05/03/29 アレルギー対策検討会第1回議事録              第1回「アレルギー対策検討会」                   日時 平成17年3月29日(火)15:00〜16:55                   場所 厚生労働省(6階)共用第8会議室 〇事務局  定刻となりましたので、ただいまからアレルギー対策検討会を開会いたします。委員 の皆様方には、本日はお忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとう ございます。  開会に先立ちまして、疾病対策課長よりごあいさつ申し上げます。 〇疾病対策課長  疾病対策課長の関山でございます。本日は、委員の先生方におかれましては、御多忙 の中を御参集いただきましてありがとうございます。また、この検討会の委員に御就任 していただいたことを厚く御礼申し上げる次第でございます。  もう御説明するまでもなく、アレルギー疾患については、国民の約30%の方が罹患し ているという調査も出ているわけでありまして、いわゆる国民的な疾患ということでご ざいます。したがいまして、これらの対策につきましては、今後、総合的かつ体系的な 対応が求められているということでございます。そこで、この検討会におきましてその 対策について具体的なご検討を行っていただき、そして対策指針案なるものを策定して いただく。その策定していただいた指針案なるものを、3月7日に既に開催されており ます厚生科学審議会疾病対策部会の中にリウマチ・アレルギー対策委員会いうのがござ いますが、こういった審議会の場において皆様方にとりまとめられた指針案をもってご 議論していただき、そして正式なものとして御承認いただこうという段取りでいます。  したがって、ここがまさに具体的な対策についての議論をしていただく場ということ でございますので、なにとぞ皆様方の深い見識と経験をもってご議論をしていただけれ ばと思っておりますので、国民のために有意義なものがつくり出せることを期待いたし まして、ごあいさつに代えさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 〇事務局   ありがとうございました。  続きまして、委員の方がたを御紹介いたします。お手元に配付しておりますアレルギ ー対策検討委員会の委員名簿に沿って五十音順にお名前を読み上げますので、よろしく お願いいたします。  独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター長の秋山一男委員でございま す。  国立保健医療科学院建築衛生部長の池田耕一委員でございます。  千葉大学大学院医学研究院教授の岡本美孝委員でございます。  社団法人日本看護協会理事の岡谷恵子委員でございますが、本日は御都合により欠席 されております。  特定非営利活動法人アレルギー児を支える全国ネット・アラジーポット専務理事の栗 山真理子委員でございます。  杏林大学教授の島崎修次委員でございます。  福岡市保健府局保健医療部分保健予防課長の下川寛子委員でございますが、本日は御 都合により欠席されております。  社団法人日本医師会常任理事の橋本信也委員でございますが、本日は御都合により欠 席されております。  九州大学大学院医学研究院教授の古江増隆委員でございます。  順天堂大学医学部教授の丸井英二委員でございます。  青森県健康福祉部医療確保対策官の山中朋子委員でございます。  日本栄養士会千葉市宮野木保育所総括主任栄養士の山本美代子委員でございます。  横浜市立大学大学院医学研究科教授の横田俊平委員でございます。  併せまして、厚生労働省の出席者をご紹介いたします。  厚生労働省健康局生活衛生課の藤井でございます。  厚生労働省医薬食品局基準審査課の海老名でございます。  次に、資料の確認をいたします。  座席表  委員名簿  配付資料一覧  資料1.リウマチ・アレルギー対策委員会等の設置について  資料2.アレルギー対策検討会開催要領(案)  資料3.平成15年保健福祉動向調査アレルギー様症状  資料4.アレルギー対策概念図  資料5.平成17年度リウマチ・アレルギー対策予算(案)について  資料6.アレルギー疾患に関する研究等の推進  資料7.リウマチ・アレルギー分野の研究費について  資料8.アレルギー疾患に関する正しい情報の普及  資料9.リウマチ・アレルギー相談員養成状況  資料10.各都道府県におけるアレルギー施策について  資料11.厚生労働省における主な花粉症対策について  資料12.アレルギー物質を含む食品に関する表示について検討報告書  資料13.シックハウス対策について  資料14.リウマチ・アレルギー対策研究及び医療の現状と問題点  資料15.アレルギー対策論点整理(案)  皆様に配付した資料に、漏れ等はございませんでしょうか……。以上で資料の確認を 終了いたします。  資料2にございますアレルギー対策検討会開催要領の座長の指名でございますが、た だいまより座長の指名を行いたいと存じます。どなたか検討会委員の中から推薦される 方がいらっしゃいましたら、挙手をお願いいたします。 〇古江委員  この分野に詳しい秋山先生にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。 〇事務局  よろしいでしょうか……。それでは、秋山先生、座長の席にお願いいたします。以降 の議事進行を秋山座長にお願いいたします。 〇秋山座長  相模原病院の秋山でございます。僣越ながら座長を務めさせていただきます。  先ほど関山課長からお話がありましたように、厚生科学審議会でのリウマチ・アレル ギー対策委員会に私も出席させていただいておりますが、ここでの議論によってつくら れましたたたき台が我が国のアレルギー疾患の診療研究の重要な方向性を決めていくと いう立場で、この委員会は非常に重要な会だと私どもは認識しております。これから約 5回の検討会があるということですので、その中で、先ほどの課長の話にもありました が我が国の人口の30%、いわゆる国民病ともいわれるようなアレルギー疾患に対するよ りよい診療体制、あるいは治療、あるいは自己管理の姿勢等についての検討及び今後の 研究の方向性についての検討ということについて忌憚のない意見を出していただきまし て、よりよい提言ができることを期待しております。どうかよろしくお願いいたしま す。  それでは、既に資料の確認は終わってりおますので、「リウマチ・アレルギー対策委 員会等の設置について」という資料1と資料2の「アレルギー対策検討会開催要領」に ついて、事務局から御説明をお願いいたします。 〇事務局  では、事務局より御説明申し上げます。  資料1「リウマチ・アレルギー対策委員会等の設置について」でございますが、こち らは、先ほど課長の関山と座長より御説明がありましたとおり、3月7日の厚生科学審 議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対策委員会において同意されたものでございま す。  設置目的としては、「リウマチ、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症等の免疫ア レルギー疾患は、長期にわたり著しく生活に支障をきたすものもある等、国民の健康 上、重要な問題となっている。このため、今後のリウマチ及びアレルギー対策を総合 的、体系的に実施するべく、厚生科学審議会疾病対策部会の専門委員会としてリウマチ ・アレルギー対策委員会を設置し、リウマチ及びアレルギー対策の指針の策定等に関す る検討を行うものとする」ということでございます。  本日お集まりいただいておりますアレルギー検討会については、「より専門的な検討 を行うリウマチ対策検討会及びアレルギー対策検討会を、厚生労働省健康局長の私的検 討会としてそれぞれ設置するものとする」とされております。  検討課題でございますが、(3)アレルギー対策検討会は、アレルギー対策の基本的 方向性、研究の推進、医薬品の改廃促進等、医療提供体制の整備、患者QOLの向上 等、情報提供相談体制、患者を取り巻く環境の改善、関係機関との連携ということにな っております。  構成でございますが、(2)各検討会。各検討会は、各検討内容に精通した専門家に 委託するものとし、検討会の人数は15名以内とする。  検討スケジュールは、(3)アレルギー対策検討会、約5回を予定しております。ア レルギー対策指針(案)及び報告書をとりまとめることを最終回に予定しております。  次に資料2.アレルギー対策検討会開催要領(案)でございますが、「目的」とし て、「アレルギー対策検討会は、健康局長より参集を求める有識者により、厚生労働省 におけるアレルギー対策について専門的な検討を行うことを目的として開催する」とい うことで、検討事項、検討会の構成、座長の指名、会議の公開、議事録、検討会の庶 務、雑則等、定められております。「座長の指名」ということで第4条「検討会に座長 を置く。座長は、検討会の中から互選により選出する」ということで、先ほど秋山委員 が指名されたところでございます。  事務局からの説明は以上でございます。 〇秋山座長  どうもありがとうございました。今のことにつきまして、追加修正あるいは御意見等 がございましたらどうぞお願いいたします。 〇栗山委員  リウマチ、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症「等」がついているからあれなの ですけれど、これは食物アレルギーも含まれるということでよろしいでしょうか。 〇疾病対策課長  そうです。 〇秋山座長 もともとこの3疾患とリウマチの4疾患という格好できていたと思います が、今は食物アレルギーもかなりメインの疾患として入っていると理解しております。 〇栗山委員  ありがとうございました。 〇秋山座長  ほかにございませんでしょうか。  なければ、続きまして議事の2「アレルギー対策の現状について」ということで、事 務局からまた御説明をお願いいたします。 〇事務局  それでは、事務局より御説明申し上げます。