05/3/10 労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会 第5回議事録          第5回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会                        日時 平成17年3月10日(木)                           10:00〜                        場所 厚生労働省専用第17会議室 ○櫻井部会長  それではただいまから、第5回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会を開催いた します。今日は内藤委員と町田委員から、欠席というご連絡をいただいていますが、そ の他の委員にはご出席いただいておりまして、定足数を満たしております。  委員の交代がありましたので、ここで紹介させていただきます。労働者代表として、 日本化学エネルギー産業労働組合連合会セメント部会副執行委員長の松下委員です。 ○松下委員  松下でございます。よろしくお願いいたします。 ○櫻井部会長  日本基幹産業労働組合連合事務局次長の鈴木委員です。 ○鈴木委員  鈴木です。よろしくお願いします。 ○櫻井部会長  使用者代表として、三菱マテリアル株式会社常務取締役の清川委員です。 ○清川委員  清川でございます。よろしくお願いいたします。 ○櫻井部会長  次に安全衛生部長が交代されておりますので、ご紹介いたします。 ○安全衛生部長  小田でございます。よろしくお願いいたします。 ○櫻井部会長  その他、事務局に異動があったようですので、簡単に自己紹介をお願いいたします。 ○労働衛生課長  労働衛生課長の阿部でございます。よろしくお願いいたします。 ○環境改善室長  環境改善室長の中村でございます。よろしくお願いいたします。 ○主任中央じん肺診査医  労働衛生課主任中央じん肺診査医の土屋でございます。よろしくお願いいたします。 ○櫻井部会長  続いて事務局から、今日の資料の確認をお願いいたします。 ○主任中央じん肺診査医  それでは私から資料の確認をさせていただきます。まず座席表、次にじん肺部会の次 第です。資料No.1は、労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会委員の名簿です。資 料No.2は3枚綴りで、「平成15年じん肺健康管理状況」、「じん肺健康診断実施結果 の推移」、「随時申請によるじん肺管理区分決定件数等の推移」です。以上の資料、ご ざいますでしょうか。 ○櫻井部会長  それでは今日の議題に入らせていただきます。今日の議題は、報告案件が1件です。 平成15年じん肺健康管理状況について、事務局から説明をお願いいたします。 ○主任中央じん肺診査医  資料No.2に基づいて説明させていただきます。平成15年のじん肺健康管理状況につ いては、1のじん肺健康診断結果で、適用事業場数が4万4,510、粉じん作業従事労働 者数が35万1,731名、じん肺健康診断実施事業場数が1万7,437、じん肺健康診断受診労 働者数が18万3,961名でございます。管理区分決定件数は、有所見者の合計が7,304名 で、うち管理2が6,380名、管理3のイが583名、管理3のロが329名、管理4が12名で す。うち、有所見者の合併症り患件数が8名となっております。  次に、随時申請に係るじん肺管理区分決定状況です。管理区分決定件数が2,873件、 有所見者の合計が2,193名、管理2が1,248名、管理3のイが353名、管理3のロが382 名、管理4が210名です。うち有所見者の中の合併症り患件数が626名です。  3は、平成15年中に合併症の療養を開始した者の内訳ですが、合計65名中、肺結核21 名、結核性胸膜炎5名、続発性気管支炎11名、続発性気管支拡張症1名、続発性気胸1 名、原発性肺がん26名となっております。  次に、横表の「じん肺健康診断実施結果の推移」をご覧ください。簡単に、年次推移 について説明させていただきます。まず、いちばん右側の有所見率については、分母が 左から5列目の、「じん肺健康診断受診労働者数」ということです。分子は、右から3 列目の「有所見者数」です。  