05/03/14 疾病・障害認定審査会第3回議事録              第3回 疾病・障害認定審査会           日時:平成17年3月14日(月)11:00〜12:00           場所:厚生労働省・省議室 ○石井総務課長  それでは、第3回の疾病・障害認定審査会を開催させていただきたいと思います。  当審査会への委員の御就任をお願いしておりました先生方の任期につきましては、去 る2月16日に満了を迎えたところでございます。この度、改めて委員への御就任をお願 いいたしました。そこで、本日はまず最初に、改めて委員への御就任をお願いいたしま した先生方の御紹介を申し上げたいと思います。本日の座席表と、資料1の名簿を合わ せて、適宜御覧いただきながらお聞きいただきたいと思います。  資料1を御覧いただきますとおわかりになります通り、当審査会では予め先生方に所 属していただく分科会の方を決めさせていただくことになっております。今回はこの資 料1にごさいますような形で、各先生方には分科会への所属を決めさせていただいたと ころでございます。それでは、この名簿に沿って御紹介申し上げます。  最初に、感染症・予防接種審査分科会からでございます。  東京都老人医療センター感染症科部長の稲松委員でいらっしゃいます。  岩本委員は、本日御欠席でございます。  次に、東京女子医科大学小児科主任教授の大澤委員でいらっしゃいます。  岡部委員、古賀委員のお二方は、本日御欠席でいらっしゃいます。  次に、国立感染症研究所感染病理部部長の佐多委員でいらっしゃいます。  次に、国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻教授の永井委員でござい ます。  桃井委員は、本日御欠席です。  次に、古賀総合法律事務所弁護士の山川委員でいらっしゃいます。  雪下委員は本日御欠席でございますので、感染症・予防接種審査分科会をお願いいた しました先生方は、以上の通りでございます。  次に、原子爆弾被爆者医療分科会をお願いいたしました先生方でいらっしゃいます。  国立がんセンター中央病院放射線治療部長の池田委員でいらっしゃいます。  次に、財団法人広島原爆障害対策協議会健康管理・増進センター所長の伊藤委員でい らっしゃいます。  佐々木委員は、本日御欠席です。  次に、日本赤十字社長崎原爆病院第二外科部長の谷口委員でいらっしゃいます。  次に、社団法人広島市医師会会長の平松委員でいらっしゃいます。  次に、財団法人放射線影響研究所臨床研究部部長の藤原委員でいらっしゃいます。  泉二委員は、本日御欠席です。  次に、東京医科大学第二内科主任教授の山科委員でいらっしゃいます。以上が原子爆 弾被爆者医療分科会をお願いいたしました先生方でございます。  次に、身体障害認定分科会をお願いいたしました先生方を御紹介させていただきま す。  飯野委員と小口委員は、本日御欠席でございます。  独立行政法人国立病院機構東埼玉病院院長の川城委員でいらっしゃいます。  佐藤委員は、本日御欠席でございます。  次に、虎ノ門病院健康管理センター部長の原委員でいらっしゃいます。  原田委員は、本日御欠席です。  次に、東邦大学医学部長の松島委員でいらっしゃいます。  道委員は遅れておられるようでございますので、お見えになりましたら御紹介申し上 げます。  次に、独立行政法人労働者健康福祉機構関東労災病院院長の裄V委員でいらっしゃい ます。  吉村委員は遅れておられるようですので、お見えになりましたら御紹介を申し上げま す。以上が今回改めて委員をお願いいたしました皆様でいらっしゃいます。何卒よろし くお願い申し上げます。  なお、委員の皆様方には、厚生労働大臣から発令しました辞令を、机の上に置かせて いただきました。御確認の上、御受取りいただきたいと存じます。  続きまして、当審査会の事務局を御紹介申し上げます。当審査会の全体に関する事 務、また、原子爆弾被爆者医療分科会の事務局を担当いたしておりますのが、私、健康 局総務課長の石井でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。  なお、本日は先程来申し上げておりますが、改めて先生方に委員への御就任をお願い しての最初の総会でございますので、後ほど審査会の会長の選出をお願いしたいと考え ており、それまでの間、私が議事進行を務めさせていただいております。  次に、感染症予防接種審査会の事務局は、健康局結核感染課長の牛尾が担当いたしま す。