8 78 38 37 香川 48 14 ▲0 ▲2 ▲2 83 5
14 神奈川 37 46 ▲1 6 5 79 35 38 愛媛 48 15 1 ▲5 ▲4 81 21
15 新潟 44 27 0 ▲4 ▲4 78 43 39 高知 47 19 1 ▲2 ▲1 83 8
16 富山 43 30 ▲1 2 1 82 16 40 福岡 50 13 1 ▲4 ▲3 84 4
17 石川 44 28 ▲0 1 1 82 12 41 佐賀 53 3 1 ▲8 ▲6 84 3
18 福井 41 35 0 2 2 80 27 42 長崎 52 8 2 ▲8 ▲6 83 6
19 山梨 39 40 0 1 1 77 45 43 熊本 51 11 2 ▲7 ▲5 82 10
20 長野 38 43 ▲1 1 0 75 47 44 大分 53 5 0 ▲7 ▲7 83 7
21 岐阜 42 33 ▲0 0 0 79 31 45 宮崎 50 12 2 ▲9 ▲7 81 24
22 静岡 37 45 0 3 3 78 40 46 鹿児島 51 10 2 ▲9 ▲7 82 13
23 愛知 38 41 0 3 4 79 33 47 沖縄 54 2 7 ▲19 ▲12 79 32
老健拠出金、退職拠出金、傷病手当金等の現金給付、保健事業に係る費用等の所要保険料率を
各都道府県で同一の料率とした上で、若人医療給付費分の保険料率(年齢・所得調整後)に加えている。
(老健拠出金分約23‰、退職拠出金分約7‰、傷病手当金等現金給付分約4‰、保健事業に係る費用等分約2‰)
注1. 事業所所在地に着目して都道府県を区分している。
注2. 保険料率は総報酬ベースである。
注3. 四捨五入の関係で合計が合わない場合がある。



国と政管保険者組織の関係(イメージ)
地域の医療費水準に見合った保険料水準の設定、地域特性を踏まえた保健事業の推進といった保険者機能の発揮の観点から、国と政管保険者組織はどのような関係が望ましいか
国と政管保険者組織の関係(イメージ)の図
  現行 A B C
「自主性・自律性のある保険運営」
「安定的な財政運営」
「事務の効率性」
等の観点からの
メリット・デメリット
自主性・自律性のある保険運営になっていない
国が実施するので解散がない
制度設計主体である国が保険者でもあるため、料率変更が制度設計主体としての国が行うべき制度改正と一体として議論されることが多く、保険者として柔軟な対応が困難となる恐れ
国が実施する場合と実質的に同等で法人運営に自主性がない。
料率変更が制度改正と一体として議論されることが多く、保険者として柔軟な対応が困難となる恐れ
自主的な運営なので機動的弾力的に料率引き上げが可能
自治組織となるので財政の健全性を保つための指導監督が不可欠
自主性自律性のある保険運営
都道府県単位の保険者組織となるが、その場合監督は都道府県責任でよいか
事務の効率性の低下
保険者組織間の財政調整をどのような考え方で行うのか、被用者保険の中での財政調整についてはどう考えるのか



国と政管保険者組織の関係について

現在、社会保険庁(国)で実施している政管健保について、国から分離し、保険者機能が発揮される主体による保険運営とすることの意義

 ○  年金と異なり、医療保険の保険者は、医療費適正化努力等の自らの保険者努力に対応して自ら保険料水準を定められるようにすることにより、一層効率的な保険運営が可能であること。
 なお、事務の性格及び効率性の観点から、適用・徴収は年金と一体。

 ○  医療費適正化等の保険者努力や保険料水準の決定といった保険者機能が十分に発揮されるためには、事業運営は、被保険者等(労使)の意見に基づく自主自律の仕組みとすることが必要であること。

 ○  保健事業等について各都道府県ごとの自律的な事業展開を可能とするためには、被保険者等(労使)の合意の下で、マンパワーや財源等を柔軟に確保できるようにすることが必要であり、そのためには国とは別の主体による保険運営とすることが適当であること。

 ○  制度設計主体である国が保険者でもあるため、保険料率の変更が制度改正と一体として議論されることが多く、制度改正に頼りがちとなり、保険者として柔軟な対応が困難となってきた面があることから、制度設計主体と保険者を分離することが適当であること。

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