第18回研究会(3/24)における指摘事項


3 労働関係の展開(続き)
〈服務規律・懲戒〉
 懲戒は、企業における労使間の制裁罰として、労働者に重大な不利益をもたらす処分であるため、根拠、懲戒事由の限定解釈、権利濫用法理により規制される。その中でも懲戒解雇、出勤停止、減給といった非常に不利益が大きい処分については、書面による通知は必要ではないか。
 そのような懲戒の対象となる非違行為、懲戒事由、処分の内容等の通知義務を課すことにより、不当な懲戒を抑制するインセンティブにするという意味がある。また、通知によりその後の紛争の防止にも一定の役割があるのではないか。そういった意味で、懲戒事由や処分内容について通知させることを労働契約法制で明らかにすることは非常に重要ではないか。
 使用者が通知しなかった場合の効果については、手続上重大な瑕疵であるとして無効とするという考え方がある。それも含めてこの点についてはさらに検討を深める必要がある。(土田先生)
 懲戒処分に当たって、労働者に弁明の機会を与えることを要件とするかについては、労働者が応じないために弁明できない場合も考えられることから、労働者側の対応に応じて合理的な処理ができるよう留意する必要があるのではないか。(荒木先生)
 懲戒については、懲戒解雇をした場合における退職金の不支給や減額といった問題も検討しておく必要があるのではないか。企業では懲戒解雇をした場合は当然退職金を不支給としているケースが多いと思うが、懲戒解雇が仮に有効だとしても、退職金の不支給については、退職金は賃金としての性格も持つため、在職中の勤続の価値を減殺する程度の重大な背信行為である場合にのみ退職金を不支給あるいは減額できるとして、懲戒解雇より厳しい枠をはめる裁判例がある。つまり、懲戒解雇と退職金の不支給や没収は、当然に直結するわけではないという考え方もある。その点については、労働契約法制の一つの課題として検討する必要があるのではないか。(土田先生)
 そのような裁判例においては、退職金規定の限定解釈により功労の減殺に応じた程度で退職金を支払わないことができると解釈している。ただし、そのような限定解釈がどこまで可能かという問題があり、退職金請求権自体を裁判所が自由裁量によりコントロールできるということではない。いずれにしても、退職金の不支給への対応についてはいくつかの手法があり得るため、さらに検討すべきではないか。(山川先生)

〈昇進、昇格、降格〉
 人事考課のプロセスを透明化することにより紛争が防止できる。また、評価をすることの意味は、差を付けることよりむしろ労働者を発憤させることや育成することにあるため、人事考課の結果を労働者に説明することは望ましいのではないか。ただし、法技術的には、人事考課の結果を一体どのように特定し、請求権として構成するかといった課題があるのではないか。このため、人事考課の結果を労働者に説明することを促進することについては、例えば指針等によって何らかの促進策を取ることも含めてどのような手法を取り得るかについてさらに検討すべきではないか。(山川先生)

〈労働契約に伴う権利義務関係〉
〈兼業禁止義務〉
 契約法的に説明するならば、兼業の禁止は誠実義務の内容となるのではないか。通常の誠実義務と違う点は、労働時間以外の時間に関するものであることであり、本来労働者のプライバシーに属する時間帯に一定の行動を禁止する義務は相当重いものではないか。さらに、労働者からすれば職業選択の自由との抵触という問題がある。そのような意味では、兼業制限を無制限に認める時代ではなくなってきているのではないか。兼業の禁止を定める約定や規則については、やむを得ない理由あるいは正当な理由がある場合を除いて無効とするという考え方があり得るのではないか。
 しかし、兼業を禁止することにやむを得ない理由があるケースも考えられる。例えば、労働者が全くの同業他社で兼業をすることについては、禁止することにやむを得ない理由ないし合理的な理由があるだろうし、また、トラック運転手のように兼業を制限しておかなければ場合によっては人命にかかわるような事故になりかねないケースもある。
 最近では、労災保険法に関して、二重就業における通勤災害の取扱いも検討されており、労働契約法としてもこのような対処をしていく必要があるのではないか。 実際に兼業制限に規制をかける場合に、兼業したがゆえに現実に労務提供に支障が生ずることもあるだろうが、そのような場合については、別途、人事考課や懲戒処分等で対処できるのではないか。(土田先生)
 そうすると、一方では会社から離れた時間について使用者が労働者にコントロールを及ぼすことは難しくなる。労働基準法における労働時間の通算の規定をどのように考えるか。特に、使用者が異なる場合であっても現在は労働時間を通算することとなっているが、実際にどの程度守られているのかも含めて、規制の在り方を再検討する必要が出てくるのではないか。(村中先生)
 ある使用者の下で働いて、労働時間以外の時間をどう処分するかは基本的に自由だとすれば、労働時間の通算を異なる使用者の間で行うことは矛盾している。基本的に複数の就業を自由とするならば、基本的に労働時間の通算はしないこととしないと一貫しないのではないか。
