05/03/24 第7回社会保障審議会医療部会議事録について              第7回 社会保障審議会医療部会                      日時 平成17年3月24日(木)                         15:30〜                      場所 厚生労働省7階専用第15会議室 ○企画官  ただいまから、第7回社会保障審議会医療部会を開会します。皆様方におかれまして は、お忙しい中ご出席いただきましてありがとうございます。  初めに、本日の委員の出欠状況についてご報告します。本日は野呂委員、福島委員か らご欠席の連絡をいただいています。なお、野呂委員の代理として三重県健康福祉部医 療政策監室長服部浩参考人、福島委員の代理として健康保険組合連合会医療部長高智英 太郎参考人にご出席をいただいています。また鮫島委員が遅れておられるようですが、 特に連絡がありませんので間もなくお見えになると思います。ご出席いただいている委 員の皆様方は定足数を超えていますので、会議は成立をしています。  次に、お手元の資料を確認します。座席表、議事次第のほか、横長の資料1、資料2 と縦長の資料3の「委員から文書で提出された御意見等」。資料3に本来付くべき「病 院薬剤師業務の変遷」という紙を付け損なっていましたので、あとからお配りしていま す。参考資料が1、2、3とあります。以上です。落丁、乱丁等がありましたら、随時 ご指摘をいただきたいと思います。  以降の進行について、部会長よろしくお願いします。 ○部会長  本日はお忙しいところ、お集まりをいただきましてありがとうございます。議事に入 る前に、欠席の野呂委員の代理として出ていただいている三重県健康福祉部医療政策監 室長服部浩参考人、ならびに福島委員の代理として出ていただいている健康保険組合連 合会医療部長高智英太郎参考人の出席について、ご異議はありませんか。                  (異議なし) ○部会長  ありがとうございます。また、本日は議題1「医療安全対策の総合的推進」に関係し て、社団法人日本病院薬剤師会全田会長に参考人として来ていただいています。全田会 長には、後ほど「医薬品の安全使用体制の確立に向けて」という内容でご説明いただく ことを考えていますが、全田会長の参考人としての出席をお認めいただけますか。                  (異議なし) ○部会長  ありがとうございます。それでは早速議事に入ります。  本日の議題は、「医療安全対策の総合的推進について」及び「小児をはじめとした救 急医療体制の在り方、小児医療や周産期医療といった母子医療の推進について」となり ます。  本日の最初の議題であります「医療安全対策の総合的推進について」は、4時50分ぐ らいまで議論を進めたいと思います。まず事務局から資料1「医療安全対策の総合的推 進について」の説明をお願いします。 ○医療安全推進室長  資料1の説明を申し上げます。資料1に関する参考資料として、参考資料1に関係の 資料を付けています。  医療安全対策に関しては、当部会において2月2日に論点の議論をいただきました。 これを受けて3月4日の医療安全対策検討会議において、この論点に則して議論をお願 いしました。検討会議においては、医療安全対策の今後の方向性に関する報告書を作成 するというスケジュールで検討が行われています。この検討会議における報告書は、こ の医療部会に提出をさせていただく予定となっています。資料1は、検討会議における これから議論する予定の詳細な論点と、検討の方向性についてまとめたものです。  1頁は「医療安全対策の方向性」として「医療安全対策の今後の見直しの方向性」の 基本的な考え方です。医療安全対策検討会議が平成14年4月に取りまとめた、医療安全 推進総合対策に基づき実施してきた医療安全の確保、医療における信頼の確保という考 え方に加えて、今回の見直しにおいては、医療の質の向上を図るという視点を重視する ことにより、医療安全の一層の向上を図りたいという考え方です。  この基本的な考え方に基づいて、医療安全対策の柱としてここに3つの項目を挙げて います。I.医療の安全性の向上、II.医療事故等事例の原因究明・分析に基づく再発 防止対策の徹底、III.患者への情報提供・共有と患者参加の促進です。具体的な議論 については2頁以降に示していますので、後ほどご説明します。  2頁は「医療安全対策検討の流れ」です。医療安全については、平成14年4月の医療 安全推進総合対策という報告書に基づいて、これまでいろいろな施策を実施していま す。その後、医療提供体制全体に関する改革のビジョンが出され、また、平成15年12月 には医療事故が度重なったことを受けて、大臣から緊急アピールが出されています。こ ういった流れ、そしてそれぞれの内容を踏まえて、今後の医療安全対策としては「医療 安全の確保」「医療における信頼の確保」という基本的な考え方に加えて、もう少し大 きな概念として「医療の質の向上」を含めて、もう一歩、医療安全対策を進めたいとい う考え方です。  3頁は、いまの流れ、考え方を国・第三者機関、都道府県、医療機関・薬局という各 実施主体に分けて、それぞれの課題を整理したものです。また右側には、国・第三者機 関と都道府県の責務・役割の明確化も議論の論点として挙げています。  4頁は、この3つの柱のうち1つ目の柱としている「安全性の向上」についてです。 四角の枠の中に書いてあるのは、平成14年4月に取りまとめられた「医療安全推進総合 対策」の該当部分です。「主な課題と見直しの方向性」ですが、「患者の安全を最優先 に考え、『安全文化』を醸成・定着させるという観点から、以下のような方策を検討し てはどうか」ということで、5つの課題を挙げています。それぞれについては、5頁以 降でご説明します。  1つ目は「医療機関等における安全管理体制の充実」です。現状は、全ての病院、有 床診療所に対して、(1)から(4)の項目をお願いしています。また、これらに加えて特定 機能病院及び臨床研修病院に対しては、(1)から(3)を義務化しています。  課題としては、現在、入院機能のある医療機関に対して一定の医療安全対策を講じる ことを義務付けていますが、医療を提供するすべての施設、具体的には診療所等の医療 機関や介護老人保健施設等においても、施設の機能や規模等に応じた医療安全対策を講 じる必要性があるのではないかということです。  検討の方向性としては、診療所、歯科診療所、助産所及び薬局における安全管理体制 として、それぞれの施設の機能・規模に応じて、病院等で講じられている安全対策の一 部を適用することについて検討してはどうかという課題です。また、介護老人保健施設 や訪問看護ステーション等、一部医療を行っていただいている施設においても安全管理 体制の在り方について、同様に検討してはどうかという課題です。  6頁は「医薬品の安全使用体制」です。現状として、ヒヤリ・ハット事例の中でも、 収集事例の約4割が医薬品に関連する事例で、医療事故の中、またヒヤリハットの中で も医薬品に関連する事故が多いという指摘があります。  課題としては、医薬品に関連する事故が多いことを踏まえると、医薬品の安全使用体 制を充実させることが重要です。  今後検討すべき方向性としては、医薬品の安全使用体制に係る責任者の明確化など責 任体制の整備、医薬品の購入から投薬・注射に至るまでの業務手順書の整備及び定期的 な遵守状況の確認、医療機関と薬局における連携。2つ目のマルですが、抗がん剤など 「特に安全管理が必要な医薬品」については、更に上乗せした対策を講ずる必要がある のではないかという点です。また3つ目として、薬局から医療機関への疑義照会を円滑 に進めるための医療機関における安全方針を整備する必要があるのではないか。また、 こういった対策も含んだ薬局における安全管理体制の整備、調剤事故やヒヤリ・ハット 事例の報告制度のあり方等が課題となっています。薬局については、現在ヒヤリ・ハッ トや事故の報告制度がありませんので、再発防止という観点からこういったことにも取 り組んだらどうかという提案です。  7頁は「医療機器の保守点検と安全使用について」です。検討の方向性として、医療 機関の機能や規模等に応じて、医療機器の効率的かつ確実な保守点検の実施や安全使用 のための情報の収集及び院内への周知等を行う等の医療機器の管理体制を明確化するよ う検討してはどうか、ということです。医療機関における医療機器の管理体制、管理者 など明確化されていないというご指摘もありまして、こういったことを検討してはどう かという検討の方向性となっています。  8頁は「行政処分を受けた医師の再教育について」ですが、この問題については別途 検討会が設置されていますので、その検討結果を待ちたいと考えています。そちらのほ うでまとまり次第、こちらのほうと整合を取らせていただきたいと考えています。  9頁は、2つ目の柱としている「原因究明・分析、再発防止」です。この枠の中は同 様に、「医療安全推進総合対策」の抜粋です。「主な課題と見直しの方向性」ですが、 これまで集められたヒヤリ・ハット、事故等事例の詳細な分析を行うとともに、具体的 な活用方策を検討すること、また原因究明や分析、再発防止策の検討のための、新たな 制度に関する検討を行う、ということが大きな柱です。  10頁は「ヒヤリ・ハット事例及び事故事例の分析と活用について」です。課題として は、ヒューマンエラー部会などでも度々ご指摘をいただいている点ですが、ヒヤリ・ハ ット事例の分析結果が医療安全に資する具体的対策に十分活用されていないのではない かという点、また、医療事故事例の報告制度のあり方についてです。  検討の方向性ですが、これまでに収集されたヒヤリ・ハット事例の詳細な分析を行 い、医療安全に結び付くような対策等について具体的な提言を行うとともに、今後は、 公表・還元の方法について見直し、更に再発防止に役立つような情報提供を行う必要が あるのではないか。また、医療事故事例の報告を法律に位置付ける必要があるのではな いかというご指摘も度々いただいています。この問題については、報告者の免責等の議 論も併せて行う必要がありまして、慎重な検討が必要ではないかと考えられています。  11頁は「医療関連死の届出制度・中立的専門機関による死因究明制度・医療分野にお ける裁判外紛争処理制度の検討について」です。現状は、医療関連の訴訟がこの10年で 新受件数が倍増するなど、医療事故を巡る紛争があとを絶たない状況です。医療関係者 からはもとより、患者のご遺族からも真相究明や事故の再発防止対策が強く望まれてい ます。また、平成16年9月には、日本医学会の基本領域19学会から、医療関連死の届出 制度と死因の調査分析を行う中立的専門機関の創設の実現に向けて共同声明が出されて います。この共同声明を受けて、平成17年度には「診療行為に関連した死亡の調査分析 モデル事業」を実施することを予定しています。  課題として、医師法第21条の異状死の定義が明確化されていないこと。また、医療の 質と安全・安心を高めていくためには、医療関連死について正確な死因の分析を行うこ とにより、医療の透明性を確保するとともに、同様の事例の再発防止策を講じることが 必要であり、既に欧米諸国においてはコロナー制度等が設けられていますが、我が国に おいてはこのような制度がないということです。  検討の方向性として、平成17年度から開始されるモデル事業の実施状況も踏まえ、医 療関連死の届出制度及び届け出られた事例の調査分析方法等について、具体的な検討を 始めてみてはどうかという点、また、医療分野における裁判外紛争処理制度についても 検討したらどうかということです。  12頁は、3つ目の柱としている「患者への情報提供・共有と医療安全への患者の参加 促進」です。