「がん医療水準均てん化の推進に関する検討会」
報告書


<がん医療水準の均てん化に向けて>




平成17年4月



目次


I はじめに

II がん医療の地域格差の考え方

III 地域格差のデータ

 1 医療施設間の5年生存率の格差

 2 二次医療圏間の5年生存率の格差

 3 都道府県間の格差

IV 地域格差を生み出す要因と課題
 1 がんの専門医等の育成について
(1)がんの専門医の育成の現状
(2)がん医療を支えるコメディカルスタッフの必要性と育成の現状
(3)今後の課題

 2 がんの早期発見に係る体制等の充実
(1)がん検診体制の現状
(2)一般医の資質向上への取組の現状
(3)今後の課題

 3 医療機関の役割分担とネットワーク構築について
(1)地域における医療機関連携の現状
(2)全国的な医療機関連携の現状
(3)今後の課題

 4 がん登録制度
(1)院内がん登録の現状
(2)地域がん登録の現状
(3)今後の課題

 5 情報の提供普及
(1)情報提供の現状
(2)今後の課題

V がん医療水準の均てん化に向けての提言

 1 がんの専門医等の育成について
(1)大学講座の設置
(2)がんの専門医の認定基準
(3)がんの専門医の育成方策
(4)がん医療を支えるコメディカルスタッフの育成方策

 2 がんの早期発見に係る体制等の充実

 3 医療機関の役割分担とネットワーク構築について
(1)地域における医療機関連携
(2)全国的な医療機関連携

 4 がん登録制度

 5 情報の提供・普及
(1)一般国民に対する正しい情報の提供
(2)医療関係者に対する情報の提供
(3)がん情報センター(仮称)の設置

VI おわりに

別添1 関係機関それぞれが果たすべき主な役割

別添2 地域がん診療拠点病院制度の見直しの方向性



I はじめに
   我が国のがん対策は、がんの本態解明を目指した「対がん10ヵ年総合戦略」(昭和59年度〜平成5年度)、それに引き続き、がんの克服を目指した「がん克服新10か年戦略」(平成6年度〜平成15年度)に沿って展開されてきた。
 その結果、「がんは遺伝子の異常によって起こる病気である」という概念が確立し、遺伝子レベルでの病態の理解が進む等、がんの本態解明の進展とともに、各種がんの早期発見法や標準的な治療法が確立する等、診断・治療技術も目覚ましい進歩を遂げ、この間、胃がん、子宮がんの死亡率は減少し、胃がん等の生存率は向上した。
 一方で、国民のライフスタイルの変化や喫煙などの影響も相まって、大腸がん、肺がんや乳がん等の欧米型のがんは増加を続け、がんは昭和56年以降、依然として我が国の死亡原因の第1位を占め、現在では、その3割超に達している(参考1)。今後、一層の医療技術等の研究開発や予防対策の推進に加え、一部の地域や施設での導入にとどまっている対がん戦略で得られた医療技術等の成果を、全国的に普及していくことが求められている。
 このため、政府においては、平成15年7月25日に文部科学大臣、厚生労働大臣の合意により、がんの罹患率と死亡率の激減を目指した平成16年度から平成25年度までの国の大規模プロジェクトとして、「第3次対がん10か年総合戦略」(参考2)が策定され、「がん研究の推進」、「がん予防の推進」、「がん医療の向上とそれを支える社会環境の整備」を柱として推進することとされたところである。
 特に、当該戦略の中で、がん医療水準の「均てん化」(全国どこでもがんの標準的な専門医療を受けられるよう、医療技術等の格差の是正を図ること)などにより、がんの罹患率と死亡率の激減を目指すこととされており、がん医療水準の均てん化に向けた取組を推進することは、政府のみならず、医療関係者や研究者、教育機関等が一丸となって取り組むべき重要な課題となっている。
 また、平成16年5月19日に与党幹事長・政調会長会議で提言され、平成16年6月4日の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」において位置付けられた「健康フロンティア戦略」(参考3)においても、がん対策については、平成17年度から平成26年度までの10年間の目標として、がんの5年生存率を20%改善することが盛り込まれており、がん医療水準の均てん化を図る施策等の充実が求められている。
 このような状況の中、「がん医療水準均てん化の推進に関する検討会」は、がん医療における地域格差の要因などについて検討を行い、その是正に向けた具体的方策を提言することを目的として、厚生労働大臣の懇談会として平成16年9月9日に設置されて以降、5回にわたり、関係者からの意見聴取も踏まえた検討を行い、その結果を以下のとおり報告する。



II がん医療の地域格差の考え方
   一般的に医療水準の格差は、国家間、地域ブロック間、都道府県間、二次医療圏間、施設間といった様々なレベルにおいて取り上げられているが、地域格差が論じられる際には、大都市圏と地方との間や地方の大都市と郡部との間の格差として比較されることもあり、地域格差を論じる際の「地域」の捉え方にばらつきがあるため、地域格差の議論において些かの混乱が見受けられる。
 がんの治療は、その種類や進行度によっても異なるが、手術療法、化学療法1、放射線療法などの高度な技術と施設を必要とする様々な治療法の組み合わせ(「集学的治療」と言う)によって行われている。また、がんの診療に当たっては、手術前には、がんの告知に伴う心理的ケアが必要になり、手術後には放射線治療や抗がん剤による副作用への対応、患者家族による長期的な看護、再発への不安に対する対応、予後の状態によっては緩和ケアの提供など、闘病の各段階で様々な治療や支援が必要となるため、これらに対応可能で信頼できる医療機関が近隣に存在することががん患者やその家族にとって望ましい。
 しかし、それぞれの医療機関において、これら全ての専門的医療を提供する体制を整えることは困難であるため、それぞれの診療レベルに応じた役割分担と連携を行い、国民が全国のどこに住んでいても質が高く、安心して療養ができるがん医療の提供体制を日常の生活圏域レベルすなわち二次医療圏において確立することを念頭に、がん医療における地域格差の是正方策を検討することが適当であると考える。
 なお、二次医療圏間及び都道府県間の格差の原因を検討する場合、施設間の格差を分析することが重要になるとともに、施設間格差のデータは、各施設が自らのがん医療水準を認識したり、がん患者が治療法等を選択する際等にも有用な情報となるため、併せて検討することが重要である。



III 地域格差のデータ
   がん医療水準は、5年生存率、死亡率、罹患率といった指標によって評価されることが通常である。
 死亡率のデータは、統計法に基づき厚生労働省「人口動態統計」により全国的に得られているものの、地域がん登録から得られる5年生存率や罹患率のデータは、多くの地域がん登録において登録漏れが少なからず発生し、欧米先進国と比べ登録の精度が良くないため、評価に利用できず、がん医療水準の格差は、限られた府県市でのデータに基づき評価せざるを得ない現状にある。

1.医療施設間の5年生存率の格差
 医療施設間の格差を吟味するためのデータとしては、現在、大阪府がん登録によるデータと全国がんセンター協議会加盟19施設の調査のみである。