資料3から資料11までをまず御説明申し 上げます。  まず資料3は、「平成15年保健福祉動向調査 アレルギー様症状」ということでござ います。これは、厚生労働省大臣官房統計情報部の保健福祉動向調査によりまして全国 調査が行われまして、3症状といいますのは、皮膚、呼吸器及び目鼻のアレルギー様症 状のいずれかの症状があるという人が全数の中で35.9%を占めるという結果が出たもの でございます。  次に資料4は、アレルギー対策の概念図となっております。こちらは、厚生労働省の 主に健康局疾病対策課でのアレルギー対策の概念図になっておりますが、アレルギー疾 患は、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギー等、多岐にわたり、罹 患患者数が多く、その病態については、一般的にQOLが悪化し、長期にわたり慢性的 に持続する等、一部のアレルギー疾患については不適切な治療法の結果により致死的な 予後をもたらす等、疾患ごとに抱える問題はさまざまである。そのより総合的な推進を 行うということで、研究の推進と研究成果に基づく最新の医療技術、情報の普及という ことでございまして、免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業という研究事業を、アレ ルギー分野に関しては平成4年度より総合研究として行っております。  独立行政法人国立病院機構相模原病院に臨床研究センターも開設され、理化学研究所 免疫アレルギー科学総合研究センターと連携して共同研究が推進されております。  相談体制でございますが、リウマチ・アレルギー相談員養成研修会という研修会が平 成13年度から毎年実施されておりまして、都道府県等の保健師等、従事者を対象にし て、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症及び食物アレルギー等に関する研修会が行 われております。  診療ガイドラインの作成でございますが、医療関係者に対して、標準的な診断・治療 法等の普及をはかっているところでございます。  各種広報活動として、厚生労働科学研究推進事業というものも行われておりまして、 医療関係者向けの講演会や市民講座が開催されましたり、研究班によって一般的向けの パンフレットが作成されたりしているところでございます。また、インターネットを活 用した情報提供等も行っております。  資料5は、主に健康局疾病対策課における平成17年度リウマチ・アレルギー対策予算 (案)でございます。平成17年度は、リウマチ・アレルギー対策の推進として11億2100 万円を計上しております。  少々飛ばしまして資料6にまいりますが、「アレルギー疾患に関する研究等の推進」 ということで、先ほど御説明いたしましたが、まずは研究、そして資料8には「正しい 情報の普及」という二つが書いてあります。アレルギー疾患に関する研究等の推進とい うことで、免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業においては、平成16年度はこちらに 記載されております36班体制で研究を行ってきたところでございます。これは免疫アレ ルギー疾患予防・治療研究事業でございますので、リウマチとアレルギーと含まれたも のでございます。  研究課題については、事前評価、中間評価、事後評価の三つの過程で評価されている ところでございます。また、免疫アレルギー疾患予防・治療研究推進事業ということ で、研究費補助のほか、採択された研究を支援するため、各種事業が実施されていると ころでございます。  資料7にございますのは、リウマチ・アレルギー分野の研究費の推移でございます。 アレルギー疾患については、平成4年度より厚生省アレルギー総合研究事業として総合 的な研究が開始されておりまして、リウマチとアレルギーと合わせて平成9年度から総 合的に研究体制の整備がはかられており、計70億円以上を計上しているところでござい ます。  資料8は、「アレルギー疾患に関する正しい情報の普及」ということでございます。 先ほども御説明しましたが、リウマチ・アレルギー相談員養成研修会という保健師等を 対象にした研修会を各地域での相談体制を整備することを目的として行っております。 こちらにいらっしゃる委員の先生方にも、毎年、御協力をいただいているところでござ います。  次に、ガイドラインの作成でございます。1「アトピー性皮膚炎」、2「喘息」、3 「アレルギー性鼻炎」、4「食物アレルギー」とございますが、こちらのように各疾患 ごとにガイドラインが作成され、整備されているところでございます。  なお、食物アレルギーについては、現在、研究班でガイドラインもしくは手引き作成 を検討中と伺っております。  最後に、インターネットによる情報提供でございます。アレルギー疾患については、 病因、病態が未だ不明で根治療法がない等の状況下において民間療法を含め情報が氾濫 していることから、正しい情報の普及を強化することを目的としてインターネットによ る情報提供を行っております。(1)に書かれております厚生労働省のホームページ、 リウマチ・アレルギー情報は、昨年末の12月に開設したところで、こちらにガイドライ ンへのリンクを掲載したり、そのようなことで正しい情報の普及をはかっております。  資料9は、リウマチ・アレルギー相談員養成研修会の参加状況を記したものでござい ます。こちらは、47都道府県を含めて127の自治体に対してリウマチ・アレルギー相談 員養成を行っておりますが、トータルで223名の相談員を養成いたしました。  資料10は「各都道府県におけるアレルギー施策について」ということで、平成17年1 月12日に調査を依頼したものでございます。  事業と申しますのは、各都道府県に、各自治体におけるアレルギー対策の事業の有 無。アレルギー対策を推進していくうえで、パンフレットの作成とかホームページの掲 載とか、そのような各都道府県におけるアレルギーの普及啓発の有無。相談窓口は、電 話もしくはEメール等による各都道府県におけるアレルギーに関する相談窓口の有無。  連携と申しますのは、アレルギー対策を推進していくうえで、市町村等関係団体との 連携の有無。  計画と申しますのは、アレルギー対策について各自治体の地域保健医療計画上、定め ているかの有無。  これらを調査した結果を記しております。  最後に資料11でございますが、このようなアレルギー対策を行っておりましたが、特 に今春においては、昨年から花粉飛散量の増加が予測されておりまして、厚生労働省で は花粉症緊急対策ということで昨年12月より実施してまいりました。資料11には、厚生 労働省における主な花粉症対策についてまとめております。  先ほど御説明しましたアレルギー対策の中での一つの例でございますが、花粉症に対 しては、(1)「相談体制の整備」ということで、都道府県に対してリウマチ・アレルギ ー相談員養成研修事業を実施しておりまして、それに加えて花粉症相談マニュアル(Q &A形式)を作成、配付いたしました  (2)「正しい情報の提供」ということで、先ほど申し上げました厚生労働省のリウ マチ・アレルギー情報ホームページに花粉症特集を掲載しております。  厚生労働省が花粉症シンポジウムを1月に開催いたしまして、こちらの委員でありま す岡本先生にも御協力いただきました。  一般向けパンフレットということで、「的確な花粉症の治療のために」というパンフ レットを、免疫アレルギー疾患予防治療研究事業の研究者の先生の御協力で、作成、配 付いたしました。  (3)「適切な医療の確保」ということで、医療法上の標榜科としてアレルギー科が 新設されたのが平成8年で、鼻アレルギー診療ガイドラインが作成、普及されましたの が平成14年、国立病院機構相模原病院、特に秋山先生の御協力で「リウマチ・アレルギ ー情報センター」ホームページ内に医療機関向けの専用相談窓口を開設していただきま して、医療従事者等向けQ&Aを作成、配付いたしました。  (4)「研究の推進」ということで、何度も繰り返しになりますが、アレルギー疾患 について研究を開始いたしましたのは平成4年からで、独立行政法人国立病院機構相模 原病院臨床研究センターと理化学研究所横浜研究所免疫・アレルギー科学総合科学研究 センター間で共同研究が開始されましたのが平成16年度からでございます。  こちらに「リウマチ・アレルギー対策委員会でアレルギー疾患克服に向けた対策指針 をまとめることとしている」と記載されておりますが、この具体的な内容についてご検 討いただくのが本検討会であるとご認識いただきたいと存じます。  2ページには、先ほど御説明申し上げましたことがイメージ図で書かれております。  3ページは参考でございますが、本年2月23日に総合科学技術会議という小泉総理率 いる外部研究の評価機関の会議で提出されました資料で、花粉症対策研究をこのような ロードマップで推進していくべきだということが提案されたところでございます。  以上で事務局からの説明を終わります。 〇秋山座長  どうもありがとうございました。今の資料説明につきましては、もし何か御質問等は ありますか……。特にございませんでしたら、総合討論のところでまたお願いいたしま す。  続きまして「患者を取り巻く環境の観点から」ということで、アレルギー物質を含む 食品に関する表示につきまして、厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課から御説 明いただきたいと思います。 〇食品安全部分基準審査課  食品安全部分基準審査課の海老名と申します。よろしくお願いいたします。  食品衛生法におけるアレルギー疾患、食物アレルギー表示制度を、まずは御紹介させ ていただきます。  こちらの「加工食品に含まれるアレルギー物質の表示」というパンフレットをごらん ください。こちらは数に限りがございまして、本日、お手元にない方もいらっしゃるか もしれませんが、厚生労働省のホームページから行政分野ごとの情報の中に「食品」と いう項がございまして、その中の「食品表示」というところにも掲載されておりますの で、もしお手元にないようでしたら、そちらをごらんいただければと思います。  