これまでの取組ですが、平成15年4月より、特定機能病院、臨床研修病院 に対しては患者相談窓口の設置を義務付けています。また、医療安全支援センターにつ いては、すべての都道府県に1カ所の設置が完了しています。この設置状況、相談内容 は参考資料に載っています。現在、保健所設置市や二次医療圏単位での設置を促進して います。  見直しの方向性ですが、患者のニーズへの対応、医療安全への患者の参加の促進とい う観点から、患者の苦情や相談を受け付ける機能の充実を図るべきではないか。具体的 には、医療機関等において患者の苦情や相談を受け付ける体制の一層の整備を図るこ と。また、受け付けた苦情や相談について、医療に適切に反映、活用されるような方策 を推進すること。患者への情報の提供と共有を図るとともに、医療機関等における医療 安全への患者の参加を促すための方策を講ずること。この3つは医療機関における対応 です。医療安全支援センターについては、全国的な整備の状況を踏まえて、その役割や 機能等を明確化すること、医療安全支援センターに対し、医療安全に加えて、患者によ る医療の選択を総合的に支援する機能を付与することについても検討したらどうか、と いうことが詳細論点となっています。  13頁は「医療安全に関する法律上の位置付け及び国と地方の役割について」です。現 行制度の課題としては、国と地方自治体は、それぞれの役割に応じて、医療安全を推進 するための各般の取組を行っているところですが、医療法上、それぞれの責務や役割は 規定されていません。また、医療政策の最重要課題の1つである「医療安全の推進」に ついて、医療法上、明確な規定が存在しないということが課題となっています。  見直しの方向性として、医療安全対策について、医療法上、明確に位置付けていくべ きではないか。具体的には、「医療提供の理念」として、「医療の安全な提供が不可欠 」である旨明文化する必要はないかということ。また、医療提供体制全般に係る国、地 方公共団体の責務、役割の明確化とあわせて、医療安全対策における両者の責務、役割 を明文化したらどうかというのが論点となっています。  以上が、医療安全対策検討会議で議論をされた詳細な論点ですが、今後この論点に則 して報告書を取りまとめ、医療部会にご報告をしたいと考えています。説明は以上で す。 ○部会長  続いて、この議題に関係するものとして、「医薬品の安全使用体制の確立に向けて」 について、全田参考人からご説明をいただきたいと思います。関連する資料は、資料3 「各委員から提出のあった御意見」の2頁以降です。では、この資料について全田参考 人からご説明をお願いします。 ○全田参考人  ご紹介いただきました日本病院薬剤師会の全田です。ただいま部会長からご紹介があ りましたように、医薬品の安全性の向上についてのうち、特に、ただいま推進室長から ご説明のあった医薬品の安全使用体制の確立について、薬剤師の立場というか、特に病 院薬剤師の立場での考え方及び具体的にどう取り組んでいるかをご紹介申し上げて、先 生方のご理解と今後のご協力をお願いしたいと思います。  資料3−2に沿って説明します。いま室長からご説明がありましたように、医薬品に 関わる事故がかなり多発しています。2頁は、医薬品をめぐるいろいろな事故はどうい うふうにして起こるかです。まず、医薬品そのものが原因となる副作用、特に、そこに 書いた最近非常に作用の強い分子標的というか、これはやや専門的用語ですががん細胞 の増殖や転移等に関わる分子に直接作用するという、いま話題のイレッサ等がまさにそ れに相当するわけですが、作用は強いけれども同時に副作用が非常に問題になるものに ついて、市販後十分なるチェックが必要だということが、医療事故をどう防ぐかの基本 的な問題になると思います。  さらには、医療に関わる人間としての問題として、結局よく言われる医療従事者の資 質の問題は当然ですが、医薬品そのものについてもまた外見が似ている、名前が似てい る、容器が似ているということで、往々にして間違えやすいということもあります。  3頁は、先ほど室長からもご説明がありましたが、最近の医療現場におけるヒヤリ・ ハットの報告事例のうち、医薬品に関連するいろいろな内容がありますが、それがほぼ 4割を占めているという大変に無視することができない数字になっています。いった い、こういう4割ものヒヤリ・ハット事故が起こるのは、どういうところが問題になる のだろうかということを医薬品について考えてみると、当然、患者に対して薬物療法を 行うときにはそれの正しい意見書とでもいうべき処方せんというものが作られるわけで す。いまコンピュータ化してくると処方の内容そのものは、もちろん十分なる検討がな されて作成されるわけですが、入力ミスや処方を筆記で書く場合の記載ミスがありまし て、そのまま薬局のほうに回ります。そこでそれをチェックできないで、そのまま調剤 してしまう、あるいは、具体的な調剤上のミスがある。そういうことが、最終的に患者 に飲んでいただいたり注射をするときに、十分なる情報が伝わらない。また病棟なら病 棟において、その注射薬等においては、明らかにこの患者ということを指示しているけ れども、それが何らかのミスで他人に投与されることがよくあります。いわゆる患者の 間違い、あるいは、予め患者に1日分の薬、内服なら内服を揃えておくと、それでの思 い違いということもあるわけです。そういうことで患者に渡ったとしたら、それが今度 は正しい指示をしていても患者の理解度が低いために飲み間違いをする。あるいはちゃ んと薬の袋に入れていたのですが、患者が1回それを取り出してしまって、別な袋に入 れる。  ここにサッと書きましたが、処方の作成というか記載の時点から調剤、実際に病棟に おける患者に手渡すところ、患者が飲むところの各段階において間違いが起こることが 内蔵しているというか現実に起こっています。それが結果的に、約4割の事故に繋がっ ています。  4頁には、特にハイリスクの医薬品の管理をどうすべきかを書きました。ハイリスク というのはご承知のように、先ほど申し上げたような抗がん剤、糖尿病の薬のように、 飲み方を間違えると低血糖になってしまったり、ジギタリス製剤のように非常に強く心 臓に作用するようなもの、血液凝固阻止剤のように、他の薬と併用すると、血液凝固が 起こらないものは、さらに溶血までいってしまう。そういうことに対しては、いまどう いうことをすべきかということで、処方せんが発行されると、それについては各薬局 で、患者にはそれぞれの病歴というか、パーソナルなヒストリーがありますが、それに 従って、これが本当にこの患者にいい処方かどうかというものをチェックします。それ に従って、1日何回で食前や食後という細かい服薬の指示を書きます。それに従って薬 を調整して、最終的には複数の人間で調剤されたものを鑑査して、それについてこの薬 はこういうことの薬ですし、こういう飲み方を注意してくださいということを付け加え まして患者に渡して、その時点で先ほど言ったようにさらに再確認をしてもらう。ハイ リスクについては、いまこれだけの注意をしながら、このプロセスで行っています。  その下は最近起こった事件ですが、他の医療機関にかかっていた患者が別な医療機関 に来たときに、前の医療機関でもらっていた薬が残っていますから患者は持ってまいり ます。それを持参薬と我々は呼んでいますが、新聞に出たので具体的に表示しました が、リウマチの患者がほかの病院で薬をもらっていて、京大に入院することになって来 ました。そのときにリウマトレックスというリウマチの薬を持ってきたのですが、下に 書いてある細かいことは省略しますが、1週間に6mgを、2日かけて飲んで5日間休薬 して、また次の1週間で飲むと書いていたのですが、研修医の方がまだそれを十分に理 解しないために、1日6mgを渡してしまった。これは免疫抑制作用もありますので、結 果的には免疫機能が低下して患者が亡くなってしまったという事例です。  5頁は、こういうことに関して我々としては、患者が他の医療機関でいただいていた 薬を持ってきたときは、従来ですと薬袋に1日何回、食後錠剤2錠、カプセル1錠など と書いてあるとそのとおりに飲ませていたのですが、それでは必ずしも十分ではない し、患者がどれだけ理解しているかも問題になりますので、いまは、医療機関でもらっ た薬を入院のときに持ってきたときには必ず、医療機関で処方してくださった先生に 「この患者はこういう薬で間違いございませんでしょうか」と、院外薬局の場合には調 剤してくれた薬局からも、そこには薬歴管理もありますのでその患者の情報を得て、そ れについて調査した結果を出して、その調査結果の報告書に基づいて新たに患者に飲み 方を指導する。それに従って入院時は飲んでいただいて、その患者が退院する場合に は、まだその薬を継続して飲むことになれば、その情報を文書で付けて患者に持ってい ってもらう。そういうことで、今度は他の医療機関にかかった場合に、そのお医者さん にそれを示すなり、院外処方の場合には薬局に持っていってもらうことをいま心掛けて います。  さらに、先ほどの室長の説明にありましたように、抗がん剤の取扱いはご承知のよう に非常に作用が強いと同時に、その副作用もいろいろなことが問題になりますので、い ままでは処方が出てくると、この処方で大丈夫だなということで調剤して、薬をアンプ ルならアンプルのまま各病棟に持っていきました。そうすると、何種類かの注射剤を患 者に点滴なら点滴をするときに、病棟では薬剤師が直接タッチすることもなく、ドクタ ーと看護師にお願いして混合してもらって実施していました。でも、やはり副作用や患 者の間違いということもありますし、度々申し上げますが抗がん剤は非常に副作用が強 いから、こういう抗がん剤を作る、こういうがんに対してはすべての治療を設計の中に 抗がん剤の使い方を位置付ける。そういうものを我々はレジメンと称していますが、個 人ごとのがん薬物療法において、抗がん剤の組合せや投与法などの投与計画を全体図と してまとめておく。  ある抗がん剤がきて、こういう患者ならこの流れだということで1つのレジメンを作 りまして、それに従って処方して、注射薬等の混合は、薬局において無菌的に調整す る。当然、抗がん剤は副作用が強いし、患者自身は病態自身が強いというか、かなり弱 っている患者は多いです。無菌的な処理をする必要があるため、薬局で処理をするとい うことで、そういう調製をして、薬剤部から払い出して患者に抗がん剤を投与するとい うルートを、極力、全医療機関で行うようにいま努力しています。  6頁です。実際にそういうレジメンを使ってやっている医療機関がどのぐらいあるか を我々のほうで調べました。抗がん剤を使っている医療機関について見てみると、薬剤 師数に関係してきます。要するに入院患者30人に1人以上の薬剤師がいる場合には、約 60%の医療機関でレジメンを使っている。ところが31〜50人ぐらいになると50%にな り、極端な場合に70人の入院患者に1人以下となると、恥ずかしいですがまだ10%もい っていない。ただし、レジメンを使うことを我々が始めたのはまだ数年ですので、30人 に1人以上の薬剤師がいるところは近々もう少し伸びてくる。本来なら、100%まで持 っていかなくてはいけないと考えています。  まとめになりますが、医薬品を安全に使用するためには、まず何といっても各医療機 関に医薬品の安全管理者を設置して、責任体制の確立を図る。当然、副作用などの有害 事象をチェックすることを強化する。ハイリスク薬等の業務手順をしっかり整備してお く。抗がん剤の注射薬は無菌調製を完全実施する。これは診療報酬上でも点数化されて います。