 (1)大阪府がん登録を用いた分析(参考4)
 大阪府の地域がん診療拠点病院の5年生存率は、大阪府全体の値と比べて概ね良好であった。がんの部位別、進行度別(「限局」、「領域」、「遠隔」の順に進行度が高い)に観察した場合、両者の差は、胃がんの「領域」で9.3%、大腸がんの「領域」で11.1%、肝がんの「限局」で12.6%、肺がんの「限局」で17.4%と大きくなった。一方、胃がんや大腸がんの「限局」では両者の差が小さかった。
 以上から、胃がんや大腸がんの「限局」といった一般的な外科的切除のみで治療ができる場合には、拠点病院との差がほとんどみられないが、胃がんや大腸がんの「領域」のような集学的治療を要する場合及び「限局」であっても治療に高度の技術を要する肝がんや肺がんの場合には、拠点病院との差が存在する可能性が示唆される。

 (2)全国がん(成人病)センター協議会の調査データによる分析(参考5)
 全国がん(成人病)センター協議会加盟19施設の調査では、胃がんの5年生存率は、最も成績の良い施設は73.4%で、最も成績の悪い施設は43.3%であり、30.1%の差がみられた。
 このデータを施設の特徴により5つのグループ(全国がん(成人病)センター協議会加盟施設をAがんセンター群、B総合病院併設がんセンター群、C成人病センター群、D総合病院併設成人病センター群、E総合病院群)に分けて分析した場合、全く補正をしない時にはC成人病センター群の成績が他のグループに比べ有意に良好であったが、成績に影響を与える交絡因子(性別、年齢、検診由来、臨床病期、手術、化学療法)によって補正を加えると、格差に変動がみられる。施設間の予後調査の精度や解析対象者の抽出方法の違いの他に、この結果からは、各施設の生存率を単純に比較してもその差が真の格差を示していないことを示唆していると考えられ、今後、生存率の施設間格差の評価のための院内がん登録の整備や適切な指標の開発が待たれるところである。

2.二次医療圏間の5年生存率の格差
 二次医療圏間の格差を分析するためのデータとしては、現在、大阪府がん登録によるデータ(参考4)がある。
 大阪府の11の医療圏(大阪府7二次医療圏と大阪市4基本医療圏)別5年生存率では、胃がん、大腸がんにおいて10%以上の差が存在する。
 5年生存率の差の要因としては、がんの進行度等の背景因子の違いである程度は説明できるが、診断・治療技術の格差による可能性も考えられる。

3.都道府県間の格差
 (1)5年生存率の格差
 5年生存率の格差の把握は、大阪府がん登録及び他の地域がん登録のデータを用いた分析(参考4)によるが、現在、比較的信頼できる精度で5年生存率を算出できる府県は7ヶ所(山形県、福井県、大阪府、新潟県、宮城県、長崎県、鳥取県)にとどまっており、我が国全体を反映する指標とはなっていない。この7府県の5年生存率では、胃がん、大腸がん、肺がんにおいて10%以上の差が存在する。
 こうした5年生存率の差の要因としては、がんの進行度等の背景因子の違いである程度は説明できるが、診断・治療技術の格差による可能性も考えられる。

 (2)がん死亡率の格差
 がん死亡率の格差は、厚生労働省「人口動態統計」により全国的に検証できるが、その格差には、がんの罹患率と生存率の違いが影響することから、当該統計の格差のみにより地域の医療水準を評価することは困難である。

 以上のように、現在利用可能なデータの分析からは、がん医療における格差の実態が十分明らかになっているとは言い難いが、これらのデータからも、施設間、二次医療圏間、都道府県間の各レベルで、がんの診断・治療技術の格差が存在する可能性が読み取れる。



IV 地域格差を生み出す要因と課題
   現状では、がん医療水準の地域格差の実態は、データの不足や分析が不十分なため、客観的に示せるデータの形で十分明らかになっていないが、がん患者やその家族並びに医療関係者からは、がん医療水準の地域格差が存在することが指摘されている。
 したがって、本検討会では、こうした格差の是正に向けての具体的方策を検討するため、格差を生み出す主要な要因として、以下のような論点を掲げて検討を行ったところである。

1.がんの専門医2等の育成について
 がんの治療は、手術療法、化学療法、放射線療法をそれぞれ単独で、あるいは組み合わせて行うのが通常であるが、これまで我が国では、手術療法を中心として治療技術が進歩してきたことから、化学療法、放射線療法は、どちらかというと手術療法との組み合わせで補助的に行われることが多かった。しかし近年、がんの生物学的特性の研究及び臨床試験の結果から、早期から全身病として治療が必要ながん(乳がん等)においては、手術療法よりも、むしろ化学療法が予後を決定することが明らかとなっている。また、分子標的薬等の治療効果の高い抗がん剤の開発や高精度放射線治療といった治療効果の高い療法が開発され、がんの種類や進行度によっては、治療の第一選択となる場合が出てくるなど、がん治療における化学療法及び放射線療法の重要性が高まってきている。
 効果の高い治療法は反面、副作用出現の可能性が高いため、これまであまり注目されてこなかった化学療法、放射線療法に係る高度な知識と技術を持った専門家が特に求められるようになっており、その効果的な育成のためには、大学の卒前教育、卒後の臨床研修の各段階において、適切な教育・研修が行われることが必要である。

 (1)がんの専門医の育成の現状
(1)大学の卒前教育及び卒後の臨床研修
 大学の医学教育では医師になるための幅広い基礎教育が行われ、卒後、プライマリケアの基本的な診療能力を身につけるため、新医師臨床研修制度(平成15年度開始)に基づく研修が、大学付属病院及び臨床研修指定病院で行われている。その後、がんの専門医育成のための臨床教育は、大学付属病院、国立がんセンター、地方中核がんセンター等で行われることになる。
 現状では、化学療法及び放射線療法の卒前教育や卒後の臨床教育を専門に担当する講座を設置している大学はごく少数であるため、これら領域の専門医が育ちにくい状況にある。

(2)がんを領域として含む専門医認定制度
 がんの専門医認定は、学会の指定する施設における研修期間、経験症例数、症例レポート、教育セミナー、学科試験等、各学会の基準を満たした医師に対して、各学会によりそれぞれ行われている(参考6)。

(参考)
日本内科学会、日本外科学会、日本呼吸器学会、日本胸部外科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化器外科学会、日本肝臓学会、日本乳癌学会、日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学会、日本放射線腫瘍学会、日本医学放射線学会、日本産科婦人科学会、日本泌尿器科学会 日本病理学会 等

 我が国における専門医認定に関する現状(数、全国的な分布等)の把握は、各学会によって行われており、各診療科において必要とされる専門医数の算定根拠についてもコンセンサスは得られていない。なお、そもそも医師の診療科の選択は、その自由意思に基づいて行われており、専攻希望の少ない診療科もある。

 (2)がん医療を支えるコメディカルスタッフの必要性と育成の現状
 がん医療現場においては、がんの告知、抗がん剤治療による副作用への対応、終末期医療、家族ケアなどその業務内容は多岐にわたり、医師のみでの対応は困難となってきており、がん医療に携わる看護師、診療放射線技師、薬剤師等のコメディカルスタッフと一体となったチーム医療の提供が重要である。特に診断・治療法が高度化・専門分化してきているため、ひとりのがん患者の治療に当たって、複数の専門性を持った医師やコメディカルスタッフが診断・治療計画に加わり、協力してチームとして医療を進めることが重要となっている。
 これら業務の各専門性に係る資格認定は、各団体により行われているが(参考6)、がん医療の高度化に伴って、より高い専門性を有した各コメディカルスタッフの育成が急務となっている。