 これに対して、一使用者の下で複数の事業場において働く場合については、事業場が異なるだけで労働時間の規制を免れるのはおかしいため、労働時間の通算をすべきではないか。なお、法人格が違うことを濫用する場合があり得るので、それについてどのように対処するかという問題は残る。(荒木先生)
 兼業禁止は実務にかなり影響があるので、きめ細かく検討する必要がある。兼業禁止については実際には許可制や届出制があり、許可制については禁止に当たるかもしれないが、届出制は必ずしも禁止とはいえない。そういった具体的な議論をさらにする必要がある。(土田先生)

〈競業避止義務〉
 退職後の競業避止義務については、まず、どのような場合に認められるか、次に、競業避止義務の内容へのコントロールという二段構えのチェックがかかる。 競業避止義務の根拠については、契約上の根拠がなくても認められるという説もなくはないが、最近の学説や裁判例においては、退職後の労働者に競業避止義務を課すには労働契約、就業規則、労働協約等の根拠が必要とするものが大勢ではないか。内容面をチェックする際に、規定も何もなければコントロールのしようがないという実際的な考慮もある。裁判例の大勢を成文法化することが考えられるのではないか。(山川先生)
 退職後の労働者に対する競業避止義務について、退職に当たって個別に合意をするのであれば問題はないだろうが、就業規則や労働協約の規定の効力が及ぶかどうか、これをどのように説明するかについては、さらに検討すべきではないか。(村中先生)
 就業規則が適用されているのは在職中のみであって、退職後においては権利義務の根拠にはならないのではないかという議論があり得る。就業規則の性格をどう理解するかにもよるが、労働条件は就業規則に定めるところによるとの当事者の意思を推定するものと理解すれば、退職後の権利義務関係を規律する一定の契約として、退職後においても就業規則の当該部分につき効力が存続することはあり得る。例えば、企業年金の規定が就業規則上にある場合において、退職後もその部分については就業規則の効力は存続する。 ただし、使用者が一方的に決められる就業規則について、そのままの内容で効力を認めてよいかは別途考えるべきことではないか。(山川先生)
 競業避止義務が法的根拠によって認められた場合のコントロールについて、最近の裁判例では、退職後の競業避止義務については、根拠の面で義務が設定されたとしても、無制限に認められるわけではないという考え方になりつつあるのではないか。 競業避止義務は、秘密保持義務と異なり、一定期間競業それ自体を禁止するものであって、労働者の生活あるいは職業選択の自由に抵触する程度の高い義務である。退職後にまでそういった義務を課すことを正当化するためには、労働者の正当な利益を侵害するものであってはならないという基本的な考え方が必要ではないか。(土田先生)
 労働者の職業選択の自由と、使用者の競業を禁止する正当な利益という二つの視点から考える必要がある。つまり、自分の競争相手を制限することから、競業禁止を課すということであってはならず、それが正当な使用者の利益を守るために必要な制限であるという観点からもコントロールする必要があるのではないか。(荒木先生)
 一方で労働者側の利益があり、他方で使用者側にも守るべき正当な利益が存在することを要するというルールが最も妥当ではないか。最近の裁判例・学説において、労働者側の正当な利益、秘密やその他の使用者の正当な利益を判断する際の具体的な要素として、特に使用者側の正当な利益という観点からは、競業避止義務を課す必要性が考慮されているのではないか。
 一方、労働者側の正当な利益を侵害しないという観点からは、競業避止義務の内容について、期間、職種、地域、代償措置の有無ないし内容が考慮されている。これらの点を具体的にどのように充足すれば、競業避止義務が有効となるという形でコントロールをすることは難しいが、これらの考慮要素を明示するという形でのルール化は必要ではないか。ただし、どのような方法で明示するかについては検討が必要ではないか。(土田先生)
 退職後の労働者に競業避止義務を課す場合には、競業避止義務の業種、職種、期間、地域といった内容を退職時に書面により明示させることを義務の要件とすることは重要ではないか。 ただし、書面で明示しておきさえすれば、それで競業避止義務が有効になるのかといえば必ずしもそうではなく、それとは別に、競業避止義務の内容が労働者の利益や使用者の利益から見て妥当かというコントロールは別途ある。 また、紛争を防止するという観点から、退職時に競業避止義務の内容を書面で明示させることを求めてもよいのではないか。(土田先生)
 書面で明示させることの効果については、要式行為のように捉えれば、書面明示をしなければ無効という考え方もあるだろう。しかし、在職中に個別に合意がある場合や就業規則の規定がある場合であっても、退職時の書面明示がなかったために競業避止義務がすべて無効になってしまうのはどうかと考えられるため、その点についてはさらに検討すべきではないか。(土田先生)