それから、薬剤師が直接患者のベッドサイドに行って、服薬そのほかいろいろ なことの相談に乗るという薬剤指導管理、薬歴をつけるといった業務の完全実施。それ から残念ながら、すべての医療機関において夜間・休日体制が100%行われていないの が現実ですので、なんとか夜間・休日における薬剤業務の体制の充実を図っていきた い。  さらにはチーム医療ですので、これからチーム医療の中で副作用などの有害事象の早 期発見・重篤化防止のための医療スタッフ間の情報提供の推進と情報の共有を行う。医 療スタッフ間の意見あるいは情報の食い違いを無くすことが極めて重要だと考えていま す。当然、先ほどの持参薬の話で申し上げた院外処方せんとの関係もありますので、医 療機関と薬局との連携の強化をしていくということが基本的な問題として、医薬品の安 全使用体制を確立するためには必要であろうということです。  最後に、こういうことを行っていくのは我々薬を取り扱う薬剤師の資質の向上はもち ろんですが、それを支える体制の整備もできればご配慮いただきたい。体制の整備です ので人員の問題、もう1つは財政で基盤の確立というか、診療報酬上等で薬剤業務につ いての正当な評価をお願いできればありがたいです。  大体与えられた時間がまいりましたので、非常に簡単ですが、医薬品の安全使用体制 の確立に向けての薬剤師の使命というか、具体的に取り組んできたことを含めて、考え を述べさせていただきました。ご清聴、ありがとうございました。 ○部会長  事務局と、ただいまの全田参考人からの説明、あるいは関連する資料に関する質問も 含めて、ご自由に意見交換をお願いできればと思います。 ○龍井委員  大きく2つ、質問と意見を申し上げます。1つ目は、いまの全田参考人のお話にもあ りました管理体制というか組織体制に関連することです。今日の資料の1頁から、いま まで実施してきたことのさらに範囲を拡大していきたいという提起があったのですが、 まずお伺いしたいのは、既に現行制度でも義務化されている、5頁の中でいくつか例示 をされているような、まさに体制の問題としての安全管理委員会の設置、研修の実施と いったようなことが、現状においてどの程度実施をされているか把握していらっしゃる のか。それがされていないところに対しては、どんなような指導なり施策を取っていら っしゃるか。それがまず前提にないとプラスアルファの議論になっていかないと思いま す。  その関連で7頁、これも管理体制に関わるところですが保守関係。これも東京都の数 字を見て、逆にここまで実施率が低いという見方も可能だと思いますので、ここで言わ れている管理体制の明確化は具体的にどう考えておられるのか。  もう1つは9頁です。これは事例の詳細な分析。私は詳しく承知していないので恐縮 ですが、4頁の中にも、人が事故を起こすことを前提にした組織体制が強調されていま す。したがって、ここの事例の詳細な分析のところも、個々の1つのトラブルなりミス の背景、例えば、いまもご指摘に出てきたような勤務条件、人員配置、引継ぎの体制、 チェック体制という面での分析がどの程度されているのか。不十分であれば、是非その 背景をきちんと分析していただきたいのが要望です。  大きな2つ目は、それをチェックする体制の話ですが、ここで提起をされているよう な死亡事故への対応や、医師への対応であれば、行政処分の場合の再教育と提起されて いますが、実際にはもっとファジーな領域の問題が多いと思います。例えば、いわゆる リピーター医師が施策の対象になり得るのか。定義自体が難しいかもしれませんが、そ ういうことも視野に入れていただきたいということと、中で提起されているADR、12 頁に提起されている医療安全支援センター、特に苦情関係の強化の両面はとても大事な ことだと思いますが、現時点で具体的にこうだというイメージがあればお聞かせいただ きたいと思います。以上です。 ○医療安全推進室長  まず5頁の義務化されている事項についての実施状況です。平成14年の医療施設調査 によると、残念ながら有床診療所のデータは把握できていませんが、全国9,187病院の うち、安全管理のための指針を整備している施設が9,013で98.1%、安全管理の責任者 を置いている施設は9,014で98.1%、安全管理のための医療事故等の院内報告制度を実 施している施設は9,046で98.4%です。この調査は、ちょうど医療法施行規則による安 全管理体制の基準の義務付けが開始された同時期に行われていますので、現時点におい てはさらに高い率となっていると考えています。実施していない所に対してどうかとい う問題については、診療報酬上の減算及び医療機関への立入り調査の際の指導を実施し ています。  6頁の医療機器の管理体制についてどう考えるかという問題ですが、私どもも非常に 重要な問題だと思っています。本日お示ししたのは詳細論点ということで、これから報 告書の取りまとめに向けて先生方のご意見をお伺いした上で、具体的に議論してまいり たいと考えていますので、本日いただいたご意見を踏まえて医療安全対策検討会議にこ ういった問題も含め取りまとめるよう、お願いしたいと考えています。  9頁のヒヤリ・ハット事故の背景分析ですが、医療機能評価機構においてこのヒヤリ ・ハット事例、事故等事案の収集・分析を行っていますが、その背景や要因について記 載する欄があります。ただ、記入をする方の資質というものにかかわっており、非常に よく分析されている場合と、単にあったことを書いている場合といろいろあることか ら、医療機能評価機構ではリスクマネジャーや、こういったことを担当する方の研修な ども検討していただいているところです。  医療安全支援センターも全国整備が進んでいますので、もう少し役割を明確化してい ただくように、どういった役割を担っていただくのか、また新たな役割というのがある のかを、医療安全対策検討会議でもご議論いただく予定です。ADR(裁判外紛争処理 )の問題については、非常に重要な課題であると考えていまして、厚生労働科学研究の 中でも法律の専門家のチームで研究していただいていますが、大変大きな課題ですの で、この問題については先生方のご意見などを伺いまして、医療安全対策検討会議でご 議論いただくとともに、そういった研究班にお願いして諸外国の制度、また我が国にお いて他業種でどういったことを行っているかを整理して、引き続き議論していきたいと 思います。以上です。 ○堀田委員  いまADRの話が出たので、私は安全対策のいちばん基本的な問題として2つ、1つ はADRをしっかり作ること、もう1つは医師法、医療法をもっと体系的に患者中心の 法令に作り直すことを提言したいと思います。ここにいろいろと安全対策が提案されて いますが、患者がどういう立場で扱われているか。情報を提供しましょう、苦情を聞き ましょうという扱いで、安全を実現する主体というのは医療を提供する側の仕組でやろ うという基本の発想になっていますが、いちばん基本のところに患者の権利を据えて、 患者は助かりたいわけですから、患者が情報提供を求める権利がある、さらに告知、内 容を求める権利がある、セカンドオピニオンを求める権利がある、といったように安全 を実現するために、当事者である患者自身に権利を与えて、その全面的な参加を得る体 制でないと、単にサービス者側だけでこうやりましょうという仕組では、これだけ広範 な医療について安全確保をすることはできないのではなかろうかと考えます。  ところが、現在の医療法と医師法は戦前の立法を引き継いだ非常に古い時代遅れの体 制になっていて、医療法は簡単に言えば病院規制法、医療施設規制法であって、医療の あり方は総則の中にほんの1、2条、ごく抽象的なことが書いてあるに過ぎない。患者 の権利は全くない、だから安全の規定もない。医師法は、これまた医師規制法で医師の 治療義務なども書いてありますが、患者のサイドからは書いていない。要するに行政が 病院、医療施設、それから医師をコントロールして医療を実現しようという、非常に時 代遅れの仕組をそのまま引き継いだ規制体制になってきていて、今回のここで提案され る大きな枠も、患者も若干は考慮するけれども、基本的にはいまのパラダイムの中で発 想されている。そこがいちばん大きな問題だろうと思います。  しかし当事者、患者のほうは、もはや医療を信頼していませんで、徹底的に自分たち で調べて知りたいという、とうとうたる流れになっていて、ところがそれを受け入れる 仕組ができていないために、患者は裁判に訴えるしかない。これは実に非効率的で無駄 の多い仕組で、患者のほうは情報がなかなか入らないけれどもおかしいと思う。それで 訴えるけれども、資料は不十分である。裁くほうは医療について知識がないので、1か ら勉強する。これまた手間がかかる。ということで、患者が主体として安全を確認した い、あるいは安全でない目に遭ったときにその回復を求めたいというときに、裁判とい う実に非効率的で無駄の多い仕組しかないところが大きな問題であろうと思います。  簡単に申しますと、医師法、医療法を基本的に統一して、患者の権利、安全という観 点から条文を起こす。そして、そういった点をしっかり書いた上で病院に対してはど う、施設に対してはどうと各論的に規定を置いていく、そういう法令の改正を根本的に しなければいけない。  研究会を作るとおっしゃっていたのは大変結構です。ただし注文が1つあります。参 加するお医者さんの数は、なるべく少なくすること。これは医療の安全のあり方、患者 の視点からの法律でなければいけませんので、サービス提供者というのはいわば知識者 として参加する程度に止める。これが非常に大切であろう。そしてその中でADRのあ り方、要するに効率的に証拠を収集して、専門知識のある者がそれについて判定してい く、という裁判外の組織を新しく作る。これは大きな法律関係で、専門分野については それが流れになっていますから、決して時代に反する主張ではない。以上、2点を申し 上げます。 ○辻本委員  厚労省のほうでお答えがいただけたらと思いますが、いわゆる混注作業は、現場では ナースがやっていて、そして業務の途中で電話がかかってきてそちらに行ったことでミ スが起きたなどという報告を現場から聞いたりするわけですが、このクリーンルーム、 無菌的な調剤ということが全国の病院でどれぐらいの割合で行われているかということ の数字を、もしご承知であれば、教えていただきたいと思います。 ○全田参考人  現実には、まだ病院としては10%ぐらいしか混注は行われていません。それには、い ろいろな要素がありますが、やはり人手の問題と、別にクリーンベンチが買えないとい う問題ではないのですが、どうしてもそこまで手が回らないのが現実です。 ○辻本委員  手が回らないというのはどういう状況なのかを、もう少しわかりやすくお話しいただ けないでしょうか。 ○全田参考人  結局、先ほど抗がん剤の取扱いでここに示したように、当然、無菌操作まで入るべき だということですが、つらいところですが、追加資料にありますように、今から何十年 前に比べると、ここ数年で非常に薬剤業務が拡大してきました。そこに「病院薬剤師業 務の変遷」と書いてありますが、かなり業務が拡大してきているし、ついこの間までは 薬剤管理指導業務という、患者に納得してもらうために薬の説明をベッドサイドで行う ということを重点的にやろうというのが、診療報酬が点数化されたのが平成元年ですか ら10何年が経っていますが、いまはかなりの点数が付いている。そういうことを重点的 にやってきて、混注を積極的にやろうというのは正直言ってこの数年です。ですから、 是非早急にやらなければいけないということは頭ではわかっていますが、まだ追いつか ないのが現実です。 ○大橋委員  9頁のヒヤリ・ハットの分析の件ですが、「何人も、自己に不利益な供述を強要され ない」という憲法第38条と整合性が必要ではないかと思います。