また、身体障害認定分科会の事務局は障害保健福祉部企画課長の村木が担当いたし ますが、本日は公務のため欠席させていただいております。以上、事務局の御紹介でご ざいました。  続きまして、関係局長から御挨拶を申し上げたいと思います。まず、原子爆弾被爆者 医療分科会及び感染症予防接種審査分科会を担当いたします健康局の田中局長から御挨 拶を申し上げます。 ○田中局長  おはようございます。健康局長の田中でございます。第3回の疾病・障害認定審査会 の開催にあたりまして、一言御挨拶を申し上げます。  大変お忙しい中、また、年度末いろいろなお仕事がある中、先生方におかれましては お集まりいただきまして大変ありがとうございました。常日頃から厚生労働行政の推進 には格段の御尽力・御協力をいただきまして、この場を借りまして厚く御礼を申し上げ ます。また、今回は当審査会の委員を快くお引き受けいただきまして、誠にありがとう ございました。重ねて御礼を申し上げます。  この疾病・障害認定審査会は、それぞれの法令に基づきまして、予防接種による健康 被害の認定、あるいは原爆に起因する負傷や疾病の認定、及び身体障害認定にかかわり ます都道府県等からの疑義照会に対する判定を行うものでございまして、審議内容は、 極めて専門的かつ個別的なものでございます。  このため、審査会のもとに三つの分科会を設けまして、それぞれの分野を代表する先 生方に御参加をいただいている次第でございます。今後開かれます各分科会において、 その専門的見地から、忌憚のない御意見を頂戴できれば大変有り難いと考えているとこ ろでございます。  私どもといたしましても、事務局といたしまして会議の円滑な運営に努力してまいり ますので、先生方におかれましても御協力のほど何卒よろしくお願いいたします。あり がとうございます。 ○石井総務課長  続きまして、身体障害認定分科会を担当いたします障害保健福祉部の塩田部長から御 挨拶を申し上げます。 ○塩田障害保健福祉部長  障害保健福祉部長の塩田でございます。障害保健福祉部は、この中で身体障害者福祉 法に基づく身体障害の認定、都道府県から出されます認定の難しいケースについての御 審議をいただくということでございます。よろしくお願い申し上げたいと思います。  それから今の障害保健福祉の方はかなり大きな改革をするということで、この国会に 障害者自立支援法というのを提案しておりますので、若干御説明をさせていただきたい と思います。これまで障害保健福祉の分野は身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精 神保健福祉法という三つの法律に基づいて、それぞれ様々な経緯の中で別々に発展して まいりましたが、今度その中の福祉サービスと医療は育成医療と更生医療と精神通院の 部分でありますが、この三つについて一本の法律にまとめるということを考えておりま す。特に福祉サービスについては市町村で三つの障害について一体的にサービスが提供 できるような仕組みを目指すということでございます。  そのため、福祉サービスと医療サービスの大半が一つの法律になりますが、今ある身 体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法自体は引き続き存続するというこ とでございます。身体障害者福祉法に基づく身体障害の範囲ですとか障害の認定につい ては当面現在と同じ考え方で行うということにしているところでございます。  したがいまして、若干法制度の関係がややこしくなりますが、障害者自立支援法も最 終的な包括的な障害者保健福祉のサービスをめざす上でのワンステップということであ りまして、当面この分科会では現行制度のもとでの身体障害の認定の御審議をお願いす るということになろうかと思っております。  いずれにしても障害の範囲ですとか等級の認定のことですとか、様々な問題が指摘さ れておりますので、引き続きいろいろな角度から御意見をいただければと思っている次 第でございます。よろしくお願い申し上げます。以上です。 ○石井総務課長  以上、関係局長、部長から御挨拶を申し上げました。それでは、当審査会の会長の選 任をお願いしたいと存じます。  本日の資料を御覧いただきますと、資料2に、本審査会に関係する決まり事がござい ます。この資料2の最初の頁の真ん中ほどに、疾病・障害認定審査会令があり、次の頁 の第4条が、会長の選任に関して定めているものでございます。  