資料4


救急医療に関する「医師の需給」について


平成17年4月6日
日本救急医学会
監事 島崎 修次
[杏林大学医学部救急医学教授]

 厚生労働省「医師の需給に関する検討会」報告書(平成10年5月15日)において、現在の医師数は全体として過剰な状況に至っていないものの、将来的には供給医師が必要数を上回ると報告されております。しかしながら、昨今、特定の診療科における医師の不足感が強く、特に救急領域での医師不足は深刻です。そこで、救急に関わる「医師の需給」に関して現状を確認すべく、全国救命救急センター、並びに全国臨床研修指定施設へアンケート調査を行いました。調査結果では救命救急センターと臨床研修指定施設それぞれでの救急科専門医不足が明らかとなっております。
 「医師の需給に関する検討会」報告書には、平成29(2017)年頃から供給医師数が必要医師数を上回り、平成32(2020)年には約6,000人、平成37(2025)年には約14,000人の医師が過剰になるとあります。また、救急医療に従事する医師数については、専従医師を二次医療圏毎に15人配置することとし、平成37(2025)年には全国で5,000人の配置を見込むとも報告されております。
 しかし、現在の救急科専門医数は1,867名、認定医を含めても約2,500名に対し、指導医・専門医他、救急専従医師の必要数は、救命救急センター1施設に対し25名で試算すると約5,000名となり、20年後の変動数を鑑みても、約2,500名が不足します。
 また、ER型施設で医師1人に対し365日24時間体制40h/weekで必要医師数を試算すると、1施設あたり必要医師数が5名となり、約500施設ある臨床研修指定施設でERを行うには、約2,500名の救急科専門医が必要となります。
 上述のように、救急医療の現場では、救急科専門医が少ない上に業務が多忙であることにより、燃え尽き症候群も多く慢性的なマンパワー不足が続いており、このままでは救命救急センターの運営に多大な影響を及ぼすと思われます。診療の安全性からも、また、本邦における医療供給体制全般を考えても、救急医の十分な人員の要請と確保は極めて重要であります。



「医師の需給に関するアンケート調査結果」


救命救急センターのある臨床研修指定施設
送付数  174施設
回収数  72施設
回収率  41.38%

救命救急センターのない臨床研修指定施設
送付数  356施設
回収数  81施設
回収率  22.75%

臨床研修指定施設(全体)
送付数  530施設
回収数  153施設
回収率  28.87%



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【資料−5】

「医師の需給に関するアンケート」における主な意見

1. 現在、救急科専門医が不足のため、救命救急専任医として各科の医師が診療、教育についている。
2. 夜勤帯は重症例搬入によりマンパワー不足を感じ、翌日の勤務に引き続く勤務(救急隊、学生の指導含め)に疲弊感がある。
3. 現在救急科専門医は一部の大都市や病院に集中しているように思える。
4. 業務が多忙であることにより、燃え尽き症候群も多く、慢性的な医師不足が続いている。
5. 今後、ERとICUは分離する方向へ進むと思うが、臨床・教育の面で連携を図るべく、充実させる必要がある。国策として充分な人員(救急科専門医)の配置がかなうように検討していただきたい。
6. 救急科専門医だけでなく、救命救急センターにおいて研修医を直接指導する中堅クラスの医師も必要である。
7. 救命救急センターでない救急施設では人員確保が極めて困難。二次救急の現状が殆んど理解されていないので、少なくとも「救急科」が標榜できるよう関係省庁へ働きかけてほしい。
8. 救急科専門医はいないが、内科系、外科系それぞれの経験5年以上の医師が当番制で24時間救急対応の体制をとっている。(かなり業務負担は大きい)当院の体制は救急科専門医がいない地方病院では実際的なものといえる。
9. 医師も労働者であるという考えにたつと、当然、シフト勤務となり現在の3倍の人員が必要となる。更に教育を考えると3〜4倍の人員が望ましい。
10. 救急症例を診察するのに一番重要なのはマンパワーである。また、当直体制も今後労基法上、今のままではやっていけないと思う。どうしても救急医の確保が必要である。
11. 臨床研修医制度の余波の為、レジデント医師(卒後2年目ないし3年)が配置されず、スタッフが雑用等、代役を勤めているのも悩みの種である。
12 救急は救急科医師だけがする仕事ではないので、各科医師もある一定時期だけでも救急に従事するように政策的に誘導してほしい。
13. 救急車の台数は毎年増加の一途だが、燃え尽きた救急医の退職、市内二次救急病院の診療型病院への移行などにより、われわれの負担はますます重くなっている。
14. 臨床研修制度の改革に伴い、それ以前にいた救急部医師が引き上げになり、現在は専属1名のみで日当直回数は、年に100回を超える。それに加えて消防・研修医の指導業務も増え、深刻な事態となっている。
15. 本院でいつも問題になるのが救急担当の当直医不足である。輪番日には100名以上の救急患者が来院し、救急担当中は休みを取れず、いつも安全性について心配している。
16. 専門分化している現代、ジェネラリストとしての救急医、総合診療医は特に地方において圧倒的に不足している。
17. 現在は専門各科が協力して救急、研修医の指導にあたっているが、専属の救急医がいないと十分な継続統一的な指導ができない。
18. 医師の需給を考えるなら既存科の「既得権」的な人員配分を打破していただきたい。診療報酬で誘導するなり、教育プログラムの定員制で誘導するなり方法はあると思う。
19. 救急医療に関する勤務体制、賃金体制、研究業績重視の風潮などを考えると、なりたいと思う医師は少ないと考える。医師の数だけでなく抜本的な構造改革・意識改革が必要であり、最短でも20年近い年月がかかるであろう。
20. 臨床研修システム変更後、各病院で救急医の需要が高まり、より一層各病院の救急医不足が深刻になっている。
21. 多くの勤務医は救急を避けたいと考えている。救急専門医育成だけの問題思考では、解決できない状況である。あふれる一次時間外患者、対応をどう考えておられるのか、また、そこに含まれる真の重症患者への対応へ苦労する現場への指針を示していただきたい。
22. 一次、二次救急に関わる救急専門の指導医はほぼ皆無であり、行政、及び学会で早急に要請をする必要がある。
23. 当教室は10ヶ所の救命救急センターのスタッフを調整しているが、絶対的に救急科専門医の数が足りない。専門医を目指しても激務のせいでやめていく者も多く、このままだと将来救命センターが成り立たなくなる可能性がある。
24. 近年、救急医療一般に興味をもつ、非救急科専門医が増えてきており、これらの医師に対し、救急医療標準化の教育をバックアップするシステム体制を何らかの形で作って頂きたい。



