05/03/08 第8回雇用政策研究会議事録             平成16年度第8回雇用政策研究会                    日時 平成17年3月8日(火)                       18:00〜                    場所 中央合同庁舎第5号館共用第7会議室 ○小野座長  ただいまから雇用政策研究会を開会いたします。本日の議題となっています地域の雇 用に関する問題に関しまして、事務局から資料が用意されていますので、説明をお願い したいと思います。 ○中井雇用政策課長補佐  それではご説明します。まず、お手元の資料No.1ですが、これは毎回お示ししてい る論点です。本日は地域の雇用ということですが、まず5頁、(3)「今後の雇用・労 働政策のあり方について」の(4)「地域雇用政策」というところが今日ご議論いただく ところです。あらかじめ「縮減する社会資本整備と拠点化、集約化への地域雇用対策面 の対応」あるいは「地域社会に根ざした雇用・労働施策の充実」ということについて、 挙げていたところですので、よろしくお願いいたします。  資料No.2「地域の雇用等に関する資料」をご覧ください。1頁、「地域雇用に関す る課題」ということで、「地域における労働力需給を巡る状況の変化に対応し、地域に おける雇用をどのように考えていくのか」。ちょっと漠とした書き方ですが、その下 に、労働力の供給面の変化、需要面の変化、それぞれ変化が起きている、あるいは見込 まれるということで整理をしています。  まず、「労働力の供給面の変化」ですが、これはご承知のとおり、町村部を中心に地 方圏で人口が大幅に減少している、あるいは今後落ちていくという見込みです。また、 地方圏では高齢化が進展している。今後については大都市圏で高齢化が進むことが見込 まれています。また、地方圏から都市圏への人口移動は、全体的に見て減少傾向が見ら れるということです。高年齢層の地方へのUターンは増えてきているのではないかと言 われているところです。また少子化などと関連してきますが、若年層の地域間移動が低 下している。その一方で、地域の雇用機会の減少などによりまして、地方圏では就職を 諦める人が増加することが懸念されるという状況にある。こういったことが主な労働力 供給面の変化であろうと考えています。  一方「労働力の需要面の変化」ですが、まず1つは、地方圏で雇用の受け皿となって いた建設業が、公共投資の減少などにより、厳しい状況になってきている。今後も、こ れについては同様の傾向が続くであろうと見込まれるところです。  次に製造業ですが、製造業を中心に、海外進出する企業が増加しています。そういっ た中で、産業の空洞化が懸念されるという状況がここ何年も続いています。一方で、高 度な技能を必要とする部門など、一部で国内回帰の動きが見られるという話もあります が、こういった動きが今後どうなるかということだろうと思っています。  それ以外の産業に目を転じますと、観光関連の従業者については、地方圏では相対的 に高くなっていて、観光をどう考えるかという話です。農林漁業ですが、現行はまだ求 人・就職件数は少ないのですが、近年増えてきているという状況も見られます。あとは 地域の雇用を支えるものとして、コミュニティビジネスの増加が見込まれています。空 洞化の反対で、外資系企業の進出ということに関して言えば、規模あるいは地域面で見 たときに、まだ規模は少ない。地域的に見ると、それは東京圏に集中している。そうい った需要面の動向が最近見られているのではないかと思っています。  2頁、そういった変化を背景としまして、「地域雇用に関する主な論点」ということ でいくつか整理をいたしました。1つは、人口減少に向かう中で、労働力供給が確保さ れる地域へ社会資本・労働力などを集中させるという議論がありますが、それをどのよ うに考えるかという話があります。地方の中でも、中核市、あるいは農山村地域など地 域の特性に応じて、各々どのような雇用対策を構じていくのかという話があろうかと思 います。また、中高年のUターンの増加に対応した雇用対策をどのように行っていくの か、若年者の地元定着率の増加に対応した雇用対策をどのように行っていくのか、とい う視点もあろうかと思います。  また、公共事業に依存した雇用創出が難しい中で、新たにどのような産業によって雇 用の場を創出していくのかというのが大きな課題であろうと思っています。また現在進 めていますが、地域の自主性をより生かした雇用創出を考えるべきではないかというこ と。そういった中において、地域における雇用を担う人材、これは地域の雇用対策をリ ードしていく人材ということですが、そういった人材をどのように育成していくのかと いった論点があろうかと思っています。  続きまして、地域雇用の現状等について、資料によっていくつか見ていきたいと思い ます。3頁、これは日本を東京圏、大阪圏、名古屋圏、地方圏に分けて、10年間の人口 増加率を見たものですが、東京圏、名古屋圏で相対的に人口が増えています。一方で、 大阪圏、地方圏においては伸び率が低くなっています。  4頁、「人口移動の推移」ですが、ほぼ一貫して、東京圏では転入超過、地方圏では 転出超過、大阪圏においても、転出超過という状況が依然として続いています。  5頁、地域のことを考える際に、地域の行政規模みたいな話が、あとで政策的に出て くる話と関連するかもしれませんが、現在「平成の大合併」が行われているという中に おきまして、最近市町村の数が大幅に減少しています。見込みとして、2006年、来年の 3月にはこれが2,000を下回ることが見込まれています。  続きまして、6頁、これは性、年齢別にUターン率の変化を見たものです。ここで、 Uターン率というのは、出生県から転出した経験のある人のうち、調査時点で出生県に 戻っている人の割合ということで、2001年と、それから5年前とを比較したものです。 これを見ますと、男性の30代前半と女性の30代、65歳以上を除いて、Uターン率が上昇 しているということですので、全体的にUターンする人が増えているのではないかとい うことが言えるかと思います。その中で、男女別に見たときに、特に30代未満を除い て、男性のほうがUターン率は高くなっています。高齢層においても、そういう傾向が 見られています。  これに関連しまして、以前島田委員から、そういった取組みについて、自治体が取組 みを進めているというご指摘がありました。関連しまして、7頁、8頁についてです が、北海道で、現在高齢層、団塊の世代などをターゲットとして移住を促進することを 考えているということで、移住ビジネスモデルということで、北海道を知ってもらっ て、移住していただくことを事業としてやっていこうという話になっていますので、参 考までにお示しいたしました。  「地域の住みやすさ」ということで、以前も指標の話を議論していただいたことがあ りましたが、9頁から11頁まで、それぞれ、以前の経済企画庁の新国民生活指標による 地域ブロック別の指標であるとか、あるいは政令市などの指標、また11頁は、全国のい くつかの地域で独自に指標を作成して、ホームページなどで公表しているという取組み が見られていますので、そのような資料もお示ししました。  12頁、過去10年間で比較した地方圏における年齢別の転出率の推移を見ますと、若年 層において、転出率が相対的に高い水準になる中で、やはり20〜24歳を中心にしまし て、転出率が下がってきているということです。特に若い層で地元からなかなか転出し ていかないというような現状がデータ的にも示されています。  そういった中で、地域における若年層の雇用機会というのは、やはり厳しいというこ とで、13頁、高卒の就職率は10年前と比較しますと、全国的に下がっています。特に相 対的に大阪圏、地方圏において低くなっています。それを都道府県別に見たのが14頁の 資料です。全国的に低下が見られており、一部東京などでは上昇していますが、相対的 に九州などをはじめとして、大きな低下幅になっているという県もあります。若年層が なかなか地方から動かない中で、地域の雇用環境が厳しくなっていると考えているとこ ろです。  15頁からは、第4回の研究会において、樋口委員から、地域ブロック別にラフな需給 推計というお話をいただきましたので、それについて、現行の傾向を単純に延長したと きに、どのようになるかというのをブロック別に、労働政策研究・研修機構に推計して もらって、資料としてお付けしています。これを見ますと、全般的に15歳以上人口もあ まり伸びませんし、労働力人口はどの地域もマイナスということですが、65歳以上人口 は大幅な増加と、特に現在、高齢化比率が低い地域、これは南関東、東海、近畿です が、そういった所において、65歳以上人口が相対的に増加幅が今後大きくなるというよ うな見通しになっています。それについて、各々都道府県別に見たのが16頁から18頁ま での日本地図の表です。適宜ご参照いただければと思います。  次に需要面の変化についてです。19頁、2001年度までの10年間で地域別に生産額の増 加を見たものですが、これを見ますと、大阪圏がむしろ生産額は減っているというよう な現状があります。そういた中で、経済活動別、産業別に見たらどうかというのが20頁 ですが、全般的に製造業と建設業の割合が低下している。一方で、サービス業などの割 合が上昇しているということですが、地方圏においては、建設業あるいは農林水産業、 これはまだ割合としては小さいわけですが、そういった割合が相対的に高くなっている という構造になっています。  関連して、就業者ですが、21頁、東京圏、名古屋圏、地方圏では伸び率は小さいので すが、就業者は増えています。