 判例上、競業避止義務についても、退職金の不支給や減額が問題になっている。懲戒と同様、退職金不支給あるいは減額への対応について検討する必要があるのではないか。(菅野座長)

〈秘密保持義務〉
 退職後の秘密保持義務の根拠に関しては、競業避止義務と同様、個別の合意、就業規則又は労働協約による根拠が必要とする方向で考えるべきではないか。
 秘密保持義務について、不正競争防止法があるのだから、それに加えて契約法として秘密保持義務を認める必要があるのかという議論がある。不正競争防止法上の保護を受けるには、秘密管理性という厳しい要件が課されているほか、図利加害目的が不正競争の要件とされている。そういった不正競争防止法の要件を満たさない秘密であっても、一定の場合には保護する必要があるため、秘密保持義務を契約法として認める必要があるのではないか。
 根拠としては明示の契約上の根拠が必要であるが、その内容としては不正競争防止法よりも広い範囲で契約上の根拠において定めた範囲で秘密保持義務を認めてもよいのではないか。もちろん、使用者側に正当な秘密がないなどの秘密保持という趣旨から内在する要件はあり、それを充足する必要はあるだろう。(土田先生)
 不正競争防止法の保護を受けない秘密について、秘密保持義務を契約上で定めた場合においては、使用者側が秘密保持を求めるに当たっての正当な利益を持つということを主張・立証すべきことになるのではないか。(山川先生)
 使用者側に正当な利益がある場合であっても、個別の合意、就業規則又は労働協約といった根拠が必要とするというのは、退職後の秘密保持義務は、労働契約終了後の信義則を根拠に効力を持つものではないという趣旨か。(村中先生)
 不正競争防止法が信義則上の秘密保持義務を認めたという理解に立てば、不正競争防止法以上の義務を課すためには、契約上の根拠を別途要するという整理の仕方はできる。ただし、不正競争防止法をそのように理解したとしても、信義則を根拠に契約法上の秘密保持義務を課す可能性も理論的にはある。しかし、実質論で考えると、退職後の義務の設定であることから、使用者側の正当な利益を要件にしたとしても、契約上の明確な根拠を求めるべきではないか。(土田先生)
 不正競争防止法によって規制のかかる営業秘密の漏洩については、不正競争防止法上すでに法定義務が課されている。それ以外のものについては、契約上の根拠が必要であるということか。(荒木先生)
 不正競争防止法により一定の秘密について法律上の保護が及ぶし、それ以外の秘密についても、使用者の正当な利益が認められれば、契約により保護することができる。その場合、使用者の正当な利益は必要であるが、不正競争防止法とは要件が異なってくることに大きな意味がある。 さらに、付随的には、不正競争防止法の解釈としても、秘密保持義務の契約を結んでおくことが重要視されており、そのような知的財産の保護という面から見ても、契約上の秘密保持義務を肯定することに実益があるのではないか。(土田先生)
 秘密保持義務の場合には、何が守るべき秘密かを明示しなければ、労働者も困るので、競業避止義務以上に退職時の書面明示は必要ではないか。特に、秘密やノウハウは日夜変化していくため、退職時に秘密保持義務の内容を改めて書面明示させる必要性は非常に高い。しかし、どこまで特定し通知する必要があるかは難しい問題ではある。 また、退職時の明示の効果については、競業避止義務の場合と同様に問題があるため、さらに検討する必要があるのではないか。(土田先生)

〈個人情報保護義務〉
 労働契約法制においても、労働者の個人情報を保護していく必要が高まっているのではないか。企業の規模にかかわらず、使用者側に労働者の個人情報を適正に管理することを求める必要があるのではないか。具体的には、正当な理由がない限り、個人情報を目的外に使用することや、第三者に提供してはならないこと、又は不正な手段で労働者の個人情報を取得することはあってはならないといった内容を法律の中で明らかにしていくことが必要ではないか。(村中先生)
 具体的に、契約法上に定めることの意味についても考える必要があるのではないか。個人情報保護法は直接私法上の請求権まで与えるものではないとの理解が一般的ではないか。もし、労働契約法上に定めるならば、目的外使用や第三者への開示を禁止する不作為義務が契約上の権利義務として発生する。これにより、不作為請求ないし差止請求や契約上の債務不履行としての損害賠償請求などができるようになるのではないか。(山川先生)
 個人情報保護法と関連して、労働者から逆に情報の開示を請求をする可能性もある。これは、昇進・昇格・降格における人事考課の結果の説明などとも関連する。このような点についても検討をしておく必要があるのではないか。(土田先生)

〈留学・研修費用の返還〉
 留学・研修費用の返還について、裁判例は労働基準法第16条違反として議論しているが、そこではおそらく、刑罰法規としてではなく、純然たる民事規範の問題として捉えている。労働基準法第16条とは切り離して、業務とは明確に区別された留学・研修費用の金銭消費貸借であれば認めるという方向を考えてよいのではないか。