【追加資料】

日本専門医認定制機構加盟学会
基本領域学会の会員数及び専門医数

【平成16年度】

学会名 学会会員数 専門医数
日本内科学会 88,493 7,698
日本小児科学会 18,262 10,465
日本皮膚科学会 9,893 4,719
日本精神神経学会 9,698 0
日本外科学会 39,080 9,586
日本整形外科学会 21,605 14,828
日本産科婦人科学会 15,834 11,609
日本眼科学会 13,615 8,741
日本耳鼻咽喉科学会 10,688 8,303
日本泌尿器科学会 7,387 5,647
日本脳神経外科学会 7,971 5,798
日本医学放射線学会 7,620 4,402
日本麻酔科学会 9,133 5,343
日本病理学会 3,995 1,843
日本臨床検査医学会 2,506 502
日本救急医学会 8,718 1,867
日本形成外科学会 4,089 1,440
日本リハビリテーション医学会 9,651 964



【追加資料-2】

平成17年3月17日

救命救急センター
臨床研修指定病院
担当者 各位

有限責任中間法人日本救急医学会
代表理事 山本 保博


「医師の需給」に関するアンケートのご依頼について

拝啓 早春の候、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて、厚生労働省では、「医師の需給に関する検討会」報告書(平成10年5月15日)において、現在の医師数は全体として過剰な状況に至っていないものの、将来的には供給医師が必要数を上回ると報告されています。しかしながら、昨今、特定の分野(特定の地域、特定の診療科、特定の時間帯)における医師の不足感が強いことから、医師の養成・就業の実態、地域や診療科による偏在等を総合的に勘案し、平成17年度中を目途に医師の需給見通しの見直しが検討されております。〔医師の需給に関する検討会(座長:独立行政法人国立病院機構理事長 矢崎義雄先生)〕
 このことについて、4月6日(水)に第3回「医師の需給に関する検討会」が予定され、厚生労働省医政局医事課より、救急医の医師数不足を耳にしているが救急に関わる「医師の需給」に関し現状を説明していただきたいとの依頼がございました。
 つきましては、突然のご依頼で大変恐縮でございますが、同封のアンケート用紙にご記入いただき、日本救急医学会事務所へ3月28日(月)までにFAXにてご返送いただきたくお願い申し上げます。




 なお、設問(2)につきましては、卒後医師臨床研修における必修救急研修カリキュラムに義務づけられているプライマリーケアを含むいわゆるERにおいて、研修医を救急科専門医が指導すると仮定して、ご回答ください。



 ご多忙中のところ恐縮に存じますが、ご返事賜りたくよろしくお願い申し上げます。
敬具



返信用FAX用紙

宛先 日本救急医学会事務所
(FAX 03-5840-9876)

「医師の需給」について

(1) @  貴施設は救命救急センターですか?

はい・いいえ
A  重症救急患者を診療するには救急科専門医は何名必要ですか?
 現在(   )名で(   )名不足している。

(   )名
(2) @  貴施設は臨床研修指定病院ですか?

はい・いいえ
A  (はいとお答えになった方)
 ERで研修医を指導するためには救急科専門医は何名必要ですか?

 現在(   )名で(   )名不足している。

(   )名
 (いいえとお答えになった方)
 ERで働く救急科専門医は何名必要ですか?

 現在(   )名で(   )名不足している。

(   )名

ご意見がございましたらこちらへご記入ください。







 
 施設名 ___________________

 ご記入者名 ___________________

救命救急センター、かつ臨床研修指定病院には重複していると存じますが、ご返信は1部で結構です。お手数ではございますが、日本救急医学会事務所宛に3月28日(月)までにご返信下さいますようお願い申し上げます。

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