必ず司法取引の法律の 整備をしなければ、正しい報告が得られないのではないかと思います。司法取引とは免 罪などです。例えば事故報告があっても、自分が犯罪で非常に重い罰を受けるのでは、 自分は逃げようとするのではないかと思います。そういうときに免罪などしていただけ る法律を整備しなければ、正しい報告が得られないのではないかと思います。 ○佐伯委員  先ほど頂戴した参考資料に、平成14年に安全の何々というのがあって、24、25頁にか けて、さらに薬剤部門で準備をしておく必要があるなどと書いてあるのに、ほぼ3年が 経った現在でもそれが行われていない原因は何だとお感じになっていますか。薬剤師が 仕事を怠っているということではなくて、おそらくこれは人数が足りないから、あるい は医師との関係がということなのでしょうか。きちんとしたデータでなくてもいいので すが、感触としてお答えいただけるようなことがあれば教えていただきたいのです。 ○全田参考人  感触ということではないのです。はっきり言えば、自分たちの意識の問題というこ と。ご承知のように、病院薬剤師は4万人います。施設もいろいろありますし、先ほど 申しましたがんのレジメンについても、人員配置の濃い所は、かなりいろいろなことが できている。ところが、そうではない所はなかなかそこまで手が及ばないという、非常 に抽象的な話なのですが。 ○佐伯委員  ありがとうございました。続きですが、おそらく標準治療に必要な人員を割り出し て、いまの人員配置基準を見直す必要があるのではないかという気がします。医薬品だ けでなく医療用具の整備など、他のそういうことも必要でしょうし、ナースの数とか、 手厚い看護で患者は早く退院できるというデータもあるわけですから、これは是非見直 していただきたいと思います。 ○古橋委員  私も実務的な側面から発言します。本日は日本病院薬剤師会の会長も参考人としてお いでいただいて、薬剤師のこれから引き受けていこうとなさっておられる業務内容など もご説明をいただきまして、大変嬉しく思います。おっしゃいましたように、いま現場 の現実の状況は大変ミゼラブルで、看護職が多く混注業務などをしている中で、辻本委 員からもありましたような業務の中断などは日常的です。もう1つは手不足の中から、 確認をすることの業務が、言葉では言われていますが間に合わない。ベテランナースは てきぱきですが、ベテランでない者は慌てふためいて、あたふたと薬品関係業務をやっ ている。2人のナースが処方せんと確認しながら、与薬できている病院が、いったい全 国にどれだけあるでしょうか。これも大変状況が悪いわけです。行き着く所は人手の問 題でもあり、日本の医療の提供体制では看護師の数、薬剤師の数等もちろん医師の議論 もあると思いますが、非常に状況が桁違いに悪いことを実感しています。ただ、この状 況に対しどうしたらいいかということですが、人あるいはシステムの整備、病院建築の 中で混注をする場所はスタッフステーションから距離を置いたり、業務中断のないよう 体制への指導指針が示されることが是非とも必要と思っています。  もう1つは、新人看護職の医薬品に対する知識が非常に少ないことを新人自身も痛感 ・実感していることです。日本看護協会の昨年秋の調査では約700名強の新人職員から、 現場で卒後教育で直ちに受けたかったのは、医薬品の知識をしっかりと学びたかったと の答えを得ています。そういう点からいくと、看護の基礎教育の段階で、看護職の安全 と事故防止対策に関する感受性教育をどう行っていくかを考える必要があることと、国 家試験等で安全と薬の知識を確認することも是非検討がなされるとよいと思います。ま た、是非とも薬剤師と看護職の連携を、実効性あるものにしたいと思っております。現 場では、やはりバトルもあり、いや、そっちだ、こっちだという議論もあれば、検査技 師や放射線技師の方々よりも、夜間当宿に対して薬剤師は、なぜか引いていて、消極的 という実態もあります。今日の日本病院薬剤師会の会長様の構想が早く現実になるよう に、看護界でも検討したいと思いますし、是非とも薬剤師会でも、早急な課題にしてい ただきたいと切望しております。よろしくお願いいたします。 ○山本(信)委員  薬剤師に係る部分もありますので一言意見を申し上げます。資料の中の4頁に、医療 安全の推進のためには、さまざまな「人」、「物」、「組織」、「ソフト」も含めた全 体の体制整備が必要だと論点整理され、議論がされております。私ども薬剤師は、病院 の中であれば、ただいま全田会長がご説明になった事態がきっと発生しているのだろう と思います。しかし、地域の中では全く組織が違いますから、さらにそれ以上に連携を どう密につくるかという仕組づくりがまず求められるだろうと思います。  そういった意味で言えば、あまり言葉は適切ではありませんが、院内と院外の薬局は 全く環境が違いますので、むしろ恵まれた環境の中で仕事をされているのかなという思 いもするわけです。外来で治療を受けている患者については、院外の薬局が当然関わっ てまいりますので、そうした視点が必要です。病院の中だけで40%薬に係る事故がある のではなく、薬物治療をトータルでとらえることも当然視点に入れなければならないと 思います。  今日の全田会長の資料の3頁で、「医薬品を取り巻くヒューマンエラー」を個々の現 象として捉え、医薬品がそれぞれある中で、さまざまな専門職が医薬品に関わってい る。例えば処方の段階では医師の方々でありましょうし、調剤はもちろん薬剤師の役割 であります。先ほどの注射あるいは与薬について言えば、病棟の中では看護の方々が関 わっています。しかも服薬の段階になると患者個人が関わるということになります。そ ういった意味では、それぞれの分野でさまざまな方が関わって医薬品を使っていく、し かも、それに係る事故が4割もあるということになりますと、例えば病院の中でも、地 域にあっても、こうした医薬品を全体的に、トータルに、見ていく仕組をつくることが まず求められるわけであり、誰が担当するかも問題ですが、まずはトータルに医薬品な ら医薬品をきちんと見張っていく仕組ができる体制をこの中にきちんと盛り込んでいた だく、あるいは、それを議論して書き込んでいくことが求められるのだろうという気が します。  個々の局面では、薬剤師の数が足りないという議論がありますが、数字を追いかけて 見ますと必要な数が確保されているケースも少なくありません。もちろん数が多いに越 したことはありませんが、実質的には必要な数がきちんと担保されている施設もあるの だろうということを考えて、全体的な仕組を是非この中で検討していただきたいと思い ます。 ○高智参考人(福島委員代理)  健保連です。まず「見直しに際しての基本的考え方」については、患者中心の医療を 追求しております医療保険者の立場から基本的に賛成です。それに基づき1頁で2つご 質問をいたします。「新たに取り組むべき主な課題」の中で「患者参加の促進」とあり ますが、多少私どもファジーに映るところもあります。例えば窓口等の設置について具 体的なイメージがあるのであれば、そうした具体例についてお示しいただけたら有難い と思います。また、いちばん下に書いてあります「医療安全支援センターの法的位置付 け」について、もう少し突っ込んだ形で、付加的なご説明をいただければ有難いと思い ます。 ○医療安全推進室長  ただいまのご質問ですが、患者の相談窓口については、先ほど申し上げましたように 義務付けておりますのは、臨床研修病院、特定機能病院です。法令上はこの2つになっ ておりますが、その他の病院でも積極的に相談窓口を設置したり、担当者を置くような 取組は進められていると伺っております。ただ、すべての病院の中でそうした体制がで きているわけではありませんので、専任の担当者を置かないまでも、どういう形で、そ うしたご意見を伺う仕組をつくることができるかというのが、いま医療安全対策検討会 議の論点になっています。  患者参加の具体例としては、検討会議の下に設置されていますワーキングの中でご意 見を頂戴しております。例えば、手術室で取り違いをしないために患者自ら名乗ってい ただくことからはじまり、看護師の業務の引き継ぎ、申し送りなど患者を交じえてやっ ている、というような取組も進んでいると伺っております。そうしたことを実施するの と同時に、なぜそういうことが必要なのかを患者にきちんと説明することが重要です。 院内掲示なので患者に参加していただく内容や趣旨などをもう少しPRしたらどうか、 ということもご指摘いただいており、そうした観点で、何ができるのかというところか らいま議論を行っているところです。  支援センターについては、参考資料1の後ろのほうに実績等を付けております。平成 17年1月現在で、ほとんどの都道府県に設置され、また二次医療圏ごとに設置が予定さ れている所も多くなっております。昨年度の取組についてはまだ取りまとめが十分では なく、直近のものはありませんが、67頁に相談内容の内訳があり、単なる苦情や相談だ けではなく、医療機関の紹介、病気・薬に関すること、いろいろな相談を受け付けてお ります。こういった機能をどういう形でさらに強化していくのかが、現在論点になって います。 ○村上委員  病院薬剤師のところで病院関係者が答えていませんので。確かに全田参考人が言われ るように、病院薬剤師の職務が広がってきたことにより患者の安全に関しては大変進ん でいて、将来こういう方向に進むのはよろしいのですが、ただ、現場の病院の中のこと を申し上げたいのです。先ほど佐伯委員が「この場合、人員配置を考えればいいじゃな いか」と言われたのですが、現在、薬剤師の数は足りないのです。ここでむやみに定員 を決めた場合、医師の標欠病院ができたのと同じような状況が日本の病院で起こってし まうことがあります。だから、これから薬剤師を育てる。いま心配しているのは、6年 制になった場合、2年間のブランクがあいた場合に薬剤師が出てこない。そういう場 合、各病院が大変困っている状況も知っておいていただきたいということを、病院団体 の立場から申し上げました。ただ、これは決して反対しているわけではありません。 ○部会長  あと、見城委員にお願いして、これでこのところは打ち切りたいと思います。 ○見城委員  医療安全対策のところで「ヒヤリ・ハット」という言葉が出ています。ひとつ質問 は、これは表現として決定された言葉なのでしょうか。初めてここで「ヒヤリ・ハット 」が語意として、こういう事例はヒヤリ・ハットということで定着しているものなのか どうか。今後、医療安全対策に新しく法体制を整えていく場合など、こういうふうにヒ ヤリ・ハットとして出るのか。何か「ピザ・ハット」みたいで。これは質問です。  なぜ質問したかと言うと、全田会長の報告でもヒヤリ・ハット報告事例の分類で、医 薬品関連で約40%と出ています。こういった場合、こちらの参考資料1では、事故には 至らなかったということで、38頁、42頁に「事故には至らなかったヒヤリ・ハット事例 」と出ています。エラーとミスと事故と、その以前にヒヤリ・ハットということなので しょうか。この辺が曖昧で、医療を受ける側としてはヒヤリ・ハットで命を失うかもし れないということを考えますと、その辺を教えていただきたいと思います。これはしっ かりとした言葉で説明もできる、また私たちも納得できる分類をしていただきたい、言 葉を出していただきたいと思います。 ○医療安全推進室長  「ヒヤリ・ハット」という言葉はいろいろな所から「考え直したらどうか」というご 指摘をいただいております。ヒヤリ・ハットと事故は、一応報告制度をスタートする際 に定義付けております。誤った行為が行われる前に発見されたもの、または、行われて も結果として患者に影響を及ぼすに至らなかったったものをヒヤリ・ハットと呼んでお ります。