ただ、地方圏においては、生産額の増加に比較して、就 業者が伸びていないという状況があります。そこについては、まだ分析できていないの ですが、実態として、そういう状況になっています。  一方で、大阪圏については、生産額同様、この10年間でマイナスになっています。そ れを産業別に見たのが22頁のグラフですが、これも生産額同様、製造業の割合が低下し て、サービス業の割合が上昇している。ただ、建設業については、東京圏では下がって いるのですが、その他の地域では、増加しています。建設業について、いろいろ問題が 指摘されていますが、こういった数字でも表れているのではないかと考えています。  23頁、これは地域別に各産業の本社がどこにあるかということを見たものですが、地 方圏では農林漁業あるいは建設業が相対的に高くなっています。都市圏では製造業、金 融・保険、不動産、そういったものの割合が高くなっていますが、特に金融・保険、不 動産では東京圏の割合が高くなっています。  24頁からは製造業についての数字ですが、24頁は海外生産比率の上昇など、製造業に おいて、いわゆる空洞化と言われる現象が起きているのではないかという資料です。25 頁からは工場立地件数がどうなっているかということです。ずっと減ってきたというこ とですが、2003年には増加に転じており、これが今後も続くのかどうなのかというの は、我々としても関心が高いところですが、それを地域別に見たのが26頁です。地方圏 以外ではほぼ横ばい、地方圏では減少傾向ということですが、2003年においては、全体 の傾向同様に増加に転じたという姿になっています。ただ、長いスパンで増減を見たの が27頁ですが、関東、東海、近畿以外の地域では、立地件数は減っているという地域差 が工場立地においても見られています。  28頁、2003年に限定しては、立地件数は、群馬、静岡、福岡、そういった所で相対的 に大きくなっているというような状況が単年では見られています。29頁は「国内回帰」 の一部の例ですので、省略します。  次に30頁、建設業に関連してですが、「公的固定資本形成の対GDP比率」はずっと 下がってきています。31頁、地域別に見ても、低下傾向で推移しています。ただ、水準 で言いますと、やはり大都市圏に比べて、地方圏が高い水準にまだあるという状況で す。  32頁、観光ですが、まだ全体的には割合は低いのですが、沖縄、あるいは長野といっ た地方圏では相対的に高いという姿になっています。33頁、農林漁業についてのハロー ワークにおける求人件数、あるいは就職件数、そういったものを地区別に見たもので す。全体のボリュームとしては、まだ少ないですが、全国的に農林漁業についても求人 は増えています。特に地方圏では産業圏に比較しても、伸び率だけを見ると、高くなっ ています。就職件数の増加率も全国的に上がっています。充足率についても、名古屋圏 以外は4割を超えているということで、充足率も産業計と比較しても高くなっていま す。  34、35頁はコミュニティビジネスの状況の資料です。介護や育児、そういった地域に 根ざしたサービス分野のニーズが増えていることなどを背景としまして、コミュニティ ビジネスが増えてきている。今後も期待されるということで、概ね10年前後の先には、 従事者で言いますと、90万人程度増加、あるいはうち有償のスタッフでみますと、60〜 70万人程度増加することが期待されているという推計があります。530万人雇用創出ブ ログラムの中においても、コミュニティビジネスが担い手となる分野がいくつか存在す るというような状況です。35頁は具体事例ですので、省略します。  36頁、外資系企業の関係で、これは外国において設立された法人ですが、これを従業 者数あるいは事業所数で地域別に見ると、現時点においては、ほとんどが東京圏である というのが実態です。  37頁からは、今度は需要面における地域別の見通しということで、産業別の就業者の 見通しをみたものです。これによりますと、南関東、あるいは近畿、そういった所でサ ービス業を中心に増加する見込みですが、その他の地域においては、それぞれ減少する 見込みという、これもラフな推計ですが、そういう形になっています。これをまた都道 府県別に見たのが38頁から41頁までですので、適宜参照いただければと思います。  42頁は、先日発表された2004年の都道府県別の完全失業率ですので、省略します。ま た43頁からについても、過去に地域別の資料として、ご提出したものを中心にお付けし ていますので、適宜参照いただければと思います。その中で、47頁の求人倍率、48頁の 失業率ですが、現在の水準が過去同じだった時点と比較して、地域別にどのように違い が見られているかというのをお付けしていますが、これも適宜参照していただければと 思います。  49、50頁は、先ほどの高齢層の移住にかかわる関連の資料で、以前もご提出したもの ですが、49頁は以前13都市でやっていましたが、50頁と同様、東京圏と東京圏以外とい うことで計算し直してはどうかという島田委員からのお話もありましたので、改めて作 り直したものです。これにおいても、60歳前の高齢者の就業者につきましては、地方圏 において相対的に増加しているという結果、これまでと同様の結果になっているという ことが言えようかと思います。統計関係の資料については、以上でございます。次に政 策に関する資料を若干ご説明します。  51頁、これは3月1日に閣議決定されました国土形成計画法案の概要になっていま す。現行の全国総合開発計画を「国土形成計画」に改めまして、地域の意見を取り入れ て、国と地方の共同によるビジョンづくりをしていこうという形で、今後進めていこう とするものであるということが書かれているところです。  52、53頁ですが、「地域雇用対策」です。まず52頁、「これまでの地域雇用対策の考 え方の流れ」で、経済社会構造の変化ということで、高度経済成長から石油危機、円高 不況、地方分権といった変化に対応しまして、地域雇用対策も変遷してきているという ことを整理したものです。特に現在の課題としましては、地域主導の地域雇用対策の推 進ということですが、これは平成13年に地域雇用開発促進法を改正して、現在取り組ん でいます。その概要につきましては、次の53頁の上のほうにお示ししていますが、都道 府県と連携するということで、都道府県が地域雇用開発計画を策定しまして、それに基 づいて、各種助成を講じているという現状です。  また今後の地域雇用対策としまして、平成17年度から、地域主導の雇用対策というこ とで、「意欲のある市町村と連携した施策を推進する地域雇用創造支援事業」というパ ッケージで、それまでの対策も拡充強化しながら進めていくこととしています。あと、 54、55頁はこれまでの議論、あるいは日本経団連、連合の考え方について、資料として お付けしていますので、適宜ご参照いただければと思います。資料の説明については、 以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○小野座長  どうもありがとうございました。それではご質問、ご意見がありましたら伺いたいと 思いますので、自由にご発言をお願いいたします。 ○玄田委員  ランダムに3つほど。1点目は、いま東京圏とか大阪圏とか圏レベルに、もしくは自 治体レベルの分析をしてご紹介いただいて、非常に意味が多いと思ったのですが、市町 村レベルの状況をつぶさに見ていく必要があるのではないか。例えば、これは八代委員 とご一緒させていただいている研究会でもよく出てくるのですが、東京近郊のかつてニ ュータウンと言われた所が、ゴーストタウン化していくということが、あと何年後に迫 っているという状況がある。それは東京とか東京圏ということでは見過ごされてしま う。そうすると、そういうゴーストタウンがこれから大変広がったときに、就業面でど ういうサポートが必要かという支援、実際にゴーストタウンと言われる所に住まわざる を得ない高齢者の人たちが地元でどう就業するかということは、東京圏ではなく市レベ ルの問題だと思うのです。それは大変難しいということはよく理解しながらも、実際に は、すべての市町村とは言わないまでも、これから高齢化が急速に進んでくるような市 町村に注目して、多少ケーススタディのようなことを含めて分析する必要があるのでは ないかと思いました。  2点目は、地域の求人、特に若年の求人についてです。確かにハローワークに出るよ うな求人はないのですが、いい人はほしいという求人は依然として根強く残っている部 分が多いと思います。具体的にこれこれこういう仕事ができる人は思いつかないが、い い人がいれば雇ってもいいと。そういったいわゆる「眠れる求人」というのをどういう 形で、地域レベルで開拓していくのか。いまハローワークやジョブカフェの中で、そう いう求人開拓が非常に積極的になされているということは伺っているのですが、そうい う求人開拓、いわゆる舞台というのをどう増強するのか。求人開拓の場合のポイント は、求人開拓と個別のカウンセリングをする人の、コーデイネートをする人材というの が非常に重要になるわけで、ジョブカフェなど自治体レベルで対策をするときに、そう いうコーディネーター人材をどういうふうに育てていくのか。そういうことも含めて求 人開拓は重要な問題だろうと思います。  3番目の、若い人の地元指向が強まった。私はその地元指向が強まった根本的な原因 はよくわかりません。確かに、一人っ子であるとか親が放さないということもあるのか と思いますが、一方では、出たいが出られないといったような、経済的な制約によって 地元にいざるを得ないのではないかというようなケースが一体どのくらいあるのだろう か。