 一定期間以上勤務した場合には留学費用の返還を免除する場合についても、その期間を非常に長期に設定することがよいかどうかという議論になる。例えば、民法第626条には有期契約であっても5年を経過すれば解除できるとあるので、それを参考に金銭の返還を免除するまでの勤務期間の上限について考えることもあり得る。(荒木先生)

4 労働関係の終了
〈解雇〉
 解雇には様々な理由や類型があり、それらについてどの程度類型化し、基準を提示できるかは立法上難しいのではないか。できるとしても、例えば、労働者側に原因がある理由の場合、企業の経営上の必要性に基づく場合、ユニオン・ショップ協定など労働協約の定めに基づく場合などの類型を示す程度ではないか。(菅野座長)
 諸外国の例を見ても、解雇の理由や類型について、細かく決めている例はなく、人的理由や経済的理由といった程度のことを決めている場合が多い。解雇の理由や類型について細かく定めることは、労使いずれの側にとってもかえって硬直的になるため、難しいのではないか。(山川先生)
 解雇に関して使用者が講ずべき措置については、一つには手続的なものとして、解雇理由を通知させることや予告期間を置くことなど労働基準法において定められていることをさらに強化することや、解雇に当たって、あらかじめ労働者代表から意見を聞くことなど、いくつか選択肢があるので、引き続き検討してはどうか。
 また、もう一つには、労働者の非違行為を理由に解雇する場合には事前に警告を発した上でなければ解雇してはならないこととするなど、解雇の効力との関係で実質的な要件になるような措置をある程度類型化して定めてはどうか。 さらに、使用者としてどのようなことをやらなければならないかがある程度わかるように指針を定めてはどうか。(村中先生)
 解雇を事後的に争う場合には労使ともにコストがかかることから、紛争予防のために行為規範となるものはあった方がよいのではないか。(山川先生)

〈整理解雇〉
 整理解雇についてはいわゆる四要件説と四要素説が概念的には議論されているが、現行の裁判例においては四要件説であっても要件を緩やかに認定している場合や、逆に四要素説であっても要素の認定を厳格にする場合はある。現行の裁判例の状況は、四要素としつつ、実際上はそれを原則的な要件のように考えて、四つの要素を中心に判断しているのではないか。両説が大きく異なるわけではないことが前提の認識として必要ではないか。(山川先生)
 整理解雇は、解雇の中で効力を判断する際に考慮する事項が比較的明確である。そのような意味では、整理解雇の際における行為規範を定めることにより予測可能性を向上させることは必要であり、労働契約法制において考える必要がある。それは紛争の防止にも繋がるのではないか。すなわち、四つの考慮事項、「人員削減の必要性」、「解雇回避の措置」、「解雇対象者の選定」、「協議などの手続」を労働契約法制として明らかにしていくことが必要ではないか。
 それを法律要件として労働契約法制に明記するかどうかについては、法律要件という厳密な形で定めるのはなかなか難しいのではないかと考えられるため、さらに検討する必要がある。
 仮に整理解雇の四つの考慮事項を労働契約法制において明らかにしていくとすれば、これらを具体化した形で使用者が講ずべき措置を指針等で明らかに示していくことが考えられるのではないか。その際、人員削減の必要性、解雇回避措置、解雇対象者の選定、協議などの手続に加えて、実際には退職金の上乗せ、あるいは再就職の支援といった措置も使用者が講じていることから、解雇回避措置を補充するものとして退職金加算や再就職支援といった労働者の生活上の負担を軽減する措置を指針等で示すことが考えられるのではないか。そういった点も含めて、四つの考慮事項をさらに検討していく必要があるのではないか。(土田先生)
 退職金の上乗せ等については、裁判例において、整理解雇の際に配置転換が難しい場合に考慮するものと位置づけるものも出ており、その位置づけについてはさらに検討すべきではないか。(山川先生)
 基本的には解雇を回避し、雇用を確保することが一次的に必要であって、それが客観的に見て困難又は不可能である場合に補充する措置として退職金の上乗せなどが考えられるのではないか。(土田先生)
 裁判例が四要件説から四要素説に変わってきたのは、バブル崩壊後、従来では予想されなかったような多様な整理解雇の事例が出てきたこともある。そうすると、あまり画一的ではない設定の仕方を考える必要があるのではないか。(菅野座長)

〈解雇の金銭解決〉
 解雇の金銭解決制度を検討するに当たっては、紛争の一回的解決を可能としなければ実際的には意味がないという点について、一致がみられたのではないか。金銭解決制度は、制度の組立て自体が非常に難しいので、有効に機能し、かつ、濫用等の歯止めもあるような制度ができるかどうか、まず議論してはどうか(菅野座長)
 労働者側の金銭解決の申立を認めることについては、異論はなかったと思うが、手続の仕組み方については課題がある。