実際に誤った行為が行われるなど医療の全過程において有害な事象が発生した ものを事故ということで、分けて報告をいただいております。  ヒヤリ・ハットと事故については、諸外国ではインシデント、アクシデントという言 葉を使っておりますが、インシデントという言葉がわかりにくいこと、また、ヒヤリ・ ハットという言葉が、比較的現場で定着していたということがあり、そのまま使ってお ります。もう少し分かりやすい、適切な文言があれば検討したいと考えているところで す。 ○見城委員  私が質問したのは、つまりヒヤリ・ハットというのが、何につけ彼につけ間違ったこ とがそこで起きているとしたら、それは事前に気がついたとはいえ大変なことです。間 違ったことがそこで起きても事故に結び付かなかったら、それでいいではないのです が、次回は気をつけようという具合に少し軽く受け止められてないかという不安もあっ たのです。ですから、ヒヤリ・ハットというのがあれば皆さん本気でヒャッとして、ハ ッとして、我に返って、改めて反省文を書いて、今後こういうことがないようにします とか、そういう措置をしているのか、その辺の対応も重要なことだと思います。 ○医療安全推進室長  ヒヤリ・ハットについては大変重大に受け止めていただき、院内での報告を有床診療 所以上に義務付けております。現場でこういった事象が起こりますと、院内で報告を し、今後の対策に結び付けていただくという仕組になっております。また、医療機能評 価機構で収集しているこういった情報については、現在1,300近くの医療機関に参加し ていただき、再発防止策なども合わせて報告していただいております。ですから、その 言葉と違って、重大な問題であるという受止めは医療者側にあるのですが、言葉につい ては、もっといい言葉を検討する必要があるのではないかと思っております。 ○小山田委員  医療関連死の届け先がいま警察になっています。その警察が都会と違って田舎は何も わからない巡査です。それが判断して、何年間も放って置かれているケースがあるので す。これはしっかりとした第三者機関に届け出るような方法が絶対に要る。これは早く 対応をお願いしたいと思っています。 ○部会長  それは重要なご指摘だと思います。 ○山本(信)委員  薬剤師の数の問題が出ておりましたので、多少誤解があるようです。医師と同じよう に偏在はしておりますが、数字上は6年制になりましても数は不足いたしませんので、 そこだけはご理解いただきたい。よろしくお願いいたします。 ○部会長  ヒヤリ・ハットや医療関連死だけで1時間や2時間議論しなければいけないことでは ないかと思いますが、いま安全対策検討会議が動いておりますし、そのワーキンググル ープも作業中ですから、引き続きそちらの動きも見て、またこの会議で取り上げるとい うことで、本日はこの辺で打ち切らせていただきたいと思います。事務局で整理をして いただいて、改めて議論する機会を持ちたいと思います。  次の議題に移りたいと思います。「小児をはじめとした救急医療体制等の在り方、小 児医療や周産期医療といった母子医療の推進について」、これについて残りの時間で議 論をいただきたいと思います。事務局から資料2について説明をお願いします。 ○指導課長  資料2に基づき、救急、母子医療関係を併せて母子保健課長とともに説明をいたしま す。  資料2の前段は救急医療関係の資料です。1頁は、現在、救急医療はこういった体系 で行われているということを1枚の図にしたものです。右半分をご覧ください。下から 上に上がるに従い初期救急、第二次救急、第三次救急となっております。比較的軽度な 救急患者の診療を行う初期救急から、重症で複数の科にわたる、生命にかかわる重篤救 急患者を受け入れる第三次救急まで、こういう形でシステムが作られています。基本的 に、比較的軽微な患者に対しては、大人、子どもを問わず、例えば在宅当番医制、休日 夜間急患センター、歯科の場合は休日等歯科診療所といった体制で対応されています。 手術や入院を必要とする救急患者については、大人の場合と子どもの場合に分けられて おります。大人で言いますと、病院群輪番制病院制度、共同利用型病院が対応しており ます。子どもで言いますと、小児救急医療支援事業。これは小児版の輪番制だとお考え いただければよろしいと思います。あと、小児救急医療拠点病院です。  医療支援事業で行う、先ほど申しました小児版の輪番制というのは、原則として二次 医療圏に1カ所、子どもの二次医療が、責任を持って行えるところをつくっていただこ うということで始めたわけですが、なかなか子どもの二次医療を二次医療圏レベルでや る体制が難しいということで、複数の二次医療圏を併せて、きちんとした病院がやって いただけるのであればそれでもよろしい、ということでやっているのが小児救急医療拠 点病院という病院です。この拠点病院は複数の二次医療圏を併せた形でやっているわけ です。そういうことを併せて、できるだけ二次レベルでの小児救急に対応しているのが 実態です。  さらに生命にかかわるようなものについては、これは大人も子どもも同じで、救命救 急センター、それと新型というか、小さなタイプの救命救急センターもありますが、こ ういった所で対応しています。ただ周産期、赤んぼうが産まれる直前、生まれてしばら くの間の周産期に関しては別立てです。右上に書いてありますが、大体県に1カ所の総 合周産期母子医療センターと、それを取り巻く、県に数カ所の地域周産期母子医療セン ターとがネットワークを組んで、周産期の医療に当たっていただくというスキームで、 現在体制が組まれています。  この頁の左半分に、それを支えるためのさまざまな基盤的事業といいますか、基盤整 備事業といったものを列挙しております。時間の関係で詳しくは説明いたしませんが、 参考資料にそれぞれの事業の細かい内容について記載しておりますので、後ほどご参照 いただければと思います。  2頁は、これまでの医療部会の中でも、今後医療計画を見直し、地域において住民の 方々が自分の住んでいる所でどのような医療提供体制がきちんとできているのか、今後 つくろうとしているのかをわかっていただくような医療圏にしてほしい、という説明を 前回申し上げました。その流れの中で救急医療についても、例えばですが、都道府県で こういうイメージをきちんとつくっていただき、住民の方々にお示しいただければいい のではないかということで、我々として作ったものです。このとおりやってくださいと いうことではありませんが、例えば患者が何らかの形で、交通事故など、被害に遭われ たら、軽症の場合はまずかかりつけ医、急患センターにかかっていただき、中等症、重 症になるに従って、それぞれ適切な医療機関に対応していただくというスキームを住民 の方々に提示していただく。していただくだけではなく、当然のことながら都道府県 は、そういう体制をつくることを医療計画の中で責任を持ってやっていただきたいとい うことを示したものです。 ○母子保健課長  引き続き3頁から説明します。「子ども・子育て支援医療基本構想」を、とりあえず のイメージということで提出しております。21世紀の母子医療、特に小児医療と産科医 療のあるべき姿を、どこまでも安心して小児医療・周産期医療が受けられる体制を整備 するということで、こういった形の構想を提示したいと考えています。  今回、こういった形で基本構想を提示したのは、かねてから小児医療に関しては、い ま報告があったような夜間休日、救急診療体制がかなり厳しい状態にあるとか、あるい は子どものICUであるとか、新生児のICUが不足してきているのではないかといっ たこと、また、小児科医ないし小児科病院が不在の地域が拡大しつつあるといったこ と、他方、産科の場合も病院産科がいま減小してきており、産科医の不在地域や、ハイ リスクの妊産婦たちへの対応が困難な地域が生まれつつあるといったことがありまし て、そういう中で平成14年度から3年間かけて、この医療部会の部会長をなさっておら れます鴨下先生に研究班を組織していただき、これまで小児科医療並びに産科医療の医 師の確保の在り方等を含めご研究をいただいておったところです。  近々3年間の研究報告をいただけることになっておりますが、その中で小児科医療・ 産科医療の状況が、現在悪化しており、早急に対応をとることが必要になっておりま す。必要とされている中では、小児科並びに産科の医療施設の再編成計画が必要になっ てくるということで、現在まで、特に小児科・産科においては、各病院の医師数が非常 に少なく、かなり広範囲の病院を支えています。この状態でいくと、非常に過重な労働 になり、医師が次々に燃え尽きて辞めていかれることになり、ますます病院の産科なり 小児科が減小することになりますので、一定の再編成を行う中で、医師の集中化等を図 ることも必要になってくるのではないかと、研究班からご意見をいただいております。 研究班からの提言を先取りした形でこの基本構想を提示したところです。  この基本構想は、子どもの病気、出産などの緊急時に適切に対応できる体制を整備す るということで、妊娠、出産、育児の安心・安全を確保するとともに、子どもの健やか な育ちを支援するということです。1つは小児医療の基本構想をつくり、小児医療全体 の再編成を図る。産科医療に関しても同様のことを行う。3つ目に、産科医、小児科医 が地域によって不足しておりますので、それを補うための人材等の確保、効率的な配備 が必要になってくるということです。  こういった中では、小児救急医療を含める小児医療体制全体の再編、産科医療の再 編、小児科・産科医師の育成・確保、そして診療報酬上の適切な評価などが必要になっ てくるものと考えております。  その中では、特に小児科を挙げておりますが、小児科の救急医療を含める二次医療を 安定的に提供できる体制の問題と、初期の治療を担う身近な地域小児医療体制のネット ワークといった医療体制の問題、そして、かかりつけ医をしっかり持っていただき、か つ、医療機関間での病診連携等、役割分担を行うといったことを進める。2つ目の産科 関係は、妊娠・出産の緊急時に対応できる「周産期医療ネットワーク」をしっかり作り 出すこと。3つ目に、こういった体制整備を行うために「医療計画」の在り方をご検討 いただいたり、「医師の供給」に関する基本方針を明確化していくことが必要になって くるのではないかと考えております。  4頁は鴨下研究班で現在検討中の主だった課題をいくつか挙げています。いま説明し たのは、全体的な小児科医療の今後の在り方の将来構想をしっかりと打ち出していくこ と。特にこの中では、救急医療をはじめとする小児科病院の再編成の問題、あるいは医 師の適正配置の問題をしっかりと将来構想として確立すべきであるということで、ご意 見をいただくことになっております。また、養成計画、研修体制。  そして現在、勤務条件が、病院の場合は特に悪いといったことがあります。1病院あ たり2〜3人しかいませんので、当直の回数が週2回といった形になっており、非常に 勤務条件が悪いといったこと等を含め、勤務環境をどうするか。  また、小児科の場合、女性医師が最近では過半数に近い状態になっております。この 方々がご結婚されたり、あるいは出産されるということがありますので、そうした方々 の育児支援や職場に復帰する支援など、女性医師に対するさまざまな支援が必要になっ ています。また、インセンティブの面もあるということです。  5頁ですが、産科医療の課題に関してもご検討いただいております。いま産科医療は 医療訴訟の件数が非常に多く、若手の医師や医学生の中でそういった領域が非常に敬遠 されることもあり、医療訴訟等に関してどう解決していくのかが、産科医療に関しては 特殊な課題として挙げられているところです。  