たぶんそういう研究は経済学、社会学を含めてまだ少ないと思うのですが、その経 済的な制約によって、本来、移動したいと思いながらも出られない人に対して、これは 非常に空想的なことかもしれませんが、その移動を支援する自立支援基金のようなもの をこれから考える必要はないのだろうか。そんなことを地域政策ということで思いまし た。 ○佐藤委員  団塊の世代が引退する過程で、特に大事なのは東京とか大阪だと思うのです。例えば 千葉とか埼玉の、いわゆる千葉都民とか埼玉都民という人たち、居住地と就業地という のは国調でわかるのですが、例えば千葉市に住んでいる、特に高学歴の人ほど、ホワイ トカラーほど、そこで就職しないわけです、東京に来ている。この人たちがリタイヤの 過程で、また東京で再就職先を探すかというと、これは考えにくい。たぶん地元でとい うことでしょうが、大企業に勤めていて、ホワイトカラーで高学歴で、例えば千葉にい る人というのは、逆に地元へのネットワークが全然ない人。ですからここの部分。東京 都からすれば非常に楽なのだけど、周辺からすると、高齢者の就業機会をどう確保する かということはすごく大事なわけです。ですからその地域政策を考えるときに、特に団 塊の世代の引退過程では、そこがすごく大事だろうと思っています。それが1つ。  もう1点は、若い人の地元指向で、高校を出て大学を選ぶときに、地元の大学への進 学率が高くなっている。例えば慶応なども、たぶん出身地域を見ると、関東出身の率が 10年前と比べて高くなっていると思うのです。つまり大学を選ぶときの地域間移動が減 っているのです。大学進学で東京に出てくると、就業地というのは実は地元以外に広が るのだけど、大学に出すときに、東京の大学に出せない、本人は行きたいのだけど、コ スト的に出せない。それで地元の大学になるとその就業地が限定されるということがあ る。つまり地域間移動が、先ほど玄田委員が言われたように、出て行きたいのだけど動 けないというのは、卒業した時点だけではなくて、進学時点のことが結構大きい。です から特に大学のときの地域間移動、それは奨学金の問題とかいろいろあると思うのです が、そこの部分がすごく大事かなと。大学で一度移動の経験があると、そのあとの就職 先というのは広がるのですね。ですから、進学先の選択とのセットで考えないと、若い 人たちの地元就職ということの議論はできないかなと思うのです。 ○山川委員  まず質問です。1頁に「高齢層の地方へのUターンは増加」とあるのですが、資料の 6頁を見ると、30歳代半ばくらいから比率的には、つまり相対的にはUターン率が増加 しているとあります。たぶん30歳代半ばは普通は高齢層とは言わないし、65歳以上の高 齢層はむしろ動きが止まっているような感じがします。これを言うとすればむしろ「壮 年層がUターンしている」であって、1つは、その原因は何かということと、Uターン ということは、この年代だとたぶん、職に就いている方がかなり多いだろうと思うので すが、果たしてそういう見方でいいのかという点をまずお聞きしたいと思います。 ○小野座長  これは事務局のほうで。高齢層のUターンと言うけれど、そうではなくて、むしろ真 ん中の壮年層ではないかということ。 ○島田委員  いまの山川委員の質問ともちょっと関係しますが、6頁のデータと15頁。6頁は、確 かにこれは高齢者とは言えないですよね。だけど、中熟年層みたいなところがちょっと 増加しているということは言えると思うのです。  そういうことがありますが、15頁を見ると、要するに東京と名古屋ですよね。65歳以 上人口が非常に増えている。一見矛盾したように見ますよね。たぶんこれは矛盾してい ないのでしょうが、どんなふうに解釈したらいいのですかね。 ○中井雇用政策課長補佐  Uターンの話で、課題のほうで特に高年齢層ということを書いているのは、これまで の議論に影響を受けた部分があります。退職してから地方圏、地元も含めてですが、そ ういう傾向があるのではないかという話があって、6頁の人口移動調査、これも今年に なって公表されたものですが、その際にも、そういった高齢層について強調されていた 部分がありましたので、そこに引きずられた面があります。確かに下の層においてもU ターンが増えているというのは、推移としておっしゃるとおりだと思っております。  15頁の65歳以上人口の増加ということについて言えば、これは人口推計の中で、地域 間の労働移動なども加味してその推計をしていると考えていますが、今後はその地域に 住んでいる人も含めて高齢化が進んでいくという、そういった数字ですので、Uターン 云々のことも含めた全体の数字だと、そういうふうに理解しています。  これまで相対的に、まだ大都市圏の年齢層が若いということを、以前も紹介させてい ただいて、今回の資料も「高齢化の見通し」ということで44頁、45頁あたりの数字を見 ますと、相対的に大都市圏においてはまだ高齢化が進んでいないという中で、今後はそ の進み方のほうが速くなるという部分が、こういった数字に出ているのではないかと考 えています。 ○島田委員  15頁の話は、これ、大都市はベースが大きいですからね。だから、1年ごとに高齢化 していくわけで、それが大きく出るのですよね。Uターンの動きはあるのでしょうが、 数は少ないということですね。  もう1つは49、50頁。この前の続きかと思うのですが、人口がこれから減るので、こ の辺の年齢層はみんな減っているわけです。ただその減り方をパーセントで見ると、東 京圏のほうがやや減り方が大きいという感じですよね。それで東京圏以外は、地方で増 えているかというと、とても増えるところまではいかない、全体が減っていますから ね。ただ、減り方がやや小さい。そんなことですかね。 ○中井雇用政策課長補佐  そうですね。これも以前の議論をちょっと思い出しますと、死亡によって全体的に減 るという話がある中で、東京圏に比べて地方圏の減り方が少ないということで言えば、 その間の地方圏に人が流れている可能性はあるのではないかということです。 ○島田委員  少し流れているのでしょうが、それは減り方をちょっと薄める程度にしか見えてこな いということですよね。 ○中井雇用政策課長補佐  全体的に減っている中でそこは緩和されているということではないでしょうか。 ○島田委員  底流としては流れている面があるのでしょうが、わずかな流れでね。全体、大きな流 れですから、人口が減るという。そういう感じですよね。 ○中井雇用政策課長補佐  はい、そういうことです。 ○島田委員  そういう動きがあって、年配の人が地方都市に移って、そこで若い人の雇用が生まれ てみたいなことがあれば、放っておいても起きるのなら何もしなくていいわけですから ね、これで万万歳なんだけれど。たぶん、そういう小さい流れがあるとして、それが意 味があることなら、そういうところへ着目して、政策的な支援をする価値があるのかな という、そういう議論ですよね。 ○八体委員  いま議論になっている6頁のUターン率ですが、これを見て直観的に、変化もさるこ とながら、どうしてこんなに高いのかなという。特に女性でも40歳から44歳が36%、こ の世代はかなり結婚していますよね。夫婦で一緒に動くと考えたときに、たまたま自分 が生まれた県に戻っているというのが。男性の場合は家を継ぐとか主体的に可能性があ ると思うのですが、女性でもこんなに高いというのはなんかちょっと。このUターンの 定義が、本当かなと。 ○島田委員  夫にくっついて行ってるというわけにいかないですか。 ○八代委員  夫とたまたま同じ県であるという保証が。 ○島田委員  結構あるじゃないですか。若いときに学校が一緒で、手に手を取って東京へ出てき た。 ○佐藤委員  この定義は何ですか。 ○中井雇用政策課長補佐  生まれた県で。 ○佐藤委員  いや、どの時点で取ったの。年齢別だけど、調査したときに、いま住んでいる所と。 いま住んでいる所と生まれた所が一緒で、その前が違う所にいた人ということですか。 ○高ア地域雇用対策室参事官  そうです。 ○佐藤委員  一度でも別の所にいてということですね。 ○高ア地域雇用対策室参事官  いまどこですか。 ○佐藤委員  出生地にいる。でも、大学に行っていたらみんなそうだ。だから先生、これは大学 に、東京に行って、いま地元に住んでいればUターン者なんですよ。だからそんなにお かしくは。それが年齢別に。その時点ではなくてその比率だから。 ○八代委員  なんで女性が。おっしゃるように、女性でも大学を出て戻ってくるのならありますけ どね、別に結婚ということではなくて。 ○佐藤委員  範囲がすごく狭いということになりますね。だからちょっと、県の中でも隣の市に勤 めて、そこに住んで戻ってきてもUターンですか。 ○勝田雇用政策課長  いや、県を越えて。 ○佐藤委員  県は越えている、県は越えなければいけない。 ○勝田雇用政策課長  もしかするとと思っていますが、やはり地方出身者の方ですと、東京にいても結婚す る場合に、同じ県出身の方と結婚するという、昔の見合い等は多かったのではないかと は思いますが。 ○佐藤委員  結婚を地元ですれば、これは全部Uターンなんですね。そういうのも入っているのか な。地元で結婚する。就職先は別の所。 ○黒澤委員  首都圏を除くともう少し低くなるということはないですか。埼玉県で、東京へ行って 埼玉に戻る。 ○佐藤委員  そういうのもある。 ○黒澤委員  神奈川県で東京へ通ってるというのは。 ○佐藤委員  それはありますね。首都圏の分が大きいかもしれない。 ○八代委員  それはよくわかりますね。 ○佐藤委員  それはそうですね。絶対数としても大きいですものね。それはそうかもしれない。 ○中井雇用政策課長補佐  ある程度詳細を見ないと議論が進まないと思いますので、内訳について分離できるか どうかも含めて、もう1回、中身を確認させていただいて。 ○小野座長  そうですね。確めていただきたいと思います。たぶん黒澤委員が言われたことがあ る。 ○樋口委員  先ほど玄田委員がおっしゃった市町村の話とも関連してくるのですが、たぶん市町村 とか県で雇用問題を考えたときに、それぞれの事情が相当違っているのではないか。ゴ ーストタウン化する所もあれば、逆に都心のような所もあったり、また地方は別の問題 を抱えているのだろうと。そうしたときに、あまりにも多様化しているものを、誰がそ の対策を考えていくのかということを、雇用政策という視点から考えると、いままで雇 用政策というのは、国が考えるものだということでこの研究会もスタートしていると思 うのですが、その役割ですよね。自治体との関係をどう考えていくのか。  流れが三位一体にしろ、あるいはここに出てきている全国総合計画の見直しという形 で、地方へという流れがあるわけですが、雇用政策でそこをどう考えるのかというよう なことは、明記するかどうかは別にして、やはり議論しておいたほうがいいのではない かという気がします。特に地方をいくつか回ってみると、労働局になってから、それぞ れの市町村や県と労働局の間の交流と言いますか、情報交換あるいは共同作業というの がどうも減っているのではないかと思えるわけです。その段階でそれぞれの自治体に雇 用創出なりをやってもらうにしても、コーディネートの問題をどう考えているか。そこ の情報が交換できないと一体として有効な政策を打つことは難しいだろうなということ ですから、1つは雇用機会をつくって、職業紹介をして能力開発をしてといったところ での一体化、あるいは連携と言ったらいいのかもしれませんが、そういったことをどう 取ったらいいのだろうかということは、いままでのような仕組みでいっていいのかどう かということを、議論しにくいテーマですが、考えておく必要があるのではないかと思 います。 ○小野座長  この点についてちょっと事務局から。 ○勝田雇用政策課長  現在でも例えば私どもで、いま直近でやっていることを申しますと、毎年各地方労働 局において、労働市場がどうなるかといったことについて推計をさせております。実は その推計作業はいまオンゴーイングで今月中、やっているところですが、こういったも のをつくるにあたって各県と意見交換をしたり、あるいは、Uターン事業をするにあた って県と労働局との共同の作業とか、あるいは最近ですと、若年者対策を中心にしたジ ョブカフェで、都道府県を中心にした部分とハローワークとの共同の窓口と言っていま す共同の作業とか、そういったことはやっております。  もう1つ問題というか、市町村や都道府県のほうからすると、どうしてもできるだけ 人を残したい、あるいは、集めたいという考え方があるわけで、それと私どもの、全国 的にバランスをどうするかとか、全国的な需給の中でどう動かすかという考え方と若 干、そこのすりあわせをだいぶやらなくてはいけない部分と、両方あるのかなとは思っ ています。 ○島田委員  全国的な議論というのはどのくらいできますか。 ○勝田雇用政策課長  例えば、よく問題になるのは高校生の就職です。高校生の就職だと親御さんとか地元 自治体からすると、どうしても地元へという形になってきます。一方私どもからする と、地元ではなかなか就職口がない、県外からの求人はある程度確保できる所が多いで す。そうするとそこへという動きへ、私どもとしてはお願いするような形になってくる わけですが、そこのすりあわせで若干、場合によると苦労しているというようなことも あります。 ○島田委員  樋口委員が出された問題はとても重要な問題で、1つ感想があります。一昔前です が、失業水準が非常に高くなったときに、関西が非常に難しい問題をたくさん抱えたこ とがあるのです。バブルのときにはあそこは非常に調子がよかったために、落差が大き くて、金融が悪くなると雇用も悪くなる。非常に問題が起きたのです。そういうとき全 国的な観点からすると、限られた予算があるので、関西のほうにやや集中的に支援する という意味も、本当はあると思うのですが、分権の時代だから、そういうことをするこ とはすごく難しいんだと思うのですね。樋口委員が出された問題は、そういうお金の話 とは別に、機構上の連携連動、これがあるのか。  私も似たような感想を持っているのです。労働局になると地方の産業労働部、皆さん この中にいて仕事をしていたからツーカーで通じていた面があるのですが、労働局にな ると別の役所だから、とりあえずノックをして入らなければいけないみたいな感じにな って、しかも職安系統の人ばかりでなくて、こう言ってはなんだけど、労基関係の方々 には、需給バランスの話には馴染みにくい人たちがいて、そういう人たちが労働局長に なっていると。人間関係をつくっていくのは結構大変なんですよね。それはずいぶん見 ました。  だから良いような悪いような感じで、先ほどのゴーストタウンとか、それぞれの町な んかに特徴がある、それまで踏まえなければならないということになると、そこら辺の きめ細かい労働政策というのは、本当はやったほうがいいのですね。産業労働が一緒に なってやっていると結構きめ細かく動くのだけど、労働局ですというと、結構かみしも を着ているから、なかなかうまくいかないのかなという感じがします。だからそれは予 算面とそういう制度面と両方あるのですね。 ○勝田雇用政策課長  そこのところはもう1つあります。これは限られた局県間ですが、人的な交流を含め て、人を出向させたりといったことを含めた交流をしながら、できるだけ連携を図って いるといった面もあります。私どもからすると、局は都道府県に対応した分野は見てい ますが、もう1つ細かい市町村に対応する部分については、できるだけいま、所のほう から吸い上げて局で、全体としてさまざまな細かい地域を見ているということになって まいります。 ○島田委員  それで、こんなことを言っていいのかどうかわかりませんが、人口とか労働力がどん どん減っていくでしょう。20〜30年のタームで、ザクッと言って2,000万人ぐらい減っ てしまうわけですね。この人口動態、地域別の動きを見ると、たぶん東京は高齢化はす るけれどあまり減らない。そうするとその2,000万オーダーの人たちの減というのは、 東京以外の地方でその負担を背負うわけです。かつては東京圏に仕事があるので人が集 まってきた、地方は過疎になった。今度は人口減で地方はもっと駄目になる。というこ とで、国家戦略としていいのかという問題。先ほど近畿の話を出しましたが、あれはそ ういう大問題に比べたらまだマイナーで、国のあり方からして、本当は人口激減を起こ さないようなことが望ましい。しかしそんなことはできないから、どうやって地域に需 要を起こして、そして、だんだんと限られていく人口をいい形で分散してもらうかとい う、そういう視点がこの雇用政策にあっていいだろうと思うのです。しかし一歩間違え ると国家総動員みたいな感じがするので、そうではなくて、市場メカニズムを使って魅 力を開発して人々が自ら、放っておけば人口過疎になりそうな所へ居住を求めていくと いうようなことを、国家戦略としてやろう。  そうだとすると、地域の資源配分が全然違ってくると思うのです。重点配分をしなけ ればいけないと思う、予算も。みんな三位一体でやってくれというのは、それは日本国 の姿をどう考えるのかということになるのでね。その辺どういうふうに考えたらいいで すかね。いいアイディアがありましたら。これは大問題ですよ。 ○八代委員  ちょっとその点について。いま島田委員がおっしゃったことは大問題だと思うのです が、私はむしろ全く逆のことを考えています。つまり、人口減少社会というのは、過去 の人口増加社会と違って、過疎地域に産業や需要を起こすということは最初からギブア ップすべきであって、むしろ産業や社会資本のある所に人を集中させる、という方向に 政策転換しなくてはいけないのではないか。世界でもそうですが、いま非常に生産性の 高い所というのはみんな都市国家なんですよね。ですから、過疎地域がどんどん増えて も別に問題はない、と言ったら大げさですが、その過疎地域の人が、その地域の中核都 市というかいくつかの所に集中して、そこで高い生産性を維持できれば、別にあとは自 然にまかせるというか、もちろん中間山地をどうするかという問題はありますが、そう いういわば都市国家型の住み方をむしろ奨励していく必要があるのではないか。だから 玄田委員が先ほどチラッと言ったことと似ているのですが、むしろ人の移動に対して補 助金を出すという政策に変えられないかどうかということです。この前、増田知事の話 を聞いて非常に面白かったのは、ものをつくらない公共事業をやるべきだということ。 つまり、人の移動に対して支援するような形で結果的に高い生産性を。当然ながら、人 が集まって生産性が高くて、規模の利益が上がればそこで雇用が生まれるわけです。だ から、そういう労働移動をどうやってスムーズに雇用政策の中でやっていくかというこ とを、地域雇用の面から考える必要があるのではないかと思います。 ○島田委員  それはすごく重要な考えですよ。 ○樋口委員  地域雇用を考えたとき、その前提がいまのような労働力支援というか、財政のあり方 というか、それを前提にして例えば特定の地域にいろいろな社会的インフラを集中させ る。これはやはり、それぞれの自治体がやるということではなくて国がやるわけですよ ね。国がそれをやることがいいのかどうかという問題も片方であるのだろう。ある意味 では、いままでの中央集権的な「国家の中における」、それを前提とした資源配分とい うことが望ましいと考えていくのか、むしろそれは分権化だと。分権化でそれぞれの市 町村なり県なり、あるいは道州制をやって、その結果として集中化ということが起こる かもしれません。地域差というのはどうしても出てくる。