粉じん作業従事労働者数とじん肺健康診断受診労働者数、有所見者数、有所見率につ いて、簡単に説明させていただきます。まず昭和55年には、粉じん作業従事労働者数が 57万2,086名、じん肺健康診断受診労働者数が25万9,899名で、うち有所見者数が4万 2,387名、有所見率が16.3%でした。  昭和60年の数字を見ると、粉じん作業従事労働者数が58万9,758名、じん肺健康診断 受診労働者数が26万629名、有所見者数が3万9,376名、有所見率が15.1%でした。  平成5年では、粉じん作業従事労働者数が39万9,835名、じん肺健康診断受診労働者 数が21万9,607名で、うち有所見者数が2万3,062名、有所見率が10.5%でした。平成15 年度の数字については、先ほどのペーパーで説明させていただいたとおりですが、平成 15年度の有所見率は4.0%まで下がってきております。  次のペーパーをご覧ください。随時申請によるじん肺管理区分決定件数等の推移で す。昭和55年には、じん肺管理区分決定件数は、合計4,300名、うち有所見者数は4,060 名、合併症り患件数は1,057名でした。昭和60年には、じん肺管理区分決定件数は3,237 名、有所見者数が2,938名、うち合併症り患件数が706名でした。  平成5年のじん肺管理区分決定件数は、2,785名、うち有所見者数が2,458名、合併症 り患件数が546名でした。平成15年の数字については、先ほど説明させていただいたと おりですが、じん肺管理区分決定件数が2,873名、うち有所見者数が2,193名、合併症り 患件数が626名でした。 ○櫻井部会長  ただいまの説明の内容等について、ご意見ご質問がありましたら、どうぞお願いいた します。 ○田上委員  まず1つは、資料2の3点目、「平成15年中に合併症の療養を開始した者の内訳」と いうのが出ていますが、この「合併症の療養を開始した者」というのは、随時申請に係 るものも含まれているのかどうかをお尋ねしたいと思います。  2つ目は、先般有所見者の肺がん健診が義務づけられて、6番目の法定合併症になっ たわけですが、それからまる1年の期間を見ると、この平成15年がまとまる最初の年度 だと思いますので、お尋ねします。普通からいけば、じん肺健康診断の受診労働者数が 増えるのではないかと見ていたわけですが、前年と比べると、じん肺健康診断受診労働 者が、若干減少しているということは、どうなのか。  もちろん、フルにということはありますが、管理2以上の人は、現に非粉じん職場で 働いている者については、毎年健康診断を受ける必要はなかったわけですが、今回の改 正に伴って、じん肺健康診断を受けなければいけない。こういう状況になったにもかか わらず、受診労働者数が減っている背景はどういうところにあるのか、こういったとこ ろをお尋ねしたいと思います。  随時申請のじん肺管理区分決定件数の推移を見ると、決定件数が減少してきています が、この15年度は若干増えたということは、いま私が申し上げたことが背景にあるのか どうか。また、有所見者数もずっと減少してきているのですが、平成14年度に比べる と、200名程度、有所見者数が増加している。これが肺がんと関係があるのかどうかを お尋ねしたいということで、以上3点、教えていただきたいと思います。 ○櫻井部会長  それでは事務局のほうからお答えください。 ○主任中央じん肺診査医  1点目は、資料No.2の3、「平成15年中に合併症の療養を開始した者の内訳」とい うことで、この中に、随時申請が含まれているのかというご質問だったと思いますが、 これは含まれていない数字です。その理由は、注2という所に書いてありますが、本表 は、じん肺法施行規則第37条による事業者からの報告の集計結果です。  次のご質問については、じん肺健康診断受診労働者数が、平成14年度は約19万人であ ったのが、平成15年度は約18万3,900人と、若干減少している理由は何かということで あったかと思います。これは、はっきりした理由はよくわからないのですが、粉じん作 業従事労働者数自体が、離職等により減少していることによるものと考えられます。済 みません、はっきりした理由はわかりません。  次のご質問については、3枚目の「随時申請によるじん肺管理区分決定件数等の推移 」で、じん肺管理区分決定件数の合計が、平成14年度が2,647名であったのが、平成15 年度は2,873名と、これも若干、平成15年度に限って増加している理由ということであ ったと思います。