まず、表紙に書かれておりますが、こちらは平成13年に食品衛生法の表示基準が改正 されまして、平成14年の4月1日より製造・加工・輸入される加工食品に対する表示制 度が始まっております。  パンフレットを開いて左側の2番目に「なんのために表示するの」という項がござい ます。近年、乳幼児から成人に至るまで、特定の食物が原因でアレルギー症状を起こす 人が増えてきました。アナフィラキシーショックも年々増加しています。そこで、食品 衛生法関連法令が改正され、平成14年7月からアレルギーを起こしやすい物質を加工食 品に表示することになりました。この表示の目的は、重篤な食物アレルギー症状が起き るのを避けることにあります。この表示を見ることにより、食べても大丈夫な加工食品 を選べるということになっておりまして、これは、例えば卵にアレルギーがある患者さ んが食品の表示をみまして、例えば卵が含まれているからやめようという形で健康被害 を避けることができるようなシステムになっております。  その下に、具体的に表示対象品目が挙げられております。こちらは平成16年度に見直 しを行っておりますが、その見直しを踏まえたパンフレットについては現在、作成中で ございまして、こちらに書かれておりますのは平成14年度、制度開始当初の品目でござ います。平成16年度の見直しについては、後ほど御説明いたします。  この平成14年度のアレルギー表示の基準策定にあたっては、平成9年度、10年度に東 北大学の名倉先生が主任研究者となり行われました厚生科学研究費の「免疫・アレルギ ー研究事業」の中の実態調査、それから平成12年度から3年間、国立病院機構の海老澤 先生が主任研究者になり行われた「免疫・アレルギー研究事業の食物アレルギーの実態 及び誘発物質の解明に関する研究」におけるアレルギー物質を含む食品の表示に関する 検討グループの検討を踏まえて、現在、こういった研究成果という科学的根拠をもとに 説明いたしているところでございます。  一方、制度開始から3年が経過しまして、平成12年から3年間行われました海老澤先 生の先ほど申し上げました研究の中において、平成13年、14年に実態調査が行われたこ とを踏まえまして、アレルギー表示制度を平成16年度に見直しております。アレルギー 表示を見直す場となりましたのは、食品の表示基準をもつ厚生労働省と農林水産省が共 同で食品表示制度全般を見直している食品の表示に関する共同会議という組織がござい まして、こちらの座長は、本日、この検討会にもご出席の順天堂大学の丸井先生にお願 いしておりまして、これまでにもさまざまな表示基準を見直していただいているところ でございます。  このアレルギー表示制度については、平成16年2月より国立病院機構の海老澤先生の 実態調査、順天堂大学の丸井先生が平成13年、14年度に食品安全部がとりまとめを行っ ております食品安全確保研究事業の「食品表示が与える社会的影響とその対策及び国際 規格に関する研究」という中での研究等々を踏まえまして、食品の表示に関する共同会 議においてご議論をいただき、資料12の「アレルギー物質を含む食品に関する表示につ いて 検討報告書」というものが平成16年7月にとりまとめられたところでございま す。  資料12の報告書の4ページに、三つの調査結果を比較しております。左側の「今回の 調査」というのが、海老澤先生が主任研究者となり行われております免疫・アレルギー 研究事業の食物アレルギーの実態及び誘発物質の解明に関する研究における平成13年、 14年度調査結果でございます。右から2番目の「今村らの調査」というのが、東京大学 の今村先生が文部科学省の研究費で行った患者さんからの聞き取り調査に基づく結果で ございます。右端の「前回の調査」が、平成13年の基準を導入するきっかけになりまし た東北大学の名倉先生が行いました研究における実態調査でございます。  こちらでは、義務のものが◎、表示が義務ではないけれどもできる限り表示をしてく ださいという種類のものが○で示しております。今回、この調査結果をごらんいただき ますと、一番左側の10番目にバナナに印がついておりません。このバナナがほかの品目 と比較しても看過できない位置にあるということになっております。  こういった実態調査の結果から、5ページの4「アレルギー表示にのあり方に係る具 体的事項」の(1)「表示対象品目の見直し」の二つ目〇にございますように、症例数 が少ないものについて、例えばこれはマツタケとかアワビとかオレンジが挙がっており ますが、これらについては症状が少ないということであったとしても、直ちに品目から 除外するよりも、さらなる調査研究を進めていく。三つ目の〇にありますように、エビ については、交差抗原性などの検討が必要なことから、技術的検討を開始する必要があ る。  なお、これの検討については、平成16年度の厚生労働省の特別研究において、藤田保 健衛生大学のウリス先生を主任研究者として「食品中のアレルギー物質の同定と表示方 法に関する研究」というものが行われており、現在、その研究結果をまとめているとこ ろでございます。  四つ目の〇にございますように、バナナについては、今回の調査において一定の発症 数が認められたということになっております。また、ゴマ、カカオ、メロン、マグロ等 については、引き続き調査を行うことになっております。このような状況を踏まえまし て、6ページのまとめにございますように、バナナを表示を推奨する品目として加える ことが適当である、とされたところでございます。  このほかにも、表示方法について、6ページにございますように、コンタミネーショ ンの防止、特定原材料等を使用していない旨の表示の新規促進。こちらは、例えば小麦 粉を使わないで製造した食品について「本品は小麦粉を使っていません」と表示するこ とによって、患者さんの食品の選択を広げる目的がございます。  7ページの(4)「アレルギー疾患を有する者にわかりやすい表示方法」。こちらは、 例えば実際に小麦とかいう表示を、色を変えたり文字の大きさを変えることによってわ かりやすい表示を可能にしようというものでございます。  (5)「制度普及啓発、研究の促進等」においては、表示制度を正しく理解していた だくように、リーフレットを通じた普及啓発、推奨品目の検知技術開発等々、また、外 食産業等においても情報提供の促進が望ましいと書かれております。  この報告書を受けまして、平成16年8月に1か月間のパブリックコメントに40件ほど の御意見をいただきましたが、これらを踏まえて平成16年11月の薬事食品衛生審議会食 品衛生分科会食品表示部会においてご議論いただき、12月に食品衛生分科会に御報告い たしまして、12月24日付で報告書の内容を踏まえ、バナナを推奨品目に加える等の見直 しを行ったという内容の通知を各都道府県並びに業界団体に通知いたしたところでござ います。  したがいまして、現在のアレルギー表示対象品目については、卵、乳、小麦、ソバ、 落花生の5品目が義務、バナナを加えましたエビ、カニ、大豆などの20品目が現在、表 示が進められるもの、となっております。  なお今後は、今回の見直しを踏まえまして新たなパンフレットを現在、作成している ところでございます。食品の表示については消費者の関心が高いことから、食品の表示 普及啓発のための予算を毎年度700万円程度確保しており、今回のパンフレットにおい てもその予算を活用し、作成するところでございます。作成され次第、各都道府県の保 健所等に配付し、活用させていただく予定でございます。  また、海老澤先生が主任研究者となりまして免疫アレルギー研究事業の中にあります 食物等によるアナフィラキシー反応の原因物質の確定、予防・予知法の確立に関する研 究において、今年1年間、実態調査が行われているとのことです。  また、現在では採択課題には確定しておりませんが、食品安全部においては、食品安 心・安全確保推進研究事業の中において、食品中に含まれるアレルギー物質の検査法開 発に関する研究という研究事業を立ち上げております。  また、平成16年度の特別研究において、藤田保健衛生大学のウリス先生が食品中のア レルギー物質の同定と表示方法に関する研究をされておりますので、こういった科学的 な知見をもとに、今後も、より適切な表示制度になるよう努めていきたいと考えており ます。  以上、駆け足でございましたが、食品衛生法におけるアレルギー対策、アレルギー表 示制度の御説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。 〇秋山座長  どうもありがとうございました。今の食品表示につきまして、何か御質問等はござい ますでしょうか……。特にないようですので、何かありましたら総合討論のところでお 願いいたします。  続きまして、同じく患者さんを取り巻く環境の視点ということで、シックハウス対策 について、厚生労働省健康局生活衛生課から御説明をお願いいたします。 〇健康局生活衛生課  資料13を用意してございます。シックハウス対策についてでございます。生活衛生課 については、建築物の衛生対策について所管している部署でございまして、本日、委員 になっておられます池田先生等にご助言をいただきながら対策を進めております。  アレルギー対策との関係でございますが、担当課の認識を少し申し上げますと、先ほ どの食物アレルギー等々と少し意を異にしておりまして、非常に機序あるいは病態、そ れから対策についてオーバーラップしている部分がある、けれども包含関係にはないと 認識しております。オーバーラップしている部分についてきちんと連携をとっていかな ければいけない、そういう対策だと認識しております。  資料13に基づいて御説明申し上げますが、シックハウス症候群でございます。いわず もがなで申し訳ございませんが、少し御説明申し上げますと、シックハウス症候群につ いては、居住者の健康を維持するという観点から、問題になる住宅等の室内環境におい てみられる健康障害と理解をしております。  機序あるいは要因としては、複数の機序、要因、あるいは複数の病態、複数の患者群 を包含している概念だと認識をしております。