6頁は、小児科医療・産科医療の主な問題点は先ほど申し上げました。小児科の場 合、繰り返しますが、小児医療基本構想の実現、小児医療施設の適正配置と役割分担、 採算性の問題がいま挙げられております。産科医療に関しても同様の問題がありますの で、特にこの医療部会においては、今後の小児医療の基本構想の関係並びに小児医療施 設の適正配置と役割分担の関係に関してご議論を賜ればと考えております。  7頁ですが、小児科医師数は徐々に増えていますが、8頁のように病院数はこの6年 間で約1割減少しております。最近の減少はもう少し速いスピードで起こっています。 診療所は若干増えておりますが、全体として小児科の医療機関が減るといった状況で す。  9頁ですが、75歳以上の方が小児科の医師の中に多くおられて、こうした医師がここ 10年程度の間にかなりリタイアされていく可能性が高いと聞いております。逆に、若手 の医師は女性の方が多くなっているという実態です。10頁、男女比では、小児科の場合 は女性の割合が5割に近づいてきており、先ほど申し上げた女性医師の支援が必要にな っています。  11頁、平成8年に比べると小児科医の1病院あたりの平均医師数は若干増えておりま すが、この人数で小児科・産科は、病院の中で全体として当直がなかなか難しい面があ りますので、それぞれの科が当直を行うと。小児科の場合は若干内科の医師の応援があ り得ますが、産科の場合は産科だけの当直になります。1病院あたり2.5人でいきます と、週2回は当直が必要になるということになります。  12頁、外来の診療件数は14歳以下の人が非常に多く存在しております。13頁の外来に おける時間外診療件数は、圧倒的に14歳以下が多く、時間外診療も小児科の医師は大変 多く行わなければならないし、かつ、当直が存在しており、疲労感が非常に強い状況に あります。  14頁、産婦人科医師数の場合は全体が減少してきており、15頁のように診療所も病院 も減少しています。16頁、産婦人科の場合も、やはり高齢の方々が比較的たくさんおら れますし、また、若い方になると女性が多くなります。17頁では、男女比はまだ4対1 ぐらいで男性が多く、30代ぐらいになると女性が非常に多くなっています。18頁、1病 院あたりの平均医師数は2.9で、これも非常に厳しい状態であると言えます。 ○指導課長  母子医療全体については、いまご説明を申し上げたとおりですが、19頁に小児救急医 療に特化したものを掲げております。先ほど救急医療全体のイメージを説明しました が、小児救急医療という少し特別な救急部門についても、同様にいま見直しを進めよう としている医療計画制度の中で、日常医療圏の診療ネットワークを構築していただき、 それを住民の方々にきちんと示していただくべく、こういったものを医療圏の中で、県 としてお示しいただきたいということで作ったポンチ絵です。小児救急ですので、基本 的には、いつもかかりつけ医にかかっていると思いますが、救急の場合も、できればそ ういう所にまず軽症の方はかかった上で、そこで対応できなければ、小児救急医療拠点 病院、場合によっては救命救急センターという流れがいちばん望ましいのだろうと考え ております。  この中で、「地域の小児科医による夜間の小児患者の保護者等向け電話相談の実施」 とあります。小児救急の患者はどうしても軽症の方が多く、そういった方々がすべて二 次医療機関の大きな病院に行かれまして、本来二次医療を必要とする患者がなかなか受 けられないという状況があります。したがいまして、軽症の方々をどうするかが、小児 救急では大きな課題になっております。20頁ですが、これを私どもとしては、実は鴨下 会長の研究班の中でご提言をいただいた電話相談をやってみたらどうかということで、 平成16年度から全国展開をした資料です。これは半年前のデータですが、平成16年度中 に実施・実施予定は19県。平成17年度実施又は検討中が24県。このとおりいきますと、 平成17年度中には、大体ほとんどの県で電話相談が一応できるという体制になろうかと いう資料です。  実際に効果があるのかどうかについては21頁です。これは平成16年度中にやっていた だいた2つの県のデータをいただき、実際に対応された方がどのように指導されたのか をパーセントで表わしております。上の県も下の県も大体同じ傾向ですが、「軽症なの で翌日にかかりつけ医にいらっしゃったらどうですか」といった対応、「いまは心配な いけれど、何かあれば医療機関に行くようにしてはどうですか」とか、そういうレベル にもいかず、例えばミルクの飲み方がどうだとかこうだとかという助言・指導のみで終 わっているものも30%とか、下の県の場合は16%ありますが、こういったものを合わせ ると大体7〜8割が軽症であったことが明らかになりましたので、こういったことを県 レベルできちんと進めることにより、できるだけ軽症の患者は中規模・大規模の病院に いきなりいらっしゃらないような形で、しかも保護者の方々に安心感を持っていただく ということで、施策を進めたいと考えているところです。  先ほど「周産期は別」と申しましたが、周産期においても同じように医療計画の中で きちんと、こういう図式を住民の方々にお示しをし、これから赤ちゃんを産もうとする お母さんや住民の方々に、ちゃんと安心感を持っていただけるような医療計画にしたい ということで、こういうポンチ絵を用意したところです。 ○部会長  小児医療あるいは周産期、母子医療でしょうか、これだけ整理をして討論の時間がで きるのは大変有難く思っております。ただ1つだけ、先ほど母子保健課長の発言の訂正 をさせていただきます。研究班を私がつくったという表現がありましたがそうではあり ません。前の厚生労働大臣坂口先生が特別に予算をお取りになって、谷口課長がちょう ど前の母子保健課長ですが、お2人の指導といいますか、私どもは尻を引っぱたかれ て、何とかやってきたということですので、よろしくお願いします。  それでは、ただいまのご説明全体に関して、どんどんご発言いただきたいと思いま す。 ○指導課長  資料2の1頁に体系図を載せております。私どものミスで、左側の箱の中に「救急医 療関係者研修費等経費(18百万円)」とありますが、これはミスで「106百万円」の間 違いですので、ご訂正をお願いします。 ○小山田委員  平成8年と平成14年の産婦人科医、小児科医のデータが出されました。実は、平成14 年以降、この2〜3年で日本の病院並びに診療所の医師の流動が大きく変わっていて、 それがいまの医療困難を招いています。もう1つは、地域格差が非常に大きくなってい ます。その中で、例えば小児科も婦人科も、それから救急にしても、どういう形でこれ から医療をやっていくかというためには、そうした事実をしっかり知らないで、ただ平 均だけでやっていると、これだけの数があるのではないかということになるので、2〜 3年で変わりつつある日本の、特に激しい小児科、産婦人科の状況を踏まえた上で、こ れからの議論を進めていただきたいということであります。 ○部会長  私からお返事いたします。研究班ではかなりきめ細かくその辺は把握しており、いず れ報告書でお目にかけられると思います。言われるように大変地域差があります。しか も、北海道は面白いデータがあります。産婦人科医・小児科医の数と反比例して、二次 医療圏では乳児の死亡率が動いているというきれいなデータが出ております。おそらく 各県ごと、しかも県の中でも都市部と周辺部ではずいぶん差があるということです。そ の辺は全国にわたってではありませんが、都道府県のいくつかにきれいなデータが出て おります。 ○服部参考人(野呂委員代理)  いま都道府県の話が出ました。特に小児科・産婦人科の問題についてはいまご説明が あったように、非常に深刻な状況になっています。2−1で救急医療体制の図を描いて いただいていますが、実際に小児科医の不足は、こういうきれいな救急医療体制そのも のがなかなかとれない状況になってきています。大学などの話を聞いても、小児科医や 産婦人科医になろうとする方が非常に少なくなっているとのことです。ですから、小児 科医や産婦人科医の育て方というか、そういったことも含めて検討をお願いしたいのが 1点です。  救急体制については、二次の救急病院へ、開業医の方が協力して休日の応援体制を組 んだり、地域独自のことをやらざるを得ないような状況も出ております。医療法の関係 で医療計画といったお話もありましたが、地域の実情についてもいろいろ意見交換をさ せていただきたいたいと思います。  先ほど電話相談のこともありましたが、特に最近は少子化ということもあり、専門医 とか大病院へかかられる傾向が強いのではないかと思っています。子ども相談もPRに 努めておりますが、やはり行政が直接そういうことをもっと積極的にPRしていかない といけない。周知については都道府県も含め、より努力が必要ではないかと考えており ます。 ○山本(文)委員  2頁の図のとおりいけばいちばんいいのです。ところが、かかりつけ医は救急には存 在しないと言ったほうがいいのではないですか。かかりつけ医がいれば救急医療のセン ターをつくる必要はないわけです。大体、夜間とか休日というのはかかりつけ医の人が いないのです。だから、いちばん困っているわけです。こういうふうに書かれると、か かりつけ医がいるにもかかわらず、救急医療のセンターをつくってやるのかと思われが ちです。  もう1つ考えなければならないのは、昔の人の育て方と今の人の育て方は全然違うの です。咳を2つ3つした、じゃあ、これは病気だと、すぐそう考えて、これは病院へ行 かなければと思うのです。大事にすることは非常にいいことだと思いますが、小さなこ とでもすぐ、医療だ、病院だ、診療所だ、先生だと言っているのが実態です。その日た またま機嫌が悪くて赤ちゃんが泣いた、それだけでも病気だと判断しがちなんですね。 そういう人たちがすぐかかりつけ医に行く。ウイークデーならいいのです。ところが休 日とか夜間になるとそういう人はいない。いないというか、いても今はやらないです。 ここに医師の方もたくさんおられると思いますが、土曜は午前中までやっているようで すが、午後から日曜日はほとんど診療していません。だから、ここにかかるわけにはい かないと思います。  医師の数値が書いてありますが、地域差を全然考えないで、全体的な需要と供給だけ で出して、ちょうどいいやとか、間に合うよと言われたのでは、中山間地帯の医療は崩 れてしまうのです。中山間地帯と都市部とは、医師の数は全然違うのです。だいたい、 医師免許をもらっても何でもできるものではないのです、医師というのは、ある程度勉 強のできる、あるいは研修を受けられるような病院へどうしても皆さんが行くのです。 数だけでいくと、それはいるかもしれません。特に中山間地帯には、自分は熟練してい なくて自信がないから行かないという点もあるのです。都市には集中しています。それ は先ほどのような理由で、大病院には行きます。行きますけれども、それである年数が 経って経験を積んで、これでまあまあ、というところまで自分で思ってから、それから 先は自分の考えたとおりにいくでしょう。ところが、その間は中山間地帯には来ません から、熟練をした人たちは、より都市に集中していくのです。これが日本の医師の在り 方の実態なのです。そういう実態を考えないで、数だけでバランスをとってていると言 われたら、中山間地帯の人たちはかわいそうです。そういうのをどうするかです。ここ には勉強されていいことが書いていただいていると私は思うのですが、その辺りが少し 欠けているのではないかと思います。  それから、最終的にどうしたらいいかというようなことを書いてあります。研修する ための費用とか何とかいうのを書いてあった所がありました。