 解雇の金銭解決制度について、「解雇が無効であるとされたならば、辞職をするという要件が満たされた場合に、賃金請求とは別の、実体法上の独自の金銭補償請求権が発生する」という理解はあり得るのではないか。 ただし、その場合、賃金請求との関係をどうするかという問題もある。金銭解決と同一裁判手続内で解雇無効・雇用関係の存在確認・賃金請求をする場合、金銭解決は原職復帰の意思がないことが前提と考えられることから、今の下級審裁判例によれば賃金請求は認められない可能性が高い。そこで、どの時点までの賃金請求をするかということになり、原職復帰意思が失われてから後は、賃金請求と金銭補償請求権とは両立しないことになるので、どこかの段階で訴えの交換的変更のようなことをするのではないか。その前の段階の賃金請求は可能であるので、その部分については訴えの併合となろう。(山川先生)
 労働者からの金銭解決については、制度設計は難しいが労働者の選択肢が増えることには異論はない。しかし、実際には賃金請求との関係で、労働者に不利がないような形で、どこで請求を差し替えられるかという問題がある。 また、いつまでに辞職の申出をしなければいけないかについて、裁判の過程で言わなければいけないか、判決確定の後の選択肢としてできるかという問題もある。ここでは、労働者の職場復帰の意思が早期に失われれば、紛争の段階で辞職の意思表示をし、その後の裁判において解雇の効力を争う中で、裁判所が解雇無効や金銭解決を判断して紛争が終結する、あるいは判断を前提にした和解で終わることになるだろう。しかし、労働者の立場からすれば、実際に紛争が続いている中で、現実に職場復帰が容易なのか、困難なのかという判断ができないケースがあるという問題がある。 逆に、労働者側がいつまでもそのような選択肢を取れることとすると、使用者側の不安定さが増すということもある。(吉田参事官)
 解雇紛争が金銭で解決されるケースは非常に多い。しかし、その際の金銭の基準ははっきりせず、例えば、労働者の主張が裁判において認められ、使用者が過去の賃金を支払うこととなった場合に払うべき額や、休業手当との関係で過去の賃金の6割を基準とするなど様々である。そうすると、争っていた期間が長ければ長いほど和解金も高くなることとなるが、早期の紛争解決のためにはそのような制度設計は適当でない。金銭解決をする場合の金銭額の目安が決まっている方が、紛争もかえって早く決着がつくことも含めて、制度を考えるべきではないか。(村中先生)
 金銭の額については、企業は大企業から中小、零細企業まで様々であることから、一律の基準は望ましくないし、企業団体からもそのような意見があった。日本では、ドイツのように解決金の世間相場や算出の公式ができておらず、その中で金銭の額を考えるのは非常に難しい。 企業の実情に応じて、かつ合理的な処理をする方法として、当該企業の労使が金銭解決の場合にはこのような処理をするという合意をしたときに、それによって処理する制度は大いに考えられる。それによって、金銭の額の相場ができてくることもある。(荒木先生)
 使用者からの申立てについては、諸外国の立法を見ても、使用者が金銭を払うことによって違法だった解雇が正当になるという立法例を取っている国はおそらくない。したがって、当該解雇の効力については、それはそれとしてきちんと判断することが大切である。そこで、解雇が仮に無効であったとしても、解決手段を原職復帰に限るかどうかが問題となる。
 解雇は多様であって、使用者と労働者の帰責割合が51対49というような場合には、全面的に解雇有効か解雇無効かではなく、金銭解決が実情に即した処理となることがあり得るのではないか。ただし、労働組合からのヒアリングで意見があったとおり、金銭解決制度によって金銭を払いさえすれば解雇できるといった誤ったアナウンス効果が出るのは非常に問題である。使用者からの申立てを認めるとすれば、濫用されないような厳格な要件を規定し、そのような厳格な要件を満たした場合に限って認めるといった仕組みが必要と考える。(荒木先生)
 使用者の申立てによる金銭解決は、労働者が金銭解決を希望していない場合にも、労働契約の終了という意思に反する不利益を与える場合がある。この点は避けようがなく、そこをどう要件として具体的に説明するのかが問題となる。
 例えば、職場復帰しても、実際には労務の提供が円滑にできないとか、職場に混乱をもたらすとか、様々な場面が議論されているが、そういった職場復帰が困難であることを使用者からの申立てに結びつけるような合理的な要件をどのように仕組むか。これはかなり難しいという印象を持っており、さらに検討する必要がある。
 また、使用者団体のヒアリングにもあったとおり、金銭解決に必ず裁判所の判断を介在させることにより、慎重さが担保され、当事者が納得いく形での紛争解決につながるという議論がある。しかし、これは要件が合理的で明確であることが基本になるのであって、諸般の事情を考慮して裁判所が解決してくれるのではないかと考えられても、判断する裁判所としては非常に困る。
 裁判所の判断に対する信頼が損なわれないようにするためにも、要件がどの程度具体化できるかは問題である。また、判断の慎重さが必要であるということだけでは、必ず裁判所の判断を介在させることの理由づけとしては不十分ではないか。(吉田参事官)