その中で特に機序、病態としては、主に は中毒によるもの、アレルギーによるもの、その他、明確でないもの。そして要因とし ては、化学物質、カビ・ダニ等を初めとする生物学的要因などが考えられます。  イのアレルギーによるものでございますが、カビ・ダニ等の生物学的要因によるもの が主でありまして、湿気あるいは住まい方等によりカビ・ダニが沢山出る。それがアレ ルゲンとなってシックハウス症候群が出てくると考えております。  科学物質については、代表的な化学物質であるホルムアルデヒドについて、これはI Gを産生する、あるいは4型アレルギーの原因となるといった研究知見もございます が、臨床像と必ずしも並行していないということもございます。ただ、アレルギー疾患 をおもちの方がかなりこのシックハウス症候群と方とオーバーラップしていらっしゃる ことから、本体としての病態は直接的にはリンクしていないけれども、関連する病態だ という認識を研究者の方からコメントとしていただいております。それが一つ、連携し なければいけないという病態面からでございます。  もう一つが症状でございます。シックハウス症候群のメインの症状として、皮膚、粘 膜刺激症状ということでございます。この症状は、アレルギー疾患あるいは感染症の患 者さんでも非常に高頻度に認められるものでございまして、おそらくご本人にとっては 自覚症状のみではアレルギー疾患等との関連性が非常につきにくいものだと考えており ます。そういった意味で、症状、相談、あるいは臨床体制等について連携をとらなけれ ばいけないと認識をしております。  その2点の部分で非常に関連があり、対策を連携していかなればいけないと考えてお ります。  二つ目の〇でございますが、この問題についてはさまざまな取り組みがなされており ます。先ほど申し上げましたように建築衛生の観点からも対応をしてございますが、建 材等からの化学物質の放散量、あるいは建築物自体の設計や施工、あるいは住まい方、 あるいはカビ等の影響、それから感受性の問題等々について対策を進めているところで ございます。  三つ目の〇は、平成15年度には室内空気質健康影響会というものを設置いたしまし た。この会には秋山先生にもお入りいただきまして、これまでのシックハウスの知見を とりまとめていただきました。  2枚めくっていただきますと、その報告書のポイントが書いてございます。左にシッ クハウス症候群とございますが、先ほど申し上げましたように、さまざまな病態あるい は要因等に基づく健康障害の総称という認識でございます。症状は、皮膚・粘膜刺激症 状がございまして、非常にアレルギーの症状と重なっておりまして、自覚症状だけでは なかなか判別しにくい。それから関連印紙としては、化学物質、カビ・ダニ等がござい ます。カビ・ダニ等の要因につきましては、病態としてアレルギーの関与があると考え ております。  右の化学物質過敏症も、シックハウス症候群の中に入る・入らないという議論が非常 にございまして、一部重なっているとは認識しておりますが、こちらの機序あるいは病 態については研究が進められているところでございます。室内環境のみの影響によらず 発症するものあると認識しております。ただ、いわゆる化学物質過敏症といわれている 方の83%ぐらいがアレルギー的な素因をもっているという報告もございまして、このあ たりはもう少し研究を進めていかなければならないと認識しております。  また、最初に戻っていただきまして、政府においては平成12年から「シックハウス対 策関連省庁会議」を設置しておりまして、ここに書いてございますような関連省庁が連 携をしてこれまで対策を進めてきております。  2ページに、主な対策がございます。特に関連する施策としては、調査研究の実施と いうことで、最後のページに現在、行われている調査研究の一覧を載せております。化 学物質、あるいは生物学的要因、あるいはアレルギー、あるいは中毒といったさまざま な観点からの調査研究を進めております。  2番目は、相談体制の整備。都道府県等において実施をしていただいております。  クリーンルームの整備。これは、診断とか治療に非常に有効だと考えておりますが、 相模原病院を初めとして全国の6か所に設置をしております。  4番目は化学物質の関係ですが、ホルムアルデヒドの量の測定を義務づけたり、ある いは13物質について室内の濃度指針値等の策定等を行っております。  ア.国土交通省におきましては、ホルムアルデヒド等の規制を行っております。その ほか、経済産業省、農林水産省においては、これも特に化学物質でございますが、建材 等において一定の規格を設定をしております。  シックハウス対策の充実の推進ということで、厚生労働省の17年度の予算を載せてお りますが、17年度においては、欧米でも特に問題となっておりますカビ・ダニ等の生物 因子におけるアレルギー疾患との関係をさらに明らかにするとともに、パンフレット等 を作成して正しい情報の提供、相談体制の構築をしたいと考えております。  次のページは、先ほど御説明申し上げましたので省略いたします。  その次のページ、先ほど概要をお話しをいたしました関係省庁での取り組みについて 簡単にまとめております。後ほどごらんいただければ幸いでございます。  説明は以上でございます。 〇秋山座長  どうもありがとうございました。今のシックハウス対策についのて御説明に対して、 何か御質問等がございましたらお願いいたします……。ないようですので、その次に移 りたいと思います。  続きまして、議事の3「アレルギー対策の論点整理について」ということで、事務局 から御説明をお願いいたします。 〇事務局  資料14、15とございますが、まずは資料15より御説明申し上げます。  こちらは、アレルギー対策論点整理(案)ということでございます。3月7日に開催 されましたリウマチ・アレルギー対策委員会において、このような論点で整理してアレ ルギー対策を検討していくというふうに審議されたものでございます。順にご案内申し 上げます。  第一は、アレルギー対策の基本的方向性の主な論点は、今までのアレルギー対策につ いてどのように評価するか。また、今後、アレルギー疾患を克服するためにはどのよう な基本的方向性をもっていくべきか。  第二に、研究の推進。その一として、効果的かつ効率的な研究推進体制の構築。二 に、今後重点化すべき研究分野。  第三は、医薬品の開発促進等。  第四は、医療提供体制の整備。一.医療提供体制、二.人材育成、とございます。  第五は、患者QOLの向上等。  第六は、情報提供・相談体制。一として情報提供の体制整備、二に相談体制の整備。  第七は、患者を取り巻く環境の改善。  第八は、関係機関との連携。  第九は、その他。  となっております。このような論点で委員の先生方にはご審議いただきたいと考えて おります。  次に資料14に戻りますが、こちらは3月7日のリウマチ・アレルギー対策委員会にお いて、こちらの座長でいらっしゃいます秋山委員がリウマチ・アレルギー対策委員会の 委員でもありますが、そちらでご発表いただいたときの資料でございます。「リウマチ ・アレルギー対策研究及び医療の現状と問題点 我が国のアレルギー分野での対策の必 要性」ということでございますが、我が国のアレルギー分野での必要な対策、長期目 標、そして我が国のアレルギー分野でも長期目標達成のための長期的戦略設定を必要と する分野について、それぞれ研究等の視点から書いていただいております。  「我が国のアレルギー分野での長期的戦略設定の背景と今後に残されている課題」と いうことで、我が国におけるアレルギー対策もしくは現状についての問題点についても 提言していただいておりまして、それぞれ疫学、診断、治療と予防、医療体制、病態発 症機序と項目立ててご提案されております。  簡単ではございますが、以上で事務局からの説明を終わります。 〇秋山座長  どうもありがとうございました。それでは、これで資料の御説明をいただきました が、これからいろいろなディスカッションに入っていきたいと思います。特に本日、事 務局から、5回で、最終的には論点整理の対応(案)とありますが、対応の案をつくっ ていくということだと思いますが、特に最初の3回はディスカッションといいますかい ろいろ御意見を出していただいて、あとの2回でまとめる、そういう方向性をいただい ております。  特に本日は第1回目でありますので、最初にできるだけ話に入りやすいものからとい うことで、第1の「アレルギー対策の基本的方向性」、第4番目の「医療提供体制の整 備」、5番目の「患者のQOLの向上等」、この3点を中心に皆さんの御意見をいただ きまして、活発なご討論をいただきたいと考えております。  まず第1の「アレルギー対策の基本的方向性」ということでは、今までのアレルギー 対策についてどのように評価するか、また、今後、アレルギー疾患を克服するためには どのような基本的方向性をもっていくべきかというのが主な論点になっておりますが、 これは研究面、実際の我が国おけるアレルギー医療の問題につきまして、医療者側の方 あるいは患者さんの代表の方等、多角的な分野の方が本日はお集まりですので、ぜひ活 発な御意見を出していただければと思います。どなたか、ございませんでしょうか。  では、話の切り出しの点からいいますと、今、一つは、厚生労働科学研究の中の免疫 ・アレルギー等予防・治療研究事業というのがあるわけですが、その研究はもともとは 平成4年からということですが、こういう形になってきたのは平成9年からだと思いま すが、それにここにいらっしゃる多くの先生たちがかかわってこられたと思いますが、 その研究面でのこれまでのあり方、あるいはその方向性ということについて何かござい ましたら。あるいは、逆に実際の診療現場でのいろいろな問題点等から入っていったほ うがいいかもしれませんが、そういうことについて、例えば栗山委員は何かございます か。 〇栗山委員  今、ここでは「アレルギー対策の基本的方向性」と書いてあるので、研究のほうにあ まり言及する場ではないのかもしれないのですが、予算についていえば、資料6の「ア レルギー疾患に関する研究等の推進」というのを拝見しておりまして、ここは研究なの でしかたがないことだとは思うのですが、研究のほうにとても予算がついていて、実際 に患者に研究の結果を具体的に活用するためにどうするかということが少ないような気 がするのです。