(参考)
日本看護協会が認定する専門看護師(認定看護師)、日本医学放射線学会及び日本放射線腫瘍学会及び日本医学物理学会及び日本放射線技術学会及び日本放射線技師会が共同認定する放射線治療品質管理士、日本放射線技術学会及び日本放射線技師会及び日本放射線腫瘍学会が共同認定する共同認定治療専門技師(仮称)、日本薬剤師研修センター及び日本病院薬剤師会が認定する研修認定薬剤師、日本医療薬学会が認定する認定薬剤師、日本病院薬剤師会が認定するがん専門薬剤師(仮称) 等

 (3)今後の課題
(1)大学講座の設置
 特に不足が指摘されている化学療法、放射線療法の領域の専門医の育成については、大学の卒前教育において、基本的な知識教育が行われた上に、卒後の臨床教育が行われることが必要である。

(2)がんの専門医の認定基準
 がんの専門医について、国民が信頼できる資格となるよう、がんの専門医認定に関係する学会等が協力して、専門医の資質を一定以上に保つよう認定基準を検討する必要がある。

(3)がんの専門医の育成
 化学療法や放射線療法の専門家の育成は、社会的な重要性及び緊急性が特に高く早急に取り組む必要があるが、医療機関が医師を研修に出す場合、(ア)代診医が見つからなければ診療が成り立たなくなる場合が多いこと、(イ)現行の制度の中では研修に行く医師の身分が不安定になるため医師が研修に行くのを躊躇する場合が想定されること、(ウ)仮に元の医療機関に身分を残したまま研修を行う場合、研修先で医療事故が起きた場合の責任の所在が不明確となるため、医療行為を伴う研修を行うことができないことといった課題がある。このため、研修に出す場合の代診医の手配や効果的な研修を可能とするための方策を検討する必要がある。
 当面は、地域のがん専門医療機関の診療科毎に、各臓器別のがんの専門医が、確実かつ安全に標準的な化学療法が実施できるよう、研修等による育成を図ることが必要である。さらに将来的には、地域のがん専門医療機関において、全てのがんに対する標準的な化学療法に通じた専門医を育成し配置することが重要である。
 また、がんの専門医の全国的な配置状況が把握されていない現状から、その把握方法と適正な配置方策についても検討することが必要である。

(4)がん医療を支えるコメディカルスタッフの育成
 各職能団体及び学会において、がん医療に必要なコメディカルスタッフの標準的なカリキュラムを策定し、スタッフ毎の育成システムを設ける等の資質向上の方策が必要である。

2.がんの早期発見に係る体制等の充実
 (1)がん検診体制の現状
 がんを早期に発見するためには、がん検診体制の充実が不可欠であるが、我が国のがん検診は欧米に比較して、検診受診率が低いことが指摘されている。乳がん検診を例にとると欧米諸国では受診率が70%以上であるのに対して、老人保健事業に基づき行われてきた市町村のがん検診では平成15年度で約12%と低い。また、乳房エックス線(マンモグラフィ)を用いたがん検診が実施可能な市町村は平成15年度末の調査で約6割程度であることや、撮影技師や読影医が不足しているといった現状にある。

 (2)一般医の資質の向上への取組の現状
 がんの発見は、検診機関を含めた一般医療機関で初期の診断が行われ、がん専門医療機関へ紹介され、診断の確定が行われることが多い。仮に一般医療機関での発見が遅くなると、その後の治療が難しくなり、患者の予後に大きな影響を及ぼすこととなり、ひいては5年生存率の低下につながるため、この早期発見の段階は特に重要である。
 現在、一般医に対するがんの診断に関する教育は、学会および日本医師会の生涯教育講座等で行われている。

 (3)今後の課題
 がんを早期に発見するためには、国民が全国のどこに住んでいても精度の高いがん検診を受けられる体制を整える必要があるとともに、検診後の精密検査に確実につなげるため、がん専門医療機関との連携も重要である。
 また、がんの診断に関する技術も日進月歩のため、がんの早期発見に係ることが多い一般医の資質の向上が必要であることから、学会のセミナーや職能団体における講習会の開催等、がんの早期発見に係る一般医の教育研修に関する取組を強化するとともに、診療ガイドラインの普及やITを活用した診療技術情報の提供も促進することが必要である。

3.医療機関の役割分担とネットワーク構築について
 昭和60年の第一次医療法改正で制度化されて以降、医療計画は病床規制に基づく医療提供体制の整備に寄与してきた。一方、都道府県の医療計画は、大まかな社会目標は提示されているものの、目標達成のための実施計画の位置付けになっていないことから、がん専門医療機関の全国的な適正配置については、各医療機関の個々の取組となっており、地域の特性に応じたがん専門医療機関の配置や必要な病床の確保はなされていない。
 また、がんの医療技術の進歩に伴い、高度の専門性を必要とする医療に加え、緩和医療等がん患者の生活の質を高める医療の提供も求められるようになってきているが、一つの医療機関でさまざまな機能を果たすのは困難であり、医療機関の診療レベルに応じた役割分担と連携により地域において質の高いがん医療の効率的な提供体制を確保する観点が重要となっている。

 (1)地域における医療機関連携の現状
(1)地域がん診療拠点病院の整備(参考7)
 我が国に多いがん(肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がん等)について、住民がその日常の生活圏域の中で質の高いがん医療を受けることができる体制を確保することを目的として、平成14年3月から地域がん診療拠点病院の指定が開始されている。地域がん診療拠点病院の機能として、がんの専門的医療体制を有すること、院内がん登録システムが確立していること、地域の医療従事者等に対する研修体制を有すること、地域におけるがん診療に関する情報提供体制を有することなどを指定要件としているが、以下のような指摘もある。
(ア) 指定については地域がん診療拠点病院の運営に関する検討会の審査によって一定水準が担保されているものの、通知に示された指定要件の文言が定性的で不明確である。
(イ) 地域において診療・教育研修・研究の核となっている特定機能病院が、基本的には指定されていない。
(ウ) 地域がん診療拠点病院は、診療等機能にばらつきがあり、また、それらの間の役割分担、連携が想定されていない。

 また、指定に当たっては、各都道府県知事が、医療計画との整合性を図りつつ、二次医療圏に一ヶ所程度を目安に推薦した医療機関につき、厚生労働大臣が適当と認める(「地域がん診療拠点病院の運営に関する検討会」による審査)ものを指定してきており、平成17年1月現在、全国で135施設が指定されているが、指定数が0の府県(秋田県、山梨県、長野県、京都府、兵庫県、広島県、鹿児島県)も7つ存在している。指定が進まない主な理由としては、地域がん診療拠点病院制度に対するインセンティブが乏しいことも指摘できる。

(2)地域がん診療拠点病院の連携
 病病連携、病診連携は、患者に質の高い医療を適切に提供できるように、病院間及び病院と診療所間等で、診療の連携を行うものであり、地域がん診療拠点病院制度においては、特定機能病院や個別のがん分野で質の高いがん医療を実施している医療機関に支援を求めたり、逆に地域の医療機関からの相談に応じるなど、地域におけるがん診療連携の拠点病院としての役割を果たすことが期待されているが、現状では、医師の出身大学による病院(診療科)の系列及び個人的な信頼関係に依存して行われていることが多く、連携が十分図られておらず、必ずしもがん患者の適切な紹介・逆紹介とはなっていない。