過去を見てみますと、確かに少しずつ暫減傾向にはありますが、例え ば平成3年には、2,598名であったものが、平成4年には2,809名と、増加傾向にある年 もあって、全体としては少しずつ下がってきているのですが、年によっては増えている 年もあるということだと思います。ちょっとこれも、はっきりした理由はわからなく て、大変申し訳ありません。  その次の質問の随時申請の有所見者数のところで、これも平成14年の有所見者数が 1,998名であったものが、平成15年には2,193名と、若干増加しているということについ ても、全体的には毎年減っている傾向にありますが、過去のところを見ると、例えば平 成8年には3,007名であったところが、平成9年には3,117名と増えている、一部そうい う年もあります。理由についてはわかりませんが、全体としては、少しずつ暫減傾向に あるということです。 ○櫻井部会長  肺がん健診の影響というところが、あまりはっきりしないようで。 ○田上委員  合併症で療養を開始した者の内訳には、随時申請は含まれていないということですの で、平成15年度の合併症り患者件数は8ですよね。したがって、ここの合計の65という のは、それまで管理2、3の方で、平成15年度中に合併症にり患し療養を開始した者、 そちらの側の数が入っているという解釈でよろしいですか。 ○主任中央じん肺診査医  資料No.2、じん肺健康診断結果の管理区分決定件数の「合併症り患件数」、これは じん肺健康診断のときに合併症にかかっているということがわかった、初めての数字で す。  3番目の「平成15年中に合併症の療養を開始した者の内訳」の合計が65名というの は、いままでに管理2以上の管理区分決定を受けていて、平成15年に合併症の療養を開 始した者でございます。 ○田上委員  要は、最初に何をお尋ねしたかったかと言いますと、肺がん健診の実態調査を厚生労 働省でとられているのかどうかということです。ラセンCT検査、喀痰検査が、この平 成15年度中にどういう状況であったのか、その実態がわかると、最初にお尋ねした3つ のことが全部わかったのですが、その件にはちょっと触れられませんでしたね。最後に その点については、教えていただきたいと思います。 ○主任中央じん肺診査医  都道府県労働局から、少し個別に情報収集をさせていただいたところ、各局によって 若干のばらつきがあるものの、これもはっきりした数字ではないのですが、7割から10 割程度の事業場において、ラセンCTが実施されているという回答をいただいておりま す。じん肺有所見者の離職者については、平成15年の制度改正に伴い、管理2の離職者 も、健康管理手帳が交付されたところですが、平成15年末には4,159名に対し、健康管 理手帳の交付を行っております。  都道府県労働局からの聞取り調査の結果については、事業者から提出された現職の労 働者に限ったものでは、例えば、前回の管理区分決定が管理区分2または3の者につい て、ラセンCT検査を実施していなければ受け付けないという労働局もありました。そ ういう労働局がほぼ100%だろうと考えております。  あとは担当者の印象で、8割、7割、6割、半数程度という回答を得ております。じ ん肺有所見者に対するラセンCT検査の実施は重要であると考えておりまして、都道府 県労働局安全衛生主務課長会議においても、制度改正の周知等に引き続き努めるよう指 示したところで、本省としても引き続き本制度の徹底に努めてまいりたいと考えており ます。 ○櫻井部会長  ほかにご質問ご意見ございますか。 ○工藤委員  過去20年間余りの推移を拝見すると、有所見者の絶対数、有所見率、いずれも下がっ ていることは大変よいことで、現場での労働管理のご努力が反映されていることと思い ます。ただ、この20年間の受診率が40%から60%くらい、この数値を何とか持ち上げる というような、その辺のお考えはどういう、あまり変わっていない、ずっと変わってい ないように思うのです。これ自身、妥当な数字なのかということがあるように思うので す。実施率、あるいは受診率、これを見ると、大体40%弱ですか。 ○主任中央じん肺診査医  先生のいまのご質問は、2枚目の紙の、粉じん作業従事労働者数とじん肺健康診断受 診労働者数の比較でということですか。 ○工藤委員  そうです。 ○主任中央じん肺診査医  それは、管理2で、現在非粉じん作業に従事している者については、例えば3年に1 回とか、管理1についても、3年に1回とか、そういう方もございますので、これで。 ○工藤委員  真の、実際の対象者、その年度に本来しなければならない対象者の中での受診率と か、実施職場の率というのは、どのくらいなものですか。 ○主任中央じん肺診査医  それについては、数字を把握しておりませんけれども、大体この数字を見たら、約3 分の1強受診しているので、かなり受診率は高いのではないかと思います。 ○工藤委員  そうすると、対象職場、やらなければならない所に関しては、非常に高い完遂率であ ると理解してよろしいですね。 ○主任中央じん肺診査医  はい。 ○工藤委員  この数字だけポッと出てくると、事情がよくわからないから、誤解する可能性があり ますので。 ○田上委員  いまの工藤先生のお尋ねは的確だと思うのですが、今度管理2が、じん肺健診、現に 粉じん職場で過去働いていて、いまは非粉じん職場で働いている人は、確かに毎年受診 の義務はなかったということで、おおむね対象労働者の4割から5割くらいが受診すれ ば、ほぼ網羅されているのではないかという確認がされていたのですが、実際は有所見 者で管理2のウエイトというのは高いのですね。管理2がいちばん高い。その管理2 で、肺がん健診が加わったわけですから、当然今後、いままでと同じような管理の仕方 ではちょっとまずいのではないかと思います。先ほどのお答えのところで、各都道府県 のほうに、さらに周知徹底も深めていくとおっしゃいましたので、とりあえず終わりま したが、いまの工藤先生のお話と合わせて、私どもはそういったところをメインにして いかなければいけないのではないかと思います。 ○名古屋委員  第6次の粉じん政策の中では、トンネルと溶接と金属というものが重点項目になって いると思うのです。確かにトンネルはガイドラインが出て、対策がとられているのです が、アーク溶接については、どのような形に考えられているのか。それから表に出てき ていないので、どのようにお考えになっているかをお聞かせ願いたいと思います。 ○環境改善室長  アーク溶接に係る粉じん対策については、まず規制ベースで申し上げると、粉じん障 害防止規則によって、全体換気装置の設置、呼吸用保護具の使用等を義務づけているわ けです。これらに加えて、第6次の粉じん総合対策において、アーク溶接作業を重点事 項ということで取り上げて、局所排気装置を設置して、作業環境改善を図ること、ある いは、じん肺予防に関する教育の実施等の対策の指導を進めてきているところです。  しかしながら、アーク溶接作業というのは非常に特異な作業で、1つは換気に伴って 風速が出てくると、溶接欠陥といっていますが、そういう恐れがあるというようなこと があります。あるいは、小規模事業場で行われている作業が多いということで、局所排 気装置の設置などの対策については、あまり進んでいないのではないかという指摘がさ れております。  それで、我々としては、とにかくその実態をよく調べてみようということで、調査研 究委員会を設置して、アーク溶接作業の現場で現在調査を行っております。その調査を 踏まえて、今後粉じん対策の有効かつ効果的な手法はないか検討している段階です。  今後ですが、調査検討中ですので、はっきり申し上げられませんが、中には、実態調 査をしてみると、好事例、いま非常に改善の進んでいる所もあるようですので、そうい った好事例を中心として、それをベースにマニュアル的なものを作って、それを普及啓 発に使っていきたいということで考えて作業をしています。 ○名古屋委員  確かに、溶接でマニュアルを作っていって、これはいい例ですよと。例えば、4mmで あったのが3mmに落ちたというようなものはよい事例だと思うのです。でも、それだけ ですと、多分事業主も労働者も、あるいは改善を担当する人たちも、それではどこまで 下げていいのか、という判断基準がないとまずいと思うのです。これは多分、屋外のガ イドラインに出てくると思いますが、屋外もかなりの測定を考えて、いまの管理といい ますか、65条でいっている測定を適用してきましたが、これはもう適用できない。