ただ、たぶんそれは相談窓口の方への研修制度とか情報提供ということ でカバーされているのだとは思うのですが、研究とプラスそれをどう患者のところまで 届けて、患者が自分で治していこうという行動に結びつくまでのプロセスをもう少し厚 くしていただけたらと思います。  それから、そういうものをつくるときに患者の視点というか患者の参加をぜひお願い したいなと思っています。具体的には、これから中で対策をどうしていくかというとき に少しずつお話しさせていただけたらと思います。 〇秋山座長  今は患者さんの視点からということで、研究へのご希望があったわけですが、特にど の視点からということではなく、広くいろいろ御意見を出していただければと思います が。 〇山中委員  行政の立場で入っておりますので、このデータを見て非常に反省をさせられたという 感想をお話しさせていただきたいと思います。  資料12にもありますように、都道府県におけるアレルギー対策はどんな対策をしてい るかという調査の結果をみましても、アレルギー対策については相談窓口は多くのとこ ろでつくっていただいておりますが、例えば医療計画とか地域保健計画にこういった対 策が盛られているかというと、ほとんど盛られていないのが現状のようです。私ども青 森県でも相談窓口しか設置していない状況です。  行政でこういったことをするにあたりましては、例えば制度があっていろいろな法律 があって、それに基づいてやるという場合、それから、患者さん等のニーズが非常に高 い、そういったものについてはどうしても優先順位は高くなるのですが、アレルギー疾 患については直接的に、食物アレルギーについてはアナフィラキシーショック等で命に かかわる部分はありますが、どちらかというとQOLのほうに視点を置いた対策とか、 アレルギーとうまくつき合っていくための相談とか、そういったことにシフトをしがち で、県全体としてアレルギー対策をシステマチックに考える視点に欠けていたのだろう なという反省をもちました。特に人口の3割の方がたがアレルギー疾患をもっていると すると、今後、行政としてもこういったことに積極的に取り組んでいく必要があるのだ ろうなという感じはいたしました。  特に相談窓口については、平成13年度から相談員さんの養成ということがあります が、実際にこういったデータを見せていただいても、各県で数人の相談員だとすると、 その方を十分に活用しているのか、活躍されているのかどうか、その辺は私自身もどこ に相談員さんがいらっしゃって活躍しているのかわからない状況です。そういった相談 員さんを計画的に育成するとか、あるいは活用していくために、例えばアレルギーのご 専門の先生方がそういった方がたをサポートしていくシステムとか、システムを今後つ くっていく必要があるのだろうという感じをもちました。  今のところ、そういった反省のお話で申し訳ないのですが。 〇秋山座長  ありがとうございます。今、地方自治体からの現在の体制と今後の方向性のお話があ ったと思いますが、ほかにどなたかございませんか。 〇横田委員  小児科医の立場から、反省します。今、ご存じのように小児の救急医療は非常に大き な問題になっておりますが、ここにおかれましたアレルギーというものを個別にみてみ ますと、例えば第4のところで、小児の気管支喘息の問題、それからアトピー性皮膚 炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、食物アレルギーと挙げられておりますが、例えばアレ ルギー性鼻炎、花粉症に関しましても、小児で非常に増加しているということがいわれ ています。しかしこの分野は、ここに挙げられていますように、今、スギ花粉とか対策 すべき対象は非常に明確だと思うのです。それから、アトピー性皮膚炎の臨床現場をみ ていますと、一つはステロイドの軟膏をご家族に説明するのにかなり時間がかかってい る状況。ポイと軟膏だけを処方すればいいという問題ではなくて、どういう使い方をす るかということを食物アレルギーのかかわりの中でも話をしなくてはいけないという事 情がございます。  それから気管支喘息、これが小児のアレルギー対策のかなり中核的な対象だと思うの ですが、気管支喘息という病状をみていますと、先ほどの小児救急体制の中で喘息児へ の対応というのが実は大きな分野を占めていることは、皆さん、ご存じのとおりです。 喘息に対しての問題は、そのように夜間の救急対応を必要とする部分と、そういう子ど もさんは日常の対応になかなか不備がある子どもさんたちが多いこともはっきりしてい ます。私どもの協力病院の一つで、年間8000人、喘息の子どもさんをみているところが ございまして、そこへ集中的に喘息の専門医を3人、配置したところが、なんと5年の 経過で3000人まで減らすことができているのです。いかに日常対応が大事な疾患である かということが問題になります。  そうしますと、そういうたくさんの子どもさんが喘息という状況に陥っているとき に、必ずしも喘息の専門医、アレルギーの専門医だけが対応していればいいという問題 ではなくなるわけです。しかも夜の対応が特に発作という場合には多くなるわけですか ら、そうしますと総合医療のできる小児科医が対応すべきレベルの問題と、それから専 門医が対応するレベルの問題と、一つの疾患の中でもいろいろな対応の仕方を考えてい く必要があるだろうなと思います。  それから、多くの小児科というのは開業医の先生は夜は閉めてしまいますから、地域 の基幹病院が対応している。そこの基幹病院は、現時点では大体3〜4人が24時間対応 している状況ですから、十分深い対応ができていない。そうすると、単に発作のときだ けの対応になってしまう。それで、先ほどお話しした日常の予防対応というのができて いないわけです。そうすると、これは小児科医がサボっていた反省なのですが、小児医 療全体のシステム化がどうしても必要であろう。そうすると、小児救急と絡めて小児科 医の集約化、集中化という部分と、それから啓蒙を含めた日常のアレルギー対策、こう いうものを立てていくある種のシステムを、つまり日本の小児医療のシステムをちゃん と構築するべきであろうということを提案したいと思うのです。  その場合に、例えばいろいろ調査研究、先ほど栗山先生から、研究がなかなか一般的 に反映されていないというお話があったと思うのですが、まさにそういう小児医療をつ なぐシステムをつくることが大きな研究だろうと思うのです。現在、全国に26の小児病 院がございます。そして、現在、小児科に喘息児が入院する率は以前と比べればずいぶ んと減っております。そうすると、地域の喘息児を外来で対応しながら啓蒙していくと いう状況は、おそらく小児病院が中核になるはずです。しかし、26のうち、国立の小児 病院は国立成育医療センター一つしかなくて、あとはほとんどが県立病院もしくは県立 民営という形でやられています。そうすると、厚労省等の国がそこに関与するというこ とはほとんどなくなってしまうのです。  ですから私のもう一つの提案は、こういう子どものアレルギー対策という面で厚労省 と小児病院との連携といいますか、国がアレルギー対策ということでのバックアップを 強力にお願いして全国の26の小児病院をつないだシステムをつくっていく、そういうこ とをやるべきであろうと考えています。以上でございます。 〇秋山座長  どうもありがとうございました。非常に貴重なご提言だと思います。ほかにどなたか ございますか。 〇古江委員  私も、先ほどの栗山委員、それから山中委員のおっしゃるとおりの考えをもっており ます。今回、EBMの作成に携わらせていただいたのですが、アトピー性皮膚炎の一つ ひとつの治療、かゆみの軽減の仕方等を世の中に普及させよう、あるいはもっとわかり やすい形でということを考えただけでも、インターネット活用にも限界がある。やはり 行政や患者さんたちの団体の方がたとの連携プレーがすごく大事であって、また、それ なしでは本当の意味のニーズにはこたえられないのではないかということをすごく感じ ております。ですから、こういう会をもちまして、そのうえで非常に深い連携をとれる ようなシステムがぜひ構築できればと考えています。  それから、資料3を見て改めてびっくりしたのです。と申しますのは、こういう人生 の長いスパンにわたる統計を今まで見たことがなかったですし、あまり深く考えたこと もなかったものですから、これはアンケート調査ですので、本当のアレルギー性皮膚 炎、アトピー性皮膚炎の罹患率をみますと、おそらく50%掛けをすると合うのではない かと思います。そういたしますと、幼・小児期、思春期、成人期と、大体このパーセン テージになると思うのです。やはり今、日本の高齢化社会でかなり高齢の方も罹患され ておられるということが、改めて浮き彫りにされるのではないかと思います。  それから実際の臨床でも、今までは人生60年、70年と、あまり高齢者のアレルギーの 存在、アトピー性皮膚炎などの存在、あるいは喘息等の存在はそれほど大きな課題には されていなかったのではないかと思いますが、現在、高齢化社会に突入いたしまして非 常にたくさんの方がそれに悩んでおられることが、実はこの数字からでも浮かんでくる のではないかと考えます。ですから、小児・思春期、成人期は大事なのですが、高齢者 の方の対策あるいは普及といったものもそろそろ目を向けたほうがいいのではないかと 思っています。 〇秋山座長  ありがとうございます。確かにアレルギー疾患というのは、乳幼児からまさに80、90 のご高齢の方までかかわる疾患ですし、あるいは表現形の症状も、皮膚、気道、消化 管、あるいはアナフィラキシーというようにほぼ全身にかかわる疾患だと思いますの で、そういう意味でほかの分野とは異なった全科がかかわらなければいけないことと、 あと、環境中の問題等があったり、あるいは自己管理という問題があって、そういう意 味で非常にこの会のようにいろいろな分野の方が一緒になって考えていくべき疾患だと 私自身も思っております。  どなたかほかにございますでしょうか。 