 (2)全国的な医療機関連携の現状
 我が国のがん医療においては、現在3つのがん専門医療機関における連携の仕組みがあり、これらの間で連携は行われていない。

(1)地域がん診療拠点病院の全国連絡協議会
 地域において質の高いがん医療の効率的な提供体制の整備を図るため、地域がん診療拠点病院相互の緊密な連携を図るとともに、がん患者の5年生存率をはじめとする総合的ながん医療情報の収集、分析及び発信の中心的な役割を果たすため、地域がん診療拠点病院及び国立がんセンターで構成する全国連絡協議会の設置が予定されている。

(2)がん政策医療ネットワーク(参考8)
 平成11年から国の政策医療を推進するため、国立がんセンターを中心として、独立行政法人国立病院機構の施設の中から、がん政策医療ネットワークが構築され、現在8ブロック49施設が参加している。
 我が国の政策医療に係る高度な診療、臨床研究、教育研修等の連携が行われている。

(3)全国がん(成人病)センター協議会(参考9)
 昭和48年からがんの専門的診療設備を有し、地域におけるがん診療の中心的役割を担うなど協議会が定める一定の基準を満たすがん専門医療施設が集まり、全国がん(成人病)センター協議会が組織され、現在30施設が加盟している。
 協議会では、がん予防・診断・治療に関する課題及び施設運営上の課題等について協力して事業を展開している。
 また、加盟30施設のうち16施設の間で、がん診療施設情報ネットワーク(多地点テレビ会議システム)が結ばれている。

 (3)今後の課題
 がん患者に対し質の高いがん医療を適切に提供できる体制を整えることが重要であることから、各都道府県は、地域の実情を踏まえた具体的な目標を設定し、その達成に向けたがん医療施設・設備の整備計画と、地域において不足する医療機能について、医療施設の診療レベルに応じた役割分担と連携により確保する方策を、医療計画の中に盛り込むとともに、こうした体制整備を行う医療機関に対し、国及び都道府県が助成を行うことにより計画的に整備を進めることが重要である。
 特に、均てん化が進んでいない化学療法や放射線療法等のがん医療の領域においては、診療レベルに応じた医療施設(国立がんセンター、地域がん診療拠点病院、一般病院、診療所等)の役割分担を明確にして相互の連携を図ることにより、質の高いがん医療の提供体制を確立していくことが重要である。

(1)地域における医療機関連携の課題
 国は地域がん診療拠点病院の整備を推進するため、以下の課題につき検討することが重要である。
(ア) 指定要件をできる限り数値を含めて明確化する。
(イ) 指定の対象として、特定機能病院を含める。
(ウ) 地域がん診療拠点病院を、診療・教育研修・研究・情報発信機能に応じて階層化し、役割分担を明確化するとともに、それを踏まえた診療連携、教育研修等のネットワークを構築するよう見直す。
(エ) 地域がん診療拠点病院制度に対するインセンティブが働くような仕組みを作る。

 また、都道府県は、地域がん診療拠点病院を二次医療圏に1ヶ所程度を目安に速やかに整備していくとともに、地域の実情に応じたがん医療の適切な病病連携及び病診連携を行うため、地域がん診療拠点病院間及び地域がん診療拠点病院とその連携医療機関間の連携の具体的方策につき医療計画の中に盛り込むことが必要である。

(2)全国的な医療機関連携の課題
 現時点で、全国がん(成人病)センター協議会の加盟施設の8割強は、地域がん診療拠点病院の指定を受けており、今後も指定が進むと考えられることから、地域がん診療拠点病院の全国連絡協議会及び全国がん(成人病)センター協議会という2つの連携の仕組みは長期的には一体化していくことが重要である。
 また、がん政策医療ネットワークは、統一的な方針で事業を実施しやすいという特徴を活かし、がん医療における均てん化のための連携、カンファレンス等のモデル的な事業を試行する等の役割が期待できることから地域がん診療拠点病院制度と整合性をもって位置付けられることが望ましい。

4.がん登録制度
 がん登録には、各医療機関が実施する院内がん登録、自治体が実施する地域がん登録などの制度がある。
 これらの方法で収集されたデータは、全国及び都道府県レベルにおけるがんの発生や死亡の増減傾向の把握及びその原因分析や、都道府県、二次医療圏及び施設レベルにおけるがんの種類毎の治療成績(5年生存率等)の把握やがんの治療法別に治療成績を比較分析する上で役立つものである。このように、がん登録は、がん医療水準の評価及び分析や今後のがん対策を進めるに当たっての極めて重要なデータを収集する手段であり、これら制度の拡充が重要である。

 (1)院内がん登録の現状(参考10)
 院内がん登録は、各医療機関のがん医療の実態と水準を評価するため、各医療機関で診療したすべての患者について、診断・治療内容を登録し、予後調査を行い生存率を計測するものであるが、我が国では一部の医療機関でしか実施されておらず、実施されている場合にも標準化が進まず精度が担保されていないといった現状にある。
 精度の高い院内がん登録が実施できない主な理由としては、以下のことが考えられる。
(1) 院内がん登録は、がん登録に関する専門的知識を持ったコメディカルスタッフの不足やその専任化が進んでいないため、患者の登録漏れや不十分な追跡調査が多い。
(2) 院内がん登録の標準様式(参考11)が未だ普及していないため、他の施設の登録データとの整合性に問題がある。
(3) 院内がん登録の精度を高めるため、院内がん登録に従事するコメディカルスタッフが必要とされているものの、院内がん登録の実務者を育成するための短期研修が唯一、国立がんセンターにおいて行われているのみである。

 (2)地域がん登録の現状(参考10)
 我が国の地域がん登録は、1950年代後半に宮城県、広島市、長崎市でいずれも疫学調査を主要な目的として開始された。続いて1960年代になって愛知県、大阪府、兵庫県、神奈川県などでがん登録が府県のがん対策の一環として開始された。以降がん登録を実施する府県は徐々に増加してきたが、1983年の老人保健法の施行にともなう国庫補助の開始によって府県がん登録の数はさらに増加した。その後、1998年度に一般財源化され、がん登録を実施する際の参考資料として「健康診査管理指導事業実施のための指針」(平成10年3月31日老健第65号老人保健課長通知)が示され、都道府県の自主性に委ねられてきたが、2002年には健康増進法第16条において、国及び地方公共団体の努力義務として規定された。しかしながら、国の制度としての位置付けは弱く、地方公共団体の取組は必ずしも進んでいない。現在34道府県1市において実施されているものの、医師・医療機関の篤志的な届出に依存する我が国の地域がん登録では、患者発生情報の登録漏れが発生しやすいため、罹患率の全国値は、比較的登録精度の高い限られた地域(1999年値は11府県1市)のデータを用いて推計が行われている現状にあり、欧米先進国と比較してがん登録制度の不備が顕著になっている。一方、米国では、がん登録修正法が1992年に成立し、連邦及び州政府の取組が進んだ結果、精度の高いがん登録がほぼ全土で行われている。
 精度の高い地域がん登録事業が確立していない主な理由としては、以下のことが考えられる。