第4条の最初に、審査会に会長を置き、委員の互選により選任するとございますが、 私ども事務局といたしましては、これまで会長をお願いしておりました裄V委員に、引 き続き会長をお願いしたいと考えておる次第でございます。先生方、いかがでございし ょうか。    (拍手)  ありがとうございました。それでは御了承いただけたと考えますので、裄V委員に、 引き続き当審査会の会長をお引き受け願いたいと存じます。何卒よろしくお願いいたし ます。それでは会長、お席をお移りいただきますようお願いいたします。では以降の議 事運営は、会長にお願い申し上げます。 ○裄V会長  ただいま会長を仰せつかりました裄Vでございます。本審査会につきましては、様々 な課題を常設的に検討しているものでありますが、委員の皆様方の御協力を得まして、 この審査会の運営が円滑にまいりますように努力してまいりたいと思います。どうぞよ ろしく御協力をお願いいたします。  それでは、議事を進めてまいりたいと思います。この審査会令の第4条第3項という ところにございますが、会長代理を指名する必要がございます。これにつきましては、 会長の指名ということでございますが、これまでに引き続きまして、私といたしまして は、本日は欠席でございますが、小口芳久委員に会長代理をお願いしたいと思います が、いかがでございましょうか。   (拍手)  それではそのように、本審議会として決めさせていただきまして、後ほど小口委員の 御承諾を得た上で、改めて各委員には御連絡を差し上げたいと思います。  議事といたしましては1〜4までが終わりましたので、これからは「疾病・障害認定 審査会の運営について」という議題5について進めてまいりたいと思います。まず、こ の疾病・障害認定審査会のそれぞれの部会の活動の説明に先立ちまして、事務局から了 承を得たい案件がございますので、これを説明していただきたいと思います。 ○石井総務課長  それでは事務局から先生方に、今後の当審査会、また、分科会の運営に関する事項に ついてお諮りをいたしたいと存じます。  先程御覧いただきました資料2の2頁の下の方に、「6 審査会は、その定めるとこ ろにより、分科会の議決をもって審査会の議決とすることができる。」という条文を御 覧いただけると思います。これを受けてさらに、資料3を御覧いただきたいのですが、 これがさらに詳細な規定を定めております当審査会の運営規程でございますが、この資 料3の最初の頁の中程に第4条というものがございます。「分科会及び部会の議決は、 会長の同意を得て、審査会の議決とすることができる。」と定められているところでご ざいます。  これまでの運営につきましては、この第4条を受け、分科会の議決をその都度会長に お諮りして審査会の議決とするのではなく、あらかじめ、包括的に会長の御了承をいた だいた上で、分科会の議決を審査会の議決とするという形をとってまいりました。つき ましては、今後とも、これまでと同様の取扱いとすることについて、御了承をいただき たいと存じます。これが、第1点目でございます。  また、この資料3の最初の頁に第2条がございます。ここには、「会長は、厚生労働 大臣の諮問を受けたときは、当該諮問を分科会に付議することができる」とございま す。これにつきましても、従来の取扱いといたしましては、大臣から諮問がありました 際に、どの分科会に付議するかということをその都度会長にお諮りするのではなく、諮 問の内容が、例えば予防接種に関する健康被害の認定に関することであれば「感染症・ 予防接種審査分科会」に付議するというように、適宜、適切な分科会に付議すること を、あらかじめ包括的に会長の御了承をいただいておりました。この分科会への付議に つきましても、これまでと同様の取扱いとすることについて御了承をいただきたいと考 えているところでございます。以上2点、お諮り申し上げたいと存じます。よろしくお 願いいたします。 ○裄V会長  それではただいまの運営に関します事務局からの提案につきまして、どなたか御発言 はございますでしょうか。もし特段の御意見がございませんようでしたら、従来からの 取扱いということで、ただいまの提案通りに処理させていただきたいと思います。  改めて申し上げますと、通常の議事の審査につきましては、諮問があった場合に適切 な分科会へ付議するということにいたしまして、その審査の結果、分科会の議決はそれ をもって当審査会の議決とするということでございますが、よろしゅうございますでし ょうか。それでは、そのように取り扱いたいと思います。  続きましては、議題の6に入らせていただきます。