〇島崎委員  私がこの委員会に参加していますのは、主にアレルギー疾患患者というよりは、むし ろアナフィラキシーで救命センター等へ運ばれて来る重症のアレルギーといいますか、 そういう患者にかかわる問題のシステムづくりをどうするかというところで、私が入っ ていると思います。実際に現場では重症の喘息重積とか、国立相模のアレルギーの研究 で救急医学会に協力がございまして、その中で1年間でのアナフィラキシーによる心呼 吸停止患者、これは食物アレルギーに中心に調べられたのですが、データですと、2003 年の1年間で4例の食物アレルギーによるアナフィラキシーの心肺停止患者が、そばと チョコレートとマグロとエビ。この患者は病院に運ばれてくるまでに30分以上かかって いるのですが、病院の中でエピネフィリン等を投与したけれども、最終的には救命し得 なかった。こういう患者も、30分以内になんらかのエピネフィリン投与等がなされてい れば助かった可能性があるという報告で、これは学会誌といいますか、広報の中にも近 々載ると思うのですが。  そうしますと、こういうアナフィラキシーあるいはアレルギーの既往のある患者さん が、例えばエピネフィリンの自己注をどういう形で患者さん、あるいは患者家族にもた せるかというシステムづくりが必要かなという気がしますし、それから、医療現場で実 際にそういう処方をするときにどういう形で救急の先生あるいは家庭医等が処方を渡す システムをつくるかというところも必要かなという気がします。  資料の3を見ておりましたら、アレルギー症状を呈する患者というのは学童期に結構 多うございますね。これを見ていますと、こういう食物アレルギーあるいはアナフィラ キシーが起こったときに学校の先生方への教育システムをどうするか、あるいは学校内 で、ではエピネフィリンを使えるようなシステムにするのか。アナフィラキシーの一番 有効な治療法というとエピネフィリン注射ということになりますから、その辺をどう供 給していくか、あるいは自己注ができるシステムをつくるかということが必要ではない かと思います。 〇秋山座長  ありがとうございました。エピネフィリンの自己注射に関しましては、最初に0.3ミ リグラムのおとなのハチ・アナフィラキシーに対する適用ということで通って、それが この4月からですか、小児の0.15と食物・薬物アナフィラキシーへの補助治療というこ とで通るようになって、薬物に対してできたわけですので、今後はそれをいかにちゃん と使うかということ、特に先生がおっしゃったように小児の場合には、ほかのインシュ リンとかグロスホルモンのように安定しているときに打つわけではなくて、まさにアナ フィラキシーになったとき、あるいはなりかかったときに打つわけですので、ご本人が 打たない、周りの人が打たなければいけないという状況があると思います。そういうこ とに対する法整備も含めて、あとは学校等の社会への整備といいますかそういうことが 必要なのだと思います。  今は、方向性だけではなくて医療体制、あるいは場合によっては患者さんのQOLの 向上ということも含めた形で結構だと思いますので、逆に自由に討論していただいたほ うが今後のためにはいいと思いますので、何かありましたらぜひ。 〇丸井委員  私は、先ほど御紹介がありましたように食物アレルギーの表示のほうから参加させて いただいています。全体的な話として、今、いくつかの御意見がありました。私は公衆 衛生が専門ですので、背景になるような話をしたいと思います。  一つは、今お話しのように、医療の現場前線のところで、例えばアナフィラキシーの おお子さんや患者さんをどうするかという話があります。そのもう少し手前のところ で、アトピーなども含めていわゆる一般の患者さんにどう対応するか。おそらくその手 前に、医療機関で患者さんになるかならないか、そういう意味ではごく軽度で、医療機 関に来ないけれども症状はもつというような方がたと、それから、その背後にあまり症 状を出さないような方がいる。日本の全体を考えるとそんなふうになっていて、どこを 対象にしてどういう対象をみていくかということで、少し対応が変わってくると思いま す。実際にアナフィラキシーの患者さんをどうするかという話と、病院に行こうか行く まいか迷うぐらいの軽度な方、その辺を一括でなく、どのようにしていくかということ で、ある程度対象を分ける必要が出てくるかもしれないと思います。  軽度の方、あるいはこれから何かのきっかけで重症化するかもしれない方において、 本日は建築の先生もみえていますが、人間と環境とセットで考えていかなければなりま せんので、そういう環境をどうするか。そのための基礎的な話として、研究班の中でも 疫学研究が十分かというお話がありました。私は公衆衛生の中でももともと疫学をやっ ておりましたので、例えば資料3を見せていただいても、疫学研究で、これは母数がど れぐらいかというのは書いていないのですが、年齢別にございます。常識的に考えると いつも出てくることなのですが、アレルギーの症状が、ある時期に子どもをすごした方 には少ないとか、そういう世代のもっている特徴なのか、それともある年齢層に特徴な ものなのか。  別の言い方をしますと、例えば今、0歳から4歳、10歳以下のお子さんは、このまま ずうっと続いて、将来、中年になっても高齢になってもアレルギーをそのままもってい くのか、それともある種のものはだんだん改善されてきて下がっていくということであ れば、この断面だけでなくて、ある人間の一生の中である程度見当をつけていくよう な、あるいは、しろうと的に考えると、高齢者になってくるとアレルギーの症状は緩和 されるのではないかと思うのですが、これをみますとそうでもなさそうです。その背景 には、また別の症状、別の原因があるのかもしれないということを考えさせられまし た。  資料3はそういう意味では非常におもしろいのですが、全体としてこれを説明できる ような疫学研究がもう少しあってもいいかなと思います。もちろん、アレルギーそのも のが症状をきっちりと定義できる種類のものではないこともあって、疫学研究は難しい かもしれません。というわけで、この資料3を説明できるような研究が疫学で可能なの ではないかと思います。  最後ですが、主な論点ということであげてくださったもので、「今後、アレルギー疾 患を克服するためには」というこの「克服」というのがどういう内容、中身を想定する かということで非常に違ってくると思うのです。一人もアレルギーの患者さんがないよ うにするのか、そうでなくて、それなりの素因をもった方はいてもいいけれども、うま く日常の予防対応ですませていくようにできることを目指すのか、アナフィラキシーの 患者さんはいることはやむを得ないのか、あるいはある種のアレルギー、特に食物アレ ルギーに関しては予防が可能なわけで、そういう意味で克服の中身、いったい目標とし て克服というのはなんなのかというところを、基本的方向性の項目で事務局のお考えな り、この検討会で克服の中身をどうするのか、それが目標として明確でないと、さまざ まな対策等が難しいのではないかと思いました。 〇秋山座長  今の丸井先生の御発言の中には、アレルギー疾患についての非常に根本的なという か、永遠の命題というか、それがかなり隠されていたと思いますが、例えば、ある意味 では長期予後といいますか、それに関しても、我が国においては長期予後を経時的にち ゃんとみていくシステムはまだできていないと思います。世界的にも20年、30年という のがあると非常にすばらしいとみえますが、そういう意味での長期経過をみていけるシ ステムがあれば我々も非常にいいと思いますし、それから我々おとなの立場からいいま すと、小児発症のアレルギー疾患と成人発症のアレルギー疾患、喘息でいうと小児発症 の喘息と成人発症の喘息というのは、同じ表現形でも病態はかなり違うだろうというの が我々成人からみた場合の考え方なのですが、それを疫学的にどう証明するかという問 題もあると思います。  あと、克服ということに関して、アレルギー疾患は治癒するかどうかというのも、こ こにいらっしゃるアレルギー関係の先生たちの非常に関心のあるところなのですが、現 時点でアレルギー疾患は治らないというのはおとなの立場から、小児の場合でもおそら く治癒といっても、例えば喘息の場合に、喘息の必要条件である気道過敏性まで完全に なくした意味で治癒といっているかどうかという問題があるとか、ですから克服という のも、治癒という意味での克服なのか、あるいは発症を完全に防御できるという意味で の克服なのかというのは、ここで定義するのは難しいと思いますが、かなり本質的な問 題をお話しになったと思います。  ほかにどなたかございますでしょうか。 〇池田委員  今の丸井先生のお話に関連して、私は環境を整備する側の建築の立場から参加してい るわけなので、その場合、なんでもそうなのですが、問題に関するドーズレスポンスリ レーションシップというのがしっかり確立して、この辺を目標にしてなんとかしましょ うというのが出ないと、どうやっていいのかわからないというか、我々にとっては目標 がなくなってしまうという感じですね。どこがゴールなのかわからないで走らされてい るという。とにかくいつでも環境中にアレルゲンをゼロにしておけば問題がないのはわ かっているのですが、事実上、それは不可能だし、あまり意味のないことだと思います ので、その辺の基本的方向としては早く疫学調査等々から、この辺なら問題ないという レベルを出すことは工学的な研究を進めるうえで非常に大事なことなので、一刻も早く 出していただきたいというのがあります。  そのくらいでございます。 〇秋山座長  ありがとうございました。ほかに。 〇岡本委員  耳鼻科の岡本です。例えば今、花粉症が問題になっていますが、これはほかの疾患と 比べてもわりとすっきりしているのです。原因が明らかでありますし、とるべき対応 も、そういうものの曝露を避ける、あるいは治療をきちっと行うということでわりとす っきりしているのですが、実際にはその対応は簡単ではありません。ただ、これまでの いろいろな厚生労働省の研究などで、例えばガイドラインもつくられましたし、それに 基づいて治療法についてもある程度整理されてきた。