これだけ気を使っていた だいているのですけれど、実現するまでの間は空白じゃないですか。その間、一体どう するのですか。例えば、ここに書かれているとおりに小児科や産婦人科の人たちに手当 をして、そういう医師をつくっていったとして、これから先はこれで充実してますよと いうことになるのかもしれませんが、その間どうするのですか、充実するまでの間は。 それは全然書かれてないじゃないですか。そういうところがいちばん大事です。1日た りとも空白をつくってはならないのが医療じゃないでしょうかね。  私はいつも言うのですが、「病気は休みがない」と言うのです。土曜・日曜は病気が 休めばいいんです。病人じゃないですよ、病気が休めばいいのです。ところが、そうい うのは関係ありませんからね。先ほど言ったように、こういう手当をしていけば、小児 科や産婦人科の医師をたくさん育成できるかもしれません。しかし、それまでの間は一 体どうするのか、これが抜けているような感じがします。  それから、なぜ小児科医や産婦人科医になる人が少ないのか。皆さんはご存じだと思 うのですが、私なりに皆さんに聞いてみたところ、結局収入が少ないのですね。なんで そんなにいないのですかと。私は救急医療の委員長をやっているものですから、ときど き皆さんの意見を聞くのですが、そうしたら収入が少ないと。収入が少ない上に、小児 科というのはいちばんややこしいのですね、本人が何も言いませんから。どこが痛いと か、ここがこうですとか言いませんから。予診が全然できないものですから、ややこし いし、収入の少ない割に難しいと。そういうことで小児科の医師にはなるべくなりたく ない、と言う。産婦人科も同じことで、そんなことよりも、もっときれいな内科のほう がいいや、あるいは整形外科のほうがいいやということになっていくわけです。  じゃあ、一体どうしたらいいかということなんでして、高い収入が得られるようにす れば、小児科医とか産婦人科医になるのではないかと思う。ここに書いてありますか ら、そのとおりにやっていただければいいと思います。インセンティブの所に、留学制 度、診療報酬、若手向けの研究費とか書いてありますが、それぐらいでなるでしょう か。私はならないような気がしますね。もう少し定着するような、皆さんが望んで来る ようなことを、もう少しインセンティブの中に入れたらどうかなと思います。  これは立派なものです。私も今日初めて見せていただきましたが、これだけ気を使っ て検討していただいた皆さんには敬意を表しますが、全国一律的なものというのは、う まくいかないものなのです。これは何事もですよ。医療であろうと、教育であろうと、 防災であろうと、全国一律にうまくいくものではありません。だから、どうしたらいい かということを、それぞれの地域の実情をこの中に加味していかないとうまくいかない と思います。その辺を少し書いていただければ、検討していただければと思います。い らないことを言ったようですが、私はそう思いますので、是非ご配慮いただきますよ う、お願いを申し上げておきたいと思います。 ○龍井委員  いま子育ての仕方が違うというご指摘がありましたが、私はそうではなくて、むしろ 若いお母さん方を含めて、要するに孤立していると考えています。相談相手がいない、 おじいちゃんおばあちゃんもいないし地域のネットワークもない、ということの反映だ と思います。そう考えていくと、3頁の下の箱の1の3つ目の●で、「なんでも相談で きるかかりつけ医」と書かれておりますが、これは実態と合わないのではないか。むし ろ3頁の見出しにあります、「子育て支援医療」という、まさにそことのタイアップが この施策で求められていて、つまり、本当にもう大丈夫ですよという一言があるかない かで、悩みが全然違うわけでしょう。そのケアがどこでされているか。ですから、これ は医療ではないのかもしれない。その子育て支援ネットワークとの連携を、省庁の縦割 りを超えた、そのスキームをこのチャートの中で是非つくっていただきたいというのが 要望です。  その関連でいうと、相談ダイヤルというか、これを全県設置のお考えがあるのか、あ るいは,この電話番号がどう周知されているのか。例えば母子手帳に書かれているのか。 ○指導課長  電話相談事業の周知等に関してのご質問ですが、この事業は都道府県が主体となって 行う事業と位置付けており、それに対して国が補助するというスキームになっていま す。こういった事業のPR、広報といった経費も一応都道府県が使える補助事業になっ ております。広報ができるお金もつけております。また、都道府県が実際に事業を開始 する際にマスコミ等への情報提供や、都道府県が開設するホームページに掲載していた だけるようにお願いもしておりますし、一応住民への周知は都道府県のほうで、これま でもかなりやられているのではなかろうかと考えております。ただ今後、母子手帳とい うご指摘もありましたが、市町村レベルで任意的記載事項として載せていただくという ことはとてもいいことだと思いますので、そういった形での広報啓発を進めていきたい と考えております。こういったものを広めるのは大変大事であると思いますので、母子 手帳もいいご示唆だと思いますし、さまざまなことを今後も考えてまいりたいと思って いるところです。 ○辻本委員  支援ということでの相談業務は非常に大事なことだと思います。ただ、多くの場合は 医師会や看護協会が委託を受けてという形で実施されています。21頁にもありますが、 電話でのやりとりで、答えるお母さんは医療に精通しているわけではないので、正しい 情報が伝えられているかどうかわからない。そして実際に診ているわけでもない。電話 で対応する中で、まあ、明日でもいいでしょう、というような状況の中で、実は、非常 に緊急を要する場面もこれから出てくると思います。その辺りの対策というか、どうい ったことをお考えになっているのかお聞きしたいと思います。 ○指導課長  基本的にこの事業は、小児科の医師もしくは小児科に割と詳しいナース、その場合で も小児科の医師がバックできちんとサポートできる体制でやっていただく形になってお ります。小児科のことにあまり詳しくない方が担当しているということではないと我々 は認識しております。確かに電話を通しての話ですので、実際に顔が見えませんから、 逆に、これを担当する先生方も、大丈夫かなという不安は、確かに当初あったと私ども 聞いております。ただ、実際にそれをやってみたとき、本当に100%ご担当の先生方が 満足してやっているかどうかはわかりませんが、こうした結果からできるのではなかろ うかと、担当されている先生方もかなり増えているとも聞いておりますので、できるだ け現場の声を聞きながら、直すべきところは直しながら対応してまいりたいと考えてお ります。 ○部会長  初年度広島県で医師会と県の協力でいたしました。いまご指摘の点は私も大変気にな ったものですから、先ほどのヒヤリ・ハット的なことはなかったのかという点は十分注 意をいたしました。担当される医師はかなり熟練した医師が全部当たるということで、 あまり悪い例はないということで全国展開をいたしております。 ○見城委員  関連する質問です。医師は診療報酬をいただけるのでしょうか。私の場合、子どもを 育てているときに、子どもを連れて行くには子どもがより具合が悪くなるのではないか とか、もしかしたら、この程度で連れて来たと怒られるのではないかという、非常に躊 躇するときと、自分自身も忙しいとかいろいろあるわけです。そういう中で、かかりつ け医に電話したのです。「こういう状況ですが、やっぱり風邪でしょうか。連れて行っ たほうがよろしいでしょうか」と言ったら、「じゃあ、どうぞ」と言われて行ったとき に、「これからは、電話では診療報酬にならないし、来てください」と。それはそうだ と思って、その分お支払いしてでも、子どものためにいちばんいい方法をとりたいわけ です。電話で指示をされて、「この前出した風邪薬でいいですよ。飲ませてあげてくだ さい」で済むのなら、電車代やタクシー代はかかりませんし、子どもの負担も少ない。 その辺が、あれからだいぶ経ちましたので、もっと明快になっているかと思ったので す。  センターがあって、相談して、顔も見たことがない、触ったこともない子どもの電話 での診断をしていくという難しさはあると思います。理想は、一度でもいいからかかっ て、顔写真でも貼っておいて、その子の特徴も書いてあって、「あっ、このお子さんで すね」と。日ごろは元気がいいのに元気がないというようなことからわかるような、そ ういう電話だったら有難いし、診療報酬を出していくべきではないか。お母さんにとっ て、お医者様に行ったのと同じくらいになる電話での対応はできないのでしょうか。  もう少し近未来的に言うと、いまの若いお母さんは携帯でメールは送るわ、写真は送 るわ、ムービーで送るわ、そういうものを取り入れた、電話だけど映像までいくような 状況がもうきていますので、そういったことに予算をつけて、いまのお母さん、明日の お母さんに対応できるような方策は考えていないのかどうか。  9頁に、女医さんが29歳になると600人を超えて700人ぐらいに上がっていますが、こ れは若い人はそのくらい受けていて、要するに女性の就労のM字型と同じで、35歳ぐら いになってくると自分自身が家庭を持ち子どもを産むので、ちょっと退くために減るの か。もともと女医さんは少なくて、いま受験者が多くて女医さんが増えているのか、そ の辺も教えてほしいのです。 ○部会長  どちらが大きいかと言えば、昔は女医さんは明らかに少なかったです。今は非常に増 えて40〜50%ですから、女性医師問題は問題にするほうがおかしいのです。  診療報酬のことを言われましたが、これはそちらの問題だと思いますが、広島県で始 めたときはボランティアです。山本委員はお帰りになりましたが、先ほどのお話だと、 小児科医は金によって動かされているような印象を受けられたかもしれませんが、決し てそうではなく、皆ボランティアというか、良心的にやって、もう力尽きていなくなっ ているのです。その点は誤解のないようにお願いしたい。 ○見城委員  本当に質のいい電話相談ができるのであれば、きちんと報酬を得るべきでしょうとい うのが、私が実際にお医者様に子どもを連れて行って対応したときの感じです。女医さ んに関しては、育児休業ではないですが、そうなる女医さんがいらっしゃれば、その 間、電話相談の対応ができるとか、いくらでも対応は考えられるのではないかと思って 先ほどの質問をさせていただきました。 ○佐伯委員  前々会で各委員からの意見ということで別のを出していただいたと思いますが、往 診、特に小児についてはかかりつけ医が午後の時間帯は往診をしてくださる、その時代 はとても安心できた、その時に戻ってほしいなと思います。今のお母さんが咳1つ2つ で心配するのではなく、大事に1人の子どもを育てるというのは、地域、あるいは国全 体の狙いでもあろうと思いますので、是非真剣に取り組んでいただきたいと思います。 ○・・委員  小児科医が少なくて偏在をしているという理由ですが、仕事がきつく収入が少ないと いうのは、やはり大きな理由だろうと思っております。特に病院の小児科医が少なくな っているのだろうと思いますが、小児の、いわゆる0〜14歳の人口に対する小児科医は 大体80人で、平均からすると少ない。さらに小児救急の大半が軽症で、いわゆる時間外 で本来の救急が少ないことから考えると、特に病院小児科医の過重労働を軽減するに は、やはり電話相談等で軽症の人たちを、なるべく翌日に来ていただくような形にする のがいいだろうと思っております。我々も電話相談については、責任をどうやってとれ ばいいのか。実際に診ずに指示を出して、結果が悪いときにどうなるのかが非常に心配 でした。