(1) 地域がん登録事業は、届出義務がなく、医療機関の自主的な協力によっているため、登録漏れが多い。
(2) 地域がん登録事業において、届出の無いがん患者の把握、登録患者の死亡を把握する上で必要な人口動態死亡情報の利用に制約があったり、住民票照会による生存確認や死因の確認に多大な労力を要するなど事業遂行の負担となっている。
(3) 地域がん登録事業を実施している自治体にとって、財政的な負担となっている。
(4) 地域がん登録を担う人材や研究者の確保が十分でない。

 (3)今後の課題

(1)院内がん登録の推進
 標準様式に基づく院内がん登録のデータが、少なくとも地域がん診療拠点病院において整備されると、二次医療圏において代表的ながん専門医療機関が他施設との比較において自らの診療レベルを客観的に把握することが可能となるとともに、その適切な公開により、がん患者が医療機関を選択する際の有用な情報を提供することが可能となるため、院内がん登録の推進は重要である。
 また、精度の高い院内がん登録データを、地域がん登録事業に提供することにより、地域がん登録事業の精度を飛躍的に向上させることが期待できる。
 このため、院内がん登録の専任スタッフの育成及び確保等の院内がん登録普及のための支援方法を検討する必要がある。
 さらに、院内がん登録を用いて、診療レベルをより多面的に評価するために、5年生存率以外の指標についても導入を検討することが必要である。

(2)地域がん登録事業の推進
 都道府県毎に計測されたがんの罹患率及び5年生存率を、死亡率のデータ等と突き合わせることにより、初めて都道府県単位でのがん対策の評価や立案が可能となる。この罹患率のデータは、地域がん登録事業による以外に得る方法はなく、登録事業の推進が重要である。院内がん登録の推進と地域がん登録への確実な届出により登録漏れを防止するほか、現状では生存率計測のための追跡調査に大きな負担を伴うことから、人口動態死亡情報の活用等を含め、予後調査の負担軽減のための措置等を検討する必要がある。

5.情報の提供・普及
 (1)情報提供の現状
 現状では、標準様式に基づく院内がん登録の整備がなされている医療機関は少ないため、全国レベルで比較可能な治療成績のデータは十分に得られていない。このため、医療関係者にとっても、自施設の診療レベルの正確な評価ができておらず、一般国民に対しても医療機関の選択に資する正確な情報を提供できるような現状にはない。

(1)一般国民に対する正しい情報の提供
 各がん専門医療機関における医療機能情報(施設、設備、専門分野、専門医、治療成績等)は、ホームページ等により広く提供されているが、その情報の提示スタイルや内容の詳しさにばらつきがあることから、がん患者やその家族が情報を有効活用できる状況とはなっていない。さらに、国民が最も求めている治療成績のデータは、仮に提供されている場合でも標準様式に基づく院内がん登録から得られたデータでないため、他の医療機関との単純な比較ができないことが多い。
 また、自治体等のホームページ等において、地域において利用可能な医療機関の医療機能情報について、容易に比較できる形で提供されていることは少ないため、最適な治療法が受けられる医療機関に関する情報が不足しており、がん患者が医療機関を選択する際の支障になっている。
 また、がん診療に関する医学情報の提供について、国立がんセンター等のホームページによる普及が行われている他、厚生労働科学研究推進事業により最新の治療情報等をわかりやすく提供するためのシンポジウム等が行われているが、十分ではないとの指摘がある。
 地域がん診療拠点病院においては、医療相談室の設置を指定要件とし、患者及びその家族の不安や疑問に適切に対応するよう求めているところであるが、地域がん診療拠点病院を含め、がん診療に携わる医療機関の取組は必ずしも十分ではないとの声が高まっている。

(2)医療関係者に対する情報の提供
 医療関係者にとっても、他のがん専門医療機関の医療機能情報は、容易には得られず、病病連携・病診連携を行う際の支障となっている。
 また、がんの診療技術は、日進月歩であるため、医療関係者は絶えず最新の情報を収集することが重要であるが、医療関係者に対しても、標準的ながん診療に関する最新情報をITの活用など容易に提供できる体制としては整っておらず、診療ガイドライン等についても普及が促進されていない。

 (2)今後の課題

(1)一般国民に対する正しい情報の提供
 各がん専門医療機関の専門分野、専門医などの医療機能情報を他の医療機関とも容易に比較が可能となるよう提供する手段を工夫することが必要である。
 また、がん患者が医療機関を選択する際に役立つよう、自治体等のホームページ等において、地域において利用可能な医療機関の医療機能情報について、提供することが必要である。
 また、がん診療に関する医学情報の提供について、国立がんセンター等のホームページによる普及や、厚生労働科学研究推進事業による普及啓発の取組を強化することが必要である。
 また、がん患者及びその家族の不安や疑問に適切に対応できるようがん診療に携わる医療機関(特に地域がん診療拠点病院)において、医療相談室の設置や相談の充実などの取組が必要である。

(2)医療関係者に対する情報の提供
 医療関係者が病病連携及び病診連携を行う際に役立つよう、他のがん専門医療機関の医療機能情報について、容易に得られるよう手段を工夫する必要がある。
 また、医療関係者に対し、標準的な医療が提供できるよう診療ガイドライン等を策定し、その普及を図るとともに、最新の研究成果等の情報についても、学会活動やITを活用した幅広い普及や職能団体による研修事業への反映などが必要である。



V がん医療水準の均てん化に向けての提言
   国民が全国のどこに住んでいても、がんの標準的な専門医療を受けられる体制を整えることが喫緊の課題となっており、そのための具体的方策を提言することが、本検討会に課された使命である。
 このため、その第一歩として、現在の地域がん診療拠点病院をその診療・教育研修・研究・情報発信機能に応じて階層化し、役割分担を明確化するとともに、それを踏まえた診療連携、教育研修等のためのネットワークを構築するように見直すことを中心的な柱に据え、(1)がんの専門医の育成、コメディカルスタッフの育成、がんの早期発見に係る一般医の資質向上といった人材育成に係る課題、(2)がん専門医療施設の施設・設備、ネットワーク、病病連携・病診連携といった医療機関のネットワーク化に係る課題、(3)がん登録の整備、診療情報の提供・普及といった情報に係る課題に対し、以下のような具体的解決方策を提言するものである。

1.がんの専門医等の育成について
 (1)大学講座の設置
 特に不足が指摘されている化学療法、放射線療法の専門医育成のためには、大学の医学教育において、化学療法や放射線療法についての基本的な知識教育が行われ、卒後さらに大学付属病院等における臨床教育が行われることが望ましい。このため、大学において、がん診療全般を横断的に見ることのできる化学療法及び放射線療法などを専門とする講座の設置等、教育体制の整備に努める必要がある。

 (2)がんの専門医の認定基準
 がんの診断・治療技術の進歩に伴って、時代とともにがんの専門医が備えるべき能力の基準は変化していくことが予想される。こうした診断・治療技術の開発や診断・治療成績の向上を追求するため、医師等の専門家でつくる学会は、絶えず研鑽を行う場を提供するとともに、専門医の認定も行っていることから、がんの専門医認定に関係する学会等が協力して、専門医の資質を一定以上に保つよう共通の基準を作る必要がある。