それ で作業管理という考え方に変えていって、個人の人たちの管理という考えで、新しい測 定手法を導入してきて、屋外測定というのはガイドラインになってくる。  トンネルも、いまのような65条を当てはめていくと、これは改善がなかなか難しいだ ろうということで、50m離れた所で、リアルタイムに測定できていて、自分でその目標 に向かって改善していくという、よい手法ができているのです。アーク溶接も、何らか の判断基準を出していかないと、よい事例が出てきたとしても、どこまで努力していけ ばよいのか。  特に、いま測定してみていちばん困るのは、現状の65条で間に合うのか。A測定が1 になったところで、ばく露濃度を測ってみると、当然じん肺が起こってきそうな濃度と いうのはいくらでもあるわけです。そのときの判断基準を先にきちっと示すということ も必要ではないかと思うのですが、その先のところは、どうお考えになっているか、お 聞かせ願いたいのです。 ○環境改善室長  先生がおっしゃるのはごもっともでございます。ただ、アーク溶接作業は、さまざま な業種で行われております。例えば造船業とか建設工事などでも行われているわけで、 いろいろな所で作業が行われています。それから、いろいろな作業方法がとられている ということで、作業環境の測定をするにしても、どういう測定をしたらよいかという問 題があります。あるいは、測定した結果をどう評価するかというような問題もあって、 この点についても、研究をしていかなければいけないと考えているところでございま す。いずれにしても、当面は、先ほど申し上げた好事例を中心としたマニュアルで、普 及啓発を進めていきたいと考えているところでございます。 ○名古屋委員  できたら早目に判断基準を示してほしいというのは、多分、アーク溶接ばかりではな くて、アメリカなどでもそうなのです。ステンレスとかクロムの問題とか、アルミ溶接 の問題とか、もっともっとじん肺ではないほかのところに波及してくるので、早目に基 準を出していって、そして管理するという方向にもっていかないと、後々に大きな疾病 を呼ぶような形になってくるのかなと思います。やはり、改善事例を出すと同事に、早 目に国の判断基準を出すことが必要ではないかと思うので、お願いしているわけです。 ○環境改善室長  付け加えておきますと、先ほど実態調査をしていると申し上げましたが、その中で、 いろいろな測定の工夫をしながら、測定データを取ろうということでしておりますの で、それも参考にしながら、今後そういった評価についても検討していきたいと思いま す。 ○名古屋委員  よろしくお願いします。 ○櫻井部会長  ほかには何かございますか。よろしいですか。それでは、当部会として、この報告を 承ったということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。                  (異議なし) ○櫻井部会長  ありがとうございます。続いて「その他」として何かご発言ありますか。事務局のほ うから、2つほど説明事項があるとのことでしたが。 ○労働衛生課長  1つだけ、じん肺部会でご報告させていただきたいと思います。これは、「労働安全 衛生法における胸部エックス線検査等のあり方を検討する必要性」というペーパーをお 配りしたわけですが、まずこの背景として、昨年の6月23日に、結核予防法が改正され ました。それに続いて施行令が10月6日に改正されて、両方合わせて、本年度の4月1 日から施行予定になるわけです。  その改正の概要ですが、まず、事業者が定期の結核健康診断を行わなければならない 対象というものです。これは結核予防法において、「二次感染を起こす危険性が高い学 校、病院、診療所、助産所、介護老人保健施設及び社会福祉施設の従事者に限定する」 という改正がなされたわけです。  次頁に、「結核予防法施行令の一部改正について(概要)」というのがあります。左 側に、「集団感染防止の観点から」ということ、それから「感染の高低に拘わらず発症 により二次感染を起こす危険性が高い職業」というようなことがございますが、基本的 に結核予防法では、今後結核感染のリスクの高い所だけに限って、健診を義務づけると いう改正内容になるわけです。労働安全衛生法の「事業所における健診」と関係してき ますが、学校、病院、診療所、助産所、老健施設、社会福祉施設の従事者、これについ ては毎年度という形になったわけです。  