諸外国におけるセクシュアルハラスメントに係る規制(未定稿)
  アメリカ EU フランス
規制の根拠 ○法律上セクシュアルハラスメント(以下「SH」という。)に関する明文の規定なし
○公民権法第7編第703条による対応
○EEOC(雇用機会均等委員会)ガイドライン

・公民権法703条(性別を理由として雇用を拒否し、解雇し、雇用に関する報酬、条件等について差別待遇を行うことの禁止。)に規定する性差別にSHが含まれると解釈。
○男女均等待遇指令(76/207/EEC)

・SHを性差別とみなす旨規定(第2条第3項)(2002年改正により追加)。
○労働法典

・SHの被害者の雇用を私法的に保護するとともに、SHの被害者に対する雇用上の不利益取扱いを刑事的にも処罰。
SHの定義 ○EEOCガイドライン(29 CFR 1604.11)(1980)
・歓迎されない性的接近、性的好意の要求その他の性的性質を有する口頭又は身体上の行為は、以下のような場合、SHを構成する。
(1)このような行為への服従が、明示的であれ、黙示的であれ、個人の雇用条件を形成する場合
(2)個人によるこのような行為への服従又は拒絶が、その個人に影響する雇用上の決定の基礎として用いられる場合。
又は、
(3)このような行為が、個人の職務遂行を不当に阻害し、又は脅迫、敵意、若しくは不快な労働環境を創出する目的又は効果を持つ場合。
○男女均等待遇指令
・人間の尊厳を侵害する目的を持つ、またはそうした効果を伴う、あらゆる形の好ましくない、わいせつな言葉、言葉以外の行為、または身体に接触するなどの行為が発生する場合。特に、威圧的、敵対的、下劣で侮辱的または不快な環境を作り出している場合(第2条第2項)。

(参考:男女均等待遇指令では、「ハラスメント」を「性別に関連し、人間の尊厳を侵害し、威圧的、敵対的、下劣で侮辱的または不快な環境を作り出す目的を持つ、またはそうした効果を伴う、好ましくない行為」として、SHと別に規定(第2条第2項)。)
○労働法典
・使用者、その代理人その他の者が、その職務上与えられた権力を濫用して自分または第三者のための性的利益を得るため労働者に対して、命令、脅迫、強制などの圧力を加え、ハラスメントをした場合であって、当該労働者がハラスメントを拒絶したこと等によって、懲戒等を行う場合。

(参考:労働法典ではSHとは別に労働者のモラル・ハラスメント(労働者の権利若しくは尊厳を毀損し、身体的若しくは精神的健康を悪化させ、又は職業的将来を害するおそれのある、労働条件の破損を目的とし若しくはその効果を有するもの)からの保護及び予防が規定されている。)
使用者の義務

責任
○連邦最高裁判例
(1)行為者が管理職上司の場合
(1)部下に対する管理職上司のSHについては、使用者は認識していたか否かに関わらず、又、自らの過失の有無を問わず、原則として責任を負う。
 しかし、
(2)当該上司の人事権限が行使されなかった場合、すなわち雇用上の具体的な不利益が発生しなかった場合には、使用者に積極的抗弁の余地が認められる。
 ただし、この積極的な抗弁は、(ア)使用者がSHの防止措置や迅速・適切な是正措置をとるべく合理的な配慮を行っていた場合で、にもかかわらず(イ)被害者が使用者の用意した防止・是正のための手続きを合理的理由なく利用しなかった場合にのみ認められる。

(2)行為者が人事権を有しない同僚や部下、顧客等の場合
・使用者自身が当該SHの事実を認識していたか、または認識し得たにもかかわらず、紛争の解決処理のために迅速・適切な措置を講じなかった場合に責任を問われる。
○男女均等待遇指令

・均等待遇原則とは、直接または間接を問わず、性を理由とするいかなる差別もあってはならないことを意味する(第2条第1項)。
 ハラスメント及びSHは性差別とみなし、したがって禁止することとする。かかる行為に対する拒絶や服従を本人に影響を与える決定の根拠としてはならない(第2条第3項)。

・加えて、国内法等に則り、使用者および職業訓練機会の担当者が職場におけるあらゆる形の性差別、特にハラスメントとSHの防止策を講じることが奨励されている(第2条第5項)。
○労働法典
・労働者がSHを拒否したこと等を理由とする労働者の懲戒・解雇は禁止、無効(L.122-46条)。

・労働者がSHを受けたこと、拒否したこと、証言したこと、供述したことを採用、報酬、教育、配属、資格、職務等級、昇進、異動、解約、労働契約更新又は懲戒に関して考慮することの禁止(L.123-1条)。※違反に対しては、拘禁、罰金(L.152-1-1条)。

・労働者がSHを拒絶したこと等を理由として懲戒・解雇を受けない旨、加害者が懲戒を受ける旨を就業規則に記載することの義務付け(L.122-34条)。

・加害者に懲戒処分を課すことやSHを予防するために必要な全ての準備を行うことを使用者に義務付け(L.122-47条、L.122-48条)。

・労働法典L123-1条の条文を職場等で掲示することを義務付け(L123-7条)。
参考文献) 男女共同参画諸外国制度等調査研究報告書−アメリカ、フィリピン、韓国−(平成15年6月 内閣府男女共同参画局)
セクシュアル・ハラスメントの法理(山崎文夫)

トップへ