そのときの容認とはちょっと 話が違うのではないかという感じがしますね。 ○島田委員  いま出ている問題、八代委員の言い方は全く適切だと思うのですが、私の説明は少し 足りなかったと思うのです。私が言いかけたことは、もし皆さんの中で、例えばかつて の公共工事とか産業立地とか、そういうことを推進すべきだというように受け取ってい たとしたら、全然そうではないのです。私はこの研究会でずっと言い続けているのです が、国全体の人口が高齢化して、都市も地方も減る中で、東京を中心とする大都市の生 活アメニティが、その集中化とか低くなっているということはあるわけですね。もちろ ん、文化的刺激というのはあるのですが、生活の質のもっとベーシックな環境の面で低 くなっているということがあって、高齢化社会で定年退職した人がたくさん出てきて、 良い生活のアメニティを求めたいということで、もう少しゆとりのある地域が、アクセ スがあれば行きたいというのがたぶんあるのですね、いろいろなデータが少しずつ出て いますけどね。そんな大きな量ではないけれど、いまのような状況でも少しずつ出てい る。それが各地で、そういう生活のアメニティをもっと高めるというような努力がある と、そこへ人々が吸引されていくだろうと思うのです。そういうのをいい形で支援する ということがあってもいいのかなということです。  だから、本人に移動の支援を渡すのか、あるいは生活アメニティを地域で考える。そ れは何も、過疎地にどうこうするという話ではなくて、それは地域地域の魅力ある中小 都市が、さらに魅力を増すということでいいのだろうと思うのですけどね。そう考えた としても、国の戦略としては、地方の拠点地域みたいな所は、もう少し魅力的になった ほうがいいのではないかという考え方はあると思うのです。工場立地も難しいし、公共 投資も難しい。そうではなくて、生活アメニティを整えて、例えば高齢化社会ですか ら、文化活動から最後は介護医療、そういうネットワークが地域にもっと整備されてい ると安心してみんな移りやすい、というような時代になっているのかなと思うのです。 そういうふうに高齢者が地方に蓄積してくると、当然これは仕事が出てきますからね。 サービス業の仕事がたくさん出てきますから、そうすると若い人にも雇用の口が出てく るということがあるのではないか。  そこら辺の地域配分という考え方があってもいいのかなと思うのです。つまり、各地 が魅力を持とうというのを支援するということがあっていいのかなと。高齢社会が持っ ている資源というのを、そういう形で活用するということがあっていいのかなと思うの です。そんな意味で言っていたのです。  この地域ということとは関係ないのかもしれませんが、今日の資料の中でいちばんシ ョッキングなのが60頁ですよね。これはすごい資料だなあと。 ○勝田雇用政策課長  この資料については後ほど。地域と関係ない前回までのご指摘事項と一緒に説明させ ていただきます。 ○小野座長  ほかに何か。 ○中馬委員  地域の雇用対策という意味で、先ほど25頁からの国内の工場立地の所で、希望的観測 をしていいかどうかということについて、うまい具合に判断がつかないという話をされ たのですが、それに対する質問とサジェスチョンです。例えば25頁から26頁の図で、ど んなタイプの製造業が基本的に増えているのかということがちょっと気になるのです。 電気・電子だったら、2000年から2001年にかけての不況というのは、15,6年に一度の大 変な大不況だったので、例えばそういうところを拾っているのではないかという気がす るということと、したがって、そういう意味ではこの傾向はあまり長く続かないのでは ないかという判断もできるので、例えば製造業の中でどうしてこういう立地が増えたの か、あるいは、どこで増えたのかということを知りたいと思いました。  29頁に国内回帰する事例として、こういうホープがありますよというように出ている のですが、こういうようなところで、例えばいちばん下のシャープの亀山工場のような 例というのは非常に気になるのです。ここは投資の半分ぐらいを地方公共団体が支えて いる。立地とか税法上の優遇措置とか、結局、シャープが出ていかないように相当に金 を出したわけですよね。おそらく富士写真フィルムも松下も、トヨタのことはよく知ら ないのですが、地方公共団体が相当にある種の優遇策を出しているのではないかという 気がするのです。たまたまこの例を引っ張ってこられたのですが、引っ張ってきたとき に、地方公共団体がどういう優遇措置をしているかということを調べると、興味深い事 実が、こういう大きな企業の場合には出てくるのではないかという気がするのです。  したがって、事例を調べるときとそうでないときで気になることなのですが、もう1 つ29頁の所で、トヨタ以外はいずれも材料関連の、材料を相当に使う。しかも日本が非 常に強い、国際競争力が非常に強い部分の、材料を非常に多用する工場で、しかもそれ が非常に中核の部品で、むしろ海外に行くよりも日本でやったほうがというのは、製造 装置と材料はほとんど日本が強い。このトヨタ以外の場合なら8、9割は日本からで、 外に出ても日本から持っていくタイプです。おそらく競争力の高い材料や装置とか、そ ういうものを持っているので、国内が強い。そういうものを国内で利用し、プラスそこ に相当に地方公共団体から数多くの優遇措置が出ていて、はじめて留まったみたいな話 が後付けられるのではないかという気がするのです。  それで、そういうものをもうちょっと調べる中で、先ほどのようなどういう施策を国 や地方公共団体がやるべきなのか、その役割分担をどうするべきなのかといった事例と しては、29頁に4つしか出ていませんが、何か代表的な事例を調べられたのか。日本の 産業としての競争力とか、いろいろな補助、特にここら辺に目立つのは国ではなく地方 公共団体からのお金が相当出ている例ではないかなと思うのです。それで、どういう政 策が取られているか、識別できるのではないかという気がするのですが。 ○中井雇用政策課長補佐  先生がおっしゃるとおり、いろいろまだ調べていったら、何か見えてくるのかもしれ ないので、そこは引き続き調べていきたいと思っています。  ただ、全体の流れの中で、工場立地についてはマクロでは厳しくなっているという話 は、以前からご指摘いただいています。こういったところに、いろいろ自治体の支援策 なども加味したけれど、結局国内に立地しようと判断をしたことがやはり重要なのだろ うと思っています。  よく言われるのが、生産性のときも話が出ましたが、産業内で高付加価値分野あるい は成長が見込まれる分野にシフトすることによって、全体的に生産性を上げていこうと いう話の中で、そういった分野の可能性もあるのかなと。高付加価値分野と言うと、非 常に端的というか、雑ぱくな話になってしまいます。よく世の中で言われていること が、個別に見るとこういうことになっていくのかなと、いまのところ思っております。 そこは今後の可能性を見いだすためにも、ちょっと分析が必要かと考えています。 ○中馬委員  非常に一般性のある事例なのか、非常に特殊な例なのかを知るためには、さっきのよ うな点も調べてみられたらどうかということなのですが。 ○島田委員  それ、国内回帰という言葉を使われているでしょう。 ○中井雇用政策課長補佐  はい。 ○島田委員  これは、専門家の間ではあまりいい言葉ではないというのが、いま一般論です。つま り、企業としては投資計画のタイムホライズンの中で徹底的に合理的な計算をやって、 立地するわけです。三重県の場合、北川知事がこれいくら出したのかな、結局300億く らい、誘致でしょう。だからそれを入れると、たぶん5年、10年の投資回収期間で、か なりこれは条件が良かったのだろうと思います。ただ、三重県には三重県の計算があっ て、そのことによってシャープが生産を集中してくれると、雇用がやっぱり相当生まれ て、現に生まれている。何千人の雇用が出ていますから、だから波及効果も大きいので す。三重県は、これで完全にプラスというようにはじいているわけです。  同じことは、横浜が今度日産を呼び込むのも、あれも50億円ぐらい出しているのです が、完全にプラスと計算していますね。だからお互いにプラス、プラスなのです。  だから回帰というよりも、技術が相当進んできて、出るものはみな中国に出てしまっ た。その技術水準が非常に上がってきたときに、例えば大分のキヤノンが良い例です が、あそこは現場の労働力を徹底的に削減するのです。R&Dとか、そちらはうんと強 化する。そうすると中国と競争するときに、決定的に弱いのは現場労働のコストだけな のです。そのときに周囲の外部経済効果や何かが良ければ、完全にいろいろな角度から 考えて、回帰というより的確投資なのです。  だから、そういう仮説なのだろうと思うのですが、そう考えると、いま中馬委員がお っしゃった問題というのは重要です。減ってきたのは回帰したと理解するのか。そうで はなく、全体の技術水準が上がってきて、エクスタナリティーの構造がどうなってて、 だからどういう所に投資が流れていくのかと見るのとね、これは、政策インプリケーシ ョンが全然違ってきてしまう。国内の労働需要の構造というのはどうなりつつあるのか というのは、もうちょっと本格的にやったほうがいいかもしれません。 ○樋口委員  私は、自治体と国との役割分担というか、むしろ強調したいのは、連携のほうです。 その事例として申し上げたいのは、例えば県民所得推計が出ていました。かなり県によ って動きがおかしい所があるのです。それを内閣府に問い合わせても、各都道府県が推 計しているので、細かいところは分からない。例えば、県民所得総計のその合計額が、 本来国のGDPにならなくてはいけないということですが、それはなりません。