各分科会の事務局から、それぞれ の概要について御説明をいただきたいと思います。まず最初に、感染症・予防接種審査 分科会からお願いいたします。 ○事務局(江崎)  健康局結核感染症課課長補佐の江崎でございます。感染症予防接種審査分科会の概要 等につきまして御説明をさせていただきます。お手許に配布しました資料にそって説明 をさせていただきますので、資料5を御覧ください。  感染症・予防接種審査分科会は、その審議の内容から大きく二つの部門に分かれてお ります。一つは感染症法、正式には感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関す る法律といいますが、それと検疫法、これに基づく審査請求に対しまして、厚生労働大 臣が裁決を行う場合に疾病・障害認定審査会の意見を聞く場合でございます。  具体的には、感染症法第25条及び検疫法第16条の2の規定に基づきまして、入院や隔 離の措置を受けている患者、またはその保護者から、その措置の妥当性に対して厚生労 働大臣あて審査請求があった場合、厚生労働大臣は疾病・障害認定審査会の意見を聞か なければならないという規定がございます。この感染症・予防接種審査分科会で当該措 置の妥当性につきまして御審議をいただき、意見をまとめていただきまして,厚生労働 大臣あて答申をしていただくということでございます。  こちらは発足以来現在まで審査請求がございませんので、実績がございません。ただ し、審査請求があった場合ですが、最も早いもので請求があってから5日以内に裁決を しなければならないというものがございますので、迅速な対応が求められているもので ございます。  それからもう一つは、予防接種が原因である健康被害者、これに対して救済措置を行 うために厚生労働大臣が認定を行う場合、それから、その認定に対して行政不服審査法 に基づく請求に対して裁決をする場合に疾病・障害認定審査会の意見を聞く場合でござ います。こちらは感染症・予防接種審査分科会の下に予防接種法に基づく健康被害認定 について審議する予防接種健康被害認定部会、これと、行政不服審査法に基づく審査請 求に関して審議をする、予防接種健康被害再審査部会の二つの部会が設置されておりま す。  各々の部会においてまず個別具体的な審議を行っていただきまして、そこでまとめら れた意見に基づきまして再度分科会において審議をしていただきます。そこで再び意見 をまとめていただきまして、厚生労働大臣へ答申諮問していただくということとしてお ります。  具体的には、予防接種健康被害認定部会におきましては、予防接種を受けた後に発生 した疾病、障害または死亡、これらの健康被害と予防接種の因果関係について審議をし ていただき、因果関係が認められるとした場合には、障害の等級の決定についても意見 をまとめていただきまして、その意見について感染症・予防接種審査分科会において再 度審議を行い、意見をとりまとめていただきまして、厚生労働大臣へ答申をしていただ くということでございます。  また、厚生労働大臣が予防接種と健康被害の因果関係は認められないと否認をした場 合、若しくは認定された障害の等級に不服がある場合、こういうものに対して行政不服 審査法に基づく審査請求があった場合には予防接種健康被害再審査部会で審議を行い意 見をまとめていただきまして、再度、感染症・予防接種審査分科会において審議を行 い、意見をまとめていただきまして、厚生労働大臣あてに答申をしていただくというこ とになっております。  部会の委員でございますが、本日御出席の本委員、それから同じく厚生労働大臣が指 名しております臨時委員、この二つの委員で構成されております。本委員、臨時委員が どの部会に属するかは、分科会に属する委員の互選によって選出される分科会長が指名 をすることとなっておりますが、最初の分科会を開催する時にそういう事務手続きを行 っていただくということでございます。なお、予防接種健康被害認定部会でございます が、概ね月1回定期的に開催させていただく予定でございます。  次の頁を御覧ください。法定の予防接種の一覧表でございます。予防接種法に基づく 予防接種が9種類ございます。このうち痘そうについては、現在のところ実施されてお りません。それから結核予防法に基づく予防接種であるBCGがございます。結核予防 法による予防接種についても、健康被害の救済につきましては、予防接種法に基づく救 済措置を行うこととなっております。  次の頁を御覧ください。予防接種健康被害者として厚生労働大臣の認定を受けた方に 対する救済措置の具体的な内容です。