 使用者側からの申立てについては、手続的な点も含めて検討課題が多い。もし、制度を作るとすれば、やはり濫用防止の手立ては必要である。利益衡量の問題になるかもしれないが、違法不当な、例えば公序良俗に違反するような解雇をした場合にも金銭補償をして契約解消を認めるということは適当でない。
 また、使用者側に故意過失がなく、職場復帰が困難であることといった限定は、もし使用者からの金銭解決制度を組み立てる場合には必要になるだろう。使用者団体からのヒアリングでは、そのような限定要件は要らないとする意見であったが、それは難しい。(山川先生)
 使用者側の申立ての場合には労働者の意思に反して解消と金銭支払いが行われることは避けられないという話があったが、要件として、労働者側の事前の集団的あるいは個別的な同意を制度に仕組むことも検討に値する。(菅野座長)
 例えばセクシュアル・ハラスメントを行った労働者に対して、解雇は若干行きすぎだったかもしれないが原職に戻すことは解決としては妥当ではないという場合にどのように処理するかという問題がある。このような場合、金銭解決制度がなければ、解雇は有効であって労働者は何もとれなくなるという処理になりがちではないか。 現在、権利の濫用に当たる解雇は無効であるとされているが、無効という判断がなされた場合であっても解決の選択肢があるとすれば、それは実は無効判断にも影響してくるのではないか。その選択肢を広げるということ自体は、多様な解雇問題の処理においては、実態に即した解決を可能とする、あり得る選択肢ではないか。(荒木先生)
 ドイツ法では解消判決制度があるが、実際上は使用者側の解消はなかなか難しい。あり得る事案としては、解雇同意約款に反して解雇したが実質上は解雇の理由がある場合、整理解雇の場合に手続を踏まなかったがその他の要件は揃っていた場合、解雇時点においては要件が足りなかったが訴訟進行中に企業経営が悪化し実際には復帰できない場合などがある。このような場合には、解雇無効となった後に再度解雇すれば有効になる場合もあり、そのような場合について紛争を一回的に解決するニーズはある。(村中先生)
 金銭解決制度の妥当性自体をまた議論しなければならないが、仮に制度を設ける場合、濫用を防止するために、集団的にこの制度をどのように利用するかについて労使の合意を求めることはあり得る。 しかし、さらに個別の合意までも要求し、金銭解決を労働者が合意した場合だけ認めることは、このような制度を作ることと整合的ではないのではないか。(荒木先生)
 使用者側からの申立てについても、解決金の額の基準は、個別企業の労使間での集団的合意によってあらかじめ定めておくことが考えられ、その方向で検討するのが妥当ではないか。その意味で集団的な合意が要件になる。 一方で、解決金の額の基準をそのように定めることとすると、使用者からの申立てについての金銭の額の基準が、労働者側からの申立てについての金銭の額の基準よりも低いケースもあり得る。しかし、解決金の基準についての考え方として、そのような場合には、使用者からの金銭解決の申立てを認めることは適当ではないのではないか。(土田先生)
 金銭解決の額の基準は、企業の体力やそれぞれの業界で違いがあって、一律に決めるのは難しいかもしれないが、やはり使用者側から申し立てる場合には、最低基準を設定しておかないと、問題があるのではないか。(村中先生)
 労働者からの申立てと使用者からの申立てとの関係をどう考えるかという問題がある。どちらにしても金銭解決の申立ては、個々の企業における労使の交渉、話合いがベースになることが基本的な設計ではないか。 この制度を認めた場合、双方の申立てを認めるのが公正な解決になる。しかし、交渉であるから、使用者が労働者からの金銭解決の申立ては認めないが自分からの金銭解決の申立てを認めさせることはあり得る。ここは非常に難しいが、労使間の交渉における交渉力や情報格差を考えたときに、そのような結果を認めることは妥当ではない。逆に、労働者からの申立ては認めるが使用者からの金銭解決の申立ては認めないことについては、アンバランスだという考え方もあるが、労使間の構造的な格差から、交渉の結果として問題はないのではないか。
 また、本人の意思に反して離職せざるを得ないことについての要件をどう設定するかがやはり根本的な問題である。その際、金銭の基準を含めて集団的な合意を制度に組み込むことに加えて、個別労働者との事前の合意をさらに組み込むことが妥当かどうかは、慎重に検討する必要がある。(土田先生)
 集団的合意に加えて個別的合意を要求することについては、事前の合意であるから使用者側の申立てを認めることと矛盾しないという説明も可能と考える。また、雇用関係の解消という個別的な事情に関して、濫用防止のためには集団的合意が主要な道具ではあろうが、それだけで足りるかという点についても検討の余地がある。