 (3)がんの専門医の育成方策
 がんの専門医の育成において当面取り組む方策としては、特に化学療法に関し、少なくとも、抗がん剤の標準的治療を正しく実施することができ、かつ治療に伴う副作用に適切に対処できる能力を持った医師を育成し、地域がん診療拠点病院に配置することが必要である。将来的には、臨床試験の実施を含め化学療法に通じた専門医を育成し、地域がん診療拠点病院に配置することが重要である。
 また放射線療法の専門医育成に関しては、少なくとも、放射線治療計画を適切に立てることができ、かつ治療効果及び副作用を予測することができる能力を持った医師を育成し、放射線治療装置を十分に備えた地域がん診療拠点病院に集中的に配置することが重要である。
 このようながんの専門医の育成を推進するためには、現在の地域がん診療拠点病院制度の見直しによるネットワーク(後述)を活用して、国立がんセンターを中心とした効率的・効果的な研修を行うことが必要である。それとともに、学会が系統的カリキュラムに基づく教育セミナーを実施し、基本的知識や最新の研究成果の普及を行うことも重要である。
 また、国立がんセンター等の研修の円滑な実施や地域がん診療拠点病院に対する指導体制の充実などの観点から、特定機能病院を地域がん診療拠点病院制度に位置付けることが重要である。

(1) 国立がんセンターにおける化学療法及び放射線療法に係る指導者研修コース(仮称)を新設(都道府県がん診療拠点病院(仮称)の指導的立場の医師を対象とした3ヶ月又は6ヶ月の研修)すること。

(2) より機能の優れた都道府県がん診療拠点病院(仮称)における化学療法及び放射線療法に係る指導者研修コース(仮称)を新設(都道府県がん診療拠点病院(仮称)、地域がん診療拠点病院の指導的立場の医師を対象とした3ヶ月又は6ヶ月の研修)すること。

(3) 都道府県がん診療拠点病院(仮称)における化学療法及び放射線療法に係る短期研修コースを新設(厚生労働科学研究事業等による地域がん診療拠点病院のがん治療の中心となる医師を対象とした研修の支援)すること。

 また、がんの専門医の適切な配置状況の把握がなされていない現状から、各診療科における専門医の現状について登録、公表する取組を進めることが必要である。

(1) 国立がんセンターにおける既存の専門修練医コースの修了者を都道府県がん診療拠点病院(仮称)等に配置するための方法を検討すること。

(2) より機能の優れた都道府県がん診療拠点病院(仮称)におけるレジデント修了者を他の都道府県がん診療拠点病院(仮称)等に配置するため、募集方法及び研修内容を検討すること。

 (4)がん医療を支えるコメディカルスタッフの育成方策
 がん医療において、チーム医療による対応の必要性が増しており、コメディカルスタッフもますます専門的知識・技術の修得が求められている。このため、学会の連携、学会と職能団体の連携及びがん専門医療機関による統一的なカリキュラムに基づく専門研修を提供することが重要である。

(1) 国立がんセンターにおけるコメディカルスタッフ(診療放射線技師、看護師、がん登録実務者等)を対象とした研修コースを拡充(都道府県がん診療拠点病院(仮称)のコメディカルスタッフを対象としたがん診療に関する高度な研修)すること。

(2) 国立がんセンターなど国は、都道府県がん診療拠点病院(仮称)等がん専門医療機関の薬剤師を対象とした研修コースを設置(平成17年度に創設されるがん専門薬剤師認定制度に対応するため、指導的立場のがん専門薬剤師を育成)するとともに、長期間にわたる系統的な研修により、抗がん剤調製やがん薬物療法、緩和医療など高度な技能と知識を持つ専門薬剤師を育成すること。

(3) 都道府県がん診療拠点病院(仮称)におけるコメディカルスタッフ(診療放射線技師、看護師、がん登録実務者等)を対象とした短期研修コースを新設(厚生労働科学研究事業等による地域がん診療拠点病院のコメディカルスタッフを対象とした研修の支援)すること。

 また、以上のようながんの専門医等の育成を着実に推進するため、育成に携わるがん専門医療機関の指導体制の強化方策も検討する必要がある。

2.がんの早期発見に係る体制等の充実
 がんの早期発見のためには、検診によりがんと疑われたり、日常診療の場において一般医によりがんと疑われることにより、可及的すみやかに、がん専門医療機関に紹介されることが重要である。
 がん検診体制の充実に当たっては、マンモグラフィー等のハードと検診に携わる医師及び技師等のソフトの両面にわたり全国的に広く体制が整備される必要がある。さらに、いわゆる「がん検診の受けっぱなし」を無くすため、検診後に精密検査が必要な人を地域のがん専門医療機関に確実に受け渡せるよう、検診実施機関等と地域がん診療拠点病院等の間の連携が重要である。また、がん検診の重要性に関し、国民に対する普及啓発を強化する必要がある。
 がんの診療技術は日進月歩であるため、がんの早期発見に係る一般医も最新の診療技術の進歩に関する基本的な知識を修得することが求められるが、医療現場は多忙をきわめ、一般医が最新のがんの診断・治療法に関する情報を系統的にまとまって修得する機会はあまり多くない。したがって、学会や職能団体による取組の強化に加え、二次医療圏でがん医療の中心的役割を担っている地域がん診療拠点病院が一般医に対して研修の機会を積極的に提供することが重要である。

3.医療機関の役割分担とネットワーク構築について
 (1)地域における医療機関連携
(1)地域がん診療拠点病院制度の見直し
 日常の生活圏域の中で、質の高いがん医療を受けることができる体制を確保する観点から、二次医療圏に一ヶ所程度を目安に整備することとしている地域がん診療拠点病院の整備を促進するため、以下の方針で制度を見直すことが必要である。
(ア) 指定要件をできる限り数値を含めて明確化する。
(イ) 地域における診療・教育研修・研究の核となっており、地域がん診療拠点病院に対する指導的な役割などが期待できる特定機能病院を指定の対象に含める。
(ウ) 地域がん診療拠点病院を、診療・教育研修・研究・情報発信機能に応じて2段階に階層化(地域がん診療拠点病院、都道府県がん診療拠点病院(仮称))し、役割分担を明確化するとともに、それを踏まえた診療連携、教育研修等のネットワークを構築する。
 地域がん診療拠点病院の主な機能として求められるのは、ア)我が国に多いがんの早期診断・治療の提供、イ)地域の医療機関からの紹介患者の受け入れ及び緩和医療の提供、ウ)地域の医療従事者に対する教育・研修の実施、エ)臨床試験への協力(例えば第III相試験)、オ)標準様式に基づく院内がん登録の実施である。
 また、都道府県がん診療拠点病院(仮称)の主な機能として求められるのは、ア)我が国に多いがんの進行期の標準的治療の提供、イ)集学的治療の提供、ウ)地域がん診療拠点病院に対する教育・研修の実施、ウ)臨床試験の実施(例えば第II/III相試験)、エ)標準様式に基づく院内がん登録の実施である。
 さらに、より機能の優れた都道府県がん診療拠点病院(仮称)の主な機能として望ましいのは、ア)稀ながんの診療、我が国に多いがんの高度な技術を要する治療の提供、イ)高度先進医療の提供、ウ)都道府県がん診療拠点病院(仮称)に対する教育・研修の実施、エ)臨床試験の実施(例えば第I/II相試験)、オ)標準様式に基づく院内がん登録の実施である。
(エ) 医療相談室の機能の強化
(オ) 緩和医療の充実、医療相談室の充実、診療成績の公表など地域がん診療拠点病院を利用する患者に資する体制の確保を推進するため、診療報酬等のインセンティブが働くよう適切な仕組みを検討する。
(カ) 指定については、更新制を導入する。