医療費、医療手当につきましては、認定された疾 病に基づいた医療を受けた場合に支給される給付でございます。それから障害児養育年 金、それから障害年金でございますが、認定された障害の等級に応じまして支給される 年金でございます。養育年金は障害の状態になった健康被害者が18才未満である場合 に、そのものを養育するものに支給される年金ということでございます。  それから死亡一時金でございますが、予防接種を受けたことにより、死亡したと認定 されたものの遺族に対し支給をされます。葬祭料も予防接種を受けたことにより死亡し たと認定されたものの葬祭を行うものに支給されるという手当でございます。  次の頁を御覧ください。平成15年度と16年度に認定をされた方の数、それから否認を された方、各ワクチンごとということでございますが、そういう表を作ってございま す。139名の方から申請がございまして、認定された方が128名、否認された方が11名と いうことでございます。  このあとの資料でございますが、ただいま御説明をいたしました感染症・予防接種審 査分科会の概要につきまして、根拠法令等に基づきましたさらに詳細な説明文書、それ から最後には障害の等級表等をつけてございます。御参考にしていただきたいと存じま す。簡単ではございますが、感染症・予防接種審査分科会につきましての説明を終わら せていただきます。ありがとうございました。 ○裄V会長  ありがとうございました。御質問あるいは御意見などは、三つの分科会についての説 明を伺いましてから、ディスカッションに入りたいと思います。続きましては、原子爆 弾被害者医療分科会についての説明であります。よろしくお願いします。 ○事務局(浅沼)  それでは健康局総務課の浅沼でございます。原子爆弾被爆者医療分科会の概要につい て御説明をさせていただきたいと思います。お手許の資料6を御準備いただきたいと思 います。  原子爆弾被爆者医療分科会では、広島、長崎の医療の現場で活躍している医師を含む 専門家からなる委員により、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律、通称、被爆者 援護法と申しますが、そこに規定されております原爆症の認定審査につきまして、個別 に科学的・客観的な判断が行われております。平成13年2月21日の第1回分科会から現 在まで、ほぼ毎月にわたり、計50回が開催されているところでございます。資料6の 2、3頁をお開きいただきたいと思います。開催状況につきましては、こちらの資料の 通りになっておりますが、最近では1回の開催につきまして、60〜80件の答申をいただ いている状況でございます。  戻りまして1頁の2番に入らせていただきます。原爆症の認定審査におきましては、 個々人の被爆状況及び申請に係る疾病の状況について詳細に検討し、当該負傷または疾 病が原子爆弾の放射線に起因したものであり、かつ、現に医療を要する状態であるかに ついての判断を行っております。また、当該負傷または疾病が原子爆弾の放射線に起因 するものではない時は、その治癒能力が原子爆弾の放射線の影響を受けているため、現 に医療を要する状態にあるかについての判断を行っております。  資料の4頁をお開きいただきたいと思います。原爆症認定等の概要でございます。被 爆した方が、申請により被爆事実の証明がなされた場合には、被爆者健康手帳を取得す ることができます。平成16年3月末の数字でございますが、約27万4,000人の方が手帳 を取得しているところでございます。  この被爆者健康手帳を取得しますと、無料で健康診断を受けたり、自己負担なしで医 療を受けたりできるので、様々な援護策を進めているところでございますが、こうした 被爆者の中で先程申し上げた原爆症ではないかと思われた方がある場合には、都道府 県、あるいは広島市、長崎市を通じまして国に申請を出していただいています。  厚生労働省といたしましては、原子爆弾被爆者医療分科会にこうした申請を諮問し、 申請疾病が原爆放射線に起因し、要医療性があるという答申をいただきますと、その申 請疾病を原爆症として認定しているところでございます。平成16年3月末では2,271人 の方が認定を受けておられます。この認定を受けた方は、全額国費でその疾病の治療の ための医療を受けることができるほか、医療特別手当の支給を受けることができ、現 在、その月額は13万7,840円となっております。  1頁に戻ります。3番です。