もともと何回も診ている方が、先ほど言われたように電話再診のような形の場 合はいいのですが、全く診ていない方に対する指示を出すのは非常に神経を使います。 その辺は行政サイドで詰めていただきたいと思います。おそらく患者も権利意識が非常 に高くなっておりますので、結果が悪ければ必ず訴訟になることは十分予想されるわけ です。国民への啓発というか、国民教育という意味でも大切だろうと思います。  また、小児科医の収入を増やすために診療報酬を上げるかという話ですが、若いご両 親にとっては、診療報酬が上がって自己負担が増えることになると、逆に難しいという こともありますので、その辺の負担の割合を減らす方策も併せて考えていただくことが 大切だと思っております。 ○大橋委員  小児科医として、また行政をあずかる者として一言お願いをしたいのです。19頁の 「小児救急拠点病院」を是非充実してほしいです。この小児救急拠点病院は小児科医が 3人か5人いて、二次と三次だけを受けてくれれば、時間外をやってもいいが、必ずと ってくれるという保証がないから時間外はやらないです。実際に自分が24時間診療を やって非常に困ったことは、夜間、重傷患者を引き受けてくれる病院を探すのに大変な 状況になっています。 ですから、是非ここで、行政の立場としては、小児救急拠点病院は二次、三次だけやっ て、小児科医をある程度ここへ出してくれれば、足りない分は行政が補うという気持は 十分あるわけですから、是非これを実現していただければ、このような討議をしなくて も大丈夫だと思います。  資料3の1では、診療時間外がやってもらえないのです。山本委員は土・日はやらな いと言われましたが、非常に困るのです。診てもらえるとなるとドーッと来て、その医 師はたまらない。これは自分のかつてのことを言うのですけれども、夜診てもらえると なるとそこへ集中するわけです。診ても、今度こちらが重症を送れないということが、 いちばん困ったということです。ですから、救急拠点病院を整備することを討議してい ただき、小児科医を大勢そこに置いてくれれば、救急はこれで困らないのではないかと 思います。  資料3の1で、これを細かく言っていたら時間の無駄ですから、皆さんこれを見てい て、こんな感じで夜間はやってもらえないということが理解できると思います。重複し ている言葉がありますが、大学の独立法人化ということで、ビルの診療所のことで同じ ことが書いてありますが、これは削除していただきたいと思います。それから、前回配 付した救急の地方と都会との違いは、見ていただければ有難い。松井委員が小児科医を 集めて、救急医を置いてくれて、そういうことも討議していただければ有難いと思って おります。 ○村上委員  私どもの病院が、まさに小児救急拠点病院みたいな形になっております。小児科医は 10人おりますし、新生児科医も5人おりますので、毎週土日の小児救急医療は必ず小児 科医がやっておりますので、全部うちに集中しております。かかりつけ医の制度がどう のこうのというのは、私どもからすると非常にナンセンスです。確かに周りに小児科医 は何人かいますが、当然うちに送るものだと思いますから全て来ます。例えば正月は 400人以上救急患者が来ます。そのうちの小児科患者は150人以上来ます。いくらうちで も、3人ぐらいの小児科医を出しても2時間待ち、3時間待ちになってしまうという状 況です。だから、かかりつけ医があるという段階だけの問題ではないような気を持って います。 ○松井委員  かかりつけ医と小児救急拠点病院、それ1つずつではなく、やはり全体で支えていく 仕組が重要ではないかと思います。例えば相談ダイヤルにしても、まだ検討中という県 もあるようですが、相談窓口があることで、二次、三次の所に行かなくていい人も減ら せる。そういうことは早急に進めていただき、そのような窓口があることを周知してい ただきたい。特に親御さんたちに対する一般的な、これは患者に対する教育と同じだと 思いますが情報の提供とが相俟って、どこに行くのがいちばんいいのか、自分が選択で きるように総合的に対策を取っていただきたいと思います。  医療安全体制のところで発言できなかったのですが、いま鴨下部会長のところで医療 訴訟の問題も、産科の件で検討されているということですが、医療安全体制の中でAD Rについてはあったのですが。もう1つ最後にあるのは、無過失補償制度になるのだと 思います。いま鴨下部会長のところで、どのような議論がなされているのか。私として は、不幸にして医療過誤、医療事故が起きてしまうのであるならば、それが再発しない 仕組をまずきちんと整えていくために、現状でどのような方策がいいのか。不幸にして 起きてしまったものに対する補償が、大変重要なものとして残っていると思うのです。 その在り方についても、十分検討してもらえると有難いと思います。 ○部会長  今の件について申し上げますと、ノーフォールト・コンペンセーションと英語で言っ て、アメリカあるいは北欧でかなり前から制度化されているようです。日本でも福岡県 で、県医師会と大学病院、医師や法律家も入ってやっていました。裁判になるとどちら かが負けるか勝ちをつけないと賠償は出ない。出産はエラーがないと考えられても何か が起こる。そのことに対しては賠償ではなく補償ということで。これもパイロット的に おやりになって、でも、何か事情があったと思うのですが、途中でうまくいかなくなっ たと伺っています。日本医師会全体でそういうことに取り組んでいただくとか、そうい う方向で是非、今後やっていただきたい。これについては報告書にも書いております。 ○三上委員  医師会のほうで無過失に対する補償、いわゆる医療に関する傷害の補償制度に対する 検討委員会を現在立ち上げております。福岡県でうまくいかなかったことも参考にしな がら、いま委員会を立ち上げております。今までに5回ぐらいの委員会を開いており、 そのうち結果報告ができると思います。 ○大橋委員  産婦人科医がいなくて困っていると言われており、この審議会で是非増やしてもらう ように考えてほしいということです。 ○部会長  実際調べてみますと、小児科よりも産科のほうがはるかに事情は厳しいようです。私 もコメントさせていただきたいのですが、産科・小児科医になり手がないというのは、 卒後いかにどうこうという問題ではなく、やはり在学中、あるいは、それ以前の問題で す。これは厚生労働省の範囲を超えるわけですが、私ども研究班としては、文部科学省 に、大学の中での小児医療、あるいは産科医療をもっと充実するということで、小児科 の教授を複数にするとか、産科と一緒に母子センター構想というのがあるのですが、い わば大学の中に小児病院・母子病院をつくることで定員を膨らませて、そこにベッドも 置くといったことをすれば、自然にそこで育つ医師も多くなるだろうということを提言 したいと思っております。  もう1つは、これは班として考えたことですし、私は昔から思っていることですが、 医療の基本計画を抜本的に変えたほうがいいのではないか。つまり、今は精神科や感染 症や成人、それから結核という枠組でずっとやってきていて、21世紀はそういうことで はなく、母子あるいは子ども、生殖年齢の女性、それから成人と高齢者といった4本立 てぐらいに変えないといけないのではないか。そういうことによって医療関係者だけで なく、国民の意識が変わって、子どもを大事にすることが最も大事なことではないかと 思うのです。そのことを、この席で申し上げることかどうか自分でもよくわからないの ですが、私はいろいろなものに書いたり、しゃべったりしております。そのことがいち ばん早道になるのではないか。もちろん小児医療は非常に不採算といいますか、お金が ほかの診療科に比べてかかるわけですから、そうした診療報酬の面での配慮は必要だろ うと思います。先ほど申し上げたようなことで、一気に細かいところは解決していくの ではないか。時間はかかるかもしれませんが、そのように考えております。  何かご発言はありますか。 ○見城委員  女性がよく希望しているのは、婦人科はなかなか行きづらい、だけど、女性のライフ サイクルをずっと診てもらえるような対応で、女性クリニックではありませんが、そう なると行きやすいと言うのです。いまの部会長の話とも近いと思うのですが、病気にな ったから婦人科に行くのではなく、婦人科の医師が少ないのでしたら、女性が思春期か らはじまって体がどんどん変動していきますので、そういったことをトータルで、女性 クリニックのような形で、ライフスタイルも含めて診ていただけるような形になると、 もう少し行きやすくなるのではないかという気がするのです。  あと、病院の中で赤ちゃんを産もうと思っているときに、悲惨な感じの病院の中にあ る産婦人科よりも、わかりやすく言えば、例えば愛育病院のように、本当に子どもを産 むために、イメージからして非常にいい感じになっている、そういう所のほうが行きや すい。しかし、そういう所は少ないという声も聞かれます。母子をどう括るかですが、 もし変えていただけるなら、若い女性のうちから対応していただいて、ある時期には母 子になって行くわけですが、そういう構想をとっていただけたら有難いと思います。  隠れたところでは、もうご存じだと思いますが、性感染症の数が大変多く、しかも、 そういったものが全く表面に出てこないで、親も知らないかもしれないという中で、い ざ子どもを産む年齢になってみたら、そのことが影響して、それだけではないかもしれ ませんが不妊症になって、ということもお医者様から伺います。事前に防げるはずのこ とが、産婦人科のためになかなか行けないということもあります。いろいろなものが低 年齢化し、特にセックスに関しても低年齢化してきているときに、もう少し女性医療と いうことで考えられないか。それによって産婦人科になる医師も増えれば、いい形にな って有難いのです。つまり、対象がぐっと広がり、よりライフスタイル産業的になると いうことで、明るくなるのではないかと思います。 ○部会長  そろそろ時間ですので、この辺で終わりにしたいと思いますが、よろしいでしょう か。 ○大橋委員  先ほど部会長から母子医療の言葉が出たのですが、産婦人科でお産をしたときに、小 児科医が近くで開業していて、非常にいい状況にだんだんなってきているのですが、小 児科医がその子どもの検診もやる、また、お母さんの検診もやる。核家族化が進んでい るから、お母さんが育児ノイローゼになっている。そういう相談も小児科医ができる。 また、いじめもなくなってくる。是非、母子医療について討議していただきたいと思い ます。 ○部会長  いろいろご意見を頂戴いたしましたが、資料2に盛られた方向性は、ご意見としては 大体一致したのではないかと思います。今後、さらに事務局にも整理をお願いして進め てまいりたいと思います。先ほどの医療の安全に関しても、是非、もう一度議論するこ とを考えたいと思います。  時間ですので本日の議論はこれで締めにしたいと思います。事務局から今後の予定に ついてご説明いただけますか。 ○企画官  本日、委員の方々にご議論いただきました論点については事務局で整理をし、今後改 めてご議論をいただく際に、追加資料も含めて準備させていただきます。  次回以降の日程ですが、次回は4月13日(水)午後2時から、場所は、本日と同じ15 会議室を予定しておりますので、ご出席をお願いいたします。議題は「医療機能の分化 ・連携」「医療施設体系及び医療施設に係る規制の在り方」「在宅医療の推進」及び 「災害医療提供体制」という予定です。  なお、次々回以降の日程は、本日委員の皆様には机の上に1枚紙を用意しております ので、ご予定を書き込んでいただきますよう、よろしくお願いいたします。 ○部会長  それでは、本日はこれで終わりにいたします。長時間いろいろとありがとうございま した。