 また、手続の仕組み方について、労働者側からの申立ては実体法上の金銭補償請求権であって給付訴訟で足りると解することもできるが、使用者側からの申立ては、雇用契約の解消という判決になるから、形成訴訟になって、その場合に金銭の支払を形成判決の附随的な処分などで命ずるのかという問題があり、実体法上の権利の性格付けに応じて、両者の申立ての性質が違うものになる可能性があることを検討する必要がある。 解雇無効訴訟の中では、使用者からの金銭解決の訴えを予備的反訴で申立てることは可能ではないか。(山川先生)
 個別的合意については、労働契約法制として、個別労働契約の終了という事象についての要件、あるいは制度設計の仕方をどのように考えるか。これは根本的な問題であるから、さらに検討する必要がある。(土田先生)
 要件として、不利益に対する代償として、手続要件で集団的合意、個別的合意で可能な限り手当てをするという発想はもっともだが、労働者の個別的な事前の合意を要件にするとなると、いつの時点で、どのような状況で合意を取るのかが当然問題になってくる。
 新規採用のときに個別合意を求められても、なかなか拒絶できないのではないかと考えられるため、個別同意を必要としても問題は残るのではないか。(吉田参事官)
 解雇の金銭解決制度について、方向としては、解雇の紛争の解決の選択肢を新しく作れるかという観点から、研究会としては、制度設計を追求していく方向でさらに検討してはどうか。(菅野座長)

〈合意解約、辞職〉
 退職をめぐる紛争事例は少なくないが、中でも使用者から迫られて辞表を提出した後で、早まったと後悔して紛争になる例が多い。雇用関係を解消する意思表示については、慎重に考えさせて然るべき問題ではないか。このため、クーリングオフ制度のように一定期間内は一旦表明した退職の意思表示を撤回できることとする制度を導入することは有意義なのではないか。 意思表示の瑕疵がある場合のほかに意思表示の撤回を認めることは、法的に不安定になるとの指摘が使用者団体からのヒアリングであったが、使用者からの働きかけに応じた場合に限って撤回を認めるならば、それなりに合理性のある措置ではないか。(荒木先生)
 労働者からの退職の意思表示を書面で行うこととするならば、書面でなければ労働者は退職できないこととなる。その結果、退職できずにいる間に懲戒処分を受けるなどの一定の不利益が労働者側にも及ぶという問題もあるため、このことについては慎重に検討すべきではないか。
 また、労働者側からの退職の意思表示が合意解約の申入れなのか一方的な解約なのかがよくわからない場合があるため、それらの判断基準を作ってはどうかという議論もあった。しかし、それは意思解釈の問題になるため、事案毎に判断せざるを得ないものであり、一律に判断基準を示すことは難しいのではないか。(村中先生)

5 有期労働契約
 労働基準法14条の趣旨は、基本的には、使用者が長期にわたって労働者を拘束することを防止する目的の規定であることを明確にする方向で考えてはどうか。(村中先生)
 労働基準法第14条の趣旨については、反対から考えれば労働者はいつでも退職できるとの内容の契約であればより長期の契約も可能となる。また、期間の満了によって労働契約が自動的に終了するという効果も生じる。これをどう考えるかについては、契約の民事的な効力の問題であることから、罰則で担保するほどの問題ではないのではないか。(土田先生)
 期間の定めの意味はもう一つあり、契約期間中は使用者からは民法第628条により原則としては解約できないこととなる。退職の制限については規制をかけるが、使用者からの解雇制限については特に手当をしないこととすることは労働基準法の趣旨に合致する。しかし、片面的に制約をかけるための法文の書き方については検討を要する。(山川先生)
 雇止めを制限する判例法理については、それを明らかにすることは大事な点である。同時に、先般の労働基準法改正の際に手続的な基準を導入しており、両者を併せて考える必要がある。(荒木先生)
 労働契約の期間は、労働基準法15条の労働条件明示義務の中で労働契約の締結に際して書面で明示すべき事項に位置づけられており、実質的にも非常に重要な労働条件である。使用者が契約期間を書面により明示しなかったときの労働契約の法的性質については、重要な労働条件を明示しなかったという手続上の重大な瑕疵があるため、これは期間の定めのない契約とみなす方向で検討してもよいのではないか。(土田先生)
 有期労働契約であるということを当事者間で手続的に明確にしておくことは重要である。その観点からは、労働基準法第14条第2項に基づいて、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が定められており、これは労働契約法を考える場合に基本的な考え方になるのではないか。
 また、有期労働契約については、正当な権利を行使したことにより更新がなされないという事態がよく問題として指摘されるので、当然の権利を行使したために契約を更新しないことについては、そのようなことは認められないことを明らかにしておくことが有意義ではないか。(荒木先生)