原子爆弾被爆者医療分科会におきましては、平成13年5 月25日に、原因確率に基づく認定の考え方、「審査の方針」を定め、これを公表し、認 定審査の適正化を図っているところでございます。「審査の方針」は、原子爆弾被爆者 に対する放射線の影響の科学的な推計方法として、原因確率という概念を新たに導入し たものでございます。これは、放射線影響研究所における12万人を対象とした疫学研究 をはじめとした最新の知見をもとに、個々の被曝線量、被爆時の年齢、性別、疾病の情 報から、その疾病が原子爆弾の放射線にどれだけ影響を受けているかを推定算出するも のでございます。なお、個々の審査に当たりましては、原因確率を機械的に適用するも のではなく、個々人の既往歴、環境因子、生活歴なども総合的に勘案し、個々の疾病の 状況に照らした判断を行っているところでございます。  5頁をお開きいただきたいと思います。「審査の方針」の概要でございます。主な内 容といたしましては、まず、申請に係る疾病等についての放射線起因性等の判断に当た っては、原因確率及び閾値(以下「原因確率」という)を目安として判断をすることと なっております。原因確率とは、疾病等の発生が、原子爆弾の影響を受けている蓋然性 があると考えられる確率でございます。申請者の性別、被曝時年齢、被曝線量によって 疾病ごとに算出されております。この原因確率が設けられた疾病は、白血病、悪性新生 物(がん)、副甲状腺機能亢進症でございます。  6頁を御覧いただきたいと思います。これは、「審査の方針」から抜粋した爆心地か らの距離による広島、長崎両市の初期放射線による被曝線量でございます。爆心地から 近い距離になればなるほどこの初期放射線量が高い値を示しますが、例えば、1,750メ ートルのところを御覧いただきたいと思います。広島ですと、線量が18センチグレイ、 長崎ですと33センチグレイとなります。この違いは、広島の原子爆弾がウラン、長崎の 原子爆弾がプルトニウムということで、性格が異なっており、また、出力の差があると いうことでございます。  続きまして7頁でございます。一例として甲状腺がん・女性の場合を挙げておりま す。先程申し上げました18センチグレイのところ,上段の方にプロットできるポイント があると思いますが、被曝時の年齢が8才だといたしますと、左軸の被曝時年齢の8の プロットのところ、それと被曝線量18センチグレイのプロットのところが交差したとこ ろに54.6%という値があると思います。この数値が申請者の原因確率となります。  それでは5頁に戻ります。2)に入らせていただきます。原因確率が概ね50%以上の 場合には一定の健康影響の可能性があると推定し、概ね10%未満である場合にはその可 能性が低いものと推定するという方針でございます。したがいまして、今の事例で申し ますと、50%を超えておりますので、健康影響の可能性があると判断していくというこ とになります。  ただし、この判断に当たりましては、原因確率等を機械的に適用するものではなく、 つまり、この数値が50%を超えるか超えないか、あるいは10%に満たないかということ だけで判断するのではなく、当該申請者の既往歴、環境因子、生活歴等も総合的に勘案 し、原因確率が例えば10%から50%の間の場合、あるいは原因確率等が設けられていな い疾病に対する判断も含めて、個別に判断をしているということでございます。  以上で、原子爆弾被爆者医療分科会の概要に関する説明を終えさせていただきます。 ○裄V会長   それでは引き続きまして身体障害認定分科会につきまして御説明をお願いいたしま す。 ○事務局(加藤)  障害保健福祉部企画課の加藤でございます。私の方から身体障害認定分科会の概要に つきまして御説明をさせていただきたいと思います。お手許の資料7を御覧いただけれ ばと思います。  身体障害認定分科会につきましては、この当審査会令第5条の規定に基づきまして 「身体障害者福祉法施行令の規定により審査会の権限に属させられた事項を処理するこ と」とされております。この身体障害者福祉法施行令につきましては、資料の下の方に 参考という形で該当部分を載せさせていただいております。  具体的には、都道府県・指定都市並びに中核市が身体障害者手帳の交付事務を行うに あたりまして、その申請者の状態が身体障害者福祉法別表に掲げる障害に該当するか否 かにつきまして,疑いがある場合に各都道府県知事より厚生労働大臣あてに認定を求め ることができるとされているところでございます。  