そうしますと、現在、労働安全衛生法では、事業者は原則すべての労働者に対して、 胸部エックス線検査を実施するように義務づけがなされているわけです。すなわち胸部 エックス線検査は、安全衛生法における一般健診の検査項目として義務づけられており ますので、すべての労働者が1年に1回、胸部エックス線写真を撮って健診を受けてい るという形になっているわけです。ここにおいて、実はこの事業所については結核予防 法と安全衛生法と両方の面から、胸部エックス線検査を行うという形になっていたわけ ですが、一般の事業所に対しての義務づけというのは、結核予防法から落とされたとい うことになるわけです。  そうしますと、安全衛生法ではどうするのかということが問題になってきます。基本 的に安全衛生法における胸部エックス線検査は、主として結核対策として始まった部分 が多いのですが、こちらのじん肺部会等の中でも、実は結核対策だけではなくて、もち ろんじん肺との関係、それから労働者の一般的な健康の保持増進、ほかの肺関係、胸部 呼吸器疾患の発見・治療等に資するという目的もあることから、この結核予防法の改正 を踏まえて、安全衛生法における胸部エックス線検査の取扱いを主たる課題とし、今後 検討委員会を設置して、この取扱いについて検討させていただきたいと考えているとこ ろでございます。  労働安全衛生法に基づく胸部エックス線検査は、おそらく毎年数千万枚以上の数に上 るかと思います。私どもは現在この検討に資するために、その中で結核の発見率とか肺 がんあるいはその他の呼吸器疾患の発見率を、職業別あるいは年齢別等に詳細に分析し て、専門家の検討会でご議論をいただいた上で、この安全衛生法に基づく胸部エックス 線検査等の実施の仕方について、考えていきたいと思っております。その検討結果をい ただいた上で、規則の改正をお諮りすることになるかと思っております。 ○櫻井部会長  何かご質問等ございますか。これを承って、またその経過を見守らせていただいて、 何かご意見申し上げることも出てくる可能性もあると思います。 ○主任中央じん肺診査医  もう1点ご報告させていただきます。いまお配りした3枚の上の2枚が結核関係です が、下の1枚が、行政事件訴訟法関係のペーパーになっております。私からは、行政事 件訴訟法の一部改正に伴うじん肺管理区分決定通知書の様式の変更について、説明させ ていただきます。  行政事件訴訟法が平成16年6月9日に改正されました。これが今年4月1日に施行の 予定でございます。改正の概要についてですが、出訴期間等の情報提供(教示)制度の 創設ということでございます。処分または裁決をする場合には、取消訴訟の被告、出訴 期間、審査請求に対する裁決を経た後でなければ、処分の取消の訴えを提起することが できないということ等を教示しなければならないというものです。  つまり、じん肺管理区分決定通知書の中に、その3点を記載して、管理区分決定を受 ける人が、このようなことが分かるようにしなければならなくなったということです。  2番目の対応については、行政事件訴訟法の改正の施行期日に合わせ、じん肺管理区 分決定通知書等の様式を改正する予定でございます。 ○櫻井部会長  よろしいでしょうか。これにかかわらず、何かご発言ございますか。 ○中桐委員  最初の管理状況のときにも、発言したかったのですが、直接関係ないと思って、その 他に回しました。というのは、先ほど、田上委員からもありました制度の問題ですが、 我々の危惧しているのも、例えば退職された労働者の方々は、この制度を知っているの かどうか。  これについて、例えば、先々週ですが、私どもの北海道の組織へ行って、春闘の取組 み、それからその後の取組みということで、安全衛生の担当者の会議をしてまいりまし た。安全衛生全般ということで、春闘では、例えば来年7月からの新しい安全衛生法に 対する、マネジメントシステムの導入の労使確認をしましょうということがあります が、その後の活動の中にある、じん肺の健診の制度について、もっと広報しましょうと いう活動が入っております。  これは、先ほど関係する行政の監督官等を含めて会議を開いたということですが、な かなか、そういう方々に知れ渡らない、最初からそういう危惧があります。