 有期契約については手続が整備されてきており、それが遵守されればトラブルも少なくなってくるだろう。しかし、実際には使用者は、書面上は更新しない旨明示しつつも更新を繰り返しているのではないか。そのような脱法的なことを行う場合については、更新をするという趣旨と解釈して、雇止めを制約することが必要になるだろう。
 また、更新がある旨明示して実際に更新を繰り返した後、最後の更新時に次回は更新しない旨明示することについて、期間の定めのない契約における解雇に対して労働基準法第18条の2により制約をかけていることから、非常に長期にわたって雇用している場合においては、労働基準法第18条の2の脱法行為になりかねない。使用者が手続を遵守することで紛争は減るだろうが、やはり、雇用が長期にわたっており、労働者に雇用継続の期待が生じる場合には一定の保護をする必要がある。(村中先生)
 これまでの判例法理において、更新に対する期待は雇止めの効力を判断する重要な基準であったが、雇止めの基準においては更新の有無を当事者間で認識させる方向になっている。従来は更新の期待についての判断が裁判例ごとに不安定であったが、そのようなルールが定められたことから、基本的には、更新はしない旨明示した場合には期待は生じないであろうし、更新はあり得ると明示し、更新しない事由についても明示してある場合にはそれに該当するかどうかという観点から判断するようになっていくのではないか。(荒木先生)
 労働契約法制として考える場合、一方で労働者の期待利益ないし雇用上の利益を保護する要請があるが、他方で使用者からすると、従来の期待利益保護の裁判例の考え方では、いつ雇止めに規制がかかるのか非常に予測が難しいという問題がある。これは労働契約法制として考えておくべき要素ではないか。
 実際に企業の行動を見てみると、どのような場合に雇止めの規制がかかるかがわからないため、全く更新をしないという現象が出てきている。これは企業から見れば人的資源を十分に活用できないため問題であり、労働者から見れば雇用機会が狭まりかねないという問題がある。
 そうすると、使用者が更新しないと明示した場合は、有期雇用の更新に関する労働者の期待利益は後退するし、更新がある旨明示し更新の有無の判断基準を定めた場合には、その判断基準の運用に判断の比重を移すなど、手続上明確化したものを基本的には尊重する方向に比重を移すべきではないか。そうすれば、一体どのような場合に雇止めの規制が行われるかについての予測可能性は高まる。少なくとも、有期労働契約について、そういった手続的な要素に比重を移して考える方向も検討してはどうか。(土田先生)
 神戸弘陵学園事件最高裁判決以後、試用的な雇用の期間を定めた場合には、裁判所がそれを一律に期間の定めがない契約である試用期間と解してしまう傾向がある。有期労働契約をどのような目的に使うかの制限はないはずであり、有期労働契約は試用の機能も果たし得るはずであるにもかかわらず、果たし得なくなっている。それはやはりおかしいのではないか。
 そこで、有期労働契約に関する手続として、期間満了後は期間の定めのない契約、いわば本採用に転換する可能性がある場合にはその旨を明示させ、併せて転換する判断基準も明示させることを労働契約法として定めておけば、試用の目的を有する有期労働契約があり得ることが法律上明確になる。そして、有期労働契約を期間の定めのない契約の試用期間として判断する判例法理の射程が狭まるのではないか。(菅野座長)
 全くの純粋な有期労働契約とは異なり、かといって期間の定めのない労働契約が最初から成立しているという意味での試用期間でもない、試用期間的な有期労働契約を設定し得るようにすることはよいのではないか。
 ただし、労働契約法として検討する場合には、このような規定を置いた場合の効果についてさらに検討していく必要があるのではないか。例えば、期間の定めのない契約における試用期間ならば本採用拒否は単純に解雇になり、純粋の有期労働契約ならば新規契約の締結拒否となる。その中間的な保護は考えられるのではないか。(山川先生)
 有期労働契約は、その契約期間中は雇用が保障されるものであるとして、平成15年の労働基準法改正がなされた。そうすると、例えば3年の期間満了時には雇用関係が終了するとしながら、別途合意をすればいつでも解約できることとするのは整合性がない。裁判例においては、中途解約権を合意していても、やむを得ざる事由がない場合にはその効力について否定的に解する例が多い。そのような点をよく認識させることは必要ではないか。(荒木先生)
 有期労働契約の終了について手続を踏めば雇止めを認める方向で考えるならば、逆に契約期間中は契約を維持する責任が当然あるので、契約期間中の解約にはやむを得ない事由が必要であるという考え方を基本にすべきではないか。
 その場合に、やむを得ない事由が使用者の過失によって生じたとして民法第628条により労働者が使用者に対して損害賠償の請求をする場合には、使用者の過失については労働者側に立証責任があるとする考え方もあるが、これを使用者に転換することについても併せて検討する必要があるのではないか。(土田先生)

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