ただ、もちろん今後、それをもっ とクリアに向上して検証していく必要があるので、その辺ははっきりしているとは思っ ています。  ただ、一つは、御指摘があったとおり、患者さんへのフィードバックがかなり不足し ている面は否めないのではないかと。ガイドラインといってもあくまでも医療レベルの ところまでですし、患者さんへのフィードバックは不足していることと、あとは、子ど ものほうへの対応で、もっと学校への関与が重要だろうなと。花粉症で教室の中に花粉 を入れないといったことをとってみても、実際にはほとんど対応がとられていないのが 現実です。  あとは疫学調査。これだけ刻々と変化して発症が増加しているといわれいますが、そ れに追いついていくだけの十分な疫学調査が行われていない。そういったところは今 後、研究するにあたってはもっとフレキシブルに、ポイント、ポイントを絞って、ある いは長期的に、そういう対応も必要なのではないかと思います。 〇秋山座長  ありがとうございました。これまでずいぶん疫学研究の重要性ということがいわれて きたと思いますが、先ほどから方向性、あるいは医療提供体制といってきております が、患者さんのQOLの向上等についてということも含めて御意見を伺いたいと思いま すが。 〇山本委員  私は栄養士の山本なのですが、日本栄養士会の代表と言うよりは、この中でも出てお りますように乳幼児のアレルギーが増えている。その乳幼児を預かる保育所に勤務して いる栄養士として参加させていただいていると解釈しております。実際に食物除去をし なければいけないようなお子さんは以前より増えておりますし、中にはアナフィラキシ ーがあるお子さんも増えています。そのあたりは、場合によって小児科のお医者さまと 皮膚科のお医者さまで指示が違っていたりとか、もちろん小さなお子さんですから、お 医者さまは保護者の方に説明なさるわけですが、その親の認識の仕方にかなり差があ る。正しい認識がされていないということもありまして、救急車を呼ばなければいけな いようなアナフィラキシーが実際に起こることもあります。  その辺のところで、先ほどエピネフィリンのお話もあったのですが、実際の保護者だ ったり患者自身だったりだけではなくて、お預かりしているような施設でもそういうこ とが起こり得る。30分以内に対応しなければいけないということが、場合によってはと ても難しいことが起こったりするというところもあるので、そのあたりも考えていかな ければいけないかと思います。 〇秋山座長  ありがとうございました。今の山本委員のお話では、情報の問題等、あとは家族等だ けではなくてそのほかの学校であったり職場であったり、周りを取り巻く人たちへのい ろいろな整備ということですね。そういうことがあったということですが、どなたかほ かにございますか。 〇栗山委員  私どものアラジーポットでは、学校や幼稚園や保育園の先生方にアレルギーを理解し ていただくことを活動のメインに始めたのです。今、先生方がおっしゃったくださった ように、本当に学校の中でアレルギーというのは正しく理解されていないのを痛感して いるところです。なおかつ、親自身が、この場合は患者さん自身ではないので、親が自 分のお子さまの病気についてほとんど知らなかったりという場面によく出くわすので す。私たち、患者会とかここにいらっしゃる先生方の試みは、自分の子どもがアレルギ ーかもしれないという方がいらっしゃるわけです。私たちのところには、病院にいくだ けではなくて、もっと何かほかの情報がほしいという方がいらっしゃるわけです。で も、学校とか保育園とか幼稚園といかというところには、医療機関に行くことさえも考 えないアレルギーの子どもさんをおもちのお母さま方がいらっしゃるのですね。私が見 た実例では、首がもうパンパンに腫れていて、目が開けられないほど腫れている、どう みても食物アナフィラキシーを起こしているお子さまを迎えに来たお母さんが、「あん た、いつまでこんなことをしているんだよ。早く根性で治しな」とおっしゃっている場 面に遭遇したのです。  それは、情報提供をいくらしていても、それにアクセスする意識をもたない方たちが いらっしゃるので、ぜひ早い段階から、例えば厚生労働省であれば保健所での乳幼児健 診のときからの情報提供とか、今、相談員も養成してくださっているのですが、そうい う方がたと一緒に私たちのような経験者の親をご利用いただいて、具体的にではどうし たらいいのかというのを、身近に、手近に、気軽に話ができる状況をつくっていただけ ればと思います。たぶん厚生労働省は、学校はまた違う管轄ということになるのだろう と思うのですが、ぜひぜひ文科省と連携をしていただいて情報提供の場を広げていって いただけたらと思います。 〇秋山座長  ありがとうございます。今、また非常に大事なご提言だと思いますが、省庁間の連携 というのと、今まではよく、医療者側が一方的に働きかけるのではなくて患者さんとの 双方向というのがありましたが、今ですとさらにもう一つ進んで、元患者さんという か、そういう経験者の方が今度はOB、OGとしてまだ経験の浅い方に指導なりをして いく、そういうご提言もあったと思いますが、患者さん同士の助け合いということにも なるのだと思いますが。 〇古江委員  今の栗山委員の御発言は非常に大事だと思うのです。具体的には、私の記憶では、去 年、学校の専門医制度が文部省のほうでスタートしているはずです。その中に今までの 内科、小児科、耳鼻科、眼科以外に、精神科、整形外科、皮膚科、産婦人科の4科が加 わって専門医制度を構築するという事業がスタートしているはずなのですが、それは各 県の教育委員会に任されておりまして、よくよく調べてみますとほとんど現実化してい ないという現実があります。せっかく法制度上、そのようにスタートしたわけですの で、そのあたりも、せっかくこういう委員会がありますので、ここを通して上部の対策 委員会でも議論していただきまして、幅広く教育委員会の方がたを動かせるような仕組 みがあればと考えているのですが。 〇横田委員  栗山委員のお話は小児科医としては耳が痛い部分があるのですが、私が思う一つは、 こういう対策をしていくときに、先ほど、行政の方からのお話がございました。それか ら、私は小児科の側からどういうシステムをつくるかというお話をしました。と同時 に、行政は行政ですよ、患者会は患者会ですよ、ということではなくて、そこをコーデ ィネートしていくシステムが必要だろうと思います。そのときに、いろいろな情報提供 というのがどのように行われるかという非常に重要な数字というものが挙げられるかと 思うのですが、その数字というのが、基本的には疫学の経年的かつ長期的な疫学調査が 常に行われるシステムを我々の日本でもっていないと、なかなかちゃんとした対策には つながらないのではないかという気がしています。  資料5に、免疫・医療ネットワーク支援システム事業というものが国立病院において 行われていて、それが独立行政法人化されたけれども今後も継続していくというのがご ざいますが、これは成人を中心としたアレルギーでしょうか。 〇秋山座長  いえ、これは小児も含めてでございます。 〇横田委員  そうですか。先ほど、日本に26か所の小児病院があって、それを活用すべきだという 話をしたのですが、やはり経年的な、かついろいろな病気の原因へ迫っていくような研 究を進めていくうえの第一歩となるのが疫学研究だろうと思っていまして、その最初の 蓄積がない中で趣味的に研究が行われるようではいけないのだろう。その疫学がきちっ となったうえでの研究であれば、患者さんへのフィードバックもきちっとできていくの ではないかと思っているところです。  実は、先ほどお話がございましたが、以前から小児の喘息は感染症が絡む部分が非常 に強いといわれていたと思うのですが、ごく最近、スウェーデンから、1歳になる前に RSウイルスというウイルスが以前からアレルギーの発症に関与しているといわれてい たのですが、その子どもさんが13歳になったときに横断的に調べたところが、すなわち 1歳以内にRSウイルスの感染症、肺炎を起こした子どもさんを13歳になって調べたと ころが、そういうことを起こさなかった子どもさんよりも倍ないし2.5倍の喘息の発症 率があるというのが出ています。これはだから、13年間、子どもさんをみていたという ことになります。そうすると、13年間、子どもさんがみられる施設はどこかというと、 日本の場合には小児病院しかないだろうということになります。 〇秋山座長  ありがとうございました。疫学に関していいますと、例えば日本では全国的な有症率 の調査というのがなかなかできていないということがあると思います。それにまた、特 に今、厚生労働科学研究の中で喘息の有症率の調査というのが一つの班でやられている と思いますが、小児の場合も、これからだんだん難しくなると思うのですが、学校を定 点としてというのがある程度あると思いますが、特におとなの場合には、今のある職域 とかある地域での小さな調査はありますが、全国的な、あるいは全年齢にわたっての調 査はできていない。それをやる場合には、どうしても行政がなんらかの形でかかわって いかないと、今の個人情報保護法ということもあってだと思いますが、難しいのではな いかと思いますので、横田先生などもおっしゃったように、行政もかかわった形での疫 学調査をある程度やっていく必要があるのではないかと、私も個人的には思っていま す。  ほかにございますでしょうか。 〇山中委員  先ほど、栗山委員から子どもの健診のお話がありました。全部の市町村がシステマチ ックにできているのが、母子保健の中で乳幼児健診とか妊婦さんの健診というのは、市 町村の保健師さんたちはかなり密に子どもさんやお母さん方にかかわっています。実際 にこれは研究所の先生からお話を伺いたいと思っているのですが、例えばおとなであれ ば生活習慣病健診であれば、血液検査等をして細かいデータをもとに詳細に保健師等が 指導できる、あるいはスクリーニングできるのですが、アレルギー疾患については、例 えば検診でスクリーニングをして適切にそれが指導に結びつくというか、そういったス クリーニング方法があるのかどうか、あるとすれば、そういったことが乳児とか幼児の 健診に組み込まれることが必要なのではないかと思います。