それは 各県がやっているからということで、これは逆に分権化の問題みたいな形で出てくるわ けです。  雇用計画を各県が確かに作っていて、一生懸命やっていますが、大体これは国の雇用 計画を見て作っているのです。だから詳しく、ここをどういうふうにしたのかと言う と、国の比率が例えば製造業が何パーセント伸びているので、うちの県はこれくらいだ ろうということで、そちらを参考にしてやったということです。今度は逆に、国がやる ことによる問題点というのがあって、どちらがいいということは一概に言えない。これ はやはり連携を強めるということと同時に、ただ言えるのは、自治体によってかなり抱 える問題が違ってきている。そういった所に、全部に目配りを国ができるのかという問 題があるのではないかと思います。国がやれば、どうしても公平性の問題であるとか、 あるいは一律にやらなくてはいけないとかという問題が出てくるわけで、そこのところ とのコンビネーションをどう考えるのかが、大きなテーマになってくるのではないかと 思って、問題提起をさせていただいたということです。 ○八代委員  それは結構ですが、県民所得の例はあまり感心しない。大して合わないのは、移入と か輸出がですね。 ○樋口委員  いやいや、それは全部調整して、聞いたのです。聞いたら。 ○八代委員  いや、調整できないでしょう、だってほとんど。 ○樋口委員  聞いたら、それが分からないと。県がやっているんで、我々は集めただけですと、内 閣府は。各県に直接、逆に聞いてくれというようなことで、県のほうを紹介してもらっ たりするということがあるのです。 ○八代委員  だから、推計方法はちゃんと指導しているはずですのでね。 ○樋口委員  ベースのところ。 ○小野座長  それで事務局が報告するときに、ちょっと分からないと言ったかな。19頁に地域別の 生産額の増加率があります。東京圏、大阪圏、名古屋圏、地方圏。地方圏が8.0なんて、 とても伸びている。あとは21頁に、今度は地域別の就業者の増加率があります。これは 地方圏があまり伸びてないのです。生産性がとても上がっているということかな。  1つの問題は、この地域別の所得、県民所得、これは県民なのか、県内、本来県内所 得で考えるべきかな。雇用と結びつけるのだったらね。これはどちらを取っているのか という問題が1つあります。そういう問題と、つまり県民と県内の問題。もう1つは、 樋口先生が出された、推計上の問題が絡まってあります。その辺に関して何かアイディ アがおありでしたら、ちょっと事務局に示唆をしていただければと思います。難しいで すか。 ○中井雇用政策課長補佐  公表されている数字は、県民所得。総生産というか総支出のほうは県内総生産、総支 出ですが、所得でいえば、県民所得という形です。 ○小野座長  県民になっているわけ、なるほど。 ○島田委員  中央と地方と関連するのですが、前にも何度か出した問題で、ちょっと事務局から皆 さんに説明してもらいたいのですが。  どういうことかというと、労調の失業者のデータがありますね。それと、職安の業務 統計のデータがありますね。労調には、雇用保険をもらっている最中なのか、もう切れ てしまったのかを聞く項目が入っていないので、雇用保険が切れた人というのは業務統 計的にいうと、長期離職者の中に入ってしまう。労調は労調で、そういうサンプリング ですから押さえているはずですが、それが入っていないので、分からない。ここは前か ら指摘していて、2度ばかり特別調査を、労調の3カ月目の最後に付けてやってくれ た、統計審議会があまり対応しないものですから、実は統計局がとても苦労して。統計 審議会の先生方の了解を得たのだろうけれど、ルールを変えないでやったのです。そう しますと、いろいろなことが分かるのです。その問題を提起して、統計局と話し合って いるのでしょう。ちょっと現状を説明してください。業務統計はいいです。1人ひとり 分かるわけですからね。 ○中井雇用政策課長補佐  以前も先生から、平成14年度ですか、総務省のほうで2回ほど特別調査をやったこと に関して、今後とも同様の調査が必要だというご指摘をいただいていたということで、 この間総務省統計局に私ども出向きまして、今後の調査はやはり必要ではないかという 話を、説明し、お願いといったことをしています。  そういった中の話ですが、総務省もいろいろ問題意識を持ちはじめて、いまお聞きし ている段階では次年度から、次年度ですから3月を越えるともうすぐ次年度になります が、外部の学識経験者を中心とする研究会を改めて開催する方針で考えているようで す。その中で、雇用失業統計の改善に向けた検討を行うとなったそうです。宿題という ことで、我々も認識していて、後でまとめて説明しようと思っていたところですが、こ の場でそういうご指摘がありましたので、報告させていただきました。 ○島田委員  これは詳しい議事録をとっておられるので、一言言わせてください。これは非常に重 要なデータなのです。つまり、雇用保険をもらって、その受給期間が終わってしまった 人の存在は、全然分からないのです。他方、労調はサンプリングで長期失業者の実態を 漠とした形で押さえていることになっているのですが、本当はこれは接合してくれると いちばん良いのです。それは失業保険上のステイタスを労調で聞いてくれれば、質問を 1つですね。もう1つこの前実験してもらったのは、どういう所得で食べているのです か。つまり失業保険なのか、貯金なのか、差し当たり給料がないわけですからね、仕送 りなのか。それを選んでやってもらう。この2つだけなのです。  ところが非常に抵抗が強くて、統計審議会でその了解が得られないとか、得られたと しても2年先になるとか、何かすごいことを言っているのです。私は内閣府にいるもの だから相当ガンガンやったのですが、やはり彼らとしては最大のユーザーから頼まれな いと、出来ないのですね。最大のユーザーは厚生労働省、だからまさに皆さんなので す。皆さんが、職安局としてこれは重要なんだよと言うのが、統計局にはいちばんのパ ンチが効くのです。それを我々としては応援したい立場なので、だから内々の議論では なくて、常に議事録に残して、常に事を表立てながらやってもらいたい、そういうこと なのです。明示的にしてもらいたい。内々でいいよなっていうのは、困るのです。それ は、ちょっと議事録に書いておいてもらいたい。 ○八代委員  いまの関連ですが、昔、確か旧労働省で、雇用保険需給者の追跡調査みたいなものが ありましたね。 ○小野座長  時々やっているのです。 ○八代委員  あれも、もっと充実してもらうと、いまの島田先生のあれでいい。 ○島田委員  業務統計ですね、延長線上でね。これは、厚生労働省が自分でできることですから。 ○勝田雇用政策課長  それにつきましては、実はいまJILPTにお願いして、失業者を2、3年間にわた って追いかけるパネル調査を、現在実施中です。 ○島田委員  労調は地域に割ると、ほとんど意味なくなってくるでしょう。どのぐらい意味がある と思いますか。例えば、関西とか東北とか関東ぐらいかな。南関東なんて言えますか、 統計的に有意ですか。 ○勝田雇用政策課長  南関東ぐらいまでだと思います。 ○島田委員  ですよね。何か7つか8つぐらいの地域なら、何とか比較はできる。 ○勝田雇用政策課長  ただ四国は難しいということを、ちょっと。 ○島田委員  そのレベルですね。 ○勝田雇用政策課長  はい。 ○島田委員  だから漠とした感じになるのですよ、どうせ3万かそこらですからね。 ○小野座長  4万件。 ○島田委員  ええ、4万ですから、だから漠とした感じになる。ただ、いま八代先生が言われたの は大変重要で、これは具体的な個票のフォローですから非常に正確なのですが。 ○八代委員  事務処理が遅れている。 ○島田委員  ちょっと地域も分からないし、全国的な意味も分からない。だから両方、やっぱり攻 めたほうがいいと思うのです。労調は漠としているが、少なくても関西圏なのか関東な のか北海道なのかぐらいは出てくるから、そこで長期失業者がどうなっていて、それで もうすでに所得がないとか。そういうことが労調で分かると、非常に有力だと思うので す。 ○小野座長  それ、どうして審議会が。 ○島田委員  いや、認識がないのです。そういう雇用問題とか、失業とか政策だとか、たぶん関係 者の皆さん、認識あまりないようですね。 ○小野座長  ある違った質問事項を入れると、何か調査全体が影響されてしまって困ると。 ○島田委員  そのとおり、一貫性が、そちらのほうにとても認識高いのです、統計学者ですから、 皆さん。ちょっと加わったら比較ができないと。 ○中井雇用政策課長補佐  14年に労働力調査を大改正したものですから、まさにその改正のタイミングに島田先 生の問題意識は、改正していた時点でそうした問題意識を持っていなくて、ご指摘いた だいたときにもう間に合わなかったという、そういう手続上の話があったように認識し ています。 ○島田委員  1年ずれたのでしょう。1年早く言ってくれれば、話は違った。2年早く言えば。 ○中井雇用政策課長補佐  そのくらいで言えば。 ○島田委員  でしょう。だって2年早く言えったって、経済が悪くなったのはその後なのだから ね。だから私はそれ、随分統計局長とやり合った。統計のために経済があるのか、経済 のために統計があるのか、どっちなのかと言ったことがあるのですが、やっぱり統計の ためにあるらしいです、あの人たちは。 ○中井雇用政策課長補佐  検討すると言っていますので、それも外部の先生も入れてということでやってみます ので、そういった問題意識をちゃんと議論するようにということで。 ○島田委員  是非、最大のユーザーは我々ですから。 ○中井雇用政策課長補佐  はい。 ○樋口委員  それこそパネル調査をやればいいと思うのです。韓国はもう90何年からずっとやって て。だからJILPTに、相当それは消える。 ○島田委員  そうそう、あそこがやっている。 ○樋口委員  何と言いましたか。あそこがずっとやってて。それは失業者だけを追っても、駄目な のです、結局。 ○島田委員  そうです、全部を洗わないと。 ○樋口委員  失業者になったり、あるいは出たりするわけですから、失業者を追うだけでは意味が ないので、全サンプルでやるということだろうと思うのです。 ○島田委員  だから労調に質問3つくらい入れてくれれば、いろいろなことができるのですがね。 2つ、3つ言ってくれれば。 ○大石委員  うちの移動がちょっと話題になっていたので、それに関してです。 ○小野座長  何頁、6頁ですか。 ○大石委員  全体的なことですけれども、就業のこととかいろいろ出ていても、その中身があま り、この頂戴したものですと分からないのではないかと思いまして。例えば、正規就業 なのか、非正規なのか。若い人の移動を促すにはという話が出るときも、やはり移動の コストを上回るような、良い就業機会が本当にあるのか、例えば東京とかにですね。東 京に行っても、結局は非正規就業とか請負的な仕事しかない。それだったら住宅コスト かけて移動するよりは、やはり地元にいたほうがということになると思う。大都市圏で は就業機会が増えていると言っても、その中身が何だったのかを、もうちょっとお示し いただくと、また違った見方ができるかと思います。 ○小野座長  雇用の質の問題があると。昔は、こういう何というか、地域間移動の分析など、とて もやったけれど、最近はどうなのですか、あまりやりませんか。プルとかプッシュと か、盛んにそういうことをやりましたが。 ○島田委員  昔やりましたね。高度成長のときに東京に人が集まるので、やったのでしょうね。随 分やりましたね。先生も、随分論文書いたでしょう。 ○小野座長  人口問題研究所が、全部移動をやっていたときがありましたね。最近ちょっとやって ない。 ○島田委員  また新しい意味で、やるときが来たのでしょうね。 ○小野座長  そう思います。少し力を入れて、そういう地域間の移動の問題をやったら、面白いと 思います。ほかにご意見は、また元に戻ってもいいのですが。 ○山川委員  先ほど来樋口先生のご意見との関連で、地域に任していればいいのか、あるいは国と してどういうスタンスを取るのかという点について。国としては、先ほど雇用政策課長 のお話では、必ずしも地域のスタンスと違うスタンスを取ることがあり得るということ でしょうか。つまり、政策のビジョンみたいなものが、それぞれの地域のビジョンと国 としてのビジョンが場合によって違うことがあるかもしれないと思うのですが、そうい う場合の連携のあり方、つまり具体的には国として望ましいビジョンに向けて、労働力 の移動を促進したり、あるいは抑えたりするということが、あり得るのかどうか。連携 等を考える際に。 ○勝田雇用政策課長  1つは、どうしても国内全体の中の地域的なミスマッチのような問題が、先ほどの八 代先生のお話ではありませんが、一定の地域に産業がある中で、労働力の不足が起こっ ていると、そこへどうしても持っていくことを、我々としてはある程度考えざるを得な いだろうと思う。そのときに、必ずしも出す側の自治体のご意見と合うかどうかについ て言えば、合わない可能性もあり得ると思っています。  もう1つは、そちらの政策的な考え方の問題のことが1つと、もう1つは我々の持っ ている政策ツールとして、全国的に、例えば職業紹介にしても移動にしてもお手伝いで きるという問題と、地方自治体でやられている場合の、地元でやられているとか、地元 の情報の発信という点では、非常に良いものをお持ちだと思うのですが、全国的な移動 のツールですとか、そういった点に関して言えば、私どものほうをお使いいただくとい うのは、1つの判断としてはあり得るのかなという形で思っています。そういう意味 で、その協力と、いわばある種の意見のすり合わせと、両方が要るのだろうと思いま す。 ○小野座長  よろしいですか。一応そういうお考えのようです。また、いまの問題に移っていいの ですが、先ほど島田先生が、これが面白いと言った。 ○島田委員  面白いか、深刻です。 ○小野座長  何頁からですか。 ○中井雇用政策課長補佐  資料2の56頁以降です。 ○小野座長  ちょっとそれを説明してください。 ○中井雇用政策課長補佐  最初に、56頁は、前回、生産性を議論したときの小売業の業態別の販売額の推移が57 頁にありますが、説明した際に、八代委員からネットビジネスも重要ではないかという ご指摘をいただいたので、調べました。56頁の資料ではちょっと説明不足ですが、実際 の数字について公表されているものは見つからず、これは総務省で試算したものです。 パソコンや携帯電話で、インターネットを利用して商品を購入したという購入金額、単 価とか利用人数とかそういったもので掛け合わせて、試算したと聞いています。これに よると2003年の市場規模が1兆9,000億円で、前年と比較して2割程度増加しているとい う結果になっています。  57頁で、それぞれのほかの業態についての数字がありますが、まだこれらに比べて規 模は小さいのですが、もう兆単位の売上げになっていること、伸び率が大きいというこ とで、この分野もいろいろ今後の業態として大きいのではないか。調べられたのはこの 程度で、恐縮です。  少子化で、いろいろ就業と出生について、女性の就業が進んでも、出生率には必ずし もマイナスではないという数字を、データで補強すべきではないかというご指摘をいた だいたところです。併せて、以前樋口委員が内閣府のシンポジウムでいろいろこうした 関係でお話なされたということも参考にし、若干資料を追加しました。58、59頁は、O ECDの加盟国による出生率と女性の就業率です。58頁は、全体の15〜64歳まで、59頁 が20〜39歳までの年齢です。1970年と2000年を比較すると、出生率と女性就業率の関係 が、70年では負の相関ですが、2000年では正の相関があるということで、状況が変わっ てきているという分析の結果になっています。 ○八代委員  これ、サンプルは同じなのですね。 ○中井雇用政策課長補佐  基本的には、同じです。若干、トルコやメキシコとか、そういった所が外れるという 形になっていますが。 ○島田委員  外しているの。 ○中井雇用政策課長補佐  すみません、下に書いています。注の3ですが、外しているのは異常値です。 ○島田委員  出生率2.40というのは駄目ですね。 ○中井雇用政策課長補佐  ちょっとそこは。 ○島田委員  いや、あります。 ○八代委員  ありますよ。 ○島田委員  何が異常値なの。 ○八代委員  いや、この関係から外れる。 ○小野座長  相当外れている。 ○中井雇用政策課長補佐  60頁は、先ほど島田先生からご指摘いただいた資料です。これは日本とアメリカとフ ランスで、出生率と女性の就業率の関係について、70年から2000年まで、そのプロット してどう動いていったかというのを見たものです。日本は、就業率が上がると、同じよ うに出生率が低下しているという関係が、まだ見られます。アメリカやフランスでは、 就業率と出生率の上昇が両方同時に起きている状況があります。経年で見たらどうなる かという資料です。  61、62頁です。61頁は以前お示ししたとき、有配偶女性の労働力率とその合計特殊出 生率の関係について、自営の影響を除いて見るべきだというご指摘をいただいたので、 代理変数として、62頁で雇用者比率、自営を外したものとして、改めて関係を見たもの を作ってみました。これを見ますと、R2乗は少し下がってはいますが、相変わらず相 関は見られるのではないかと考えています。  続きまして63頁、いろいろやってはどうかということもあったので、これはOECD 加盟国における出生率と女性の15〜64歳のフルタイムの雇用率の関係を見たものです。 相関はほとんど見られません。フルタイムの雇用率が上がると、出生率が下がるという ことはない、そういうことを示したものです。  64頁は、以前第6回の少子化のとき、富士通総研の方が分析したものを紹介したとこ ろ、対象の国の数がちょっと恣意的ではないか、OECD加盟国全体でしたらどうかと いう話もあり、サンプルを増やしてやり直したものです。これを見ても、やはり男性就 業者に占める女性就業者の割合とその出生率の関係で、低い所から上がっていくと、1 回出生率は下がりますが、またある一定の水準を超えると、逆に出生率が上がっていく という関係になっています。前回の推計と同じ傾向が見られているのではないかと考え ています。  最後に、65〜67頁、また違った話になります。第5回のときに学卒就職者の学歴別に 見た割合をお示ししたときに、樋口先生から、専門学校が外れているのは、数が多いの でおかしいのではないかというご指摘をいただきました。もっともですので、専門学校 を追加した形で、割合を計算し直しました。専門学校のウェイトは相当になってきてい る状況が、それぞれ見られているのではないかということです。以上です。 ○小野座長  どうぞ、ご意見ありましたら。前に戻っても結構です。 ○黒澤委員  10−(3)、58頁のグラフですが、これは70年と2000年についてあるので、その変化 をとった場合、どうなるのか教えていただきたい。  アメリカとフランスと日本については60頁に、時系列的に70年から2000年の変化の状 況が載っているのですが、非常に難しいかもしれませんが、70年と2000年の、これだけ もっと多くのサンプルについても変化で取って、つまり就業率の変化と出生率の変化を プロットしてみるとどうなるでしょうか。