この認定の求めがあった場合につきましては、厚生労働大臣は当審査会に諮問を行う こととされておりまして、大臣の諮問に基づき身体障害認定分科会で御審議をいただい ているところでございます。この流れにつきましては資料を1枚めくっていただきます と簡単な絵にさせていただいております。  まず、都道府県・指定都市、中核市から(1)大臣への認定の求めがございます。それ に基づきまして(2)大臣の方から当分科会の方に諮問をされます。また、ここで分科会 の方で御審議をいただきました結果に基づきまして(3)大臣あての答申をいただきます と、その答申に基づく結果の通知を(4)求めのあった自治体の方に通知するというよう な流れになってございます。  また、その答申の内容につきましては、これは全国的に周知をした方がいいという内 容でございますれば、(5)必要に応じて全国の自治体あて技術的助言という形で通知を 発出するというような流れになってございます。  この身体障害者手帳の交付事務につきましては、平成12年度から各都道府県等が行う 自治事務とされておりまして、この身体障害者福祉法施行令に基づく認定を求められる 事例というものは非常に少のうございまして、平成13年度には3件、平成15年度には1 件という形で御審議をいただいたところでございます。  また、この分科会におきましては、この手帳の交付事務を行う際のガイドライン、こ れは通知ですが、この身体障害認定基準という通知を発出してございます。この通知改 正等につきましても医学的・専門的見地から御審議をいただいているところでございま す。 ここの分科会の方の判断のところで、資料の(参考2)ということで、身体障害 者手帳の概要、またどういったものが身体障害の範囲になっているかというところで (参考3)といたしまして、法令等の抜粋の方を資料としてつけさせていただいており ます。後ほどお目通しをいただければというふうに思っております。簡単ではございま すが、身体障害認定分科会の概要等につきまして御説明を申し上げました。以上でござ います。 ○裄V会長  以上で各分科会の概要についての説明は終わりましたが、まだ時間がございますの で、それぞれの分科会につきまして、各委員の方々が日頃から問題としてお感じになっ ておられる点、それぞれ分科会でディスカッションはされていると思いますが、この審 査会で問題提起をしていただき、討議をしていただくような案件がございましたら、ど うぞ御発言をいだたきたいと思います。  まず最初に感染症予防接種審査分科会の方はいかがでございましょうか。毎月一回ず つ分科会を開いて審議をなさっているということでありますが、その中で問題となって いる点で、この審査会において審議をしていただきたいというふうな点がございました ら、どうぞ御発言をいただきたいと思います。特にございませんか。それでは、また後 ほどでも結構です。  原子爆弾被害者医療分科会の方はいかがでしょうか。特段ございませんでしょうか。 それでは、私の方から事務局に一つ伺いたいと思います。実際の認定の過程で、原因確 率という概念を導入されたというのは非常によくわかりますが、5頁の下の方に、「原 因確率等を機械的に適用するものではなく、当該申請者の個別の既往歴、環境因子、生 活歴等も総合的に勘案して、個別に判断する」とございます。そうしますと、大体原因 確率が低い場合でもおそらくこういった特殊な個人的ないろいろな状況に応じて認定す るという、そちらの方にむしろ審議としては行われる、つまり原因確率が必ずしも高く なくても認定すると、そういうふうな方向で実際の審議が行われているという面が強い か、あるいは逆の方が強いのか、その点は今までの審議の状況というのはいかがです か。 ○事務局(浅沼)  ただいまの御質問にお答えいたします。結論から申しますと、2)にあります通り、 概ね10%未満である場合には当該可能性が低いものと推定しまして、10%未満の場合は 原則的には却下という考え方で審議はされているところです。  ただ、しかしながら先程申し上げました通り、一方で、50%以上の場合に、いわゆる 高度の蓋然性があるという考え方でございますので、原因確率が10%から50%の場合に どのような推定をしていくかというのが、この3)の「機械的に適用するものではなく 」という考え方に当たるところでございまして、原則的には10%以上である場合には、 既往歴、あるいは環境因子などを総合的に勘案して、大体のところはまず認定という答 申をいただいているところでございます。  また、原因確率が設けられている疾病は、白血病、悪性新生物(がん)、副甲状腺機 能亢進症です。