また、妊婦さんたちに対す る胎児のうちからの予防とかそういったことも出ているようですので、そういう調査研 究とか、あるいは具体的に検診の場に活用できるようなご提言がいただければ、行政と してはシステムはできあがっているので、そこに乗せていけば可能ではないかと思って おります。 〇秋山座長  今の胎内予防、胎外予防というのは、厚生労働科学研究の中で現在もやっているグル ープがあると思います。あと、3歳児健診とか3か月とかそういうときに、例えばスク リーニングで血中のIgE抗体を測定するかどうかという議論がたしか昔あったのだと 思いますが、それは横田先生、何かご存じですか。 〇横田委員  地方自治体の対応でやった時期があります。横浜でもございました。しかし、立ち消 えてしまったのです。なんでだかよくわかりません。 〇山中委員  やはり、アレルギーというのは個別の問題なので、実際の健診に組み込むというのは 非常に難しいのではないかと思います。ですので、個別の相談のシステムを抜けないよ うに、なおかつ適切に対応できる一番身近なのは市町村ではあるのですが、市町村の保 健師等がそういった相談員として育成していく、あるいは市町村の保健師さんをまたサ ポートする一般医の先生方、また、その一般医をサポートする専門医、そういったシス テムをつくっていって、なるべく抜けない、そういう体制をつくっていく必要があるの ではないかなと思っています。健診だけでそういった対応ができないとすれば、起きて きた対象に対していかに細かく対応できるかということを議論していく必要があるのだ と思います。 〇秋山座長  ありがとうございました。先ほどの早期診断、早期介入が有用であるというのは、特 に喘息の分野ではそういうデータといいますかエビデンスがかなり出ていまして、です ので早期診断をどうするかということと、あとはそれを社会的にというか、検診でやる かどうか、そういう両面から必要なのだと思います。 〇山本委員  今、アレルギーの原因物質に対してアレルギーが起こる、それをどうやって防ごうか ということも大切なのですが、これからの方向性の一つとして、実際に私どもの職場で もずっと、これは食物制限をしているお子さんのデータだけですからアレルギー全般の 調査とはいえないのですが、15年ほど調査している中で、食事制限をするお子さんの比 率が増えています。ここで増えているというのは、原因物質が増えたとかそういうこと だけではなくて、環境の問題とかそのほかの周りのものを含めて考えていかないと、解 決策に結びつかないのではないか、そのあたりも考えていかなければいけないのではな いかと思います。 〇秋山座長  ありがとうございます。ほかにございますか。 〇島崎委員  法律的なことを含めてお聞きしたいのですが、アナフィラキシーそのもので、そうい う既往のある人に対して、特に林野庁の職員とかあるいは養蜂業者に対して、ハチアレ ルギーでエピネフィリンを自己注射できるということになって、それを処方できるとい うことになっているのですが、たとえば食物アレルギーの既往がある人とか、あるいは 重症の喘息も入るのかな、そういう人たちが例えばエピネフィリン等を自己注射できる ようなシステムは法律的にはかなり難しいのでしょうか。あるいは、こういう委員会で そういう結論が出れば、例えば今いった学校とか非医療従事者がそういうものを所持し たり、あるいは処方を簡単にできるようなというのは、法律的にはどうなのですかね。 〇秋山座長  本人に関しては、もう既に現在、処方もされているわけですね。エピペンといいます が、我々も患者さんに対してビデオを見てもらって教育をしたうえで、処方はできるよ うになったのです。 〇島崎委員  それは、子どもに対しても。 〇秋山座長  今回、0.15も出るようになりましたので、子どももできるようになっています。ただ し、それはあくまでご本人で、周囲の方というのはどうなっているのですか。 〇疾病対策課長  まず自己注射については、医療行為自体が他人に対して反復継続していくようなもの を業として整理しています。しかしながら自己注射は本人個人に対しての行為であると いうことから、当初、かなりいろいろと自己注射の取り扱いについては議論されており ましたが、それはご自身でやっていいだろうというような整理であります。  ただ、今のエピネフィリンの自己注射については、これは秋山先生がお詳しいと思う のですが、薬事審議会ではどういう議論になっているのかというのは私どもはまだ十分 把握しておりませんので、どのような補助療法としてのエピネフィリン自己注射の取り 扱いなのかということは、場合によっては用法・用量のところで併せてご議論されるの かもしれません。 〇秋山座長  というか、一昨年の8月にハチ・アナフィラキシーに対して0.3ccのエピネフィリンは 認可されまして、そして食物等、薬物等に関して、そしてなおかつ0.15はたぶん4月か ら認可されると伺っていますが。 〇疾病対策課長  そして、先ほど島崎先生がおっしゃったハチ等については、もう既に緊急処理キット ということで認められているという話は伺っております。ただ、今後、もしそれが承認 されることであるならば、どのように自己注射を行っていくのか。周りの人がやるの か、あるいはご本人がどういう状況を察知した場合にすぐ打つのかとか、そういったお そらくマニュアルのようなものを併せておつくりいただくのかもしれません。そこはど うなっているのかわかりません。 〇秋山座長  そこは、厚生労働科学研究の中での食物アナフィラキシーの海老澤班がそれを今、準 備しているのだと思いますし、ただ、今、エピペンを日本で発売しているメルク株式会 社のほうでキットがありまして、その中にすべてのいろいろな情報のパンフレット等が 入っていると思うのです。 〇疾病対策課長  おそらくアメリカでも20年以上にわたる使用実績がある、20か国以上においても使わ れているということですから、そういうマニュアル等があると思いますので、そこは今 までの自己注射と違ったタイプの自己注射というふうに、委員の先生方のお話を伺いま すと感じておりますが。 〇島崎委員  成人の場合は、それなりにぎりぎりのところで判断ができて自己注もできると思うの ですが、学童期とかとなるといろいろ問題になってくる。そうすると、周辺の人が、例 えば保健室とかいう話になると、反復治療のうちになってしまうのかどうかわかりませ んが、非医療従事者がそういう機能をもつというのも結構難しい。 〇秋山座長  そこはおそらくまだ環境整備として十分できていないと理解していますが。 〇栗山委員  環境整備ができていない段階でぜひ申し上げたいと思っているのですが、例えば今お っしゃった自己注射であっても、反復してというと医療行為になるのかもしれないので すが、この場合は緊急回避であるので、ぜひ反復ではないということを強く強く認識し ていただきたいと思っております。それから、日本にはサマリアンローというのはあり ませんが、でもそのままではたぶん島崎先生が調査してくださっているので、少なくと も手遅れのために亡くなった方が15年は14人いらっしゃるわけですね。そのままだと目 の前で亡くなるかもしれない方に対して、その命を助けるためにした行為をどうするか ということを、もちろんこの場で話し合っていただくこともすごく大切だと思うのです が、より広く社会に問いかけていただけたらと思います。例えば除細動器を使うという ことも一つの見本というか例になるのではないかと思います。  私個人としては、目の前で亡くなっていくことを唯一助けられる方法であるとすれ ば、皆さんがその認識をもっていただいて、ぜひぜひ助けていただきたいと思います。 もちろん基本は自己注射であると思いますし、子どもといえども自分のしなければなら ないことを、ある年齢の子どもたちは十分に理解し行動することができると確信してお ります。ただ、それを助けるためのいろいろな方法をぜひそれぞれの立場から考えてい ただければと思っております。 〇島崎委員  今お話しになった非医療従事者が行う除細動が許可になったわけですが、それは私が 座長をやっておりまして、その中にはよきサマリア人等の概念を持ち込まずに、ベーシ ックライフ・サポートをきっちりとできるだけやってください。そして、その人たちが AD、体外式除細動器を使用するのはかまいません。それなりの教育というのですか座 学、実習を含めて、それは3時間なのですが、そういう形でそこをクリアした人は大手 を振ってADを使ってください、という形にしています。  ですから、もし学校等でそういう話になれば、学校の先生方、あるいは保健婦さん、 そういう人たちがそれなりの、BLSも含めて勉強していただいて行うという形は、い けそうな気はしますが。 〇秋山座長  どうもありがとうございました。 〇栗山委員  今、島崎先生に言っていただいたような方法がとれれば、それは一番ありがたいこと だと思います。 〇秋山座長  そろそろ時間になってきたと思いますが、特に御発言がございましたら……。もしな ければ、今回は第1、第4、第5の論点についてということで皆さんの御意見を伺った わけですが、今後、こういう形でのディスカッションがあと2回ほどあって、最後に後 半でまとめていくことになると思います。こういう御意見を生かした形で整理していた だきまして、指針に反映していただくことになると思います。  特に御発言がなければ、事務局から何か今後のことでございますでしょうか。 〇事務局  現在、次回のスケジュールについては調整中でございますので、調整がつき次第、ご 連絡申し上げます。 〇秋山座長  そのほかに連絡事項はいいですか。  それでは、長時間にわたりまして皆さんの忌憚のない御意見を伺うことができまし て、ありがとうございました。今後、あと4回あると思いますので、ぜひよろしくお願 い申し上げます。本日はどうもありがとうございました。                         ○照会先                         厚生労働省健康局疾病対策課                         tel 03−5253−1111                         担当:菊岡(内線2353)