そこで、両立がしやすく均等度の高い国々が どの辺にあって、そうではない国々がどの辺にあるのか。期待するところは、そういっ た両立がしやすい均等度の高い国々というのは、変化で見た場合も、正の相関があると 期待できる。そうした出産の機会費用が低いというか、そういった媒介要因があってこ そ、正の相関があるというのがわかるようになると、もっと良いかなと思いました。 ○中井雇用政策課長補佐  60頁の考え方で、ほかのも見たらどうかということだと理解しました。そこはまだ見 れていません。引き続き数字を見ていきたいと思います。 ○佐藤委員  いまのにかかわって、59頁の2000年でかなり変わって、女性の就業率が上がったから といって、出生率が下がるわけではないというのは、よく使われているのですが、60頁 のような変化率で取ると、日本みたいな国も結構たくさんある。就業率が上がると、出 生率が下がるわけでもないし、上がるわけでもない。つまり直接的な相関関係はなく、 大事なのは、いま黒澤先生が言われたように、両立支援策みたいな別の変数がすごく大 事です。  ですから女性の就業率が高くなって、その両立支援がないと、やはり下がってしま う。アメリカはちょっと移民の問題などがあるから別ですが。黒澤先生がいま言ったよ うな、ほかの制度のところを見ていかないと、就業率が上がれば出生率が上がるんだみ たいな、2000年という直接的な関係があるわけではなく、個別の圏を見て90年代と2000 年を比較すると、落ちている所もある。別の両立支援策が非常に大事なので、そのこと を言ったほうがいいのではないかと思います。 ○樋口委員  これ、私が使ったときは、差を取ると、ありがたいことに、まずトルコとメキシコが 落ちてくれるのです。OECDに70年は入っていませんでしたから、データーがないと いうことで落ちる。  変化で見ると、確かにランダムです。必ずしも、で、ランダムということが逆に、下 がるわけはない。女性が働きに出ると、下がるわけはないというようなことを示してい る。重要なのは、まさにおっしゃったような、両立支援のところなのです。あるいは男 女共同参画とか。これと、例えば出生率と、女性の働きやすさ指標と、さっきちょっと 出ていた内閣府のものを見ると、わりときれいに、国別で見るときれいに。やはり働き やすい所のほうが、出生率が高いという傾向はクロスセクションで出てくる。  もう1つの問題は、では女性のそうした両立支援をサポートしていくような政策と か、共同参画を進めていく政策を取ったときに、企業の競争力が落ちてしまうではない かとか、経済の国際競争力を失ってしまうではないかというような懸念が持たれるわけ ですが、これは全く逆の結果が出ています。逆に女性の働きやすいほうが、競争力とい う、スイスのランキングで見ると、完全にプラスの影響が出ている。  私が書いたのは、3つの神話。まず女性が働きに出ると、出生率は下がるだろうとい う神話とか、あるいは働きやすくなると、競争力を失ってしまうのではないかというよ うな神話は、本当にミスである。何も過去に、そういったもので裏付けられたものはな い。真実は何か。両立支援がやはり有効に、すべての所に効いてくるというようなこと が、言えるのではないかと思うのです。 ○八代委員  どこの出版社ですか。 ○島田委員  エコノミストに対してですね。 ○樋口委員  そうなんです、エコノミストに対してです。あと内閣府のシンポジウムで報告をした のです。 ○八代委員  だから、その両立支援策の中身で、やはり私は依然として雇用の流動性というのも大 きな要素で。つまり、一旦退職しても、また労働市場に戻れるような流動性があるかな いかというのが、究極の両立支援策だと思うのですが。あえて政策にするかどうかは別 にして。少なくてもアメリカなどはかなり流動性が高い所で、フランスはちょっとどう か分かりませんが、これは職種別組合ですから、当然流動性が高いのではないか。 ○山川委員  その点は、例えば、この各年代に各国の政策がどういう点に重点を置いていたかとい うのをフォローすると、ある程度分かるかもしれません。確かにアメリカは1991年くら い、2年か3年ですか、ファミリー・アンド・メディカル・リーブ・リバーアクトがで きたのですが、そのときくらいからそんなには増えてはいない。その前のほうが、むし ろ増えている。しかしフランスは、おそらく1990年代半ばから増え出している。そのと きにどういう政策を取っていたか、よく分からない。必ずしもある時点の政策がすぐに 影響、タイムラグを置かずにということはないのですが、それも含めて、この政策の流 れとの比較をすると、推測程度のものかもしれませんが、多少手掛かりになるかなと。 ○樋口委員  90年代にフランスが逆転したと言うのは、これは通常言われているのですが、やっぱ り雇用情勢が良くなったという、若年の雇用不安が払拭されることで、その生涯につい ての計画が立てられるようになってきた。これが、出生率を上げているのではないかと いうことで、特段そこで手当てを急激に増やしたとかいうことは、どうも見られないの ではないかということですね。だから税制の改正も、45年の大改正をやって以来それほ ど大きな改正というのはやっていなくて、最近になって90何年かに、出生率関係で言う と、改正をしているというところですがね。 ○八代委員  均等法みたいなのは効かない。 ○樋口委員  均等法、いま、だからまさにそこが効いているのではないかというのが。だから逆に 地中海の所というのは、わりとお金を使って出生対策、お金を使ってても出生率上がっ てこないわけですね。その背景は、それがあるのではないかという。アジアの国と地中 海、ギリシャ、イタリア、スペインの共通性というのはそこではないかという議論があ ります。 ○小野座長  出生率のところは、もうちょっといろいろ分析の余地がありますね。これはだけど、 難しいですね、ものすごくね。 ○佐藤委員  時間の関係で、いま内閣府の共同参画、これだけプロジェクトでやっているのです が、それが出るのは7月ころだから、このことだけでやっている。ただ、こちらとは間 に合わないかもしれません、7月ごろ発表されると思います。 ○小野座長  それは厳しい。 ○八代委員  樋口先生が言われた、女性が働きやすいほうが競争力が高まるというところの因果関 係というのは、どうなのですか。1つは。 ○樋口委員  クロスセクションでやっていますから、高いのかどうか分かりません。ただ女性が働 きやすいというのは、男性のほうも働きやすいというのにつながってくるわけです。  男女間賃金格差といった指標を取っていったりしたときに、もしかしたら八代委員が おっしゃった、転職コストが低いというようなことが影響している可能性はあるわけで すね。要するに、賃金のスロープが緩やかなほうが、転職コストというのは低いですか ら、そのほうが再就職しやすいというところはある可能性は増す。 ○八代委員  あと、より労働市場が競争的であるということと、女性が働くと、それだけ税金とか 社会保険料負担が減るから、それだけ企業とか労働者の税負担も減るからとか、そうい うロジックはないのでしょうか。 ○樋口委員  そこまで大担には、推計はできません。 ○中馬委員  産業の発展のプロセスの中でより知識集約型になるから、女性の知識をも有効に使う というほうが、より競争力が高いというロジックはありますね。 ○樋口委員  労働時間との関連で見ても、労働時間と競争力というのも、きれいには出てこないで すね。労働時間が長いほうが競争力が高いという関係というのは、どうも出てこない。 ○小野座長  それは、そうですね。 ○八代委員  ただ、そのときに問題なのは、男性の労働時間だけで比較しているから、そうなるの ではないですか。つまり、女性の就業率と一体化で考えないと、つまり日本のように、 男性の就業時間はとても長いけれど、女性の就業時間が短いから、片方しか働いてない 国と比べて、女性の就業率が高くて、男性の労働時間が短い国と比べれば、はるかに後 者のほうが人口の稼働率が高いですからね。当然生産性は高くなってくる。そういう言 い方もできる。 ○樋口委員  端的なのが、北欧がわりと生産性が高く出てくるわけですね、国際比較で言うと。あ そこの国で考えても、総労働時間が長いわけではないし、女性もたくさん働いているわ けだしというようなことから、あの影響が相当に出てきて。あれをどう解釈するのかと いうことだろうと思うのです。 ○小野座長  ほかにご意見ございますか。事務局のほうで、この分析に関して特にご発言ありませ んか。 ○中井雇用政策課長補佐  いろいろご議論いただいたので、また整理させていただいて、今後お示しできればと 思っております。 ○勝田雇用政策課長  先ほどの島田委員と八代委員の人等をどう動かすのかという話で、事務局としては非 常に重要だと思っておりますので、またこのご議論をいただければと思っております。 ○小野座長  まだちょっと予定の時間を余していますが、大体ご議論が尽きたように思いますの で、今日の研究会はこの辺にさせていただきます。  次回の研究会の開催日時、場所について、事務局からご連絡ありますか。 ○中井雇用政策課長補佐  次回ですが、年度が変わって4月以降で考えています。まだ年度替りの日程について は、いろいろいまお聞きしている段階で調整中です。そちらについて、また改めて追っ て連絡させていただきますので、その際には是非よろしくお願いいたします。 ○小野座長  では本日は夜遅くまでご苦労さまでした。今日の会議はこれで閉じたいと思います。 照会先 厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係 TEL:03−5253−1111(内線:5732) FAX:03−3502−2278