そして、一定の被曝線量以上の放射線を曝露しなければ疾病等が発生し ないという考え方の値である閾値が設けられている疾病は、放射線白内障です。申請者 の疾病には、このほか、例えばケロイドや循環器疾患など、様々なものがございます。 そういった場合には、お1人お1人の申請者の既往歴や生活歴あるいは医師の意見書な ども勘案しながら、個別に判断をいただいてるところでございます。 ○裄V会長  どうもありがとうございました。 ○川城委員  今の原因確率は大変興味深く勉強させていただきましたが、これは計算する時に現在 年齢、申請時の年齢というのは要素として入っているのでしょうか、入っていないので しょうか。 ○事務局(浅沼)  先程申し上げました放射線影響研究所の12万人の疫学調査は、いわゆる死亡調査と申 しまして、現年齢というよりは被曝時の年齢を考慮して、この原因確率の推察をしてお ります。  しかしながら、近年の死亡者の状況も踏まえた上で、この原因確率を設定しており、 時が経てば悪性新生物などで死亡する方も増えてまいりますので、その際のデータなど も加味しながら、再度、新たにこうした数値などを出していくということでございまし て、節目節目ごとに、この原因確率の数値の計算式というのは変化していくというよう にお考えになっていただいて結構だと思います。 ○裄V会長  他にございませんでしょうか。それでは身体障害認定分科会につきましてはいかがで しょうか。この分科会は平成12年から都道府県がかなり自立的に認定をするようになり まして、あまり厚生省のレベルまで上がってくる件数は少なくなりましたが、その理由 の一つといたしましては、従来からの認定基準につきまして、新しい医療の進歩、ある いは新しく高齢者などに見られてくるような身体障害に関わるいろいろな病態につきま しての認定基準というものの見直しを、確か12年から13年頃でしたでしょうかね、かな り精力的に行いまして、比較的わかりやすく認定できるような形にしたということも一 つの理由になっているかと思いますが、最近は厚生省まで上がってくる案件というのは かなり少なくなっているという実情がございます。身体障害の方は特によろしゅうごさ いますか。他に三つの分科会全体を通じまして何か御発言はございますでしょうか。 ○山川委員  原子爆弾の被爆者の方の審査、この13年から合計50回で3,074件の答申をされている ようですが、このうち因果関係と申しますか、認定が否定された方の割合というのはど の程度か、ちょっと参考のためお教えいただきたいと思います。 ○裄V会長  事務局の方いかがですか。 ○事務局(浅沼)  平成15年度の数値で申し上げますと、申請件数が742件ございました。うち認定件数 が198件でございます。却下件数が544件になりますので、認定率と申しますと26.7%で ございます。 ○裄V会長  そうすると認定件数は大体毎年そんな感じですか。 ○事務局(浅沼)  ちなみに平成14年度は21.5%、平成13年度は26.3%でございます。 ○裄V会長  そうするとかなり認定の件数が一般的にというか、厚生労働省のレベルまで上がって くるものについては厳しいような印象も受けますが、やはり悪性新生物とかいろんなも のは加齢に伴ってどんどん出てくるわけで、原子爆弾による被曝の因果関係というのが あまりなくても申請として上がってくる件数が多いということなるんでしょうかね。 ○事務局(浅沼)  客観的に申し上げますと、審査にかかる疾病につきましては、今、御指摘のありまし た悪性新生物などのほか、例えば、骨粗鬆症や腰痛といった放射線起因性がないと考え られる疾患も、多数、申請が上がってきております。我々としては、所定の様式などが 整った申請であれば、これを受理して分科会に審査していただき、答申をお願いしてい る状況です。 ○裄V会長  ありがとうございます。よろしゅうございますか。他にいかがでしょうか。それで は、特段の御意見がございませんようでしたら、三分科会の概要についての質疑は、以 上で終わりにしたいと思います。以上で6までの議事が終わりましたが、その他につき まして、何か委員の方々からございますでしょうか。事務局の方からは何かございます か。 ○事務局  特段ございません。 ○裄V会長  それでは、特に審議すべき案件は、これ以上ないようでございますので、本日の疾病 ・障害認定審査会は、これをもって終了いたします。どうも御苦労様でございました。         (問い合わせ先:健康局総務課総務係 03−3595−2207)