(2)地域がん診療拠点病院ネットワークの構築
 新たな地域がん診療拠点病院制度に参加するがん専門医療機関相互の間で、国及び都道府県レベルにおけるネットワークを形成する。(国立がんセンター、都道府県がん診療拠点病院(仮称)、地域がん診療拠点病院)
 新たな地域がん診療拠点病院制度のネットワークの機能としては、診療、教育研修、院内がん登録、情報、臨床研究に係る機能を持つこととする。
 また、地域がん診療拠点病院の診療レベルを向上させるため、病理診断や画像診断等に係る診療支援機能も重要である。
 さらに、地域がん診療拠点病院は、地域の一般病院、診療所、訪問看護ステーション及び検診機関と連携するものとする。
 また、地域がん診療拠点病院においては、セカンドオピニオンの提供など、地域医療機関との連携を図ることが重要である。
 こうした地域がん診療拠点病院のネットワークの構築により、稀ながんの治療や我が国に多いがん(肺、胃、肝、大腸、乳がん等)の進行期において治療成績に大きな差が出るような高度の技術を要する治療に当たっては、各地域において、適切な病病連携、病診連携により当該治療法を専門的に行っているがんの専門医のもとに患者を集約し、必要な治療が済んだ後は、再び病病連携、病診連携により患者の身近な「かかりつけ医」で治療が継続されるよう、連携体制を整えることが可能となる。
 なお、臨床研究を巡るネットワーク構築に当たっては、質の高い臨床研究を実施するため、そのインフラ整備も重要である。

 (2)全国的な医療機関連携
 国は、地域がん診療拠点病院のネットワーク機能が十分に果たせるように、地域がん診療拠点病院の全国連絡協議会を早急に設けることが必要であり、各都道府県は、都道府県レベルの連絡協議会を設けることが必要である。
 また、全国がん(成人病)センター協議会加盟施設は、新たな地域がん診療拠点病院制度の中にすべて位置付けることとする。
 なお、がん政策医療ネットワークは、統一的な方針で事業を実施しやすいという特徴を活かし、がん医療における均てん化のための連携、カンファレンス等のモデル的な事業を試行する等の役割が期待できることから地域がん診療拠点病院制度と整合性をもって位置付けることが求められる。

4.がん登録制度
 標準登録様式に基づく院内がん登録のデータが、少なくとも地域がん診療拠点病院において整備されると、二次医療圏において代表的ながん専門医療機関の治療成績等の正確な比較が全国的に可能になり、医療関係者が自らの診療レベルを客観的に把握することが可能になるとともに、がん患者にとっても大きな福音になることが期待されるため、院内がん登録の推進は重要である。そのため、一定の基準を満たす院内がん登録については医療機関に対するインセンティブを検討する。
 さらに、こうした精度の高い院内がん登録データを、地域がん登録事業に提供することにより、地域がん登録事業の精度の飛躍的向上につながることが期待できるため、新たな地域がん診療拠点病院制度のネットワーク機能を活用して、院内がん登録の標準登録様式の普及を促進することが重要である。
 また、現在、診療レベルの評価に用いられている5年生存率の他に、がんの診療レベルを多面的に総合的に評価する方法を確立し適切に公表することを検討する。 地域がん登録事業については、その普及を図って行くため、がん登録制度の法律上の位置付けの在り方も検討するとともに、国による地域がん登録事業に対する支援を強化(人口動態統計、住民票照会の利用の円滑化等)することや登録方式の標準化を推進することも重要である。なお、5年以上経過した患者に限らず登録患者全員を追跡することにより、最新のがん診療を反映した生存率を計測することも可能となる。

5.情報の提供・普及
 がん治療等に関する情報が溢れている今日にあって、国民にとってはかえって正しい情報を見分けることが困難になっており、全国レベルで比較可能な診療成績等に関する正しい情報が求められている。
 まずは、地域がん診療拠点病院において、標準様式に基づく院内がん登録の整備を早急に進め、全国レベルで比較可能な治療成績のデータを整備した上で、一般国民及び医療関係者に対し、正確な情報を提供できるようにすることが重要である。特に一般国民に対する情報提供に当たっては、国民が誰でも簡単にがんに関する適切な情報が得られるという観点が重要である。

 (1)一般国民に対する正しい情報の提供
 全国的に比較可能な診療成績のデータの整備には時間がかかるため、当面は、各がん専門医療機関の医療機能情報(施設、設備、症例数、専門医、治療成績等)のうち、他の医療機関と比較が可能で提供可能な正しい情報について、地域がん診療拠点病院の全国連絡協議会が中心となって相互に比較できるようにするなどわかりやすい提供をすることが必要である。
 自治体等のホームページ等において、地域において利用可能な医療機関の医療機能情報について、容易に比較できる形で提供することも求められる。
 また、がん患者が医療機関を受診する際の参考となるよう地域がん診療拠点病院の標榜を可能とするとともに、患者及びその家族の不安や疑問に適切に対応できるよう、地域がん診療拠点病院等に設けられている医療相談室の機能を強化することが必要である。
 がん診療に関する医学情報の提供については、国立がんセンター等のホームページによる普及が行われている他、厚生労働科学研究推進事業により最新の治療情報等をわかりやすく提供するためのシンポジウム等が行われているが、これら普及啓発の取組を強化することが重要である。

 (2)医療関係者に対する情報の提供
 がん専門医療機関の医療機能情報について、地域がん診療拠点病院等の医療関係者が病病連携及び病診連携を行う際に役立つよう、地域がん診療拠点病院の情報ネットワークを構築する必要がある。
 医療関係者に対する最新のがん診療技術情報の提供に関して、簡便に正しい情報が系統的に入手できるよう厚生労働科学研究及び学会による診療ガイドライン等の作成・普及及び国立がんセンター等のホームページによる診療ガイドライン等の普及を強化するとともに、学会や職能団体による研修等の取組も重要である。また、国立がんセンターと地方の中核的ながんセンターをつないでいるがん診療情報ネットワークを拡充し、地域がん診療拠点病院とのカンファレンス等を通じた診療技術情報の普及を図る。

 (3)がん情報センター(仮称)の設置
 国は、これまでもがんの予防・研究・医療に係るあらゆる機会を通じて、一般国民や医療関係者に対する情報発信等を行ってきたところであるが、患者に有益な情報発信の一層の強化が求められていることから、地域がん診療拠点病院の医療機能情報の収集、分析、発信の役割も担うがん情報センター(仮称)の設置の検討も必要である。



VI おわりに
   本報告書は、「がん医療水準の均てん化に関する検討会」において、がん患者の代表の方々からの意見聴取も踏まえ、がん医療に関する有識者による議論が重ねられた成果を取りまとめ、国民が全国のどこに住んでいても、日常の生活圏域においてがんの標準的な専門医療を受けられる体制を確立することを目指し、できる限り具体的な方策につき提言を行ったものである。これらの提言の中には専門医等の育成のための研修機会の拡充など短期的に取り組まなければならない課題と、大学の講座設置のように中長期的に取り組まなければならない課題があるが、着手できるものから速やかに取り組んでいく必要がある。
 いずれにせよ、我が国において「がん医療水準の均てん化」を一日でも早く達成するためには、がん医療に関わる行政、医療機関、学会などのあらゆるレベルで、「がん医療水準の均てん化」に向けた不断の努力が求められるものである。