最初はさま ざまな雑誌等を使って、広告などをしたかと思いますが、しばらく経つと、やはりなか なか、どのくらい広がったかわからないという状況です。  あえて発言させていただくのは、今年6月に、ILO総会がありますが、その中で、 4月28日はILOの安全衛生文化を広げるような形の記念日にしております。いかにし て各国で国民の人々に、安全衛生について理解してもらうかについて新しい条約なり勧 告なり、そういうものを議論する機会なのです。  このじん肺の問題もそうなのですが、さっき言ったような、すぐ発症しないこともあ って、20年、30年、自分のことというのはなかなか判断できない。アスベストも同じで す。そういう意味で、日本政府において、ILO総会で議論する際に、そういう世界的 な取組みのよい機会でもあるので、ひょっとすれば新しい条約ができるのかもしれませ んが、じん肺のそういった制度の問題等も含めて、学校教育も含めた広い国民各階層 に、このじん肺の問題、去年から始まったアスベストもそうですが、もっと広い安全と 衛生の問題についての啓発活動を定期的にやる。そのようなことも含めて、せっかく4 月28日という日を、ILOでやっておりますし、私どもも中央メーデーで、ブースを作 って、記念日の広報活動をILOの駐日事務所とも協力してやっていこうと思っており ます。  今回じん肺のこの審議会を見ていても、大体対策はしたのだけれども、特にいまのと ころ問題がないというような雰囲気になってしまいますし、実は、よくよく見れば、さ っき言ったような、本当にいろんな施策ができているかどうかという問題もあります。 チェックもなかなか難しい。そういう全般の問題を、6月のILO総会の中でも、是 非、日本政府におかれては、再来年度の施策になるのでしょうけれども、広くこういう 問題を国民各層に知ってもらい、先ほどの手帳の配付も含めて、広く皆さんに伝えるよ うな方法を考えていただくことをお願いしたいと思います。 ○労働衛生課長  ただいま大変重要な点をご指摘いただいたと思います。啓発活動、いろいろな安全衛 生の各部分について、ほかの部会でも、まだ足りないのではないかというお叱りをだい ぶ受けたところです。今後、啓発活動を労働安全衛生法の改正もあることから、もう一 度徹底的に見直して、きちんとやっていきたいと考えております。  それと、先ほどからいろいろご指摘がありました受診率の問題とか、肺がん健診のヘ リカルCT導入における受診の問題、これらに関しても、もう少し各労働局からきちん としたデータを集めて、それを分析して、また次の部会にご報告して、かつ対策も示さ せていただきたいと考えております。 ○櫻井部会長  ほかに何かございますか。特段なければ、今日の会議は終了したいと思います。安全 衛生部長、最初にご挨拶していただこうと思っていて、私うっかりしました。何か一言 ご発言いただければ幸いです。 ○安全衛生部長  本日は、ご審議をいただきましてありがとうございました。年に1回の会議なもので すから、私ども、異動後すでに半年以上経ってしまっている状況の中で、先生方にご挨 拶していただいた状況でございます。  じん肺の話、今日のご議論の中でも、どうも私どもも正確に実態を把握していないと いう状況にもあるようです。いま課長のほうから申し上げたように、できるだけ正確に 実態を把握して、適切な対応を講じていきたいと思っておりますので、引き続き委員の 皆様方にはご指導賜りますよう、よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとう ございました。 ○櫻井部会長  それではこれで会議を終了したいと思います。議事録について、労働政策審議会運営 規程第6条第1項によって、議事録には部会長の私と、私が指名する委員お二方に署名 をお願いすることになっております。本日の署名は、鈴木委員と吉田委員にお願いした いと思います。  それではどうも皆様、お忙しいところをありがとうございました。以上をもちまして 閉会といたします。                      じん肺部会会長          印                      労働者代表委員          印                      使用者代表委員          印             照会先:労働基準局安全衛生部労働衛生課(内線5493)