別添1

関係機関それぞれが果たすべき主な役割


○国の役割
 1. 地域がん診療拠点病院制度の見直し
  1) 地域がん診療拠点病院制度の見直し(機能分化、ネットワークの構築、特定機能病院を指定対象に包含、地域がん診療拠点病院の指定にインセンティブが働くような仕組みの構築等)
  2) 地域がん診療拠点病院制度の医療計画への位置付け
  3) 地域がん診療拠点病院の全国連絡協議会の設置
  4) 地域がん診療拠点病院の標榜化
  5) 地域における質の高いがん医療の効率的な提供体制の確立に資する体制整備を行う医療機関に対する助成の検討
 2. 専門医等の育成
 大学におけるがん診療全般を横断的に見ることのできる化学療法及び放射線療法などを専門とする講座設置等、教育体制の整備の促進
 3. がん登録の推進
  1) 院内がん登録の整備促進のための医療機関に対するインセンティブの検討
  2) 地域がん登録事業に対する支援の強化(人口動態統計や住民票照会の利用の円滑化等)
  3) がん登録制度の法律上の位置付けの在り方の検討
 4. 情報提供の推進
  1) がん診療情報ネットワーク事業の拡充
  2) がん診療レベルの評価方法及び適切な公開の検討
  3) がん診療に関する最新の研究成果についての普及啓発の強化
  4) がん情報センター(仮称)の設置の検討
 5. がん検診体制の充実

○国立がんセンターの役割
 1. 地域がん診療拠点病院の指導
 地域がん診療拠点病院のネットワーク(診療、教育研修、院内がん登録、情報、臨床研究)の運営の指導
 2. 専門医等の育成
  1) 地域がん診療拠点病院の機能向上のための専門医等の研修の実施
  2) 専門修練医コースの修了者の都道府県がん診療拠点病院(仮称)等への配置方策を検討
 3. がん登録の推進
  1) 地域がん登録の登録方式の標準化の推進及び全国罹患率の推計
  2) 院内がん登録の登録方式の標準化の推進
  3) 院内がん登録及び地域がん登録の実務者に対する研修の推進
 4. 情報提供の推進
  1) 地域がん診療拠点病院の院内がん登録データの全国連絡協議会への集約、分析及び適切な公開
  2) 質の高いがん統計データ(死亡、罹患、生存)の提供
  3) ホームページ等による情報提供体制の強化

○都道府県の役割 
 1. がん医療に係る医療計画の作成
  1) 地域における質の高いがん医療の効率的な提供体制の確立のための具体的な目標を設定し、その達成に向けたがん医療施設・設備の整備計画につき記載
  2) 地域において不足する医療機能については、広域的な連携による確保も含め、医療施設の診療レベルに応じた役割分担と連携により確保するための具体的方策につき記載
 2. 地域がん診療拠点病院の整備の促進
  1) 二次医療圏に1ヶ所程度の速やかな整備の促進
  2) 地域における質の高いがん医療の効率的な提供体制の確立に資する体制整備を行う医療機関に対する助成の検討
  3) 都道府県レベルの地域がん診療拠点病院の連絡協議会の設置
 2. 専門医等の育成
 地域がん診療拠点病院の専門医等の研修に対する協力
 3. 地域がん登録の推進
 地域がん診療拠点病院の院内がん登録と連携した地域がん登録の推進
 4. 情報提供の推進
 地域において利用可能な医療機関の医療機能情報等の提供の実施

○地域がん診療拠点病院の役割
 1. 地域において質の高いがん医療を効率的に提供するための診療機能の向上
 2. 地域において質の高いがん医療を効率的に提供するための病病連携・病診連携の確実な実施(がん検診実施機関等、かかりつけ医、一般病院及び都道府県がん診療拠点病院(仮称)等との連携)
 3. 標準様式に基づく院内がん登録の推進及び地域がん診療拠点病院の全国連絡協議会への院内がん登録データの提出
 4. 地域の一般医に対するがんの早期発見及び早期治療に係る教育研修の実施
 5. 医療相談室の機能の強化

○特定機能病院の役割
 1. 新たな地域がん診療拠点病院制度への積極的な参加
  1) 都道府県がん診療拠点病院(仮称)としての役割の期待
  2) 国立がんセンターにおける指導者研修コース(新設)への参加
  3) 地域がん診療拠点病院の専門医等に対する研修の実施
  4) 地域がん診療拠点病院の専門医等が研修に参加する場合の代診医等の補充への協力
 2. 標準様式に基づく院内がん登録の推進
 3. 医療相談室の機能の強化

○学会の役割
 1. がんの専門医認定に関係する学会等が協力して、専門医の資質を一定以上に保つよう共通の基準を作成
 2. がんの専門医の登録、公表の検討
 3. がんの専門医等を育成するための研修の推進
 4. 職能団体等との連携によるコメディカルスタッフ育成のための統一的なカリキュラムの作成及び研修の実施
 5. がんの早期発見に係る一般医の資質向上のためのセミナーなど取組の強化
 6. 診療ガイドライン等の作成・普及のための取組の強化



別添2

地域がん診療拠点病院制度の見直しの方向性


 1. 指定要件をできる限り数値を含めて明確化する。
 2. 地域における診療・教育研修・研究の核となっており、地域がん診療拠点病院に対する指導的な役割などが期待できる特定機能病院を指定の対象に含める。
 3. 地域がん診療拠点病院を、診療・教育研修・研究・情報発信機能に応じて2段階に階層化(地域がん診療拠点病院、都道府県がん診療拠点病院(仮称))し、役割分担を明確化するとともに、それを踏まえた診療、教育研修、院内がん登録、情報、臨床研究に係るネットワークを構築する。
 地域がん診療拠点病院の主な機能として求められるのは、ア)我が国に多いがんの早期診断・治療の提供、イ)地域の医療機関からの紹介患者の受け入れ及び緩和医療の提供、ウ)地域の医療従事者に対する教育・研修の実施、エ)臨床試験への協力(例えば第III相試験)、オ)標準様式に基づく院内がん登録の実施である。
 また、都道府県がん診療拠点病院(仮称)の主な機能として求められるのは、ア)我が国に多いがんの進行期の標準的治療の提供、イ)集学的治療の提供、ウ)地域がん診療拠点病院に対する教育・研修の実施、ウ)臨床試験の実施(例えば第II/III相試験)、エ)標準様式に基づく院内がん登録の実施である。
 さらに、より機能の優れた都道府県がん診療拠点病院(仮称)の主な機能として望ましいのは、ア)稀ながんの診療、我が国に多いがんの高度な技術を要する治療の提供、イ)高度先進医療の提供、ウ)都道府県がん診療拠点病院(仮称)に対する教育・研修の実施、エ)臨床試験の実施(例えば第I/II相試験)、オ)標準様式に基づく院内がん登録の実施である。
 4. 医療相談室の機能の強化
 5. 地域がん診療拠点病院制度に対するインセンティブが働くような仕組みを作る。
 6. 指定については、更新制を導入する。



1 化学療法とは、抗がん剤(分子標的治療薬やホルモン剤を含む)を用いた治療法のことを言う。
2 がんを領域として含む各学会で認定される専門医を「がんの専門医」という

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